≪Vt2016≫ことことと皆でチョコを煮込みます
●鍋
かまど神。
どこの国でも存在する、竈や囲炉裏、台所の神様である。日本神話ではオキツヒコやオキツヒメ。中国ではザォシェン。ギリシア神話にはヘスティアー。神話が作られた当時は食事は祭事と同じほど重要視されていたこともあり、かなり信仰されていたようだ。
さて、ここに鍋が並んでいる。
見た目には使い込まれた土鍋だが、どうも竈の神様の祝福が宿っているという。古妖狩人から救った野火からの贈り物だが、その古妖からの情報以外は証拠もなく信憑性に掛けるものだ。その効果も『なんとなく料理がおいしくなる』という程度。御崎所長の慧眼をもってしても、その真偽は測れなかったという。
ならば――
●『談話室こもれび』にて
「チョコフォンデュをしましょう」
久方 真由美(nCL2000003)は集まった覚者を前に笑顔で言った。土鍋でチョコフォンデュ? と怪訝な顔を浮かべる覚者達。だが真由美は笑顔を崩さずに続ける。
「焦げやすいチョコを溶かすのに土鍋は最適なんですよ」
金属製鍋のように熱伝導が良い鍋は、チョコ全体に熱がいきわたる前に鍋に接している部分が焦げてしまう。じんわりと熱する土鍋の場合、チョコを焦がさず熱することができるため最後までフォンデュを楽しむことができるという。
「材料はこちらで用意します。皆さんも何か持ってきてくれると助かります」
なんでもかまどの神様の祝福があるらしいので、材料が適度においしくなったりするかもしれないそうだ。眉唾程度だが。
だがそういうのを抜きにしても、皆で食事をするのはいいことだ。
あなたは真由美の誘いを――
かまど神。
どこの国でも存在する、竈や囲炉裏、台所の神様である。日本神話ではオキツヒコやオキツヒメ。中国ではザォシェン。ギリシア神話にはヘスティアー。神話が作られた当時は食事は祭事と同じほど重要視されていたこともあり、かなり信仰されていたようだ。
さて、ここに鍋が並んでいる。
見た目には使い込まれた土鍋だが、どうも竈の神様の祝福が宿っているという。古妖狩人から救った野火からの贈り物だが、その古妖からの情報以外は証拠もなく信憑性に掛けるものだ。その効果も『なんとなく料理がおいしくなる』という程度。御崎所長の慧眼をもってしても、その真偽は測れなかったという。
ならば――
●『談話室こもれび』にて
「チョコフォンデュをしましょう」
久方 真由美(nCL2000003)は集まった覚者を前に笑顔で言った。土鍋でチョコフォンデュ? と怪訝な顔を浮かべる覚者達。だが真由美は笑顔を崩さずに続ける。
「焦げやすいチョコを溶かすのに土鍋は最適なんですよ」
金属製鍋のように熱伝導が良い鍋は、チョコ全体に熱がいきわたる前に鍋に接している部分が焦げてしまう。じんわりと熱する土鍋の場合、チョコを焦がさず熱することができるため最後までフォンデュを楽しむことができるという。
「材料はこちらで用意します。皆さんも何か持ってきてくれると助かります」
なんでもかまどの神様の祝福があるらしいので、材料が適度においしくなったりするかもしれないそうだ。眉唾程度だが。
だがそういうのを抜きにしても、皆で食事をするのはいいことだ。
あなたは真由美の誘いを――

■シナリオ詳細
■成功条件
1.チョコを均等に刻み、鍋に入れる。
2.具として各種フルーツやお菓子などを用意する。
3.チョコを煮込み、かき混ぜながらおいしくいただく。
2.具として各種フルーツやお菓子などを用意する。
3.チョコを煮込み、かき混ぜながらおいしくいただく。
鍋万能説。かまどの神様よ、我に祝福を!
●場所情報
『談話室こもれび』の一スペース。専用のフォークやアルコールバーナーなどの道具は、こちらで用意します。
複数の鍋が用意されており、ミルクチョコやホワイトチョコ、カカオ100%のチョコなど様々な種類が暖められています。
具として各種フルーツやお菓子やパンなども切りそろえられており、トッピングとしてナッツやココナッツファイン等も用意されています。大抵の具はプレイングに書いてあれば出てきます(ST判断で「ない」と思ったら登場しないかもしれません)。
期間限定アイテム『チョコレート(本命、義理、友達)』を装備して【竈神祈願】とプレイング(EXプレイングでも可)に書くと、かまどの神様から祝福がもらえます。具体的には命数が余分に一点回復します。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】という タグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
13/∞
13/∞
公開日
2016年02月18日
2016年02月18日
■メイン参加者 13人■

●宴の前に
皆が来るより早く誡女は『こもれび』を訪れていた。
(こっちがミルクチョコ、こっちはホワイトチョコ……と。分かりやすいように。あと間違って混ざってしまわないように注意ですね)
チョコを刻む誡女。これから始まるチョコフォンデュの準備を手伝うために、集合時間より早くやってきたのだ。手慣れた手つきで包丁を扱い、チョコを刻んでいく。ここで刻む大きさに差が出ると、その分火の通りが悪くなり味に差が出てしまうのだ。
(もしかしたらブレンドもおいしいかもしれませんね)
そんなことを思い、小さな鍋でホワイトチョコとミルクチョコを混ぜたブレンド鍋を用意する。始終楽し気に、鼻歌を口ずさむような誡女であった。
●楽しくフォンデュ!
「正月のお年玉の時も思ったけど、そういや村出てったから今年はかーちゃんからさえチョコもらえねぇんだよな……」
覚者に対する風当たりが強い村から家出するように出てきた百。故郷を離れた百は知り合いが少なく、こういったイベントの時に寂しい思いを味わってしまう。もっとも、
(ま、毎年かーちゃんしかくれなかったけどさ)
バレンタインはもとより縁のないイベントだったようだ。
「つーわけでここでチョコ食いまくる! ふぉんでゅ……つけて食うのか、なんかおしゃれだな」
「うむ、少年。チョコフォンデュは初めてか?」
そんな百の隣で尻尾を振りながらフルーツにホワイトチョコをつけるゲイル。満面の笑みを浮かべながら、甘味を楽しんでいた。
「え? うん。村にはこういうのがなかったから」
「よし、では定番を教えよう。フルーツとホワイトチョコの組み合わせだ。濃厚な甘さと果物の仄かな酸味が見事に合っていて美味しいぞ。
果物は冷凍したものを使うと潜らせた瞬間にチョコがパリッと固まって、別の食感が楽しめてお得だ」
「うわー。ほんとだ! ありがとう、ゲイルさん! ナッツつけるのも歯応えがあっていいな!」
百はゲイルにチョコフォンデュのことを教わりながら、様々な具とチョコに挑戦していく。新たな甘味に目覚める百を見ながら、ゲイルも楽し気にクッキーをミルクチョコに潜らせていた。
「お、あっちの鍋のチョコはどうかな……」
「待つんだ! それはカカオ100%の鍋。迂闊に手を出すと――」
「に、にがー!」
「カカオ100%は……あっさりした具と組み合わせるといけるかな」
「苦味が甘味といい感じにマッチしてて美味しいよ」
カカオ100%鍋に果敢に挑む四月二日と鷲哉。その手にはフォークと、そしてワイングラス。シャンパンが注がれたグラスを手に、二人はチョコフォンデュを楽しんでいた。
「チョコってウィスキーやブランデーだとつまみの定番ってイメージあるけど、シャンパンも結構悪く無いね」
「ワインとかもいけそうだ。赤の辛口とか」
飲酒可能な年齢の二人にとって、チョコはおつまみ。アルコールが入り、談話も進む。
話題は自然とバレンタインの話になる。
「にしても……和泉くん、この時期に男と飲んでてイイの? モテそうなのに」
「モテそうとモテるの間には深ぁい溝があるんですよー。今はこうやってる方が楽しいんでいいんです」
四月二日の問いにマシュマロをあぶりながら答える鷲哉。
「エイジさんこそ、その辺どうなんです?」
「俺は暫く彼女いねえなあ」
ワインを嚥下して四月二日が口を開く。ため息と共に言葉をつづけた。
「俺、双子の兄がいてな。好きな子にも彼女にも、ソッチをスキになったって振られてばっかで、段々面倒になってさ。
まあアイツ色々優秀だったし、顔同じなら、性格も頭もイイ方選ぶか」
アルコールが回ってきたのか、そんな話をする四月二日。
「ふぅん……そういう人は性格もいいんでしょうけど、俺はエイジさんも捨て難いと思いますけどね」
「そりゃどうも。ほら、飲もうぜ」
言いたいことを酒で口の中に戻す二人。今日は酒の量が増えそうだ。
●ラブラブフォンデュ!
「お姉ちゃん、あーん」
「あーん(ぱく)。はい、結鹿ちゃんもあーん」
「あーん(ぱく)」
などと二人でミルクチョコをつけた甘栗を食べさせあっている御菓子と結鹿である。
チョコフォンデュが初めての結鹿は、姉の御菓子を誘って教えてもらう……という名目でデートしていた。そして御菓子はそんな結鹿の気持ちに気づくことなく、仲のいい妹に接するように、チョコフォンデュを楽しんでいた。
「チョコフォンデュといったらやっぱり安定のフルーツだよね。苺にみかんに、キウイ、パイナップルにバナナ……」
結鹿にチョコフォンデュのことを教える御菓子。だが結鹿は、姉と一緒の時間というチョコフォンデュよりも甘いひと時を楽しんでいた。
(お姉ちゃんを独占できるだなんて……幸せ……)
家以外ではなかなか姉と二人きりになれない結鹿。このひと時をかみしめるように、マシュマロを口にする。うん、おいしい。
「あれ? あそこにいるのは……。なんだかいい雰囲気だわ。ちょっと声かけにいこうかな?」
「だめだよ。二人のひと時を邪魔しちゃ」
知り合いを見かけた御菓子が、そちらに向かおうとする。そんな姉の腕をつかんで止める結鹿。もちろん言葉通りの意味もあるのだが、
(わたしとのデート中によそ見も駄目だよ。お姉ちゃん)
そんな思惑もあった。
(結鹿ちゃんから怖いオーラを感じる……気のせいかな?)
笑顔の妹に気おされるように、御菓子は結鹿に向き直る。
少し時間を巻き戻して。
皆が来るより先に来ていた奏空とたまき。チョコフォンデュの準備の為に早めにやってきていたのだ。
「エプロンを付けて一緒にクッキング! ……って、うまく後ろの紐が結べない……っ」
「ふふ。結びますよ」
エプロンの紐を結ぶのに悪戦苦闘する奏空。そんな奏空に笑みを浮かべて手を貸すたまき。可愛らしくちょうちょ結びにして、左右均等になるように微調整した。
「よし! 俺はチョコを刻んでいくぜ!」
「はい。では私は具を切っていきますね」
並んでチョコを刻む奏空と、具を切っていくたまき。一心不乱にチョコを刻む奏空の様子を、たまきは作業をしながら見ていた。楽しげに笑いながら、しかし真剣にチョコを切っていく奏空。そのひたむきさをいつも応援していたたまき。
「わはは、失敗失敗!」
(可愛い人だなぁ……)
切り刻んだチョコを自分の顔に飛ばし、笑う奏空を見ながらたまきはそんなことおもう。人の心は移ろうもの。応援する心も、日常の中で少しずつ変化していく。
そして完成したチョコフォンデュ。溶けたチョコを前にフォークを手にする奏空とたまき。
「チョコフォンデュ初めてなんだ。すごいワクワクする!」
「一番は定番のチョコバナナでしょうか? 持ってきたマシュマロもいいですよ」
「よし。いろいろ試してみようぜ!」
二人、楽しみながらフォンデュを味わう。
「奏空さん、あーん」
「え……あ、あーん」
思わぬたまきの行動に、照れながらもチョコマシュマロを口にする奏空。
チョコとマシュマロとたまきの笑顔は、とても甘い味がした。
●皆でフォンデュ!
「四人で一緒にチョコフォンデュ!」
「チョコ刻むの大変だったんだよな」
「お友達とお鍋を囲むなんて初めてですし、チョコフォンデュも初めてです」
「最初はどれから挑戦する? 私はビターとホワイトチョコは行ってみたいわ」
由愛、雷鳥、灯、椿の【お茶会】チームはフォークを手にワイワイとチョコフォンデュを楽しんでいた。
「自前でクッキー、カステラにドーナツを用意してきました。それと合うかなと思って、カボチャも持ってきました」
「はい、友チョコのガトーショコラケーキよ。いつも皆にはお世話になっているから」
「あ。ありがとうございます」
「まったり楽しみたいけど、食が進むね」
「雷鳥さんは食べるのも速いんですね」
由愛と椿が持ってきた御菓子や具も、彼女たちの歓談を湧き上がらせる。一口サイズのチョコフォンデュは、会話を大きく阻害しない。
「定番はイチゴとバナナね」
「三島さんは果物持ってきてくださったんですか? 美味しそうですよね。自制を忘れて食べ過ぎちゃいそうです……えへへ」
「紅茶もあるみたいですね。カップ持ってきました」
「お、ありがとう。すこし甘みを消すか」
和気藹々と鍋を囲む四人。紅茶を口に含みながら小休止し、このひと時を楽しむ。
「お友達と一緒に食事をするというだけで、なんだか嬉しくなっちゃいますね」
「一人で色々楽しんだりすることも多いけど、こういうのもほんといいよね」
由愛の言葉に同意する雷鳥。楽しいことは皆で行えば、その分喜びが増える。同じ楽しさを共有しているというだけで、こんなに嬉しいものなのか。
「色々とあるけれど、こうやって皆と過ごせるから頑張れるわね」
「そうですね。色々あるけど、皆と一緒だから乗り越えられるんだと思います」
椿の言葉に頷く灯。FiVEの戦いは、決して楽観できる者ばかりではなかった。だけど、皆といるから頑張れる。皆といるから乗り越えられる。それは共に過ごしてきたからわかる事実。彼女たちが得た、一つの結論。
今はこの楽しいひと時を。皆が守った平和を甘受するのだ。
平和の味は、ホワイトチョコとマシュマロのように甘く。そしてビターチョコとサツマイモのようにほろ苦かった。
●『いただきます』『ごちそうさま』の一言は、かまどの神様への祈祷
パーティも終わり、後片付け。鍋を洗い、汚れをきれいにふき取り乾燥棚にしまう。
『皆さんに祝福を』
そんな声を、一部の覚者が聞いたという。
皆が来るより早く誡女は『こもれび』を訪れていた。
(こっちがミルクチョコ、こっちはホワイトチョコ……と。分かりやすいように。あと間違って混ざってしまわないように注意ですね)
チョコを刻む誡女。これから始まるチョコフォンデュの準備を手伝うために、集合時間より早くやってきたのだ。手慣れた手つきで包丁を扱い、チョコを刻んでいく。ここで刻む大きさに差が出ると、その分火の通りが悪くなり味に差が出てしまうのだ。
(もしかしたらブレンドもおいしいかもしれませんね)
そんなことを思い、小さな鍋でホワイトチョコとミルクチョコを混ぜたブレンド鍋を用意する。始終楽し気に、鼻歌を口ずさむような誡女であった。
●楽しくフォンデュ!
「正月のお年玉の時も思ったけど、そういや村出てったから今年はかーちゃんからさえチョコもらえねぇんだよな……」
覚者に対する風当たりが強い村から家出するように出てきた百。故郷を離れた百は知り合いが少なく、こういったイベントの時に寂しい思いを味わってしまう。もっとも、
(ま、毎年かーちゃんしかくれなかったけどさ)
バレンタインはもとより縁のないイベントだったようだ。
「つーわけでここでチョコ食いまくる! ふぉんでゅ……つけて食うのか、なんかおしゃれだな」
「うむ、少年。チョコフォンデュは初めてか?」
そんな百の隣で尻尾を振りながらフルーツにホワイトチョコをつけるゲイル。満面の笑みを浮かべながら、甘味を楽しんでいた。
「え? うん。村にはこういうのがなかったから」
「よし、では定番を教えよう。フルーツとホワイトチョコの組み合わせだ。濃厚な甘さと果物の仄かな酸味が見事に合っていて美味しいぞ。
果物は冷凍したものを使うと潜らせた瞬間にチョコがパリッと固まって、別の食感が楽しめてお得だ」
「うわー。ほんとだ! ありがとう、ゲイルさん! ナッツつけるのも歯応えがあっていいな!」
百はゲイルにチョコフォンデュのことを教わりながら、様々な具とチョコに挑戦していく。新たな甘味に目覚める百を見ながら、ゲイルも楽し気にクッキーをミルクチョコに潜らせていた。
「お、あっちの鍋のチョコはどうかな……」
「待つんだ! それはカカオ100%の鍋。迂闊に手を出すと――」
「に、にがー!」
「カカオ100%は……あっさりした具と組み合わせるといけるかな」
「苦味が甘味といい感じにマッチしてて美味しいよ」
カカオ100%鍋に果敢に挑む四月二日と鷲哉。その手にはフォークと、そしてワイングラス。シャンパンが注がれたグラスを手に、二人はチョコフォンデュを楽しんでいた。
「チョコってウィスキーやブランデーだとつまみの定番ってイメージあるけど、シャンパンも結構悪く無いね」
「ワインとかもいけそうだ。赤の辛口とか」
飲酒可能な年齢の二人にとって、チョコはおつまみ。アルコールが入り、談話も進む。
話題は自然とバレンタインの話になる。
「にしても……和泉くん、この時期に男と飲んでてイイの? モテそうなのに」
「モテそうとモテるの間には深ぁい溝があるんですよー。今はこうやってる方が楽しいんでいいんです」
四月二日の問いにマシュマロをあぶりながら答える鷲哉。
「エイジさんこそ、その辺どうなんです?」
「俺は暫く彼女いねえなあ」
ワインを嚥下して四月二日が口を開く。ため息と共に言葉をつづけた。
「俺、双子の兄がいてな。好きな子にも彼女にも、ソッチをスキになったって振られてばっかで、段々面倒になってさ。
まあアイツ色々優秀だったし、顔同じなら、性格も頭もイイ方選ぶか」
アルコールが回ってきたのか、そんな話をする四月二日。
「ふぅん……そういう人は性格もいいんでしょうけど、俺はエイジさんも捨て難いと思いますけどね」
「そりゃどうも。ほら、飲もうぜ」
言いたいことを酒で口の中に戻す二人。今日は酒の量が増えそうだ。
●ラブラブフォンデュ!
「お姉ちゃん、あーん」
「あーん(ぱく)。はい、結鹿ちゃんもあーん」
「あーん(ぱく)」
などと二人でミルクチョコをつけた甘栗を食べさせあっている御菓子と結鹿である。
チョコフォンデュが初めての結鹿は、姉の御菓子を誘って教えてもらう……という名目でデートしていた。そして御菓子はそんな結鹿の気持ちに気づくことなく、仲のいい妹に接するように、チョコフォンデュを楽しんでいた。
「チョコフォンデュといったらやっぱり安定のフルーツだよね。苺にみかんに、キウイ、パイナップルにバナナ……」
結鹿にチョコフォンデュのことを教える御菓子。だが結鹿は、姉と一緒の時間というチョコフォンデュよりも甘いひと時を楽しんでいた。
(お姉ちゃんを独占できるだなんて……幸せ……)
家以外ではなかなか姉と二人きりになれない結鹿。このひと時をかみしめるように、マシュマロを口にする。うん、おいしい。
「あれ? あそこにいるのは……。なんだかいい雰囲気だわ。ちょっと声かけにいこうかな?」
「だめだよ。二人のひと時を邪魔しちゃ」
知り合いを見かけた御菓子が、そちらに向かおうとする。そんな姉の腕をつかんで止める結鹿。もちろん言葉通りの意味もあるのだが、
(わたしとのデート中によそ見も駄目だよ。お姉ちゃん)
そんな思惑もあった。
(結鹿ちゃんから怖いオーラを感じる……気のせいかな?)
笑顔の妹に気おされるように、御菓子は結鹿に向き直る。
少し時間を巻き戻して。
皆が来るより先に来ていた奏空とたまき。チョコフォンデュの準備の為に早めにやってきていたのだ。
「エプロンを付けて一緒にクッキング! ……って、うまく後ろの紐が結べない……っ」
「ふふ。結びますよ」
エプロンの紐を結ぶのに悪戦苦闘する奏空。そんな奏空に笑みを浮かべて手を貸すたまき。可愛らしくちょうちょ結びにして、左右均等になるように微調整した。
「よし! 俺はチョコを刻んでいくぜ!」
「はい。では私は具を切っていきますね」
並んでチョコを刻む奏空と、具を切っていくたまき。一心不乱にチョコを刻む奏空の様子を、たまきは作業をしながら見ていた。楽しげに笑いながら、しかし真剣にチョコを切っていく奏空。そのひたむきさをいつも応援していたたまき。
「わはは、失敗失敗!」
(可愛い人だなぁ……)
切り刻んだチョコを自分の顔に飛ばし、笑う奏空を見ながらたまきはそんなことおもう。人の心は移ろうもの。応援する心も、日常の中で少しずつ変化していく。
そして完成したチョコフォンデュ。溶けたチョコを前にフォークを手にする奏空とたまき。
「チョコフォンデュ初めてなんだ。すごいワクワクする!」
「一番は定番のチョコバナナでしょうか? 持ってきたマシュマロもいいですよ」
「よし。いろいろ試してみようぜ!」
二人、楽しみながらフォンデュを味わう。
「奏空さん、あーん」
「え……あ、あーん」
思わぬたまきの行動に、照れながらもチョコマシュマロを口にする奏空。
チョコとマシュマロとたまきの笑顔は、とても甘い味がした。
●皆でフォンデュ!
「四人で一緒にチョコフォンデュ!」
「チョコ刻むの大変だったんだよな」
「お友達とお鍋を囲むなんて初めてですし、チョコフォンデュも初めてです」
「最初はどれから挑戦する? 私はビターとホワイトチョコは行ってみたいわ」
由愛、雷鳥、灯、椿の【お茶会】チームはフォークを手にワイワイとチョコフォンデュを楽しんでいた。
「自前でクッキー、カステラにドーナツを用意してきました。それと合うかなと思って、カボチャも持ってきました」
「はい、友チョコのガトーショコラケーキよ。いつも皆にはお世話になっているから」
「あ。ありがとうございます」
「まったり楽しみたいけど、食が進むね」
「雷鳥さんは食べるのも速いんですね」
由愛と椿が持ってきた御菓子や具も、彼女たちの歓談を湧き上がらせる。一口サイズのチョコフォンデュは、会話を大きく阻害しない。
「定番はイチゴとバナナね」
「三島さんは果物持ってきてくださったんですか? 美味しそうですよね。自制を忘れて食べ過ぎちゃいそうです……えへへ」
「紅茶もあるみたいですね。カップ持ってきました」
「お、ありがとう。すこし甘みを消すか」
和気藹々と鍋を囲む四人。紅茶を口に含みながら小休止し、このひと時を楽しむ。
「お友達と一緒に食事をするというだけで、なんだか嬉しくなっちゃいますね」
「一人で色々楽しんだりすることも多いけど、こういうのもほんといいよね」
由愛の言葉に同意する雷鳥。楽しいことは皆で行えば、その分喜びが増える。同じ楽しさを共有しているというだけで、こんなに嬉しいものなのか。
「色々とあるけれど、こうやって皆と過ごせるから頑張れるわね」
「そうですね。色々あるけど、皆と一緒だから乗り越えられるんだと思います」
椿の言葉に頷く灯。FiVEの戦いは、決して楽観できる者ばかりではなかった。だけど、皆といるから頑張れる。皆といるから乗り越えられる。それは共に過ごしてきたからわかる事実。彼女たちが得た、一つの結論。
今はこの楽しいひと時を。皆が守った平和を甘受するのだ。
平和の味は、ホワイトチョコとマシュマロのように甘く。そしてビターチョコとサツマイモのようにほろ苦かった。
●『いただきます』『ごちそうさま』の一言は、かまどの神様への祈祷
パーティも終わり、後片付け。鍋を洗い、汚れをきれいにふき取り乾燥棚にしまう。
『皆さんに祝福を』
そんな声を、一部の覚者が聞いたという。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『チョコなべの思い出』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
