ささやかな誕生日パーティーをもう一度
ささやかな誕生日パーティーをもう一度


●百鬼の襲撃の最中で
 京都府五麟市。
 この地は先日、百鬼という隔者集団に襲撃されてしまった。
 幸い、この地には『F.i.V.E.』の本部があり、多数の覚者が常駐している。彼らの働きもあって、百鬼を撃退することができたのだが……。
「五麟市が受けた被害は、決して小さくはありませんわ」
 『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)は集まってくれた覚者達に告げた。
 戦場が街中になった所もちらほらあり、市は総力を挙げて復興を急いでいる。
 とはいえ……。
「被害に遭った人達の精神的なケアが必要だと、私は思いますの」
 実際、百鬼に家族、友人が襲われ、傷つけられた者もいる。また、隔者に襲われたりはしないか。そんな不安を覚えて震える人々だっている。
 この地に住む静音には、それが見えていた。彼女も高校入学を控えて色々と準備に追われているが、黙ってはいられないのだ。
 静音の知人の中には、戦いの最中、百鬼が飛ばしたスキルによって、家が破壊されてしまった家族がいる。若い夫婦に小学校入学前の娘がいる高橋家だ。
「百鬼襲撃の日、娘である柚花さんの誕生日だったのですわ」
 ささやかな誕生日パーティーが百鬼の襲撃によって、ぶち壊しにされてしまった。折角のケーキを食べることもできず、それどころか、それまで住んでいた家までも壊されてしまった。
 それもあり、柚花は今、若干塞ぎこんでしまっているのだという。
 このままでは、彼女は誕生日になる度、百鬼襲撃の日を思い出してしまう。……だから。
「柚花さんの為に、改めて誕生日パーティーを催したいのです」
 幸いにも、『F.i.V.E.』という組織は五麟市民にも認知されてきており、しかも、百鬼から街を救ってくれた英雄でもある。『F.i.V.E.』の覚者達が自分の為に駆けつけてくれたと知れば、柚花も喜ぶことだろう。
 折角だから、柚花には知らせずにパーティーの準備を進めたい。そして、静香は柚花と顔見知りの為、彼女を会場に連れてくる役目を請け負いたいと考えている。
「その分、皆様には、会場の飾りつけ、料理、プレゼントの準備をお願いしたいのですわ」
 静音も彼女へと、猫の守護使役を模したキーホルダーを送る予定だ。
 また、柚花は魔法少女や変身ヒロインに憧れているようなので、その関係のプレゼントならば、柚花は大いに喜ぶかもしれない。
「それでは皆様、お忙しいかと思いますが、よろしくお願いしますわ」
 静音はそうして、覚者へと頭を下げるのだった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:簡単
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.誕生日パーティーの成功
2.なし
3.なし
初めましての方も、
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
百鬼が五麟市を襲撃してきたあの日、
楽しいはずの誕生日パーティーで
哀しい想い出を残してしまった少女、高橋・柚花がいました。
あの日の出来事がなかったことにはできませんが、
せめて、改めて誕生日パーティーを催すことで、
この少女に少しでも楽しい想い出を作って欲しいと思います。

以下、参加についての補足です。

●参加方法
高橋家の自宅は現状、補修工事中ですので、
避難先、五麟市の公民館でパーティーを企画することになります。
小さな会議室を借りきり、そこを飾り付け、
サプライズパーティーの開催準備、
並びに会の進行を願います。

シナリオは、以下のように展開します。

1.飾り付け、準備
限られた時間内に会議室の飾り付けを願います。
準備期間は、朝から半日といったところです。
誕生日の看板作り、紙の鎖での飾りつけが定番ですが、
予想外のもの、また手が込んでいればいるほど、
柚花は喜びます。

2.サプライズ
夕方にパーティーを開始します。
柚花をいかに驚かせるかを考えてください。
もちろん、彼女はパーティーのことを知りません。
柚花は小学校入学前ということもあり、
普段は避難場所にて1人で過ごしているようです。

3.パーティーの様子
用意したものが如何なるものかで
柚花が喜ぶ度合いが変わります。
料理、プレゼントもそうですが、
余興としてなにか披露するのもいいでしょう。

●NPC
高橋・柚花……6歳。魔法少女などの変身ヒロイン物に憧れる少女です。
静音のご近所さんのようで、顔見知りでもあります。
誕生日パーティーの最中に自宅が半壊し、
若干塞ぎこんでしまっています。

静音も手伝いに駆けつけます。
基本、半日の間、柚花の相手をすることになるのですが、
何かして欲しいこと、準備して欲しいものがありましたら、
可能な範囲内でお手伝いしますので、
プレイングで指示を願います。
パーティー内での絡みなども、できる範囲で応じさせていただきます。

それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします!
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年04月05日

■メイン参加者 8人■

『花守人』
三島 柾(CL2001148)
『居待ち月』
天野 澄香(CL2000194)
『星唄う魔女』
秋津洲 いのり(CL2000268)
『相棒捜索中』
瑛月・秋葉(CL2000181)
『マジシャンガール』
茨田・凜(CL2000438)

●少女の為に
 『F.i.V.E.』の会議室にて。
 一旦集まった覚者達は打ち合わせを行い、各自どう動くかを話し合う。
「柚花ちゃんはあの日、誕生日だったんですね」
「誕生日が悲しい思い出の日になってしまうなんて、辛すぎますよね」
 それなら、今日はとても楽しい誕生日にしないとと、阿久津 ほのか(CL2001276)は考えている。天野 澄香(CL2000194)もまた、高橋・柚花を何とか笑顔にしてあげたいと張り切っている。
「やっぱり子供には笑顔が一番やし、楽しい誕生日パーティーにして、柚花ちゃんに幸せを届けられるようにしたいなー」
「せっかくのお誕生日パーティーが台無しになったのでは可哀想ですわよね。微力ながら、いのりも柚花様に喜んでもらえるよう頑張りますわ!」
 茨田・凜(CL2000438)も『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268)も、柚花にどう喜んでもらおうかと案を出し合っていた。
「ガキの誕生日祝いか……たまには気分転換にこーゆーのもいいな」
 様々な仕事に手をつけている『ゴシップ記者』風祭・誘輔(CL2001092)。1人の少女の為に働く依頼というものいいものだ。『相棒捜索中』瑛月・秋葉(CL2000181)もまた、楽しい誕生会にしたいと意気込んでいたようだ。
「……あの日が誕生日だったガキねぇ……」
 坂上・恭弥(CL2001321)は家だけで被害が済んでよかったのではと一瞬頭を過ぎったが、こればかりは当人の感じ方次第、子供にとっては普通にトラウマになりかねない事件である。
「……しゃあねぇ、俺も協力してやんよ。ガキはガキらしく笑顔で人生謳歌すんのが一番なんだよ、ったく……」
 悪態づきつつも、恭弥も参加を決めていたようだ。
(あの日、奪われたものは多いからこそ、自分の手の届く範囲で出来る事があるなら、可能な限り出来る事をしたい)
 『百合の追憶』三島 柾(CL2001148)はゆっくりと立ち上がる。各々の役割が決まったところで、覚者達はパーティー準備の為に動き始めた。

 多くの覚者メンバーが移動していく中、敢えて『F.i.V.E.』に残っていたほのか。
(ん~と、柚花ちゃんは魔法少女が好きだそうだから)
 早起きしてある程度下拵えを済ませていたマジパンの生地を持ち寄った彼女は、さらにこねこね、こねこね……。そして、細かい部分をヘラや爪楊枝で丁寧に作り上げていく。
「できた~♪」
 ほのかは完成したそれとプレゼントを持ち、公民館へとダッシュしていく。
 これらの完成形は柚花と一緒に見ることにしたい。果たして彼らはどんな料理を作ったのだろうか。
 一方で、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059) が『F.i.V.E.』へと柚花を連れてきていた。
「F.i.V.E.のおにーさんやで☆」
 初顔合わせ言うことで、秋葉がにっこりと笑って挨拶を交わす。
「おにーさんは静音の友達だ 一緒に遊ばねーか?」
 誘輔は屈んで目線を合わせて自己紹介を行う。怪しまれないようにと配慮する2人だが。父親にも近い年代の男性2人はさすがに警戒してしまう。
 それもあって、静音が柚花の説得に、かなり時間を割く羽目になってしまったようである。

●飾りつけ、お料理、柚花と!
 さて、多くのメンバーはパーティー準備の為、五麟市の公民館へとやってくる。
 その会議室を借り切った一行。いのり、澄香が会場の飾り付けを行う。
 いのりはまず紙製の鎖を作っていき、頭上を飾っていくのだが、彼女が本腰を入れていたのは別のものだ。
 まず、懐中電灯を紙のお皿に刺し、その周りに円錐形にした黒の色画用紙を巻き付ける。小学生の図画工作のようだが、理科の要素も入った何かを作成する。
 遅れてやってきたのは、柾だ。彼は先に柚花の両親と会い、彼女の為にサプライズパーティーを開催することを伝えていたのだ。
「小さな女の子が喜びそうなものか」
 やってきた柾は、椅子、テーブルといった会場作りに加わる。せっせと手早く動いて、音響や照明道具も準備していく。
 ある程度形作れば、それらへと飾り付けを行う。用意したテーブルにはテーブルクロスを、可愛らしいキャラクターのぬいぐるみを用意し、周囲には様々な色の風船を膨らませていく。
 出入り口には、きらきらとした飾りつけ。そして、薄用紙で作ったペーパーフラワーに折り紙から立体の星を作る。そして、入り口逆側には、『柚花ちゃんたんじょうびおめでとう』という看板。
「まぁ、ありきたりだが、それなりの見栄えになったかな」
 一息つく柾。だが、そのほとんどを1人でこなしたことを考えれば、さすがと言える出来だろう。その後、彼はいのりの手伝いにも加わる。
 さて、大掛かりなものを作っているいのり。
 画用紙には何かを模って穴を開け、メンバーがそれぞれ持ち寄ってくれた懐中電灯を受け取り、天井から吊り下げられるようそれらにフックを取り付けていく。
 また、何かの型を抜いた画用紙に色セロハンをつけた物も用意する。試しに照明を付け、満足のいく形になるよう調整も忘れない。
 ところで、その作業の合間に、一旦その場へとやってきた澄香も、花やレースペーパーで可愛く飾り付ける手伝いを行う。
 また、澄香は先にプレゼントを買いにおもちゃ売り場へと行っており、それらの包装を外してピンクと赤のリボンでラッピングを施していた。
 そこに駆けつけてきたほのか。彼女は澄香へとマジパンを渡し、逆に澄香からそれらのプレゼントを受け取る。
「上手く行くといいのですけど」
「そだね~」
 1つ頷く澄香にほのかも応じるが。2人は忙しなく、別の場所へと移動していくのだった。

 公民館の調理室を借り切って料理を作っていたのは、澄香、恭弥、凜だ。
「さて、趣味でやってた料理の腕を生かす時が来るとはな」
 腕まくりをする恭弥。先程の悪態はどこへやら。彼は美食家のスキルを発動させ、まずはオードブルから用意する。
 とにかく品数が必要だ。恭弥は片っ端から料理を作っていく。
 凜はお菓子を買い込んでいたが、これはあくまで追加分として。彼女もまた、お料理をと調理台に向かう。
(子供に喜ばれそうなものは普段からそれなりにチェックしてるつもりなんやけど、うまく喜んでもらえるかなぁ?)
 まったりしているようで、実は肉食女子な凜。嫁入りした後の対策もばっちりである。彼女もまた、子供に人気がありそうだと考えた一品を用意したのだが。こちらは後ほど。
 凜はある程度自分の料理が完成すると、沢山の料理を手がける恭弥の手伝いに回っていたようだ。料理は大好きとあって、積極的に手伝いをしていたようだ。
 澄香はケーキを焼いていた。大小2種類のスポンジケーキを2段重ねにする。
(女の子だもの、苺のケーキ好きですよね、きっと)
 その間には苺を挟んで、生クリームをたっぷりと塗っていく。
 完成したケーキの上には、ほのかから受け取ったマジパン。澄香はその出来にうんうんと頷く。完成したものは、柚花と一緒に堪能することにしよう。

 その柚花は、静音と秋葉、誘輔に連れられて近場の公園までやってきていた。
 しばらくは話をしていたり、自分の体験談などで柚花を楽しませたりしていた3人の元へ、ほのかがやってきた。
 幼い頃にお世話になったと言う誘輔が、小学校に入学する直前の少女と会話している姿は、自分の小さな頃を思い出してしまう。
 ほのかは柚花へと自己紹介した後、皆でだるまさんがころんだで遊ぼうと提案する。
 人数は4人。それならできそうだと、誘輔が同意する。柚花は楽しそうと満面の笑みを浮かべていた。
 ――そして。
「だるまさんが……転んだ」
「う、動いてしまいましたわ……」
 静音は体勢を崩して尻餅をついてしまっていた。さすがに、和服姿でだるまさんがころんだは無謀な挑戦だったと言わざるを得ない。
「…………っ」
 ほのかもピタッと止まるが、顔はこわばってしまう。
(そういえば、秋葉さんは動かないのとかってどうなのかなぁ?)
 興味はあるのだが、動くわけにもいかない。ただ……。
「……瑛月てめえ、今ちょっと動いたろ? ごまかそうったって無駄だ、俺の眼鏡はごまかせねえ」
「アホ抜かせ、動いとらんわ」
 ムキになり、秋葉も反論する。
 2人の争いはしばらく続く。だが、それもまた楽しいひと時。柚花もほのかも腹を抱えて笑っていたのだった。

●サプライズ!
 日が暮れた頃、準備が出来たと言う知らせを受け、柚花と遊んでいたメンバーは公民館へとやってくる。
「つい、ガラにもなく本気になっちまったぜ……」
「風祭君には負けられへんわ」
 秋葉は譲らぬものの、口論は控えようとしていた。ただ、誘輔が秋葉に食いかかるようにして争っていたようだ。 
 結果はうやむやになったようだが、気持ちを切り替えて。
 メンバーは会議室へと向かうが、途中、ほのかはそっと柚花の手を引き、プレゼントを差し出す。それは、澄香から受け取った魔法少女の衣装と、ステッキはリボンでラッピングされていて。
「うわぁ……」
 目を輝かせる柚花にほのかは着替えるよう促し、別室へと連れて行く。秋葉はそれを見守りながらも、会議室へと入っていた。
 ほのかが見守る中、魔法少女の衣装に着替えた柚花。リボンを外したステッキを右手に。左手はほのかと手を繋いで会場へと向かっていく。
「あれ、まっくら……?」
 会議室内は電気が消され、暗くなっていた。
「お願い、魔法のステッキを振って!」
 中にいた澄香が大声で叫ぶと、柚花は手にしていたステッキを一振りした。すると、魔法少女らしい音楽が流れ始めた。
 すると、室内に照明が点灯する。さらにステッキの動きに合わせて音楽が変わり、違う色のライトが灯った。
「すごい、すごい!」
 柚花がステッキを振る度に柾がスイッチを操作し、彼女を楽しませる。少女の喜ぶ姿に、柾はほっとしていた。
「お誕生日おめでとうなんよ」
 凜が柚花へと声を掛ける。照明が一斉につくと、澄香は自身が焼いた2段重ねのケーキを差し出す。1段目の外回りの苺は先の方に切れ目が入っており、花の形になっている。2段目の外回りにも、縦半分にした苺がぐるりと配置されていて、苺たっぷりのケーキだ。
 そして、ケーキ上部には、「柚花ちゃん、お誕生日おめでとう!」と書かれたチョコプレートに、年の数となる6本のロウソク。さらに目を引くのはマジパンで作られたほのか渾身作、魔法少女ちゃんである。レースや細かい部分まで丁寧に作りこまれていた。
「うわあ……」
 もはや、口を開けるしかない柚花。それでも、凜は固唾を呑んで見守っている。まだ、サプライズは終わっていない。
 メンバーがロウソクに火を点すと。いのりがにっこりと笑って柚花に呼びかける。
「柚花様、魔法のステッキを振って、『星よ出ろ』と仰ってくださいませ」
 うんと頷く柚花が「星よ出ろ!」とステッキを振るえば、部屋の照明がまた落ちた。 同時にいのりが暗視で机の下のスイッチを起動させると、会議室全体がプラネタリウムのように輝き始めて。
「すばらしいですわ……」
 想像以上の演出に、静音も驚く。
 これが、いのりが作ったギミックだ。天井からつるした懐中電灯を中心に星の形に穴を開けた黒い色画用紙を巻きつけ、天井に星空を作り出していたのだ。
 そこを、魚が泳いでいく。これは画用紙の穴にセロハンを張ったものに光を照らすことで演出していた。
 そして、いのりが歌い出す誕生日の歌に、秋葉も声を合わせて歌い始める。メンバー達も声を揃えて歌い、その最後に柚花がロウソクの火を消した。
 室内に巻き起こる拍手の後、再び照明がつく。
「ね、思い出にみんなで写真撮りませんか」
 澄香がそう話を持ち掛けると。メンバー達は揃ってシャッターの光と共に笑みを浮かべたのだった。

●少女の笑顔が見たいから
「乾杯!」
 秋葉の掛け声で始まるパーティー。メンバーが作った料理が次々に振舞われる。
 そこには、主に恭弥が作った料理が並ぶ。白身魚のフライ、エビフライ、玉子焼き、串カツ、ポテトサラダ、カットフライドポテトに海鮮海苔巻。サラダを盛り付けたフライドチキンも食欲をかきたてる。
 メインディッシュはオムライス。柚花のものだけ、ケチャップで「Happy Birthday!」とかかれてあり、皿の空いたスペースには、魔法少女の似顔絵が描かれている。
 中には、凜が作ったものも並んでいた。野菜をしっかり食べてもらいたいと、可愛らしいプチトマトがメインのサラダは、葉っぱの緑とトマトの赤で食卓を彩る。
 そして、凜が力を入れたのは、「小熊さんハンバーグ」だ。手作りのミニハンバーグで、クマさんの顔と耳を象る。そして、デミグラスソースで丁寧に目と口を作り、にっこりとした笑顔を描いた。
 口の周りをケチャップやソースをつけつつ、柚花はおいしそうにそれらを食べる。
 彼女のそばには、切り分けられたショートケーキ。その上には、ほのかのつくったマジパン魔法少女がのっていて。
「マジパン……ちゅーやつ? 今度作り方教えてぇな」
「さすが亮平の妹だ。こないだのバレンタインケーキも美味かったし、いい嫁さんになるぜ、きっと」
 秋葉は小声でほのかに教えを請う。誘輔も笑ってそんなコメントをすると、ほのかは照れてしまっていたようだ。
 誘輔は改めて柚花を見ると、彼女はほのかと一緒にショートケーキをはむはむもぐもぐと頬張っていた。
 そんな少女の姿に、誘輔は小さい頃の妹を思い出してしまって。
(今じゃでかくなってすっかり可愛げなくなっちまったけど、妹の誕生日もこうして祝ってやったっけ)
 1人で育てたようなものだからなとしみじみ思い返す誘輔は、自身にもこのくらいの子供がいてもおかしくないんだなと、何気なく思考を巡らせるのである。

 ある程度、お腹が一杯になった後は、メンバーは余興を行う。
「ピピピル、ピピピル、プププリパ」
 いのりは冥王の杖を振るって覚醒し、現の因子の力で大人の魔女っ子へと姿を変えて見せた。いいぞと秋葉が喝采をあげる。
「いのり達は二度と皆様のお家が壊されないよう頑張りますから、柚花様も応援してくださいね」
 そうして、彼女は笑顔でリングを差し出した。
 そこから、覚者達によるプレゼントラッシュが始まる。誘輔はくまのぬいぐるみを柚花に渡す。
「……なあ、お前はどんな大人になりたい?」
 大人の姿になったいのりを見ながら、誘輔が柚花に問う。だが、まだ6歳になったばかりの彼女は、「魔法少女!」と大きな声で答えた。
 どういう意味で柚花が言ったのかは、覚者達には分からない。もしかしたら彼女なりにこの世の中を憂い、また、どうしようもなかったあの日を経験して、力を得て何かを成したいと子供心に思ったのかもしれない。
「大人になったら、もっとたくさん辛いことがある。でもな……悪い事ばっかじゃねえよ」
 誘輔は顔見知りの仲間を見回しつつ、笑って柚花を諭す。彼女は小さくうんと頷いた。
 静音が猫の守護使役を象ったキーホルダーを差し出せば、柾も「誕生日おめでとう」と小さなぬいぐるみを渡していた。
 ほのかは魔法少女がモチーフとなっている、手製の髪飾りを差し出す。
「可愛い!」
 花模様がアクセントとなっており、可愛らしさを際立たせるそれが気に入ったのか、彼女はすぐにそれを頭につけていたようだ。
「誕生日おめでとうや、柚花ちゃん」
 秋葉がささやきながら差し出したのは、白い柚の花の髪飾りだ。
「柚の花言葉には『幸福』って意味もあるんやて。これから柚花ちゃんの未来にどんな事があったって、僕達みんながついとる」
 彼はウインクし、ぽんと頭を撫でるが。2つ貰った髪飾りをどうしようかと戸惑う柚花の姿は、仲間の笑いを誘っていた。
「さてと、俺はぶっちゃけ金がねェから、上等なプレゼントなんて用意出来ねェ。……だから、これで勘弁してくれねぇか」
 恭弥が用意したのは、笑顔の柚花、それに仲間達と魔法少女が楽しそうにパーティーをしているイラストだ。彼は何時の間にこれを描いていたのだろうか。
「あー……嬢ちゃん。確かにあんたは今年の誕生日に大変な目にあった」
 覚者の言葉に、もしかしたら柚花は気づいていたのかもしれない。自分を励ましてくれる為に、こうしてパーティーを開いてくれたのだと。
「けどな、どんなにつらい目に遭って悲しんでも……最後には笑ってくれや」
 魔法少女だって、「皆の笑顔」の為に戦っている。そんなふうに、「誰かの笑顔」の為に戦える大人になりなと、恭弥は笑顔で彼女の頭を撫でた。
 澄香が最後に、柚花へとこう言葉を残す。
「お誕生日は、柚花ちゃん産まれてくれてありがとうの日。また来年も私にありがとうを言わせて下さいね」
「うん、皆、ありがとう!」
 そんな少女の晴れやかな笑顔を見て。凜は静音にそっと近寄り、こう告げた。
「上手いこといって良かったやん」
「はい、そうですね」
 これ以上ない誕生日プレゼントを送ることが出来て。静音はとても嬉しそうにはにかんだのだった。

■シナリオ結果■

大成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

リプレイ、公開です。
皆様の手の込んだパーティーの演出に、
脱帽いたしました。
文句なしの大成功です。
MVPは非常に悩みましたが、
少女の願望を叶えるべく尽力していただいたあなたへ。

参加された皆様、
本当にありがとうございました!




 
ここはミラーサイトです