<雷獣結界>痛みの塔
<雷獣結界>痛みの塔



 FiVEの覚者達が雷獣の元に訪れ、衝撃の事実が判明した。
 四半世紀の間、日本を覆っていた電波障害。
 それは全国に存在する雷獣という古妖の仕業だった。
 彼らは妖を封じるために電磁波を出して自らの結界を生み出していた。それが結果として電波障害を生んでいたのだ。
 そして二十年以上結界を維持していた雷獣も疲弊し、結界の維持は限界が近いという。
 雷獣の結界がなくなれば、そこに封じられた妖が世に出てしまう。そうなれば混乱は必至だ。

 電波障害を解決するため。
 妖を滅し、平和を保つため。
 何よりも、雷獣を助けるため。
 FiVEは大々的に覚者を派遣し、雷獣結界内の妖を討つ作戦を発動させた。


 雷獣が、その役割を止めた刹那であった。

 荒れ狂う慟哭。
 叫び声にも似た咆哮。
 悲しみ帯びる憤怒。
 ありとあらゆる負の感情を溜め込んだ混ざりもの。
 何人もの人間が重なり合い、混ざり合った血肉の化け物。
 妖は―――、東京タワーの根本から出現し、それを覆うように登っていく。
 一瞬にして肉塊の塔へと変わった東京タワーは、いたるところでどくんどくんと鼓動が聞こえ、まるで次のランクへ至る蛹のように静かに君臨していた。


 久方 相馬(nCL2000004)は言った。
「文字通り、負の感情の塊。東京ってストレスとか多そうだしな、そういうのだぜ」
 相馬は言いながら、資料を渡していく。
「特に此処の妖は強力で、ランクは3。
 巨大な塔の化け物で、覚者たちは妖の腹の中に入っていくこととなる。
 内部頂上の核となるものがあるはずなんだ、それさえ壊せれば討伐は可能なんだぜ。だがしかし、それまでは何度でも蘇るし何度でも再生する。
 外からの攻撃は受け付けないから、飛んで頂上から穴をあけて入るっていうのは無理そうなんだぜ。
 いわゆる、ダンジョンってやつだな……頼んだぜ!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:工藤狂斎
■成功条件
1.妖の討伐
2.なし
3.なし
 全体っすね、久々です。よろしくです

●状況
 雷獣の結界を止めるために、結界が封じている妖を倒すこととなった。
 ここでは東京タワーにべったりと張り付いた肉の塊を倒してもらう。

●敵:妖

・識別名『痛みの塔』
 ランク3、一体だが強敵で、とにかくでかい

 東京全土のストレス社会の塊、核を壊すまで何度でも再生し、何度でも蘇ります。核は塔内部の頂上。鉱石のような物体にダメージを与え続ければ壊せます。
 再生蘇りには多少の時間がかかるため、その間をついて登っていくことは可能です
 内部の壁側面が螺旋階段のようになっているので、それ登れば大丈夫です
 因みに飛んでショトカしてもいいですが、飛行戦闘ルールは適用するのでお気をつけて
 現存の東京タワーの内部とは違う構造となっておりますので、それはご了承ください

 攻撃方法は以下

 ユニット召喚(毎ターン五体のユニットを召喚します。最大数10体で、減ると次のターンで増えます。またこのユニットは移動阻害やブロックを行う機能はありませんので、無視して移動することはできます。攻撃は全て物理麻痺攻撃です)
 触手(壁から触手が生えて攻撃してきます。遠距離まで攻撃が届き、直撃すると強制移動で引き寄せられます。触手の任意の場所に立ち位置が変更されます)
 亡者の群れ(白骨化した人間のようなものが襲ってきます。毎ターン一体召喚、最大で3体まで。近接特攻撃特化です。威力が馬鹿高い傾向にあります)
 戦士の群れ(亡者の群れの、近接物理特化型です)
 腐食の吐息(P:塔内に充満している赤黒い霧です。視界が大変悪くなっております。対策がない場合、覚者の命中回避を大きく下げます)

●場所:東京タワー
 紹介している通り、妖タワーとなっております

●雷獣
 下で待機しております、もしもの為の要員

●大神シロ
 同行します。指示は相談でわかるように書いてくだされば参考にします

 それではご縁がありましたら、よろしくお願いします
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(3モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年12月10日

■メイン参加者 8人■



 見上げ、聳えたのは普段よりも大幅に変わり果てた姿の東京タワーである。
 普段は観光客や、仕事に行きかう人通りが多いこの場所も、今や閑散としておりまるで別の世界にいるようでもある。
 ゲームのダンジョンには程遠いが、妖である塔は常にチャレンジャー(覚者)たちを待っているのだろう。
「東京って前から怖い所なんだろうなって思ってたけど、やっぱり怖い場所だ! ストレス社会!」
 冗談交じりにも『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は、呟く。片手を平たくして目元が陰るように額に当てながら上を見上げていた。
 繰り返しにはなるが、奏空の知っている東京タワーではないことに、ちょっぴり観光気分としては残念である。
「ストレス、ね。ここに集まるのも納得だわ。現代ならではの妖ね」
 うんうんと頷きながら、姫神 桃(CL2001376)は奏空の言葉を肯定した。核を破壊しない限り、何度でも蘇るとはそういう事なのであろう。絶えず流れてくるストレスという負の感情が、この塔に力を与えてしまっているということだ。
「聳える塔は空高く、渦巻く欲望抑圧なんのそのっ」
 ならばその負の感情、断ってみせましょう。
 『独善者』月歌 浅葱(CL2000915)は今日も高らかに英雄として君臨する。なびくストールか、マフラーが吸い込まれるように塔の入り口を指さしていた。
「なるべく治療はしてやるが、無理すんなよ?」
 『慧眼の癒し手』香月 凜音(CL2000495)は、隣にいる『天衣無縫』神楽坂 椿花(CL2000059)の頭を撫でた。
 いつも以上に優しく撫でてくる凜音の手、その中に込められた心配という気持ちが見え隠れしていたのだが。椿花は持前の天使爛漫さが、ある意味、隔てとなってしまったか。彼のそれに気づくことは、
「?」
 できなかったのだが。
「うん、大怪我しないように頑張るんだぞ!」
 花が咲くような笑顔に、凜音は苦笑していた。
「確かにこの塔がびりびりされているんなら、きっと電波もくそもないわな」
 『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)は隣にいる『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)へ話しかけるように瞳をスライドさせてみたが。数多は瞳を輝かせながら、別の世界に旅立っていた。
 別の世界というのは、今より先、未来の想像のことなのだが。
「あれあれ、この結界はずれたら、日本でもスマホ!あれちゃんと使えるようになるのよね!」
「まあ、そうやんな」
 数多の声に、ジャックは頷く。数多は更に言葉を連ねた。
「リアルタイムで、SNSとかおしゃれ! 海外のあーゆーのみて羨ましかったのよね」
 女の子だなあ、とジャックは思う。
「では、参りましょうか」
 納屋 タヱ子(CL2000019)は一歩、前へと進む。其処にはステータス通りの屈強な心があった。こんな塔、いつまでもここに置いておくわけにはいかないのだから。大神シロがその後ろを、尻尾を振りながらついていった。


 早速ですが。
「でぇえええええええええええ!!」
「あーっ!ジャックさんが触手の餌食にー!!」
 ジャックの足に絡んだ触手が彼を引っ張り、そして引き寄せられる。奏空は顔を両手で覆った。
「南無」
 数多は両手を合わせ、
「まだ彼死んじゃいないよっ」
 奏空はツッコミを入れた。本日のツッコミ要員奏空くんです。
 ジャックが後衛から一気に前衛まで引きずり出されたところで待っていたのは、戦士――とはいえ腐ったゾンビのようなものが剣や槍を持っているものだが、それが彼を襲った。タヱ子が凜音を守ったのが功をそうしたが尊い犠牲は出てしまったか。凜音は赤髪の少年の叫び声を聞きながら惜しい人を無くしたと眉間を抑え、タヱ子は守れなかった……と苦い顔をした。まだ彼死んで無いけど。
 ボロボロの刃がタヱ子えようとした時、一回転して威力をつけた椿花の刀が、敵の刃を寸前で食い止め吹き飛ばす。更に浅葱が拳を振り上げ、それが敵戦士の身体に触れた瞬間、ドン、という衝撃と共に戦士の身体が落ちていく。
「ふっ、また一つつまらないものを殴ってしまった」
「成程、塔なら敵を落としてしまえばええんやね」
 触手を手で引きちぎったジャックが、落ちていった敵を見ろしながら言った。
「にーさまとチャットして既読チェック! つかなければ100連発スタンプ!」
 数多の頭の中ではどうやら先を見据えたものが走馬灯に近い状態で流れているようだ。
 普段よりもキレのある動きで、骸骨染みた亡者の群れに縦一線横一線と刻みながら、その表情は、……いや、目線は敵を映してはいない。
「常ににーさまと繋がっていられるネットの普及は人類にとって大きな進歩であり、そして私とにーさまの日々の充実と、これからの日本の発展とにーさまと私のラブロマンスアターック!!!」」
「落ち着いて数多さん!!」
 奏空は雄叫びをあげつつ、粉々になった骨の破片が舞う中で、桜色の髪がなびく。なるほど、彼女も櫻火真陰流のもののふ。どうやら妄想に浸っていても心眼で敵を判断できるということか、たぶん。
 数多の身体が後方宙返りしたとき、狙って凜音が攻撃の体勢に入った。
 凜音を中心に瑠璃の雫が宙を舞い、凜音の指先の指示に従ってそれは一本のナイフの形へと変わる。
 中空にいる数多を綺麗に避けながら、水で構成された千本ナイフは触手に突き刺さり弾けさせるように切り刻み、動きを止めていく。
 シロは覚者たちの間を駆け、一体の亡者へと飛びついて噛みついた。桃はシロへ無茶してはいけないと言っていたように、シロもその命令に従っているのだろう。敵の攻撃の瞬間を見極めながら押しては引いてを繰り返して戦闘している。
「大神さんと顔を合わせるのは初めてですよね。よろしくおねがいしますね」
 タヱ子の言葉に、尻尾がふらりと揺れる。瞬時、キリリとした鋭い瞳へと変わったタヱ子。タヱ子が予想した通り、どうしても数の多さでは敵のほうが一枚も二枚も上手である。それとは関係無く、虫のような蠅のような形をしたユニットがタヱ子を突き刺しその身体を麻痺へと蝕んでいく。
 だがしかし、今の彼女は麻痺さえ通らぬ屈強な身体。即座に刀を抜いたタヱ子は蠅を二つに分割していく。
 二度目の攻撃を開始していく奏空。彼の両手におさまる二振りの刃が唸る。半回転しながら繰り出す猛攻に、戦士の首が飛び、亡者の身体の腰から上が落ちた。
 少々の間ではあるが、敵が落ち着いた瞬間覚者たちは走り出す。少しでも上へ、少しでも頂上への距離を稼ぐために。 

 ここは階層的には、まだまだ中腹だろうか。
 東京タワーは全長333m(詳しくはもっと細かい数字になるようだが)。
 とはいえ普段の東京タワーの外枠に肉が当てはめられていつもとは違う内装になっているものだ。

 妖の腹の中であると思うと、背中がぶるりと震えた奏空。
「シロ君も手伝ってくれてありがとう! 一緒に頑張ろう!」
 傍らにいたシロは、その場で嬉しそうにくるりと一回転した。くんくんと鼻を利かせたシロは、牙を剝き出しにしながら唸る。
「次がきたってとこかな」
 凜音は経典を開く。淡く光輝くそれ。
「しつこい手合いは嫌われるぜ?」
 即時、地面から這い出るように出てきた戦士の頭を穿つような氷柱の槍。そして走り出していた奏空に並走するシロ。
 刀には痺れの呪いがのっかっている。奏空のそれは忍者の記憶を継ぐ奏空ならではに改良されており、逆手に持つように短く、そしてよく馴染む。昔の記憶を思い出してか、それとも熟達した奏空であるからか、戦士の背後に回った彼は後ろへ突くように刀を振るう。
 胸元に刃が飛び出た戦士は唸り声をあげて消えていった。だがまだ、亡者が壁から這い出ては奏空の腹部に気の弾のようなものをめり込ませた。
 凜音は回復の詠唱を開始。
「シロ! 俺の目になってくれ!!」
 隣でジャックは魔導書を開いた。もう片方の手には、複雑に文字が絡んだ魔法陣が形成され回転を始める。シロが濃い霧の中で、ジャックに敵の位置を知らせるようにジグザグに走る。
 その点を結ぶように。
「ふっとべ!!」
 ユニットを巻き込み、彼の片目に見えるもの全てが炎上し、灰となって消えていく。
 が、特攻撃にまだ耐性があった亡者が地面を這うようにしつつ、椿花へと飛びかかった。
「うお!! しぶとい!!」
 ジャックの声に、桃が動く。ユニットの死骸が灰となって降り注ぐ中、桃は片手に乗せた種に吐息を吹きかけた。
 仲間を傷つけることは許さない。気高い橙の瞳が輝いたとき、急成長を遂げた種は蔓となって亡者へと絡んだ。
「浅葱!」
「はい!」
 呼ばれた浅葱は既に動き出している。弧を描くように空中にいた浅葱は、
「御代は落ちてのお楽しみっ! 出て来たらもう一回落ちれますよっ」
 亡者の丁度脳天の位置まで到達した瞬間、上の階であろう床を蹴って直下へと落ち、衝撃だけで亡者を打ち落としていく。漏れたのは、もれなく椿花が根こそぎ刈り取っていった。這い出してくる触手を丁寧に切り裂き、そして椿花は常に保護者のような彼を視界にうつしては彼が無事かを見極めていた。子供であろうとも心配なのだ。
「さ、いきましょうか」
 タヱ子の言葉に、再び塔の上へとのぼっていく。


 塔の上へと登るたびに、敵も焦りが強くなってきていた。蘇生するタイミングさえ変わらないものの、
「うげ」
「うぁっちゃ」
 ジャックと凜音が同時に声を漏らした。二人して後方を見た時である、薄い霧の奥には蠢く影があった。
 ノックバックやらで落としていた亡者や戦士が上ってきたのだ。つまり、後ろからの襲撃である。
「大丈夫です。全部まとめて、薙ぎ倒せば」
 タヱ子がガッツポーズをしながら無表情で言った。
「ここからが佳境ってやつね。いいわ、雷獣たちへの信頼の為にもなんとしてでも勝つわよ」
 雄々しい桃の声。
 そして復活する戦士や亡者たち。
「いくよ!!」
 奏空は今一度吼えた。
 
 最速で動いた奏空。前方の亡者の群れの間に身を投じ、そして回転するようにして敵を細切れへと変えていく。
「しかしどんだけ東京の人達はストレス抱えててんだー! ちゃんと寝てご飯食べてるかー!」
 無邪気にも笑いつつ、しかし確かに都心のストレス問題は深刻か。学生や子供には見えぬ闇がそこにあるのだ。知ったことか、全てを奏空はなぎ倒していく。
「もっと自分を大切にしなきゃ! こんなストレス、核ごと俺達がぶち壊してやるから!」
 奏空後方、飛び出した戦士の刃が彼を引き裂く、かと思われたがタヱ子が刀を振るい、その刃を押し返した。
「ありがとう、タヱ子さん!」
「お気をつけて」
 一瞬の言葉を交わした刹那、奏空は再び放電しながら敵の中心部へと身を投じていく。
 タヱ子の防御はファイヴの中でも抜群の数値であるが故か、そしてバッドステータスの対策もされているとすれば文句は無い。ユニットの攻撃に痺れ、回復が途切れることが無かったのもタヱ子が此処にいるおかげでもあるだろう。
 凜音とジャックの手厚い回復がそこに乗れば、文句無しの防御が完成している。
 椿花は背中を信頼している人に預けながら、後方から来た敵へと向かった。内心、凜音としてはそれさえ少々危なっかしくみえただろうが、小さな背中は任せろと訴えていた。
 椿花の刃が台風のように舞う。暴風の中心で踊る少女の表情は常に笑顔であった。しかしそこで、小さな叫び声が響く。数多の身体が触手に巻き込まれ、空中を引っ張られる。
「なにこれエロ同人じゃないわよ! こら野郎ども見るな!」
「くそっ! カメラ忘れた!! 奏空! カメラある!!?」
「ありません、すいませんっふぇえ」
「ばっかやろう!!」
 奏空は無意味にジャックへ申し訳なさそうに頭を下げた。
「り、理不尽だ」
 凜音はつい、半目になった。しかし数多も黙ってイイコトされるだけの女ではない。腹部に絡んだ触手を掴むなや否や、渾身の力を持ってして触手を引きちぎったのである。
「見たらこれが貴様らの末路だからね、覚えてなさいよ!!」
 浅葱は手を叩きながら笑い、凜音の表情は青ざめていた。ジャックとしては、ハロウィンのゴリラを思い出して胸が辛くなっていた。
「私をくっころさせたかったらオークでももってこいや!」
 ほう?言ったな?
「数多さんそれ以上はメタ的にやばいです!!」
 本日のツッコミ役である奏空は最後までしっかり仕事するのだ。
 さておき、桃と浅葱は背中合わせとなった。上からも下からも這い出る亡者や戦士や触手などなどなどの、豪華セットに何やらため息しかでない。
 終わらせよう、二人は暗黙下で話し合ってから同時に駆け出した。
「ストレスは思いっきり暴れて発散させてあげるわ!」
 桃のは苦無を逆手に持つ。風のように駆け出し、そして狙うはタヱ子の血を吸った刃を持つ髑髏へと。髑髏はこれには応戦した。人形のようなガクガクの動作で剣を振り上げ、そして落とす。しかしそこには桃の残像しか残らない。背後に回った桃は後ろ手に苦無を引けば、ぽぉんと髑髏の頭が吹き飛んだ。
「ふっ、ストレス発散の手軽な方法は暴れるらしいですよっ! ストレスごと飛んでいって貰いましょうかっ」
 浅葱は一度、ふっ、と笑う。
 それから桃とお揃いのショットガントレットを一層強く握りしめた。暴れるだけ暴れるがいい、それで気が済むのなら。それで、ストレスが吹き飛ぶのなら申し分無いというものだ。駆け出した浅葱は真正面から腐った亡者を右ストレートで殴り倒す。相手も浅葱に摑みかかるも、関係なく、腕さえ動けば何度でもパンチを食らわしていく。
 その中。再び奏空は走っていた。静電気のようなものを身体中から出しながら、上へ上へ、そして。奏空は何度目かの声を荒げていう。
「あそこ!!」
 奏空の指差した先。
「あれか!」
 ジャックの薄い視界でもわかる程度に、きらりと光る飛空石。もう核であると言わんばかりに輝くそれ。
「了解っと」
 凜音は経典に手をあててから、それを横へとスライド。即時、飛空石へと続くように地面を辿り空へと突き出した氷の刃が形成された。詠唱を開始した彼を守るように、椿花が周囲に敵を近付けさせぬように布陣する。同じく、タヱ子も。
「さっさと壊してしまおーぜ。雷獣の仕事は今日でおしまいだ」
 凜音がぱちんと指を弾けは槍へと変化した水中の空中の水滴。それは手足のように器用に動き、敵へと突き刺さっていく。
「いけ!!」
「りょ!」
 数多はその氷の道を走って行く。一振りの巨大な刀を地面に引きずり、擦れた部分からは火花が散る。溜まってきた霧が核を拡散と色濃くなってきたが、奏空が刃を投げ、核へそれが突き刺さった。僅かに数多から洩れ出る炎が奏空の刃に反射して、キラリと光った。そこだ。
 氷の先端を蹴る、跳躍、ふわりと浮かんだ数多の躰は空中で横に回転した。
「これで、終わり!!」
 横に振られたそれで飛空石を斬る。その数多の背後からも、桃や浅葱たちの攻撃が追走するように飛空石を追っていく。ぱっくり、割れたそれが段々とヒビが細かくなって粉々になった瞬間、塔を覆っていた肉片たちが叫び声をあげるような音と共に消えていった。
 ふ――と、落ちていく数多の身体。を、空中でキャッチしたジャック。そのまま足場がある場所に着地。
「お疲れさん」
「あ、ジャック君、あなたもちゃんとアプリやりなさいよ。登録してあげるから!」
「お前、終始それやな、や、嬉しいけどね」

 かくして、東京タワーを覆っていた妖は消え去った。
 あとあと8人全員でハイタッチして、シロと雷獣ともハイタッチをかわしたとか。
「シロ、お疲れ様なんだぞ!」
 椿花がシロの頭を撫でる。もっと仲良くなれただろうか。
 電波は回復して、やっとこの日本にも世界の最先端技術の恩恵を受けられる――だろう?

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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