≪嘘夢語≫烈戦の果てに
≪嘘夢語≫烈戦の果てに


 春眠暁を覚えず。

 学業に、仕事に、そして戦いに疲れた身体と心を休める為に、横たわり目を閉じた君たちは――

 気がつくと、あまりにも巨大で、強大な敵の前にいた。
 その形はまさに異形。たとえるなら、ゲームに出てくるラスボスの魔王……という表現が近いだろうか。
 魔王(仮)が口を開けば、それだけで大気がぶるぶると振動する。

『まだ諦めないというのか……人の子とは、何と諦めが悪いことか』
 魔王(仮)の後ろに、空中に浮遊する大きなシャボン玉のような球体がある。その中にいる娘が、苦しげな表情でこちらを見つめた。
「お願い……負けてはなりません!」
 娘の華美な装いと雅やかな雰囲気は、姫君かあるいは貴族の令嬢か――高貴な出自だということが見てとれる。
「二手に分かれて相手を攻めるのです。一箇所に纏まっていては、魔王の腕に薙ぎ払われてしまいます……!」

 つまりはこうだ。
 君たちはどうやら、姫(仮)を救うため魔王(仮)に戦いを挑み、窮地に追い込まれたらしい。それもどうやら、魔王(仮)の攻撃に纏めてやられてしまい瀕死の状態に陥った。
 対策は――この巨大な敵の前と後ろ、あるいは左右といった形で二手に分かれて攻める事。
 とはいえ相手もその都度、あちらを向いたりこちらを向いたりするだろう。戦力があまりに偏ってしまえば、どちらかから崩されてしまうだろう。
 どう戦力配分をし、魔王との戦いに臨むか――それが鍵と言える。

 世界の平和は、たぶん君たちの手に掛かっている!
 頼んだぞ、未来の勇者たち!!


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:さくらもみじ
■成功条件
1.魔王(仮)の撃破
2.なし
3.なし
初めまして、あるいはお久しぶりです。
天谷栞と申します。

■エイプリルフール依頼について
この依頼は参加者全員が見ている同じ夢の中での出来事となります。
その為世界観に沿わない設定、起こりえない情況での依頼となっている可能性が
ありますが全て夢ですので情況を楽しんでしまいしょう。
またこの依頼での出来事は全て夢のため、現実世界には一切染み出す事はありません。

※要約すると夢の世界で盛大な嘘を思いっきり楽しんじゃえ!です。

というわけで、今回の夢は、魔王っぽいものと戦うシナリオです。

●状況
ファンタジーRPGにありがちな世界。
魔王(仮)の前で、瀕死の状態の最大4人パーティー×2がいます。
瀕死の状態から何とか挽回して魔王(仮)を撃破してください。
戦場は広く、障害となるものは何もありません。

●職業
下記の6つより選んでください。
スキルはご自分のものがそのまま使えますので、ご自分の能力に適した職業を選ぶのが良いかもしれません。
もちろん、「俺は脳筋系マジシャンなんだ!」「実は俺は遠距離から攻撃するナイトでな」といった風に、
あえてそこから外れてみるのもありです。

・ファイター
そこそこ以上の体力と攻撃力、防御力がある安定した職業。

・モンク
攻撃力に特化した職業。

・ヒーラー
回復魔法のスペシャリスト。

・マジシャン
攻撃魔法のスペシャリスト。

・ナイト
高い体力と防御力で仲間を守るのに適した職業。

・セージ
回復と攻撃、両方の魔法の使い手。

●魔王(仮)
巨大な異形の怪物。
おそらく世界征服とか、そんなベタな野望を抱いていた模様。
・魔王の腕 物遠敵全【ノックバック】 纏めて敵を吹き飛ばす大技。
・魔王の剣 特遠列 剣に込められた禍々しい魔力を衝撃波として放つ技。
・魔王の魂 特近味単 自魔王としての誇りが傷を癒す。

●姫(仮)
どこかの高貴な令嬢。
自分を魔王から救い出してくれる勇者様が現れると信じ、この日まで耐え抜いてきた。

●補足
上記設定以外確実なものは一切ありません。
姫の兄弟や婚約者を名乗ってみたり、魔王の配下だったが裏切ったという設定をつけてみたり、
『魔王を倒しに来た』という前提から逸脱しなければ、色々とお好きな設定で遊んで頂いて構いません。

思い切り遊んじゃいましょう!
よろしくお願い致します!
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年05月08日

■メイン参加者 8人■

『花守人』
三島 柾(CL2001148)
『白い人』
由比 久永(CL2000540)
『天使の卵』
栗落花 渚(CL2001360)
『献身なる盾』
岩倉・盾護(CL2000549)
『天を翔ぶ雷霆の龍』
成瀬 翔(CL2000063)
『風に舞う花』
風織 紡(CL2000764)
『田中と書いてシャイニングと読む』
ゆかり・シャイニング(CL2001288)


――side Seigo Sairenji――
「む……僕は一体……。ぐっ、全身を走るこの激痛は……!」
 気がつけば、水蓮寺 静護(CL2000471)は満身創痍で立ち尽くしていた。
「は……っ! ここはどこ? ゆかりはだれ? ってバッチリ名前覚えてるやないかーい!」
 見事なスベり芸を披露する白塗りの女……もとい、『スマイル押し売り中!』ゆかり・シャイニング(CL2001288)を筆頭に、静護の周囲からも次々と声が上がる。
 現状把握のため、静護は痛みに耐えつつ周囲を観察した――おどろおどろしい装飾の、これは城内であろうか……?
 仲間たちはみな、静護と同じく立っているのがやっとであろう深い傷を全身に負っている。
 そして何より――目の前には“異形”と表現するより他にない、奇怪な風体の巨人。
『まだ諦めぬとは。人の子の、なんと往生際の悪いことよ』
 地の底から湧き上がるような、それでいて大気を震わす悍ましい声――静護は直観的に、それが“魔王”であると悟った。
「気をつけて! 纏まっていては魔王の思う壺です――!」
 鈴のような声の主は、玉座の背後――虹色に透き通る球体に囚われている。
 彼女もまた“姫君”という存在であることが、静護にはなぜか手に取るように理解できた。
「思い出してきたぞ……僕たちは“勇者”。世界と姫君を救うため、魔王と戦っている……はずだ」
 全ての記憶の靄が晴れたわけではないが、朧気な自分の“設定”も思い出しつつある。
 静護の一族は、その象徴をことごとく魔王に蹂躙され――。
「そうだ……魔王、お前は許さない……! メ=ガーネ族の誇りは決して折れん!」
 言い放つと、静護は怒りを油に魂の炎を燃やす。
「ああ……奴は俺の両親をも手にかけた。この命尽きようとも復讐は果たす、行くぞ水蓮寺!」
 『百合の追憶』三島 柾(CL2001148)も全身の傷に負けじと魔王を睨んでいた――その眼鏡越しに。
「き、君はまさか……僕以外にもメ=ガーネ族の生き残りが……?」
「いや違う。普段はコンタクトだしな」


――side Jungo Iwakura――
「魔王、話してる間、攻撃しない。ご都合主義……」
 岩倉・盾護(CL2000549)の冷静な指摘に、みな我に返った。
「よ、よし……みんな、少しでも元気を取り戻してくれ!」
 『デジタル陰陽師』成瀬 翔(CL2000063)の舞いを受け、盾護たちの身体に僅かながら活力が蘇る。
「これで、動ける。姫様の言った通り、二手に分かれる……!」
『させぬわ……魔剣の呪い、再びその身に受けるがいい……』
 魔王の手にした仰々しい意匠の巨剣に、膨大な量のエネルギーが集中し始めた。
「させるか!」
 静護の掌から高圧縮された水の塊が放たれ、魔剣の剣先を掠める。
 僅かとはいえブレはブレ――魔剣から放たれた衝撃波は、二枚の盾を構えた盾護の頭上を超え、勇者たちの背後に着弾。
 それを合図に、示し合わせたかのような動きで一行は左右に散開した。
『小癪な真似を……』
 魔王は攻撃の邪魔をした静護に気を取られ、左手側――盾護もいる側を薙ぎ払わんと豪腕を振りかぶった。
 しかし――突如として魔王の背中が爆炎に包まれ、たまらず彼は背後を振り返る。
「立て直すなら今かの」
 『白い人』由比 久永(CL2000540)が生命力の源を霧状に振り撒き、盾護たちの傷を癒やした。
「盾護も、助けになる。支援、意外と得意」
 強い闘気を心に念じると、『鉄仮面の乙女』風織 紡(CL2000764)がそれを受けて地を蹴った。
「アユ……! アユなら返事をするです……!」
 宙空に涙の粒を舞い散らせながら、紡は魔王に問いかける。
 しかし、魔王は背中の炎に手一杯でそれどころではないようだった。
「ああ、なんてこと……自分がアユかどうかすらわからないなら――」
 盾護からは表情こそ窺い知れないものの、声色の変化は如実である。
「――お姉ちゃんが思い出させてあげるですよっ!」
 覇気を纏った紬の拳が、魔王の頬を直撃した。


――side Yukari Shining――
「姫、すぐにお助けしますから――っ!」
 数瞬前――魔王の右手側で、ゆかりは拳を強く握り締めた。
 誰からも相手にされなかった売れない手品師を、宮廷道化師として拾ってくれた姫。
 魔王の手から取り戻すまで、ゆかりは決して諦めない。
「シャイニングー、耳がでっかくっちゃうパワー、メイクアーップ! メイクは最初からガンギマリですけどね!」
 どこからともなく爆音ときらびやかな光彩が何やかんやして、ゆかりは格好いいポーズを決める。
「かーらーのっ! 燃え上がれ、ゆかりの光! ウルトラデラックスサンシャインソウルバースト!」
「す、すごいぞ。髪が、えっと……逆立って、まるでスーパー、ヒーローみたいだー」
 先ほどゆかりが渡した台本を、『生命の盾持ち』栗落花 渚(CL2001360)が棒読みながら律儀に謳い上げる。
「ナイスです、渚さん! これで姫のハートはバッチリキャッチです!」
「わ、私……こんなことしにきたわけじゃないのにー……」
 渚は泣きながら、本来の役割である回復のための詠唱を始めた。
「って、別に魔王と戦いにきたわけでもないんだけど……なんでこうなっちゃうのー!」
「魔王は静護を狙って背中を向けている。今が好機だな」
 全力で脇道に逸れようとする一行を、柾が本筋に引き戻す。
「俺が奴の背中を攻撃する。成瀬と田中はその傷に追い打ちをかけてほしい」
「な、なぜゆかりの本名を……!?」
「胸に手を当てて考えてみてくれ……では、行くぞ!」
 言うが早いか跳び上がると、柾は腕を振りかぶった魔王の肩口めがけ、二発の鋭い拳を見舞った。
「今だ、ふたりとも!」
「斧は杖、私は魔導師……自己暗示完了、飛んでけファイヤー!」
「翔け抜けろ、雷霆の百獣王!」
 できたばかりの傷口で雷と炎が爆炎を上げ、さすがの魔王も呻き声を上げる。
「まだまだゆかりたちのステージは終わりませんよ! 姫のアンコール、確かに受け取りました!」


――side Nagisa Tsuyuri――
「もう……神官長に言われて忘れ物を届けにきただけなんだけどな……」
 渚はぼやきながら、熱い戦闘を繰り広げる皆を見上げていた。
 “小包を届けるだけの簡単なお遣い”と聞いてきたのに、とんだ難易度詐欺である。
「でも……もう逃げられないもんね。絶対生きて帰って、神官長に文句言ってやるんだから……っ」
 心臓と同化している銃弾に呼びかけ、渚は全身を因子の力で防護する。
 自分にできることといえば回復――先ほど生命力を皆に分け与えたとはいえ、魔王との激しい戦闘でみるみる体力は削られているようだ。
「大地におわします神霊よ――」
 渚は祈りを捧げ、生命力の源を凝縮した雫を、特に消耗の激しい柾めがけて放出。
 だが、間もなく雫が到達しようというところで、柾はゆかりの腕を掴んでそれに触れさせた。
「俺のことは後回しにしてくれ、狙いがあるものでな!」
「う、うん、わかった! 次は翔くん、いくよ!」
 時に神霊の力を借り、時に自身の生命力を削り――渚はサポートに徹する。
『貴様か、人間どもを無尽蔵に治癒させおって……』
 魔王はその剣先に、再び禍々しいエネルギーを溜め始めた。
『我が魔剣の贄となることを光栄に思うがいい……!』
「させるかよ――!」
 剣先から渚に放たれた膨大な魔力の波動――それを翔が肩代わりする形で受け止める。
「翔くん――!」
「へ……っ、効かないなぁ……親父のゲンコツの方がまだ痺れたっての……」
 ところどころ黒煙を上げる服を見るに、身体も無事ではあるまい。
 渚はすぐに生命力を練り上げ、翔に分け与える。
「栗落花さんもさ、あんまり無理すんなよ……親父のせいでみんなが辛い思いをするのは耐えられないや……」
「え……っ?」
「なんでもない。それじゃオレ、もう一度行ってくるぜ。あの馬鹿デカい図体を沈めて、昔みたくデコピンしてやるんだ」


――side Tsumugi Kazaori――
「はぁ……っ、はぁ……っ。まだ思い出さねーですか、アユ……」
 挟撃態勢に入ってから結構な時間が経過していた。
 紡は覇気を纏いなおし、何度目かわからない疑問を魔王に投げかける。
『ええい鬱陶しい……何のことだかわからぬと言っておろう』
「すっとぼけたって無駄っつーやつですよ。水蓮寺さんの一族を襲ったのも、あたしの真似に違ぇねーです。喧嘩するたびに、あたし――アユの眼鏡、割りまくってましたから!」
「いやそれ堂々と言うことじゃないだろ!」
 背後から静護のツッコミが入るが、紡は耳を貸そうともしない。
『あやつら一族の眼鏡に凶兆があると臣下の占いに出ただけだ! 妙な詮索をするでない……っ』
「そこまでシラを切るですか……なら力ずくでも証拠を見つけてやるです!」
 そう、アユなら持っているはずなのだ――紡とお揃いのイヤリングを。
『どこまでも癪に障る女よ――仲間もろとも吹き飛ばしてくれるわ!』
 怒りに任せ、背中に振りかかる攻撃に目もくれず、魔王はその腕を再び振りかぶった。
「紡さん、下がる。盾護、みんなの盾」
 盾護が紡に代わり最前列へ出る。
 二枚の盾は魔王の豪腕を受け止め、紡の目の前で見事に停止させた。
「ふん……最初に比べたら、随分弱ってるんじゃないか。さすがの魔王様も限界が近そうだ」
「盾護、そう思う。最初の勢い、もうない」
 静護と盾護の会話を聞いて、久永が歩み出る。
「では余も攻勢に出るとするか。守ってばかりでは、なかなか憂さも晴れんのでな」


――side Hisae Yui――
「それ、どうした。背中にも火が着いておるのだろう? こちらばかり気にかけている場合か」
 黒雲から獅子を模した雷を生成し、久永はアルカイックに微笑んだ。
『貴様が私に牙を剥くとはな。私と貴様の仲ではないか――あの日、なぜ我が軍門に下らなかったのだ……』
「あの日、か――」
 久永は目を閉じると、遥か昔の記憶に想いを馳せる。
 ああ、忌々しい、ひたすらに忌々しい――久永の心には負の感情しか湧いてこなかった。
「――逆に問おう、そなたアレで余が仲間になるとでも思うたか!」
 そう、忘れもしない十年前――魔王が久永のスカウトに訪れた日のこと。
 旧知の仲である魔王の来訪に、久永は内心ウキウキでとっておきの茶菓子を振る舞った。
 勿論とっておきなのだから、久永も楽しみにしていた――だが、目を閉じて合掌し、さていただこうと目を開けたとき。
「余が目を開けたとき、既に茶菓子は消失していた……。こともあろうに余の秘蔵の品を、味わいもせず一口で……!」
 ふつふつと蘇る怒りを雷に変換し、久永は千切っちゃ投げ千切っちゃ投げの精神で魔王にけしかける。
 珍しく同情したように、紡が無言で久永に魔力を提供した。
「その上、言うに事欠いて“味がない”と……味覚音痴が笑わせるわ! 食の恨みは恐ろしいということを身体に教えてやろう!」
『ご、ごめんなさいいい!』
「この際だ、全部ばらしてやる……昔から重度の占い好きで、大体の策略はお星様頼みであること」
『あ、やめて! 私の威厳が!』
「玉座の後ろの姫君がドストライクで、以前からラブレターをしたためていたこと」
『メンタルに響く! ぐわあああ――』
 蓄積した肉体的ダメージのせいか、それとも精神的ダメージのせいか、両方か――魔王はついに倒れ伏した。
「油断するでないぞ、諦めが悪いのはなにも人の子の特権ではないのだ」
 それでも止まらない久永の追撃――よほど腹が立っていたに違いない。
「どうせ第二形態などに変身するのであろう。そたなの手の内などお見通しだ、ほれ早うせぬか」


――side Kakeru Naruse――
「や、やったのか!?」
 お留守な背中を総出で攻撃し続けたところ、急に魔王が倒れたため翔は驚いた。
 うつ伏せに横たわった巨体越しに、左右の班が顔を合わせる。
「魔王、動かない。盾護、姫様、助ける」
「ゆかりもダッシュです!」
 盾護とゆかりは姫君の元へ走り、無事に邂逅を果たしたようだった。
 そのとき、魔王の身体が黒い煙を上げ、徐々に縮み出す。
 やがて人のサイズにまで落ち着き、煙はすぐに止んだ。
「なんだ、奥の手も残しておらんかったのか。つまらぬ奴よ」
「いや、一応あれが第二形態だったのだが……なぜ貴様らは覚えておらんのだ……」
 久永の言葉を受けて顔を上げた魔王は、端的に言い表してイケてるメンズな風貌だった。
「親父じゃない……」
 翔は衝撃を受ける。
 行方不明になった親父を探し歩き、魔王が親父かもしれないという情報だけを頼りに翔はここまでやってきた。
 胸に去来するのは、親父が悪党でなかった安堵感と、また見つからなかった喪失感。
「アユでもねーです……アユはもっとイケメンですから……」
 翔とは少し違う気もするが、複雑な心境の人は他にもいるようだった。
 と、気の抜けた翔に、不意を打って魔王が剣先を向ける。
 剣先からは先ほどよりもどす黒い波動が放たれ、ぎりぎりのところで身を躱した翔の背後で大爆発を起こす。
「ふふ――よく避けたな。実はこれが私の第三形態なのだ」
「まあ、お約束だし……そんなことだろうと思ったよ」
 こんなこともあろうかと、翔は普段の姿に戻ってはいなかった。
「三島さん、俺が動きを縛る。今なら出せるよね、あれ」
「ああ、準備万端だとも。全身くまなく傷だらけだ――」
 やっと出番か、と不敵に微笑む柾。
「――非業の死を遂げた男が遺した、一撃必殺の拳。魔王といえど、その身に受けて耐えられるかな」


――side Masaki Mishima――
「今度こそやった……んだな」
 渾身の右ストレートをお見舞いし、柾自身もついに膝を突いた。
「長く苦しい戦いだった……気がするが、あんまり詳しくは思い出せないのが不思議だ」
「三島さん、すぐに治しますね……っ!」
 渚が駆け寄るが、久永と静護がそれをやんわり止める。
「余は風織から魔力を譲り受けたゆえ、まだ余力がある。そなたは休んでいるといい」
「僕も手伝おう。本職に比べれば雀の涙かもしれないが――赤の他人とは思えなくてな」
「姫様、みんなに話、ある」
「私、こんなピエロメイクだけど、世界が終わらなくて本当によかった――って、お呼びでない!」
 盾護とゆかりが姫君を連れて戻ってきた。
 姫君は涙ぐんで話し始める。
「皆様、なんとお礼を言ったらよいか――」
『ふふ……いい気になるなよ、人の子ら……』
 ――突如。
 地の底から湧き上がるような、それでいて大気を震わす悍ましい声が響いた。
「これは魔王の声――まだ生きてやがるってわけですか!?」
 紡の言う通り、この声は間違いなく魔王のもの――癒やしの施しを受けて緩んだ気を、柾は再び引き締める。
『ふふはははは……魔王は不滅……! この世に悪があるかぎり、第二第三の私が貴様たちを苦しめるだろう――』
「負け惜しみを……!」
 柾は響く声の発信源を探し、辺りを見回した。
『というわけで、私が第二の私だ』
『そして私が第三の私だ』
「復活はやっ! しかも二人!」
 ゆかりのツッコミが冴え渡る。
『消耗し尽くした貴様らごとき、果たしてどこまで食い下がれるかな……?』
「くそ……もう何でもありだな。こうなりゃとことん付き合ってやる!」
 柾は腹をくくり、再び魔王たちに拳を向ける。
「行くぞ、お前たち! 俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだ!」

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『仇を討つ者』
取得者:三島 柾(CL2001148)
『魔王の幼馴染』
取得者:由比 久永(CL2000540)
『はじめてのおつかい(EX)』
取得者:栗落花 渚(CL2001360)
『騎士の系譜』
取得者:岩倉・盾護(CL2000549)
『父をたずねて』
取得者:成瀬 翔(CL2000063)
『弟をたずねて』
取得者:風織 紡(CL2000764)
『宮廷道化師』
取得者:ゆかり・シャイニング(CL2001288)
『メ=ガーネ族』
取得者:水蓮寺 静護(CL2000471)
特殊成果
なし



■あとがき■

・これはひどい! 打ち切りオチなんてサイテー!
 皆様いかがお過ごしでしょうか、さくらもみじです。
 今回は若干ならずキャラ崩壊気味の描写が多かったかもしれません。
 まあでも、そこはそれ、夢の中の出来事ということで大目に見ていただければ幸いです。
 参加者の皆様、素晴らしいプレイングをありがとうございました。

・ラーニングの結果、三島柾さんは魔王の腕をばっちり脳裏に焼きつけたはずでした。
 しかし、目が覚めると……記憶は曖昧になり、いまいち思い出せません。
 夢の世界は夢の世界、現実に持ち出すことはできないようです。




 
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