≪嘘夢語≫バクトラマン
●バクトラマン
「バァクゥッ!」
それは、光を纏う巨人。
「バクッ!」
それは、僕らのヒーロー。
「バァァァクッ!」
しかし今は、悪夢の担い手。
天をも貫く高層建築の森の中、白と黒の斑に見える模様の巨人が降り立った。筋骨隆々にして大きさに違わぬ力強さを持ったソレは、何故か顔だけが獏のモノだ。
暫しビルの立ち並ぶ光景を眺めていたかと思うと、不意にL字に構えた腕から眩い光線が放たれた。光線により吹き飛ぶ街並み、逃げ惑う人々、ニタリと笑みを浮かべる巨人。
正に地獄絵図と言っても過言ではない。が、夢の中であるとは言え――夢の中だからこそ――ヒーローは必ずやって来るのだ。
「バァクゥッ!」
それは、光を纏う巨人。
「バクッ!」
それは、僕らのヒーロー。
「バァァァクッ!」
しかし今は、悪夢の担い手。
天をも貫く高層建築の森の中、白と黒の斑に見える模様の巨人が降り立った。筋骨隆々にして大きさに違わぬ力強さを持ったソレは、何故か顔だけが獏のモノだ。
暫しビルの立ち並ぶ光景を眺めていたかと思うと、不意にL字に構えた腕から眩い光線が放たれた。光線により吹き飛ぶ街並み、逃げ惑う人々、ニタリと笑みを浮かべる巨人。
正に地獄絵図と言っても過言ではない。が、夢の中であるとは言え――夢の中だからこそ――ヒーローは必ずやって来るのだ。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.バクトラマンを倒せ!
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
・ビルの立ち並ぶ都心部に「身長数十メートルになった」覚者達が現れます。獏頭の巨人(バクトラマン)を撃破して下さい。
・体が巨大なので普通に歩くだけで街並みに被害が生じます(夢の中なので気にしないで戦闘に移っても問題はありません)。
●目標
バクトラマン:古妖(?):獏の頭を持った身長数十メートルの巨人。古妖『獏』の力による夢の中の存在なので一応古妖扱い。覚者達も巨大化しているので力そのものはランク2の妖程度である。
・バクシウム光線:A特近単[貫3]:L字型(十字ではない)に構えた腕から放たれる光線。つよい。[貫:100%,60%,40%]
・バクトラダイナマイト:A物敵味全:夢のエネルギーを体内より開放して大爆発を起こす。体内で爆発が始まるためバクトラマン自身もダメージを受ける。とてもつよい。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年04月10日
2016年04月10日
■メイン参加者 6人■

●
空から舞い降りる六つの影。それは足元のアスファルトを砕き、土埃を舞い上げながらも確かな足取りで地上へと降り立っていた。
「あらあら? 何か景色が変ねぇ~」
素早く周囲の状況を確認した魂行 輪廻(CL2000534)が即座にいつもの調子に戻る。戦闘における素早さは、こういった振る舞いの速度でも遺憾なく発揮されていた。
「……私が大きく、なってるの?」
「おお、獏さんが某ウルトラな感じなの!」
足元で突然の事態に逃げ惑う人々をぼんやりと神々楽 黄泉(CL2001332)が眺め、自分達と同程度の大きさの存在―――バクトラマンに瀬織津・鈴鹿(CL2001285)が気付く。
「ああ! なんて事なの! 私がこんな巨大化してしまったら……患者達の往診が出来ないじゃない!」
一方、体が巨大化しているという事に嘆いているのは添木・のばら(CL2001367)だ。ガックリと崩れ落ちたかと思うと、感情の赴くままに地面を殴り壊し始めていた。
「随分と非現実な現象だ。つまりこれは現実ではない……」
「……あぁ、これは夢か」
添木・千唐(CL2001369)の一言に天明 両慈(CL2000603)が確信を得た呟きを返す……のは良いのだが、目が死んでるように見えるのは気のせいだろうか?
「バ、バクゥ……」
そんな覚者達と対峙するバクトラマン。獏として声はそれで良いのかという疑問はあるが、それ以上に拳で街を破壊するのばらにドン引きしているようであった。
「……獏、だと? もしやこの夢は意図的なもの、なのか?」
両慈がそれに気が付くと、持ち前の聡明さで事態の異常性へと思考が動いた。一人ならばまだしもF.i.V.E.の面々を複数人同じ夢の世界に引き込むなど、古妖でもなければ出来ない芸当である。
「あ、あらあら。あまり上を見上げちゃ駄目よん……♪」
「私は瀬織津鈴鹿なの。よろしくなの!」
「え、えと……うん、よろしく」
―――まあ、足元からの視線を気にしていたり、やたらとほんわかした空気を醸している他の面々のせいでそのカッコイイシーンも割と台無しなのだが。
「こんな事になったのも……あの病原体の所為ね。いいわ、治療を施しましょう。ええ、殺菌しなくては!」
「だからのばら姉さん興奮しないで……本当にいつも人の話を聞かないよね。もうほっとこう」
目尻に涙を湛えたのばらがバクトラマンを睨み、千唐がガックリと肩を落とす。割と八つ当たりのように見えるが、まあ恐らく元凶なので問題はないだろう。
●
「今日は後輩君達も居る事だし、ちょっと張り切っちゃうわよん♪」
圧倒的な速度で先手を取ったのは輪廻だった。火行弐式「灼熱化」。少々防御力は犠牲になるが、それ以上に攻撃力を大幅に強化する術式である。
「……くだらない夢だが、念の為真面目に戦った方が良さそうだな」
両慈も天行弐式「演舞・清爽」にて全体の強化を図る。特定のステップを踏む事で発動する強化方法のために多少街並みにダメージが生じているが、それはまあ仕方がないだろう。
「バァクゥゥゥゥッ!」
戦闘開始と共に即座に展開した覚者達に四方を囲まれたバクトラマンは全体攻撃であるバクトラダイナマイトを選択。自身へのダメージもお構いなしに攻撃を行った。
「えっ、これ倒さなきゃいけないの? う、うーん……とりあえずわかったの。頑張るの」
獏の頭の全身タイツ野郎にダメージを負わされた事で鈴鹿のスイッチも切り替わり、天行壱式「纏霧」でバクトラマンの弱体化に移る。
「大丈夫です。私がすぐに治しましょう」
纏霧の絡み付くような霧に重ねるようにのばらが水行壱式「癒しの霧」で覚者達の傷を癒そうとする。が、戦闘経験が不足しているせいか爆発のダメージに対しては焼け石に水といった所であった。
「子供が多いが、あまり無茶してはいけないぞ? 確かに君達は強い……だがその強さに過信してはいけないよ、いいね?」
「……子供扱い、しないで欲しい」
「私はともかく黄泉さんは18歳なの。立派なレディなの」
火行壱式「醒の炎」にて自身の強化を図った千唐に黄泉と鈴鹿の冷ややかな視線が突き刺さる。想定外の返しだったのか、千唐は驚愕の表情のまま固まってしまっていた。
「……細かい事、考えるのもするのも、苦手。だから、後は皆に、任せる」
固まったままの千唐から視線を外し、黄泉は勢いよく半月斧を振るう。連続攻撃を行う体術「飛燕」だが、足元の建物のせいで軌道が変わってしまい二発目は明後日の方向へ向いてしまっていた。
「少しは先輩風を吹かせてねん♪」
先の爆発攻撃で一番重症だった千唐に輪廻が「癒力活性」を施す。掌で一瞬触れただけだがその効果は覿面であり、見る間に千唐の傷が癒えていくのが解った。
「しかし何て夢だ……この様なヒーロー物に何の憧れも無かったのだがな」
両慈はそう呟くと呼吸を整え、自身の内に眠る英霊の力を引き出す。「錬覇法」と呼ばれる暦の因子を持つ覚者専用の強化術だ。
「バァ……クゥッ!」
「ガハッ!? ま、まだまだぁ……!」
そんな中で再びバクトラマンを中心とした爆発が起こる。足元の町は近くは更地となり、遠くでも電柱が倒れる等の大惨事となっていた。
そんな威力の攻撃に耐えきれなかった千唐は吹き飛ばされて更に足元の街を破壊するが、一発目を喰らった時点で倒れる覚悟はしていたのだろう。即座に起き上がる。
「ん……ああ、スカートの下が見えると。確かに鈴鹿、ノーパンだけどそんなに騒ぐほどなの?」
破眼光にてバクトラマンに見事呪いをかけた鈴鹿が足元の声を聞き取って応えるが、当然ながら大問題である。
「私に、出来る事は、ただ一つ。この斧で、あれを倒す」
邪魔な建物がなくなって逆にやりやすくなったのか、黄泉は半月斧を更に振るう。特に一発はバクトラマンの急所に当たっているようである。
「何ですか、千唐。私の治療方針に問題でも?」
「いや、別に。俺の神槍、まだまだ至らず……か」
立て続けに癒しの霧で体力の回復に努めるのばらと、槍に炎を纏わせた攻撃を当てながら溜息をつく千唐。与えられるダメージも他の面々に比べると少なく、戦闘経験が足りない事が如実に現れていた。
「こうゆう巨大対決ってよく投げ技とかあったわよねん♪」
三度先手を取った輪廻は体術「圧投」でバクトラマンを投げ飛ばす。獏の頭の癖に格闘戦の心得があるのか一度は外されるが、即座に切り返せる輪廻の敵ではない。
「瀬織津に輪廻、この二人が居ると嫌な予感がするな……」
自身の強化を終えた両慈はダメージを負っている面々が多いと判断し、癒しの霧で回復に移る。氣力の高い両慈による回復はのばらと千唐の体力が全回復する程の威力であった。
「バ、グゥ……!?」
バクトラマンは構えを取って必殺のバクシウム光線を放とうとするが、その直前でガクリと動きを止める。どうやら圧投による負荷で動きが止まってしまったようだ。
「今の内に回復するの! 水行壱式『癒しの霧』!」
そこで鈴鹿が更に回復を重ねる。これにより両慈の体力も全て回復。残りの面々もほぼ無視できる程度までダメージが無くなった。
「……覗いちゃ、駄目」
何やら足元で息を荒げていた人影を蹴り飛ばしつつ、黄泉は三度斧を振るう。一撃は躱されるももう一撃は深々とバクトラマンの胴体に食い込んでいた。
「怪物も一応は人型。なのであれば人体と同じ所が急所のはず……打つべし打つべし!」
氣力切れによって回復手段の無くなったのばらはバクトラマンへと鞭を振るう。テンプルを強かに打ち据えたその鞭捌きが妙に堂に入っていたのは言わぬが花というものだろう。
「さて、俺の武がどこまで通用するか……やってやろうじゃないか」
「バク、ッ……!?」
千唐の薙刀が素早く振られ、バクトラマンの体に裂創を二つ刻む。と、何やらバクトラマンの胸元にあった発光体が点滅し始めたではないか。
それを見てバクトラマンが慌てた様子を見せる。詳細は解らないが、どうやら覚者達に有利な状況である事は間違いないようだ。
「どんどんガンガン蹴り飛ばしちゃうわよん♪」
圧倒的な速度で踏み込んだ輪廻のしなやかな脚が伸びる。輪廻が得意とする蹴撃による二連飛燕、即ち四連続キックがバクトラマンに炸裂した。
途端に足元が沸き立つ。常時肌蹴た着物姿の輪廻は蹴りを入れても不思議と最奥は見えないが、下からならば話は別だ。小さくも野太い歓声が聞こえてくる。
「ヒャッハー! 大人数で凹ってやるぜ! なの」
更に鈴鹿が祓刀・大蓮小蓮を自在に振るう。またしても飛燕による連続攻撃だ。切っ先が先程の四連撃の軌道をなぞるように動き、バクトラマンへと襲い掛かる。
脚と二刀という全く異なる得物ではあるが、根本の技法としては二連撃として共通している。とは言え流石に完全に模倣するのは難しかったか、四発目は空と斬ってしまうのだった。
「二人ともあまり飛び跳ねるな! ち、チラチラ見えているぞ!」
そして普段であれば鉄壁を誇る二人の「ソレ」であったが、幸か不幸か今の両慈には『忍法ラッキースケベの術』が身についてしまっている。
「あらあら、見えちゃったのねん♪」
「……えっち、なの」
「ば、バクゥ……」
天行弐式「雷獣」でバクトラマンを丸焦げにしながらそれを窘めるも、何故か両慈が責められる始末。理不尽な世の中である。
「……ん、倒した?」
「「「えっ?」」」
●
「いや、だから見たくて見てしまった訳ではなくてだな……」
「大丈夫よ、解ってるわん♪ 溜まってる、ってやつなのよねん♪」
「違う!」
バクトラマンが完全に動かなくなったのを確認し、弁解を続ける両慈と面白そうにからかう輪廻。完全に手玉に取られているようだ。
「……あれ、居ない?」
と、それを一緒に眺めていた筈の鈴鹿の姿が見えない事に黄泉が気が付く。キョロキョロと周囲を見渡す黄泉だったが、やがて黄泉自身も煙のようにフッと消えてしまうのだった。
彼女達はどこに行ったのか―――それは簡単。夢はいずれ醒めるもの、である。
「むぅ……おかしな夢を見たの……寝なおそう」
寝ぼけ眼で体を起こした鈴鹿は本当に起きているのか定かではない足取りで両慈の布団に潜り込み、数分もしない内に穏やかな寝息を立て始める。
そうして二度寝の至福を味わう鈴鹿の隣では、遂に両慈がうなされ始めていた。誰か彼を起こしてあげて下さい。
「よかった……あの病原菌で死んだ者はいなかったのですね! では、今日も患者を救いましょう。どんな事をしてでも!」
「うん、どちらかというと姉さんが動き回った結果の方が酷かったもんね……」
一方、五麟市内の添木家では朝も早くから窓を全開にして高らかに笑う姉とどこかゲッソリした姿の弟がいたとかいなかったとか。
空から舞い降りる六つの影。それは足元のアスファルトを砕き、土埃を舞い上げながらも確かな足取りで地上へと降り立っていた。
「あらあら? 何か景色が変ねぇ~」
素早く周囲の状況を確認した魂行 輪廻(CL2000534)が即座にいつもの調子に戻る。戦闘における素早さは、こういった振る舞いの速度でも遺憾なく発揮されていた。
「……私が大きく、なってるの?」
「おお、獏さんが某ウルトラな感じなの!」
足元で突然の事態に逃げ惑う人々をぼんやりと神々楽 黄泉(CL2001332)が眺め、自分達と同程度の大きさの存在―――バクトラマンに瀬織津・鈴鹿(CL2001285)が気付く。
「ああ! なんて事なの! 私がこんな巨大化してしまったら……患者達の往診が出来ないじゃない!」
一方、体が巨大化しているという事に嘆いているのは添木・のばら(CL2001367)だ。ガックリと崩れ落ちたかと思うと、感情の赴くままに地面を殴り壊し始めていた。
「随分と非現実な現象だ。つまりこれは現実ではない……」
「……あぁ、これは夢か」
添木・千唐(CL2001369)の一言に天明 両慈(CL2000603)が確信を得た呟きを返す……のは良いのだが、目が死んでるように見えるのは気のせいだろうか?
「バ、バクゥ……」
そんな覚者達と対峙するバクトラマン。獏として声はそれで良いのかという疑問はあるが、それ以上に拳で街を破壊するのばらにドン引きしているようであった。
「……獏、だと? もしやこの夢は意図的なもの、なのか?」
両慈がそれに気が付くと、持ち前の聡明さで事態の異常性へと思考が動いた。一人ならばまだしもF.i.V.E.の面々を複数人同じ夢の世界に引き込むなど、古妖でもなければ出来ない芸当である。
「あ、あらあら。あまり上を見上げちゃ駄目よん……♪」
「私は瀬織津鈴鹿なの。よろしくなの!」
「え、えと……うん、よろしく」
―――まあ、足元からの視線を気にしていたり、やたらとほんわかした空気を醸している他の面々のせいでそのカッコイイシーンも割と台無しなのだが。
「こんな事になったのも……あの病原体の所為ね。いいわ、治療を施しましょう。ええ、殺菌しなくては!」
「だからのばら姉さん興奮しないで……本当にいつも人の話を聞かないよね。もうほっとこう」
目尻に涙を湛えたのばらがバクトラマンを睨み、千唐がガックリと肩を落とす。割と八つ当たりのように見えるが、まあ恐らく元凶なので問題はないだろう。
●
「今日は後輩君達も居る事だし、ちょっと張り切っちゃうわよん♪」
圧倒的な速度で先手を取ったのは輪廻だった。火行弐式「灼熱化」。少々防御力は犠牲になるが、それ以上に攻撃力を大幅に強化する術式である。
「……くだらない夢だが、念の為真面目に戦った方が良さそうだな」
両慈も天行弐式「演舞・清爽」にて全体の強化を図る。特定のステップを踏む事で発動する強化方法のために多少街並みにダメージが生じているが、それはまあ仕方がないだろう。
「バァクゥゥゥゥッ!」
戦闘開始と共に即座に展開した覚者達に四方を囲まれたバクトラマンは全体攻撃であるバクトラダイナマイトを選択。自身へのダメージもお構いなしに攻撃を行った。
「えっ、これ倒さなきゃいけないの? う、うーん……とりあえずわかったの。頑張るの」
獏の頭の全身タイツ野郎にダメージを負わされた事で鈴鹿のスイッチも切り替わり、天行壱式「纏霧」でバクトラマンの弱体化に移る。
「大丈夫です。私がすぐに治しましょう」
纏霧の絡み付くような霧に重ねるようにのばらが水行壱式「癒しの霧」で覚者達の傷を癒そうとする。が、戦闘経験が不足しているせいか爆発のダメージに対しては焼け石に水といった所であった。
「子供が多いが、あまり無茶してはいけないぞ? 確かに君達は強い……だがその強さに過信してはいけないよ、いいね?」
「……子供扱い、しないで欲しい」
「私はともかく黄泉さんは18歳なの。立派なレディなの」
火行壱式「醒の炎」にて自身の強化を図った千唐に黄泉と鈴鹿の冷ややかな視線が突き刺さる。想定外の返しだったのか、千唐は驚愕の表情のまま固まってしまっていた。
「……細かい事、考えるのもするのも、苦手。だから、後は皆に、任せる」
固まったままの千唐から視線を外し、黄泉は勢いよく半月斧を振るう。連続攻撃を行う体術「飛燕」だが、足元の建物のせいで軌道が変わってしまい二発目は明後日の方向へ向いてしまっていた。
「少しは先輩風を吹かせてねん♪」
先の爆発攻撃で一番重症だった千唐に輪廻が「癒力活性」を施す。掌で一瞬触れただけだがその効果は覿面であり、見る間に千唐の傷が癒えていくのが解った。
「しかし何て夢だ……この様なヒーロー物に何の憧れも無かったのだがな」
両慈はそう呟くと呼吸を整え、自身の内に眠る英霊の力を引き出す。「錬覇法」と呼ばれる暦の因子を持つ覚者専用の強化術だ。
「バァ……クゥッ!」
「ガハッ!? ま、まだまだぁ……!」
そんな中で再びバクトラマンを中心とした爆発が起こる。足元の町は近くは更地となり、遠くでも電柱が倒れる等の大惨事となっていた。
そんな威力の攻撃に耐えきれなかった千唐は吹き飛ばされて更に足元の街を破壊するが、一発目を喰らった時点で倒れる覚悟はしていたのだろう。即座に起き上がる。
「ん……ああ、スカートの下が見えると。確かに鈴鹿、ノーパンだけどそんなに騒ぐほどなの?」
破眼光にてバクトラマンに見事呪いをかけた鈴鹿が足元の声を聞き取って応えるが、当然ながら大問題である。
「私に、出来る事は、ただ一つ。この斧で、あれを倒す」
邪魔な建物がなくなって逆にやりやすくなったのか、黄泉は半月斧を更に振るう。特に一発はバクトラマンの急所に当たっているようである。
「何ですか、千唐。私の治療方針に問題でも?」
「いや、別に。俺の神槍、まだまだ至らず……か」
立て続けに癒しの霧で体力の回復に努めるのばらと、槍に炎を纏わせた攻撃を当てながら溜息をつく千唐。与えられるダメージも他の面々に比べると少なく、戦闘経験が足りない事が如実に現れていた。
「こうゆう巨大対決ってよく投げ技とかあったわよねん♪」
三度先手を取った輪廻は体術「圧投」でバクトラマンを投げ飛ばす。獏の頭の癖に格闘戦の心得があるのか一度は外されるが、即座に切り返せる輪廻の敵ではない。
「瀬織津に輪廻、この二人が居ると嫌な予感がするな……」
自身の強化を終えた両慈はダメージを負っている面々が多いと判断し、癒しの霧で回復に移る。氣力の高い両慈による回復はのばらと千唐の体力が全回復する程の威力であった。
「バ、グゥ……!?」
バクトラマンは構えを取って必殺のバクシウム光線を放とうとするが、その直前でガクリと動きを止める。どうやら圧投による負荷で動きが止まってしまったようだ。
「今の内に回復するの! 水行壱式『癒しの霧』!」
そこで鈴鹿が更に回復を重ねる。これにより両慈の体力も全て回復。残りの面々もほぼ無視できる程度までダメージが無くなった。
「……覗いちゃ、駄目」
何やら足元で息を荒げていた人影を蹴り飛ばしつつ、黄泉は三度斧を振るう。一撃は躱されるももう一撃は深々とバクトラマンの胴体に食い込んでいた。
「怪物も一応は人型。なのであれば人体と同じ所が急所のはず……打つべし打つべし!」
氣力切れによって回復手段の無くなったのばらはバクトラマンへと鞭を振るう。テンプルを強かに打ち据えたその鞭捌きが妙に堂に入っていたのは言わぬが花というものだろう。
「さて、俺の武がどこまで通用するか……やってやろうじゃないか」
「バク、ッ……!?」
千唐の薙刀が素早く振られ、バクトラマンの体に裂創を二つ刻む。と、何やらバクトラマンの胸元にあった発光体が点滅し始めたではないか。
それを見てバクトラマンが慌てた様子を見せる。詳細は解らないが、どうやら覚者達に有利な状況である事は間違いないようだ。
「どんどんガンガン蹴り飛ばしちゃうわよん♪」
圧倒的な速度で踏み込んだ輪廻のしなやかな脚が伸びる。輪廻が得意とする蹴撃による二連飛燕、即ち四連続キックがバクトラマンに炸裂した。
途端に足元が沸き立つ。常時肌蹴た着物姿の輪廻は蹴りを入れても不思議と最奥は見えないが、下からならば話は別だ。小さくも野太い歓声が聞こえてくる。
「ヒャッハー! 大人数で凹ってやるぜ! なの」
更に鈴鹿が祓刀・大蓮小蓮を自在に振るう。またしても飛燕による連続攻撃だ。切っ先が先程の四連撃の軌道をなぞるように動き、バクトラマンへと襲い掛かる。
脚と二刀という全く異なる得物ではあるが、根本の技法としては二連撃として共通している。とは言え流石に完全に模倣するのは難しかったか、四発目は空と斬ってしまうのだった。
「二人ともあまり飛び跳ねるな! ち、チラチラ見えているぞ!」
そして普段であれば鉄壁を誇る二人の「ソレ」であったが、幸か不幸か今の両慈には『忍法ラッキースケベの術』が身についてしまっている。
「あらあら、見えちゃったのねん♪」
「……えっち、なの」
「ば、バクゥ……」
天行弐式「雷獣」でバクトラマンを丸焦げにしながらそれを窘めるも、何故か両慈が責められる始末。理不尽な世の中である。
「……ん、倒した?」
「「「えっ?」」」
●
「いや、だから見たくて見てしまった訳ではなくてだな……」
「大丈夫よ、解ってるわん♪ 溜まってる、ってやつなのよねん♪」
「違う!」
バクトラマンが完全に動かなくなったのを確認し、弁解を続ける両慈と面白そうにからかう輪廻。完全に手玉に取られているようだ。
「……あれ、居ない?」
と、それを一緒に眺めていた筈の鈴鹿の姿が見えない事に黄泉が気が付く。キョロキョロと周囲を見渡す黄泉だったが、やがて黄泉自身も煙のようにフッと消えてしまうのだった。
彼女達はどこに行ったのか―――それは簡単。夢はいずれ醒めるもの、である。
「むぅ……おかしな夢を見たの……寝なおそう」
寝ぼけ眼で体を起こした鈴鹿は本当に起きているのか定かではない足取りで両慈の布団に潜り込み、数分もしない内に穏やかな寝息を立て始める。
そうして二度寝の至福を味わう鈴鹿の隣では、遂に両慈がうなされ始めていた。誰か彼を起こしてあげて下さい。
「よかった……あの病原菌で死んだ者はいなかったのですね! では、今日も患者を救いましょう。どんな事をしてでも!」
「うん、どちらかというと姉さんが動き回った結果の方が酷かったもんね……」
一方、五麟市内の添木家では朝も早くから窓を全開にして高らかに笑う姉とどこかゲッソリした姿の弟がいたとかいなかったとか。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『夢の巨人』
取得者:天明 両慈(CL2000603)
『夢の巨人』
取得者:瀬織津・鈴鹿(CL2001285)
『夢の巨人』
取得者:添木・のばら(CL2001367)
『夢の巨人』
取得者:魂行 輪廻(CL2000534)
『夢の巨人』
取得者:神々楽 黄泉(CL2001332)
『夢の巨人』
取得者:添木・千唐(CL2001369)
取得者:天明 両慈(CL2000603)
『夢の巨人』
取得者:瀬織津・鈴鹿(CL2001285)
『夢の巨人』
取得者:添木・のばら(CL2001367)
『夢の巨人』
取得者:魂行 輪廻(CL2000534)
『夢の巨人』
取得者:神々楽 黄泉(CL2001332)
『夢の巨人』
取得者:添木・千唐(CL2001369)
特殊成果
なし
