あれやこれやの大忙し
【FiVE村】あれやこれやの大忙し


●やること沢山!
 さーて今月のファイヴ村は?
・ベンが地区代表に立候補。対抗候補者との選挙バトル。
・古妖や住民が家を求めてやってきすぎる問題。
・畑の出荷量が足りない。大規模拡張計画。
 ――の、三本です!

●ベンさんと選挙
「政界にオレちゃんが~? クルウウウウウウウウ!?」
 星形サングラスをつけたアフロのアロハシャツ男が史上最強にウザいポーズで壇上にたった。
 彼の名はベン。先月ごろから村人になった準ニートである。
 顔を覆って震えるスーツ姿の男。藤原・陣といいマルチコーディネーターを生業としている。村人からは気さくにジンさんと呼ばれていた。
 ジンはネクタイを締め直して顔を苦くした。
「絶対無理ですよ。いくらプリンスさんに言われたからって政治に介入なんて……」
「でもファイヴ村、イイ感じなんショ?」
「それは、まあ」
 ジンはタブレットPCに目を落とした。
 ファイヴの表だった活動もあってか村人は日に日に増加し、住民の比率からして地区代表候補を選出できるまでになっていた。
「とはいっても、隣接した二つの地域を含めての選出です。対抗馬が二人もいるんですよ」
 一人は曲辰・耕二郎。大規模な農業経営によって古くから地元に根付いている名家の男だ。旧ファイヴ村の元村長とは犬猿の仲だったと聞く。
 もう一人は逸見・さゆり。漁業組合をまとめる家の娘で、女性の権利と漁師への待遇改善を武器にのし上がった女性政治家である。
 ちなみにベンはというと。
「コンプライアンス? チョベリグなエブリデイかな!」
 対抗馬が一人もいなかったとしても無理そうな気がする。
 しかし地区代表になれれば基本的人権すら認められていない古妖住民の権利獲得を狙えるし、道路や水道といった行政頼りの工事に資金を回せるかもしれない。
 恒久的に村を維持発展するにはかなり強いカードになるだろう。 
「事務処理や基本的な活動はサポートできます。けど戦略やアイデアに関しては……ファイヴの皆さんを頼るしか……!」
 ジンは胃薬を取り出し、飲み干した。

●受け入れ形態の改善を要する
 ファイヴ村の古妖代表・辰巳はいい意味で働かないリーダーである。
 大抵のことは『ならばよし』で許してくれるし、大抵の問題は『本人たちの問題だ』といってスルーパスしてくれる。
 一見無責任に見えて、統率よりも平穏を重視する姿勢はなんだかんだいって別の生き物どうしである古妖たちのトラブルをかなり防いでくれていた。
 『古妖との共存』という方針には言葉イメージの一万倍くらい無理さがあるので、フラフラしている辰巳には適任だったのかもしれない。
「人でない我が、衛士や検非違使の輩になるとはな……」
「何言ってるかわからんが、そろそろ手をつけないといけない問題が出てきたでごわす」
 割と仲がいい大工のゲンさんが資料をどっさり持ってきた。露骨に嫌そうな顔をする辰巳。
「面倒な仕事はしたくない」
「そんなこと言うとウィーのコントローラー隠すでごわすよ」
「チッ……!」
 辰巳、渋々。
 問題というのは、古妖や人間が村に来すぎる問題だ。
 特に古妖は『この村に来れば家も食べ物もくれると聞いた』といって頼ってくる輩が急増したのだ。
「ファイヴの民が紹介した者以外来ないはずではないのか」
「『ファイヴ村がある』と教えるだけなら誰でもできるでごわす。そして来た人々を拒む理由もない。しかし家や食料をずっとタダで配り続けると村が破綻するでごわす」
「なるほど、問題だな……!」
 辰巳は立ち上がり、目元をギラリと光らせた。
「おお……!」
「ファイヴの民に任せよう!」
「おお……!?」
 辰巳はいい意味で働かないリーダーである。

●畑の大規模拡張計画
 さてこちらは畑と牧場。
 フードチェーンとの大きな取引ができて資金もできた。
 が、そのせいで出荷量が足りない。大規模拡張が必要だ。
「農家に興味を持つ若者は入ってきているが、基本的にアテにはならん。しっかりとした労働力と施設が必要ですじゃ」
 住民の多くは既に仕事がある。一部の若者たちを農家として育てるか、外から人員を入れるか。
 副村長は言う。
「そして牧場を拡大するには新たに山側の土地を買い取ればいいが、あそこは全く整備されとらん。手を加えないと商売にならんですじゃ」
 畑と牧場の経営は一筋縄じゃない。
 アイデアを活かして資金力につなげるのだ。


■シナリオ詳細
種別:シリーズ
難易度:簡単
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.ベンさんで選挙に出よう
2.住民受け入れ体勢を見直そう
3.畑と牧場を大規模に拡張しよう
●現在のファイヴ村
 テーマ:古妖と共存する村
 村名:マックス村(別名ファイブ村)
 建物:役場、集会場、妖怪長屋、民家数軒、すねこすり小屋、畑(中規模)、山羊牧場(中規模)
 一般住民:副村長、ゲンさん(大工)、ベンくん(ニート)、アマゾネス(酪農警備員)、他少数
 古妖住民:ぬりかべ、一反木綿、青女房、辰巳、一つ目小僧、すねこすり、木の子

 水道光熱:最低限維持(住民が増えています。恒久的な整備が必要です)
 セキュリティ:覚者1チームくらいなら撃退可能
 食糧自給:問題なし
 資金源:すねこすり移動動物園(グッズ販売のみ)、小僧の豆腐屋、山羊牧場(小)、畑の野菜(安定供給可能)、五華への大口出荷。

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 色々やってきた結果対応する問題も増えてきたようです。
 細かいところは住民がおのおの頑張っていますので、村の管理者である皆さんは大きい問題に立ち向かいましょう。
 要点をそれぞれまとめます。

●選挙
・出るのはベン。地区代表選挙という7月の選挙に向けて活動する。
・対抗馬は資金力のある農家と人脈の深い漁家。このままでは負けてしまうかも。勝負できる材料を探すのだ!
・今回やるのはアピール活動。街頭演説やチラシ配り。イベントの開催などで対抗馬と勝負しよう。
・古妖は大抵人間じゃないので税金払ってませんし人権もありません。が、ジンさんがいうには地区代表になって『古妖特区』という申請を国にすればいくつかの政治的有利がとれるそうです。

●受け入れ体勢
・実は管理者(シリーズ参加者)でないファイヴ覚者が古妖に村を紹介するケースが発生し始めている。村的には断わる理由はないので、ルールの見直しが必要だ。
・古妖ばかり誘い続けた結果村を古妖の保護施設だと勘違いする輩が出始めた。制限するか、器を広げるか。はたまたこの状況自体を利用してしまうかだ。
・とりま妖怪長屋が手狭に。難民住居みたくコンテナハウスならすぐに用意できるらしいが……。

●畑と牧場
・資金は確保したので、より高い資金力を得るために拡張しよう。
・山側の荒れた土地を買収。ここに畑と牧場を作ろう。ちゃんとした従業員も必要だ。
・実は以前のシリーズ回で山の調査をしているので適切な土質であることは保証済みだ。

 例によって分担制をお勧めします。二つ以上掛け持ちするとプレイングが必然的に薄くなる上、よそと被って出番自体消失するおそれがあります。
 相談してうまくそれぞれの問題を解決しましょう。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
(0モルげっと♪)
相談日数
9日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年07月01日

■メイン参加者 8人■

『正義のヒーロー』
天楼院・聖華(CL2000348)
『希望を照らす灯』
七海 灯(CL2000579)
『天使の卵』
栗落花 渚(CL2001360)
『涼風豊四季』
鈴白 秋人(CL2000565)
『田中と書いてシャイニングと読む』
ゆかり・シャイニング(CL2001288)

●村に光を!
「ようこそ、ここが俺たちのマックス村だぜ!」
 『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)は両手を腰に当てて、えっへんと胸を張った。
 軽トラ三台がかりでやってきた工事作業員たちが、物珍しそうに村を見回している。
「現代社会において、電気の無い場所に未来は無い! 発展には電気が必須だぜ!」
 と、ここで一度時間を止めて、詳しい説明をしておこう。
 聖華は13歳にとって究極の大金である百万円の束を持って近隣の電気工事会社へ突撃。持てる限りの全てのボキャブラリーとボディランゲージでもってとにかく電気をひけねーかと頼み込んだ結果、まずとんでもない現実にぶち当たった。
『で、電柱が一本よんじゅうまんえん!?』
 設置から電線工事コミコミで考えると、村に電柱を二本さしただけで百万円に羽が生えて飛んでいくというのだ。
 そんなーと言って膝から崩れ落ちた聖華だが、そこは13歳女子。若さは無限のバネである。水道工事のおっさんを捕まえてまたもボキャブラリーの限りを駆使した結果、下水を二軒くらい引くと百万円が『たのしかった、ぜ……』とかいいながら消えていく事実が発覚。
『ひゃくまんえん、たいきんじゃなかったのか……』
 早くも経済の世界を片鱗だけでも知ってしまった聖華はスンスン泣きながら帰ることに……なると思ったか! 13歳女子をなめるなよ!
 折角プレイング全振りしてくれたんだから――じゃなくて、聖華の必死なアピールに心打たれたおっさんたちが、マンパワーだけならタダでいいと言って知識と体力の限りを尽くしてくれることになったのだ。
 ここでわかった重要ないくつかのこと。
 まずファイヴ村(もしくはマックス村)は村全域をファイブが所有しているため、電気水道を張り巡らせるには遊園地なんかと同じで自腹をきる必要があるということ。この問題は政治的に解決が可能だということ。
 おっさんの調べでは古い井戸水源が埋まっていること。これを気合いで掘り返せば水源を確保できるし、古い下水ラインを廃材なんかを利用して修復すればギリギリ使えるということだった。
 ここまで分かればあとは気合いだ。
「やるぞー!」
「「おー!」」
 残った百万ぶち込んで発電機を購入し、彼女たちは電気と水道をグレードアップしたのだった。

「という、お話でした」
 『田中と書いてシャイニングと読む』ゆかり・シャイニング(CL2001288)はすっかり村の役所代わりと化した集会場で、自治会の班長さんやら古妖代表の辰巳さんやらを集めて色々な説明をしていた。
 人が増えると説明も必要になる。いずれは百人規模に達しようかというこの村では、人を動かすだけでも一苦労だった。
 そんな中、ゆかりが担当したのは古妖の移住問題である。
「まずオーナー八人の総意として、なるべく受け入れは拒否したくありません」
「確かにのう。しかし」
「保護するだけでは村が回らん」
「はい、そこで……!」
 ホワイトボードを叩くゆかり。
「移住希望の方と面接して『村の一員として何かしらの仕事をする意志があるか』『どんなふうに役に立てるか』を審査します!」
「「おお……」」
 どよめく一同を両手で制する。
「勿論、能力の有無は問題じゃありません。意志があれば受け入れます。畑仕事や出荷の袋詰めといった普通の作業にだって人手は沢山いりますしね」
「では、誤解してしまった人々への対応は?」
「誤解には説明。これにつきます」
 『希望峰』七海 灯(CL2000579)が代わってボードの前に立った。
「トラブルが起きないように、これまでの活動の趣旨をまとめたパンフレットを作ろうと思います。識字能力に左右されにくいように、写真やイラストを多めにして」
「はい辰巳さんカメラ目線くださーい」
 撮影を始めるゆかり。嫌そうな辰巳。
「夕飯ハンバーグ!」
「はんばあぐ!?」
 目をギラリとした決め顔の辰巳をばっちり納めた。
 写真はそれだけではない。灯が集めてきた村の写真をボードにぺたぺた貼り付けていく。
「これと同時に、ファイヴにも広報誌を作る予定です。ファイヴ村が何を目的としているのか、受け入れるにはどういったことをお願いする必要があるのか」
 勿論これは灯たちが自力でやらねばならないし、自力だから意味のあることだ。
 具体的かつメタ視点で言うと、『こもれび』の『ブリーフィングルーム』を活用してファイヴの古妖受け入れ条件の拡大と、そのために何をお願いしたいかを掲示(書き込み)するということだ。できる限りのサポートはするが、かなりリアルな挑戦になってくるだろう。
「人が増えればできることも沢山増えます。皆さんで力を合わせて、よい村にしていきましょう」
 盛大な拍手のもと、今月の集会は幕を閉じ、宴会へとシフトした。

 宴会で出てきたのは村の作物をメインに使った多くの料理である。
 鈴白 秋人(CL2000565)は従業員たちと一緒に料理を運びながら説明を始めた。
「村には青女房さんをはじめとして家事能力のある古妖や人がいるんだ。勿論これから入ってくる人々の中にも、そういった人は居ると思う」
 秋人は彼なりに色々な商品を開発してみたが、商品開発を専門にする人もいるかもしれない。いずれはそういった分野を任せて、更に上の次元から運営に携わることができるだろう。
「今の目標は商品の質と量の引き上げだ。出荷が可能なくらい野菜があるから、野菜を中心としたメニューを練習して、ゆくゆくはレストランを開く」
「れすとらんとは……食堂のようなものか。ついに、外から民を呼び込むのだな?」
 辰巳がハンバーグに箸をつけながら決め顔で言った。
「今、牧場の開拓も進んでる。食肉にするにはもっと上の方の山を拓く必要があるし、(ト殺を含めた)食肉工場とも連携しなきゃいけない。けど見込みはあると思うよ」
 秋人の提案は飲食業を中心とした村の事業拡大である。今後はこの分野を専門に村から頼りにされることだろう。
 専門といえば……。
「山の方は、どうなっているかな」

 秋人は山での出来事を思い出していた。
 『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)や協力してくれる大工のゲンさんや作業員たちと共に、彼らは山へと入っていったのだ。
「重機を使って山を開くのって、相当な自然破壊よねえ。生活のためとはいえ、罪悪感があるわ」
「気にすることないんだモ」
 そう応えたのは、直径1メートル程のゲル状物体である。ファイヴ村の噂を聞きつけてやってきた古妖の一人で、特に何もできないが住むところが欲しいというたぐいだ。
 とはいえそれがネコでも蜂でも、人間じゃないというだけで人間にはできない作業が可能だ。彼には細かい危険物の取り除きや粉末の飛散などの防止をしてもらっている。
「木も土も石も自然の一部なら、人間も自然の一部だモ。海が岩を削るように、木々が土を押すように、人が土を掘っているだけだモ。それを気に病んでいるのは、きっと人間だけだモ」
「スケールも人並みじゃないのね。でも、そう言ってくれると助かるわ」
 エメレンツィアは術式の水流で乾燥土を一挙に湿らせ、重機を用いてひっぺがすという作業を地道に続けている。覚者の能力はそれだけ(何をかは分からないが)消耗するので、エメレンツィアも疲労困憊といった様子だ。
「けれど、随分できてきたわ」
「そうだね。畑に、牧場……」
 エメレンツィアの提案したのは山の川沿いに米の田んぼを作ることだった。それに加えて段々畑を作成し、水路を有効に活用していく。気候的にも麦の栽培が難しくないらしい。専門知識はあえて省くが、いくつかの工夫をすることで同時に栽培ができるのだ。
 元村人たちはここまで畑を拡大したことはなかったし、畑を広げるという発想じたいしたことが無かったようで、子供のようにはしゃいでいた。
 そしてもう一つは牧場だ。秋人は柵で覆った牧場地帯を作成し、山羊と鶏、そして牛の育成を始めた。
 牛は乳牛としては勿論、食肉としての牛も育てたい。食肉はかなりリスクは高いが売れば一頭が億単位の金になるハイリスクハイリターンな商売だ。専門知識をもったアマゾネスとの協力関係がものを言うだろう。
 だがそんな中で、新たな発見もあった。
 どうやら山の上側。そして探索していないほどの奥地には妖が発生している地帯があるらしいのだ。
 妖らしく人類が立ち入り次第襲いかかるのだが、臆病なタイプらしくその場から出てこない。更に言えば、妖の発生によって土地所有者が手放したがっているという話だ。
 これらを討伐することで、さらなる土地の拡大が見込めるかもしれない。
 勿論、そんな事情を抱えているのは山側だけの話ではないのだが……。

 一方その頃。
「五華から話を持ってきたからには、出荷不足がおきないように責任をもってがんばらないと」
 『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)は村の畑を広げてエアルーム野菜に挑戦していた。
 なんか新しい言葉っぽく聞こえるが、割と昔からある栽培方法の一種である。まあ方法というか、昔から受け継がれてきている苗からちょっと普通とは変わった野菜ができるというもので、ガーデニングを趣味にするおっさんが恐ろしくでかいキュウリを毎年くれる現象の発展系と思って頂きたい。
 肝心なのはその苗集めなのだが、周辺農家にとっても売れ行きの良い在来品種は生命線なのでそうそう譲ってはくれなかったが、村の栽培事業に協力してもよいという農家を一件確保し、まずはトマト栽培から始めている。
 簡単だけど拡大すると一家離散級のリスクがあるとおなじみのトマトだが、辰巳先生のいるファイヴでは失敗リスクがとても小さい。
 これに併せて、渚は農業関係の知識を持った人々の募集を始めた。
 農業系の高校を出た若者や小規模な農業経営をしている人々などだ。
 ファイヴ村にはさりげに『大きな覚者組織が定期的に見に来る』というメリットがあるので、これを魅力的に思う農業関係者は少なくないだろう。
 30年前で言うところの『猟友会が定期的に熊を撃ってくれる』と同じイメージだ。
 これが知識の伝達は発達につながれば、尚のこと良い。
 (※普段あまり意識しないが、ファイヴは研究機関であると同時に大学である)
「ここに人や古妖が沢山来て、それぞれが仕事を見つけて発展させられる村に、なったらいいな」

●村から政治家を!
「ほら、頭でかいけど中に何も入ってないね! 民のみんなの声を入れるために、開けて置いたのさ!」
 『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)はむき出しの脳みそがメロンパン入れになってる脳みそだけ妖怪『トリビアの民』(命名プリンス)をパカパカしながら子供たちに見せびらかしていた。仮想ベン脳である。
 その横でベンが謎の古代言語を操りながら『チョベリグ!』とか言っている。
「さあどうぞ、触ってみてくれ。ふわもこだろう? ふわもこはいいだろう?」
 横では『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)がいつくしむ目ですねこすりをなで回し、子供たちに手渡している。
 元々ファイヴ村の興行収入を得るために始めた『すねっこキャラバン』は地方でいい感じの人気があり、どうすればより人気が出るかを新生ぬりかべ団(すねっこキャラバン担当)が日夜研究した結果、イベントコンパニオンとしてかなりの優秀さをもつようになっていた。
 これで何をしているのかというと。
「で、こっちがベンだよ! 次の選挙の立候補者だよ!」
「えー、うそだー」
「マジチョーマジ」
 ベンを地区代表選挙に勝たせるための、アピール活動である。

 正直に言って、この世界における地方の政治は氷河期と言っていい。
 妖ショックによって疲労した国は色々な面で民衆の支持を失い、政治の得票システムだけが宙に浮いた状態なのだ。そのため多くの人々が選挙にすら行かず、安全な場所で暮らす富裕層だけが実質的な選挙権を行使するようになった。
 結果として生まれたのは安全な富裕層を贔屓するタイプの政策であり、曲辰や逸見もそういった層を対象に選挙活動を行なっている。
 ベンはそんな政界に突如現われた、貧困層と妖被害者層へのアピール力をもった政治家なのだ。
 具体的には、これまで国が散々隠してきたせいで手がつけられなくなっている古妖の問題だ。共存可能な古妖を地区限定の住民として受け入れ、人口問題をはじめとした様々な問題を穴埋めしていくというものだ。
 なぜか選挙権すら持ってない子供と遊びまくるのも、そういった意識を根付かせるための活動である。
 夜、プリンスやゲイルたちはベンを囲んで居酒屋で反省会と言う名の飲み会をしながら語った。
「他の民は、貴公に政治家ルックさせたいみたいだけど、余はそのままでいいと思う。今の民にとってのチョベリグを貴公に聞いて貰うんだよ。多分それが今、民にも必要なことだよ」
「住む世界が思っていた世界と違ったからといって、人は死ぬことはできない」
 グラスを傾けるゲイル。
「しかし世界を変えるための発言が、世界に届くと知ったなら、人は生きていることができる」
 ゲイルたちはこれまで、人々の希望を聞いて形にし、それを膨らませ続けてきた。夢を現実に帰るシステムを自力で構築してきたのだ。
「いずれは地域から国へ、もり立てて行ければいい」

 さて、少し早いが先のことを語ろう。

 その後、地区代表選挙は思わぬ結果を見せた。
 普段投票用紙をゴミ箱に捨てていた人々がチケットを手に投票所を訪れたのだ。
 彼らが用紙に書いたのは、ベンの名前である。
 老人ホームや大手企業を丸ごと抱き込むようなことをしていた曲辰は大量の浮遊票流入に慌てふためき、だるまをかち割り祝酒を自棄飲みした。
 地元密着や社会派層の獲得に勤しんでいた逸見は本当の意味での地元民を無視していたことを痛感し、涙に暮れたという。
 そして、『チョベリグなエブリデイ!』と書かれたアホな選挙ポスターの横に、当確の花が添えられた。
「いやー、上手くいったね」
「これもふわもこの力……いや、皆の声を聞き届けた俺たちの勝利か」
「サンキュー! エブリバディサーンキュー!」
 うかれて騒ぐ選挙事務所(仮)。
 みなサンバのリズムで踊り狂っている中、泣きはらした目をした逸見が尋ねてきた。
「皆さん、どうか私に……いえ、我が町の漁民に力を貸してください!」
 これが、約一ヶ月後に訪れる漁業エリア奪還計画のきっかけであった。

●現在のファイヴ村
 テーマ:古妖と共存する村
 村名:マックス村(別名ファイブ村)
 建物:役場諸々、民家複数、仮住まい用長屋
 農業:エアルーム野菜(初歩)、再規模野菜畑、田園(米と麦)
 酪農:鶏(卵)、山羊(乳)、牛(乳)、牛(食肉)
 住民:もうすぐ百人規模
 勧誘:ぬりかべ、一反木綿、青女房、辰巳、一つ目小僧、すねこすり、木の子

 水道光熱:上下水と電気を確保。(人員が出たのでガス管工事も近々行なわれます)
 セキュリティ:覚者2班レベル
 資金源:すねこすり移動動物園(グッズ販売のみ)、小僧の豆腐屋、山羊牧場(中)、畑の野菜(安定供給可能)
 ニュース:古妖特区申請によりまずは村内の古妖に人権が付与されます。税金や奨学金利子などが免除され、道路などの公共設備に投資がなされました。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

皆さんお疲れ様でした。
次回からは色々なことがフリーハンドで動くようになるので、焦点を絞った活動ができるようになるでしょう。

また、ルールの見直しがなされたことで、ファイヴ村への勧誘がシリーズ参加者以外にも可能になります。
これらのことはこのシナリオを読まない人にはわからないので、ブリーフィングルーム等を活用して情報拡散をはかってみてください。




 
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