≪嘘夢語≫微笑みが凄く怖いよ真由美様
●悪夢降臨
「まあ。見てしまったんですね?」
いつもと変わらぬ笑顔を携え、久方 真由美(nCL2000003)は貴方達に向かってくるのであった。
「まあ。見てしまったんですね?」
いつもと変わらぬ笑顔を携え、久方 真由美(nCL2000003)は貴方達に向かってくるのであった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.真由美の戦闘不能
2.ネタと割り切って全滅する
3.なし
2.ネタと割り切って全滅する
3.なし
年に一度FiVE内で実施している健康診断。そこには様々な健康状態が記されている。そしてその項目の中に『体重』と言うのがあった。
そして真由美の体重が記された健康診断の書類。何かしらの手違いで『貴方達』はその数値を知ってしまった。そして真由美当人が目の前に……。
不慮の事故には違いないが、それは知ってはならぬパンドラの箱。その奥にあったのは希望ではなく絶望。秘密を知る者の記憶を消す為に、真由美は近づいてくる。
笑顔の魔人が今、動き出す……!
●敵情報
久方 真由美(×1)
FiVEの夢見です。
基本笑顔を絶やさない優しいお姉さんですが、久方弟妹は『怒らせると怖い』と口をそろえて言います。
夢見なのでHPとか低めです(それでも憤怒者並にはあります)が、その分面倒なぐらいに復活します。長期戦必至。そのくせ面倒なスキルばっかり持っています。
攻撃方法
寸勁 物近単 ワンインチパンチ。わずかな距離から放たれる拳〔物防無〕
三歩必殺 P 一歩目で崩し、二歩目で撃ち、三歩目で備える。常に三回行動。
五行封殺 特近単 源素の流れを掴み、鋭い一撃を放ちます。〔封印2〕
七星天分肘 物近単 足で払うと同時に相手の頭を打つ技。〔必殺〕〔不随〕
ナインライブズ P NINE LIVES。必殺を無視して九回だけ戦闘不能から回復します。
笑顔の圧力 P プレイングに応じたHP補正。下記参照。
・笑顔の圧力
真由美の持つ能力です。笑顔に押され、全力を出し切れません。
『各種スキル名』を除くプレイングのう段(う、く、す、つ、ぬ、ふ、む、ゆ、る。濁音、半濁音、小書き含む)の数×10点だけ、HPが減った状態で戦闘が開始します。これによって減ったダメージはスキルなどでは回復しません。この依頼の間だけ、最大HPが減るものとおもってください。これによりHPがマイナスになった場合、HP10として扱います。
なお日本語以外でプレイングを書いた場合、日本語に意訳してダメージ計算します。たとえばHPは(ヒットポイント)と訳し、う段の数が1つ追加されます。
■エイプリルフール依頼について
この依頼は参加者全員が見ている同じ夢の中での出来事となります。
その為世界観に沿わない設定、起こりえない情況での依頼となっている可能性がありますが全て夢ですので情況を楽しんでしまいしょう。
またこの依頼での出来事は全て夢のため、現実世界には一切染み出す事はありません。
※要約すると夢の世界で盛大な嘘を思いっきり楽しんじゃえ!です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年04月13日
2016年04月13日
■メイン参加者 8人■

●笑顔の夢見と八人の覚者
(……不慮の事故といっても思いとどまってはくれないでしょうね)
『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)は迫る真由美に対し、脂汗を流しながら思考する。会議室で会う真由美とは違い、恐ろしほどの圧力を感じていた。
「え~と、これはその……なんだ、違うんだ。不慮の事故だし、セーフ、セーフだろう……駄目か」
諦めたようにため息をつく『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)。言い訳が通用する状況とは思えないが、しかし弁明はしたかった
「真由美を倒さねば、生き残れない……!」
『樹の娘』檜山 樹香(CL2000141)はひしひしと感じる真由美の強さに薙刀を構える。今まで戦ってきた相手の中でもトップクラスの相手だ。
「なるほど……これが女子力(物理)というものか」
のんびりとした口調だが、どこか緊張感を含めた『白い人』由比 久永(CL2000540)の声が響く。正体不明の圧力にため息をつく。
「女にとって己の目方とはトップシークレット。だからその行い自体は理解できた……けど!」
隠れていたバクを捕まえてその頭をグリグリしながら、『調停者』九段 笹雪(CL2000517)
は真由美が怒る理由に納得していた。
「困ったね。まるで意味がわからない」
逆に華神 悠乃(CL2000231)は真由美が起こった理由が理解できない、とばかりに首をひねる。値自体におかしな部分はなかったのだが……。
「目方がなにさ! わたしなんて背丈よ!」
身長147センチ(2016年4月現在)『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)は涙を流し抗議する。そんな御年二十三歳。
「ちょっと冷静になりな……あらあら、これはかなり本気ねん」
真由美を説得しようとして、途中であきらめる『ドキドキお姉さん』魂行 輪廻(CL2000534)。こうなった以上全力で挑むのみ。
「覚悟はよろしいですか?」
真由美は笑顔のままゆっくりと近づいてくる。構えらしい構えはない。会議室で予知夢を告げるそのままの立ち様だ。隙だらけ故に逆に攻めづらい。
どうしてこうなった! そう思いたい気持ちを押さえながら覚者達は戦いに挑む。
●真由美との攻防
勝負の開幕を取ったのは、輪廻だった。
「先ずは投げ飛ばして体術を防ぐわよん」
神具を装着し、真由美との間合いを測る。真由美は神具らしいものを何もつけていない。だが、それを弱いと侮るつもりはなかった。最小限の構えで立つ真由美に対し、真正面に立ち勝負に挑む。
輪廻は真由美に近づき、回転するように重心を移動させる。それは円を描く投げの形。かつての戦いで輪廻自身が得た投げの奥義。緩急加えた一撃は真由美のバランスを崩し、その体幹を崩し、地面に叩きつける。
「これでどうかしらん」
『非常にまずい状況ですが……』
思考しろ、思考しろ。常に頭の中で思考し、そして答えを導き出せ。誡女は肉体を動かして敵に挑むタイプの覚者ではない。状況に応じて様々な手法を凝らすタイプの覚者だ。一番まずい状況は思考を止めること。故に頭脳をフル回転させる。
誡女は一歩下がり、霧を出して真由美を幻惑する。兎に角、少しでも相手を弱体化させて攻撃を緩和させる。誡女に出来ることは仲間のサポート。やられないための最善手を考え、その行動を行う。
『とはいえ、ただやられるいきませんね………!』
「……よし、見終了! とりあえず、わかるか倒れるところまで、いってみますか!」
最初は後ろで見ていた悠乃だが、ある程度はわかったとばかりに前に出る。あいかわらずどういう状況でなぜこうなったのか全然理解できないが、目の前に凄い技を人がいるのだ。全力で当たるのみ。
速度で拳を繰り出して近づき、隙を見出しての強い一撃。基本に忠実な戦法だ。基本故に何度も繰り返された動作。数を経て鍛え上げられた動きが真由美の動きを凌駕する。豪炎のストレートが真由美の胸に叩き込まれた。
「磨き上げた技や、鍛え続けた体幹で、負けない!」
「うむ、負けるわけにはいかんのじゃ」
薙刀を手に樹香が気合を入れる。相手がどれだけ強かろうと、臆することなく挑むのが覚者の務め。それは覚者であった祖母の教えでもある……んだけど、これはちょっと違う気がするのぅと思わなくもない樹香であった。
体内の木の源素を活性化させ、掌に集める。薙刀を振るい真由美の気を逸らすと同時に源素を解放し、棘を真由美に襲わせる。鋭いトゲがその動きを制限し、行動範囲を狭めてゆく。動きが鈍ったところに振るわれる樹香の薙刀。
「体重なぞ、気にする必要は無い様に見えるんじゃがのぅ……」
「そうよ! 増えた体重は減らせばいいのよ!」
怒り心頭の御菓子。体重は節制や栄養バランスで幾分かの制御が可能だ。だが身長はどうにもならない。遺伝上の要因か、はたまた神のいたずらか。御菓子の背は成人したにもかかわらず、中学生レベルであった。
古ぼけたヴィオラを奏でる御菓子。優しく響く弦楽器の音色。音楽教師にするには惜しいほどの実力である。奏でられた音色と共に生まれた水が、牙となって真由美に襲い掛かった。強く鋭い御菓子の瞳が、その悲しみを伝える。
「命を燃やせ! 奇跡をおこせ! あなたを倒せとわたしの心が轟き叫ぶ! 水龍牙!」
「まあ……なんだ……おちつけ」
少し居た堪れない気持ちになるゲイル。2メートルの長身を持つゲイルにはわからない悩みである。故にそれ以上かけるべき言葉はない。それは共感する事すら許されない悩みなのだ。格差とは悲しい物よ。ゲイルはそう思い静かに目を閉じた。
それはそれとして戦いもまた非情である。ゲイルは真由美から離れ、水の源素を使って仲間を癒す。その最中に真由美の攻撃を見やり、その技を研究する。円と線。そして歩法。それはスムーズに頭の中に入ってくる。
「む、これはもしかしたら……いけるかもしれん」
「おお、流石じゃな。回復は余に任せておくがいい」
ガッツポーズをとるゲイル。その隣で静かに告げる久永。いつも世話になっている真由美を傷つけたくない久永は、積極的に攻めることはしなかった。支援と回復に徹し、戦う者たちの後押しをする。
霊鳥の羽を用いて作られた羽扇に源素を集め、風を広げるように振るう。源素により清浄化された風が、ふわりと覚者達を包み込む。真由美により傷つき、源素の流れを狂わされた覚者が、元の調子を取り戻す。
「しかしこの数値で怒るとは、女子というモノは分からぬものよ」
「うーん……確かにリアリティのある数値。二次元にありがちな『極端に軽すぎる』値じゃないのが何とも言えないねー」
あのぽよんぽよんで48キロとかだったら天罰覿面よ、と笹雪が言う。これが夢の中だとわかっているが、それはそれとしてあまりにも不自然だったら許せない。そんな乙女心であった。乙女心なのかなぁ?
笹雪の周りを飛び交う紙の人形。それが彼女の神具。彼女の意志に従い周囲を守るように飛び交い、源素の力を増幅させる。天の源素を集めて雷雲を生み出し、呪音と共に解き放つ。落雷は真っ直ぐに真由美を討ち、その動きを止めた。
「兎に角、その厄介な動きを止めないと」
「凄いですね、皆さん。ではこちらも行きましょうか」
笑みを絶やさず真由美が近づいてきた。
戦いは少しずつ激化していく。
●シリアスパート終了。此処からギャグパート
「という事で命数使用とかそういった描写は抜きでいきます」
「「「メタだー!」」」
真由美のぶっちゃけに覚者達は総出でツッコんだ。
『そういえば誤って私達に伝えた職員は負わなくてもいいのですか。こうしている間にも他の誰かがあの数字を知ってしまっているかも知れませんよ!?』
なんとか自分たち以外に目を向けさせようとする誡女だが、
「大丈夫です。既に処分してますから」
にこりと笑いながら答える真由美。軽く握った拳で取るガッツポーズが、可愛らしくもあるが、その意図を知れば身震いしてくる。
(うっかり体重をもらしかけたら、さらに強化されるのでしょうか……)
誡女はそんなことをふと思う。そして研究者と言う立場から、思わずそれを試してみたくなった。感情が強さをどこまで左右するのか。心の想いがどこかで肉体を強化するのか、その謎が分かるかもしれない。
PDAの読み上げソフトに文字を入力する。それはこの戦いの元となった真由美の体重。あとはワンクリックでその数値が皆に伝わる。そう、僅かひと押し、その一押しが――
(できない……押せばアラタナルの『PCは命数や魂を使い切らない限り死なない』という基本ルールを無視してまで殺される……!)
まるで心臓をわしづかみにされているような、そんな感覚を誡女は感じていた。震える手でその数値を消し去る。
「確かに凄い怒りじゃ……だが体重を見られたからと言ってこの怒りようは……」
冷や汗を流す樹香。だが真由美は笑顔のまま樹香に応える。
「怒ってませんよ」
「え……あ、でも」
「怒ってませんよ」
それだけ言って近づいてくる真由美。いつもの笑顔のまま、鋭い一撃を放ちながら。
「いやほら、真由美さんはスタイルもよいし、常に微笑みをたたえておる優しい女性じゃ。だから体重ぐらい気のにすることはないと」
「はい。気にしていませんよ」
「ワシはほら、身長は高いが胸はないから、その悲観するわけでは無いが!」
「はい。そうですね」
駄目だ。言葉による説得に意味はない。樹香はそれを察し、口を紡いだ。理性では無い理屈でもない。ましてや善悪ですらない。龍の逆鱗に触れた者がどれだけ悪意なくとも暴威に振り回されるように、自分達もまた真由美の暴威に振り回される。
「分かっておったが、やるしかないということじゃな」
「ええ。わかっていただけて嬉しいです」
全く笑顔を崩さずに真由美が樹香の言葉に応える。戦いはいつだって無情だ。信念の違い、思いの違い、生まれの違い……他者から見ればほんのわずかなすれ違うから争いは生まれる。皆が少しでも祖母のように優しい心を持っていれば、あるいは戦いは起きなかったのかもしれない。それが悲しい。
「いやまぁ、そんな話ではない気もするが……ともあれ行くぞ!」
「肯定しても否定しても怒るのだから、女の太った基準はわからん」
その様子を見ながら、久永は達観したようにため息をついた。この中では一番の年長者。長く人生を生きてはいたが、女性の心はそれだけ長く生きても理解できない。
「世の中ぽっちゃり系というのが流行っておるのではないのか。おなごは多少ふくよかな方が愛らしくて良いと思うがのぉ」
「それは一つの価値観かもしれませんね」
久永の言葉に真由美が答える。
「つくべき所についておるなら、他は問題ないと思うのだが……それでは駄目なのか。ふにふに、もちもちしている方が触り心地も良いし……」
「ええ。そういう考え方もありますね」
真由美が笑顔のまま答える。久永はなんとなく地雷原を歩いている気がしてきた。そう、この会話は何かよからぬ方向に進んでいるのではないか。否、そんなはずはない。真由美は同意しているではないか。そう、このまま――
「それで、誰が『ぽっちゃり』なのでしょうか?」
ぞくり――背骨に直接刃物を突き刺されたような、そんな感覚に久永は思考を止める。
「教えていただけませんか、由比さん。誰が『ふにふに』で何処が『もちもち』しているのでしょうか? 詳細にお聞きしたいですね」
笑顔の真由美を前に、久永は冷や汗を流していた。
「あらあら大変ねん。じゃあ全身全霊で戦わせてもらうわん。笑顔の圧力に対する対抗策を見切ったし」
「な、なんだって! 本当か、輪廻!?」
「簡単な事よん。『プレイングの文字数のう段数』の分だけダメージを受けるなら、『プレイングの文字数を減らせばいい』のよん。
戦闘パートだけ全力を込めてしまえば、あとはなんとか――」
「なるほど、それでは確かに体力減少は免れるでしょう。ですがそれはただの保身です」
輪廻に迫る真由美。ゆっくりとした動きなのに、輪廻はその動きについてこれない。全身全霊で挑んでいるはずなのに、いつもより動きが制限されているような……。
「貴方の動きには魂がありません。ただ『動く』だけです。
そも、貴方は『全身全霊』と言いましたが、危険を避けて身を護るだけの『戦法(プレイング)』のどこに『身』と『霊』があるのでしょうか?」
「ああん、そこはプレイングに全身全霊って書いてるから、全身全霊で戦っていることにならないのかしらん」
「残念ですがそれでいいというのなら、プレイングは全て『スキルを使って臨機応変に全力で戦う』で済みますので」
「きゃん!」
真由美の寸勁に吹き飛ばされる輪廻。
「あ。真由美さんの技、ラーニングしました!」
「本当か、向日葵!」
「はい! 『笑顔の圧力』です!」
ラーニング成功!!
取得キャラクター:向日葵 御菓子(CL2000429)
取得スキル:笑顔の圧力
そんな表示があったかなかったか。御菓子は笑顔を浮かべて真由美に近づく。プレイングのう段の数だけ体力が減少して……。
「私はプレイングとかありませんので」
「意味ないじゃない!」
「意味はありますよ。他の方々が追加で体力減少していますし」
「このスキル敵味方関係なかったの!?」
まあEXプレイングに書かれていたことなので、巻き戻し巻き戻し。
「ふ、こっちはきっちりプレイングに書かれていることだからラニったぜ!」
ゲイルが自分を指さし、前に出てくる。
ラーニング成功!!
取得キャラクター:ゲイル・レオンハート(CL2000415)
取得スキル:五行封殺
そんな表示が以下省略。ゲイルは闘気を背負い前に出る。
「あら、いいのですか。前に出てきても」
「ふ、『俺=回復役』が定着しつつあるし。ここら辺で固定イメージの払拭というのもきっと必要なことだろう」
「河童憑き依頼とかで――」
「そんな昔のことは忘れたな! ともあれ喰らえ!」
体内の源素を術式を使う方向と逆回転に活性化させる。それは太古の能力者が持ち得た技法。『今』の源素が『陽』ならば、これは『陰』と呼ばれる逆転の技。ゲイルは直感する。そう、この二重螺旋こそが源素の真の使用法!
「木、火、土、天、水……今、全てを絶つ!」
「この力は……まさかあなたが真の――!」
五! 行! 封! 殺!
「……満足しました?」
「あ、はい。それじゃあ後ろに下がります」
満足したゲイルは後ろに下がっていく。笑顔でそれを見送る真由美。
「凄まじい……私もひとつくらい、そんなスペシャルな技欲しい……」
後ろに下がるゲイルを見ながら、悠乃がそう呟く。その頬を、
「何を言っているのですか、悠乃さん!」
真由美が思いっきりひっぱたく。予想外の行動に驚く悠乃。
「貴方が格闘に挑む理由は強くなりたいだけなのですか! 貴方にとって戦いはコミュニケーションの一つだったのではないのですか!」
「真由美さん……」
「こんな派手な技に引っ張られて、貴方の素晴らしい部分を見失わないでください! ただ真っ直ぐに格闘に打ち込み、勝ち負けではない部分を楽しむ……それが悠乃さんの素晴らしいところじゃないですか!」
「ごめんなさい、真由美さん。私……間違ってた!」
悠乃は言って拳を突き出す。真由美は無言でその拳に自分の拳を当てた。
――二人の中で、同時に試合再開のゴングが鳴る。
あらゆる関節を曲げ、相手を絡めとるように動く真由美。それは螳螂の如く。
それに対し、尾で地面を支えるようにしながら真っ直ぐに拳を突き出す悠乃。
互いの呼吸音が聞こえるほどのインファイト。相手の攻撃(ことば)を腕で受け、上体を逸らし、しゃがみ、時にはその身で受け。
しかしその顔に浮かぶのは笑顔。彼女達は互いに憎まず、拳を交わしていた。
「ていうか何そのバッドステータス、現場のあたし達より先にとかさ!」
散々頭をグリグリされて、ぐったりしたバクを横に置いて笹雪が叫ぶ。
「ええ、本当に。よく審査通りましたねって、我ながらびっくりしました」
「それ絶対どくどくSTのセリフでしょう!」
笹雪の言葉に視線を逸らす真由美。エイプリルフールってこわいわー。おそろしいわー。
「そんなんあたしが使いたいわ! 酷い! 欲しい!」
「落ち着いてください笹雪さん。キャラブレてます」
真由美の言葉に落ち着きを取り戻す笹雪。呼吸を整えて神具を手にし、問いかける。
「ところで何で久方のお姉さん色々奇数なのかな。流行りかな。まさかのヒントなのかな」
「ヒントとは何のことでしょうか?」
「具体的な数値の――」
「何の数値でしょうか?」
真由美の笑顔に一歩引きながら、笹雪は言葉をつづける。
「偶数を外している……。これは数字を隠したいと言う意図かな。だから全て偶数で」
「さあどうでしょうか?」
「その中で不自然じゃない数値と仮定すれば、まさか8が頭なわけがないし、かといって4はありえないだろうから6――」
「七星天分肘」
笹雪は足払いと同時に真由美の肘を喰らってすっ転んだ。
「久方のお姉さんもキャラブレブレだー! ぎぶ、ぎぶぎぶー!」
「いかん! 真由美さんが殺しに来たぞ!」
「全員死ぬ気でかかるんだー!」
そして死闘が終わる。
死屍累々の戦場に、立ち尽くす笑顔の修羅が一人――
●翌日
「何故かあの笑顔を見ると……背筋が震えるんだ」
真由美の笑顔を見て、なぜか身震いする八人の覚者がいた。
(……不慮の事故といっても思いとどまってはくれないでしょうね)
『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)は迫る真由美に対し、脂汗を流しながら思考する。会議室で会う真由美とは違い、恐ろしほどの圧力を感じていた。
「え~と、これはその……なんだ、違うんだ。不慮の事故だし、セーフ、セーフだろう……駄目か」
諦めたようにため息をつく『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)。言い訳が通用する状況とは思えないが、しかし弁明はしたかった
「真由美を倒さねば、生き残れない……!」
『樹の娘』檜山 樹香(CL2000141)はひしひしと感じる真由美の強さに薙刀を構える。今まで戦ってきた相手の中でもトップクラスの相手だ。
「なるほど……これが女子力(物理)というものか」
のんびりとした口調だが、どこか緊張感を含めた『白い人』由比 久永(CL2000540)の声が響く。正体不明の圧力にため息をつく。
「女にとって己の目方とはトップシークレット。だからその行い自体は理解できた……けど!」
隠れていたバクを捕まえてその頭をグリグリしながら、『調停者』九段 笹雪(CL2000517)
は真由美が怒る理由に納得していた。
「困ったね。まるで意味がわからない」
逆に華神 悠乃(CL2000231)は真由美が起こった理由が理解できない、とばかりに首をひねる。値自体におかしな部分はなかったのだが……。
「目方がなにさ! わたしなんて背丈よ!」
身長147センチ(2016年4月現在)『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)は涙を流し抗議する。そんな御年二十三歳。
「ちょっと冷静になりな……あらあら、これはかなり本気ねん」
真由美を説得しようとして、途中であきらめる『ドキドキお姉さん』魂行 輪廻(CL2000534)。こうなった以上全力で挑むのみ。
「覚悟はよろしいですか?」
真由美は笑顔のままゆっくりと近づいてくる。構えらしい構えはない。会議室で予知夢を告げるそのままの立ち様だ。隙だらけ故に逆に攻めづらい。
どうしてこうなった! そう思いたい気持ちを押さえながら覚者達は戦いに挑む。
●真由美との攻防
勝負の開幕を取ったのは、輪廻だった。
「先ずは投げ飛ばして体術を防ぐわよん」
神具を装着し、真由美との間合いを測る。真由美は神具らしいものを何もつけていない。だが、それを弱いと侮るつもりはなかった。最小限の構えで立つ真由美に対し、真正面に立ち勝負に挑む。
輪廻は真由美に近づき、回転するように重心を移動させる。それは円を描く投げの形。かつての戦いで輪廻自身が得た投げの奥義。緩急加えた一撃は真由美のバランスを崩し、その体幹を崩し、地面に叩きつける。
「これでどうかしらん」
『非常にまずい状況ですが……』
思考しろ、思考しろ。常に頭の中で思考し、そして答えを導き出せ。誡女は肉体を動かして敵に挑むタイプの覚者ではない。状況に応じて様々な手法を凝らすタイプの覚者だ。一番まずい状況は思考を止めること。故に頭脳をフル回転させる。
誡女は一歩下がり、霧を出して真由美を幻惑する。兎に角、少しでも相手を弱体化させて攻撃を緩和させる。誡女に出来ることは仲間のサポート。やられないための最善手を考え、その行動を行う。
『とはいえ、ただやられるいきませんね………!』
「……よし、見終了! とりあえず、わかるか倒れるところまで、いってみますか!」
最初は後ろで見ていた悠乃だが、ある程度はわかったとばかりに前に出る。あいかわらずどういう状況でなぜこうなったのか全然理解できないが、目の前に凄い技を人がいるのだ。全力で当たるのみ。
速度で拳を繰り出して近づき、隙を見出しての強い一撃。基本に忠実な戦法だ。基本故に何度も繰り返された動作。数を経て鍛え上げられた動きが真由美の動きを凌駕する。豪炎のストレートが真由美の胸に叩き込まれた。
「磨き上げた技や、鍛え続けた体幹で、負けない!」
「うむ、負けるわけにはいかんのじゃ」
薙刀を手に樹香が気合を入れる。相手がどれだけ強かろうと、臆することなく挑むのが覚者の務め。それは覚者であった祖母の教えでもある……んだけど、これはちょっと違う気がするのぅと思わなくもない樹香であった。
体内の木の源素を活性化させ、掌に集める。薙刀を振るい真由美の気を逸らすと同時に源素を解放し、棘を真由美に襲わせる。鋭いトゲがその動きを制限し、行動範囲を狭めてゆく。動きが鈍ったところに振るわれる樹香の薙刀。
「体重なぞ、気にする必要は無い様に見えるんじゃがのぅ……」
「そうよ! 増えた体重は減らせばいいのよ!」
怒り心頭の御菓子。体重は節制や栄養バランスで幾分かの制御が可能だ。だが身長はどうにもならない。遺伝上の要因か、はたまた神のいたずらか。御菓子の背は成人したにもかかわらず、中学生レベルであった。
古ぼけたヴィオラを奏でる御菓子。優しく響く弦楽器の音色。音楽教師にするには惜しいほどの実力である。奏でられた音色と共に生まれた水が、牙となって真由美に襲い掛かった。強く鋭い御菓子の瞳が、その悲しみを伝える。
「命を燃やせ! 奇跡をおこせ! あなたを倒せとわたしの心が轟き叫ぶ! 水龍牙!」
「まあ……なんだ……おちつけ」
少し居た堪れない気持ちになるゲイル。2メートルの長身を持つゲイルにはわからない悩みである。故にそれ以上かけるべき言葉はない。それは共感する事すら許されない悩みなのだ。格差とは悲しい物よ。ゲイルはそう思い静かに目を閉じた。
それはそれとして戦いもまた非情である。ゲイルは真由美から離れ、水の源素を使って仲間を癒す。その最中に真由美の攻撃を見やり、その技を研究する。円と線。そして歩法。それはスムーズに頭の中に入ってくる。
「む、これはもしかしたら……いけるかもしれん」
「おお、流石じゃな。回復は余に任せておくがいい」
ガッツポーズをとるゲイル。その隣で静かに告げる久永。いつも世話になっている真由美を傷つけたくない久永は、積極的に攻めることはしなかった。支援と回復に徹し、戦う者たちの後押しをする。
霊鳥の羽を用いて作られた羽扇に源素を集め、風を広げるように振るう。源素により清浄化された風が、ふわりと覚者達を包み込む。真由美により傷つき、源素の流れを狂わされた覚者が、元の調子を取り戻す。
「しかしこの数値で怒るとは、女子というモノは分からぬものよ」
「うーん……確かにリアリティのある数値。二次元にありがちな『極端に軽すぎる』値じゃないのが何とも言えないねー」
あのぽよんぽよんで48キロとかだったら天罰覿面よ、と笹雪が言う。これが夢の中だとわかっているが、それはそれとしてあまりにも不自然だったら許せない。そんな乙女心であった。乙女心なのかなぁ?
笹雪の周りを飛び交う紙の人形。それが彼女の神具。彼女の意志に従い周囲を守るように飛び交い、源素の力を増幅させる。天の源素を集めて雷雲を生み出し、呪音と共に解き放つ。落雷は真っ直ぐに真由美を討ち、その動きを止めた。
「兎に角、その厄介な動きを止めないと」
「凄いですね、皆さん。ではこちらも行きましょうか」
笑みを絶やさず真由美が近づいてきた。
戦いは少しずつ激化していく。
●シリアスパート終了。此処からギャグパート
「という事で命数使用とかそういった描写は抜きでいきます」
「「「メタだー!」」」
真由美のぶっちゃけに覚者達は総出でツッコんだ。
『そういえば誤って私達に伝えた職員は負わなくてもいいのですか。こうしている間にも他の誰かがあの数字を知ってしまっているかも知れませんよ!?』
なんとか自分たち以外に目を向けさせようとする誡女だが、
「大丈夫です。既に処分してますから」
にこりと笑いながら答える真由美。軽く握った拳で取るガッツポーズが、可愛らしくもあるが、その意図を知れば身震いしてくる。
(うっかり体重をもらしかけたら、さらに強化されるのでしょうか……)
誡女はそんなことをふと思う。そして研究者と言う立場から、思わずそれを試してみたくなった。感情が強さをどこまで左右するのか。心の想いがどこかで肉体を強化するのか、その謎が分かるかもしれない。
PDAの読み上げソフトに文字を入力する。それはこの戦いの元となった真由美の体重。あとはワンクリックでその数値が皆に伝わる。そう、僅かひと押し、その一押しが――
(できない……押せばアラタナルの『PCは命数や魂を使い切らない限り死なない』という基本ルールを無視してまで殺される……!)
まるで心臓をわしづかみにされているような、そんな感覚を誡女は感じていた。震える手でその数値を消し去る。
「確かに凄い怒りじゃ……だが体重を見られたからと言ってこの怒りようは……」
冷や汗を流す樹香。だが真由美は笑顔のまま樹香に応える。
「怒ってませんよ」
「え……あ、でも」
「怒ってませんよ」
それだけ言って近づいてくる真由美。いつもの笑顔のまま、鋭い一撃を放ちながら。
「いやほら、真由美さんはスタイルもよいし、常に微笑みをたたえておる優しい女性じゃ。だから体重ぐらい気のにすることはないと」
「はい。気にしていませんよ」
「ワシはほら、身長は高いが胸はないから、その悲観するわけでは無いが!」
「はい。そうですね」
駄目だ。言葉による説得に意味はない。樹香はそれを察し、口を紡いだ。理性では無い理屈でもない。ましてや善悪ですらない。龍の逆鱗に触れた者がどれだけ悪意なくとも暴威に振り回されるように、自分達もまた真由美の暴威に振り回される。
「分かっておったが、やるしかないということじゃな」
「ええ。わかっていただけて嬉しいです」
全く笑顔を崩さずに真由美が樹香の言葉に応える。戦いはいつだって無情だ。信念の違い、思いの違い、生まれの違い……他者から見ればほんのわずかなすれ違うから争いは生まれる。皆が少しでも祖母のように優しい心を持っていれば、あるいは戦いは起きなかったのかもしれない。それが悲しい。
「いやまぁ、そんな話ではない気もするが……ともあれ行くぞ!」
「肯定しても否定しても怒るのだから、女の太った基準はわからん」
その様子を見ながら、久永は達観したようにため息をついた。この中では一番の年長者。長く人生を生きてはいたが、女性の心はそれだけ長く生きても理解できない。
「世の中ぽっちゃり系というのが流行っておるのではないのか。おなごは多少ふくよかな方が愛らしくて良いと思うがのぉ」
「それは一つの価値観かもしれませんね」
久永の言葉に真由美が答える。
「つくべき所についておるなら、他は問題ないと思うのだが……それでは駄目なのか。ふにふに、もちもちしている方が触り心地も良いし……」
「ええ。そういう考え方もありますね」
真由美が笑顔のまま答える。久永はなんとなく地雷原を歩いている気がしてきた。そう、この会話は何かよからぬ方向に進んでいるのではないか。否、そんなはずはない。真由美は同意しているではないか。そう、このまま――
「それで、誰が『ぽっちゃり』なのでしょうか?」
ぞくり――背骨に直接刃物を突き刺されたような、そんな感覚に久永は思考を止める。
「教えていただけませんか、由比さん。誰が『ふにふに』で何処が『もちもち』しているのでしょうか? 詳細にお聞きしたいですね」
笑顔の真由美を前に、久永は冷や汗を流していた。
「あらあら大変ねん。じゃあ全身全霊で戦わせてもらうわん。笑顔の圧力に対する対抗策を見切ったし」
「な、なんだって! 本当か、輪廻!?」
「簡単な事よん。『プレイングの文字数のう段数』の分だけダメージを受けるなら、『プレイングの文字数を減らせばいい』のよん。
戦闘パートだけ全力を込めてしまえば、あとはなんとか――」
「なるほど、それでは確かに体力減少は免れるでしょう。ですがそれはただの保身です」
輪廻に迫る真由美。ゆっくりとした動きなのに、輪廻はその動きについてこれない。全身全霊で挑んでいるはずなのに、いつもより動きが制限されているような……。
「貴方の動きには魂がありません。ただ『動く』だけです。
そも、貴方は『全身全霊』と言いましたが、危険を避けて身を護るだけの『戦法(プレイング)』のどこに『身』と『霊』があるのでしょうか?」
「ああん、そこはプレイングに全身全霊って書いてるから、全身全霊で戦っていることにならないのかしらん」
「残念ですがそれでいいというのなら、プレイングは全て『スキルを使って臨機応変に全力で戦う』で済みますので」
「きゃん!」
真由美の寸勁に吹き飛ばされる輪廻。
「あ。真由美さんの技、ラーニングしました!」
「本当か、向日葵!」
「はい! 『笑顔の圧力』です!」
ラーニング成功!!
取得キャラクター:向日葵 御菓子(CL2000429)
取得スキル:笑顔の圧力
そんな表示があったかなかったか。御菓子は笑顔を浮かべて真由美に近づく。プレイングのう段の数だけ体力が減少して……。
「私はプレイングとかありませんので」
「意味ないじゃない!」
「意味はありますよ。他の方々が追加で体力減少していますし」
「このスキル敵味方関係なかったの!?」
まあEXプレイングに書かれていたことなので、巻き戻し巻き戻し。
「ふ、こっちはきっちりプレイングに書かれていることだからラニったぜ!」
ゲイルが自分を指さし、前に出てくる。
ラーニング成功!!
取得キャラクター:ゲイル・レオンハート(CL2000415)
取得スキル:五行封殺
そんな表示が以下省略。ゲイルは闘気を背負い前に出る。
「あら、いいのですか。前に出てきても」
「ふ、『俺=回復役』が定着しつつあるし。ここら辺で固定イメージの払拭というのもきっと必要なことだろう」
「河童憑き依頼とかで――」
「そんな昔のことは忘れたな! ともあれ喰らえ!」
体内の源素を術式を使う方向と逆回転に活性化させる。それは太古の能力者が持ち得た技法。『今』の源素が『陽』ならば、これは『陰』と呼ばれる逆転の技。ゲイルは直感する。そう、この二重螺旋こそが源素の真の使用法!
「木、火、土、天、水……今、全てを絶つ!」
「この力は……まさかあなたが真の――!」
五! 行! 封! 殺!
「……満足しました?」
「あ、はい。それじゃあ後ろに下がります」
満足したゲイルは後ろに下がっていく。笑顔でそれを見送る真由美。
「凄まじい……私もひとつくらい、そんなスペシャルな技欲しい……」
後ろに下がるゲイルを見ながら、悠乃がそう呟く。その頬を、
「何を言っているのですか、悠乃さん!」
真由美が思いっきりひっぱたく。予想外の行動に驚く悠乃。
「貴方が格闘に挑む理由は強くなりたいだけなのですか! 貴方にとって戦いはコミュニケーションの一つだったのではないのですか!」
「真由美さん……」
「こんな派手な技に引っ張られて、貴方の素晴らしい部分を見失わないでください! ただ真っ直ぐに格闘に打ち込み、勝ち負けではない部分を楽しむ……それが悠乃さんの素晴らしいところじゃないですか!」
「ごめんなさい、真由美さん。私……間違ってた!」
悠乃は言って拳を突き出す。真由美は無言でその拳に自分の拳を当てた。
――二人の中で、同時に試合再開のゴングが鳴る。
あらゆる関節を曲げ、相手を絡めとるように動く真由美。それは螳螂の如く。
それに対し、尾で地面を支えるようにしながら真っ直ぐに拳を突き出す悠乃。
互いの呼吸音が聞こえるほどのインファイト。相手の攻撃(ことば)を腕で受け、上体を逸らし、しゃがみ、時にはその身で受け。
しかしその顔に浮かぶのは笑顔。彼女達は互いに憎まず、拳を交わしていた。
「ていうか何そのバッドステータス、現場のあたし達より先にとかさ!」
散々頭をグリグリされて、ぐったりしたバクを横に置いて笹雪が叫ぶ。
「ええ、本当に。よく審査通りましたねって、我ながらびっくりしました」
「それ絶対どくどくSTのセリフでしょう!」
笹雪の言葉に視線を逸らす真由美。エイプリルフールってこわいわー。おそろしいわー。
「そんなんあたしが使いたいわ! 酷い! 欲しい!」
「落ち着いてください笹雪さん。キャラブレてます」
真由美の言葉に落ち着きを取り戻す笹雪。呼吸を整えて神具を手にし、問いかける。
「ところで何で久方のお姉さん色々奇数なのかな。流行りかな。まさかのヒントなのかな」
「ヒントとは何のことでしょうか?」
「具体的な数値の――」
「何の数値でしょうか?」
真由美の笑顔に一歩引きながら、笹雪は言葉をつづける。
「偶数を外している……。これは数字を隠したいと言う意図かな。だから全て偶数で」
「さあどうでしょうか?」
「その中で不自然じゃない数値と仮定すれば、まさか8が頭なわけがないし、かといって4はありえないだろうから6――」
「七星天分肘」
笹雪は足払いと同時に真由美の肘を喰らってすっ転んだ。
「久方のお姉さんもキャラブレブレだー! ぎぶ、ぎぶぎぶー!」
「いかん! 真由美さんが殺しに来たぞ!」
「全員死ぬ気でかかるんだー!」
そして死闘が終わる。
死屍累々の戦場に、立ち尽くす笑顔の修羅が一人――
●翌日
「何故かあの笑顔を見ると……背筋が震えるんだ」
真由美の笑顔を見て、なぜか身震いする八人の覚者がいた。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
こんな夢を見た。
