花嫁のドレスは赤く血に染まる
●沈黙の聖堂
そこは誰もいない聖堂。朽ち果てた教会。
かつてそこでは結婚式が行われていた。拍手の中、赤い絨毯を歩く新郎新婦。これから始まる夫婦生活を祝うための結婚式。
だがそこに、妖の群れが現れる。窓を割って入ってきた風の自然系妖の群れ。それは参列者を血飛沫にあげ、新婦を庇った新郎の首を刎ねる。新郎の身を挺した献身も空しく、風の暴威は花嫁の命をも奪い去った。
惨劇を聞いて駆けつけたAAAが妖の駆除を行ったが、総勢百人近くの命は返ってくることはない。それが二年前の話。
教会は後継者もなく、誰も買い取り手がなくなったため放置状態であった。その教会の赤じゅうたんを歩く妖が、一体。
純白のドレスは血に染まり赤く、自らの命を奪った妖を使役していた。
共に歩む伴侶はない。祝福してくれる親や友人はいない。幸せだったはずの二年間は消え、残されたのはただの妄念。
「アイシテル……」
故にそこから紡がれる言葉に意味はない。獣の咆哮のように、妖はその言葉を繰り返す。
その瞳は虚ろに。ただ一筋の体液が流れていた。
●FiVE
「――心霊系妖一体と、自然系妖四体の討伐です」
久方 真由美(nCL2000003)は悲し気に目を伏して、説明を開始する。
「心霊系妖は出血を伴う攻撃を行います。また、血飛沫を受けることで体力を回復するようです」
赤く染まったウェディングドレス。血を浴びて恍惚とした表情を浮かべる花嫁。真由美が見たのはそんな未来だ。
「自然系妖は竜巻のような姿をしています。知性はなく、ただ近くにいる者に切りかかる程度の本能しかありません。風鳴りで心を揺さぶってきますが、その程度です」
竜巻と言ってもその姿は赤く染まっており、視認することはできる。
「妖達は教会から出て、街を歩く未来が予知されています。そうなれば、多くの犠牲者を生むでしょう」
それは伴侶を探しての行動か。それとも妖としての本能か。街に出た妖は人を襲い、ドレスはさらに赤く染まる。その悲劇は回避せねばならない。
覚者達は顔を見合わせて、会議室を後にした。
そこは誰もいない聖堂。朽ち果てた教会。
かつてそこでは結婚式が行われていた。拍手の中、赤い絨毯を歩く新郎新婦。これから始まる夫婦生活を祝うための結婚式。
だがそこに、妖の群れが現れる。窓を割って入ってきた風の自然系妖の群れ。それは参列者を血飛沫にあげ、新婦を庇った新郎の首を刎ねる。新郎の身を挺した献身も空しく、風の暴威は花嫁の命をも奪い去った。
惨劇を聞いて駆けつけたAAAが妖の駆除を行ったが、総勢百人近くの命は返ってくることはない。それが二年前の話。
教会は後継者もなく、誰も買い取り手がなくなったため放置状態であった。その教会の赤じゅうたんを歩く妖が、一体。
純白のドレスは血に染まり赤く、自らの命を奪った妖を使役していた。
共に歩む伴侶はない。祝福してくれる親や友人はいない。幸せだったはずの二年間は消え、残されたのはただの妄念。
「アイシテル……」
故にそこから紡がれる言葉に意味はない。獣の咆哮のように、妖はその言葉を繰り返す。
その瞳は虚ろに。ただ一筋の体液が流れていた。
●FiVE
「――心霊系妖一体と、自然系妖四体の討伐です」
久方 真由美(nCL2000003)は悲し気に目を伏して、説明を開始する。
「心霊系妖は出血を伴う攻撃を行います。また、血飛沫を受けることで体力を回復するようです」
赤く染まったウェディングドレス。血を浴びて恍惚とした表情を浮かべる花嫁。真由美が見たのはそんな未来だ。
「自然系妖は竜巻のような姿をしています。知性はなく、ただ近くにいる者に切りかかる程度の本能しかありません。風鳴りで心を揺さぶってきますが、その程度です」
竜巻と言ってもその姿は赤く染まっており、視認することはできる。
「妖達は教会から出て、街を歩く未来が予知されています。そうなれば、多くの犠牲者を生むでしょう」
それは伴侶を探しての行動か。それとも妖としての本能か。街に出た妖は人を襲い、ドレスはさらに赤く染まる。その悲劇は回避せねばならない。
覚者達は顔を見合わせて、会議室を後にした。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖の全討伐
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
六月の花嫁。しかもドレスは特注品。
●敵情報
『血の花嫁』
心霊系妖。ランク2。物理に強くて、特殊に弱いタイプです。
二年前に教会でなくなった花嫁の亡霊です。血で赤く染まったドレスを着ています。
蛇足ですが、人間であった頃の名前は『奥村・久美』と言います。
攻撃方法
赤の刃 物近列 不可視の刃で切り裂きます。〔流血〕
紅化粧 特遠単 血を吸い上げ、体力を回復します。〔出血〕〔HP吸50〕
血の宴 P 出血系のBSを持つキャラクター数に応じて、物攻&特攻増加。
竜巻(×4)
自然系妖。ランク1。物理に強くて、特殊に弱いタイプです。
二年前に教会で討伐されたのとは別個体ですが、同能力です。偶然か、はたまた何かの因果か。
攻撃方法
風刀 物遠単 風の刃を飛ばし、切り裂いてきます。〔出血〕
風評 特遠単 風鳴りが悪口のように聞こえてきます。〔ダメージ0〕〔不安〕
●場所情報
朽ち果てた教会。周りに人はなく、また人が来る可能性も皆無です。時刻は昼。明かりや広さなどは、戦闘に支障ないものとします。
戦闘開始時、『血の花嫁』が前衛に。後衛に『竜巻(×4)』がいます。覚者達は敵前衛から10メートルの場所から開始となります。
教会に急行するため、事前付与は不可とします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年06月14日
2016年06月14日
■メイン参加者 8人■

●
朽ちた教会。手入れもされていない聖堂は埃っぽく、惨劇の跡こそ片づけられたもののそこにある空気は陰鬱な気分を生み出す。
そこに立つ赤いドレスの心霊系妖。それはこの教会でなくなった花嫁を模した妖。表情は虚ろに、ただ一人赤絨毯を歩く。
「折角愛しの人と結ばれて幸せな結婚式を迎え、これからと言う所でナンテ……こうゆうの私嫌いデース!」
教会であった惨劇を思い出し、『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)は感情的に叫ぶ。結婚式に乱入した風の妖。それが花婿花嫁を始めとした教会に居た全てを殺した事件。幸せな式は、悲劇と化したのだ。その理不尽さに、怒りを覚える。
「赤い血に染まったドレスの花嫁か」
『花守人』三島 柾(CL2001148)は花嫁の妖を見て、沈痛な顔をする。その血は花嫁自身が流した物か。あるいは庇った花婿の血か。それとも、参列した参加者の物か。凄惨な事件だったことは知っている。それを思わせるドレスの、赤。
「妖は退治するもの。それは確かだ」
何かを堪えるように『落涙朱華』志賀 行成(CL2000352)は薙刀を構える。どういう経緯で現れたにせよ、妖は討たねばならない。ここを逃せば惨劇は広がる。それは避けなければならないのだ。
(犠牲者を生む前に排除させていただきます)
神具を構えて『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)が妖の前に立ちふさがる。死後、妖化するという事例は、少ないが存在する。だがその妖がその人間の魂なのかはわからない。確実なのは、犠牲者を増やしてはいけないという事だ。
「災害のようなものとは言えやりきれないわね」
花嫁の背後に控える旋風の妖を見ながら春野 桜(CL2000257)は静かに口を開く。人間であった自分を殺した妖。幸せな未来を壊した妖。それを従えるのは、執念なのだろうか。復讐なのだろうか。どちらでも構わない。やるべきことは、変わらないのだから。
「愛する人を失った悲しみ、自分が自分でなくなった悲しみ。今、終わらせてあげますね……」
真っ赤なドレスの妖を見ながら天野 澄香(CL2000194)は決意を示す。家族を亡くした澄香は、何かを失うという気持ちに強く共感できる。愛する人の命を失った悲しみ。その喪失感で涙を流す妖。その涙を見るたびに、心が痛む。
「その魂を花婿さんの元に送ってあげますね」
祈るように、願うように。賀茂 たまき(CL2000994)は悲しそうに花嫁を見て、瞑目する。愛し合った二人の門出を襲った惨劇。そして二年間も別れてしまった魂。その悲しみは想像する事すらできない。
「私がその道程を照らします。私の旗が、あなたを先導します」
ばさぁ、と旗を振るい『ハルモニアの幻想旗衛』守衛野 鈴鳴(CL2000222)は戦場を見る。その旗に掲げた思いは『人々の幸せ』。もう二人は幸せな夫婦に戻れないけど、せめて愛する人への道を示そう。その為に鈴鳴は旗を振るう。
赤いドレスの妖が、覚者に向かい歩き出す。それに従うように赤い竜巻の妖も動く。
それぞれの思いを胸に、覚者達は妖に立ち向かう。
●
「……終わらせないとな」
拳を強く握りしめ、柾は妖に迫る。花嫁を視界に入れて、いたたまれない気分になる。死んだ人間が妖になる。そこにどれだけの思いがあるのだろうか? 幸せの絶頂から惨劇に落とされた思いの結果なら、それは終わらせなければならない。
源素を激しく燃やし、身体に熱を送る。熱は柾の体内を激しく駆け巡り、力となる。しっかり腰を下ろして拳を突き出す。不可視の衝撃が花嫁ではなく、その後ろに控える風の妖を激しく揺さぶった。
「効かない、というほどではないらしいな。このまま攻めるぞ」
「相手はランク1。防御の優劣があるとはいっても、たいした差ではないみたいね」
言いながら桜が手のひらに花を形成する。花の生み出す特殊な香りが花嫁を刺激し、その体を弱体化させる。その瞳は妖という敵を見る目。彼女が人を殺める前に、彼女の手がが本当の意味で血に染まる前に、ここで殺そうという目。
花嫁を弱らせたのちに、桜の瞳は背後の竜巻を見る。冷たく暗い瞳に宿るのは殺意ではない。相手の『死』が当然と思っている目。まな板の上にある食材を斬るように、桜は敵の命を奪う。死んで私の糧と成れ。敵だから死んで当然だ。
「敵であるなら、敵になるしかないのなら殺す殺すわ殺しましょう」
「アタックフォームデスネ!」
陰鬱な空気を払おうと、元気よくリーネが声をあげる。やりきれないのは間違いない。それをどうすることもできないのも確かだ。ならば、せめてどうにかできる部分は明るくいこう。それがリーネという覚者だ。
手のひらに水の源素を集めながら、大きく息を吸い込む。力強く叩きつける荒波をイメージしながら、呼気と共に水を解き放った。水はリーネのイメージ通りに形を変えて、激しい水流が竜巻の妖に叩き込まれる。
「ここで倒すのは『武士の情け』デスネ!」
「違うような、あっているような……」
苦笑しながらたまきが呪符を構える。体内で土の源素を循環させながら、鈴鳴と視線を合わせて符を広げた。狙うは背後の旋風の妖。前に立つ花嫁は特に妨害しないのだろう。たまきの攻撃を止めようともしない。
「いきます! 鈴鳴さん!」
「はい、たまきちゃん」
鈴鳴の旗が翻る。同時に発生した氷の槍が、花嫁とその背後の妖を貫くように突き進む。一瞬花嫁の視界を奪った氷が消えれば、そこにたまきの姿があった。前に踏み出し、強く穿つ。強い気迫が力となり、妖の動きを封じ込める。
「傷ついた人は私が癒します」
青と白のカラーガード衣装に身を包んだ鈴鳴は、そのまま回復の為の源素を練り上げる。危険の前に立ち、平和のために歌う。その為の衣装。袖を通したその日から、平和の為に歌い続けようと誓った証でもあった。
回転させるように旗を振るい、高らかに鈴鳴は歌う。真っ直ぐに背を伸ばし威風堂々と、それでいて相手を威圧することのない柔らかな表情。回復の術式を乗せた歌声が、覚者の傷を癒していく。心を鼓舞し、体を癒す交響衛士の歌。
(相手が連携しないなら、各個撃破を優先できるように意識していきましょう)
連携することのない妖達をみて誡女が動く。回復を行う鈴鳴が狙われるなら彼女を守ることを考えたが、どうやら杞憂に終わったようだ。使い慣れない神具を手にしながら、しかし戸惑うことなく攻撃に移る。
霧を使って相手を妨害しながら、誡女は相手を深く観察する。相手を出血させるたびに強くなる花嫁。その強化具合は予想を超えていた。多くの覚者が血を流せば、前衛を一掃される可能性もある。読み上げソフトを起動させ、危機を仲間に伝える。
『どうやら出血でかなり強化されるようです。私は優先して止血に回ります』
「分かった。こちらは予定通り風の妖を殲滅する」
水の力で自然治癒力を高めながら、行成は薙刀を振るう。花嫁の前に立ち、その背後の妖を討つべく薙刀を振るっていた。妖となった花嫁。そこに自分の経験を重ねてしまう。倒さなければならないとわかっていても。そんなことに意味はないとわかっていても。
薙刀を振りかぶり、力を籠める行成。足を踏みしめ、腰をねじり、両手でしっかりと薙刀を握りしめる。込めた力を一気に開放するように、鋭い突きを放った。精度を上げた月が妖を貫く。確かな手ごたえが、薙刀を通して伝わってきた。
「無に帰れ、妖」
「ええ。ここで終わらせます!」
タロットカードを手に澄香が口を開く。そこに書かれた番号は十四。調和、自制、節度、献身を示すアルカナ。大天使が盃から盃に水を移す姿は、錬金術の基礎である融合を示しているという。神具化したそれは澄香の術式を大きくサポートしてくれる。
カードを手に、花嫁を指差す澄香。その足元から蔦が伸び、花嫁に絡まった。蔦の刺が花嫁を傷つけ、蔦そのものが花嫁の動きを阻害する。それでもなお悲鳴すら上げずに愛を囁く姿は、むしろ痛々しくあった。
「……その言葉は、貴女を待ってる相手の所で言ってあげて」
ここに花嫁を迎え受ける人はいない。だから彼女はここに居ていい理由はない。
「アイシテル……」
妖の言葉は空しく、教会内に響き渡っていた。
●
花嫁が動くたびに覚者は血を流し、そして血に染まることで妖自身が強化される。
風の妖が心を乱し、自然治癒能力を阻害する。それにより長く出血し、妖の強化は維持される。
その連鎖を止める意味もあるのだろう。覚者達の標的は風の妖に集中していた。元よりランク1の妖だ。鍛えられた覚者の猛攻を前に、長く耐えられるものではない。
だがそのわずかな間に、花嫁はその猛威を振るった。
「……っ! まだ、です!」
「問題ナイデスネ!」
たまきとリーネが不可視の刃で傷つき、命数を削られる。
「貴女は、ここにいるべきじゃ、ありません……!」
花嫁を狙う澄香も、反撃とばかりに受けた攻撃で命数を失った。
「この刃は空気形成か? 空気の刃……斬撃……まさか」
行成は花嫁の刃を解析しようとして、頭を巡らせる。そして一つの結論にたどり着いた。これは彼女の心的障害の表れなのだ。愛する人の首を刎ねられた心の傷が生み出すスキル。愛する人との最後の思い出。行成は静かに思考を止める。つらい思い出を振り払うように。
「殺されて仇を従えたあなた。生き延びて仇を見失った私。まだ私の方がマシ、なのかしらね」
桜は自分と花嫁を重ねていた。共に愛する人を失った女性。違いは互いの生死と仇の有無。どちらがマシかと比べることにきっと意味はない。どのみち敵は倒すのだから。でも思わずにはいられない。重ねずにはいられない。それが人を愛するという事だから。
「これでトドメです!」
たまきが全身を硬化させ、風の妖にとどめを刺そうと力を籠める。その隙を逃さぬと風の妖はたまきを倒そうと風の刃を放つ。矢次に放たれる風の刃。傷ついたたまきがこれに耐えられる道理はない。が、それを守るように鈴鳴の旗が翻る。
「大丈夫、私が護ります」
癒しの術式を乗せた旗を翻らせる鈴鳴。それがたまきの傷を癒し、風刃の中でも膝を折らずにいさせることができた。たまきはそのまま踏み出し、硬化した肉体を風の妖にぶつける。強い絆により生まれた一撃を受けて、風の妖は消滅した。
『これで心を乱されて自然治癒能力を阻害されることはありません』
読み上げソフトを使って仲間に状況を伝える誡女。残るはランク2の妖のみ。花嫁が弱いとは言わないが、風の妖がいなくなったことでその脅威は大きく減少した。皆に傷を癒しながら、次に相手の弱体化。それが自分の役割。
「妖に負けないで。貴女の愛する気持ちを利用されないで」
戦いの最中、澄香は花嫁にずっと語り掛けていた。妖と意思疎通はできない。そうと分かっていても言葉は止まらなかった。『彼女』を無味乾燥な敵として倒すことは、澄香にはできなかった。言葉に如何なる思いが込められているのか。
「解放しなきゃな。もうこれ以上、苦しまないように。もうこれ以上、泣かないように」
柾は強く拳を握りしめ、花嫁に立ち向かう。涙を流し、愛を語る花嫁。愛する人が殺された瞬間で、『彼女』の時は止まっているのだ。ここで因果を絶ち、止まった時計を動かさなくてはいけない。もはや、それしかできないのだから。
「新郎さんの元へ送って差し上げマショウネ……」
憂いを含んだ声。リーネはライフルを構え、花嫁に向ける。ここに花嫁が愛するパートナーはいない。だから送らなくては。せめてあの世では幸せになれますように。祝福の念を込めて、ライフルのトリガーを引いた。
「デア セーゲン!」
天の恵みを。その意味を込めて放たれた弾丸が妖の眉間に命中をする。天国で愛しい人と祝福されますように。
「アイシテ……ル」
何かを抱くように両手を広げ、赤いドレスの妖は霧が晴れるように消滅した。
●
朽ちた教会。戦い終わった覚者達は、自分達の傷を癒してFiVEに連絡する。
勝利を喜ぶ声はない。戦いに高揚する声はない。朽ちた教会の静謐を崩さぬように、事務的な作業以外の音は響かない。
「……出来ればこうなる前に止めたかった所デスガ、せめてお花でも添えて行って良いデスカ?」
最初に口を開いたんは、リーネだった。明るく活発的なリーネだが、今回の花嫁には思う所があるのだろう。何処かしんみりとしていた。反対する声はない。皆、その言葉を皮切りに、弔いの為に動き出す。
(……これで、何が変わるわけでもないですが)
言葉なく花を添える誡女。花を添えるだけで、科学的に何か変わるわけではない。研究者として意味のない行動だが、それでもその行動を止めることはなかった。変わらずとも、それでいい。新郎新婦に祝福を。
(彼女の魂も、旦那様の魂も、もうここには残っていないのですね……)
たまきは霊と交信する術を使い、結婚式を挙げようとした。だが、ここにはその魂がない。……それはきっと喜ぶべきことなのだ。魂が現世にとどまらず、あるべきところに帰ったのだから。きっと赤いドレスではなく、純白の姿で彼の元に向かったのだから。
「どうか……安らかな眠りについてください、久美さん」
覚醒状態を解除し、祈りを捧げる鈴鳴。惨劇に見舞われ、命を落とした花嫁。その魂が迷いませんように。祈る手は小さく、神秘的な力を持たぬただの祈り。だがその想いは強く、心の底から彼女の安寧を願っていた。天国で新郎さんに巡り逢えますように。
「愛の言葉は貴女を待ってる相手の所で言ってあげて。きっと彼も待ってますよ」
花嫁が消えた場所で手を合わせて、祈る澄香。愛している。その声が届かぬ場所で呟き続けていた花嫁。その言葉が彼の元に届きますように。死は二人を別ったけど、また巡り合えるならそれは救いなのかもしれない。
「…………」
桜は両手を合わせて膝をつき、祈りを捧げていた。救われなかった彼女の為に。自分自身の救いはまだ遠いけど、歩き続ければいつかは届く。だから自分の為には祈らない。あの花嫁が少しでも救われるように、静かに手を合わせた。
「妖は退治すべきもの。だが……妖化する前の者の人生がなかったことにはならない」
瞳を閉じ、行成が口を開く。妖を退治することに異存はない。だが、その妖が生まれる経緯や意味を蔑ろにはしたくない。死人は蘇らない。悲劇は変えられない。……そんなことはわかっていても。それでも思わずにはいられないのだ。
「おやすみ。奥村久美」
柾の声が朽ちた教会に響き渡る。その声に応える声はない。それは奥村がもうこの場に居ないことを示していた。言葉の残響が消え去り、教会は静謐に戻る。朽ちた教会に赤いドレスの妖はもう現れない。愛を囁く孤独な花嫁は、もういない。
その静謐を崩さぬように、覚者達は教会を後にした。
後日――
教会を買い取って利用しようとする案があったが、教会を残すことで残留思念が生まれる可能性を考慮し、取り壊すことになった。供養をきちんと行い、その後の解体作業となる。まあ、朽ちそうな教会の立て直しや維持費を計算して、予算的に『NO!』となった可能性もなきにもあらずなのだが。
供養の際に、職員は教会内にある白いブーケに気づく。誰かがここで死んだ花嫁の為に捧げたブーケだ。
陽光がステンドグラスから差し込み、淡い光がブーケを照らす。
それは天が結婚式を祝福するような、そんな錯覚を思わせる幻想的な風景だった。
朽ちた教会。手入れもされていない聖堂は埃っぽく、惨劇の跡こそ片づけられたもののそこにある空気は陰鬱な気分を生み出す。
そこに立つ赤いドレスの心霊系妖。それはこの教会でなくなった花嫁を模した妖。表情は虚ろに、ただ一人赤絨毯を歩く。
「折角愛しの人と結ばれて幸せな結婚式を迎え、これからと言う所でナンテ……こうゆうの私嫌いデース!」
教会であった惨劇を思い出し、『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)は感情的に叫ぶ。結婚式に乱入した風の妖。それが花婿花嫁を始めとした教会に居た全てを殺した事件。幸せな式は、悲劇と化したのだ。その理不尽さに、怒りを覚える。
「赤い血に染まったドレスの花嫁か」
『花守人』三島 柾(CL2001148)は花嫁の妖を見て、沈痛な顔をする。その血は花嫁自身が流した物か。あるいは庇った花婿の血か。それとも、参列した参加者の物か。凄惨な事件だったことは知っている。それを思わせるドレスの、赤。
「妖は退治するもの。それは確かだ」
何かを堪えるように『落涙朱華』志賀 行成(CL2000352)は薙刀を構える。どういう経緯で現れたにせよ、妖は討たねばならない。ここを逃せば惨劇は広がる。それは避けなければならないのだ。
(犠牲者を生む前に排除させていただきます)
神具を構えて『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)が妖の前に立ちふさがる。死後、妖化するという事例は、少ないが存在する。だがその妖がその人間の魂なのかはわからない。確実なのは、犠牲者を増やしてはいけないという事だ。
「災害のようなものとは言えやりきれないわね」
花嫁の背後に控える旋風の妖を見ながら春野 桜(CL2000257)は静かに口を開く。人間であった自分を殺した妖。幸せな未来を壊した妖。それを従えるのは、執念なのだろうか。復讐なのだろうか。どちらでも構わない。やるべきことは、変わらないのだから。
「愛する人を失った悲しみ、自分が自分でなくなった悲しみ。今、終わらせてあげますね……」
真っ赤なドレスの妖を見ながら天野 澄香(CL2000194)は決意を示す。家族を亡くした澄香は、何かを失うという気持ちに強く共感できる。愛する人の命を失った悲しみ。その喪失感で涙を流す妖。その涙を見るたびに、心が痛む。
「その魂を花婿さんの元に送ってあげますね」
祈るように、願うように。賀茂 たまき(CL2000994)は悲しそうに花嫁を見て、瞑目する。愛し合った二人の門出を襲った惨劇。そして二年間も別れてしまった魂。その悲しみは想像する事すらできない。
「私がその道程を照らします。私の旗が、あなたを先導します」
ばさぁ、と旗を振るい『ハルモニアの幻想旗衛』守衛野 鈴鳴(CL2000222)は戦場を見る。その旗に掲げた思いは『人々の幸せ』。もう二人は幸せな夫婦に戻れないけど、せめて愛する人への道を示そう。その為に鈴鳴は旗を振るう。
赤いドレスの妖が、覚者に向かい歩き出す。それに従うように赤い竜巻の妖も動く。
それぞれの思いを胸に、覚者達は妖に立ち向かう。
●
「……終わらせないとな」
拳を強く握りしめ、柾は妖に迫る。花嫁を視界に入れて、いたたまれない気分になる。死んだ人間が妖になる。そこにどれだけの思いがあるのだろうか? 幸せの絶頂から惨劇に落とされた思いの結果なら、それは終わらせなければならない。
源素を激しく燃やし、身体に熱を送る。熱は柾の体内を激しく駆け巡り、力となる。しっかり腰を下ろして拳を突き出す。不可視の衝撃が花嫁ではなく、その後ろに控える風の妖を激しく揺さぶった。
「効かない、というほどではないらしいな。このまま攻めるぞ」
「相手はランク1。防御の優劣があるとはいっても、たいした差ではないみたいね」
言いながら桜が手のひらに花を形成する。花の生み出す特殊な香りが花嫁を刺激し、その体を弱体化させる。その瞳は妖という敵を見る目。彼女が人を殺める前に、彼女の手がが本当の意味で血に染まる前に、ここで殺そうという目。
花嫁を弱らせたのちに、桜の瞳は背後の竜巻を見る。冷たく暗い瞳に宿るのは殺意ではない。相手の『死』が当然と思っている目。まな板の上にある食材を斬るように、桜は敵の命を奪う。死んで私の糧と成れ。敵だから死んで当然だ。
「敵であるなら、敵になるしかないのなら殺す殺すわ殺しましょう」
「アタックフォームデスネ!」
陰鬱な空気を払おうと、元気よくリーネが声をあげる。やりきれないのは間違いない。それをどうすることもできないのも確かだ。ならば、せめてどうにかできる部分は明るくいこう。それがリーネという覚者だ。
手のひらに水の源素を集めながら、大きく息を吸い込む。力強く叩きつける荒波をイメージしながら、呼気と共に水を解き放った。水はリーネのイメージ通りに形を変えて、激しい水流が竜巻の妖に叩き込まれる。
「ここで倒すのは『武士の情け』デスネ!」
「違うような、あっているような……」
苦笑しながらたまきが呪符を構える。体内で土の源素を循環させながら、鈴鳴と視線を合わせて符を広げた。狙うは背後の旋風の妖。前に立つ花嫁は特に妨害しないのだろう。たまきの攻撃を止めようともしない。
「いきます! 鈴鳴さん!」
「はい、たまきちゃん」
鈴鳴の旗が翻る。同時に発生した氷の槍が、花嫁とその背後の妖を貫くように突き進む。一瞬花嫁の視界を奪った氷が消えれば、そこにたまきの姿があった。前に踏み出し、強く穿つ。強い気迫が力となり、妖の動きを封じ込める。
「傷ついた人は私が癒します」
青と白のカラーガード衣装に身を包んだ鈴鳴は、そのまま回復の為の源素を練り上げる。危険の前に立ち、平和のために歌う。その為の衣装。袖を通したその日から、平和の為に歌い続けようと誓った証でもあった。
回転させるように旗を振るい、高らかに鈴鳴は歌う。真っ直ぐに背を伸ばし威風堂々と、それでいて相手を威圧することのない柔らかな表情。回復の術式を乗せた歌声が、覚者の傷を癒していく。心を鼓舞し、体を癒す交響衛士の歌。
(相手が連携しないなら、各個撃破を優先できるように意識していきましょう)
連携することのない妖達をみて誡女が動く。回復を行う鈴鳴が狙われるなら彼女を守ることを考えたが、どうやら杞憂に終わったようだ。使い慣れない神具を手にしながら、しかし戸惑うことなく攻撃に移る。
霧を使って相手を妨害しながら、誡女は相手を深く観察する。相手を出血させるたびに強くなる花嫁。その強化具合は予想を超えていた。多くの覚者が血を流せば、前衛を一掃される可能性もある。読み上げソフトを起動させ、危機を仲間に伝える。
『どうやら出血でかなり強化されるようです。私は優先して止血に回ります』
「分かった。こちらは予定通り風の妖を殲滅する」
水の力で自然治癒力を高めながら、行成は薙刀を振るう。花嫁の前に立ち、その背後の妖を討つべく薙刀を振るっていた。妖となった花嫁。そこに自分の経験を重ねてしまう。倒さなければならないとわかっていても。そんなことに意味はないとわかっていても。
薙刀を振りかぶり、力を籠める行成。足を踏みしめ、腰をねじり、両手でしっかりと薙刀を握りしめる。込めた力を一気に開放するように、鋭い突きを放った。精度を上げた月が妖を貫く。確かな手ごたえが、薙刀を通して伝わってきた。
「無に帰れ、妖」
「ええ。ここで終わらせます!」
タロットカードを手に澄香が口を開く。そこに書かれた番号は十四。調和、自制、節度、献身を示すアルカナ。大天使が盃から盃に水を移す姿は、錬金術の基礎である融合を示しているという。神具化したそれは澄香の術式を大きくサポートしてくれる。
カードを手に、花嫁を指差す澄香。その足元から蔦が伸び、花嫁に絡まった。蔦の刺が花嫁を傷つけ、蔦そのものが花嫁の動きを阻害する。それでもなお悲鳴すら上げずに愛を囁く姿は、むしろ痛々しくあった。
「……その言葉は、貴女を待ってる相手の所で言ってあげて」
ここに花嫁を迎え受ける人はいない。だから彼女はここに居ていい理由はない。
「アイシテル……」
妖の言葉は空しく、教会内に響き渡っていた。
●
花嫁が動くたびに覚者は血を流し、そして血に染まることで妖自身が強化される。
風の妖が心を乱し、自然治癒能力を阻害する。それにより長く出血し、妖の強化は維持される。
その連鎖を止める意味もあるのだろう。覚者達の標的は風の妖に集中していた。元よりランク1の妖だ。鍛えられた覚者の猛攻を前に、長く耐えられるものではない。
だがそのわずかな間に、花嫁はその猛威を振るった。
「……っ! まだ、です!」
「問題ナイデスネ!」
たまきとリーネが不可視の刃で傷つき、命数を削られる。
「貴女は、ここにいるべきじゃ、ありません……!」
花嫁を狙う澄香も、反撃とばかりに受けた攻撃で命数を失った。
「この刃は空気形成か? 空気の刃……斬撃……まさか」
行成は花嫁の刃を解析しようとして、頭を巡らせる。そして一つの結論にたどり着いた。これは彼女の心的障害の表れなのだ。愛する人の首を刎ねられた心の傷が生み出すスキル。愛する人との最後の思い出。行成は静かに思考を止める。つらい思い出を振り払うように。
「殺されて仇を従えたあなた。生き延びて仇を見失った私。まだ私の方がマシ、なのかしらね」
桜は自分と花嫁を重ねていた。共に愛する人を失った女性。違いは互いの生死と仇の有無。どちらがマシかと比べることにきっと意味はない。どのみち敵は倒すのだから。でも思わずにはいられない。重ねずにはいられない。それが人を愛するという事だから。
「これでトドメです!」
たまきが全身を硬化させ、風の妖にとどめを刺そうと力を籠める。その隙を逃さぬと風の妖はたまきを倒そうと風の刃を放つ。矢次に放たれる風の刃。傷ついたたまきがこれに耐えられる道理はない。が、それを守るように鈴鳴の旗が翻る。
「大丈夫、私が護ります」
癒しの術式を乗せた旗を翻らせる鈴鳴。それがたまきの傷を癒し、風刃の中でも膝を折らずにいさせることができた。たまきはそのまま踏み出し、硬化した肉体を風の妖にぶつける。強い絆により生まれた一撃を受けて、風の妖は消滅した。
『これで心を乱されて自然治癒能力を阻害されることはありません』
読み上げソフトを使って仲間に状況を伝える誡女。残るはランク2の妖のみ。花嫁が弱いとは言わないが、風の妖がいなくなったことでその脅威は大きく減少した。皆に傷を癒しながら、次に相手の弱体化。それが自分の役割。
「妖に負けないで。貴女の愛する気持ちを利用されないで」
戦いの最中、澄香は花嫁にずっと語り掛けていた。妖と意思疎通はできない。そうと分かっていても言葉は止まらなかった。『彼女』を無味乾燥な敵として倒すことは、澄香にはできなかった。言葉に如何なる思いが込められているのか。
「解放しなきゃな。もうこれ以上、苦しまないように。もうこれ以上、泣かないように」
柾は強く拳を握りしめ、花嫁に立ち向かう。涙を流し、愛を語る花嫁。愛する人が殺された瞬間で、『彼女』の時は止まっているのだ。ここで因果を絶ち、止まった時計を動かさなくてはいけない。もはや、それしかできないのだから。
「新郎さんの元へ送って差し上げマショウネ……」
憂いを含んだ声。リーネはライフルを構え、花嫁に向ける。ここに花嫁が愛するパートナーはいない。だから送らなくては。せめてあの世では幸せになれますように。祝福の念を込めて、ライフルのトリガーを引いた。
「デア セーゲン!」
天の恵みを。その意味を込めて放たれた弾丸が妖の眉間に命中をする。天国で愛しい人と祝福されますように。
「アイシテ……ル」
何かを抱くように両手を広げ、赤いドレスの妖は霧が晴れるように消滅した。
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朽ちた教会。戦い終わった覚者達は、自分達の傷を癒してFiVEに連絡する。
勝利を喜ぶ声はない。戦いに高揚する声はない。朽ちた教会の静謐を崩さぬように、事務的な作業以外の音は響かない。
「……出来ればこうなる前に止めたかった所デスガ、せめてお花でも添えて行って良いデスカ?」
最初に口を開いたんは、リーネだった。明るく活発的なリーネだが、今回の花嫁には思う所があるのだろう。何処かしんみりとしていた。反対する声はない。皆、その言葉を皮切りに、弔いの為に動き出す。
(……これで、何が変わるわけでもないですが)
言葉なく花を添える誡女。花を添えるだけで、科学的に何か変わるわけではない。研究者として意味のない行動だが、それでもその行動を止めることはなかった。変わらずとも、それでいい。新郎新婦に祝福を。
(彼女の魂も、旦那様の魂も、もうここには残っていないのですね……)
たまきは霊と交信する術を使い、結婚式を挙げようとした。だが、ここにはその魂がない。……それはきっと喜ぶべきことなのだ。魂が現世にとどまらず、あるべきところに帰ったのだから。きっと赤いドレスではなく、純白の姿で彼の元に向かったのだから。
「どうか……安らかな眠りについてください、久美さん」
覚醒状態を解除し、祈りを捧げる鈴鳴。惨劇に見舞われ、命を落とした花嫁。その魂が迷いませんように。祈る手は小さく、神秘的な力を持たぬただの祈り。だがその想いは強く、心の底から彼女の安寧を願っていた。天国で新郎さんに巡り逢えますように。
「愛の言葉は貴女を待ってる相手の所で言ってあげて。きっと彼も待ってますよ」
花嫁が消えた場所で手を合わせて、祈る澄香。愛している。その声が届かぬ場所で呟き続けていた花嫁。その言葉が彼の元に届きますように。死は二人を別ったけど、また巡り合えるならそれは救いなのかもしれない。
「…………」
桜は両手を合わせて膝をつき、祈りを捧げていた。救われなかった彼女の為に。自分自身の救いはまだ遠いけど、歩き続ければいつかは届く。だから自分の為には祈らない。あの花嫁が少しでも救われるように、静かに手を合わせた。
「妖は退治すべきもの。だが……妖化する前の者の人生がなかったことにはならない」
瞳を閉じ、行成が口を開く。妖を退治することに異存はない。だが、その妖が生まれる経緯や意味を蔑ろにはしたくない。死人は蘇らない。悲劇は変えられない。……そんなことはわかっていても。それでも思わずにはいられないのだ。
「おやすみ。奥村久美」
柾の声が朽ちた教会に響き渡る。その声に応える声はない。それは奥村がもうこの場に居ないことを示していた。言葉の残響が消え去り、教会は静謐に戻る。朽ちた教会に赤いドレスの妖はもう現れない。愛を囁く孤独な花嫁は、もういない。
その静謐を崩さぬように、覚者達は教会を後にした。
後日――
教会を買い取って利用しようとする案があったが、教会を残すことで残留思念が生まれる可能性を考慮し、取り壊すことになった。供養をきちんと行い、その後の解体作業となる。まあ、朽ちそうな教会の立て直しや維持費を計算して、予算的に『NO!』となった可能性もなきにもあらずなのだが。
供養の際に、職員は教会内にある白いブーケに気づく。誰かがここで死んだ花嫁の為に捧げたブーケだ。
陽光がステンドグラスから差し込み、淡い光がブーケを照らす。
それは天が結婚式を祝福するような、そんな錯覚を思わせる幻想的な風景だった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
どくどくです。
赤いウェディングドレスって普通にある事実を知って、少しもにょった。
事件の後処理的な依頼でしたが、だからこその心情的なプレイングでした。
その上でしっかりした戦略の為、思ったよりも覚者側の被害が大きくならなかったです。
……ええ、妖は連携なんて取りませんよ。こんな経緯ですから。
ともあれお疲れ様です。先ずは傷を癒してください。
それではまた、五麟市で。
赤いウェディングドレスって普通にある事実を知って、少しもにょった。
事件の後処理的な依頼でしたが、だからこその心情的なプレイングでした。
その上でしっかりした戦略の為、思ったよりも覚者側の被害が大きくならなかったです。
……ええ、妖は連携なんて取りませんよ。こんな経緯ですから。
ともあれお疲れ様です。先ずは傷を癒してください。
それではまた、五麟市で。
