≪体育祭≫うぉーたーきゃばるりーばとる!
●うぉーたーきゃばるりーばとる!
五麟学園体育祭。学生以外の参加も認められる文字通りのお祭り騒ぎ。梅雨の湿気を吹き飛ばさんとばかりに行われる大運動会である。
その競技の一つが学園のほぼ中央に位置する屋内プールを使う「水上騎馬戦」だ。ルールは簡単。数人で馬を作り、騎手の着けているハチマキを奪うか騎手を落とせば勝ちである。
たまに九郎判官よろしく馬を飛び移ったり色々とハプニングが起こったりするが……まあ、それはそれだ。
お祭り騒ぎは、楽しんだもの勝ちである。
●ポロリはあるのか? どうなんだ!?
「んしょ、っと」
水瀬 珠姫(nCL2000070)は軽く食い込んでいた水着の裾と肩紐を直し、体を解す様に捻る。学生用に長く使われてきたデザインの水着に身を包んだ珠姫は、特に気負っている様子は無い。
「よし、楽しみますか!」
勝敗に拘る事は無い。これは、お祭り騒ぎなのだ。
五麟学園体育祭。学生以外の参加も認められる文字通りのお祭り騒ぎ。梅雨の湿気を吹き飛ばさんとばかりに行われる大運動会である。
その競技の一つが学園のほぼ中央に位置する屋内プールを使う「水上騎馬戦」だ。ルールは簡単。数人で馬を作り、騎手の着けているハチマキを奪うか騎手を落とせば勝ちである。
たまに九郎判官よろしく馬を飛び移ったり色々とハプニングが起こったりするが……まあ、それはそれだ。
お祭り騒ぎは、楽しんだもの勝ちである。
●ポロリはあるのか? どうなんだ!?
「んしょ、っと」
水瀬 珠姫(nCL2000070)は軽く食い込んでいた水着の裾と肩紐を直し、体を解す様に捻る。学生用に長く使われてきたデザインの水着に身を包んだ珠姫は、特に気負っている様子は無い。
「よし、楽しみますか!」
勝敗に拘る事は無い。これは、お祭り騒ぎなのだ。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.水上騎馬戦に参加しよう!
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
・屋内プールで行われる騎馬戦です。PCだけで馬を作るもよし、名無しのモブと馬を作るもよし、です。騎手が落ちるかハチマキを取られると負けですが勝敗はあまり気にせず楽しみましょう。
・非覚醒状態で参加して下さい。
・ドキドキトラブルハプニングもあるかも? でも過度にえっちなのはいけません。
●参加NPC
・水瀬 珠姫(nCL2000070):選手として参加。モブ馬の騎手。にぎやかしです。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記願います。グループ参加の場合、参加者全員が【グループ名】をプレイング冒頭につけてください。記載する事で個別のフルネームとIDを書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
6日
6日
参加費
50LP
50LP
参加人数
16/30
16/30
公開日
2016年06月29日
2016年06月29日
■メイン参加者 16人■

●
「さあ、ボクの騎馬になってくれるひと募集中ですよ!」
プール備え付けの更衣室で着替えを終え、とりあえず出場登録はしたものの騎馬を組めていないという一団の中に財城 真珠(CL2001434)の姿があった。
ふふーん、と笑いながら話し掛けてくれるのを待つ真珠だが、驚くほど誰も近付こうとしない。それに気が付いた真珠は僅かな逡巡の後にまた喋り始めた。
「いやいや、そんなに遠慮しなくても良いんですよ。少しくらいの無礼は不問としますから!」
何処が如何なったらそういう結論に至るのかはさておき、この様子では騎馬が組めるようになるにはもう暫くかかるだろう。
「ねぇ君♪ 良かったら私と組んで騎馬戦してみない?」
「ん? ああ……組む相手も決めずに来たが、仕事での知己に誘ってもらえるのはありがたいな」
学校行事に公序良俗ギリギリのビキニタイプの水着を着てくる魂行 輪廻(CL2000534)が組む相手に決めたのは葦原 赤貴(CL2001019)であった。
やや前屈みになって胸元を強調する輪廻とあくまで年上の女性として扱う赤貴の姿に女子との触れ合いを求めて参加している男性陣の視線が集う。
「水上での騎馬戦も、体育祭自体への参加も、初めての事なので楽しみですが、少し緊張してしまいますね……」
誰も組もうとせず涙目になり始めた真珠の後ろでは打ち合わせをするウル・イング(CL2001378)の姿があった。
馬となるのは女子との触れ合いやハプニングを期待していた卓球部の三人組だが、セーラータイプのアウターとハーフパンツ型の水着を着たウルの性別が解らず戸惑っているようであった。
「ハチマキとは、なんだか格好悪いな。頭につけなきゃダメかい?」
「白部サン、その水着可愛い、可愛いんスけど、騎馬戦でビキニって大丈夫なんスか……?」
ハチマキを可愛らしく頭の上でリボン結びにする白部 シキ(CL2000399)に馬の一人である朝永 恵(CL2001289)が疑問を呈する。
ただでさえ接触や衝突、それに伴う各種ハプニングが予想される水上騎馬戦だ。更にそちらを主目的としている面々も居る以上、そこに脱げやすいビキニで参戦するのは中々に度胸が要るだろう。
「大丈夫だよ、スタイルには自信があるからね」
確かに人目に晒しても目汚しになる事は無いだろうが、それは大丈夫と言っても良いのだろうか?
「んしょっと!」
常日頃からインナーとしてピンク地のスクール水着を着ているリリス・スクブス(CL2001265)はわざわざ更衣室を使わず、馬を組んでいない一団の中でスポンと上着のセーラー服を脱ぎ捨てていた。
「……ナーンーデー! またあの娘なのデスカリョージィーーーー!」
各々が適当に騎馬を組んでいる中、リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)の押し殺した叫びが僅かに洩れていた。
その視線の先には柳 燐花(CL2000695)と組んでいる天明 両慈(CL2000603)の姿があり、今見つかれば脳内で咄嗟に組んだプランが使えなくなると判断したからであった。
「うー……! 最近、両慈を狙ったライバルが増えすぎてマスヨ……! コレハ一大事デース!! 何としても、両慈を取り戻すのデース! そこのモブでも誰でも良いノデ、私と騎馬戦してクダサイ!」
即座に踵を返して適当な男子生徒を捕まえるリーネ。組んだ生徒の方は運良く女子と組めた感動でモブ呼ばわりされた事は耳に入っていなかった。ご愁傷さまである。
●
「騎馬戦がこういう種目だったとは……重かったらすみません」
「……いや、燐花は気にする事はない。それよりやるからには全力で当たれ、敵には俺の知り合いも居る…油断すると酷い目に遭うかもしれんぞ」
「はい。しかし泳げないし落ちる訳には……」
「……お前、泳げないのにこれに参加したのか?」
「猫憑きだからか、水は苦手なのです。重ねて申し訳なく」
何だかんだと騒いでいたリーネを見つけていた両慈とまさかのカナヅチが判明した燐花は徐々に迫るリーネを前に最後の相談に入っていた。
両慈はいざとなればしがみつけと言うが、流石にそれは恥ずかしいのかどうすると明言は避ける燐花。そんなこんなの内にリーネを乗せた馬が眼前にやってきてしまう。
「両慈ーー!! 私が勝ったら、今度こそデートして貰いマスネー!!」
「チッ、やはりリーネは俺を狙って来るな……えぇいうるさい! 貴様は俺の気持ちを少しは理解しろ…!」
やはりと言うか痴話喧嘩の様相を呈してきたが、実際にリーネの猛攻を防いでいるのは燐花である事は忘れてはいけない。
「私が狙うのはハチマキにあらず! 今日お兄ちゃんお姉ちゃん達が気合入れて履いてる水着達なの!」
瞳に怪しい光を灯す瀬織津・鈴鹿(CL2001285)は何やらとんでもない事を言っているが、一体何がどうしてこうなってしまったのか。
ともあれパンティ脱がすの術―――奪衣術の特訓の一環として水着を狙っているという事か。馬に密着して身を潜めているが、馬も馬で鼻息が荒い。どこまでも怪しい一団であった。
「あいどるなのに、なんで騎馬戦やらなきゃいけないの? こう……可愛い水着着て、歌ってる方がいいんだけどなぁ。テンションが―――、」
はぁ、と溜息をついて肩を落とす楠瀬 ことこ(CL2000498)。確かに最近そんな番組見ないなと馬の面々が考えていると、ことこは一騎の馬をロックオンしていた。
視線の先には銀髪を靡かせる榊原 時雨(CL2000418)の姿。どうやら時雨もことこを見つけたらしく、一直線に移動することこの馬を見つめている。
「じゃあ、とりあえずことこさんから鉢巻を……」
「時雨ぴょん! ハチマキと水着、取られるならどっちがいい? ことこ優しいから、選択肢をあげるからきめてー!」
「どっちもお断りやというか、鉢巻と水着を天秤にかけとる時点で優しいも何もあらへんわ!」
ビシリと指を差して割ととんでもない事を言うことこに時雨が即座にツッコミを入れる。当たり前と言えば当たり前である。
「え? どっちも嫌?」
「当然や……さて、覚悟はえぇやろか?」
ニヤリと笑って競技モードに入った時雨と冷や汗を垂らすことこ。この後暫く追いかけっこをする二騎の馬が居たとか居なかったとか。
「うぇぇぇぇぇぇん!!!!」
「大丈夫かしらねん? 私は見ての通りのスタイルで身体も君より大きいから……大変よん?」
「大丈夫だ、そのくらいできるよう、鍛えている」
その言葉の通り、ガッチリと鍛え上げられた赤貴の肉体は体格差のある輪廻であろうと危なげなく抱えられている。
しかし、胸やら太腿やらを赤貴に押し付けつつ馬の後方を作る男子生徒を挑発する事も忘れない輪廻は流石と言った所か。
「ふふ、じゃぁ頑張ってどんどん倒して行きましょうか♪」
「ああ、ハイバランサーで足元を安定させ―――ッ!? なにをしてっ、くっつきすぎだ!」
そんな挑発も動き出すまでは大丈夫だったが、一度崩れればあっという間に赤貴は輪廻に手玉に取られてしまう。
先程からやたらと密着してくるがそういう人だった、と納得した赤貴は龍心を使ってでもこの騎馬戦を戦い抜く事を決めていた。
「味方の弄りで崩れるなど、意地でもするか!」
……それでも頭上の柔らかさに気を取られてしまうのは、赤貴が男であるが故か。
「まあ、可愛い馬に乗れて楽しいよ。気楽にいこうじゃないか、恵くん」
「かわ……? うっす、頑張ります!」
「恵くんは気合い十分だね。頼りにしているよ」
とりあえず楽しもうというシキと気合いの入った恵が対照的な騎馬だが、その割にはウマが合っているようだ。騎馬だけに。
「取っ組みあいなんていらないんです。後ろからハチマキパクって逃げまくってれば勝ちですよ! この間やったゲームでも奇襲は基本だった!」
「うんうん。取っ組み合いなんていうのは、私の趣味じゃないよ」
二人はそう言いながら、またもこっそりとハチマキを一つ奪うのだった。
「最後まで残れるといいな……」
喧噪から少し離れたウルが呟く。馬となった面々はもう性別とかどうでもいいんじゃないかと新たな扉を開きかけていた。
「ちゃーんす……えいっ!」
「わぁっ!?」
そこに背後からリリスが飛び掛かる。セーラー服を脱ぎ捨てたリリスと水着として着込んだウルの戦いが始まっていた。
が、馬の面々がどこか解り合った様子で微妙に間合いを外しているのでお互いに決定打が与えられない。物凄く良い笑顔の確信犯であった。
「この水着で良かったかもしれないわね……自前のビキニだと絶対脱げてたわ」
騎手として参加していたシルフィア・カレード(CL2000215)は前回の水着コンテストで使用したフロントジッパー水着を着用していた。が、詰めるモノが大き過ぎて閉まらないという異常事態に陥っていた。
「ん? どうかしたの? ほら、今はそれよりも前進よ!」
しかしそんな事は気にせず先頭の馬の男子生徒の頭に胸を乗せるように体重をかけ、前へ進むように指示をする。
「えっへへー、もーらいっ!」
その近くで他の馬に飛び移ってハチマキを奪うという荒業を披露しているのは御白 小唄(CL2001173)だ。また一つ戦利品を増やした小唄の視線に入ったのは幸せ顔の男子生徒―――ではなく、その上に乗ったシルフィアである。
「隙ありー!」
また新たな戦いが始まろうとしていたが、先頭の馬は今、楽園に居る事だろう。
「さあモブの皆さん! 突撃です!」
人数合わせで呼ばれた運動部の方々で組まれた馬に乗った真珠がビシリとポーズを決める。その目尻に何かが流れた様な跡があるのは秘密である。
「あ、ちょっと! 皆さん! 別の方向に動いたら! モブと呼んだ事は謝りますから!」
真珠と組んだラグビー部の屈強な馬は何故かシルフィアと小唄が戦っている所へ突っ込んでいく。やはり胸か。胸なのか。
「うぬぬぬぬ……」
「リーィーネーさんっ?」
「……ヘ? いきなりナンむぎゅ?」
「あっ……!?」
遂に手四つの形になったリーネと燐花だが、その均衡は十夜 八重(CL2000122)の介入によりあっさりと崩れてしまう。
八重はリーネの背後からハチマキを取った上で肩を叩き、振り向いた頬に指をめり込ませる。スピード型の燐花はリーネの振り向きの巻き添えを食う形でバランスを崩し、あえなく落水してしまっていた。
「ふふ、油断大敵ですよ?」
「ず、ずるいデース! か、返してください八ー重ーサーンー!?」
八重が奪ったハチマキを見せつけるように揺らすと、取られた事に気が付いたリーネはまるで子供の様に拳を振って八重へ駄々をこねる。
リーネの方が年齢も身長も上だが、どこか幼く見えるのは本人の気質による物か。馬となった男子生徒達はそんな哲学的な事を揺れる双丘を眺めながら考えるのであった。
「ご迷惑おかけします……」
「……大丈夫か? しがみ付けと言った筈だ、泳げないのに変な遠慮をするんじゃない」
一方で元々遠慮していた部分があったのか、あっさりと落ちてしまった燐花を両慈が横抱きにする。所謂お姫様抱っこというやつである。
「ああ、怖かったか? すまないな……」
「うぅ……」
水中という事もあり、両慈は脚を抱えていた腕を抜いて燐花の頭を撫でる。リーネに見つかればまた一悶着ありそうな場面だが、幸いにも気付かれていないようだ。
「おわぁっ!? っく、このっ!」
「むむ、おっぱいすごいの……私もいつかあんな風になるの」
鈴鹿の標的となったのは喧騒から離れて様子を見ていた水瀬 珠姫(nCL2000070)であった。リリスの着ている物と似た白パイピングのスクール水着を着ていた珠姫だったが、太い肩紐の水着よりは脱がしやすい事に変わりはない。
肩紐が降ろされるのと同時に低い背丈の割に大きな胸が零れ落ちる。慌てて水着を戻すも、振り返った時には既に鈴鹿の馬は遠く離れている。完璧な犯行であった。
「お、おのれぇ……!」
「よっと……中々、難しいわねもっと早く……!」
「はっ、とっ、ほっ! お、女の人相手はちょっとやり辛いかも……」
気炎と共にシルフィアへと向かった小唄だったが、鈴鹿によって色々と現在進行形で曝け出されている輪廻と並んで女性らしさムンムンのシルフィアはどうしても女性を意識してしまうのか攻め手が弱い。
と、ここで膠着していた戦況を変える一手が訪れる。屈強な暴走馬に乗った真珠が突撃してきたのだ。
「フギャー!?」
「きゃあ!?」
「わぁっ!?」
身を乗り出していた小唄とシルフィアはバランスを崩し、余波によって真珠が吹き飛ばされていく。そちらはそちらで落ちた先に居たシキのビキニに指が引っ掛かったりとミラクルはあったのだが、今はシルフィアと小唄である。
「えっ、あっ、わっ……柔らかい……じゃなくて、ごめんなさいっ!」
「きゃっ、ちょっと何処触ってるのよ……!」
もにょんと表すべきか、ふにゃんと表すべきか。いや、これは一言で表すならば「ぱふぱふ」である。すっぽりと隙間に顔が収まっていた。何のとは言わないが。
●
―――斯くして、一部の面々に壮絶な疲労感を与えながらも水上騎馬戦は終わりを告げる。
その中で明確な勝者が居るとすれば、双丘の揺れ動く様を間近で眺め、嬌声に耳を澄まし、時に触れ合った男子生徒達だろう。
「さあ、ボクの騎馬になってくれるひと募集中ですよ!」
プール備え付けの更衣室で着替えを終え、とりあえず出場登録はしたものの騎馬を組めていないという一団の中に財城 真珠(CL2001434)の姿があった。
ふふーん、と笑いながら話し掛けてくれるのを待つ真珠だが、驚くほど誰も近付こうとしない。それに気が付いた真珠は僅かな逡巡の後にまた喋り始めた。
「いやいや、そんなに遠慮しなくても良いんですよ。少しくらいの無礼は不問としますから!」
何処が如何なったらそういう結論に至るのかはさておき、この様子では騎馬が組めるようになるにはもう暫くかかるだろう。
「ねぇ君♪ 良かったら私と組んで騎馬戦してみない?」
「ん? ああ……組む相手も決めずに来たが、仕事での知己に誘ってもらえるのはありがたいな」
学校行事に公序良俗ギリギリのビキニタイプの水着を着てくる魂行 輪廻(CL2000534)が組む相手に決めたのは葦原 赤貴(CL2001019)であった。
やや前屈みになって胸元を強調する輪廻とあくまで年上の女性として扱う赤貴の姿に女子との触れ合いを求めて参加している男性陣の視線が集う。
「水上での騎馬戦も、体育祭自体への参加も、初めての事なので楽しみですが、少し緊張してしまいますね……」
誰も組もうとせず涙目になり始めた真珠の後ろでは打ち合わせをするウル・イング(CL2001378)の姿があった。
馬となるのは女子との触れ合いやハプニングを期待していた卓球部の三人組だが、セーラータイプのアウターとハーフパンツ型の水着を着たウルの性別が解らず戸惑っているようであった。
「ハチマキとは、なんだか格好悪いな。頭につけなきゃダメかい?」
「白部サン、その水着可愛い、可愛いんスけど、騎馬戦でビキニって大丈夫なんスか……?」
ハチマキを可愛らしく頭の上でリボン結びにする白部 シキ(CL2000399)に馬の一人である朝永 恵(CL2001289)が疑問を呈する。
ただでさえ接触や衝突、それに伴う各種ハプニングが予想される水上騎馬戦だ。更にそちらを主目的としている面々も居る以上、そこに脱げやすいビキニで参戦するのは中々に度胸が要るだろう。
「大丈夫だよ、スタイルには自信があるからね」
確かに人目に晒しても目汚しになる事は無いだろうが、それは大丈夫と言っても良いのだろうか?
「んしょっと!」
常日頃からインナーとしてピンク地のスクール水着を着ているリリス・スクブス(CL2001265)はわざわざ更衣室を使わず、馬を組んでいない一団の中でスポンと上着のセーラー服を脱ぎ捨てていた。
「……ナーンーデー! またあの娘なのデスカリョージィーーーー!」
各々が適当に騎馬を組んでいる中、リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)の押し殺した叫びが僅かに洩れていた。
その視線の先には柳 燐花(CL2000695)と組んでいる天明 両慈(CL2000603)の姿があり、今見つかれば脳内で咄嗟に組んだプランが使えなくなると判断したからであった。
「うー……! 最近、両慈を狙ったライバルが増えすぎてマスヨ……! コレハ一大事デース!! 何としても、両慈を取り戻すのデース! そこのモブでも誰でも良いノデ、私と騎馬戦してクダサイ!」
即座に踵を返して適当な男子生徒を捕まえるリーネ。組んだ生徒の方は運良く女子と組めた感動でモブ呼ばわりされた事は耳に入っていなかった。ご愁傷さまである。
●
「騎馬戦がこういう種目だったとは……重かったらすみません」
「……いや、燐花は気にする事はない。それよりやるからには全力で当たれ、敵には俺の知り合いも居る…油断すると酷い目に遭うかもしれんぞ」
「はい。しかし泳げないし落ちる訳には……」
「……お前、泳げないのにこれに参加したのか?」
「猫憑きだからか、水は苦手なのです。重ねて申し訳なく」
何だかんだと騒いでいたリーネを見つけていた両慈とまさかのカナヅチが判明した燐花は徐々に迫るリーネを前に最後の相談に入っていた。
両慈はいざとなればしがみつけと言うが、流石にそれは恥ずかしいのかどうすると明言は避ける燐花。そんなこんなの内にリーネを乗せた馬が眼前にやってきてしまう。
「両慈ーー!! 私が勝ったら、今度こそデートして貰いマスネー!!」
「チッ、やはりリーネは俺を狙って来るな……えぇいうるさい! 貴様は俺の気持ちを少しは理解しろ…!」
やはりと言うか痴話喧嘩の様相を呈してきたが、実際にリーネの猛攻を防いでいるのは燐花である事は忘れてはいけない。
「私が狙うのはハチマキにあらず! 今日お兄ちゃんお姉ちゃん達が気合入れて履いてる水着達なの!」
瞳に怪しい光を灯す瀬織津・鈴鹿(CL2001285)は何やらとんでもない事を言っているが、一体何がどうしてこうなってしまったのか。
ともあれパンティ脱がすの術―――奪衣術の特訓の一環として水着を狙っているという事か。馬に密着して身を潜めているが、馬も馬で鼻息が荒い。どこまでも怪しい一団であった。
「あいどるなのに、なんで騎馬戦やらなきゃいけないの? こう……可愛い水着着て、歌ってる方がいいんだけどなぁ。テンションが―――、」
はぁ、と溜息をついて肩を落とす楠瀬 ことこ(CL2000498)。確かに最近そんな番組見ないなと馬の面々が考えていると、ことこは一騎の馬をロックオンしていた。
視線の先には銀髪を靡かせる榊原 時雨(CL2000418)の姿。どうやら時雨もことこを見つけたらしく、一直線に移動することこの馬を見つめている。
「じゃあ、とりあえずことこさんから鉢巻を……」
「時雨ぴょん! ハチマキと水着、取られるならどっちがいい? ことこ優しいから、選択肢をあげるからきめてー!」
「どっちもお断りやというか、鉢巻と水着を天秤にかけとる時点で優しいも何もあらへんわ!」
ビシリと指を差して割ととんでもない事を言うことこに時雨が即座にツッコミを入れる。当たり前と言えば当たり前である。
「え? どっちも嫌?」
「当然や……さて、覚悟はえぇやろか?」
ニヤリと笑って競技モードに入った時雨と冷や汗を垂らすことこ。この後暫く追いかけっこをする二騎の馬が居たとか居なかったとか。
「うぇぇぇぇぇぇん!!!!」
「大丈夫かしらねん? 私は見ての通りのスタイルで身体も君より大きいから……大変よん?」
「大丈夫だ、そのくらいできるよう、鍛えている」
その言葉の通り、ガッチリと鍛え上げられた赤貴の肉体は体格差のある輪廻であろうと危なげなく抱えられている。
しかし、胸やら太腿やらを赤貴に押し付けつつ馬の後方を作る男子生徒を挑発する事も忘れない輪廻は流石と言った所か。
「ふふ、じゃぁ頑張ってどんどん倒して行きましょうか♪」
「ああ、ハイバランサーで足元を安定させ―――ッ!? なにをしてっ、くっつきすぎだ!」
そんな挑発も動き出すまでは大丈夫だったが、一度崩れればあっという間に赤貴は輪廻に手玉に取られてしまう。
先程からやたらと密着してくるがそういう人だった、と納得した赤貴は龍心を使ってでもこの騎馬戦を戦い抜く事を決めていた。
「味方の弄りで崩れるなど、意地でもするか!」
……それでも頭上の柔らかさに気を取られてしまうのは、赤貴が男であるが故か。
「まあ、可愛い馬に乗れて楽しいよ。気楽にいこうじゃないか、恵くん」
「かわ……? うっす、頑張ります!」
「恵くんは気合い十分だね。頼りにしているよ」
とりあえず楽しもうというシキと気合いの入った恵が対照的な騎馬だが、その割にはウマが合っているようだ。騎馬だけに。
「取っ組みあいなんていらないんです。後ろからハチマキパクって逃げまくってれば勝ちですよ! この間やったゲームでも奇襲は基本だった!」
「うんうん。取っ組み合いなんていうのは、私の趣味じゃないよ」
二人はそう言いながら、またもこっそりとハチマキを一つ奪うのだった。
「最後まで残れるといいな……」
喧噪から少し離れたウルが呟く。馬となった面々はもう性別とかどうでもいいんじゃないかと新たな扉を開きかけていた。
「ちゃーんす……えいっ!」
「わぁっ!?」
そこに背後からリリスが飛び掛かる。セーラー服を脱ぎ捨てたリリスと水着として着込んだウルの戦いが始まっていた。
が、馬の面々がどこか解り合った様子で微妙に間合いを外しているのでお互いに決定打が与えられない。物凄く良い笑顔の確信犯であった。
「この水着で良かったかもしれないわね……自前のビキニだと絶対脱げてたわ」
騎手として参加していたシルフィア・カレード(CL2000215)は前回の水着コンテストで使用したフロントジッパー水着を着用していた。が、詰めるモノが大き過ぎて閉まらないという異常事態に陥っていた。
「ん? どうかしたの? ほら、今はそれよりも前進よ!」
しかしそんな事は気にせず先頭の馬の男子生徒の頭に胸を乗せるように体重をかけ、前へ進むように指示をする。
「えっへへー、もーらいっ!」
その近くで他の馬に飛び移ってハチマキを奪うという荒業を披露しているのは御白 小唄(CL2001173)だ。また一つ戦利品を増やした小唄の視線に入ったのは幸せ顔の男子生徒―――ではなく、その上に乗ったシルフィアである。
「隙ありー!」
また新たな戦いが始まろうとしていたが、先頭の馬は今、楽園に居る事だろう。
「さあモブの皆さん! 突撃です!」
人数合わせで呼ばれた運動部の方々で組まれた馬に乗った真珠がビシリとポーズを決める。その目尻に何かが流れた様な跡があるのは秘密である。
「あ、ちょっと! 皆さん! 別の方向に動いたら! モブと呼んだ事は謝りますから!」
真珠と組んだラグビー部の屈強な馬は何故かシルフィアと小唄が戦っている所へ突っ込んでいく。やはり胸か。胸なのか。
「うぬぬぬぬ……」
「リーィーネーさんっ?」
「……ヘ? いきなりナンむぎゅ?」
「あっ……!?」
遂に手四つの形になったリーネと燐花だが、その均衡は十夜 八重(CL2000122)の介入によりあっさりと崩れてしまう。
八重はリーネの背後からハチマキを取った上で肩を叩き、振り向いた頬に指をめり込ませる。スピード型の燐花はリーネの振り向きの巻き添えを食う形でバランスを崩し、あえなく落水してしまっていた。
「ふふ、油断大敵ですよ?」
「ず、ずるいデース! か、返してください八ー重ーサーンー!?」
八重が奪ったハチマキを見せつけるように揺らすと、取られた事に気が付いたリーネはまるで子供の様に拳を振って八重へ駄々をこねる。
リーネの方が年齢も身長も上だが、どこか幼く見えるのは本人の気質による物か。馬となった男子生徒達はそんな哲学的な事を揺れる双丘を眺めながら考えるのであった。
「ご迷惑おかけします……」
「……大丈夫か? しがみ付けと言った筈だ、泳げないのに変な遠慮をするんじゃない」
一方で元々遠慮していた部分があったのか、あっさりと落ちてしまった燐花を両慈が横抱きにする。所謂お姫様抱っこというやつである。
「ああ、怖かったか? すまないな……」
「うぅ……」
水中という事もあり、両慈は脚を抱えていた腕を抜いて燐花の頭を撫でる。リーネに見つかればまた一悶着ありそうな場面だが、幸いにも気付かれていないようだ。
「おわぁっ!? っく、このっ!」
「むむ、おっぱいすごいの……私もいつかあんな風になるの」
鈴鹿の標的となったのは喧騒から離れて様子を見ていた水瀬 珠姫(nCL2000070)であった。リリスの着ている物と似た白パイピングのスクール水着を着ていた珠姫だったが、太い肩紐の水着よりは脱がしやすい事に変わりはない。
肩紐が降ろされるのと同時に低い背丈の割に大きな胸が零れ落ちる。慌てて水着を戻すも、振り返った時には既に鈴鹿の馬は遠く離れている。完璧な犯行であった。
「お、おのれぇ……!」
「よっと……中々、難しいわねもっと早く……!」
「はっ、とっ、ほっ! お、女の人相手はちょっとやり辛いかも……」
気炎と共にシルフィアへと向かった小唄だったが、鈴鹿によって色々と現在進行形で曝け出されている輪廻と並んで女性らしさムンムンのシルフィアはどうしても女性を意識してしまうのか攻め手が弱い。
と、ここで膠着していた戦況を変える一手が訪れる。屈強な暴走馬に乗った真珠が突撃してきたのだ。
「フギャー!?」
「きゃあ!?」
「わぁっ!?」
身を乗り出していた小唄とシルフィアはバランスを崩し、余波によって真珠が吹き飛ばされていく。そちらはそちらで落ちた先に居たシキのビキニに指が引っ掛かったりとミラクルはあったのだが、今はシルフィアと小唄である。
「えっ、あっ、わっ……柔らかい……じゃなくて、ごめんなさいっ!」
「きゃっ、ちょっと何処触ってるのよ……!」
もにょんと表すべきか、ふにゃんと表すべきか。いや、これは一言で表すならば「ぱふぱふ」である。すっぽりと隙間に顔が収まっていた。何のとは言わないが。
●
―――斯くして、一部の面々に壮絶な疲労感を与えながらも水上騎馬戦は終わりを告げる。
その中で明確な勝者が居るとすれば、双丘の揺れ動く様を間近で眺め、嬌声に耳を澄まし、時に触れ合った男子生徒達だろう。
