ホームレスドラゴン
ホームレスドラゴン



 むかしむかしでもないあるところに。
 妖災害によって暫く破棄されていた工場があったそうな。
 妖こそ駆除されたものの、災害による人員不足で長らく停止していたその工場は雨も風もしのげると言うことで、かわいそうなホームレスたちのよりどころとなっておった。
 けれど……。
「この建物は取り壊します! 危ないからすぐに立ち退いてください!」
「やめとくれぇ!」
「このご時世、外で寝てたら妖や隔者に殺されちまう!」
「たのんますぅ! 屋根と壁だけでもぉ!」
「わしらは家を妖に壊されて、住むところもないんですぅ!」
 わいわいと追いすがるホームレスたち。
 作業員のおじさんはくわえた煙草を噛み潰しました。
「ええいうるせえ! 家がねえなら市役所にでも行ってどっかに入れて貰えばいいじゃねえか!」
「それをやってくれねえからホームレースになったんでしょうが!」
「お国は頼りにならねえ! あんただけが頼りだ!」
「知るかボケ!」
「ヒイ!」
 おじさんに蹴飛ばされ、か弱いホームレスたちは地面を転がります。
「ゴンさんがおれば……」
「そうじゃ、ゴンさんがおればなんとか……」
 顔を見合わせるホームレスたち。
 そこへ、空を揺らすかのような激しい咆哮が聞こえました。
 一斉に天空を見上げるホームレスたち。
 同じく見上げる工事作業員たち。
 そこへ現われたのは、ザトウクジラほどの巨大な影であった!
 大鰐を思わせる硬い鱗。コウモリを思わせる羽。そしてなによりも、伝説の中でしかお目にかかれないような牙、爪、フォルム!
 それはまさしく伝説上のドラゴンであった!
 ドラゴンは人間の言葉を用いて言った!
「ワシも谷を追われとるんじゃー! もうここ以外住むところがないんじゃー!」
 対しておじさんは。
 噛み潰した煙草を投げ捨て、こう言ったそうな。
「知るかボケぇ! たたきのめすぞボケカスゥ!」


「みんな、ドラゴンが出たんだ! ワイバーンタイプのな!」
 いつものポーズで久方 相馬(nCL2000004)がそんなこと言うもんだから、みんな武器を手に『ひと狩り行くのか?』と沸き立ったが、そうではない。そうではないのだ。
「文明的土地開発を遂げたイギリスから亡命するように移り住んできたドラゴンのゴンさんは日本の土地開発にも追われついにホームレスとなってしまったが、つい先日住み着いていた工場跡も取り壊しが決まりにっちもさっちも行かない状態に……!」
「うわ、問題が現代的」
「外国人労働者の居住問題みたくなってる」
 握った拳をわなわなさせる相馬。
「しかも今回は見た目だけは凶悪なゴンさんを警戒して工事会社がトラブルバスターを雇ってしまったんだ。こいつらは因子能力を仕事に使う連中で、かなり手荒なことをする荒くれ者としてその界隈じゃ有名なんだ。このままじゃゴンさん含めホームレスたちが酷い目にあってしまう!」
 ゴンさんは古妖。ワイバーンの子孫であり、疫病と嫉妬を象徴する通り爪から毒液を分泌して切りつけたり、ブレスに毒の霧を混ぜるなどして人々を死に至らしめることができるそうだ。
 普通にホームレスしていたあたり、いたずらに暴れていたとは思えないが、今回の騒ぎで力を発揮してはトラブルバスターどころか工事作業員や他のホームレスたちまで死んでしまいかねない。
「まずはこのドラゴンを戦乱から外し、その後トラブルバスターたちを帰らせるのが目的だ。多少手荒なことになるかもしれないから、覚悟しておいてくれ! 頼んだぞ!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:簡単
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.場の全員を少なからず納得させること
2.なし
3.なし
 八重紅友禅でございます
 ドラゴンって、なまじ長生きで人間に理解があるぶん現代の環境に追いやられてそうですね。
 ちなみにワイバーンは本場イギリスではドラゴンとは別の何かとして区別されているそうですが、ここでは総称して『ドラゴン』と呼んでいます。

●依頼目的
・ドラゴン、ホームレス、工事作業員、トラブルバスターの全員を少なからず納得させること。
 なので、一番手っ取り早いのはその場の全員を殴り倒して『死にたくなかったら帰れ! ホームレスどもは市役所の前で座り込みでもしてろ!』と怒鳴りつけることですが、恐らく悲しみしか生まないでしょう。トラブルバスターに次の仕事が生まれるだけという気もします。
 ただし平和的解決を求めれば求めるほどプレイングの難易度が上がっていくので、どこを着地点にするかをまず相談して決めると良いでしょう。

●戦闘データ
・ドラゴン
 ホームレスです。工場跡に住み着いていました。古妖カテゴリ。
 毒の爪:物近単【毒】
 毒の霧:特遠列【毒】
 毒の血:自付与【カウンター】

・トラブルバスター
 雇われて仕事をする覚者です。今回はホームレスたちの現場からの排除を依頼されています。成功報酬型なうえ信用商売なので、依頼を達成するために全力を尽くすでしょう。
 現因子・五行混合。武器は主に鈍器や銃器。
 大体F.i.V.E覚者5人分の戦力。
 
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
7/9
公開日
2016年05月22日

■メイン参加者 7人■

『正義のヒーロー』
天楼院・聖華(CL2000348)
『桜火舞』
鐡之蔵 禊(CL2000029)
『静かに見つめる眼』
東雲 梛(CL2001410)
『むっつり彼女』
嵐山 絢音(CL2001409)
『侵掠如火』
坂上 懐良(CL2000523)

●F.i.V.Eはこれでも大学のおまけ組織
 東雲 梛(CL2001410)は不機嫌だった。
 アタリに『ホームレスをファイヴ村や市で雇えないんですか』とあえて敬語でちゃんと聞いたのに、その件にはタッチしていないという事務的な対応をされたからだ。
 理屈はわかるが感情ではわからぬ。梛は御年16歳の青年である。男子高校生である。政治や金のことはわからぬ。
 かといってその不満を言語化するのも難しく、仕方なく車窓を見つめて黙っていた。
 外の景色が素早く流れていく。マイクロバス特有のエンジン音と振動が苦しい。
「しかたねーって。ファイヴ村は俺たちで管理してるんだから、アタリさんは何もできないぜ」
 お菓子片手に言う『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)。
「そんなの知らないし……」
 理屈は分かるが以下略。聖華も似たようなものなので、たははといって笑った。
「でも多分大丈夫だろ。ファイヴはおっきいんだ。仕事も済むところもあるぜ、きっと!」

 嵐山 絢音(CL2001409)は不機嫌だった。
 仕事のため(ないしは組織把握のため)と思って依頼に参加してみたが、周りは話したこと無いひとばかりだったからだ。
 年齢的には同程度の男女が集まっていて、みんな同じ高校に通っている。絢音だけ学校が違うので気まずいのだ。
 例えるなら、通っている塾で合宿があったけど学区がギリギリだったせいで自分だけ学校が別だった感じだ。まわりは仲良くしているのに、というか仲良くしているだけに、自分だけ居心地がわるい。
 ……と、本人は思っている。
 絢音の内向的精神性がなせる思考であった。
「和を以て貴しとなすだぜ、今回の件は。兵法的似考えても戦わずに終わるならそれこそが善の善なる者なりってな」
 『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)が携帯用のヘアワックスで髪型を無理矢理オールバックにしながら話しかけてきた。
 今に限らずかなり頻繁に話しかけられてはいるのだが、『ヘイホー』とか『ジョーザイセンリョク』とか意味分かんないこと言うので困っている。
 例えるなら、ひたすらロボットアニメについて語る男子と『ぜんぶガン○ムでしょ?』と思ってる女子の温度差であった。
 なので返事のしかたはだいたいこうだ。
「はあ、うん」

 学生たちの青春めいたやりとりをかなり無視して、阿久津 ほのか(CL2001276)はおやつのチョコクッキーをさくさくしていた。
 クレヨンかなってくらい大雑把な図を膝に広げて眺めている。
「うむむ~、住むところが無くなるとみんな困ってしまいますよね~。でも工場のかたもこのままだと困ってしまいますし、トラブルバスターさんたちもお仕事できてますし~」
 どうやら立場の三角関係を図にしたものらしい。
 ドラゴンの絵がそうとう大雑把だったが、『罪なき人々の盾』鐡之蔵 禊(CL2000029)はその辺うまく理解しつつ、横から覗き込んでいた。
「難しいかもしれないけど、みんなが笑顔になれる結論があるんじゃないかな。たとえば住む場所や仕事を別から提供するとかさ」
「ほえ~。そんなことができるなんて、すごいですね~」
「ねー」
 首を傾げ合う二人。
 女子高生のほのかからすれば二十歳を超えた女子大生こと禊はオトナである。
 オトナが言うなら大体できるでしょ、たぶん。
 そんなノリで、ほのかは頷いている。
 とはいえ禊も21歳。年齢的には『成人した子供』である。人生のチュートリアルを終えて間もない彼女に社会システムを理解することは難しい。30超えても難しいんだから、当然である。
「まあ、でも、最初は話を聞いて貰う努力をしないとね」
 『おっぱい天使』シルフィア・カレード(CL2000215)は大人の雰囲気でそう言った。
 テンションだけ見るなら禊から干支一週分は人生経験を積んでいそうだが、これでも二十代。三十路二歩手前である。
 なまじ教師なんてしてるもんだから間違えやすいが、シルフィアはかなり若い部類に入るのだ。
 それも100人に一人くらいの希少さである。ちなみに教師の平均年齢は40歳前後と言われている。
「世の中、話を聞いてくれるひとばかりじゃないもの」
 しかしシルフィアの振る舞いはなんとなく人生経験を匂わせるものだった。ので、ほのかと禊は同じようにこう言った。
「「うん」」

 かくして。中高生とその引率みたいなチームは、件のトラブルへと介入を始めたのだった。
 こうして見れば頼りないが、すぐに誰もが知ることになるだろう。
 人の質は年齢なんかじゃあないと。

●トラブルトライアングル
 工事現場ではいまだにらみ合いが続いている。
 抗議の声をあげ、強制撤去されるなら物理的抵抗も辞さないという覚悟のホームレスたち(ドラゴン含む)。
 理屈としては絶対自分の方が正しいのに苦しい気持ちにさせられている工事責任者。
 雇われた以上は仕事をきっちり終わらせたいトラブルバスター。
 そこへ、新たな集団が入り込むことで事態は変化した。
「急にごめんなさいね、ちょっとお話いいかしら」
 シルフィアとほのか、その後ろで『きをつけ』をする懐良という三人組が工事責任者の後ろから声をかけた。
 割り込みをされては困るとばかりにトラブルバスターの連中が早足でやってくる。
「なんだてめぇ! 仕事中だコノヤロウ!」
「はじめまして~、ファイヴの者です~。力を貸してくださる人材を探してこちらへうかがいました~」
 ふわふわしたテンションでほのかが顔を挟んでくる。
 トラブルバスターが責任者のおじさんに耳打ちした。
「なんだよファイヴって。あんた知ってるか」
「いや知り合いにはいないですね……。トラブルバスターの業者さんじゃないんですか」
「だったら俺らが知らないわけねえべよ」
 ひそひそ話が長いようなので、シルフィアはこほんと咳払いした。
「別にあなたたちを邪魔しにきたわけじゃないの。勿論敵対もしないわ」
「じゃあ何しに来たんだい」
「そこのドラゴンとホームレスを引き取りたいの。納得せずにドラゴンが暴れるようなら黙らせるのに協力するわ」
「協力だぁ?」
 トラブルバスターのおじさんは眉を歪めた。
 どんな仕事でも取り合いになる世の中である。便乗してきて仕事を奪ったり、分け前を求めるやからも多い。
 梛が顔を突っ込むようにして付け加えた。
「あ、俺たち、報酬いらないんで」
「ボランティアか!? 馬鹿か!?」
 けっこうな言いようである。
 梛は一瞬『ア?』と思ったが顔には出さなかった。
 一応説明しておくと、ボランティアは志願兵のことであって、ただ働きの代名詞ではない。なので意図せずファイヴの本質を表わしているようでもあった。
 表情を崩したまま話を続けるほのか。
「ドラゴンさんいるじゃないですか~。このタイミングで戦闘に入ったら、依頼主さんが危険ですよ~。怪我させたくないですよね~?」
 ドラゴンと工事責任者を交互に見る。
 工事責任者のおじさんはかなり控えめに『まあできれば穏便に』ときわめて小さな声で言った。
 言外に『ホームレスたちが納得するとは思えませんなあ』と述べているようでもある。
 だて眼鏡をかけた懐良が(かなり間違ったインテリイメージで)彼らの前へ出た。
「彼らをこちらで引き取れば、あえて強硬手段にでることもない。あえて強引に話を進めるのであれば司法介入という手段もとれますが……」
 眼鏡を絶妙なタイミングで光らせる懐良。練習したかいあって、工事責任者は額の汗をしきりにぬぐい始めた。
「いやあまずいですよ裁判は。下手に示談金なんて話になったら……」
「安心してくんな旦那、そうならねえためのトラブルバスターだろうがよ」
 じっと見つめる懐良に、トラブルバスターはつとめて偉そうに話しかけた。話し合いになった以上、ナメられたら終わるからだ。
「ホームレス連中を綺麗に撤去できるならやってこい。ただし今から一時間以内だ。でもって分け前もやらん。譲れるのはここまでだ」
「ええ、結構です」
 再び眼鏡を光らせる懐良。
 シルフィアに場を譲る。
「あっちは仲間が対応してるわ。終わるまで未来の話をしましょうか」
 服の裾をつまんで胸元をより見やすくすると、シルフィアはしなをつくった。

 梛がホームレスたちのほうへとやってきた。
 あっちは済んだ。一時間らしい。そんなことを端的に伝えた。
 伝わった相手が絢音だったので『うん、ありがと』くらいの会話しかなかったが、梛は特に気にすること無く状況を観察しはじめた。
 工事責任者とトラブルバスターは仕事でここへ来ているぶん、理屈で解決できた。
 しかしホームレスは理屈で対応しようとすると確実にヤバい。文字通り今を生きているひとたちなので、感情で行動するのだ。マナーやルールで話ができないのだ。
 と言うわけでここは勢いが大事、らしかった。
「いーい!? 私たちはー! トラブルを! みぜんに、ふせぐためにー! やってきましたー!」
 わーわーわめくホームレスたちに向けて両手をメガホンみたくして叫ぶ禊。
 ホームレスたちはある意味命がけなので、彼女たちを見た瞬間から『敵のてさきだ!』『かえれー!』とか言ってくるので会話するまでが大変なのだ。梛はこの時点でかなり『アァ?』と思ったが、やはり顔には出さない。
 なぜかって、戦闘になったら一番注目しなくちゃいけないドラゴンがホームレスの一員として普通にわめいているからだ。これじゃあただのデカいホームレスである。
「あのね! 工場の持ち主が、ここを解体するの! あなたたちは、移転を余儀なくされるの!」
「いくところなんかないわい!」
「かえれー!」
「もませろー!」
「誰だ今もませろって言ったの!」
 わっちゃわちゃだ。
 そこで、聖華がどんと胸を叩いて台の上に立ち上がった。
「安心しろ! 俺らは家と仕事にありつく機会をテーキョーするぜ!」
「うそつけー!」
「仕事なんかあるかー!」
「もませろー!」
「だから誰だ今のいい加減にしろ!」
「ホームレスに未来なんてないぜ。いつか脱却しなきゃいけない。いつかって今だぜ!」
 状況を見守っていた絢音も、タイミングはここかなという顔で僅かに声を張る。
「すくなくとも、衣食住の保証は確かなものよ。でしょう?」
 ちらりと聖華を見る。
 聖華は一瞬『えっ』という顔をしたし、なんなら禊も『あっ』という顔をしたが、次の瞬間には二人とも胸をどんと叩いていた。
「「まかせて!」」
「ほんとかよー!」
「マグロ漁船なんかは嫌だぞー!」
「もま……むりかな」
「てめえこの野郎!」
 関係ない喧嘩が始まりかけている。
 梛はかなりげんなりした。
 自分の倍くらい生きてる大人がなにやってんだろう、である。
「なあ、ずっとここにいられないって、分かってるんだろ? 俺たちんとここいよ。居場所がないのは……つらいからな」
 梛のトーンはかなり低かったし、なんなら周りの声にかき消されて聞こえないほどだった。しかしホームレスたちはしんと静まりかえった。
 居心地の悪さに目を背ける梛。
「……なんだよ」
「いや、その」
「なんか、すまん」
「うん。えっと、うん」
 ホームレスたちがしゅんとしている。
 年若い青年に(おそらく)本気で同情されたことで、自分たちの行動を冷静に考えてしまったのだろう。
 それが言語化できずにまごついている状態である。
 ドラゴンも同じだった。
 はるばる日本まできて何やってんだろう、である。
「なあドラゴン。アンタはもう人間と無関係に生きていけねえよ。だからいっそ人間社会で暮らしてみないか? 空を飛んで身体が大きいってだけでもできることは沢山あるぜ。工事現場とかさ」
 ちなみに。
 ドラゴンに工事現場で働かせると安全面に極度のリスクが発生するのでかなり嫌がられる、らしい。本職の人がいうリアル話である。
 計算はコンマミリ単位だし、傷をつけたら弁償モンだし、大雑把に見えてかなり繊細な仕事なのだ。
 そーゆーこまっかい話はさておき。
「仕事をしてお金をかせいで自分の家をもとうぜ。そうすれば誰に追われることもなくなる」
「そうよ。持ち家があれば……えっと……」
 絢音は話に便乗しようとしてはたと大事なことに気がついてしまった。
 ドラゴンの家ってなんだよ、である。
 聖華はそーゆー理屈をすっ飛ばしてものを言えるが、絢音は細かいところを無視すると気持ち悪い性格である。
「参考までに聞きたいんだけれど、どんな場所に住んでいたの?」
「えっ……」
「金銀財宝をベッド代わりにしたり、溶岩渦巻く洞窟なの?」
「え、そ、そうかな。うんそうそう金銀財宝」
「今リズムで答えただろ」
 ちなみに、金銀財宝を守って寝てるのはベーオウルフのドラゴン。羽の生えたヘビみたいな奴である。同じイギリスだし似たようなもんだが、ワイバーンとは別物である。溶岩の話もまた別のドラゴンだ。
 絢音の想像は、たぶん日本産のファンタジー小説あたりでそれらが混ざったものだと思われる。
 詳しく話すとドラゴン警察が踏み込んできそうなので、専門書かなんか読んで欲しい。
「じゃあどういう家に住みたいの?」
「自分の風呂とトイレがあって、食事とくつろぐスペースが別にあるとよい」
「リアル……」
 人間用のだったら月六万くらいで見つかりそう。
 ともかく。
「一旦信じるからな! 一旦! 一旦信じてだめだったら、押しかけるからな!」
 ホームレスたち(ドラゴン含む)はそこまで言ったあとで、直接F.i.V.Eへの移動を始めたのだった。

 後日談ならぬ余談。
 聖華や懐良たちがドラゴンに気軽に『のせてー』と頼んだら乗せてくれた。
 ただしジェットコースターからレールと安全装置と椅子を全部とっぱらったような乗り物だった。風圧すごくて表情保てないし落ちたら絶対やばいし死ぬかと思った、らしい。
 あと梛がドラゴンのスキルを『どうやってんの?』と聞いたら素直に教えてくれた。
 けど全身の穴という穴から血液中の毒素を吹き出す感じというあまりに参考にならないことを言われて諦めた、らしい。
 トラブルバスターのほうはほとんど働かずに仕事が終わったのでほくほく顔で帰った。シルフィアがF.i.V.Eとの提携話を持ちかけたが、マウントとられそうで嫌だという理由から彼らは話を保留にした。おそらく永久に保留するだろう。
 でもって、これが一番大事なことだが。
 工事現場から移動してきたホームレスと、その情報を聞きつけた周辺のホームレス。併せて50人前後とドラゴン一匹がF.i.V.Eに押し寄せ『今日中に家と仕事をくれ』と要求する事件が起きた。
 アタリさんが大量の仕事書類に埋もれながら絶叫したのは言うまでも無い。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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