全てにさよならを
全てにさよならを


●物語は終わり、人生は続く。
 少年は帰ってきた。
 かつて古妖だった老人とともに過ごし、そして失ったその河原へ。
 月光が照らす夜の河原を少年は歩き、見つけるのは二つの墓。
「あ……あああっ」
 少年は膝を着き、墓石にしがみつく。
 悟ったのだ、自分と古妖の世界が終わったことを。
「おじちゃん……おじちゃん……」
 涙が止まらない、居場所は無くなった、帰る場所は無い。差し伸べられる手は最早信用ならない。

 ――ピシッ

 何かが弾ける音がした。
「……嘘だ」
 額に感じる新たな感覚、そして自分を見守る守護使役。

 ――ピシッ

「おじちゃん……ゴメン……僕もなっちゃった」
 少年は悟った。自分が覚者に、古妖を殺したものになったことに。

 ――ピシッ

 だからこそ……壊れた

 ――ピシッ

「おじちゃんゴメン、そしてさよなら……うん、僕は全てにサヨナラをしてくるよ」

 雨が降り始めた。

●無情、無念、無力
 会議室に何かを叩きつける音がした。
「…………失礼しました」
 久方 真由美(nCL2000003)は自らが机に叩きつけ、散らばった資料を片付ける。
「では、改めて説明します。今回の任務は『破綻者』秋津 清人の討伐。深度2相当、生死は問いません」
 俯き、視線を合わせようとせず説明は続く。
「彼は覚者として目覚めた直後破綻しました。その為持っている攻撃方法は少ないのですが、一つ一つの威力は高くなっています。彼はサヨナラを言うためにこれから人々を襲い始めます。今から駆けつければ、破綻した直後にはたどり着けると思います。そして……」
 沈黙が続く、何度か呼吸を整え、夢見の女は口を開く。
「今から言うのは私情ですので聞き流して下さい。家族のいない彼は、人間社会から弾き出され、古妖と交流を持っていました。しかし妖の出た事件で古妖は人々に殺されて、彼は一人になりました」
 顔を上げて真由美は言葉をつづけた。
「これは依頼です。少年が人々から受けた無情、無念。そして知りながら何もできなかった私の無念、その全てを――託します」
 彼女はどんな表情をしていただろう、それは君しか知らない。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:塩見 純
■成功条件
1.『破綻者』秋津清人の討伐。生死は問いません
2.なし
3.なし
物語は終わりましたが、少年の人生は終わりません。そしてこれからを作るのがアラタナルです。

どうも塩見です。

今回は拙作『古妖と妖と少年と』の続編的シナリオですが、前作を読まなくても問題はありません。
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舞台は雨の降る夜の河原。光源は必要ですが、それ以外は問題なくただ汚れるだけです。

以下、破綻者の詳細です

●『破綻者』秋津 清人
・怪の因子
・水行
・破綻深度:2

攻撃方法
・格闘:物近単
・破眼光:特遠単【呪い】
・水礫:特遠単

・詳細
妖によって両親を失い施設に居ましたが、そこに馴染めずに居場所を求めて施設を出て、一人の古妖と出会い、共に暮らしていました。
けれど、世間は『お化け屋敷の少年』と彼を呼び、忌み嫌っていたところに妖が出現。
古妖が少年を守るために妖と戦っていたところに、何も知らない人々は少年のせいと決めつけそこに居た覚者が古妖を殺してしまいました。
妖はFiVEが退治しましたが、少年はその場を去り、行方をくらましていました。

そして現場に戻ってきた時に古妖の死と自分が古妖を殺したものと同類になったことに気づき破綻しました。
破綻した彼は全てにサヨナラをするために人々を襲い始めます。

皆さんが到着するのは彼が破綻した直後。
雨が降り始めたころです。


以上、皆さんの参加をお待ちしています。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年05月20日

■メイン参加者 8人■


●雨夜
 雨が降り続ける。
 桜が散ったとはいえ、まだ夏は遠く春の雨は覚者の身を濡らし冷やす。
(あの時俺がヘマしなかったら今ここで彼と対峙する事はなかっただろうか? もう少しマシな再会が果たせただろうか?)
『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が金に染まった髪を濡らし、先頭を走る。自らの失敗がこの結果を招いたのかと問いながら。
(妖が出たのはただの事故)
『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)も彼の後に続く。
(よく分からないものを人々が恐れるのは、ころんが覚者になったときにはとっくに知ってたこと。誰も悪意はなくて、誰も責められなくて……だからこそ、悲しくて仕方ないの)
 考え込む彼女の姿はすでに無敵ではない妖艶な女へと変わっていく。湿った匂いの中にかすかに香しいものが覚者の鼻腔を刺激したのは気のせいだろうか。
「彼はまだソコしか知らない……ソコは暗くて深くて光など見出せないかも知れない……」
 雨雲で月がさえぎられた空を見上げながら賀茂 たまき(CL2000994)が呟く。背負った大量の符が水を弾き、神具であるが故に濡れることを拒む。
「ですがソコから抜け出す事も出来るんです、勇気を持って踏み出せば」
 それは可能性。問題は『彼』がそれを出来るかどうか。
 暗闇の中に光るものがあった。覚者はそこで足を止め、ある者は暗視であるものは懐中電灯で闇を照らす。
「……そう。アンタが選んだのはソレなのね」
『溶けない炎』鈴駆・ありす(CL2001269)の言葉は氷のように冷たくそれ以上に何かを抑え込んだものだった。
 光るもの――人魂を従えた『破綻者』秋津 清人は雨に濡れた顔を上げ、覚者に視線を向けた。

●拒絶
「……どいてくれないか?」
 破綻した少年の声は暗く重い。脅す様に声も荒げず、さりとて相手に何かを頼むようでもない。ただ、邪魔であるから。そのようなニュアンス。
(知らぬが故に恐れ、排除する。民衆の性とも言える事でしょうが、その結末はやるせないですね。それでも少年の凶行は止めねばなりませんが)
 望月・夢(CL2001307)少年に対峙しつつも、すぐに行動を起こしたりはしない。説得を望む味方がいる以上、彼等に行動を任せ、自分は万が一に備えるべきと考えていたからだ。
 だが、そうは考えないものもいた。
『罪なき人々の盾』天城 聖(CL2001170)は少年を見つけるやいなや、低空飛行からの飛び蹴りを叩き込む。ブーツスニーカーのソールが清人の顔を汚し、彼は成すがままに吹き飛ばされる。
(あっはー、流石に空気読める男である苦役はハッピーなお話も嫌いじゃないので説得を眺める予定だったけど、これはやっちゃったねー!)
 不死川 苦役(CL2000720)は自分の顔に笑みが浮かんだことに気づいたが、隠そうとはしなかった。彼にとっては仕事はお金が貰えるゲーム程度。ただ結果として良い方向に動いているだけ。だからこそ笑いは止まらない。
 少年が立ち上がる、破綻した力を手にし、全てにサヨナラをいう事を決めた少年は自らの判断を正しいとここで認識した。
「流石、覚者だね」
 少年がここで見せた感情は絶望でも諦観でもなく嘲り。そして雨足が強くなった。
 ころんの身が光り、発光が辺りを照らす、補えない灯りは周りが懐中電灯で補う。光源が確保されたことを確認した彼女を威風を以って理を説く。
「あなたが暴れて人を殺したら、おじいさんのせいにされるの」
「そんな力使わないと話せないのかい?」
 威風をせせら笑い近づいてくる破綻者。スキルと言えど覚者破綻者に効かないものがある。けれどころんは続ける。成すべき事をなすために。
「あの『勇気ある覚者』みたいな奴が、古妖のせいでバケモノにされた子供なんて言いながらあなたを討伐しに来るの。自分たちがおじいさんにした扱いなんて、すっかり忘れて…ね。それって、すごく悲しいことだところんは思うの」
「そうかい……勇気ある覚者ってこいつ?」
 少年が聖へ顔を向けると第三の眼が光る。閃光が彼女を貫き。さらに水の礫が喉を穿つ。やりたいことをやるべく少女は顔色一つ変えずに命を削って意識を保つ。だが、それには相応のものが必要であることを彼女は自覚しているであろうか?
 ころんと桂木・日那乃(CL2000941)がすぐに回復に動き、傷を癒していく。回復を受ける聖は立ち上がると、迷いの霧を清人に纏わりつかせ、その力を削いでいく。
 夢が演舞・清風で皆に力を与え、たまきは英霊の力を引き出して、自らを強化する。
「街の人達に対して貴方は何もしていない、ならば諦めず伝えればいい……」
「もういいんだよ、諦めるとか伝えるとかじゃないんだよ」
 たまきの言葉は届かない。だからこそ彼女は決意を固める。
「全て私の我儘ですが 私は私の意志で貴方を生かします。貴方を切り捨てた世界もあれば 受け入れる世界もある事も知って欲しい」
「もういいんだよ、お姉さん。そんな事どうでもいいんだ」
 少年が笑う。雨水が頬を伝い泣いているように見えるのは気のせいだろうか? 奏空には少年が泣いているようにしか見えなかった。
(救う事……助ける事ってなんだろう)
 自問自答と共に落とされる雷、破綻者は避けもせず、それを受ける。
(最初の頃はこの力で自分が誰かを救える事が嬉しかった。結局自分のエゴなのか?)
 考える奏空の傍らでタクシードライバーが棄灰之刑を片手に錬覇法にて英霊の力を引き出す。
「えー! でも50歩譲って家族が死んじゃった事には同情するけどさ! 全部全部自分の行動の結果じゃん!」
「そうだね、僕のせいでこうなったんだね。お疲れさん、オジサン」
 苦役の言葉を肯定し、労いの言葉をかける破綻者を破眼の光が襲う。その先には開眼した左の掌を突き出すありす。
「ホント、バカばっか。いいわ、そのひ弱な性根、一度燃やし尽くしてあげる」
 右手から炎が生まれ少女の顔を照らす。
「……そして、生まれ変わりなさい」

●天秤
 水の跳ねる音、倒れる少女。したいことを出来ずに聖は倒れていく。泥に濡れた少女に気を留めずに霧を引きはがした清人は覚者へと歩み寄る。
「どいてよ」
「そー言われてもねー! 俺困るなー!」
 笑いながら突き出した指が少年の眼を抉る。柔らかいものが弾ける感じが指先に伝わった。
「深度2にもなるとアッサリ塞がっちゃうのよねー。ホント人体の神秘だよ、ってな」
「オジサンたちはできないの?」
 赤く染まった指を抜く苦役に左目から赤いものを流している少年が問いかけた。その問いを火炎弾がさえぎっていく。
「……ホント、似てるようで正反対ね、アタシ達」
「そうだね、全然違うや」
 破綻者の言葉に思わず歯ぎしりするありす、そして何かが引っ掛かる。
 ころんが自撮り写真を掲げる、ファンシーなポートレートと今の外見からくる色々なイタさが痛さに変わり、清人の肩に弾ける。けれど少年はそれに答えた様子もなく立っている。
 そのタイミングを見逃さずに夢が前で戦うものに戦之祝詞を、たまきが紫鋼の要塞となる盾を苦役に施し、奏空は逆手に持った双刀・天地で飛燕を振るう。少年が傷つくたびに彼の心が痛む。けれど決めたのだ、悲しみ、怒りを受け止める事を。だが何かが引っ掛かる……。
 そして、雨に濡れる黒翼の少女は呟く、淡々と。
「おやのいないこどもをまもるものはない。かくしゃはばけもの。にんげんなんかだいきらい。
 いばしょなんかどこにもない。こようのひとをころしたかくしゃになんかしんでもなりたくない。」
「――!?」
 少年の動きが止まり、日那乃を見上げる。黒髪を雨を吸って重くなり、滴が服を濡らすのも構わずに少女の言葉は送受信・改を通し、雨音の遮りすらもなかったかのように響き渡る。
「つらくてくるしくてこわくていたくて、そんなのじゃたりない。じぶんをきずつけてひとをきずつけてもかわらない。どうにもならない。いばしょなんかどこにもない」
「…………やめろ」
 清人が声を上げる。
『全てにサヨナラする』
 街の人間にも覚者にもそして自分にも――。
 そう決めた心が少女に見透かされ、言葉が心を揺らす。
 それはどんな武器や説得よりも痛く、そして刺さる。
 呟く日那乃の心に浮かぶのは任務を告げるときの夢見の行動、彼女が見せた感情が少女の心の天秤を揺らし。
「だいじなものなんかなんにもない」
「やめろと言っている!!」
 死へと傾いていた秋津 清人という少年の命の天秤を揺らす。揺れていた心を破綻した少年の器では抑えきれず、こぼれた何かは翼人の少女へ向けられ、水の弾丸となって日那乃の胸を貫く。翼力を失い大地に叩きつけられる少女。
「わたしは親のことはおぼえてない。しせつにいたし、古妖のひとにもあってない」
 命を削って立ち上がる少女をころんが癒す。吐血し汚れた口元をぬぐう日那乃自身も彼と自分を重ねていたのだろうか? 顔に出さない少女の心の内を知るのは彼女自身のみ。
 歯を食いしばる音した、赤毛の少女が振り上げる右手には炎。
「これをアンタに撃つなんてね!」
 薙ぎ払う様に放たれた召炎波。古妖が誰かを守るために託した力がかつて古妖と絆を結び、そして破綻した少年を呑み込み、雨すらも蒸発させる。
 ――雨音が一瞬だけ消えた。

●決意
 咆哮が響き渡る、奏空だ。夢が託した風之祝詞が彼の速さをさらに押し上げ、少年に迫る。
「来るな!」
 水の飛礫が腹を貫き、前のめりに倒れる。
(発現したからって最初の頃は戦うのは怖かった。でも助けを求めている者がいれば体が動かずにはいられなかった)
 思い出すのは過去の自分、そしてオリジン。
(目の前も彼も……俺には助けを求めているように見える……そうだよ……何の為に俺はここに来た?)
 決意が命を削り力となる。それが泥をつかみ、大地を踏み、泥に汚れたその身を立ち上がらせる。
「……助ける為に決まってるじゃないか!」
 雨音が再び鳴り始める、直後少年の姿が消えた。
「まだだ! まださよならじゃない! まだ君にはやるべき事がある。それは君にしか出来ない事だ!」
「うるさい……うるさい!」
 距離を詰め、戻って来いと泣き吠えながら
「君は生きて、君のじいちゃんがどんな古妖だったのかを、あの街の皆に伝えるべきだ!君が……一番じいちゃんの事を知ってるんだから!」
「おじちゃんの事を言うなぁ!」
 カッコ悪くたっていい。言葉と送受心改で心に伝え、飛燕の刃が叫ぶ破綻者の胸を裂く!
「ヒュー、少年やるじゃないの!」
 花が舞う、苦役の香仇花がその力を発揮して少年の力を弱めていく。
「オマエ、絶対通知簿に人の話を聞きましょうとか書かれてただろ」
「何なんだよ! お前達……邪魔してばかりで!?」
 力を奪っていく香りを振り払うように手を動かす清人、それは助けを求める様にあえいでいるようにも見える。
「私達が貴方の「勇気」になります。そして貴方を私達が受け入れます……!」
「世の中には、あなたのおじいさんみたいな目に遭ってる古妖がたくさんいるの。ころん達FiVEは、そんな現場に何度も立ち会ってきて…そして、可能な限り、保護したり居場所を提供してきたの。他の誰かの悲劇を防ぐために…一緒に来るなら、歓迎するの」
 たまきが奏空を守るために紫の防壁を張ると、ころんと回復を受けて立ち上がった日那乃の二人が力を合わせて奏空の傷を塞ぐ。
「いっしょに、探せば、いい。助けてほしいって、言えば、いい」
「そんなのいらない! 僕は何もいらない!」
 翼人の少女の声を否定するように再び水の飛礫を飛ばしていく。
「本当、強情ね」
 皮肉を込めてありすが放つ火炎の弾丸が少年の腕を吹き飛ばし、飛礫の方向をそらしていく。腕を十字に組み、それを受け止めた奏空が跳び上がる。
「大丈夫、もうアンタは一人じゃない」
 見上げる少年、逆手に持った双刀を順手に持ち変える覚者。
(この世はたしかに理不尽だけど……君がじいちゃんと過ごした日々の真実がそんな世界の灯になるように)
 想いを乗せた双刀・天地が急降下する燕のように振り下ろされ破綻者の両肩を切り裂く。最初から死を望み、全ての攻撃を受けていた少年の身体は限界を迎え、そこで膝を突く。
「アタシ達がいるわ」
「だから、いる場所なら、ある、よ」
 ありすと日那乃の言葉が重なった時、雨は止んだ。

●払暁
 平手が頬を打つ音が鳴り、苦役の顔は「おーこわ」と小声で呟き、肩をすくめる。
「何してんのよ、バカ!」
 頬を張ったありすが怒鳴る。そして力なく膝を突いている少年の肩に手を添える。
「おじいさんが命をかけて守ろうとしたアンタの命を、アンタ自身が軽々しく捨てたら、おじいさんのが死んだ意味すらなくなるじゃない! 言ったでしょう、アンタがいたから、アンタの為におじいさんは戦ったんだって。もう忘れちゃった?」
 それはまるで姉が弟を叱るようであった。そして傷口を撫でる様に触れながら諭す様に優しく言葉を紡ぐ。
「それに、身体は死んでも、想いは死なないわ。アンタ、おじいさんの顔は今でも思い出せるでしょう? なら、おじいさんはアンタの中で生き続けてるのよ。……でも。
アンタが今ここで死んじゃったら、誰がおじいさんを覚えていくのよ? 誰がおじいさんの思い出を話せるのよ? 聞かせてよ。アンタとおじいさんの思い出を。話し相手がいないなら、アタシが友達になって聞いてあげるから……だから、生きなさい。おじいさんの想いの分まで」
「…………」
 少年からは答えがない。
「気絶、してるね」
「しょうがないですよ。あれだけ攻撃を受け続けていたんですから」
 覗き込む日那乃に奏空が声をかける。彼自身も回復を受けたとはいえボ負傷で立つのが精一杯のところ。
「まー人間。ドコに行くのも自由なもんだぜ。だけど子供の内は大人に甘えときな、それが許されるのならな。大人になったらそうそう甘えられねーんだから」
 苦役の言葉に優しさがあるのは気のせいだろうか?
「やーだやだ。風邪ひいちゃう前に帰ろうぜー?」
 濡れた制服を脱ぎながら、当の本人は踵を返し去っていく。夢と彼女の肩を借りた聖もそれに続いた。
 去っていく覚者を見送りながらありすは気絶した破綻者を横たえ、その頭を自分の膝に乗せる。
「……何よ」
 周りに視線が恥ずかしくなったのか、口から出るのは尖った言葉。そして少年を見下ろして囁くのは未来への誘い。
「聞こえてるかしら? もしよかったら、もうこんな悲しい事が起きないように、一緒に戦いましょう。アタシ達と」
 明るいものが彼女の眼に入る、夜が明け朝日が覚者達を照らしていくそれを払暁と言った。

 ――長く続いた雨の夜は終わり、空は晴れた。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
死亡
なし
称号付与
『潤しの雨燕』
取得者:桂木・日那乃(CL2000941)
特殊成果
なし




 
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