≪百・獣・進・撃≫猪突猛進!
●AAAからの依頼
『F.i.V.E.』の会議室へとやってきた覚者達。
そこには、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)と、AAAの制服を着た男が1人ソファに座っていた。
「AAAの三等殿じゃな。組織を代表して、依頼を持ちかけてきたのじゃ」
「鬼頭だ。よろしく頼む」
年齢は20代後半といったところか。堅苦しい規律のあるAAAのこと。鬼頭三等は丁寧に応対をする。
「最近、奈良県内で動物系妖の出現が急増している」
彼は集まった覚者達へと資料を手渡す。
奈良県を走る近鉄大阪線。3両編成の電車が妖に狙われるそうなのだ。
「今回現れるのは、伊賀市の辺りだと予測されている。この付近を歩いていれば、妖は見つかると思われるのだが……」
だがそこで、死傷者が出る危険がある事件が起こるとけいが口を出す。
「妖は明らかに人間に対して悪意を持って、攻撃を仕掛けてきとるの」
妖の資料はいくつかの獣の種類があったが、これにけいの夢見の力を合わせることで、現れる妖も特定できた。
現れるのは、生物系。猪が妖と成り果てたものだ。妖となったことでその体躯は倍以上に膨れ上がっている。
ランク2が2体。どうやら番いであるらしい。また、子供3体もランク1の妖と成り果てている。
「電車がそれに出くわすのは夕方じゃな。比較的乗客が多い時間を敢えて狙ってくる」
襲撃方法は単純、体当たりである。一家揃って電車へと突撃を繰り出してくるのだ。
敵は田園地帯で襲撃を図る。山から下って田園地帯を突っ走り、一直線に電車を狙ってくるのだ。
出現場所と方向は分かっているが、事前の捜索は難しい。下手に山へと足を踏み入れると、妖がこちらの警戒をしてしまい、襲撃の時間や場所をずらしてしまう恐れがある。対策として講じるのであれば、別の手段を模索したい。
「討伐に当たっては、ランク2の2体は確実に倒しておきたいのじゃ」
これらだけでも倒せば、子供だけで大規模な事件を起こすことは考えにくい。場合によっては、AAAに事後処理として、子供の妖の討伐を依頼してもよいだろう。
「とりあえず、概要は以上じゃの」
ともあれ、事件を未然に防ぎたい。けい、鬼頭三等は改めて、対処を頼むと覚者達に頭を下げたのだった。
『F.i.V.E.』の会議室へとやってきた覚者達。
そこには、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)と、AAAの制服を着た男が1人ソファに座っていた。
「AAAの三等殿じゃな。組織を代表して、依頼を持ちかけてきたのじゃ」
「鬼頭だ。よろしく頼む」
年齢は20代後半といったところか。堅苦しい規律のあるAAAのこと。鬼頭三等は丁寧に応対をする。
「最近、奈良県内で動物系妖の出現が急増している」
彼は集まった覚者達へと資料を手渡す。
奈良県を走る近鉄大阪線。3両編成の電車が妖に狙われるそうなのだ。
「今回現れるのは、伊賀市の辺りだと予測されている。この付近を歩いていれば、妖は見つかると思われるのだが……」
だがそこで、死傷者が出る危険がある事件が起こるとけいが口を出す。
「妖は明らかに人間に対して悪意を持って、攻撃を仕掛けてきとるの」
妖の資料はいくつかの獣の種類があったが、これにけいの夢見の力を合わせることで、現れる妖も特定できた。
現れるのは、生物系。猪が妖と成り果てたものだ。妖となったことでその体躯は倍以上に膨れ上がっている。
ランク2が2体。どうやら番いであるらしい。また、子供3体もランク1の妖と成り果てている。
「電車がそれに出くわすのは夕方じゃな。比較的乗客が多い時間を敢えて狙ってくる」
襲撃方法は単純、体当たりである。一家揃って電車へと突撃を繰り出してくるのだ。
敵は田園地帯で襲撃を図る。山から下って田園地帯を突っ走り、一直線に電車を狙ってくるのだ。
出現場所と方向は分かっているが、事前の捜索は難しい。下手に山へと足を踏み入れると、妖がこちらの警戒をしてしまい、襲撃の時間や場所をずらしてしまう恐れがある。対策として講じるのであれば、別の手段を模索したい。
「討伐に当たっては、ランク2の2体は確実に倒しておきたいのじゃ」
これらだけでも倒せば、子供だけで大規模な事件を起こすことは考えにくい。場合によっては、AAAに事後処理として、子供の妖の討伐を依頼してもよいだろう。
「とりあえず、概要は以上じゃの」
ともあれ、事件を未然に防ぎたい。けい、鬼頭三等は改めて、対処を頼むと覚者達に頭を下げたのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.電車への被害を最小限に抑えること。
2.ランク2の妖の討伐。
3.なし
2.ランク2の妖の討伐。
3.なし
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
電車に突撃しようとする、妖となった猪が現れます。
どうやら番いの上、子供までも凶暴性を増してしまっているようです。
被害が一般人に及ぶ前に、討伐を願います。
●敵
○妖……生物系。猪、5体。
・ランク2……雄と雌の猪。雄前衛、雌中衛。体長は4メートルほど。
体当たり……物近単[貫3・100・70・30]
牙……物近単・出血
いななき……特全・弱体
・ランク1……うりぼう3体。2体前衛、1体中衛。
子供の猪ですが、体長は2メートル近くあります。
体当たり……物近単[貫2・100・50]
牙……物近単・出血
●状況
夕方、奈良県伊賀市を走る電車に、猪5体が特攻してきます。
山に囲まれた場所ですが、
襲撃場所周辺は田畑が広がる為、
構えていれば突撃まで多少の時間があります。
特に気に掛けることなく戦う場合、
田んぼの中で交戦する可能性が高いです。
田んぼの中では、
回避、反応速度、移動距離にマイナス補正があります。
AAAは戦闘には参加しません。
周囲で想定外の妖が出ないか、警戒に当たってくれています。
また、事後処理は全て任せて大丈夫です。
覚者達の要望に関しては、
聞き入れてくれるかどうかはケースバイケースです。
それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします!
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年06月11日
2016年06月11日
■メイン参加者 8人■

●田園に現れる動物系妖
奈良県伊賀市。
黄昏時、『F.i.V.E.』の覚者達は、ここで予見された事件を止めるべく、この地へとやってきた。
「伊賀市といえば、寒暖が激しい上に雨も少ないから、作物は大変そうだわ」
広がる田園風景を目にした嵐山 絢音(CL2001409)が思う。だからこそ、絢音はそんな場所に現れる妖を何とか対処しようと、この依頼に名乗りを上げたのだ。
(『F.i.V.E.』やAAAの事情なんかは知らないわ)
自身の価値観、それに今の自身の力では、目の前にあるものを何とかしようとするくらいしかできない。絢音は内心でそう考えていた。
「さて、鉄道を襲う妖を撃退するのが今回の作戦じゃな」
「鹿退治、前回受け持ち。猪退治、今回受け持ち。奈良県、妖、超フィーバー?」
『樹の娘』檜山 樹香(CL2000141)が改めて、今回の目的を確認すると、岩倉・盾護(CL2000549)がここしばらく、妖事件が奈良県で続いていることを訴える。
「なるほど、動物系妖が増えてるようですね」
「電車や線路を襲う妖と戦うのはこれで二回目じゃが、いったいどうなっているのやら……」
『Overdrive』片桐・美久(CL2001026)も相槌をうつと、樹香は頭を悩ませていた。
「うっしゃぁぁぁあ!!! 熊鍋の次は牡丹鍋だな! 行こう! 行こうぜ!!! 早く行こうぜ!!」
そこで、不死川 苦役(CL2000720)が仲間達へと叫ぶ。彼は待ちきれないと、これ見よがしに購入してきた胡椒を見せ付ける。下味をつけるなら新鮮なうちがいいのだとか。
「暴れイノシシの妖ねぇ」
彼の主張はさておき、『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)が伝え聞いていた情報を口にする。
「ミカゲとかいう妖の情報もあるし、妖が組織だって動かれると厄介ね」
「ふむ、何かが中心にいる、というのは間違いないのかもしれぬがの」
樹香も、何者かが妖を束ねているのではないかと示唆する。
ただ、今は目の前の猪の対処が先だ。
『野生の猪は警戒心が強く危険を避けると聞きますが、妖になった以上、その能力を人間に向けるのでしょうね』
「友好的だったら、もふもふして楽しそうだったんですが……! 今回のような困ったさんには、お帰り願わないといけませんね」
『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)が所持している端末の読み上げソフトを使って語ると、美久は得意げな表情のままで言い放つ。
大半の仲間達もそれに同意し、頷く。
「絶対、止めましょう。ぶつかれば、猪だってタダじゃ済まないはずだもの」
家族全員が襲い掛かってくる状況。これは誰かに命じられたとしか考えられないと、姫神 桃(CL2001376)も主張する。
「猪のつがいと子供3匹。恨みはないが、人に仇為すというならば確実に仕留める。……それがワシの役目じゃ」
樹香は静かに、そう決意していた。
●猪はどこから……?
周囲が薄暗くなって烏が泣き出す中、覚者達は動き始める。
まず、誡女は手早く現場となる田畑の配置を確認する。蛍光板などで田畑を区切ることができるようにと準備もしてきたが、手間と時間を考えるとその設置は断念せざるを得なかったようだ。
「足場の確保が重要じゃが、まずは妖がどんなルートを通ってくるかじゃのぅ」
樹香はスキルを駆使して周囲を観察し、警戒する。出来ることなら、田んぼの中ではなく、畑や畦道で戦いたいところだが……。
桃は猪が突破された場合に備え、電車の進行方向、そしてルートの確認を行っていた。
「変な音が聞こえたり、不自然に葉が揺れているようなら教えてくださいね、ラピス!」
美久は守護使役ラピスを空に飛ばし、森の方角を注視させる。
そうして、鳥系の守護使役を持つメンバーが周囲の偵察を行う中、苦役はにんまりと笑顔を浮かべて仲間達へと問いかける。
「でもさー! なんでこんなにココに出るんだろねー!」
1……山に何かが出て、その影響で普通の生物が妖化してる!
2……全くの偶然!
3……実は山なんじゃなくて、電車の方に何かがある!
4……そんな事より野球しようぜ!
「1回調べて貰った方が良いのかもな! しれーとエーエーエーに言っとこ。俺は4オススメだけど!」
何をするでもなく、ただただ、ハイテンションに叫ぶ苦役。
彼の言葉を話半分に聞きつつも、美久、誡女、絢音は森の状況を観察する。
「猪の移動で、木々の揺らめきや物音を察知できれば……」
絢音は他の2人と被らないよう、守護使役の位置を調整していた。彼女自身も超視力を使い、かすかな木の葉の動きも逃さないようにと森を見つめる。
『暗いですが、異変があればなんとか見つけられるでしょうか?』
誡女は妖による警戒を気にし、腰につけていたカンテラ型の灯りを消していた。その上で、少しでも違和感がないかと、森を大きな影として捉えて全体の流れとは違う揺れ方の部分がないかなど確認する。
「昔田んぼの中、走り回ったりしなかった?」
苦役は空気を読まずに仲間達へと語りかける。自身はアホみたいにやったと、田んぼの中へズカズカと走っていく。そして、彼は豪快に転倒した。
「うはは! やっべ転んだ! クリーニング出しとかないと。経費で落とそう!」
田んぼの中で騒ぐ苦役。そこで、読み上げソフトで仲間達へと訴えかけたのは、誡女だ。
『皆さん、森に異変が……』
「見えたわ、あっちから来るわよ。構えて!」
その方向を見たエメレンツィアがそれらを確認する。森から飛び出してきたのは、大きな猪の群れだ。同時に、遠くで鳴る踏み切りの音と共に、電車が近づいてくる。
「あ。来た? そんじゃちょっと料理しようぜー!」
泥にまみれていた苦役も田んぼから出てきた。
一方、他のメンバー達は、どうにかして敵の進行を電車から自分達へと向けようとする。
突っ走ってくる敵は、電車へと一直線に向かっていく。そこに、田んぼがあろうとお構いなしだ。
(水のない畑側に誘い込むのが確実かしら)
絢音はそう考える。動きづらい田んぼは出来れば避けたいと、メンバー達は考えていた。
ただ、美久もできる限り誘導をと動くが、猪達は覚者にお構いなしで一直線に走ってくる。仕方なく、桃は水上歩行で水の張った田んぼの上を行き、ハイバランサーで体勢を整えつつ進んでいく。
結局、メンバー達は足場のよいところをと、田んぼの畦道で敵を囲む布陣をとることにする。
仲間と共に囲いを作ろうとする絢音。だが、彼女は体勢を一度崩し、用水路で尻餅をついてしまい、お尻をビショ濡れにしてしまっていた。だが、それを気遣う時間はなく、そのまま立ち上がって戦うことにする。
(田植えが終わった後の田んぼで戦わなきゃいけないなんて。心が痛むわ)
畦道の上で待ち構えているとはいえ、立ち回りの都合で田んぼに足を踏み入れる可能性は高い。田んぼを荒らしてしまうことはもちろん、ドレスが汚れてしまうことも含めて最悪だとエメレンツィアは感じてしまう。
猪の接近までほとんど時間はないが、それでも、眼前にまで迫った敵に対抗すべく、覚者達は自身の力を高めて備える。
盾護は索敵を仲間に任せていたこともあり、万全を期すべく、戦の祝詞を強く念じて美久、桃、絢音へと力を与えていたようだ。
「それにしても、家族でお出かけなんて……。僕だったら、遠慮願いたいところですね!」
力をもらったうちの1人、美久が叫ぶ。それは、彼の家庭事情の都合なのだが、その理由を語ることなく美久は覚醒する。
「さあ、始めようかの、お前様方。ここから先にはいかせぬぞ!」
樹香もまた覚醒し、首の刺青を光らせる。
(奴らの進撃を、少しでも足止めせねばのう)
樹香はタイミングを見計らい、猪の足元から蔓を巻きつけさせる。
「先手必勝! 行くわよ!」
エメレンツィアもまた、荒波を起こして敵前列を飲み込まんとする。その後、彼女は次なる攻撃の為、後ろへと下がっていく。
それで敵の進攻の勢いは弱まったかには見えたが、猪の群れは覚者を吹っ飛ばす勢いで、突進してきたのだった。
●猛進を止めろ!
大小バラバラの布陣で走ってくる猪達。
前方の猪達は、待ち構えていた覚者達に遮られ、そのまま攻撃を行う形となる。
樹香などが率先して猪の猛攻を受け止めるが、体当たりを繰り出す猪の攻撃は、後ろにいるメンバーにまで衝撃が及ぶ。
前に立つ仲間が多い中、1段後ろにいた誡女もそれを受けてしまう。予め用意していた懐中電灯を畦道に設置して周囲を照らす中、彼女は高密度の霧を発生させ、猪達の身体能力を低下させていく。特に、誡女は群れを引き連れる親猪2体を意識していた。
「そう簡単にやらせはしないわ」
桃は仲間へと治癒力を高める香りを振り撒き、狙いを定める。彼女が狙うは小型のうりぼう……といっても、その大きさは覚者個々人よりも大きいのだが。
絢音も刀を振るい、駆け抜けるように前衛の猪に斬りかかって行く。被害を抑えるべく、なるべく早い殲滅をと、彼女は刀を握る手を強める。
苦役は戦闘前こそ非協力的に見えたが、戦いとなればしっかりと役割を果たす。強化の為やや攻撃の手が遅れたが、特殊な花を咲かせることで発せられる香りにより、敵の身体能力を低下させる。
「敵、物理主体、物理防御、高める」
猪は体当たりなどによる突進、牙など、物理攻撃がほとんど。その為、盾護は守りを主体とした戦い方を行い、己の防御を械の因子の力で高めていく。
「盾護、ガードアップ」
そうして、彼は次なる妖の攻撃に備える。
「前衛に立つからには、無様な姿は見せられませんね!」
美久も立ち回りによって田んぼに入ることを懸念し、バランスをとりつつ戦いに臨む。
「家族を守っているのは立派ですが、おいたはいけませんよ?」
敵を挑発しつつ、彼は眼前の敵に危険植物の持つ毒を流しこんでいく。
邪魔してくる覚者に業を煮やしたのか、親猪は鼻息を荒くして大きな声で嘶いてきた。
多少身体能力を低下させられたところで、怯む覚者ではない。妖の討伐の為、彼らはさらに覚者の力を妖へとぶつけていくのである。
前衛には5人が立ち並ぶ状況。それもあって、猪達は先へと進むことが出来ない。
交戦が続く中、電車は通り過ぎていく。次の電車までに敵を倒せれば……。
誡女は攻撃の代わりにとエネミースキャンを試みる。敵を分析して、敵の状態異常、体力を把握して仲間に伝え、効率よく妖の討伐が出来るようにと考えたのだ。
「気をつけるべきは、巨体での突進ですね」
戦闘時は掠れた声で直接、仲間へと呼びかける誡女。その情報を元にして、覚者達は妖の撃破へと当たる。
ここを突破されれば負け。樹香はそう心得て作戦に当たっている。だからこそ、こうして勝利の為に身を張っているのだ。
「ワシの薙刀も、そう甘く見たものではないぞ? まだまだ成長期じゃからの!」
近づく妖へと、彼女は地を這うような軌跡で薙刀を振るう。うりぼうの身体へと2連撃で斬撃を浴びせかけると、そいつは血を噴き出して田んぼの中へと沈んでいく。
我が子の死に、親猪が怒り狂う。後ろの雌猪が牙を突きつけ、さらに手前の雄猪がまたも体当たりを繰り出してくる。
「盾護、盾役、庇うの得意」
それを、盾護がしっかりとガードした。片言の言葉でそう訴える盾護は言葉の通り、傷つく仲間の前に出てその牙を、体当たりを受け止める。その負担は決して軽くはないが、それが彼の戦法なのだ。
絢音は盾となる仲間に感謝をしながらも、うりぼうに狙いを定めて目にも留まらぬスピードで刃を立て続けに浴びせかけていく。身体を裂かれたうりぼうがまた1体、田んぼの中に転がった。
「大丈夫? こんなところでやられていられないわよ」
なおも怒り狂う妖。その猛攻をエメレンツィアは後方から癒しの霧を振り撒きつつ、前線を支える。
とはいえ、敵の数は減ってきてはいた。時に突進が彼女にまで及ぶが、倒れてもいられない。田んぼの土を踏みしめつつ、エメレンツィアも攻撃へと打って出る。
「田畑を荒らす悪い妖は、この女帝自ら調伏してあげるわ!」
彼女はまたも、空気中の水分を集めて荒波を起こし、敵へと浴びせかけていく。
それにより、ついに手前の雄猪の体勢が崩れた。あれこれと猪肉をどうしようか考えながら、攻め立てていた苦役。
「おう、鍋にしようかと思ったけど、すき焼きもハンバーグも良いな!」
その体から流れ出る血を眺めつつ、彼の言葉は止まらない。
「挽き肉にしてやんぜー!」
苦役は、直刃の『棄灰之刑』で猪の身体を切り払う。大きく寸断された雄猪は気の抜けるような鼻息を漏らして、息絶えたのだった。
まだ、親は残っている。誡女は迷霧をそいつの周囲に展開させて、さらに敵の情報を確認しようとした。敵が方向転換して、別の場所へと突進する可能性も否めないのだ。
前衛の猪が倒れ、雌猪とその子供のみ残る。赤く染まる猪らの瞳は怒りの為か、はたまた……。
「可哀想に……と、言ってあげられれば良いんですが」
美久は敵を引き付けつつ、仕掛ける。長引く戦いで気力は尽きていた。
「生憎、そこまで優しくないので。すみません!」
にこっと笑みを浮かべ、彼は小太刀で堅い猪の体毛をも裂いていく。出血が夥しく、雌猪もまたうなだれるようにして崩れ落ちていった。
敵の攻撃の手が減ってくれば、仲間を庇うこともなくなってくる。
盾護は状況を見計らって攻勢に出る。彼は盾を使い、敵へと殴りかかるが、その一撃は素早いうりぼうに避けられてしまう。
「攻撃、敵倒すだけじゃない」
当たればよし、だが、盾護は避けられることも想定して攻撃を繰り出していた。敵の態勢を崩せば、それでこの一撃に意味はあったのだ。
「あなたに恨みはないけど……」
そこで、桃が近づく。
(生物系の妖は、生きたまま妖になったなら、元に戻った報告もあるから。賭けてみたいの)
親はすでに倒れており、元に戻すことは叶わない。ならば攻めて子供だけでも……。
トドメはささぬようにと、彼女は飛苦無を飛ばすと、うりぼうは体に痺れを走らせる。その間にと、桃はその体を拘束していったのだった。
●その侵攻は止めたものの……
妖の討伐を完了したメンバー達。ほとんどの猪は息絶えてはいたが……。
「生物系、倒したら元に戻る、聞いた」
盾護は最後に倒したうりぼうへと近寄る。妖化が解けたのか、元の可愛らしい姿へと戻っていた。やや弱ってはいたが、息はしている。彼らだって被害者だ。出来るならば、一時保護したいと桃が申し出る。
「獣憑きなら、彼らの記憶から辿れることがあるかもしれないわね」
「まあ、複数の妖が同じような行動をしておるからな。明らかに何かあると言われているようなものじゃからの」
もしかしたら、それによって、何があったかが分かるかもしれないと桃は考えたのだ。樹香もまた、それに同意していたようだ。
ただ、息絶えた猪達はそうもいかない。桃は遺体を山に還したいと主張する。ほとんどのメンバーからは否定意見は出なかったが、苦役はこっそりとお土産にと生肉を剥ぎ取っていたようである。
それが済んだとしても、畦道メインで戦ったとはいえ、メンバーは荒れた田んぼに嘆息してしまう。
AAAに任せることもできただろうが、エメレンツィアがそこで立ち上がる。さすがに、日が暮れてきたので作業は明日になってしまうが、コンバインで田植えをしたいと彼女は語った。
(……FiVE村に関わってからこっち、すっかり農業者ね、私)
エメレンツィアはひそかに祈る。今年も美味しいお米が取れますようにと。
奈良県伊賀市。
黄昏時、『F.i.V.E.』の覚者達は、ここで予見された事件を止めるべく、この地へとやってきた。
「伊賀市といえば、寒暖が激しい上に雨も少ないから、作物は大変そうだわ」
広がる田園風景を目にした嵐山 絢音(CL2001409)が思う。だからこそ、絢音はそんな場所に現れる妖を何とか対処しようと、この依頼に名乗りを上げたのだ。
(『F.i.V.E.』やAAAの事情なんかは知らないわ)
自身の価値観、それに今の自身の力では、目の前にあるものを何とかしようとするくらいしかできない。絢音は内心でそう考えていた。
「さて、鉄道を襲う妖を撃退するのが今回の作戦じゃな」
「鹿退治、前回受け持ち。猪退治、今回受け持ち。奈良県、妖、超フィーバー?」
『樹の娘』檜山 樹香(CL2000141)が改めて、今回の目的を確認すると、岩倉・盾護(CL2000549)がここしばらく、妖事件が奈良県で続いていることを訴える。
「なるほど、動物系妖が増えてるようですね」
「電車や線路を襲う妖と戦うのはこれで二回目じゃが、いったいどうなっているのやら……」
『Overdrive』片桐・美久(CL2001026)も相槌をうつと、樹香は頭を悩ませていた。
「うっしゃぁぁぁあ!!! 熊鍋の次は牡丹鍋だな! 行こう! 行こうぜ!!! 早く行こうぜ!!」
そこで、不死川 苦役(CL2000720)が仲間達へと叫ぶ。彼は待ちきれないと、これ見よがしに購入してきた胡椒を見せ付ける。下味をつけるなら新鮮なうちがいいのだとか。
「暴れイノシシの妖ねぇ」
彼の主張はさておき、『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)が伝え聞いていた情報を口にする。
「ミカゲとかいう妖の情報もあるし、妖が組織だって動かれると厄介ね」
「ふむ、何かが中心にいる、というのは間違いないのかもしれぬがの」
樹香も、何者かが妖を束ねているのではないかと示唆する。
ただ、今は目の前の猪の対処が先だ。
『野生の猪は警戒心が強く危険を避けると聞きますが、妖になった以上、その能力を人間に向けるのでしょうね』
「友好的だったら、もふもふして楽しそうだったんですが……! 今回のような困ったさんには、お帰り願わないといけませんね」
『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)が所持している端末の読み上げソフトを使って語ると、美久は得意げな表情のままで言い放つ。
大半の仲間達もそれに同意し、頷く。
「絶対、止めましょう。ぶつかれば、猪だってタダじゃ済まないはずだもの」
家族全員が襲い掛かってくる状況。これは誰かに命じられたとしか考えられないと、姫神 桃(CL2001376)も主張する。
「猪のつがいと子供3匹。恨みはないが、人に仇為すというならば確実に仕留める。……それがワシの役目じゃ」
樹香は静かに、そう決意していた。
●猪はどこから……?
周囲が薄暗くなって烏が泣き出す中、覚者達は動き始める。
まず、誡女は手早く現場となる田畑の配置を確認する。蛍光板などで田畑を区切ることができるようにと準備もしてきたが、手間と時間を考えるとその設置は断念せざるを得なかったようだ。
「足場の確保が重要じゃが、まずは妖がどんなルートを通ってくるかじゃのぅ」
樹香はスキルを駆使して周囲を観察し、警戒する。出来ることなら、田んぼの中ではなく、畑や畦道で戦いたいところだが……。
桃は猪が突破された場合に備え、電車の進行方向、そしてルートの確認を行っていた。
「変な音が聞こえたり、不自然に葉が揺れているようなら教えてくださいね、ラピス!」
美久は守護使役ラピスを空に飛ばし、森の方角を注視させる。
そうして、鳥系の守護使役を持つメンバーが周囲の偵察を行う中、苦役はにんまりと笑顔を浮かべて仲間達へと問いかける。
「でもさー! なんでこんなにココに出るんだろねー!」
1……山に何かが出て、その影響で普通の生物が妖化してる!
2……全くの偶然!
3……実は山なんじゃなくて、電車の方に何かがある!
4……そんな事より野球しようぜ!
「1回調べて貰った方が良いのかもな! しれーとエーエーエーに言っとこ。俺は4オススメだけど!」
何をするでもなく、ただただ、ハイテンションに叫ぶ苦役。
彼の言葉を話半分に聞きつつも、美久、誡女、絢音は森の状況を観察する。
「猪の移動で、木々の揺らめきや物音を察知できれば……」
絢音は他の2人と被らないよう、守護使役の位置を調整していた。彼女自身も超視力を使い、かすかな木の葉の動きも逃さないようにと森を見つめる。
『暗いですが、異変があればなんとか見つけられるでしょうか?』
誡女は妖による警戒を気にし、腰につけていたカンテラ型の灯りを消していた。その上で、少しでも違和感がないかと、森を大きな影として捉えて全体の流れとは違う揺れ方の部分がないかなど確認する。
「昔田んぼの中、走り回ったりしなかった?」
苦役は空気を読まずに仲間達へと語りかける。自身はアホみたいにやったと、田んぼの中へズカズカと走っていく。そして、彼は豪快に転倒した。
「うはは! やっべ転んだ! クリーニング出しとかないと。経費で落とそう!」
田んぼの中で騒ぐ苦役。そこで、読み上げソフトで仲間達へと訴えかけたのは、誡女だ。
『皆さん、森に異変が……』
「見えたわ、あっちから来るわよ。構えて!」
その方向を見たエメレンツィアがそれらを確認する。森から飛び出してきたのは、大きな猪の群れだ。同時に、遠くで鳴る踏み切りの音と共に、電車が近づいてくる。
「あ。来た? そんじゃちょっと料理しようぜー!」
泥にまみれていた苦役も田んぼから出てきた。
一方、他のメンバー達は、どうにかして敵の進行を電車から自分達へと向けようとする。
突っ走ってくる敵は、電車へと一直線に向かっていく。そこに、田んぼがあろうとお構いなしだ。
(水のない畑側に誘い込むのが確実かしら)
絢音はそう考える。動きづらい田んぼは出来れば避けたいと、メンバー達は考えていた。
ただ、美久もできる限り誘導をと動くが、猪達は覚者にお構いなしで一直線に走ってくる。仕方なく、桃は水上歩行で水の張った田んぼの上を行き、ハイバランサーで体勢を整えつつ進んでいく。
結局、メンバー達は足場のよいところをと、田んぼの畦道で敵を囲む布陣をとることにする。
仲間と共に囲いを作ろうとする絢音。だが、彼女は体勢を一度崩し、用水路で尻餅をついてしまい、お尻をビショ濡れにしてしまっていた。だが、それを気遣う時間はなく、そのまま立ち上がって戦うことにする。
(田植えが終わった後の田んぼで戦わなきゃいけないなんて。心が痛むわ)
畦道の上で待ち構えているとはいえ、立ち回りの都合で田んぼに足を踏み入れる可能性は高い。田んぼを荒らしてしまうことはもちろん、ドレスが汚れてしまうことも含めて最悪だとエメレンツィアは感じてしまう。
猪の接近までほとんど時間はないが、それでも、眼前にまで迫った敵に対抗すべく、覚者達は自身の力を高めて備える。
盾護は索敵を仲間に任せていたこともあり、万全を期すべく、戦の祝詞を強く念じて美久、桃、絢音へと力を与えていたようだ。
「それにしても、家族でお出かけなんて……。僕だったら、遠慮願いたいところですね!」
力をもらったうちの1人、美久が叫ぶ。それは、彼の家庭事情の都合なのだが、その理由を語ることなく美久は覚醒する。
「さあ、始めようかの、お前様方。ここから先にはいかせぬぞ!」
樹香もまた覚醒し、首の刺青を光らせる。
(奴らの進撃を、少しでも足止めせねばのう)
樹香はタイミングを見計らい、猪の足元から蔓を巻きつけさせる。
「先手必勝! 行くわよ!」
エメレンツィアもまた、荒波を起こして敵前列を飲み込まんとする。その後、彼女は次なる攻撃の為、後ろへと下がっていく。
それで敵の進攻の勢いは弱まったかには見えたが、猪の群れは覚者を吹っ飛ばす勢いで、突進してきたのだった。
●猛進を止めろ!
大小バラバラの布陣で走ってくる猪達。
前方の猪達は、待ち構えていた覚者達に遮られ、そのまま攻撃を行う形となる。
樹香などが率先して猪の猛攻を受け止めるが、体当たりを繰り出す猪の攻撃は、後ろにいるメンバーにまで衝撃が及ぶ。
前に立つ仲間が多い中、1段後ろにいた誡女もそれを受けてしまう。予め用意していた懐中電灯を畦道に設置して周囲を照らす中、彼女は高密度の霧を発生させ、猪達の身体能力を低下させていく。特に、誡女は群れを引き連れる親猪2体を意識していた。
「そう簡単にやらせはしないわ」
桃は仲間へと治癒力を高める香りを振り撒き、狙いを定める。彼女が狙うは小型のうりぼう……といっても、その大きさは覚者個々人よりも大きいのだが。
絢音も刀を振るい、駆け抜けるように前衛の猪に斬りかかって行く。被害を抑えるべく、なるべく早い殲滅をと、彼女は刀を握る手を強める。
苦役は戦闘前こそ非協力的に見えたが、戦いとなればしっかりと役割を果たす。強化の為やや攻撃の手が遅れたが、特殊な花を咲かせることで発せられる香りにより、敵の身体能力を低下させる。
「敵、物理主体、物理防御、高める」
猪は体当たりなどによる突進、牙など、物理攻撃がほとんど。その為、盾護は守りを主体とした戦い方を行い、己の防御を械の因子の力で高めていく。
「盾護、ガードアップ」
そうして、彼は次なる妖の攻撃に備える。
「前衛に立つからには、無様な姿は見せられませんね!」
美久も立ち回りによって田んぼに入ることを懸念し、バランスをとりつつ戦いに臨む。
「家族を守っているのは立派ですが、おいたはいけませんよ?」
敵を挑発しつつ、彼は眼前の敵に危険植物の持つ毒を流しこんでいく。
邪魔してくる覚者に業を煮やしたのか、親猪は鼻息を荒くして大きな声で嘶いてきた。
多少身体能力を低下させられたところで、怯む覚者ではない。妖の討伐の為、彼らはさらに覚者の力を妖へとぶつけていくのである。
前衛には5人が立ち並ぶ状況。それもあって、猪達は先へと進むことが出来ない。
交戦が続く中、電車は通り過ぎていく。次の電車までに敵を倒せれば……。
誡女は攻撃の代わりにとエネミースキャンを試みる。敵を分析して、敵の状態異常、体力を把握して仲間に伝え、効率よく妖の討伐が出来るようにと考えたのだ。
「気をつけるべきは、巨体での突進ですね」
戦闘時は掠れた声で直接、仲間へと呼びかける誡女。その情報を元にして、覚者達は妖の撃破へと当たる。
ここを突破されれば負け。樹香はそう心得て作戦に当たっている。だからこそ、こうして勝利の為に身を張っているのだ。
「ワシの薙刀も、そう甘く見たものではないぞ? まだまだ成長期じゃからの!」
近づく妖へと、彼女は地を這うような軌跡で薙刀を振るう。うりぼうの身体へと2連撃で斬撃を浴びせかけると、そいつは血を噴き出して田んぼの中へと沈んでいく。
我が子の死に、親猪が怒り狂う。後ろの雌猪が牙を突きつけ、さらに手前の雄猪がまたも体当たりを繰り出してくる。
「盾護、盾役、庇うの得意」
それを、盾護がしっかりとガードした。片言の言葉でそう訴える盾護は言葉の通り、傷つく仲間の前に出てその牙を、体当たりを受け止める。その負担は決して軽くはないが、それが彼の戦法なのだ。
絢音は盾となる仲間に感謝をしながらも、うりぼうに狙いを定めて目にも留まらぬスピードで刃を立て続けに浴びせかけていく。身体を裂かれたうりぼうがまた1体、田んぼの中に転がった。
「大丈夫? こんなところでやられていられないわよ」
なおも怒り狂う妖。その猛攻をエメレンツィアは後方から癒しの霧を振り撒きつつ、前線を支える。
とはいえ、敵の数は減ってきてはいた。時に突進が彼女にまで及ぶが、倒れてもいられない。田んぼの土を踏みしめつつ、エメレンツィアも攻撃へと打って出る。
「田畑を荒らす悪い妖は、この女帝自ら調伏してあげるわ!」
彼女はまたも、空気中の水分を集めて荒波を起こし、敵へと浴びせかけていく。
それにより、ついに手前の雄猪の体勢が崩れた。あれこれと猪肉をどうしようか考えながら、攻め立てていた苦役。
「おう、鍋にしようかと思ったけど、すき焼きもハンバーグも良いな!」
その体から流れ出る血を眺めつつ、彼の言葉は止まらない。
「挽き肉にしてやんぜー!」
苦役は、直刃の『棄灰之刑』で猪の身体を切り払う。大きく寸断された雄猪は気の抜けるような鼻息を漏らして、息絶えたのだった。
まだ、親は残っている。誡女は迷霧をそいつの周囲に展開させて、さらに敵の情報を確認しようとした。敵が方向転換して、別の場所へと突進する可能性も否めないのだ。
前衛の猪が倒れ、雌猪とその子供のみ残る。赤く染まる猪らの瞳は怒りの為か、はたまた……。
「可哀想に……と、言ってあげられれば良いんですが」
美久は敵を引き付けつつ、仕掛ける。長引く戦いで気力は尽きていた。
「生憎、そこまで優しくないので。すみません!」
にこっと笑みを浮かべ、彼は小太刀で堅い猪の体毛をも裂いていく。出血が夥しく、雌猪もまたうなだれるようにして崩れ落ちていった。
敵の攻撃の手が減ってくれば、仲間を庇うこともなくなってくる。
盾護は状況を見計らって攻勢に出る。彼は盾を使い、敵へと殴りかかるが、その一撃は素早いうりぼうに避けられてしまう。
「攻撃、敵倒すだけじゃない」
当たればよし、だが、盾護は避けられることも想定して攻撃を繰り出していた。敵の態勢を崩せば、それでこの一撃に意味はあったのだ。
「あなたに恨みはないけど……」
そこで、桃が近づく。
(生物系の妖は、生きたまま妖になったなら、元に戻った報告もあるから。賭けてみたいの)
親はすでに倒れており、元に戻すことは叶わない。ならば攻めて子供だけでも……。
トドメはささぬようにと、彼女は飛苦無を飛ばすと、うりぼうは体に痺れを走らせる。その間にと、桃はその体を拘束していったのだった。
●その侵攻は止めたものの……
妖の討伐を完了したメンバー達。ほとんどの猪は息絶えてはいたが……。
「生物系、倒したら元に戻る、聞いた」
盾護は最後に倒したうりぼうへと近寄る。妖化が解けたのか、元の可愛らしい姿へと戻っていた。やや弱ってはいたが、息はしている。彼らだって被害者だ。出来るならば、一時保護したいと桃が申し出る。
「獣憑きなら、彼らの記憶から辿れることがあるかもしれないわね」
「まあ、複数の妖が同じような行動をしておるからな。明らかに何かあると言われているようなものじゃからの」
もしかしたら、それによって、何があったかが分かるかもしれないと桃は考えたのだ。樹香もまた、それに同意していたようだ。
ただ、息絶えた猪達はそうもいかない。桃は遺体を山に還したいと主張する。ほとんどのメンバーからは否定意見は出なかったが、苦役はこっそりとお土産にと生肉を剥ぎ取っていたようである。
それが済んだとしても、畦道メインで戦ったとはいえ、メンバーは荒れた田んぼに嘆息してしまう。
AAAに任せることもできただろうが、エメレンツィアがそこで立ち上がる。さすがに、日が暮れてきたので作業は明日になってしまうが、コンバインで田植えをしたいと彼女は語った。
(……FiVE村に関わってからこっち、すっかり農業者ね、私)
エメレンツィアはひそかに祈る。今年も美味しいお米が取れますようにと。

■あとがき■
リプレイ、公開いたします。
妖の討伐、お疲れ様でした。
MVPは、
うりぼうを助け出すきっかけを作った
桃さんも捨てがたかったですが、
戦闘において、敵の分析、仲間の指揮と
活躍を見せていただいたあなたへ。
ともあれ、お疲れ様でした。
ゆっくりお休みくださいませ。
妖の討伐、お疲れ様でした。
MVPは、
うりぼうを助け出すきっかけを作った
桃さんも捨てがたかったですが、
戦闘において、敵の分析、仲間の指揮と
活躍を見せていただいたあなたへ。
ともあれ、お疲れ様でした。
ゆっくりお休みくださいませ。
