俺達がモテないのは、どう考えたって覚者の連中が悪い
俺達がモテないのは、どう考えたって覚者の連中が悪い



 薄暗い倉庫の中に憤怒者達はいた。力を持つ者に対して何らかの遺恨を持ち、覚者に対して牙を剥く危険な者達だ。
 そして、今日も彼らは覚者に対して陰謀を巡らしていた。
「いよいよ、Xデーが近づいてきたな」
「あぁ、あの連中に思い知らせてやる」
 そう言って憤怒者の1人が壁にかかったカレンダーをバンと叩く。カレンダーは2月14日の上にでかでかとドクロマークが描かれていた。
「どいつもこいつも、バレンタインとか言って浮かれやがって!」
「バレンタインは持たざる者を虐げる悪習だ。取り分け、覚者という連中は許せん。あいつらは変な力を持つお陰でモテてるんだ!」
「あいつらのせいで、俺達にチョコが回ってこないんだ!」
「そうだ、覚者をぶっ潰せ! 俺達だって女の子からチョコもらいてぇんだよ!」
 この場にいるのは皆、男。まぁ、その、つまりはそういうことなのだ。
 一応、覚者に対する様々な感情で集まった訳だが、バレンタインに対する不満もあって行動を起こすことになった。
 そして、口々に叫ぶと憤怒者達は、手にめいめい武器を握る。中には危険な銃火器もあった。誰だ、この連中にこんなものを与えたのは。まったく、馬鹿に刃物を持たせてはいけないという良い見本である。
「覚者をぶっ飛ばして、気分よくバレンタインを楽しむぞー!」
 憤怒者もピンからキリまでいるもんだ。


「はーろろん♪ みんな、今日は集まってくれてありがとー! あ、これチョコレートね」
 『イエロー系女子』大岩・麦(nCL2000116)は集まった覚者達に元気に挨拶をすると、皆にチョコレートを配って行く。
 一通りチョコレートが行き渡ったことを確認すると、彼女は発生した事件の説明を始めた。
「うん、困った憤怒者の人達が暴れる夢を見たの。みんなの力を貸して!」
 この度、憤怒者の集団がバレンタインに暴れようとしている。狙う対象は当然覚者であるが、理由は「覚者は特殊能力のお陰でモテるから」とのこと。根も葉もないとは言わないが、言いがかりも良い所だ。まぁ、この手の言いがかりは憤怒者という人種の常ではあるが。
 困ったことに彼らはその言いがかりを冗談で済まさないだけの力を持っている。放っておけば平和に暮らす覚者に塁が及ぶし、もし覚者が見つからなければ八つ当たりとして周りに暴力をぶちまけることだろう。何としても止めなくてはいけない。
 とは言え、街の中に潜伏している彼らを探し出すのはそれなりに手間だろう。
「でも、覚者を狙ってくる、っていうことはこっちが覚者だって分かればおびき寄せることは簡単じゃないかな」
 つまり、街の中で覚者と分かるような状態でいれば、向こうの方からやって来るということだ。もっとも、あまり派手なものや犯罪行為は避けた方が良いだろうが。或いはカップルの振りをして歩く、というのもそれなりに有効なはずだ。
 説明を終えると、麦は覚者達を元気良く送り出す。
「無事に帰って来てね? みんなのこと信じているから!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:KSK
■成功条件
1.憤怒者の撃退
2.周囲の被害を最小限にとどめる
3.なし
皆さん、こんばんは。
バン・アレン帯、KSK(けー・えす・けー)です。
今回は憤怒者と戦っていただきたいと思います。

●戦場
 人通りの少ない路地ないしは広場になります。どちらにするかはプレイングでご指定下さい。路地は1列に3人までしか並べない狭さで、広場には特にそういった制限はありません。
 時刻は夕刻以降ですが、不便を感じない程度に明るいです。
 足場に問題はありません。

●憤怒者
 憤怒者達です。一応、『XI(イレブン)』の下請けの下請け位の組織ですが、あまり気にしなくて良いでしょう。基本的にコミカルなシナリオなので、ぼこぼこに殴って警察にでも突き出すのが良いかと。
 街中に潜伏していますが、覚者やカップルの姿を見れば集団で集まって襲い掛かってきます。
 こんなんでも憤怒者なので、基本的に説得は無効です。
 ・近接型
  近接戦闘を得意とする憤怒者です。6人います。
  能力は下記。
  1.ナイフ 物近単 出血、毒
  2.電磁警棒 物近単 鈍化、弱体
 ・遠距離型
  遠距離戦闘を得意とする憤怒者です。4人います。
  能力は下記。
  1.ナイフ 物近単 出血
  2.ピストル 物遠単
 ・特殊型
  特殊な武装を持つ憤怒者です。2人います。
  能力は下記。
  1.火炎放射器 特遠貫2 火傷
  2.ピストル 物遠単
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年02月21日

■メイン参加者 8人■

『淡雪の歌姫』
鈴駆・ありす(CL2001269)
『弦操りの強者』
黒崎 ヤマト(CL2001083)
『幻想下限』
六道 瑠璃(CL2000092)
『豪炎の龍』
華神 悠乃(CL2000231)
『かわいいは無敵』
小石・ころん(CL2000993)
『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『偽弱者(はすらー)』
橡・槐(CL2000732)


 暦の上で春を迎えたことになる訳だが、それとこれとは話が別だ。
 寒空の下で『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)はくしゅんと可愛くくしゃみを漏らす。まだまだ風は覚者に対して厳しい。それでも、来たる憤怒者による事件を防ぐため、覚者達は身を潜めてタイミングを計っていた。
 そんなわけで冷たい風を受けながら、ころんは辛辣な言葉を零す。
「まったく……モテないからって僻み根性で他人を襲うなんて、ほんっとダサい憤怒者たちなの」
 見た目は「かわいいおんなのこ」だが、中身は決して甘くないのだ。
 と言うかそもそも、
「一般人に八つ当たりってそれもう憤怒者以前にただの犯罪者じゃない。懲らしめてやらなきゃなの」
 という、ころんの叫びもごもっとも。
 覚者と憤怒者の軋轢とか難しい話はどうでも良い。今回の憤怒者事件に関しては、そもそも人間としてどうかと言う話。
「清々しいほどの八つ当たりっぷりだね」
 東雲・朔夜(CL2001298)はばっさりと切り捨てた通りだ。覚者全員が力を持ってるからモテてるわけじゃないし、憤怒者達に恋人がいない事実と覚者の存在には何の関係もない。
 憤怒者達がバレンタインに怒りをぶつけようとしていることと、覚者達が力を持っていることはそもそも土俵の違う話だ。
 だが、憤怒者と言うのはえてしてこの手の正論の通じない相手だ。
 それを理解しているからこそ、朔夜もどこか達観した目で状況を眺めていた。どこかで「今すぐ家に帰って温かい布団の中で寝たい」と考えながら。
「まぁ……別に、不満は結構なんだが。八つ当たりされる覚者が可哀想だろ」
 『笑顔の約束』六道・瑠璃(CL2000092)の言う『覚者』には当然自分達のことも含まれる。
 ましてや、武器まで持ち出された日には、相応の対応を取らなくてはいけないのだ。暴れる側はこんなくだらない理由で拘束される羽目になるし、抑える側だってこんなくだらない理由で狩り出されるのだ。
 少なくとも16歳の少年が貴重な青春の1日を削ってまで関わる事件なのかは厳しい所である。
「ま、イベント事の警備だと思えば気は楽か……」
 そこで達観できてしまうことが幸福なのか不幸なのか。
 いずれにせよ、覚者達のテンションがダダ下がりになってしまうのも宜なるかな。そんな覚者達の中で唯一元気に満ち満ちているのが華神・悠乃(CL2000231)だった。1人のんきに買ってきたおやつなどをぱくついている。
「今のところ私の周りって、こういう所謂しっと団系のひとらっていなかったのよね」
 悠乃が人と分かり合うために用いる手段は戦うことだ。どんな相手であれ、相手の中身が知りたいのだ。そういう意味で、十分に装備を揃えており、内容を問わないなら人間的な感情で動くこの度の憤怒者達は『楽しめそうな相手』と言えた。無機質な軍隊や、話の通じない原理主義者に比べればよほどましだ。
「お仕事がてら、いっちょわかりあってみましょうかね」
「ま、その前に黒崎さん達の小芝居を見守りましょうか」
 猛る悠乃をなだめるようにして、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は別行動を取っている仲間達に視線を向ける。
「……うん、決して楽しんでる訳じゃないよ!」
 そう言う奏空の顔は、悠乃に負けず劣らず、とても良い笑顔であった。


 吐く息は白い。
 それでも、寒さを感じないのは何故だろう?
「せっかくだから、名前で呼んでいいか?」
「……好きにすれば」
 『B・B』黒崎・ヤマト(CL2001083)の控えめがちな言葉に、『溶けない炎』鈴駆・ありす(CL2001269)はそっけなく返事を返す。このバレンタインデーに2人で夜の街を歩いている訳だが、会話は弾まない。気まずい、というよりも照れ臭いのだ。
 一組の少年少女がこの日に仲良く一緒に歩いているというのは、傍目に意味は明らかなことだ。その関係が「恋人」に至っていないというのなら、当人たちの気恥ずかしさたるや。
 しかし、ありすは次第にこの空気に耐え切れなくなってきた。
「一緒に歩くだけじゃ駄目? 手でも繋ぐ?」
「えっと……」
 いや、こういう時は女の子の方が強気なものなのかも知れない。
「ん、ほら……手、冷たいのね。暖かくしてなさいよ、ほら」
 ヤマトの手を両手でぎゅっと握り締めるありす。
 わずかに戸惑ったものの、ヤマトはニッと笑顔でお返しした。
「ありがとうな! ありすは優しいな」
 と、その時だった。
 周囲にいた人々の気配がにわかに変わったことを、ヤマトとありすは感じ取った。
 物々しい雰囲気を漂わせた男が、あちらこちらにいる。
「ゴメン!」
「ちょ、っと……何なのよ、もうっ……」
 危ない気配を感じたヤマトはありすを抱き上げると、翼を広げて飛び立った。ありすも言いたいことはあったが、胸の中で大人しくすることを選ぶ。
 先ほどまで周りにいた男達が、本格的に武器を取り出す姿が見えたからだ。
「これだから覚者は許せんのだ! 追え!」
 剣呑な装備を手に取って空飛ぶ2人を追う憤怒者達。そして、彼らが開けた広場に姿を見せた時、そこには覚者達の姿があった。
「なんでもかんでも覚者のせいにすんなよ」
 もうちょっと見ていたかったという本音を隠しもせず、奏空が姿を現した。憤怒者達の見る前で、奏空の髪は覚醒によって鮮やかな金髪に変わっていく。
 今更言うまでもない話ではあるが、それもこれも覚者達が憤怒者をおびき寄せるための作戦だ。翼や第三の目といった、目立つ形質を持つ彼らなればこその策である。
「バレンタイン中止! リア充爆発しろ! 凶器が救い! 覚者が悪い!
 ……本当に実に暇な奴らなのですね」
 先ほどまで車椅子に乗っていた『偽弱者(はすらー)』橡・槐(CL2000732)がすっくと立ち上がる。妙に冷静なのは先日、バトルロイヤルで色々と発散してきたからだ。リア充も存分に叩いてきた。
「お前たちには、暴れることを、許すわけにはいかないのです! 何故って……」
 自分のことを棚に上げてびしっとポーズを決める槐。
 あんな暴れ方をしていても、平和を守る正義の味方なのだ。そして、悪しき憤怒者達をに赦せない理由を突き付ける。
「なんかキモイからなのです!」
「「「理不尽だ!」」」
「愛の聖人の日に理不尽に沈むが良いです、キリの暇人共!」
 とまぁ、そんな槐の正義の味方と言うにはあんまりな台詞と共に、戦いは始まるのだった。


 散々に突っ込まれる憤怒者達ではあるが、こんなのでも一応憤怒者だ。自分達がまんまと誘き出されたことに気が付くと、持ち前の装備で覚者達に攻撃を行ってくる。一応、覚者相手に暴れれば面子も立つし、溜飲も下がると言うものだ。
 だが、覚者達だってのんびりと殴られてやるわけにはいかない。己の力を覚醒させ、憤怒者達に立ち向かう。
「うむ、私も今年あげる相手がいない! 一緒にバトルしたり遊んだりするイケメンが私に惚れてこないのはキミらのせいだ! ……ということにする!」
 己の体と心に炎を灯し、悠乃は憤怒者達に向かって殴りかかる。一見雑で荒っぽい攻撃を仕掛けているようにも見えるが、実のところ防御は丁寧。敵の刃を最小限のダメージで済ますように動いている。
「楽しくバトれば、気分も晴れるでしょ! ね!」
 上機嫌で勢いよく憤怒者達と殴り合う悠乃。意外な程に、彼女は状況をエンジョイしていた。
 一方、瑠璃はと言うと冷静に憤怒者達と向かい合っていた。
「乱戦になるぞ! 誤射に気をつけろよ!」
 仲間達に注意を喚起しながら、瑠璃は敵陣を見据える。
 広い場所で戦っている以上、数に勝る憤怒者が覚者達の防御を破って攻撃してくることは明らかだ。だから、雷で纏めて憤怒者を薙ぎ払う。
 元々体力が低く、持久力は無い方なのだ。あまり長々戦いたくは無い。
 覚者達もそれに倣って、憤怒者達へと攻撃を仕掛ける。先ほどまで囮に立っていたヤマトはレイジングブルを手に炎を巻き上げ、ありすは冷たい目で憤怒者を睨め付け、手に炎を灯す。
 だが、数の不利は一朝一夕に覆せるものではなかった。憤怒者の勢いは止まらず、覚者達は苦戦を強いられる。そこで業を煮やした槐は奇策を発動させた。
「美少女からのチョコなのですよ? 拾うですよ!」
 取り出した袋をパーティー開けで勢いよく破ると、そこからばら撒かれるのはチョコレート。
 憤怒者達を挑発する作戦だ。相手は曲がりなりにも憤怒者の端くれ。さすがにこの状況で拾い始める程バカじゃあない。まぁ、目はちょっと移ったけれど。瑠璃も気にはしていたが、覚者から受け取ったチョコで満足出来ない、可哀想なプライドは持ち合わせているらしい。
「まぁ、実際に拾いだしたらドン引きだったので、結果オーライなのです」
 派手なモーションで誤魔化した隙に、槐はスキルを使用する。周囲に眠りをもたらす空気が生まれ、憤怒者の中に倒れるものが出てくる。ちなみに、チョコレートは後でスタッフが美味しくいただきました。
 そして、まだ意識のあるものに対して朔夜が、左掌から光線を放って攻撃する。
「目から、じゃなくて手のひらからビームってね。そこのモテないからって僻むことしかできない憤怒者君達。暴力は良くないよー?」
 暴力で解決することは好きではないが、この場合は致し方ない所だろう。話し合いが通じない人種であることは、このわずかな戦闘の間にも伝わっていた。
 だから朔夜も、面倒くさいと思いながら一番手っ取り早い手段で対応する。
 数の優位にある敵を行動不能にし、動けるものから潰していく。これにより、状況は覚者達に傾きかける。しかしそこで、憤怒者達は切り札を投入してきた。
 本来なら都市部で使うような代物ではない、火炎放射器。
 それが覚者達に向かって、文字通り嫉妬の炎を噴き上げた。


 憤怒者達の放つ炎が覚者達の身を焼く。だが、それはすぐさま、広がっていく霧によって勢いを弱めていく。霧の中心にいるのは、妖艶な美魔女――ころんの覚醒した姿である――だ。
「覚者だからってね、必ずしもモテるわけじゃないの」
 割と緊迫した空気を意に介さず、遠い目をするころん。
 覚者だって人間だ。どんな特殊な能力を持っていようと、上手くいかない人は上手くいかない。
「ころんだって性格ひねくれすぎてて良い出会いなんて全然ないし、合コンでは酔った勢いであんなことしちゃうし」
 先日参加した合コンという名前の何かを思い出しながら、ころんはペンギンのぬいぐるみのようなものを握り締める。まぁ26ね……人間生きていれば色々とあるもんだ。何かを察した憤怒者達も、思わず哀しげな表情を浮かべた。
 とまぁそんなわけで、相手の切り札を凌いだ覚者達は一気に憤怒者達を攻め立てる。朔夜は申し訳なさそうな顔で仲間の回復を行うと、残った憤怒者達へと狙いを付ける。
「おっさんの癒やしでごめんね? ほら、あと少しだ」
 そうなると、憤怒者達は一気に押し込まれる。本質的な耐久度では覚者が勝る。その上で行動を封じられて、畳み込まれてしまっては如何ともしがたい。
「さぁ行くぜレイジングブル! 俺達の番だ! ありす、一気に焼きつくすぜ!」
「……ふん、効率を重視してるだけだからね」
 ヤマトは足に、ありすは手に握る術符に、それぞれ炎を纏わせると、タイミングを合わせて同時に攻撃を仕掛ける。皮肉と言えば皮肉な話だが、憤怒者達にそれを止める術は残っていなかった。
 そこで、瑠璃と槐は回り込んで逃げ道を塞ぐ。悠乃はすっかりご機嫌な様子で、電磁警棒を握る憤怒者の顎を蹴り上げた。
 取り囲まれて残った憤怒者達は逃げ道を探す。その前で奏空は挑発的に手に持ったチョコをちらつかせる。
「あ、お兄さん達逃げちゃうの? そんなんだからチョコ貰えないんじゃないの? ほら、見てよ。俺チョコ貰っちゃったよー」
 このチョコレートは奏空が今年もらったチョコレートだ。
 母や姉からもらったわけではない。ましてや、自分で買ったのでもないチョコレート。それは男にとっては何物にも替えがたい勲章のようなものだ。憤怒者達は奏空の様子から、それが『本物』であることを理解した。
 せめて、それを持つ者に一撃を加えねばと憤怒者達は残った武器を向ける。しかし、その僅かな隙こそが奏空の狙いだった。
「マジもんのチョコだから死守するけどね!」
 素早くチョコを仕舞い、二振りの刃を抜き放つ奏空。そして、刃を天に掲げるとにわかに現れた雲から獣を思わせる雷が迸る。
 それは憤怒者達への裁きとなって、彼らの身を焼く。そして、その場には静寂が戻った。


 戦いが終わった後で朔夜は憤怒者達を縛り上げる。彼らの計画書なども証拠として存在するので、後は他の組織に任せるのが吉だ。
「お兄さん達さ……さっきは俺チョコ自慢とかしたけどさ……覚者とかそんなの関係なく性格の問題だと思うんだけどな」
 奏空としては先ほど挑発は行ったものの、憤怒者達に同情的な所もあるのだろう。少しでも彼らの更生のきっかけになれれば、と声を掛ける。
「そんな僻み根性だったら覚者だってモテないよ。人に好かれる性格にならないと。ね?」
「そんなにモテたいなら彼女作ればいいだろ。『出会いがない』とか定番の文句は言うなよ。お前ら本気で作ろうとしたことあるのかよ。もっと積極的な姿勢でいけよ」
 瑠璃の言葉は手厳しい。だが、それに対して哀しくうな垂れる憤怒者達の姿もあった。まぁ、ほら、一応女性の憤怒者だって世の中には存在する訳で。
 戦闘中、ある意味一番好意的な態度を取っていた悠乃に期待の視線が集まるが、彼女はすげなく「No thank you」と告げる。互いを理解し合えたとは思うが、それとこれとは話が別。と言うか、お互いに選ぶ権利はあるのだ。
 それを見てさすがに哀れになったのか、ありすが憤怒者達にチョコレートを配る。
「これあげるからもうこんな迷惑な事しないのよ?」
 歓喜に湧く憤怒者達。
 そして、その横で物欲しげな顔をしているヤマトの姿もあった。それを見て、ありすは気恥ずかしげにチョコレートを差し出した。
「……何、黒崎サンも欲しいの? 一応小芝居用に用意したものだけど……良いわよ、あげる」
「いいのか……! 嬉しい! ありがとうな! 大事に食べる!! ありすのチョコすごく嬉しい!」
 満面の笑みを浮かべて、全力で喜びを表現するヤマト。
 むしろ、アリスの方が恥ずかしくなってしまうほどだ。
「ちょっと、そんなに嬉しそうな顔しないでよ、調子狂うじゃない」
 まぁ、バカげた騒ぎの後なのだから、この位のイベントがあっても良いだろう。
 こうして、バレンタインに起きた恐ろしくも情けない事件は終幕となったのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『チョコレート(夢見)』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員




 
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