麿はペンギンではないでおじゃ!
●やんごとなき五位のおとど
――東京都某所、水族館にて
「今日こそ帰ってもらうんだからね!このペンギンもどき!」
『麿はペンギンどころかペンギンもどきでもないでおじゃ!!』
「なんだとこのー!!」
ペンギンの屋外展示の檻の中で、口論が起きていた。
魚の入ったバケツを持った小柄な女性飼育員が、何故かペンギン?らしき鳥に向かって大声を張り上げている。
作業用の制服の袖口から少し羽毛が出ているのを見ると、どうやら獣の因子の覚者のようだ。
「あのお姉さん、ペンギンにお話してるよー?」
「しっ!見ちゃいけません!」
よく分からない光景を目の当たりにした親子が、そそくさとペンギンの展示から逃げてゆく。
ついでに、言葉が分かるのか分からないのかは不明だが、ペンギン達も遠巻きに眺めている。
『下々の者にもあのように笑い者にされ、くやしいのう♪くやしいのう♪』
ドヤァ……と効果音の聞こえそうなオーラと共に勝ち誇る鳥。
「くっそおおお!片っ端から横取りして、腹いっぱいになるまで食ってくお前のせいで!魚代が高くなってるんだよおおお!」
青筋を浮かべてキレる、飼育員。
「いい!?私以上にあんたたちみたいな変な生き物に詳しい人にお願いしてくるわ!あんたなんかそれが年貢の納め時よ!!」
AAAに奉職した、高校の元同級生経由で聞いた。京都のFiVEという組織がそういったことに詳しいとか。
今度こそこのかわいいペンギン達のご飯を横取りする、ペンギンもどきをとっちめて追い出せるだろう。
――この口論を遠巻きに眺める、怪しいアベックの視線に一人と一羽は、気づいていない。
●お姉さんの名誉挽回をかけて
「さて皆、お仕事が舞い込んだよ。こちらのマドモワゼル・ルミからのご依頼だね」
そう告げるジュヌヴィエーヴ・ベルナドット(nCL2000117)の横には、若い小柄な女性、依頼人のルミが立っている。
なんだか、自信がなさそうな顔をしているが……
「あの……水族館でエサを盗み食いする、ペンギンみたいな古妖をどうにかして欲しいんです!」
最近の激動の情勢からすると、なんだか被害と言えないくらいの規模にしか思えないが、ルミの口調と表情は真剣そのものだ。
むしろ、若干殺気立っているようにも見える。
彼女はバッグから取り出した図鑑を開き、あるページを皆に見せる。
「図鑑にも載っているこんな奴なんですけど、人間の言葉を話してて、ついでに羽根を飛ばして嫌がらせしてきたりするんです。私がなんとかできればいいんですけど、弱いし飛んで逃げるしで太刀打ちできなくて……」
描かれていたのはゴイサギ。よく、水族館や動物園でペンギンに混じっているとネタにされている鳥だ。
だが、ルミの話す個体の特徴は明らかに普通の動物ではない。古妖か。
さっさと先手必勝で捕獲してしまうか、飛行できる者が追いかけて捕まえるか。
集まったFiVEの覚者とルミが唸って考えだしたところへ、何かを思い出したのか、ジュヌヴィエーヴが声をかける。
「そうだねえ……そういえば、ちょっと前に水族館の夢を見たっけねえ。偶然にしては出来すぎてるような気もするけど、マドモワゼルは見覚えがあるかい?」
念写した画像を一枚、テーブルに置く。
「あ、あれ?これうちの水族館にそっくりなような……」
その写真は、翼をバタつかせて抵抗している鳥らしき生き物が、男女二人の手によってズタ袋に押し込められている光景だった。
――東京都某所、水族館にて
「今日こそ帰ってもらうんだからね!このペンギンもどき!」
『麿はペンギンどころかペンギンもどきでもないでおじゃ!!』
「なんだとこのー!!」
ペンギンの屋外展示の檻の中で、口論が起きていた。
魚の入ったバケツを持った小柄な女性飼育員が、何故かペンギン?らしき鳥に向かって大声を張り上げている。
作業用の制服の袖口から少し羽毛が出ているのを見ると、どうやら獣の因子の覚者のようだ。
「あのお姉さん、ペンギンにお話してるよー?」
「しっ!見ちゃいけません!」
よく分からない光景を目の当たりにした親子が、そそくさとペンギンの展示から逃げてゆく。
ついでに、言葉が分かるのか分からないのかは不明だが、ペンギン達も遠巻きに眺めている。
『下々の者にもあのように笑い者にされ、くやしいのう♪くやしいのう♪』
ドヤァ……と効果音の聞こえそうなオーラと共に勝ち誇る鳥。
「くっそおおお!片っ端から横取りして、腹いっぱいになるまで食ってくお前のせいで!魚代が高くなってるんだよおおお!」
青筋を浮かべてキレる、飼育員。
「いい!?私以上にあんたたちみたいな変な生き物に詳しい人にお願いしてくるわ!あんたなんかそれが年貢の納め時よ!!」
AAAに奉職した、高校の元同級生経由で聞いた。京都のFiVEという組織がそういったことに詳しいとか。
今度こそこのかわいいペンギン達のご飯を横取りする、ペンギンもどきをとっちめて追い出せるだろう。
――この口論を遠巻きに眺める、怪しいアベックの視線に一人と一羽は、気づいていない。
●お姉さんの名誉挽回をかけて
「さて皆、お仕事が舞い込んだよ。こちらのマドモワゼル・ルミからのご依頼だね」
そう告げるジュヌヴィエーヴ・ベルナドット(nCL2000117)の横には、若い小柄な女性、依頼人のルミが立っている。
なんだか、自信がなさそうな顔をしているが……
「あの……水族館でエサを盗み食いする、ペンギンみたいな古妖をどうにかして欲しいんです!」
最近の激動の情勢からすると、なんだか被害と言えないくらいの規模にしか思えないが、ルミの口調と表情は真剣そのものだ。
むしろ、若干殺気立っているようにも見える。
彼女はバッグから取り出した図鑑を開き、あるページを皆に見せる。
「図鑑にも載っているこんな奴なんですけど、人間の言葉を話してて、ついでに羽根を飛ばして嫌がらせしてきたりするんです。私がなんとかできればいいんですけど、弱いし飛んで逃げるしで太刀打ちできなくて……」
描かれていたのはゴイサギ。よく、水族館や動物園でペンギンに混じっているとネタにされている鳥だ。
だが、ルミの話す個体の特徴は明らかに普通の動物ではない。古妖か。
さっさと先手必勝で捕獲してしまうか、飛行できる者が追いかけて捕まえるか。
集まったFiVEの覚者とルミが唸って考えだしたところへ、何かを思い出したのか、ジュヌヴィエーヴが声をかける。
「そうだねえ……そういえば、ちょっと前に水族館の夢を見たっけねえ。偶然にしては出来すぎてるような気もするけど、マドモワゼルは見覚えがあるかい?」
念写した画像を一枚、テーブルに置く。
「あ、あれ?これうちの水族館にそっくりなような……」
その写真は、翼をバタつかせて抵抗している鳥らしき生き物が、男女二人の手によってズタ袋に押し込められている光景だった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.古妖【五位のおとど】の捕獲
2.【五位のおとど】を【超自然生物研究の会】に渡さない
3.なし
2.【五位のおとど】を【超自然生物研究の会】に渡さない
3.なし
実はいとやんごとなき鳥なんです。
では、今回の詳細となります。
【ロケーション】
東京都内の水族館、昼下がり。
一般人も居るには居ますがまばらです。
皆さんはルミお姉さんの手引きで、飼育員が出入りする出入り口から入ることになります。
ペンギンの屋外展示近くを、下記の【超自然生物研究の会】二人がうろついているようです。
【NPC】
●五位のおとど
ペンギンによく似た鳥、ゴイサギの姿をした古妖です。
種名の由来となった、五位の位を与えられたゴイサギ本鳥の模様。
何故かペンギンの檻内で魚を食っていますが、人語を話したりやけに王様っぽいオーラのため一発で古妖とわかります。
戦闘能力はレベル2~3の覚者程度。《エアブリット》相当の《羽根飛ばし》が使えます。
もちろん飛べます。
●ルミお姉さん
水族館のペンギン担当の飼育員で、水行/獣の因子(酉)の覚者です。
武器を持っていない(良くてシャベルくらい)のもありいかんせんリーチが短く、毎回五位のおとどにエサを持ち逃げされてばかり。
以心で調査したところ、ペンギン達からの人望は地に落ちていたことが判明。
レベルは1程度です。
●【超自然生物研究の会】
一般人と覚者混合のマッドサイエンティストチーム……?のようです。
背中にでかでかと、会のロゴマークの入ったジャンパーを着ているのですぐ分かります。
古妖を研究対象としているようで、五位のおとどもその候補にリストアップされている模様。
土行/獣の因子(午)の男と一般人の女のコンビが五位のおとど捕獲に来ているようです。
おそらくは男が前衛、女は何らかの飛び道具での後衛の模様。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年04月17日
2016年04月17日
■メイン参加者 8人■

●麿をペンギンと一緒にするなでおじゃ!
件名:例のゴイサギについて
ご担当者様
お世話になります。FiVEへ依頼された案件を受けました三上です。
件の困ったゴイサギ対策についてご連絡差し上げました。
人員が揃いましたので、つきましては、同じ組織の者共々、4月14日に伺いたく思います。
まずはご連絡まで。
FiVE所属 三上
水族館の事務用パソコンのメールソフトに届いたのは、『たぶん探偵』三上・千常(CL2000688) からの知らせ。
さて、ゴイサギと不届き者、同時にどうにかすることはできるのか……
そして当日。水族館の従業員用通用口にて。
「よろしくお願いします」
服の袖から、ニワトリらしい白い羽根をのぞかせた女性が頭を下げる。今回の依頼者、ペンギン飼育員のルミお姉さんだ。
FiVEから派遣された8人の男女が前に進み出て、ルミに各々挨拶をしたり、辺りを興味深げに見回したりする。
特に、『B・B』黒崎 ヤマト(CL2001083) は、好奇心に目を輝かせてキョロキョロと辺りを見回しながら
「普段入れない入り口から行くとわくわくするよな!」
と、とても嬉しそうだ。
「あれ?ルミちゃん、その人達は?」
たまたまそこに通りがかった、他の生き物担当の飼育員とみえる作業着姿の職員が、後輩と見慣れぬ8人の来客を見て不思議そうに首を傾げる。
「この人たちはね……」
かくかくしかじか、まるまるうまうま。ヤマトのワーズ・ワースの効果と手短な説明もあり、先輩職員も「ああ、あのエサ泥棒の」と納得してくれたようだ。
というかどんだけエサをパチってるんだおとど。
「五位の位を持ちながら、やることがぺんぎんの餌の横取りとは……情けないのぉ」
内心、本当は初めての水族館を楽しみたい『白い人』由比 久永(CL2000540)は、高貴の位を持つゴイサギの行状にあきれ返っている。
その横でペンギンの捕獲やで~と意気込んでいるのは、『猪突猛進無鉄砲』戎 斑鳩(CL2000377)。
「古妖狩人殲滅しても似た奴はひっきりなしか。あーあ。」
『調停者』九段 笹雪(CL2000517) が、心なしかガックリと肩を落とす。FiVE総出で対応に駆り出された記憶が蘇る。
「おとど、かぁ…漢字で書くと大殿だし?なんか、こう、既視感半端ないんだよなぁ……」
頭の中を高貴かつ爽やかかつ眉目秀麗ながら生活力に乏しそうな笑顔の好男子が駆け抜けていくのは、『彼誰行灯』麻弓 紡(CL2000623)。
『凛の雫花』宇賀神・慈雨(CL2000259) は、手土産の魚を持参している。今が旬のニジマスだ。
三上は要所要所をぼかしつつ、おとどに迫る危機をルミへ説明する。
「分かりやすく言いますと、こっちが事前調査をしたところですね、おとどを無理矢理捕獲して連れてこうとする連中の動きを掴んだんですよ」
冬頃にも似たような手合いが大量に、暴力にも訴える組織として出たことも付け加える。
「まぁそういう訳でおとどさんを保護させて頂くために、彼と親交のある貴方にもご協力をお願いします。」
それと、自分の武具の入った大箱を持ち込みたいという。ルミは快諾するも、
「ええ、それはいいんですけど……」
彼女自身は荒事にも組織同士の競争にも関わりの無い、平凡な一般市民である。迷惑な害鳥を捕まえてくれるなら、それは良い人ではないだろうか?とも考えてしまう。それを率直に口にするも、『生命の盾持ち』栗落花 渚(CL2001360)がフォローを入れる。
「そういう人に限って、周囲の一般人にも迷惑をかけるんだよ……」
そんなやりとりがありつつも、おとどに気づかれぬように笹雪の結界による人払いを施しつつ、準備を万端にしたFiVEがペンギンの展示室へ裏から侵入する。
目の前にはペンギンによく似て、しかし色が微妙に違ってシュッとした鳥が。
「む、なんじゃなんじゃ、いつもの娘と違う下々の者がいっぱいでおじゃ?」
耳に入る声は中年男性そのものである。
「アンタをどうにかしてくれそうな人に来てもらったのよ!」
ぷんすかと問いかけに返すルミ。
「どうにかするじゃと!?麿が正五位と知っての狼藉かおじゃ!?」
正五位、という言葉を聞いて、何人かがそこから反論を開始する。口火を切ったのは慈雨。
「やんごとなき身分だったかしら、貴方。高貴な存在なら話を全く聞かない、なんて品の無い事はしないわね?」
「お、おじゃ……」
さらには、外見からは分かりづらいがこの中では最年長者の久永が淡々と優しく問いかける。慈雨と共に魚を差し出しつつ、分かりやすく説明を始めた。
自分達の組織の事や、古妖の保護をしている事。さらには、ジュヌヴィエーヴの予知はぼかしつつ、研究会の存在とおとどに迫る危機を、おとどの反応を見つつ語ってゆく。
知能は高そうだが、はてさてどこまで理解してくれるやら
「この水族館に拘る理由が無いなら、共に来てくれぬか?FiVEなら、ここ以上に衣食住はしっかりしておるぞ」
ふむ、とクチバシをカチカチと鳴らして思案するおとど。
「最近は世間も少々騒がしく、おとどに危険が及ぶ可能性があります。良ければ安全に暮らせる所などをご紹介します。一度一緒に来ていただけませんか?」
笹雪も口を添える。
「高貴な身分もある「五位の大臣」なら、それくらい理解できよう?」
久永の追撃もあるが、何よりおとどを揺らがせたのは魚の入ったクーラーボックスを開けながら放った渚の一言。
「それっぽっちのお魚でいいの?こんなところでペンギン用に用意されたお魚食べるより、自分用に用意されたお魚があったら素敵じゃないかな?」
じゅるり、という音が聞こえたのは気のせいではないだろう。三大欲求の一角には抗えそうにも無い。
このやりとりを監視する怪しい物影が二人分。遠巻きに、賑やかしくなっている水槽を見てヒソヒソと何か話している。
(「あの古妖ゴイサギの周囲には、へっぽこ飼育員の覚者が一人しか居なかったはずじゃあ……何だか強そうな奴が何人もいるぞ……」)
(「どうするの?ささっと確保して離脱するの?」)
(「それしかないだろうな。上からも指示されてるし」)
しかし、それに気づかぬFiVEの皆ではない。最初に気づいたのは、透視を持つ三上だった。
「ちょっとそこの人。お前らが古妖を狙ってる連中ってとこか?」
ゲッ、という表情で男が叫ぶ。
「何だよ!何で俺達の行動がバレてるんだよ!お前ら何者だ!!」
完全にクロだ。研究員に対応する覚者が前に走り出てくる。
「我々は!」
「超自然生物研究の会だっ!!」
覚者らに背中を向け、揃いのジャンパーの背中にでかでかと刺繍された【超自然生物研究の会】のロゴを見せ付ける二人の研究員。
何人かはタイムなドカンとか、ロケットの団体とかそんな印象を感じたようだ。多分、間違ってない。
●この不届き者をひっとらえよ!
ジャンパーのロゴを見せ付ける研究員らに対し、おとどがクチバシを鳴らして騒ぐ。
「そなたらがさっきの話にあった、高貴なる麿を狙うという不届き者でおじゃるか!!」
腰ほどの高さの仕切りを乗り越えて向かってくる二人に対し、警戒するFiVE。
周囲が戦場になりそうなので、展示内の一般ペンギンをバックヤードへ避難させる。慈雨も手伝いつつ、ルミを励ます。
「しっかりね、飼育員さん!今が名誉返上…じゃない、挽回のチャンスだよ!」
「そ、そうですね!汚名挽回のチャンスですね!」
日本語としては間違っているが、とてもよく噛み合った会話を交わす二人。
「み、みんなー!あっち!おうちにかえるよー!おいクソ鳥、あんたも来い!」
ルミは声を張り上げ、バックヤード方面へペンギン達を誘導する。声の大きさや迫力に驚いたか、ペンギンは以外にもトタトタとまっすぐ歩いてゆく。
おとどもそれに続いて飛んで入るが、彼から視線を離さない研究員達はじりじりと間合いを詰めてくる。
久永と笹雪はバックヤードのドア前に立って、前衛が突破されてもおとど達を追えないように布陣。
紡は一般経路側に回わり、安全のために結界の範囲内より外の一般人にもワーズ・ワースで避難を促す。
最も前で研究員達に相対する者が動き出す。
「行くぜレイジングブル!おとどは絶対、連れて行かせねえ!」
ギターをギュイーンとかき鳴らし、先手を取ってエアブリットを放つヤマトが最初に動いた。
「覚悟しろ。腕か、足か。なくなってからじゃ遅いからよ。」
悪そうな笑みを浮かべ、斧を構える三上。少しひるむも、二人の研究員は発現で姿を変えたり懐から武器を取り出すなどして臨戦態勢となる。
覚者の男は四肢が馬の蹄状に変化し、特に手には蹄鉄のようなナックルをはめているようだ。
渚は機化硬を発動し、戻ってきた紡は演舞・清爽をかける。
数では不利だが、自信があるのか男研究者は蹄を鳴らしてファイティングポーズを取る。
「ククク、伝説の神獣、麒麟の眷属たるこの俺の蹄を受けるがいい!」
「気にしないでね!コイツただの馬鹿だから!」
宣言どおりに琴桜を殴りの形で繰り出す男研究員。その後ろから、女研究員は小さな鉄球を撃ち出すスリングショットで援護をしてくる。
馬鹿、というのは午の覚者であることも影響しているのだろうか?よくみれば、結構な馬面のようだが。
琴桜は三上の鳩尾に吸い込まれるも、彼はこんなことでは揺るがない。
先程までの自信はどうしたのか、あまりダメージが無い様子に、少なからずショックを受けたような男研究員。
「馬鹿のサポートも、楽じゃないのよっ!!」
スリングショットから鉄玉を打ち出す女研究員は力任せの男研究者とは逆に、威力が低いながらも高い精度の攻撃ができるらしい。
「イタッ!!」
思わず痛みでのけぞる斑鳩。大したダメージにはならないが、神経や筋肉の付き方的に絶妙に痛くなるところを叩いてくる。
しかし、三上の斧の重い一撃が女に襲い掛かる……が、男の方が突き飛ばすように女を庇い、男も防御するなどなかなか有効打までは至らない。
八人の覚者を目の前にし、ギリギリと歯をかみ締める研究員二人。じりじりと後ずさりし、悔しさを顔一面に表す。
特に男は、自信満々で繰り出した先程の琴桜がまるで通じなかったことがかなり精神的に来ているようだ。
「くっ、ここがダメでも、まだ八王子の案件が残っているッ!!」
「ここは撤退よ!」
八王子、とハッキリとした地名を出す二人。また何かしでかす予定があるのだろうか……。
男研究員が女研究員を米俵のように担ぎ上げて回れ右する。止めようとするも、馬の脚力なのか当人が速さに注力して鍛錬を積んだのかは分からないが、追いつきたくともなかなか補足できない。
「あ、おい!逃げるなっ!!」
「待つんだよー!」
ヤマトと紡のエアブリットも外れ、入退場者ゲートの柵を踏んで飛び越えると、二人は風のような勢いで走り去ってしまったのだった。
●何百年ぶりの京かのう
ゲートを飛び越えて(なお、男が踏み切り台代わりにした柵はぶっ壊れた)逃走した二人組だが、警備員からの情報でどうやら完全に敷地内からも走り去ったらしい。
「改めて説明するわね。私たちは京都のFiVEって組織から来たのよ」
慈雨の口にした京都、という単語に反応するおとど
「ほほう、そなたらは京から参られたのかえ。麿が最後に行ったのは、唐渡りのキョウサンシュギの教えとやらをめぐって何やら学生(がくしょう)と検非違使が争っていたときじゃのう」
学生運動、ということは1950年代。おとどからすれば、じつに60年ぶりの京都だ。
「麿に位を授けたみかどがお隠れになった後、京を離れての。その後は奥州の都や鎌倉なぞも見物して旅しておったのじゃ」
かつてのマスターであった、大昔のいとやんごとなき人との別れと共に一度は京を離れた様子。
「その後は春王のぼんが建てた金のお寺を見に帰ったきりでおじゃるよ。あれはキラキラとしていて、麿の目にはあでやか過ぎて痛い程でおじゃったが、鞍馬山の外法様のお気には召したようじゃったのう。」
娘御が坂東の薬王院の方へ嫁いだそうじゃが、あちらも今は寂しいようでの、とブツブツとクチバシを動かすが、そんなおとどへ、紡やヤマトが声をかける。
「これから京都に来るわけだけど、京都に来るならこれからも仲良くしたいでごじゃ」
「寂しいなら、俺と友達になろう!まだまだ一杯、おとどの昔話が聞いてみたいしな!」
その言葉に、さっきよりも比較的明るそうな声で答えるおとど。
「ほう、自由に動いてもよいのなら、そなたらの元にも遊びにいくかの」
そしてヤマト、おとどへさっきから抱いていた疑問をぶつける。
「そういえば、五位ってどれくらい偉いんだ?」
「上から数えて11番目くらいかの。そのときどきによってずれはあるがの」
5位、というイメージがあっただけに、意外な低さに関心するヤマト。
「ドロボウ鳥、京都では他の人に迷惑をかけたり、ご飯を盗んだりしないでよ?」
安堵の表情をしながらも、言葉はキツいルミ。
FiVEが手配した車に、8人がおとどとともに乗り込む。彼は紡の近くへ、どっかりと腰をおろす。新しい本部の住人とともに、一路五麟市へ戻るのだった。
「ま、最低限の待遇と新鮮な魚は保証しよう。ようこそ、FiVEへ。」
件名:例のゴイサギについて
ご担当者様
お世話になります。FiVEへ依頼された案件を受けました三上です。
件の困ったゴイサギ対策についてご連絡差し上げました。
人員が揃いましたので、つきましては、同じ組織の者共々、4月14日に伺いたく思います。
まずはご連絡まで。
FiVE所属 三上
水族館の事務用パソコンのメールソフトに届いたのは、『たぶん探偵』三上・千常(CL2000688) からの知らせ。
さて、ゴイサギと不届き者、同時にどうにかすることはできるのか……
そして当日。水族館の従業員用通用口にて。
「よろしくお願いします」
服の袖から、ニワトリらしい白い羽根をのぞかせた女性が頭を下げる。今回の依頼者、ペンギン飼育員のルミお姉さんだ。
FiVEから派遣された8人の男女が前に進み出て、ルミに各々挨拶をしたり、辺りを興味深げに見回したりする。
特に、『B・B』黒崎 ヤマト(CL2001083) は、好奇心に目を輝かせてキョロキョロと辺りを見回しながら
「普段入れない入り口から行くとわくわくするよな!」
と、とても嬉しそうだ。
「あれ?ルミちゃん、その人達は?」
たまたまそこに通りがかった、他の生き物担当の飼育員とみえる作業着姿の職員が、後輩と見慣れぬ8人の来客を見て不思議そうに首を傾げる。
「この人たちはね……」
かくかくしかじか、まるまるうまうま。ヤマトのワーズ・ワースの効果と手短な説明もあり、先輩職員も「ああ、あのエサ泥棒の」と納得してくれたようだ。
というかどんだけエサをパチってるんだおとど。
「五位の位を持ちながら、やることがぺんぎんの餌の横取りとは……情けないのぉ」
内心、本当は初めての水族館を楽しみたい『白い人』由比 久永(CL2000540)は、高貴の位を持つゴイサギの行状にあきれ返っている。
その横でペンギンの捕獲やで~と意気込んでいるのは、『猪突猛進無鉄砲』戎 斑鳩(CL2000377)。
「古妖狩人殲滅しても似た奴はひっきりなしか。あーあ。」
『調停者』九段 笹雪(CL2000517) が、心なしかガックリと肩を落とす。FiVE総出で対応に駆り出された記憶が蘇る。
「おとど、かぁ…漢字で書くと大殿だし?なんか、こう、既視感半端ないんだよなぁ……」
頭の中を高貴かつ爽やかかつ眉目秀麗ながら生活力に乏しそうな笑顔の好男子が駆け抜けていくのは、『彼誰行灯』麻弓 紡(CL2000623)。
『凛の雫花』宇賀神・慈雨(CL2000259) は、手土産の魚を持参している。今が旬のニジマスだ。
三上は要所要所をぼかしつつ、おとどに迫る危機をルミへ説明する。
「分かりやすく言いますと、こっちが事前調査をしたところですね、おとどを無理矢理捕獲して連れてこうとする連中の動きを掴んだんですよ」
冬頃にも似たような手合いが大量に、暴力にも訴える組織として出たことも付け加える。
「まぁそういう訳でおとどさんを保護させて頂くために、彼と親交のある貴方にもご協力をお願いします。」
それと、自分の武具の入った大箱を持ち込みたいという。ルミは快諾するも、
「ええ、それはいいんですけど……」
彼女自身は荒事にも組織同士の競争にも関わりの無い、平凡な一般市民である。迷惑な害鳥を捕まえてくれるなら、それは良い人ではないだろうか?とも考えてしまう。それを率直に口にするも、『生命の盾持ち』栗落花 渚(CL2001360)がフォローを入れる。
「そういう人に限って、周囲の一般人にも迷惑をかけるんだよ……」
そんなやりとりがありつつも、おとどに気づかれぬように笹雪の結界による人払いを施しつつ、準備を万端にしたFiVEがペンギンの展示室へ裏から侵入する。
目の前にはペンギンによく似て、しかし色が微妙に違ってシュッとした鳥が。
「む、なんじゃなんじゃ、いつもの娘と違う下々の者がいっぱいでおじゃ?」
耳に入る声は中年男性そのものである。
「アンタをどうにかしてくれそうな人に来てもらったのよ!」
ぷんすかと問いかけに返すルミ。
「どうにかするじゃと!?麿が正五位と知っての狼藉かおじゃ!?」
正五位、という言葉を聞いて、何人かがそこから反論を開始する。口火を切ったのは慈雨。
「やんごとなき身分だったかしら、貴方。高貴な存在なら話を全く聞かない、なんて品の無い事はしないわね?」
「お、おじゃ……」
さらには、外見からは分かりづらいがこの中では最年長者の久永が淡々と優しく問いかける。慈雨と共に魚を差し出しつつ、分かりやすく説明を始めた。
自分達の組織の事や、古妖の保護をしている事。さらには、ジュヌヴィエーヴの予知はぼかしつつ、研究会の存在とおとどに迫る危機を、おとどの反応を見つつ語ってゆく。
知能は高そうだが、はてさてどこまで理解してくれるやら
「この水族館に拘る理由が無いなら、共に来てくれぬか?FiVEなら、ここ以上に衣食住はしっかりしておるぞ」
ふむ、とクチバシをカチカチと鳴らして思案するおとど。
「最近は世間も少々騒がしく、おとどに危険が及ぶ可能性があります。良ければ安全に暮らせる所などをご紹介します。一度一緒に来ていただけませんか?」
笹雪も口を添える。
「高貴な身分もある「五位の大臣」なら、それくらい理解できよう?」
久永の追撃もあるが、何よりおとどを揺らがせたのは魚の入ったクーラーボックスを開けながら放った渚の一言。
「それっぽっちのお魚でいいの?こんなところでペンギン用に用意されたお魚食べるより、自分用に用意されたお魚があったら素敵じゃないかな?」
じゅるり、という音が聞こえたのは気のせいではないだろう。三大欲求の一角には抗えそうにも無い。
このやりとりを監視する怪しい物影が二人分。遠巻きに、賑やかしくなっている水槽を見てヒソヒソと何か話している。
(「あの古妖ゴイサギの周囲には、へっぽこ飼育員の覚者が一人しか居なかったはずじゃあ……何だか強そうな奴が何人もいるぞ……」)
(「どうするの?ささっと確保して離脱するの?」)
(「それしかないだろうな。上からも指示されてるし」)
しかし、それに気づかぬFiVEの皆ではない。最初に気づいたのは、透視を持つ三上だった。
「ちょっとそこの人。お前らが古妖を狙ってる連中ってとこか?」
ゲッ、という表情で男が叫ぶ。
「何だよ!何で俺達の行動がバレてるんだよ!お前ら何者だ!!」
完全にクロだ。研究員に対応する覚者が前に走り出てくる。
「我々は!」
「超自然生物研究の会だっ!!」
覚者らに背中を向け、揃いのジャンパーの背中にでかでかと刺繍された【超自然生物研究の会】のロゴを見せ付ける二人の研究員。
何人かはタイムなドカンとか、ロケットの団体とかそんな印象を感じたようだ。多分、間違ってない。
●この不届き者をひっとらえよ!
ジャンパーのロゴを見せ付ける研究員らに対し、おとどがクチバシを鳴らして騒ぐ。
「そなたらがさっきの話にあった、高貴なる麿を狙うという不届き者でおじゃるか!!」
腰ほどの高さの仕切りを乗り越えて向かってくる二人に対し、警戒するFiVE。
周囲が戦場になりそうなので、展示内の一般ペンギンをバックヤードへ避難させる。慈雨も手伝いつつ、ルミを励ます。
「しっかりね、飼育員さん!今が名誉返上…じゃない、挽回のチャンスだよ!」
「そ、そうですね!汚名挽回のチャンスですね!」
日本語としては間違っているが、とてもよく噛み合った会話を交わす二人。
「み、みんなー!あっち!おうちにかえるよー!おいクソ鳥、あんたも来い!」
ルミは声を張り上げ、バックヤード方面へペンギン達を誘導する。声の大きさや迫力に驚いたか、ペンギンは以外にもトタトタとまっすぐ歩いてゆく。
おとどもそれに続いて飛んで入るが、彼から視線を離さない研究員達はじりじりと間合いを詰めてくる。
久永と笹雪はバックヤードのドア前に立って、前衛が突破されてもおとど達を追えないように布陣。
紡は一般経路側に回わり、安全のために結界の範囲内より外の一般人にもワーズ・ワースで避難を促す。
最も前で研究員達に相対する者が動き出す。
「行くぜレイジングブル!おとどは絶対、連れて行かせねえ!」
ギターをギュイーンとかき鳴らし、先手を取ってエアブリットを放つヤマトが最初に動いた。
「覚悟しろ。腕か、足か。なくなってからじゃ遅いからよ。」
悪そうな笑みを浮かべ、斧を構える三上。少しひるむも、二人の研究員は発現で姿を変えたり懐から武器を取り出すなどして臨戦態勢となる。
覚者の男は四肢が馬の蹄状に変化し、特に手には蹄鉄のようなナックルをはめているようだ。
渚は機化硬を発動し、戻ってきた紡は演舞・清爽をかける。
数では不利だが、自信があるのか男研究者は蹄を鳴らしてファイティングポーズを取る。
「ククク、伝説の神獣、麒麟の眷属たるこの俺の蹄を受けるがいい!」
「気にしないでね!コイツただの馬鹿だから!」
宣言どおりに琴桜を殴りの形で繰り出す男研究員。その後ろから、女研究員は小さな鉄球を撃ち出すスリングショットで援護をしてくる。
馬鹿、というのは午の覚者であることも影響しているのだろうか?よくみれば、結構な馬面のようだが。
琴桜は三上の鳩尾に吸い込まれるも、彼はこんなことでは揺るがない。
先程までの自信はどうしたのか、あまりダメージが無い様子に、少なからずショックを受けたような男研究員。
「馬鹿のサポートも、楽じゃないのよっ!!」
スリングショットから鉄玉を打ち出す女研究員は力任せの男研究者とは逆に、威力が低いながらも高い精度の攻撃ができるらしい。
「イタッ!!」
思わず痛みでのけぞる斑鳩。大したダメージにはならないが、神経や筋肉の付き方的に絶妙に痛くなるところを叩いてくる。
しかし、三上の斧の重い一撃が女に襲い掛かる……が、男の方が突き飛ばすように女を庇い、男も防御するなどなかなか有効打までは至らない。
八人の覚者を目の前にし、ギリギリと歯をかみ締める研究員二人。じりじりと後ずさりし、悔しさを顔一面に表す。
特に男は、自信満々で繰り出した先程の琴桜がまるで通じなかったことがかなり精神的に来ているようだ。
「くっ、ここがダメでも、まだ八王子の案件が残っているッ!!」
「ここは撤退よ!」
八王子、とハッキリとした地名を出す二人。また何かしでかす予定があるのだろうか……。
男研究員が女研究員を米俵のように担ぎ上げて回れ右する。止めようとするも、馬の脚力なのか当人が速さに注力して鍛錬を積んだのかは分からないが、追いつきたくともなかなか補足できない。
「あ、おい!逃げるなっ!!」
「待つんだよー!」
ヤマトと紡のエアブリットも外れ、入退場者ゲートの柵を踏んで飛び越えると、二人は風のような勢いで走り去ってしまったのだった。
●何百年ぶりの京かのう
ゲートを飛び越えて(なお、男が踏み切り台代わりにした柵はぶっ壊れた)逃走した二人組だが、警備員からの情報でどうやら完全に敷地内からも走り去ったらしい。
「改めて説明するわね。私たちは京都のFiVEって組織から来たのよ」
慈雨の口にした京都、という単語に反応するおとど
「ほほう、そなたらは京から参られたのかえ。麿が最後に行ったのは、唐渡りのキョウサンシュギの教えとやらをめぐって何やら学生(がくしょう)と検非違使が争っていたときじゃのう」
学生運動、ということは1950年代。おとどからすれば、じつに60年ぶりの京都だ。
「麿に位を授けたみかどがお隠れになった後、京を離れての。その後は奥州の都や鎌倉なぞも見物して旅しておったのじゃ」
かつてのマスターであった、大昔のいとやんごとなき人との別れと共に一度は京を離れた様子。
「その後は春王のぼんが建てた金のお寺を見に帰ったきりでおじゃるよ。あれはキラキラとしていて、麿の目にはあでやか過ぎて痛い程でおじゃったが、鞍馬山の外法様のお気には召したようじゃったのう。」
娘御が坂東の薬王院の方へ嫁いだそうじゃが、あちらも今は寂しいようでの、とブツブツとクチバシを動かすが、そんなおとどへ、紡やヤマトが声をかける。
「これから京都に来るわけだけど、京都に来るならこれからも仲良くしたいでごじゃ」
「寂しいなら、俺と友達になろう!まだまだ一杯、おとどの昔話が聞いてみたいしな!」
その言葉に、さっきよりも比較的明るそうな声で答えるおとど。
「ほう、自由に動いてもよいのなら、そなたらの元にも遊びにいくかの」
そしてヤマト、おとどへさっきから抱いていた疑問をぶつける。
「そういえば、五位ってどれくらい偉いんだ?」
「上から数えて11番目くらいかの。そのときどきによってずれはあるがの」
5位、というイメージがあっただけに、意外な低さに関心するヤマト。
「ドロボウ鳥、京都では他の人に迷惑をかけたり、ご飯を盗んだりしないでよ?」
安堵の表情をしながらも、言葉はキツいルミ。
FiVEが手配した車に、8人がおとどとともに乗り込む。彼は紡の近くへ、どっかりと腰をおろす。新しい本部の住人とともに、一路五麟市へ戻るのだった。
「ま、最低限の待遇と新鮮な魚は保証しよう。ようこそ、FiVEへ。」

■あとがき■
大変お待たせいたしました。
今後はFiVE内のイベシナにて、おとどもNPCとして登場することでしょう。
元々お待たせすることの多い身でございますが、今回急な私用が入りこのような形になってしまいました。
大変申し訳ございません。
身辺落ち着きましたら今回から続く依頼を出しますので、もしお気が向かれましたらよろしくお願いします。
今後はFiVE内のイベシナにて、おとどもNPCとして登場することでしょう。
元々お待たせすることの多い身でございますが、今回急な私用が入りこのような形になってしまいました。
大変申し訳ございません。
身辺落ち着きましたら今回から続く依頼を出しますので、もしお気が向かれましたらよろしくお願いします。
