ファイヴ警察24時! 白い粉の密売現場をついに!
悪の蔓延るニッポンポン!
眠らぬ町のネオトキョースゴイタカイビルにて白い粉『コムギ・コカ・ナニカダ』の密売が行なわれているとの情報が当局へ舞い込んだ!
この現場を押さえるべく警察官たちはビルへの突入を敢行したのだった!
……というアーケードゲームが廃棄されたところ、妖がついてハザードを起こしているという情報が入った。
同時期に夢見が視た情報によると、ゲームを起動すると周囲の仲間と共にゲーム空間へ引きずり込まれ、特殊に作成された限定空間で妖の先兵たちと戦闘することになるのだそうだ。
「平たく言うとゲームステージを模した戦闘を3ステージ分行なうということだ。今回はそれら全てを一度に攻略すべく3チームに分けて攻略を行なう。詳細はこっちの資料を見てくれ」
==============================
【資料】
●ステージアルファ:地下駐車場突入作戦!
地下駐車場で敵を倒しながら進み、屋内へと侵入しよう。
エリアは柱や自動車など障害物が多く、お互いに視界を遮りやすく出来ている。
現われる敵は拳銃を持った密売組織モブが複数。
エリア最奥まで進むとエリアボスのスキンヘッドマンが機関銃で応戦してくる。
こうなっちゃうと障害物もなにもあったもんじゃないので、回復や防御を駆使してソッコーで倒そう!
●ステージベータ:密売クラブ襲撃作戦!
密売が今まさに行なわれている会員制クラブへ突入だ!
ソファやテーブルといったもの以外は見通しがよく、逆に言うと敵からも集中砲火を受けやすい。序盤はいかに集中砲火を受けないように立ち回るかが重要だ。
終盤は奥のVIPルームで取引相手とみられる男性がナイフ二刀流で襲いかかってくるだろう。ちょっと人間じゃ無い素早さと軌道で部屋を縦横無尽に飛び回る。いかに捕捉するか、そしていかに当てるかが勝負の鍵だ!
●ステージガンマ:屋上からヘリを打ち落とせ!
密売組織のボスが何を思ったか逃走用のヘリを三台くらいまとめて呼び出した。アサルトライフルで武装した部下が搭乗ドアから攻撃してくるので、これを防ぎながらヘリを撃墜しよう!
最後はボスがどっかしらから落ちてきて拳銃で戦闘を仕掛けてくる。格闘と銃による射撃でバランスよくトータルで強いボス敵だ。バランス良く戦おう!
==============================
「詳細は以上だ。ゲームクリアと共に妖は自己消滅する仕組みになっているから、ゲーム内の戦闘にのみ集中すればいいだろう。
それともしゲーム自体に興味があるなら、特別に廃棄予定のゲーム筐体を数台譲って貰うこともできるから、しっかり言っておいてくれ」
眠らぬ町のネオトキョースゴイタカイビルにて白い粉『コムギ・コカ・ナニカダ』の密売が行なわれているとの情報が当局へ舞い込んだ!
この現場を押さえるべく警察官たちはビルへの突入を敢行したのだった!
……というアーケードゲームが廃棄されたところ、妖がついてハザードを起こしているという情報が入った。
同時期に夢見が視た情報によると、ゲームを起動すると周囲の仲間と共にゲーム空間へ引きずり込まれ、特殊に作成された限定空間で妖の先兵たちと戦闘することになるのだそうだ。
「平たく言うとゲームステージを模した戦闘を3ステージ分行なうということだ。今回はそれら全てを一度に攻略すべく3チームに分けて攻略を行なう。詳細はこっちの資料を見てくれ」
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【資料】
●ステージアルファ:地下駐車場突入作戦!
地下駐車場で敵を倒しながら進み、屋内へと侵入しよう。
エリアは柱や自動車など障害物が多く、お互いに視界を遮りやすく出来ている。
現われる敵は拳銃を持った密売組織モブが複数。
エリア最奥まで進むとエリアボスのスキンヘッドマンが機関銃で応戦してくる。
こうなっちゃうと障害物もなにもあったもんじゃないので、回復や防御を駆使してソッコーで倒そう!
●ステージベータ:密売クラブ襲撃作戦!
密売が今まさに行なわれている会員制クラブへ突入だ!
ソファやテーブルといったもの以外は見通しがよく、逆に言うと敵からも集中砲火を受けやすい。序盤はいかに集中砲火を受けないように立ち回るかが重要だ。
終盤は奥のVIPルームで取引相手とみられる男性がナイフ二刀流で襲いかかってくるだろう。ちょっと人間じゃ無い素早さと軌道で部屋を縦横無尽に飛び回る。いかに捕捉するか、そしていかに当てるかが勝負の鍵だ!
●ステージガンマ:屋上からヘリを打ち落とせ!
密売組織のボスが何を思ったか逃走用のヘリを三台くらいまとめて呼び出した。アサルトライフルで武装した部下が搭乗ドアから攻撃してくるので、これを防ぎながらヘリを撃墜しよう!
最後はボスがどっかしらから落ちてきて拳銃で戦闘を仕掛けてくる。格闘と銃による射撃でバランスよくトータルで強いボス敵だ。バランス良く戦おう!
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「詳細は以上だ。ゲームクリアと共に妖は自己消滅する仕組みになっているから、ゲーム内の戦闘にのみ集中すればいいだろう。
それともしゲーム自体に興味があるなら、特別に廃棄予定のゲーム筐体を数台譲って貰うこともできるから、しっかり言っておいてくれ」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.ゲーム妖をゲームで倒す!
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
・ゲーム内といっても妖が作り出す特殊な空間なので、戦闘ならびに肉体的な行動は通常バトルと同様に行なえます。逆に言うとゲームならではの操作性やアイテムなんかがありません。
・希望すればゲーム筐体そのものをアイテムとして貰えます。希望する際はEXプレイング欄に『ファイヴ警察24時ください』とカギ括弧つきでコピペしてください。権利問題を考慮してファイヴ仕様に改造したゲームを筐体ごと家に送りつけます。
・このゲームは実在の人物団体すぐ殉職するアーケードゲームとは一切かんけいありませぬ。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
9/9
9/9
公開日
2016年05月08日
2016年05月08日
■メイン参加者 9人■

●ステージアルファ
悪の蔓延るニッポンポン! 眠らぬ町のネオトキョースゴイタカイビルにて以下略!
神野 美咲(CL2001379)はないむねを張って叫んだ。
「ふふふ。ついに吾輩の輝かしい歴史が幕を開けるのだ。準備はいいか桃!」
「え、なに?」
それまで説明書を読んでいた姫神 桃(CL2001376)が振り返る。
「だから吾輩の輝かしい……」
「それより名前なんだけど、なんで年下なのにナチュラルに呼び捨てなのかしら。一歩譲ってそれでもいいけれど、私は美咲と呼ばせて貰うわよ?」
「んん? いや吾輩としうえ……」
「ふふっ、またまたー美咲ったら背伸びがしたいのね」
桃は美咲のふっかふかした頭を両手でもっふもふした。
「にゅあー!? やめろ! 獣耳の間をなでなですると眠くなるだろう!」
「君ら、初陣の割に余裕だな」
桃の肩をぽんと叩き、ついでに美咲の頭もぽんと叩く『たぶん探偵』三上・千常(CL2000688)。
表皮に防御シールドが張られたことに気づいて、桃は本能的に気を引き締めた。
「ま、無いよりましだ。カウントダウンはしねえから、気合い入れとけよ」
千常はそこまで言うと、吸っていた煙草をにじり消した。
そういえば、現在地を説明していなかった。
「いくぜ」
千常は舗装された斜面を走り抜けると、目的の地下駐車場へ飛び込んだ。
「ナンダテメェー!」
「スッゾテメェー!」
拳銃で武装した敵が柱の裏から身体を覗かせて射撃をしかけてくる。他にも鉄パイプを掲げて駆け込んでくる者もいた。
千常は手になじんだ棍棒をアテンドから取り出すと、振り下ろされた鉄パイプを打ち弾く。踵で地面を踏み込むようにして隆槍を発動。敵を思い切り突き飛ばす。
手の中で棒をくるりと回し、改めて握り直す。
「いけね、こっち持って来ちまった。まあいいか――身を隠してる奴に集中攻撃だ。後はフォローしてやる!」
「う、うむ!」
自動車の裏で丸くなっていた美咲はハッとして耳を立てた。
覗き込んでみると、千常の接近に焦って身を乗り出す射撃手がいた。
狙い目だ。美咲は術符に念を込めると、一瞬だけ身を乗り出して投擲した。
「ゆけい!」
「ギャアアアアアアアアアアアア!」
カミソリのような力を持った術符が射撃手の顔に突き刺さり、壊れたシャワーのように血を吹き出して踊り狂った。
最近じゃSEROが許さねえようなえげつないダメージ描写に思わずしっぽの毛を逆立てる美咲。
「う、うわあ」
「どうしたの?」
「ななななんでもないぞ!? どうだ吾輩の攻撃は!」
「痛そうね」
同じく車体に身を隠していた桃は、かけていた眼鏡をスッと取って虚空へ投げた。
するとどういうカラクリか(アテンド仕掛けだが)衣装がド直球の忍者装束にチェンジしていた。額当ての部分と穴でも空いてるのかってくらい強情に突き出たアホ毛だけが少々特殊だが、それ以外はザッツ忍者である。
桃は車体から身を躍らせると、飛び側転の要領で向かい側の柱裏まで高速移動。更に一つ先の柱へ移動していく。途中身をひねるように銃弾をかわしつつ、クナイを次々に投擲していった。
「大丈夫? 少しずつ前進して。無理は禁物よ」
「わかっていりゅわい!」
「口調、ブレてるけど」
瞬間、桃のアホ毛がピコンと直立した。
僅かに目を見開く桃。即座にその場から飛び退くと後ろで小爆発が起きた。簡易手榴弾の爆発だ。
投げた相手を特定。前傾姿勢で急接近すると、相手がナイフを抜くより早くクナイを相手の首筋になでつけていた。それだけで敵は血を吹き出し、絶命する。
その後ろを追いかけるように、美咲がすたこら走ってついてくる。
どうやら最奥のエリアまでやってきたようだ。
なぜなら。
「グハハハハ! ここから先へは通さんぞお!」
上半身裸のスキンヘッドという漫画にしかいないような男が、機関銃をセットして待ち構えていたからだ。ボスですよと顔に書いてある。というか頭上に矢印つきで書いてある。
咄嗟に隠れた高級そうな自動車が一瞬で蜂の巣になり、爆発して吹き飛んだ。
肌を焼くような熱気に美咲は耳をぺたんとしていたが、状況を思い出して顔を上げる。
いち早く対応したのは千常だ。棍棒を扇風機のように高速回転させながら突撃。迫り来る銃弾を弾きながら接近する。弾くといっても精々三割。残り七割は『致命傷じゃない』というだけでもろに肉体にめり込んでいた。常人なら指関節すら残らぬスナと化している頃だが、ここは覚者の肉体強度。
「俺が隙を作る。援護してくれ」
「よ、よし!」
頭を下げてぺたんとしたまま、美咲は両手を翳した。
治癒の霧が展開され、千常の身体がみるみる強制修復されていく。
「い、痛くないのか?」
「生きてる証拠だ」
答えになってないが、なっている気もした。銃で撃たれて痛くなかったら、それはなにか深刻な病気である。
簡単にやられない千常に対してムキになったボスが射撃を集中させてくる。
だがそれでいい。
「やれ」
「んっ」
桃は額当てのボタンを押し込んで『のぞき窓』をオープン。第三の目を露出させると、怪光線を発射した。直撃を食らって一瞬だけのけぞるボス。
「ぐおっ!」
「今だ、踊りやがれ」
千常の発動させた隆槍が更に直撃。
桃は弾幕の晴れた隙を縫うように接近し、二本指を相手の胸にざくりと突き刺した。
「これで、終わりよ」
「ち、ちくしょおおおおおおおおお!」
ボスは倒れ、どこからともなく現われた大量の警官に取り押さえられて顔から上着をかぶせて手錠で連行されていった。
ああ生きてるのねあれで、と思った美咲である。
●ベータチーム
悪の蔓延る以下略!
「そこまでだぁ!」
「大人しくお縄につきやぁ!」
「オラァ!」
どこのやくざの襲撃かなという勢いで開かれた扉は、扉の形状を失って近くの構成員と共に吹き飛んでいった。
扉の外から吹き込むスモーク。その中から現われた人影は、『ゴシップ記者』風祭・誘輔(CL2001092)の姿をしていた。
それも腕を機関銃に変えた風祭誘輔である。
「特ダネの臭いがプンプンするぜ。このクラブもおしまいだなぁ」
すぐ脇に現われ二丁拳銃を構える『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)。
足下に転がった粉もれた袋を指でつついて舐める。
「これは……コムギ・コカ・ナニカダ! ボス、一斉検挙ですね!」
「目の前で舐めるなとか俺は記者の設定だとか状況的に礼状は出てるとかもう色々おかしいけど指摘すんのも面倒くせえ」
「しとるしとる、親切にしとる」
道着姿でゆっくりと現われる『緋焔姫』焔陰 凛(CL2000119)。
するとリーダーらしき敵が周りの人を呼び始めた。
「踏み込んできやがった! 返り討ちにしてやれェ!」
「「ヘイ!」」
一瞬であらわれ、ずらりと並んだ敵たち。手にした拳銃を遠慮無くぶっ放してくる。
「うりゃ!」
奏空はテーブルを蹴倒して盾にしつつ拳銃を乱射。
それならばとテーブルの上を飛び越えようとする連中に、誘輔は近距離掃射をしかけた。
一斉に薙ぎ払われた敵たちを尻目に、転がった酒瓶を放り投げる。
空中で割れる瓶。飛び散る50万円の液体。
ガラス片に思わず目を瞑った敵たちにむけて、誘輔は腕の機関銃を乱射した。
一斉に吹き飛んでいく敵たち。
リーダー格が奥へ逃げようと後退する。凛はその動きを見逃さなかった。
「逃がすかぁ!」
ソファタイプの椅子をサッカーよろしく蹴飛ばす。
思わず銃で撃ち落とそうとするリーダー。だが銃弾が椅子に命中した次の瞬間、椅子を向こう側から突き破って凛の刀がリーダー格を貫いた。
「てめ――」
後頭部に銃を突きつけようとした敵――の手首を切り落とす凛。
「こいつっ、背中に目でもついてんのか!」
「そこまでやない」
凛はその場で軽やかに回転。
周囲の敵たちは一斉に血を吹き出し、その場に倒れた。
残るはVIPルームのボス一人だ。
凛は逃がすまいと部屋へと飛び込んだ。
すると。
「ようこそ我がスイートルームへ」
ワイングラスをくるくるやりながらダイヤの散ったサングラスをかけた男がソファによりかかっていた。
「焔陰流21代目(予定)焔陰凛、推して参る!」
名乗ったときには既に切り込んでいる。相手を縦真っ二つにする筈だった斬撃はしかし、ソファだけを切断していた。
相手は……上だ!
「ケケーッ!」
天井に張り付いていたダイヤグラサンが二本のミニナイフを手に飛びかかってくる。
凛には……見えてる。無理に動けば避けられる軌道だ。
が、しかし凛は避けなかった。
道着の肩口が切り裂かれ、はらりと袖が落ちていく。
壁を蹴ったダイヤグラサンが再び切りつけてくる。
それも避けない。
動いているのは凛の目だけだ。
「ケケケッー! 目で追うのが精一杯ってかぁー!?」
ダイヤグラサンが部屋中をジグザグに駆け回る。
そして完全に背後をとった所で、ナイフを翳して襲いかかった
「とった! シネェー!」
しかし、ナイフは凛に届かなかった。腰越しに突き出された刀が腹へ刺さったからだ。
刀を抜き、振り向きざまに切りつける。
「な、なんだコリャア……!?」
「黒澤映画くらい、見といたほうがええで」
痛みによろめくダイヤグラサン。
そこへ、一足遅れた誘輔と奏空が飛び込んでくる。
「チ、チクショー!」
ナイフを闇雲に繰り出すダイヤグラサン。しかしそれは誘輔の腕部機関銃に止められた。
「遅ぇ!」
カウンターの膝蹴り。衝撃が背中を突き破っていく。
浮き上がった所に、奏空が飛びかかる。
「とどめだ!」
空中で拳銃の銃口を腹に当てて連射。
見事に腹を撃ち抜かれたダイヤグラサンは壁に激突。
奏空は着地と同時に銃のマガジンを排出。ベルトのホルダーに入れていたマガジンをテレキネシスで素早く装填すると、銃を二丁水平に構えて零距離連射した。
「くらえー!」
「ヒギャアアアアアア!」
ダイヤグラサンは全身蜂の巣になったあと駆け込んだ警官隊によって取り押さえられ罵声を叫びながらパトカーへと歩いて連行されていった。
あ、あれて生きてるんだと思った奏空である。
ちなみに。
「この粉、酒にでも溶かしたらキくかな」
「いや、水と卵で混ぜてキャベツと豚肉で焼いたらええねん」
誘輔と凛はコムギコをぺろぺろしながら残りの時間を潰していた。
●ガンマチーム
宮神 羽琉(CL2001381)は初心者である。
妖がどういうものかよく知らないうちからなんかトリッキーな案件に関わってしまったなと内心焦ったものだが、メンバーが決まった段階で少しは気が楽になった。
岩倉・盾護(CL2000549)は同年代の男子高校生。『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)も中学生だが話は通じるはずだ。
クラスの違う友達とゲーセンに来たくらいの感覚でよかろうか。
そんな風に考えていた時期が――。
「僕にもあったんだ。あったんだよ」
羽琉は両手で顔を追った。
「……?」
盾護は無口だ。何を考えてるか分からないし、口を開いても理解に一瞬いることを言う。
きせきは無邪気にゲームゲーム言っていたが、よく話を聞いてみると頭の中身がZ指定だった。この脳症の飛び出すカートゥーンアニメみたいな子と会話するのを、羽琉は早々に諦めている。
「夢じゃないんだね。おもしろーい! 今日はマシンガン持ってきたんだ、がんばろうね!」
きせきはゲーセンで筐体にコインを入れる感覚で、スチール扉のドアノブを銃撃で吹き飛ばした。
ぐわんと外開きになるドア。
けたたましいヘリの音。
こちらを恐れるかのように始まる銃撃で、コンクリートの地面が瞬く間にはじけた。
飛んできた破片が膝をかすり、羽琉の肩がぞわりと震える。
この世の都市伝説には、あまりに臨場感がありすぎてプレイヤーがショック死したゲームがあるという。これは臨場感を通り越した現場そのものだ。ショック死どころか、えげつないグチャグチャの死体になってゲーム機の外に放り出されるだろう。
そのグチャグチャ具合すら想像できない羽琉には、もはや未知の恐怖である。
こなきゃよかった、とは言うまい。
「い、いかなきゃ……!」
「突撃」
羽琉を追い抜き、屋上へ躍り出る盾護。
両腕でファイティングポーズをとると、その腕から扇状のシールドを展開。銃弾を受け止め始める。
「わーい」
水鉄砲で遊ぶ子供のように、きせきがその後ろにくっついて出て行く。
盾護の防御力は凄まじいもので、敵の弾が泥で出来ているのかと思うほど簡単に弾いていく。
そんな彼の背後からわずかに身を覗かせるように、きせきはマシンガンの射撃を浴びせていく。
相手はアサルトライフル。ヘリのドアを全開にして射撃しているのでほぼ無防備だ。
きせきの銃撃にやられた敵が次々と落下していく。
ビルの下へ落ちていったものはともかく、屋上に落ちてきた敵は無残にひしゃげていた。「歩きにくい?」
「多少」
「じゃあー、えい! 死体蹴りー!」
それを足で蹴飛ばすきせき。文字通りだが、羽琉の知っている死体蹴りではない。
「って、僕も参戦しなきゃ! 見てるだけじゃダメだ!」
とはいえ、ヘリで囲まれてアサルトライフルの集中砲火を受けた経験などない。動きのイメージが全く出来ない。
が、やらねばならぬ。
羽琉は己のイメージする中で最も攻撃的な姿勢をとった。
架空の弓を持ち、架空の弦に架空の矢をつがえる。
イメージは馬上射撃だ。扉の外に飛び出し、走りながら的を射るのだ。
「いまっ!」
飛び出す羽琉。
と同時に、きせきのガードについていた盾護が羽琉にそって走り出した。
襲い来る銃撃が盾護によって弾かれていく。よく見ると盾護の肉体が所々激しく損傷していた。
今は考えない。羽琉は呼吸と整え、斜線上に入った瞬間に架空の矢を放った。
射撃手に命中。ヘリから落下していく射撃手。
が、安堵するのはまだ早い。
「よくもやってくれたなぁ! 取引がめちゃくちゃだぜ!」
どこからともなく落ちてきたボスが、拳銃を手に着地した。
「うわっ、ボス戦だ! えっと、どうしよう……指示してください!」
「突撃。後、任せた」
「ええっ!?」
盾護が羽琉から離れてボスに突撃していく。
シールドバッシュのタイミングで放った隆槍によって撥ね飛ばされるボス。
盾護に指示をあおぐのは無理だ。この人自分のことしか考えないタイプだ。
「み、御影く――」
「ねえ見てみて、エネミースキャンっぽさを出してみたんだよー!」
この期に及んで、スカウターみたいなヘッドセットを被ってキャッキャするきせき。買って貰ったオモチャ自慢さながらである。
きせきに指示をあおぐのも無理だ。この子人の話を聞かないタイプだ。
「ぼ、僕が考えるしか……ないのか……?」
戦場に限らず、仕事とは元来そういうものだ。
宮神羽琉。16歳にして世間を知った。
でも銃を持った人と格闘した経験などない。テレビゲームなら1ターンずつ移動したりポーズ画面で考えたりできるが、現実はそうではない。コンマ以下の秒刻みで事態が動き続けている。チェスの駒ではないのだ。棒立ちしていたら死ぬ。
「できること、できることをやらなきゃ……!」
羽琉ができること。そんなものは決まっている。
「狙って……射る!」
走って斜線確保。狙いをつける準備をしつつ、斜線が通った一瞬に射る。
ダメージは期待しない。隙が一瞬できればいい。
架空の矢は空圧の弾となり、盾護を殴りつけようとしたボスの腕を貫通した。
狙いがそれる。
「盾護くん離れてー」
「了解」
飛び退く盾護。
きせきは手元のロープをぐいっと引いた。
途端、ボスが仰向けに転倒。足下に絡まったツタが両足を拘束したのだ。
ロープはリールでもついているかのようにきせきの足下までボスを引きずり、そして。
「ストッープ、えい!」
きせきはマシンガンの銃口を叩き付けるという形で、その動きを停止させた。
目が見開かれる。
カエルに電撃を流す時のような、トンボに爆竹をくくりつけるような、そんな無邪気さできせきはマシンガンのトリガーを引いた。
「ギ、ギャアアアアアアアア!」
ボスは身体をミキサーにかけたように分解され軽くアスファルトの粉と混じり合ったあとかけつけた警察官にとらえられ顔にモザイクをかけられたままわめきながらパトカーに押し込められていった。
なんで生きてるんだと思った羽琉である。
――かくして。
ゲーム筐体にとりついた妖は駆除され、恐いから引き取ってと言われた筐体を改造したものが覚者たちに配られた。
予想に反して九割がた欲しがったので、追加で買い取っていっそ全員に配ることにしたらしい。
悪の蔓延るニッポンポン! 眠らぬ町のネオトキョースゴイタカイビルにて以下略!
神野 美咲(CL2001379)はないむねを張って叫んだ。
「ふふふ。ついに吾輩の輝かしい歴史が幕を開けるのだ。準備はいいか桃!」
「え、なに?」
それまで説明書を読んでいた姫神 桃(CL2001376)が振り返る。
「だから吾輩の輝かしい……」
「それより名前なんだけど、なんで年下なのにナチュラルに呼び捨てなのかしら。一歩譲ってそれでもいいけれど、私は美咲と呼ばせて貰うわよ?」
「んん? いや吾輩としうえ……」
「ふふっ、またまたー美咲ったら背伸びがしたいのね」
桃は美咲のふっかふかした頭を両手でもっふもふした。
「にゅあー!? やめろ! 獣耳の間をなでなですると眠くなるだろう!」
「君ら、初陣の割に余裕だな」
桃の肩をぽんと叩き、ついでに美咲の頭もぽんと叩く『たぶん探偵』三上・千常(CL2000688)。
表皮に防御シールドが張られたことに気づいて、桃は本能的に気を引き締めた。
「ま、無いよりましだ。カウントダウンはしねえから、気合い入れとけよ」
千常はそこまで言うと、吸っていた煙草をにじり消した。
そういえば、現在地を説明していなかった。
「いくぜ」
千常は舗装された斜面を走り抜けると、目的の地下駐車場へ飛び込んだ。
「ナンダテメェー!」
「スッゾテメェー!」
拳銃で武装した敵が柱の裏から身体を覗かせて射撃をしかけてくる。他にも鉄パイプを掲げて駆け込んでくる者もいた。
千常は手になじんだ棍棒をアテンドから取り出すと、振り下ろされた鉄パイプを打ち弾く。踵で地面を踏み込むようにして隆槍を発動。敵を思い切り突き飛ばす。
手の中で棒をくるりと回し、改めて握り直す。
「いけね、こっち持って来ちまった。まあいいか――身を隠してる奴に集中攻撃だ。後はフォローしてやる!」
「う、うむ!」
自動車の裏で丸くなっていた美咲はハッとして耳を立てた。
覗き込んでみると、千常の接近に焦って身を乗り出す射撃手がいた。
狙い目だ。美咲は術符に念を込めると、一瞬だけ身を乗り出して投擲した。
「ゆけい!」
「ギャアアアアアアアアアアアア!」
カミソリのような力を持った術符が射撃手の顔に突き刺さり、壊れたシャワーのように血を吹き出して踊り狂った。
最近じゃSEROが許さねえようなえげつないダメージ描写に思わずしっぽの毛を逆立てる美咲。
「う、うわあ」
「どうしたの?」
「ななななんでもないぞ!? どうだ吾輩の攻撃は!」
「痛そうね」
同じく車体に身を隠していた桃は、かけていた眼鏡をスッと取って虚空へ投げた。
するとどういうカラクリか(アテンド仕掛けだが)衣装がド直球の忍者装束にチェンジしていた。額当ての部分と穴でも空いてるのかってくらい強情に突き出たアホ毛だけが少々特殊だが、それ以外はザッツ忍者である。
桃は車体から身を躍らせると、飛び側転の要領で向かい側の柱裏まで高速移動。更に一つ先の柱へ移動していく。途中身をひねるように銃弾をかわしつつ、クナイを次々に投擲していった。
「大丈夫? 少しずつ前進して。無理は禁物よ」
「わかっていりゅわい!」
「口調、ブレてるけど」
瞬間、桃のアホ毛がピコンと直立した。
僅かに目を見開く桃。即座にその場から飛び退くと後ろで小爆発が起きた。簡易手榴弾の爆発だ。
投げた相手を特定。前傾姿勢で急接近すると、相手がナイフを抜くより早くクナイを相手の首筋になでつけていた。それだけで敵は血を吹き出し、絶命する。
その後ろを追いかけるように、美咲がすたこら走ってついてくる。
どうやら最奥のエリアまでやってきたようだ。
なぜなら。
「グハハハハ! ここから先へは通さんぞお!」
上半身裸のスキンヘッドという漫画にしかいないような男が、機関銃をセットして待ち構えていたからだ。ボスですよと顔に書いてある。というか頭上に矢印つきで書いてある。
咄嗟に隠れた高級そうな自動車が一瞬で蜂の巣になり、爆発して吹き飛んだ。
肌を焼くような熱気に美咲は耳をぺたんとしていたが、状況を思い出して顔を上げる。
いち早く対応したのは千常だ。棍棒を扇風機のように高速回転させながら突撃。迫り来る銃弾を弾きながら接近する。弾くといっても精々三割。残り七割は『致命傷じゃない』というだけでもろに肉体にめり込んでいた。常人なら指関節すら残らぬスナと化している頃だが、ここは覚者の肉体強度。
「俺が隙を作る。援護してくれ」
「よ、よし!」
頭を下げてぺたんとしたまま、美咲は両手を翳した。
治癒の霧が展開され、千常の身体がみるみる強制修復されていく。
「い、痛くないのか?」
「生きてる証拠だ」
答えになってないが、なっている気もした。銃で撃たれて痛くなかったら、それはなにか深刻な病気である。
簡単にやられない千常に対してムキになったボスが射撃を集中させてくる。
だがそれでいい。
「やれ」
「んっ」
桃は額当てのボタンを押し込んで『のぞき窓』をオープン。第三の目を露出させると、怪光線を発射した。直撃を食らって一瞬だけのけぞるボス。
「ぐおっ!」
「今だ、踊りやがれ」
千常の発動させた隆槍が更に直撃。
桃は弾幕の晴れた隙を縫うように接近し、二本指を相手の胸にざくりと突き刺した。
「これで、終わりよ」
「ち、ちくしょおおおおおおおおお!」
ボスは倒れ、どこからともなく現われた大量の警官に取り押さえられて顔から上着をかぶせて手錠で連行されていった。
ああ生きてるのねあれで、と思った美咲である。
●ベータチーム
悪の蔓延る以下略!
「そこまでだぁ!」
「大人しくお縄につきやぁ!」
「オラァ!」
どこのやくざの襲撃かなという勢いで開かれた扉は、扉の形状を失って近くの構成員と共に吹き飛んでいった。
扉の外から吹き込むスモーク。その中から現われた人影は、『ゴシップ記者』風祭・誘輔(CL2001092)の姿をしていた。
それも腕を機関銃に変えた風祭誘輔である。
「特ダネの臭いがプンプンするぜ。このクラブもおしまいだなぁ」
すぐ脇に現われ二丁拳銃を構える『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)。
足下に転がった粉もれた袋を指でつついて舐める。
「これは……コムギ・コカ・ナニカダ! ボス、一斉検挙ですね!」
「目の前で舐めるなとか俺は記者の設定だとか状況的に礼状は出てるとかもう色々おかしいけど指摘すんのも面倒くせえ」
「しとるしとる、親切にしとる」
道着姿でゆっくりと現われる『緋焔姫』焔陰 凛(CL2000119)。
するとリーダーらしき敵が周りの人を呼び始めた。
「踏み込んできやがった! 返り討ちにしてやれェ!」
「「ヘイ!」」
一瞬であらわれ、ずらりと並んだ敵たち。手にした拳銃を遠慮無くぶっ放してくる。
「うりゃ!」
奏空はテーブルを蹴倒して盾にしつつ拳銃を乱射。
それならばとテーブルの上を飛び越えようとする連中に、誘輔は近距離掃射をしかけた。
一斉に薙ぎ払われた敵たちを尻目に、転がった酒瓶を放り投げる。
空中で割れる瓶。飛び散る50万円の液体。
ガラス片に思わず目を瞑った敵たちにむけて、誘輔は腕の機関銃を乱射した。
一斉に吹き飛んでいく敵たち。
リーダー格が奥へ逃げようと後退する。凛はその動きを見逃さなかった。
「逃がすかぁ!」
ソファタイプの椅子をサッカーよろしく蹴飛ばす。
思わず銃で撃ち落とそうとするリーダー。だが銃弾が椅子に命中した次の瞬間、椅子を向こう側から突き破って凛の刀がリーダー格を貫いた。
「てめ――」
後頭部に銃を突きつけようとした敵――の手首を切り落とす凛。
「こいつっ、背中に目でもついてんのか!」
「そこまでやない」
凛はその場で軽やかに回転。
周囲の敵たちは一斉に血を吹き出し、その場に倒れた。
残るはVIPルームのボス一人だ。
凛は逃がすまいと部屋へと飛び込んだ。
すると。
「ようこそ我がスイートルームへ」
ワイングラスをくるくるやりながらダイヤの散ったサングラスをかけた男がソファによりかかっていた。
「焔陰流21代目(予定)焔陰凛、推して参る!」
名乗ったときには既に切り込んでいる。相手を縦真っ二つにする筈だった斬撃はしかし、ソファだけを切断していた。
相手は……上だ!
「ケケーッ!」
天井に張り付いていたダイヤグラサンが二本のミニナイフを手に飛びかかってくる。
凛には……見えてる。無理に動けば避けられる軌道だ。
が、しかし凛は避けなかった。
道着の肩口が切り裂かれ、はらりと袖が落ちていく。
壁を蹴ったダイヤグラサンが再び切りつけてくる。
それも避けない。
動いているのは凛の目だけだ。
「ケケケッー! 目で追うのが精一杯ってかぁー!?」
ダイヤグラサンが部屋中をジグザグに駆け回る。
そして完全に背後をとった所で、ナイフを翳して襲いかかった
「とった! シネェー!」
しかし、ナイフは凛に届かなかった。腰越しに突き出された刀が腹へ刺さったからだ。
刀を抜き、振り向きざまに切りつける。
「な、なんだコリャア……!?」
「黒澤映画くらい、見といたほうがええで」
痛みによろめくダイヤグラサン。
そこへ、一足遅れた誘輔と奏空が飛び込んでくる。
「チ、チクショー!」
ナイフを闇雲に繰り出すダイヤグラサン。しかしそれは誘輔の腕部機関銃に止められた。
「遅ぇ!」
カウンターの膝蹴り。衝撃が背中を突き破っていく。
浮き上がった所に、奏空が飛びかかる。
「とどめだ!」
空中で拳銃の銃口を腹に当てて連射。
見事に腹を撃ち抜かれたダイヤグラサンは壁に激突。
奏空は着地と同時に銃のマガジンを排出。ベルトのホルダーに入れていたマガジンをテレキネシスで素早く装填すると、銃を二丁水平に構えて零距離連射した。
「くらえー!」
「ヒギャアアアアアア!」
ダイヤグラサンは全身蜂の巣になったあと駆け込んだ警官隊によって取り押さえられ罵声を叫びながらパトカーへと歩いて連行されていった。
あ、あれて生きてるんだと思った奏空である。
ちなみに。
「この粉、酒にでも溶かしたらキくかな」
「いや、水と卵で混ぜてキャベツと豚肉で焼いたらええねん」
誘輔と凛はコムギコをぺろぺろしながら残りの時間を潰していた。
●ガンマチーム
宮神 羽琉(CL2001381)は初心者である。
妖がどういうものかよく知らないうちからなんかトリッキーな案件に関わってしまったなと内心焦ったものだが、メンバーが決まった段階で少しは気が楽になった。
岩倉・盾護(CL2000549)は同年代の男子高校生。『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)も中学生だが話は通じるはずだ。
クラスの違う友達とゲーセンに来たくらいの感覚でよかろうか。
そんな風に考えていた時期が――。
「僕にもあったんだ。あったんだよ」
羽琉は両手で顔を追った。
「……?」
盾護は無口だ。何を考えてるか分からないし、口を開いても理解に一瞬いることを言う。
きせきは無邪気にゲームゲーム言っていたが、よく話を聞いてみると頭の中身がZ指定だった。この脳症の飛び出すカートゥーンアニメみたいな子と会話するのを、羽琉は早々に諦めている。
「夢じゃないんだね。おもしろーい! 今日はマシンガン持ってきたんだ、がんばろうね!」
きせきはゲーセンで筐体にコインを入れる感覚で、スチール扉のドアノブを銃撃で吹き飛ばした。
ぐわんと外開きになるドア。
けたたましいヘリの音。
こちらを恐れるかのように始まる銃撃で、コンクリートの地面が瞬く間にはじけた。
飛んできた破片が膝をかすり、羽琉の肩がぞわりと震える。
この世の都市伝説には、あまりに臨場感がありすぎてプレイヤーがショック死したゲームがあるという。これは臨場感を通り越した現場そのものだ。ショック死どころか、えげつないグチャグチャの死体になってゲーム機の外に放り出されるだろう。
そのグチャグチャ具合すら想像できない羽琉には、もはや未知の恐怖である。
こなきゃよかった、とは言うまい。
「い、いかなきゃ……!」
「突撃」
羽琉を追い抜き、屋上へ躍り出る盾護。
両腕でファイティングポーズをとると、その腕から扇状のシールドを展開。銃弾を受け止め始める。
「わーい」
水鉄砲で遊ぶ子供のように、きせきがその後ろにくっついて出て行く。
盾護の防御力は凄まじいもので、敵の弾が泥で出来ているのかと思うほど簡単に弾いていく。
そんな彼の背後からわずかに身を覗かせるように、きせきはマシンガンの射撃を浴びせていく。
相手はアサルトライフル。ヘリのドアを全開にして射撃しているのでほぼ無防備だ。
きせきの銃撃にやられた敵が次々と落下していく。
ビルの下へ落ちていったものはともかく、屋上に落ちてきた敵は無残にひしゃげていた。「歩きにくい?」
「多少」
「じゃあー、えい! 死体蹴りー!」
それを足で蹴飛ばすきせき。文字通りだが、羽琉の知っている死体蹴りではない。
「って、僕も参戦しなきゃ! 見てるだけじゃダメだ!」
とはいえ、ヘリで囲まれてアサルトライフルの集中砲火を受けた経験などない。動きのイメージが全く出来ない。
が、やらねばならぬ。
羽琉は己のイメージする中で最も攻撃的な姿勢をとった。
架空の弓を持ち、架空の弦に架空の矢をつがえる。
イメージは馬上射撃だ。扉の外に飛び出し、走りながら的を射るのだ。
「いまっ!」
飛び出す羽琉。
と同時に、きせきのガードについていた盾護が羽琉にそって走り出した。
襲い来る銃撃が盾護によって弾かれていく。よく見ると盾護の肉体が所々激しく損傷していた。
今は考えない。羽琉は呼吸と整え、斜線上に入った瞬間に架空の矢を放った。
射撃手に命中。ヘリから落下していく射撃手。
が、安堵するのはまだ早い。
「よくもやってくれたなぁ! 取引がめちゃくちゃだぜ!」
どこからともなく落ちてきたボスが、拳銃を手に着地した。
「うわっ、ボス戦だ! えっと、どうしよう……指示してください!」
「突撃。後、任せた」
「ええっ!?」
盾護が羽琉から離れてボスに突撃していく。
シールドバッシュのタイミングで放った隆槍によって撥ね飛ばされるボス。
盾護に指示をあおぐのは無理だ。この人自分のことしか考えないタイプだ。
「み、御影く――」
「ねえ見てみて、エネミースキャンっぽさを出してみたんだよー!」
この期に及んで、スカウターみたいなヘッドセットを被ってキャッキャするきせき。買って貰ったオモチャ自慢さながらである。
きせきに指示をあおぐのも無理だ。この子人の話を聞かないタイプだ。
「ぼ、僕が考えるしか……ないのか……?」
戦場に限らず、仕事とは元来そういうものだ。
宮神羽琉。16歳にして世間を知った。
でも銃を持った人と格闘した経験などない。テレビゲームなら1ターンずつ移動したりポーズ画面で考えたりできるが、現実はそうではない。コンマ以下の秒刻みで事態が動き続けている。チェスの駒ではないのだ。棒立ちしていたら死ぬ。
「できること、できることをやらなきゃ……!」
羽琉ができること。そんなものは決まっている。
「狙って……射る!」
走って斜線確保。狙いをつける準備をしつつ、斜線が通った一瞬に射る。
ダメージは期待しない。隙が一瞬できればいい。
架空の矢は空圧の弾となり、盾護を殴りつけようとしたボスの腕を貫通した。
狙いがそれる。
「盾護くん離れてー」
「了解」
飛び退く盾護。
きせきは手元のロープをぐいっと引いた。
途端、ボスが仰向けに転倒。足下に絡まったツタが両足を拘束したのだ。
ロープはリールでもついているかのようにきせきの足下までボスを引きずり、そして。
「ストッープ、えい!」
きせきはマシンガンの銃口を叩き付けるという形で、その動きを停止させた。
目が見開かれる。
カエルに電撃を流す時のような、トンボに爆竹をくくりつけるような、そんな無邪気さできせきはマシンガンのトリガーを引いた。
「ギ、ギャアアアアアアアア!」
ボスは身体をミキサーにかけたように分解され軽くアスファルトの粉と混じり合ったあとかけつけた警察官にとらえられ顔にモザイクをかけられたままわめきながらパトカーに押し込められていった。
なんで生きてるんだと思った羽琉である。
――かくして。
ゲーム筐体にとりついた妖は駆除され、恐いから引き取ってと言われた筐体を改造したものが覚者たちに配られた。
予想に反して九割がた欲しがったので、追加で買い取っていっそ全員に配ることにしたらしい。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『ファイヴ警察24時』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
