≪玉串ノ巫女≫赤目の巨人と限界集落
●
妖被害が続く日本。多くの若者が都会へ移り住み老人だけになった集落は、さながら死を待つ鳥である。集落を移るだけの体力もなく、愛着の深い土地を捨てる気にもなれず、最後の時をただ静かに待っている。
そこへある日。
ついにというべきか、妖が現われた。
見上げるほどの巨体。それも民家を足で踏みつぶすほどの巨人が、電柱や道路標識を引き抜いて振り回し、家々を破壊して回るのだ。
「あかん、ついにここまで進行してもうたか」
「あれだけの数です。三日足止めできただけでも充分と考えるべきでしょう」
巨人の横を走る三人。いずれも巫女装束。
「こっちを向きなさい!」
眼鏡の巫女が弓矢を構え、巨人へと連射。
振り向いた巨人が電柱を叩き付けてくるが、巫女たちは分散。赤髪の巫女が電柱を足場に駆け上がり、刀で迷い無く片目を切りつけた。
「やっぱ手応えがハンパねえ。石でも斬ってるみてえだ!」
「続けてください。八柱さん、情報を!」
「もうちょっとやもうっちょっと……ビンゴ! そいつの両目はやっぱり弱点のひとつや。加えて高い回復力の源ンなっとる心臓。動き回るための足。ここを潰せば一気に行けるで!」
「ならば……!」
眼鏡の巫女は弓を引き絞り、炎でできた矢を放った。矢は鳳となり、巨人の顔面へ激突する。
うなりをあげ、粉々に崩れ始める。
だがしかし、巨人はその一体だけでは無い。
周辺から集まり、樹木や電柱を振り上げて襲いかかってくる。
「時間も体力もありません。ここがデッドラインです」
「仕方ねえやな。地獄で合おうぜ」
「私たち、神道ですよ? 黄泉と言ってください」
「ええやないの八百万精神やで。ほな――ちょっと黄泉路に付き合えや!」
彼女たちは迷うこと無く魂を解き放った。
光が膨らみ、巨人たちを吹き飛ばす。
●
「へぇー、そうなんですかー。二和さんに八柱さん、お亡くなりになったんですかー」
「……はい。神社本庁の『玉串の巫女』が最後の魂を使用してランク3の妖群17体を撃滅したそうです。撃滅しきれなかった個体があったそうですが、強制的に吹き飛ばし、集落から距離をとったと。激しい損傷も与えたので体力も減っているとか」
「そうですかー。残念でしたねー。お悔やみもうしあげますー」
九美上 ココノ(nCL2000152)は夢見とそんな会話をしていた。
彼女に関する説明は今回の趣旨からやや外れるので、省くことにしよう。
重要なのは、撃滅しきれなかったという残存妖である。
「一足遅れて、AAAからこの妖を討伐する依頼が入りました。夢見の予知情報はありませんが、神社本庁から戦闘によって得た情報の提供があったので、目標のスペックを計ることは難しくないでしょう」
今回の依頼内容はランク3・心霊系妖の撃滅。
ならびに、妖が次の標的としている集落に近づかせないことである。
妖被害が続く日本。多くの若者が都会へ移り住み老人だけになった集落は、さながら死を待つ鳥である。集落を移るだけの体力もなく、愛着の深い土地を捨てる気にもなれず、最後の時をただ静かに待っている。
そこへある日。
ついにというべきか、妖が現われた。
見上げるほどの巨体。それも民家を足で踏みつぶすほどの巨人が、電柱や道路標識を引き抜いて振り回し、家々を破壊して回るのだ。
「あかん、ついにここまで進行してもうたか」
「あれだけの数です。三日足止めできただけでも充分と考えるべきでしょう」
巨人の横を走る三人。いずれも巫女装束。
「こっちを向きなさい!」
眼鏡の巫女が弓矢を構え、巨人へと連射。
振り向いた巨人が電柱を叩き付けてくるが、巫女たちは分散。赤髪の巫女が電柱を足場に駆け上がり、刀で迷い無く片目を切りつけた。
「やっぱ手応えがハンパねえ。石でも斬ってるみてえだ!」
「続けてください。八柱さん、情報を!」
「もうちょっとやもうっちょっと……ビンゴ! そいつの両目はやっぱり弱点のひとつや。加えて高い回復力の源ンなっとる心臓。動き回るための足。ここを潰せば一気に行けるで!」
「ならば……!」
眼鏡の巫女は弓を引き絞り、炎でできた矢を放った。矢は鳳となり、巨人の顔面へ激突する。
うなりをあげ、粉々に崩れ始める。
だがしかし、巨人はその一体だけでは無い。
周辺から集まり、樹木や電柱を振り上げて襲いかかってくる。
「時間も体力もありません。ここがデッドラインです」
「仕方ねえやな。地獄で合おうぜ」
「私たち、神道ですよ? 黄泉と言ってください」
「ええやないの八百万精神やで。ほな――ちょっと黄泉路に付き合えや!」
彼女たちは迷うこと無く魂を解き放った。
光が膨らみ、巨人たちを吹き飛ばす。
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「へぇー、そうなんですかー。二和さんに八柱さん、お亡くなりになったんですかー」
「……はい。神社本庁の『玉串の巫女』が最後の魂を使用してランク3の妖群17体を撃滅したそうです。撃滅しきれなかった個体があったそうですが、強制的に吹き飛ばし、集落から距離をとったと。激しい損傷も与えたので体力も減っているとか」
「そうですかー。残念でしたねー。お悔やみもうしあげますー」
九美上 ココノ(nCL2000152)は夢見とそんな会話をしていた。
彼女に関する説明は今回の趣旨からやや外れるので、省くことにしよう。
重要なのは、撃滅しきれなかったという残存妖である。
「一足遅れて、AAAからこの妖を討伐する依頼が入りました。夢見の予知情報はありませんが、神社本庁から戦闘によって得た情報の提供があったので、目標のスペックを計ることは難しくないでしょう」
今回の依頼内容はランク3・心霊系妖の撃滅。
ならびに、妖が次の標的としている集落に近づかせないことである。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖の撃滅
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
●赤目の巨人
ランク3心霊系妖。個体数2。
10メートル級の巨人で、電柱や樹木を引き抜いて武器とします。
人が住んでいる集落への進行を止め、戦闘をしかけることになります。
そのため戦闘エリアは主に山中の森。背の高い樹木が並んでいるため、比較的巨人タイプとの戦闘はしやすいでしょう。
攻撃方法は以下の三つ
・殴る蹴る:遠単物(通常攻撃扱い)
・武器で薙ぎ払う:遠列物(体術扱い)
・心臓を動かす:自分を大回復、BSを9割解除、次の攻撃に特殊属性のダメージを追加。
巨人には三つの部位破壊ボーナスがあります。
かなりピンポイントの破壊になるので『対象部位に単体攻撃を行なった時のみ』通常ダメージに加えて破壊ボーナスが加算されます。
ボーナス内容は以下の通り。
・足
片足だけでも破壊しきると、攻撃の範囲がすべて『近』になります。
ただし足下は非常にダメージを受けやすく危険です。移行のダメージコントロールが安全になり、積極的な攻撃姿勢をとることができるでしょう。
・心臓
巨人の心臓を破壊しきると、『心臓を動かす』が使えなくなります。
心臓を動かしてから薙ぎ払う攻撃はチームが一瞬にして崩壊するほどのダメージになるので、強力な盾役と回復約がいない限りは早めに潰しましょう。
・目
片目を潰せば命中率ダウン。両目を潰せば更にダウン。
ただし一つ潰すごとに攻撃力が増加します。一発の当たりが大きくなるので、回避に自信がない場合は放置してもいいかもしれません。
●NPCの参加
このシナリオにはNPC九美上 ココノ(nCL2000152)が通常のF.i.V.E覚者と同じように参加しています。スペックが謎ですが、攻防固めて殴りつけるタイプの近接ファイターっぽいようで、そのくせ武器は遠単型という取り合わせです。
何を考えているかさっぱり分かりませんが、F.i.V.Eの性質(特に所属している覚者たちの振る舞いかた)を観察しているようです。
●玉串の巫女についてファイヴが知っている情報
『玉串の巫女』は神社本庁に所属する強力な覚者チームです。十名前後で構成され、どれだけ強大な妖でも命令から三日以内に倒さなければならない契約をもち、そのため一月に1~2人程度の死者を出しています。
目的は妖の必殺。
神社本庁は神道を信仰する国内最大の宗教法人で、国内神社の多くが加盟しています。一応国家機関ですが運営資金は寄付制。スタッフの大半はボランティアです。
その中で『玉串の巫女』は多額の寄付金と引き替えに献上された覚者のため、命令に逆らうすべを持ちません。
同行NPCの九美上はきっぱりと脱退したためカンペキに無関係、と本人は言っています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
相談日数
10日
10日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年07月10日
2016年07月10日
■メイン参加者 8人■

●
地響きと崩壊。
身の丈10メートルの巨人が全速力で走り、樹木を引き抜いて叩き付けてくる。
叩き付けられた大地は爆発したようにはじけ飛び、周辺の岩も草も人もまとめて吹き飛ばしていく。
そうして吹き飛んだ樹木の一片に片膝立ちした『火纏演武』鐡之蔵 禊(CL2000029)は、浮き上がる感覚をそのままに跳躍。
眼前の岩を足場に絶妙なタイミングでスピンジャンプをはかると、巨人の心臓部めがけて強烈な360度キックを叩き込んだ。
キックの反動でバク転しつつ離脱。眼下を『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)の破眼光乱れ打ちが通過し、心臓部への追撃を仕掛けていく。
巨人は心臓部へのダメージを抑えるためにか腕で心臓部を覆いつつ、大きく息を吸い込んだ。ドクンという外からでも聞こえるような鼓動が響き、巨人の前身がカッと赤く染まっていく。
ジャックは歯を食いしばり、背を向けて全力でダッシュ。
彼と入れ替わるように走った葦原 赤貴(CL2001019)が巨人めがけて駆け込み、斜めに立った樹木を駆け上りつつジャンプ。
回転しながら落ちてきた禊と一瞬手を繋いで上方向に投げて貰い、更に上昇。コンマ二秒後に二人の間を巨人の振るった樹木が暴風を伴って通過していった。
風に煽られてバランスを崩しかける赤貴だが、勢い余って巨人が粉砕した樹木の破片をキャッチ。術式を流し込んで槍化すると、全身を使ったスピンでもって投擲。巨人の心臓部へと叩き込んだ。
直後、赤貴の身体が鷲づかみにされる。
察して防御姿勢のまま固まった赤貴を、巨人は山の地面に叩き付けた。
爆発したようにはじけ飛ぶ大地。
そんな光景を横目に、鹿ノ島・遥(CL2000227)は別の巨人を追いかけていた。
集落めがけて走り出す巨人を足止めするためだ。
巨人を挟んで向こう側のプリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)とハンドジェスチャーでコンタクト。
遥はスピードを上げて巨人前方に躍り出ると、踏みつぶそうとする巨人に向かって強引なまでの上方突きを繰り出した。
足がぐきりと音を立て、転倒する巨人。
うつ伏せに倒れる巨人に対し、待ち構えていたプリンスはハンマーを全力でゴフルスイング。
インパクトポイントを頭上に設定した彼のスイングは倍の力で巨人の心臓部を打った。
直後、転倒した巨人の衝撃で地面が激震。周囲の岩や草木が一斉に跳ね上がった。
片膝立ちで起き上がる巨人。その心臓にぴったり狙いを定め、賀茂 たまき(CL2000994)が全力でダッシュ。爆裂護符を投げ推進力に変え更に加速。大量に放り投げて更に更に加速。風よりも速く走ったたまきは両手を使ってジャンプ台を作った遥を使って大ジャンプをしかけると、めいっぱいに畳んで鉄のように硬くなった護符を握り込み、全力のパンチを叩き込む。
ドクンという音が帰ってきた。
言ってみれば爆弾の起爆スイッチを押す音だ。
たまきは仲間に大声でシグナルを発信。
両手に樹木を掴んで薙ぎ払いの構えをとる巨人の動きを観察し、次いで『緋焔姫』焔陰 凛(CL2000119)へ回避行動を促した。
凛は大声でそれを拒否。ダッシュで近くの樹木を駆け上がり、途中からクライミングと逆上がりの組み合わせでもって頂上まで高速で登ると、落下中のたまきめがけてジャンプした。
空中でキャッチ。すぐ後に樹木が横殴り式にぶつかり、凛とたまきは激しく回転しながら吹き飛んだ。樹木数十本をへし折りながら飛び、大地を大量に引っぺがしつつバウンド。
たまきは護符を大きく広げて強制ブレーキをかけ、凛もまた地面に刀を突き立てて強制ブレーキ。
そこへダッシュで突っ込んでくる巨人をにらんで刀を両手で握り込む。
横から駆け込み、二人の前に立ちはだかる『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)と九美上 ココノ(nCL2000152)。
ココノが気弾を乱射する横でラーラは迷い無く魔導書の封印を解除。魔法の言葉と共に大量の火炎を召喚すると、巨人の心臓部めがけて発射した。
発射された大量の火炎のなかに混じって飛ぶ凛。
自らもまた炎を纏って火焔連弾の群れから跳躍すると、大上段に構えた刀を更に燃え上がらせた。
大声で何かを叫び、心臓部を外側から強制切断。
激しく血を噴出する巨人が、意味不明な言葉でわめいた。
遅まきながら対巨人の作戦概要を解説しよう。
『禊、ジャック、赤貴』によるチームが一方の巨人に牽制攻撃をしかけて引きつける間、残りの六人であるところの『遥、プリンス、凛、たまき、ラーラ、ココノ』が目標とする部位破壊を行なうというものである。
この間両巨人による集中攻撃を避けるべく意図的に引き離しを行なう案も存在したが、目標破壊時の移動に支障をきたすことからあくまで注意のひきつけのみとした。
この作戦によって両巨人の心臓・片足の順で破壊。リスク軽減処置をここまでとし、改めて片方ずつからの撃破にあたるのだ。
上手にリスクを分散した頭の良い作戦である。
とはいえ結果の出し惜しみはよくない。先に作戦の弱点も述べておく。
引きつけによるダメージコントロールは相手が低ランク妖のように思考の乏しい個体であることを前提としているため、ランク3程度の妖には途中で見切られてしまう可能性があるのだ。
その『途中』がリスク軽減処理の前か後かで戦況は大きく変わることになる。
より具体的に述べると、作戦の中途切り替えか、もしくは『引きつけ』だということをバレないような工夫があれば有利に働くということである。
では、戦闘状況に戻ろう。
「なぜあの集落を襲うんですか! あなたたちは、どこから来たんです!」
「応える義理をもたぬ。人の子よ、死ね!」
胸から大量に出血した巨人が、たまきの両足をひと掴みにして振り上げ、強引に振り回した。
山中の樹木が下手くそな達磨落としのごとく次々にへし折れ、吹き飛んでいく。
最後には回転をかけて投げ飛ばされたたまきは地面をバウンド。最後には自らをつつむ防御フィールドがガラス細工のように砕け散り、たまきは地面を転がった。
「おいおい、こっち来るな! あぶねえって!」
すぐ近くにいたジャックが急いで癒やしの滴を展開。魔術性の液体がたまきの傷口から侵入し、傷を強制的に塞いでいく。
頬に突いた土をぬぐうジャック。
「人間舐めんなよデカブツども。いっちょ耐えてやろうじゃ――うお!?」
ジャックは自らを覆った影に気づいて全力ダッシュ。
回復担当の自分を狙っての攻撃かと頭を庇ったが、その直後に叩き込まれたのは巨人の拳。それも起き上がりざまのたまきを狙ったものだった。
地面に小さなクレーターが生まれた。
更にそこへジャンプをかけて飛び込んでくるもう一方の巨人。
両足によるスタンピングでクレーターが二倍に広がった。
一度巨人が飛び退くと、クレーターの中心には命数を削って立ち上がったたまきの姿があった。
「話が、できるなら……心が、あるはずです。私は、あなたの……」
「応える義理はなし!」
「人の子よ!」
「死ね!」
足下に転がった樹木を振り上げ、たまきへと叩き付ける巨人たち。
「やめなさい!」
禊はそんな巨人の一方。心臓が破壊されている方へと駆け込み、足のすね部分を思い切り蹴りつけた。
「十天がひとり、鐡之蔵禊! こっから先は通さないよ! ――手伝って!」
「了解した」
目にもとまらぬ連続蹴りを繰り出す禊と一瞬で入れ替わり、出現させた大剣を木こりの斧の要領で叩き込む。
その間、ジャックは負傷したたまきを抱え、応急処置を施しつつも全速力でその場から離脱する。
渋い顔をするプリンス。
「お疲れ、交代するよ! お菓子食べる? ジュース飲む? 余のこと敬愛する?」
「するから早くして!」
OKサインを出して走り出すプリンス。
その一方で、巨人たちは一度背筋を伸ばし、遠くを観察するように見た。
集落の方角だ。
巨人たちはなにか意味不明な言葉をわめいた後、集落方向へ向けて走り出す。
「こいつら集落を狙う気だ! 走れ走れ!」
遥はダッシュに集中。巨人と彼らは最初に破壊されたという集落へと進行していた。
次の破壊目標地点はもっと先だ。ここで食い止めればいい。
「九美上さん、オレに付いてきてくれ!」
「はいー。わかりましたー」
遥は自動車、ブロック塀、民家の屋根と順にジャンプで駆け上がり、迫り来る巨人へと向き直った。
一度両手を合わせ、構え拳に強烈な電撃を纏わせてから、突きを放つ。
突きは激しい砲撃となって巨人の心臓部を貫通。走り込んできた巨人はわずかによろめいた。
一方で凛は民家の戸口をクロスアームで破壊。そのまま廊下を走って反対側の縁側から飛び出ると、巨人がぐっと握りしめた電柱のピック部分につかまった。
振り上がる電柱。引っ張られて空中へ放り投げられる凛。
「お前ら倒さんと死んだ巫女さんらも浮かばれん。覚悟しいや!」
凛は空中でバランスをとって落下地点を調整。巨人の心臓部めがけて刀を突き込んだ。
ジャストヒット。心臓部にざっくりと刺さった刀をそのままに叫んだ。
「今や! 地獄で巫女さんらに詫びてこい!」
「せーのっ」
プリンスはハンマーを両手でしっかりと持つと、軸足を地面に強制固定しつつスピンを開始。
すさまじい速度で回転すると、絶妙なタイミングで補助アームごとハンマーを手放した。
豪速で飛んだハンマーが巨人の心臓部。それも凛の突き刺した刀の柄頭を叩く形でクリティカルヒットした。
刀とハンマーが心臓部を貫いて背中から飛び出てくる。
意味不明なわめき声をあげながら、巨人は離脱しようとする凛をがしりと掴んで振り上げた。
十メートル以上の高さから集落を見下ろす凛。驚きと同時に、山側から全速力で走ってくるもう一体の巨人に目を剥いた。
「あかん……!」
巨人は凛を一度頭上に放り投げると、手にした電柱で凛を殴りつけた。
フォームもなにもあったものではないが、あの大きさと威力である。凛は農業倉庫の壁を突き破り、反対側の壁を突き破り、軽トラックの正面から激突。車の全長を半分ほどに縮めて停止した。
上を見ると、樹木を大きく振りかぶる巨人が目に入った。
両巨人の心臓部の破壊を達成。
と同時に引きつけによるダメージ分散が完全に見破られた形となった。
ここへ来てまで当初の作戦に拘るほど彼らも考えていないわけではない。
「ジャック、たまきと凛をお願い!」
「いいけど……おい!」
ぐったりした凛を引きずって安全地帯へ走るジャック。
その上。もとい屋根伝いに走る禊を振り返った。
「ったく分かったよ! 巨人ども、これ以上お前らには何も譲らねえぞ!」
ジャックは回復支援をしながら、民家の間をぬうように走り始めた。
一方、禊は比較的足部分へのダメージを与えていた方の巨人へ追いつくと、すぐ近くのラーラへと呼びかけた。
「援護射撃を!」
「わ、わかりました!」
ラーラは軽トラの上で魔術を展開。
軽トラの運転席では煙草を咥えたココノがキーを使わずにエンジンをかけ、ハンドルを握っていた。
「いきますよー」
「よろしくお願いします!」
巨人と併走するように走り始めるトラック。
「お二人が命懸けで守った集落、必ず守って見せます」
照準設定。射線確保。必要魔力充分。発射準備OK。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
巨人の足めがけて解き放たれる魔術弾。運転しながら片手で気弾を乱射するココノ。
それをうっとうしく思ったのか、巨人は標的を彼女たちに絞った。
新たな電柱を引き抜き、突き立てる。
軽トラックの車体を貫いで地面に突き刺さる電柱。
放り出されるラーラ。が、攻撃の勢いで飛ばされたわけではないと気づいてハッとした。急ブレーキで放り出されたのだ。電柱は今、運転席を貫いている。
「ココノさ――」
民家を飛び越え、巨人がラーラにスタンピングアタックをしかけにくる。
山の地面をクレーター化したあれだ。ラーラは目をぎゅっと瞑った。
直後。激しい衝撃。
ラーラは思い切り吹き飛ばされ、ブロック塀と民家の壁をいくつか破壊してから転がった。
「うわっぷ!」
たまたまそこにいたジャックがラーラをキャッチして転倒する。
が、衝撃の方向がおかしい。上からだったはず。
しかもラーラの身体には全くダメージが残っていなかった。
「この!」
禊が巨人へ飛びかかり、軽く骨の見えているすねに膝蹴りを叩き込む。大きなヒビがはいる。もう一息だ。
「砕けろ!」
反対側から駆け込んだ遥が足に電撃を纏わせ、回し蹴りを叩き込んだ。正確には胴捻り蹴りである。
とうとうへし折れた骨。巨人は思わず転倒した。
「次はそっちだ、王子! 葦原!」
「かけ声いる?」
「いらんっ」
ラーラを追いかけようとしていたもう一方の巨人。
その足下に追いついたプリンスはひとりでに手元に戻ってきたハンマーを握り込みつつエネルギー噴射で加速。
巨人の膝部分に強烈なハンマーアタックをしかけた。
がくんとバランスを崩す巨人。
赤貴は剣を握り込み、乗用車のボンネットへ駆け上ってからジャンプ。
膝関節に剣を突き立てる勢いで押し倒すと、アスファルト地面を強制的に隆起。
巨人の膝を粉砕した。
「破壊完了。いけるぞ」
「回復もまだやれる、タコ殴りにしてやれ」
そこからはまるで濁流に呑まれる虫のようだった。
なんとか手近なものを使ってプリンスや遥たちを薙ぎ払おうとする巨人たちを翻弄するかのように、四方八方から集中砲火を加えていく。
ある程度防御を固めた遥とプリンスを沈めるのは、ジャックの回復もあって容易なことではない。
巨人たちは結局、破棄された集落の中心でそれぞれ力尽き、大量の粉砕された骨となって散っていったのだった。
●
「うふふ、ごめんなさいねー。私とっても弱いので、何も出来ずにやられてしまいましたー」
ココノはひしゃげた軽トラックのすぐそばで発見された。
発見時の様子を詳しく書くことははばかられるが、生物と認識するのは困難なほどのやられようだったという。
それも今ではすっかり元通りだ。
「皆さんとってもお強いんですねー。勉強になりますー」
「おいココノ! お前らおかしいよ!」
そんなココノに掴みかかるジャック。
「なんだよ『玉串の巫女』って、死ぬのが仕事みたいじゃねえか! 人間は機械じゃねえんだ! 金じゃ命は買えないんだよ!」
「あのー」
ココノは心から困ったような顔をした。
「私ー、ファイヴの人間なので、あちらのことは分かりませんよー」
「うるせえ! そんな人間ばっかの非道な組織なら! 俺らが! これから事け――!」
叫ぶジャックの頭を、ココノが胸に抱いた。ジャックは必死に抵抗するが、頭を一ミリたりとも動かせない。
「はいー。なんだかよくわからないですけどー、落ち着きましょうねー。私は皆さんの仲間でー、玉串の巫女とはまーったく関係ありませんよー」
「……」
その様子を黙って見る遥。
彼の肩をプリンスがぽんと叩いた。
「うらやましい?」
「にゃにぎゃ!?」
「でもなーんか萌えないんだよねーあの巫女」
プリンスはそうとだけ言って、用意した花を近くのかけた地蔵のそばに置いた。
回復した禊とたまきが覗き込んできた。
「お参りですか?」
「んー」
「相手、神社の方ですよね。お地蔵様って仏教じゃ」
「八百万なんでしょ。それに知り合いにいい地蔵知ってるし」
「あ、うん……」
よくわからない顔で頷く禊たち。
一方で、ラーラがなぜかココノに頭を下げていた。まだホールドしたままのジャックを赤貴が引っこ抜いて回収している。
「……ああ、わかった」
プリンスはココノの横顔を一瞥して、目を瞑った。
「彼女、こういうときに涙の一つも出さないんだ。だから萌えないんだ」
地響きと崩壊。
身の丈10メートルの巨人が全速力で走り、樹木を引き抜いて叩き付けてくる。
叩き付けられた大地は爆発したようにはじけ飛び、周辺の岩も草も人もまとめて吹き飛ばしていく。
そうして吹き飛んだ樹木の一片に片膝立ちした『火纏演武』鐡之蔵 禊(CL2000029)は、浮き上がる感覚をそのままに跳躍。
眼前の岩を足場に絶妙なタイミングでスピンジャンプをはかると、巨人の心臓部めがけて強烈な360度キックを叩き込んだ。
キックの反動でバク転しつつ離脱。眼下を『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)の破眼光乱れ打ちが通過し、心臓部への追撃を仕掛けていく。
巨人は心臓部へのダメージを抑えるためにか腕で心臓部を覆いつつ、大きく息を吸い込んだ。ドクンという外からでも聞こえるような鼓動が響き、巨人の前身がカッと赤く染まっていく。
ジャックは歯を食いしばり、背を向けて全力でダッシュ。
彼と入れ替わるように走った葦原 赤貴(CL2001019)が巨人めがけて駆け込み、斜めに立った樹木を駆け上りつつジャンプ。
回転しながら落ちてきた禊と一瞬手を繋いで上方向に投げて貰い、更に上昇。コンマ二秒後に二人の間を巨人の振るった樹木が暴風を伴って通過していった。
風に煽られてバランスを崩しかける赤貴だが、勢い余って巨人が粉砕した樹木の破片をキャッチ。術式を流し込んで槍化すると、全身を使ったスピンでもって投擲。巨人の心臓部へと叩き込んだ。
直後、赤貴の身体が鷲づかみにされる。
察して防御姿勢のまま固まった赤貴を、巨人は山の地面に叩き付けた。
爆発したようにはじけ飛ぶ大地。
そんな光景を横目に、鹿ノ島・遥(CL2000227)は別の巨人を追いかけていた。
集落めがけて走り出す巨人を足止めするためだ。
巨人を挟んで向こう側のプリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)とハンドジェスチャーでコンタクト。
遥はスピードを上げて巨人前方に躍り出ると、踏みつぶそうとする巨人に向かって強引なまでの上方突きを繰り出した。
足がぐきりと音を立て、転倒する巨人。
うつ伏せに倒れる巨人に対し、待ち構えていたプリンスはハンマーを全力でゴフルスイング。
インパクトポイントを頭上に設定した彼のスイングは倍の力で巨人の心臓部を打った。
直後、転倒した巨人の衝撃で地面が激震。周囲の岩や草木が一斉に跳ね上がった。
片膝立ちで起き上がる巨人。その心臓にぴったり狙いを定め、賀茂 たまき(CL2000994)が全力でダッシュ。爆裂護符を投げ推進力に変え更に加速。大量に放り投げて更に更に加速。風よりも速く走ったたまきは両手を使ってジャンプ台を作った遥を使って大ジャンプをしかけると、めいっぱいに畳んで鉄のように硬くなった護符を握り込み、全力のパンチを叩き込む。
ドクンという音が帰ってきた。
言ってみれば爆弾の起爆スイッチを押す音だ。
たまきは仲間に大声でシグナルを発信。
両手に樹木を掴んで薙ぎ払いの構えをとる巨人の動きを観察し、次いで『緋焔姫』焔陰 凛(CL2000119)へ回避行動を促した。
凛は大声でそれを拒否。ダッシュで近くの樹木を駆け上がり、途中からクライミングと逆上がりの組み合わせでもって頂上まで高速で登ると、落下中のたまきめがけてジャンプした。
空中でキャッチ。すぐ後に樹木が横殴り式にぶつかり、凛とたまきは激しく回転しながら吹き飛んだ。樹木数十本をへし折りながら飛び、大地を大量に引っぺがしつつバウンド。
たまきは護符を大きく広げて強制ブレーキをかけ、凛もまた地面に刀を突き立てて強制ブレーキ。
そこへダッシュで突っ込んでくる巨人をにらんで刀を両手で握り込む。
横から駆け込み、二人の前に立ちはだかる『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)と九美上 ココノ(nCL2000152)。
ココノが気弾を乱射する横でラーラは迷い無く魔導書の封印を解除。魔法の言葉と共に大量の火炎を召喚すると、巨人の心臓部めがけて発射した。
発射された大量の火炎のなかに混じって飛ぶ凛。
自らもまた炎を纏って火焔連弾の群れから跳躍すると、大上段に構えた刀を更に燃え上がらせた。
大声で何かを叫び、心臓部を外側から強制切断。
激しく血を噴出する巨人が、意味不明な言葉でわめいた。
遅まきながら対巨人の作戦概要を解説しよう。
『禊、ジャック、赤貴』によるチームが一方の巨人に牽制攻撃をしかけて引きつける間、残りの六人であるところの『遥、プリンス、凛、たまき、ラーラ、ココノ』が目標とする部位破壊を行なうというものである。
この間両巨人による集中攻撃を避けるべく意図的に引き離しを行なう案も存在したが、目標破壊時の移動に支障をきたすことからあくまで注意のひきつけのみとした。
この作戦によって両巨人の心臓・片足の順で破壊。リスク軽減処置をここまでとし、改めて片方ずつからの撃破にあたるのだ。
上手にリスクを分散した頭の良い作戦である。
とはいえ結果の出し惜しみはよくない。先に作戦の弱点も述べておく。
引きつけによるダメージコントロールは相手が低ランク妖のように思考の乏しい個体であることを前提としているため、ランク3程度の妖には途中で見切られてしまう可能性があるのだ。
その『途中』がリスク軽減処理の前か後かで戦況は大きく変わることになる。
より具体的に述べると、作戦の中途切り替えか、もしくは『引きつけ』だということをバレないような工夫があれば有利に働くということである。
では、戦闘状況に戻ろう。
「なぜあの集落を襲うんですか! あなたたちは、どこから来たんです!」
「応える義理をもたぬ。人の子よ、死ね!」
胸から大量に出血した巨人が、たまきの両足をひと掴みにして振り上げ、強引に振り回した。
山中の樹木が下手くそな達磨落としのごとく次々にへし折れ、吹き飛んでいく。
最後には回転をかけて投げ飛ばされたたまきは地面をバウンド。最後には自らをつつむ防御フィールドがガラス細工のように砕け散り、たまきは地面を転がった。
「おいおい、こっち来るな! あぶねえって!」
すぐ近くにいたジャックが急いで癒やしの滴を展開。魔術性の液体がたまきの傷口から侵入し、傷を強制的に塞いでいく。
頬に突いた土をぬぐうジャック。
「人間舐めんなよデカブツども。いっちょ耐えてやろうじゃ――うお!?」
ジャックは自らを覆った影に気づいて全力ダッシュ。
回復担当の自分を狙っての攻撃かと頭を庇ったが、その直後に叩き込まれたのは巨人の拳。それも起き上がりざまのたまきを狙ったものだった。
地面に小さなクレーターが生まれた。
更にそこへジャンプをかけて飛び込んでくるもう一方の巨人。
両足によるスタンピングでクレーターが二倍に広がった。
一度巨人が飛び退くと、クレーターの中心には命数を削って立ち上がったたまきの姿があった。
「話が、できるなら……心が、あるはずです。私は、あなたの……」
「応える義理はなし!」
「人の子よ!」
「死ね!」
足下に転がった樹木を振り上げ、たまきへと叩き付ける巨人たち。
「やめなさい!」
禊はそんな巨人の一方。心臓が破壊されている方へと駆け込み、足のすね部分を思い切り蹴りつけた。
「十天がひとり、鐡之蔵禊! こっから先は通さないよ! ――手伝って!」
「了解した」
目にもとまらぬ連続蹴りを繰り出す禊と一瞬で入れ替わり、出現させた大剣を木こりの斧の要領で叩き込む。
その間、ジャックは負傷したたまきを抱え、応急処置を施しつつも全速力でその場から離脱する。
渋い顔をするプリンス。
「お疲れ、交代するよ! お菓子食べる? ジュース飲む? 余のこと敬愛する?」
「するから早くして!」
OKサインを出して走り出すプリンス。
その一方で、巨人たちは一度背筋を伸ばし、遠くを観察するように見た。
集落の方角だ。
巨人たちはなにか意味不明な言葉をわめいた後、集落方向へ向けて走り出す。
「こいつら集落を狙う気だ! 走れ走れ!」
遥はダッシュに集中。巨人と彼らは最初に破壊されたという集落へと進行していた。
次の破壊目標地点はもっと先だ。ここで食い止めればいい。
「九美上さん、オレに付いてきてくれ!」
「はいー。わかりましたー」
遥は自動車、ブロック塀、民家の屋根と順にジャンプで駆け上がり、迫り来る巨人へと向き直った。
一度両手を合わせ、構え拳に強烈な電撃を纏わせてから、突きを放つ。
突きは激しい砲撃となって巨人の心臓部を貫通。走り込んできた巨人はわずかによろめいた。
一方で凛は民家の戸口をクロスアームで破壊。そのまま廊下を走って反対側の縁側から飛び出ると、巨人がぐっと握りしめた電柱のピック部分につかまった。
振り上がる電柱。引っ張られて空中へ放り投げられる凛。
「お前ら倒さんと死んだ巫女さんらも浮かばれん。覚悟しいや!」
凛は空中でバランスをとって落下地点を調整。巨人の心臓部めがけて刀を突き込んだ。
ジャストヒット。心臓部にざっくりと刺さった刀をそのままに叫んだ。
「今や! 地獄で巫女さんらに詫びてこい!」
「せーのっ」
プリンスはハンマーを両手でしっかりと持つと、軸足を地面に強制固定しつつスピンを開始。
すさまじい速度で回転すると、絶妙なタイミングで補助アームごとハンマーを手放した。
豪速で飛んだハンマーが巨人の心臓部。それも凛の突き刺した刀の柄頭を叩く形でクリティカルヒットした。
刀とハンマーが心臓部を貫いて背中から飛び出てくる。
意味不明なわめき声をあげながら、巨人は離脱しようとする凛をがしりと掴んで振り上げた。
十メートル以上の高さから集落を見下ろす凛。驚きと同時に、山側から全速力で走ってくるもう一体の巨人に目を剥いた。
「あかん……!」
巨人は凛を一度頭上に放り投げると、手にした電柱で凛を殴りつけた。
フォームもなにもあったものではないが、あの大きさと威力である。凛は農業倉庫の壁を突き破り、反対側の壁を突き破り、軽トラックの正面から激突。車の全長を半分ほどに縮めて停止した。
上を見ると、樹木を大きく振りかぶる巨人が目に入った。
両巨人の心臓部の破壊を達成。
と同時に引きつけによるダメージ分散が完全に見破られた形となった。
ここへ来てまで当初の作戦に拘るほど彼らも考えていないわけではない。
「ジャック、たまきと凛をお願い!」
「いいけど……おい!」
ぐったりした凛を引きずって安全地帯へ走るジャック。
その上。もとい屋根伝いに走る禊を振り返った。
「ったく分かったよ! 巨人ども、これ以上お前らには何も譲らねえぞ!」
ジャックは回復支援をしながら、民家の間をぬうように走り始めた。
一方、禊は比較的足部分へのダメージを与えていた方の巨人へ追いつくと、すぐ近くのラーラへと呼びかけた。
「援護射撃を!」
「わ、わかりました!」
ラーラは軽トラの上で魔術を展開。
軽トラの運転席では煙草を咥えたココノがキーを使わずにエンジンをかけ、ハンドルを握っていた。
「いきますよー」
「よろしくお願いします!」
巨人と併走するように走り始めるトラック。
「お二人が命懸けで守った集落、必ず守って見せます」
照準設定。射線確保。必要魔力充分。発射準備OK。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
巨人の足めがけて解き放たれる魔術弾。運転しながら片手で気弾を乱射するココノ。
それをうっとうしく思ったのか、巨人は標的を彼女たちに絞った。
新たな電柱を引き抜き、突き立てる。
軽トラックの車体を貫いで地面に突き刺さる電柱。
放り出されるラーラ。が、攻撃の勢いで飛ばされたわけではないと気づいてハッとした。急ブレーキで放り出されたのだ。電柱は今、運転席を貫いている。
「ココノさ――」
民家を飛び越え、巨人がラーラにスタンピングアタックをしかけにくる。
山の地面をクレーター化したあれだ。ラーラは目をぎゅっと瞑った。
直後。激しい衝撃。
ラーラは思い切り吹き飛ばされ、ブロック塀と民家の壁をいくつか破壊してから転がった。
「うわっぷ!」
たまたまそこにいたジャックがラーラをキャッチして転倒する。
が、衝撃の方向がおかしい。上からだったはず。
しかもラーラの身体には全くダメージが残っていなかった。
「この!」
禊が巨人へ飛びかかり、軽く骨の見えているすねに膝蹴りを叩き込む。大きなヒビがはいる。もう一息だ。
「砕けろ!」
反対側から駆け込んだ遥が足に電撃を纏わせ、回し蹴りを叩き込んだ。正確には胴捻り蹴りである。
とうとうへし折れた骨。巨人は思わず転倒した。
「次はそっちだ、王子! 葦原!」
「かけ声いる?」
「いらんっ」
ラーラを追いかけようとしていたもう一方の巨人。
その足下に追いついたプリンスはひとりでに手元に戻ってきたハンマーを握り込みつつエネルギー噴射で加速。
巨人の膝部分に強烈なハンマーアタックをしかけた。
がくんとバランスを崩す巨人。
赤貴は剣を握り込み、乗用車のボンネットへ駆け上ってからジャンプ。
膝関節に剣を突き立てる勢いで押し倒すと、アスファルト地面を強制的に隆起。
巨人の膝を粉砕した。
「破壊完了。いけるぞ」
「回復もまだやれる、タコ殴りにしてやれ」
そこからはまるで濁流に呑まれる虫のようだった。
なんとか手近なものを使ってプリンスや遥たちを薙ぎ払おうとする巨人たちを翻弄するかのように、四方八方から集中砲火を加えていく。
ある程度防御を固めた遥とプリンスを沈めるのは、ジャックの回復もあって容易なことではない。
巨人たちは結局、破棄された集落の中心でそれぞれ力尽き、大量の粉砕された骨となって散っていったのだった。
●
「うふふ、ごめんなさいねー。私とっても弱いので、何も出来ずにやられてしまいましたー」
ココノはひしゃげた軽トラックのすぐそばで発見された。
発見時の様子を詳しく書くことははばかられるが、生物と認識するのは困難なほどのやられようだったという。
それも今ではすっかり元通りだ。
「皆さんとってもお強いんですねー。勉強になりますー」
「おいココノ! お前らおかしいよ!」
そんなココノに掴みかかるジャック。
「なんだよ『玉串の巫女』って、死ぬのが仕事みたいじゃねえか! 人間は機械じゃねえんだ! 金じゃ命は買えないんだよ!」
「あのー」
ココノは心から困ったような顔をした。
「私ー、ファイヴの人間なので、あちらのことは分かりませんよー」
「うるせえ! そんな人間ばっかの非道な組織なら! 俺らが! これから事け――!」
叫ぶジャックの頭を、ココノが胸に抱いた。ジャックは必死に抵抗するが、頭を一ミリたりとも動かせない。
「はいー。なんだかよくわからないですけどー、落ち着きましょうねー。私は皆さんの仲間でー、玉串の巫女とはまーったく関係ありませんよー」
「……」
その様子を黙って見る遥。
彼の肩をプリンスがぽんと叩いた。
「うらやましい?」
「にゃにぎゃ!?」
「でもなーんか萌えないんだよねーあの巫女」
プリンスはそうとだけ言って、用意した花を近くのかけた地蔵のそばに置いた。
回復した禊とたまきが覗き込んできた。
「お参りですか?」
「んー」
「相手、神社の方ですよね。お地蔵様って仏教じゃ」
「八百万なんでしょ。それに知り合いにいい地蔵知ってるし」
「あ、うん……」
よくわからない顔で頷く禊たち。
一方で、ラーラがなぜかココノに頭を下げていた。まだホールドしたままのジャックを赤貴が引っこ抜いて回収している。
「……ああ、わかった」
プリンスはココノの横顔を一瞥して、目を瞑った。
「彼女、こういうときに涙の一つも出さないんだ。だから萌えないんだ」
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
