【魁英雄譚】残酷四天王! 救え、全ての命と魂を!
●残酷四天王
私立病院の救出を終えたFIVE覚者とカクセイジャーたち。
留守にした村が気になるという時雨の言葉もあって、彼らは村へと戻ってきた。
そんな彼らを待っていたのは……!
『フハハハハハ! ご苦労だったカクセイジャーとその協力者諸君!』
空中に浮かび上がる残酷大将軍。実態では無い。以前にも出た幻影だ。
「残酷大将軍、なんてことしやがる!」
「あんな卑劣なまね、絶対にゆるさないの」
「実体を表わせ、ぶちのめしてやるぜ!」
『そう焦るな。お前たちの相手は我が分身たちがしてくれよう』
「分身やて?」
幻影に新たなる姿が浮かび上がる。
数は四つ。
それぞれ岩の巨人、牙や角を大量にはやした熊、中身のない鎧武者、骨を無数に継ぎ合わせたような巨大骸骨。
『彼らは我が恨みと憎しみを分け与えし古妖、名付けて残酷四天王!』
「ふざけないでください! そんな味方を用意したところで……」
『おっと、話はまだ終わっていないぞ。これを見ろ!』
残酷大将軍が手を翳すと、獣用の檻に閉じ込められた老人たちが映った。
「村長! それに村のみんなだ!」
「なんですって!?」
檻には勝手に動く心臓のようなものが取り付けられ、どくんどくんと音をたてている。
これも四つ檻はそれぞれ分けられ、丁寧なことに爆弾も分けて設置されていた。
『これは我が生み出した生体爆弾だ。こいつが爆発すれば、このおいぼれたちはどうなるかな……?』
「貴様……!」
『制限時間を設けて置いた。時間内に四天王を全て倒しきることなどできまい。誰を見捨てるのか、考えておくんだな! フハハハハ! ハーッハッハッハッハ!』
私立病院の救出を終えたFIVE覚者とカクセイジャーたち。
留守にした村が気になるという時雨の言葉もあって、彼らは村へと戻ってきた。
そんな彼らを待っていたのは……!
『フハハハハハ! ご苦労だったカクセイジャーとその協力者諸君!』
空中に浮かび上がる残酷大将軍。実態では無い。以前にも出た幻影だ。
「残酷大将軍、なんてことしやがる!」
「あんな卑劣なまね、絶対にゆるさないの」
「実体を表わせ、ぶちのめしてやるぜ!」
『そう焦るな。お前たちの相手は我が分身たちがしてくれよう』
「分身やて?」
幻影に新たなる姿が浮かび上がる。
数は四つ。
それぞれ岩の巨人、牙や角を大量にはやした熊、中身のない鎧武者、骨を無数に継ぎ合わせたような巨大骸骨。
『彼らは我が恨みと憎しみを分け与えし古妖、名付けて残酷四天王!』
「ふざけないでください! そんな味方を用意したところで……」
『おっと、話はまだ終わっていないぞ。これを見ろ!』
残酷大将軍が手を翳すと、獣用の檻に閉じ込められた老人たちが映った。
「村長! それに村のみんなだ!」
「なんですって!?」
檻には勝手に動く心臓のようなものが取り付けられ、どくんどくんと音をたてている。
これも四つ檻はそれぞれ分けられ、丁寧なことに爆弾も分けて設置されていた。
『これは我が生み出した生体爆弾だ。こいつが爆発すれば、このおいぼれたちはどうなるかな……?』
「貴様……!」
『制限時間を設けて置いた。時間内に四天王を全て倒しきることなどできまい。誰を見捨てるのか、考えておくんだな! フハハハハ! ハーッハッハッハッハ!』

■シナリオ詳細
■成功条件
1.四天王を1体でも倒すこと
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
第三回、いよいよクライマックスも見えて参りました。
●残酷四天王と爆弾について
調べた情報によると、残酷大将軍が仕掛けた四つの爆弾はそれぞれ対応した四天王を倒すことで消滅します。
しかしカクセイジャーがどう頑張っても一体を倒すのが限界です。
皆さんの力を合わせることで、全ての四天王を倒すことが可能になるかも知れません。
四天王は別々に離れた場所で待ち構えています。
●誰かを見捨てる場合
戦力を集中させ四天王一体を確実に倒します。F.i.V.E覚者8人とカクセイジャー5人の戦力を集中させれば安全に倒すことができますが、距離的スタミナ的な問題も含めてギリギリ救えて2グループ。最悪1グループといった所です。
●全員を救う場合
戦力をおよそ均等にわけます。FIVE覚者2名とカクセイジャー1~2名のグループを四つ作り、それぞれの四天王へ同時に挑みます。
難易度は高くなりますが、もし成功したら全員を助けることができるでしょう。
●残酷四天王の戦闘力
残酷大将軍の力を分け与えられた古妖です。
妖とは違うものですが、想定としては対妖戦闘と同じです。
・『岩の巨人』ゴーレム
非常に硬い装甲と特殊属性の岩弾丸やハンマーを使います。
物理攻撃が通用しずらく、特殊攻撃および特殊防御メインのチームを組むとよいでしょう。
・『荒ぶる猛獣』デスベア
高い体力と腕力を備えた猛獣です。爪による斬撃や体当たりを使います。
スタミナがカギになるので、体力や氣力に自信があるチームがお勧めです。
・『怨念の鎧』うらみ丸
鎧だけで生み出された妖怪です。刀による格闘攻撃がメインで、特殊攻撃に対して強い耐性を持っています。
物理攻撃および物理防御メインのチームを組むとよいでしょう。
・『死の憎しみ』タタラ骸骨
人骨を大量に寄せ集めたような巨大骸骨です。特殊攻撃に態勢を持ち、憎しみの人魂を炎に変えてけしかけてきます。
人魂は敵ユニットとしてカウントされるので、一気に雑魚敵をなぎ払えるチームが有効でしょう。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年02月04日
2016年02月04日
■メイン参加者 8人■

●犠牲と正義
残酷大将軍の罠によって捕らわれた村人たち。
立ち塞がる残酷四天王。
命の取捨選択を迫る残酷大将軍に対し、彼らは全てを救うことを選択した。
全てを救う。
言葉にするのは簡単だが、失敗すれば全てを失う危険な選択である。
しかし誰一人として、振り返ることはなかった。
かくして四つに分かれたF.i.V.Eチームとカクセイジャーたちは、それぞれの残酷四天王へと挑むのだった。
●VS『岩の巨人』ゴーレム
「イオ・ブルチャーレ!」
『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)の放った火炎弾が岩の巨人に命中。激しい爆発を起こす。
だがしかし。
「フハハハハ! 弱い弱い、貴様の力はその程度か!」
ゴーレムにはヒビひとつ入っていない。岩から抜き出したハンマーを振り上げると、地面へと叩き付けた。吹き上がった大量の岩が弾丸へと変わり、ラーラへと殺到する。
「うっ!」
直撃を受けたラーラは火花をあげて吹き飛んだ。
岩場にぶつかりそうになった途端、横から誰かがラーラをキャッチしていった。
「ビスコッティ、しっかりして」
飛行状態の『凛の雫花』宇賀神・慈雨(CL2000259)である。ラーラに癒しの滴を注入すると、高い足場へと下ろした。
「大丈夫です。人質をとって、それを選ばせるなんて卑劣なやり方に屈するわけにはいきません」
「……そうね」
慈雨はラーラの後ろに着地すると、護符を強く握りしめた。
「助かる命を諦めることなんてできないよ。だから」
「行きましょう、グリーンさん。ブラウンさん!」
「うん!」
ラーラと慈雨を守るように、カクセイジャー・グリーンとブラウンが現われた。
「僕の力が役に立つのなら、いくらでも使ってよ!」
グリーンはゴーレムめがけて牽制射撃を開始。
それに併せてブラウンがクワを振り上げて飛びかかる。
「おじさん、土をならすのは得意なんだ!」
クワはゴーレムの表面で弾かれたが、装甲に僅かなヒビが入る。
どうやら彼の武器には防御を崩す特性があるようだ。積極的に戦闘に参加しなかったために分からなかった才能である。
「おのれ、我が岩の鎧に傷をつけるとは……命をもって償うがいい!」
「うわあっ!?」
ハンマーをブラウンめがけて叩き付けるゴーレム。
咄嗟に防御を固めるブラウン。慈雨は急いで術式を組み上げた。
「ブラウン、下がって!」
慈雨は低空を高速で飛行。激しいカーブと共にブラウンにタックルをかけると、ハンマーの下から強制的に離脱させた。
瞬間的な重量に耐えかねて地面をバウンドして転がる慈雨とブラウン。
その後ろで巨大なハンマーが大地を粉砕する。
「ラーラさん、今だ!」
ハンマーを再び上げようとするゴーレムに射撃を加えるグリーン。
動きが鈍った隙を狙って、ラーラはハンマーの上へと駆け上った。
「良い子には甘い焼き菓子を!」
ハンマーの制御を諦めてラーラを掴み取ろうとするゴーレム。
その腕に掴まれ、振り上げられるラーラ。
「悪い子には石炭を!」
頭上高く振り上げ、地面へと叩き付けられんとしたその瞬間。
「イオ・ブルチャーレ!」
ラーラは至近距離から火炎弾を連射した。
弾はゴーレムに直撃。装甲についたヒビが瞬く間に広がり、ゴーレムは激しく爆発した。
爆風によって吹き飛ばされ、地面へと墜落するラーラ。
傷だらけの身体を起こし、ただの岩山と化したゴーレムを見上げた。
●VS『荒ぶる猛獣』デスベア
「見つけたぞ。村の連中を放せ!」
ブルーは抜刀し、デスベアへと斬りかかった。
対するデスベアは軽々とブルーの刀を掴み、へし折ってしまった。
「何――ぐあっ!?」
凶悪な爪をはやして振るうデスベア。
ブルーは激しい火花をあげて転がった。
「くそ、こうなったら俺だけでも爆弾を――」
「待つの」
掛けだそうとしたブルーの腕を、覚醒した『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)が掴んで止めた。
「あのねブルー、前に出るだけが戦いじゃないの」
「うるさい偽幼女め、その手を離――ぐふっ!?」
顔面にころんぱんちが入った。
真っ平にならされた上に七色の指輪がついた拳である。
「回復や補助が必要なの。お願い」
「……はい」
「誰かを見捨てるなんてかわいくない選択肢、ころんたちにあるわけないの。全員助ける!」
杖を構え、自らを飴色のベールで包んでいくころん。
その一方で、賀茂 たまき(CL2000994)が日めくりカレンダーのような護符を鞄から引っ張り出していた。
そのページを全部ばらしてまき散らすと、ページがたまきの腕や足へと張り付いていった。
「誰かを犠牲にして誰かが助かっても、私は心から喜べません。皆幸せになれません。ですから――」
「だから、その程度の人数で戦おうというのか」
デスベアは残酷大将軍と同じ声でたまきを嘲笑った。
大量の護符によって武装した腕を無理矢理叩き付けるたまき。
「その通りです!」
「笑止!」
デスベアのタックルと正面から激突。パワーは拮抗したかに思われたが、たまきは力負けして押し込まれていく。
「耐えるのたまき。ブルー!」
「はい!」
ブルーがたまきの両肩を掴み、ころんがブルーの両肩を掴む。
三人が組み合わさった状態で、デスベアのタックルをなんとか押し止めた。
ころんは術式を発動。暖かいシナモンの香りがたまきを包み込む。
ブルーも術式を発動。爽やかなミントの香りがたまきを更に包み込む。
たまきは両腕をデスベアに押しつけると、強く踏ん張った。
前髪がぶわりとあがり、眉尻を上げたたまきの表情が露わとなる。
「皆さんを助けたい。皆さんの幸せを守りたい。それが私の願い! 力!」
「ぐ、ぐぬ!?」
デスベアのタックルが止められただけではない。デスベアはショベルカーに押された自動車のように押し込まれていった。
「馬鹿な! 矮小な人間がたった三人集まった程度で……!」
「たった三人じゃありません!」
たまきの脳裏には、いや彼女の周りには、沢山の想いが集まっていた。
別の四天王へと向かった仲間たち。この地に来れなかった仲間たち。村の皆や病院で知り合った人々。
全ての想いがたまきの腕と足に力を与えていた。
「デスベア、あなたは負けるの。皆の想いと願いに」
「認めん!」
たまきとブルー、そしてころんの列車はデスベアを完全に圧倒し、民家の壁を次々に破壊して進んでいく。
最後には巨大な木に激突し、デスベアは押しつぶされた。
「認めんぞおおおおおおおおお!」
エネルギーの粒子となって爆発するデスベア。
自身も気力と体力を使い果たしたたまきは、ばったりと倒れて目を瞑った。
●VS『死の憎しみ』タタラ骸骨
「脆弱な人間どもよ、ここを諦めて逃げたらどうだ!」
巨大な骨の集合体。タララ骸骨は腕を振ると、大量の人魂を生み出した。
炎となった人魂がイエローを囲みにかかる。
「あぶねえ!」
あえて人魂の輪へと飛び込んだ『デジタル陰陽師』成瀬 翔(CL2000063)はスマートフォンをタップ。画面から輝く雷獣の文字が天空へ投射される。
「手伝えイエロー、こいつらを蹴散らすぞ!」
「分かったんだな……カレーサンダー!」
イエローは二本のスプーンを打ち鳴らすと、激しいスパークを引き起こした。
火花と雷が襲いかかり、周囲の人魂を次々破壊していく。
「柾さん、今だ!」
「よし!」
人魂のガードが消えた瞬間を狙ってダッシュをかける『百合の追憶』三島 柾(CL2001148)。
彼の脳裏にはある光景が浮かんでいた。
村人の犠牲を選択しろと言われたとき、柾たちは真っ先に全員を助けることを選んだ。
しかしここはカクセイジャーたちの村でもある。彼らの気持ちを確かめなくては……そう思った柾に、カクセイジャーもまた全員の命を選択したのだ。
「今の俺たちならきっとできる」
タタラ骸骨が腕を叩き付けてくる。
サイドスウェーとサイドステップを組み合わせた直角機動で回避。更に直角に曲がって前進すると、相手の足部分を狙って拳を叩き付けた。
物理防御には弱いのか、結合していた骨が破壊されてタタラ骸骨が膝を突いた。
「無駄なことだ。我が無念はまだまだ晴らされていない!」
更に大量の人魂を生み出すタタラ骸骨。
全ての人魂がひとつになり、柾へとぶつかってくる。
それは人々が恨みや憎しみを叩き付ける様に似て、柾の魂を直接殴りつけるものだった。
ガード姿勢でも感じる腹の痛み。
しかし柾はその場に踏ん張った。
「お前たちの憎しみは誰へのものだ」
「なんだと?」
「俺たちはすべてを救う」
「だから無理だと言っているのだ。我がいるかぎり――」
「勘違いするなよ。『すべて』と言ったんだ」
ガードを解いて、柾はタタラ骸骨を指さした。
「俺たちは、お前も救ってみせる」
「ぐっ……!」
腕を振り上げるタタラ骸骨。
その途端、イエローの電撃が人魂を一斉に破壊。開いた視界を逃すこと無く翔が二丁拳銃を引き抜いた。
「オレにだって分かるぜ。長い年月かけて溜まった怨念は生半可なもんじゃねー。けど……!」
二丁拳銃を思い切り乱射。
タタラ骸骨の胸や顔面へ着弾し、振り上げた腕を一瞬だけ躊躇させた。
「困難な道でもやらなきゃいけねーのが、ヒーローだろ! なあ柾さん!」
「……!」
柾は歯を食いしばった。
片膝立ち姿勢のタタラ骸骨を駆け上り、力強く跳躍。
タタラ骸骨の顔面めがけ、超高熱を纏った蹴りを叩き込む。
粉砕されるドクロ。それがきっかけになったのか、タタラ骸骨の全身の結合が解け、ばらばらと欠片が落ちていった。
着地し、イエローと翔を振り返る柾。
イエローはカレー片手に頷き、翔は親指を立てて笑った。
●VS『怨念の鎧』うらみ丸
「くたばれい、怨憎恨み斬り!」
空を走る刀の軌跡。
それだけで、『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)は火花を散らして吹き飛ばされた。
彼女だけではない。『柔剛自在』榊原 時雨(CL2000418)とレッドもひとまとめにして薙ぎ払われる。
「なんて強さだ。ただの剣術じゃないぞ」
「感情のエネルギーを剣に乗せとるんやな。まともに食らったらただじゃ済まんよ」
「だからなんだ!」
聖華はふたふりの刀を十字に構えた。
「お前の復讐相手はもういないはずだろ。無関係な村人を巻き込むんじゃねー!」
「無関係だと? 関係おおありだ。この土地の人間を末代まで恨み尽くし、呪い尽くし、苦しめ尽くすのが我が望みよ!」
「「そんな勝手は許さない!」」
聖華はスピンジャンプによる連続斬りを繰り出した。
刀を斜めに構えて二発とも打ち払ううらみ丸。
「そこだ!」
背後に回って上段斬りを繰り出すレッドだが、うらみ丸は刀を肩越しに背中へ回してガード。振り向きざまにレッドを切り払った。
「まったく……いちいちやり方の甘い連中やね、っと!」
斬撃直後のタイミングを狙って薙刀の突きを入れる時雨。
飛び退くうらみ丸へ更に踏み込み、回転ステップで斬りつける。
うらみ丸は剣の腹に手を添えて薙刀を受け止めると、勢いをつけて押しのけた。
「手強い敵やな、ほんとに」
「当然だ。術を弾く鎧と、敵の剣を寄せ付けぬ剣術。貴様には一生かかっても勝てぬ相手よ! さっさと諦めて仲間のもとへ行くが良い。貴様らも村人も、まとめて死ぬだけだぞ?」
「誰が諦めるか!」
聖華がクロスした剣を叩き付け、うらみ丸はそれを刀でガードした。
「正義の味方だ。悪をぶっ飛ばして全員救ってハッピーエンドだ!」
「フン、きれい事を! 口ではなんとでも言えるわ!」
「大体同感やけども――」
時雨はすとんと片膝立ち姿勢へシフトすると、薙刀を力強く振り込んだ。狙いはうらみ丸の足関節。これを裏から砕きにかかるのだ。
まともに食らえば致命的。咄嗟に剣を地面に突き立ててガードをはかるが、時雨はそれを見てニヤリと笑った。
「もろおたで」
「――しまった!」
力強く地面に立てた剣はすぐには抜けない。
「決めるぜレッド!」
「応!」
聖華の十字斬りが炸裂。鎧を破壊され、うらみ丸は思わず刀を放して後じさりした。
腰を折って跳び馬になる聖華。その上を背中をあわせて転がるように飛び越え、レッドは回転と体重を乗せた全力斬りを叩き込んだ。
かぶとが砕けるうらみ丸。
両手でなんとか形を保とうと押さえつけるが……。
「悪いけど、終わりや」
時雨がざっくりと薙刀を突き刺し、そして引き抜いた。
「ば、馬鹿な、積年の恨みを込めたこの剣が、若造ごときに……何者だ、貴様ら!」
「知ってるだろ」
やがて形を保てなくなったうらみ丸は内側から爆発し、木っ端みじんに散らばっていく。
聖華は笑ってこう言った。
「俺たちは、ヒーローだ!」
●次回、最終回! 五行戦隊カクセイジャーは!
『こうなれば村の全てを破壊し尽くすまでよ!』
『なんて巨大な古妖……こんなの、勝てるわけない』
『それでも守りたいんだろ』
『力を貸してくれ、ファイヴ戦隊のみんな!』
『五行戦隊、カクセイジャー!』
残酷大将軍の罠によって捕らわれた村人たち。
立ち塞がる残酷四天王。
命の取捨選択を迫る残酷大将軍に対し、彼らは全てを救うことを選択した。
全てを救う。
言葉にするのは簡単だが、失敗すれば全てを失う危険な選択である。
しかし誰一人として、振り返ることはなかった。
かくして四つに分かれたF.i.V.Eチームとカクセイジャーたちは、それぞれの残酷四天王へと挑むのだった。
●VS『岩の巨人』ゴーレム
「イオ・ブルチャーレ!」
『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)の放った火炎弾が岩の巨人に命中。激しい爆発を起こす。
だがしかし。
「フハハハハ! 弱い弱い、貴様の力はその程度か!」
ゴーレムにはヒビひとつ入っていない。岩から抜き出したハンマーを振り上げると、地面へと叩き付けた。吹き上がった大量の岩が弾丸へと変わり、ラーラへと殺到する。
「うっ!」
直撃を受けたラーラは火花をあげて吹き飛んだ。
岩場にぶつかりそうになった途端、横から誰かがラーラをキャッチしていった。
「ビスコッティ、しっかりして」
飛行状態の『凛の雫花』宇賀神・慈雨(CL2000259)である。ラーラに癒しの滴を注入すると、高い足場へと下ろした。
「大丈夫です。人質をとって、それを選ばせるなんて卑劣なやり方に屈するわけにはいきません」
「……そうね」
慈雨はラーラの後ろに着地すると、護符を強く握りしめた。
「助かる命を諦めることなんてできないよ。だから」
「行きましょう、グリーンさん。ブラウンさん!」
「うん!」
ラーラと慈雨を守るように、カクセイジャー・グリーンとブラウンが現われた。
「僕の力が役に立つのなら、いくらでも使ってよ!」
グリーンはゴーレムめがけて牽制射撃を開始。
それに併せてブラウンがクワを振り上げて飛びかかる。
「おじさん、土をならすのは得意なんだ!」
クワはゴーレムの表面で弾かれたが、装甲に僅かなヒビが入る。
どうやら彼の武器には防御を崩す特性があるようだ。積極的に戦闘に参加しなかったために分からなかった才能である。
「おのれ、我が岩の鎧に傷をつけるとは……命をもって償うがいい!」
「うわあっ!?」
ハンマーをブラウンめがけて叩き付けるゴーレム。
咄嗟に防御を固めるブラウン。慈雨は急いで術式を組み上げた。
「ブラウン、下がって!」
慈雨は低空を高速で飛行。激しいカーブと共にブラウンにタックルをかけると、ハンマーの下から強制的に離脱させた。
瞬間的な重量に耐えかねて地面をバウンドして転がる慈雨とブラウン。
その後ろで巨大なハンマーが大地を粉砕する。
「ラーラさん、今だ!」
ハンマーを再び上げようとするゴーレムに射撃を加えるグリーン。
動きが鈍った隙を狙って、ラーラはハンマーの上へと駆け上った。
「良い子には甘い焼き菓子を!」
ハンマーの制御を諦めてラーラを掴み取ろうとするゴーレム。
その腕に掴まれ、振り上げられるラーラ。
「悪い子には石炭を!」
頭上高く振り上げ、地面へと叩き付けられんとしたその瞬間。
「イオ・ブルチャーレ!」
ラーラは至近距離から火炎弾を連射した。
弾はゴーレムに直撃。装甲についたヒビが瞬く間に広がり、ゴーレムは激しく爆発した。
爆風によって吹き飛ばされ、地面へと墜落するラーラ。
傷だらけの身体を起こし、ただの岩山と化したゴーレムを見上げた。
●VS『荒ぶる猛獣』デスベア
「見つけたぞ。村の連中を放せ!」
ブルーは抜刀し、デスベアへと斬りかかった。
対するデスベアは軽々とブルーの刀を掴み、へし折ってしまった。
「何――ぐあっ!?」
凶悪な爪をはやして振るうデスベア。
ブルーは激しい火花をあげて転がった。
「くそ、こうなったら俺だけでも爆弾を――」
「待つの」
掛けだそうとしたブルーの腕を、覚醒した『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)が掴んで止めた。
「あのねブルー、前に出るだけが戦いじゃないの」
「うるさい偽幼女め、その手を離――ぐふっ!?」
顔面にころんぱんちが入った。
真っ平にならされた上に七色の指輪がついた拳である。
「回復や補助が必要なの。お願い」
「……はい」
「誰かを見捨てるなんてかわいくない選択肢、ころんたちにあるわけないの。全員助ける!」
杖を構え、自らを飴色のベールで包んでいくころん。
その一方で、賀茂 たまき(CL2000994)が日めくりカレンダーのような護符を鞄から引っ張り出していた。
そのページを全部ばらしてまき散らすと、ページがたまきの腕や足へと張り付いていった。
「誰かを犠牲にして誰かが助かっても、私は心から喜べません。皆幸せになれません。ですから――」
「だから、その程度の人数で戦おうというのか」
デスベアは残酷大将軍と同じ声でたまきを嘲笑った。
大量の護符によって武装した腕を無理矢理叩き付けるたまき。
「その通りです!」
「笑止!」
デスベアのタックルと正面から激突。パワーは拮抗したかに思われたが、たまきは力負けして押し込まれていく。
「耐えるのたまき。ブルー!」
「はい!」
ブルーがたまきの両肩を掴み、ころんがブルーの両肩を掴む。
三人が組み合わさった状態で、デスベアのタックルをなんとか押し止めた。
ころんは術式を発動。暖かいシナモンの香りがたまきを包み込む。
ブルーも術式を発動。爽やかなミントの香りがたまきを更に包み込む。
たまきは両腕をデスベアに押しつけると、強く踏ん張った。
前髪がぶわりとあがり、眉尻を上げたたまきの表情が露わとなる。
「皆さんを助けたい。皆さんの幸せを守りたい。それが私の願い! 力!」
「ぐ、ぐぬ!?」
デスベアのタックルが止められただけではない。デスベアはショベルカーに押された自動車のように押し込まれていった。
「馬鹿な! 矮小な人間がたった三人集まった程度で……!」
「たった三人じゃありません!」
たまきの脳裏には、いや彼女の周りには、沢山の想いが集まっていた。
別の四天王へと向かった仲間たち。この地に来れなかった仲間たち。村の皆や病院で知り合った人々。
全ての想いがたまきの腕と足に力を与えていた。
「デスベア、あなたは負けるの。皆の想いと願いに」
「認めん!」
たまきとブルー、そしてころんの列車はデスベアを完全に圧倒し、民家の壁を次々に破壊して進んでいく。
最後には巨大な木に激突し、デスベアは押しつぶされた。
「認めんぞおおおおおおおおお!」
エネルギーの粒子となって爆発するデスベア。
自身も気力と体力を使い果たしたたまきは、ばったりと倒れて目を瞑った。
●VS『死の憎しみ』タタラ骸骨
「脆弱な人間どもよ、ここを諦めて逃げたらどうだ!」
巨大な骨の集合体。タララ骸骨は腕を振ると、大量の人魂を生み出した。
炎となった人魂がイエローを囲みにかかる。
「あぶねえ!」
あえて人魂の輪へと飛び込んだ『デジタル陰陽師』成瀬 翔(CL2000063)はスマートフォンをタップ。画面から輝く雷獣の文字が天空へ投射される。
「手伝えイエロー、こいつらを蹴散らすぞ!」
「分かったんだな……カレーサンダー!」
イエローは二本のスプーンを打ち鳴らすと、激しいスパークを引き起こした。
火花と雷が襲いかかり、周囲の人魂を次々破壊していく。
「柾さん、今だ!」
「よし!」
人魂のガードが消えた瞬間を狙ってダッシュをかける『百合の追憶』三島 柾(CL2001148)。
彼の脳裏にはある光景が浮かんでいた。
村人の犠牲を選択しろと言われたとき、柾たちは真っ先に全員を助けることを選んだ。
しかしここはカクセイジャーたちの村でもある。彼らの気持ちを確かめなくては……そう思った柾に、カクセイジャーもまた全員の命を選択したのだ。
「今の俺たちならきっとできる」
タタラ骸骨が腕を叩き付けてくる。
サイドスウェーとサイドステップを組み合わせた直角機動で回避。更に直角に曲がって前進すると、相手の足部分を狙って拳を叩き付けた。
物理防御には弱いのか、結合していた骨が破壊されてタタラ骸骨が膝を突いた。
「無駄なことだ。我が無念はまだまだ晴らされていない!」
更に大量の人魂を生み出すタタラ骸骨。
全ての人魂がひとつになり、柾へとぶつかってくる。
それは人々が恨みや憎しみを叩き付ける様に似て、柾の魂を直接殴りつけるものだった。
ガード姿勢でも感じる腹の痛み。
しかし柾はその場に踏ん張った。
「お前たちの憎しみは誰へのものだ」
「なんだと?」
「俺たちはすべてを救う」
「だから無理だと言っているのだ。我がいるかぎり――」
「勘違いするなよ。『すべて』と言ったんだ」
ガードを解いて、柾はタタラ骸骨を指さした。
「俺たちは、お前も救ってみせる」
「ぐっ……!」
腕を振り上げるタタラ骸骨。
その途端、イエローの電撃が人魂を一斉に破壊。開いた視界を逃すこと無く翔が二丁拳銃を引き抜いた。
「オレにだって分かるぜ。長い年月かけて溜まった怨念は生半可なもんじゃねー。けど……!」
二丁拳銃を思い切り乱射。
タタラ骸骨の胸や顔面へ着弾し、振り上げた腕を一瞬だけ躊躇させた。
「困難な道でもやらなきゃいけねーのが、ヒーローだろ! なあ柾さん!」
「……!」
柾は歯を食いしばった。
片膝立ち姿勢のタタラ骸骨を駆け上り、力強く跳躍。
タタラ骸骨の顔面めがけ、超高熱を纏った蹴りを叩き込む。
粉砕されるドクロ。それがきっかけになったのか、タタラ骸骨の全身の結合が解け、ばらばらと欠片が落ちていった。
着地し、イエローと翔を振り返る柾。
イエローはカレー片手に頷き、翔は親指を立てて笑った。
●VS『怨念の鎧』うらみ丸
「くたばれい、怨憎恨み斬り!」
空を走る刀の軌跡。
それだけで、『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)は火花を散らして吹き飛ばされた。
彼女だけではない。『柔剛自在』榊原 時雨(CL2000418)とレッドもひとまとめにして薙ぎ払われる。
「なんて強さだ。ただの剣術じゃないぞ」
「感情のエネルギーを剣に乗せとるんやな。まともに食らったらただじゃ済まんよ」
「だからなんだ!」
聖華はふたふりの刀を十字に構えた。
「お前の復讐相手はもういないはずだろ。無関係な村人を巻き込むんじゃねー!」
「無関係だと? 関係おおありだ。この土地の人間を末代まで恨み尽くし、呪い尽くし、苦しめ尽くすのが我が望みよ!」
「「そんな勝手は許さない!」」
聖華はスピンジャンプによる連続斬りを繰り出した。
刀を斜めに構えて二発とも打ち払ううらみ丸。
「そこだ!」
背後に回って上段斬りを繰り出すレッドだが、うらみ丸は刀を肩越しに背中へ回してガード。振り向きざまにレッドを切り払った。
「まったく……いちいちやり方の甘い連中やね、っと!」
斬撃直後のタイミングを狙って薙刀の突きを入れる時雨。
飛び退くうらみ丸へ更に踏み込み、回転ステップで斬りつける。
うらみ丸は剣の腹に手を添えて薙刀を受け止めると、勢いをつけて押しのけた。
「手強い敵やな、ほんとに」
「当然だ。術を弾く鎧と、敵の剣を寄せ付けぬ剣術。貴様には一生かかっても勝てぬ相手よ! さっさと諦めて仲間のもとへ行くが良い。貴様らも村人も、まとめて死ぬだけだぞ?」
「誰が諦めるか!」
聖華がクロスした剣を叩き付け、うらみ丸はそれを刀でガードした。
「正義の味方だ。悪をぶっ飛ばして全員救ってハッピーエンドだ!」
「フン、きれい事を! 口ではなんとでも言えるわ!」
「大体同感やけども――」
時雨はすとんと片膝立ち姿勢へシフトすると、薙刀を力強く振り込んだ。狙いはうらみ丸の足関節。これを裏から砕きにかかるのだ。
まともに食らえば致命的。咄嗟に剣を地面に突き立ててガードをはかるが、時雨はそれを見てニヤリと笑った。
「もろおたで」
「――しまった!」
力強く地面に立てた剣はすぐには抜けない。
「決めるぜレッド!」
「応!」
聖華の十字斬りが炸裂。鎧を破壊され、うらみ丸は思わず刀を放して後じさりした。
腰を折って跳び馬になる聖華。その上を背中をあわせて転がるように飛び越え、レッドは回転と体重を乗せた全力斬りを叩き込んだ。
かぶとが砕けるうらみ丸。
両手でなんとか形を保とうと押さえつけるが……。
「悪いけど、終わりや」
時雨がざっくりと薙刀を突き刺し、そして引き抜いた。
「ば、馬鹿な、積年の恨みを込めたこの剣が、若造ごときに……何者だ、貴様ら!」
「知ってるだろ」
やがて形を保てなくなったうらみ丸は内側から爆発し、木っ端みじんに散らばっていく。
聖華は笑ってこう言った。
「俺たちは、ヒーローだ!」
●次回、最終回! 五行戦隊カクセイジャーは!
『こうなれば村の全てを破壊し尽くすまでよ!』
『なんて巨大な古妖……こんなの、勝てるわけない』
『それでも守りたいんだろ』
『力を貸してくれ、ファイヴ戦隊のみんな!』
『五行戦隊、カクセイジャー!』
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
