狙われた翼人の少女
【攫ウ者達】狙われた翼人の少女


●なんか悪寒が……
 そこは、五麟市。『F.i.V.E.』の拠点となる五麟学園を擁する都市だ。
 『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)は、私立五麟学園の中等部に通っている。この春から、高校生となる予定だ。
 朝から母親の代わりに食事を作り、学校へと登校。授業を終えたら、『F.i.V.E.』へと直行し、仕事をいくつか済ませて下校。帰宅後はまた、母親と共に家事を手伝い、宿題など勉学に励んでから就寝というのが、静音の一日だ。
 『F.i.V.E.』に来てからというもの、静音の生活はほとんど五麟学園周辺と自宅の往復で日々が過ぎている。
 そんな静音だが、ある日、何かの視線が自分に向けられているのを感じる。丁度、『F.i.V.E.』から五輪学園東側の住宅地にある自宅へと帰宅するところだった。
「…………?」
 なんとなく、誰かに見られている気がする。何らかのスキルを発動できれば、その正体が分かったかもしれないが。残念ながら、静音はそれを感知できるスキルを持ってはいない。あくまでも勘だ。
「何でしょうか。この悪寒は……」
 それでも、自身の直感に間違いはないと彼女は考える。
 静音は明日、顔見知りの夢見の少女、もとい、少年に尋ねようと決めた。

●悪寒の正体は
 翌日――。
 『F.i.V.E.』向かった静音は自身の直感を信じ、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)に、何か夢見で視えなかったかと尋ねていた。
「おそらく、静音の予感は正しいと思うのじゃ」
 けいが夢見の力で観たところでは、何者かが静音を狙っているのは間違いないようだ。
「静音を囲む4人の……男達の姿が見えたのじゃ」
 何かを企む男達。彼らの狙いは、一体何なのか。
「身代金目当てでしょうか。それとも……」
「覚者の力だと、うちは思うのじゃ」
 男のうち、2人は静音と同じく翼を持っていた。おそらく、彼らは隔者だろう。
 いずれにせよ、穏やかな話ではない。静音をしばらく守る必要がありそうだ。

 程なく、会議室に集められた覚者達。
 彼らにはけいから、自身が夢見で視た未来視の話が語られる。
「隔者は4人じゃな。強さは皆と同等くらいだと思うのじゃ」
 数で言えば、油断さえなければ負けないとは思うが、敵の狙いは静音だ。強引に彼女を攫って逃げ出す可能性も否定できない。
 その為、今回は静音の身の安全に重点を置きたい。もちろん、素性を知る為、敵を確保できるならばそれに越したことはないのだが……。
「私は普段、『F.i.V.E.』の覚者通用門から、五麟学園東にある自宅へと帰っていますわ」
 その際、彼女は人通りの少ない路地を通る。
 同伴すると、敵は警戒して現れないものと思われる。確かに、それで静音を守ることはできるが、ずっと彼女に監視の手を割くわけにもいかない。
 できるなら、このタイミングで敵からなんらかの情報を得ておきたくはある。静音が1人で『F.i.V.E.』から帰るのを追跡することで、敵を誘い出すことができるだろう。後は、覚者の力量、作戦次第だ。
「申し訳ありませんわ。私事で護衛をお願いすることになるなんて……」
「じゃが、『F.i.V.E.』としても、覚者が捕らえられるのは本意ではないからのう」
 戦力的なことはもちろんだが、何らかの形で静音から『F.i.V.E.』の情報を得ようと狙っている可能性もある。あらゆる可能性を考えておく必要があるだろう。
「それでは、よろしくお願いしますわ」
 そうして、静音は覚者達に深々と頭を下げるのだった。


■シナリオ詳細
種別:シリーズ
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.静音が無事であること。
2.襲撃班の撃退。(生死は問わない)
3.なし
 初めましての方も、どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
 静音が何者かに付きまとわれているようです。彼女を助けて頂ければ幸いです。
 以下、補足です。

●敵
○隔者……若い4人組の男です。ここしばらく、静音をつけているようです。
・仮称、パンチ、パンチパーマの男。翼×火、ナックル、『豪炎撃』を使用。
・仮称、坊主、スキンヘッドの男。械×土、大鎚、『琴富士』を使用。
・仮称、モヒカン、モヒカン頭の男。翼×水、ハンドガン、『水龍牙』を使用。
・仮称、つっぱり、リーゼントの男。獣×木、サーベル、『非薬・紅椿』を使用。

 なお、それぞれ弐式スキル以外には、壱式スキルも3つほど、ステルスと各因子の専用技能スキルを所持しています。
 
●NPC
河澄・静音がお邪魔します。
基本的には自分で考えて行動しますが、
帰宅時における注意点などは『F.i.V.E.』を出る前に忠告できます。
戦闘においては、プレイングにて指示を出していただければと思います。

 それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年03月10日

■メイン参加者 8人■

『マジシャンガール』
茨田・凜(CL2000438)
『星唄う魔女』
秋津洲 いのり(CL2000268)
『天を翔ぶ雷霆の龍』
成瀬 翔(CL2000063)
『BCM店長』
阿久津 亮平(CL2000328)
『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)

●不安を取り去る為に
 京都府五麟市。
 この地で誘拐事件が起きるということで、『F.i.V.E.』の覚者達に緊張感が走っていた。
「『F.i.V.E.』のお膝元で起こした事件か。可能ならば、穏便に終わらせたい所だ」
 ここが『F.i.V.E.』のお膝元だと敵は知らぬのだろうか。『星狩り』一色・満月(CL2000044)はちょっとした疑問を口にする。
「そもそも、どんな理由にせよ、女の子を攫っちゃうって辺りが駄目だよね!」
「婦女子を誘拐しようなど、穏やかではありませんわね」
 『罪なき人々の盾』鐡之蔵 禊(CL2000029)、『誇り高き姫君』秋津洲 いのり(CL2000268)は今回の犯人に憤る。
「河澄さん、よく分からない4人組に狙われてるのか……」
 『BCM店長』阿久津 亮平(CL2000328)が言うように、ターゲットは静音だ。眉をひそめる彼女は、襲われる不安が半分、覚者に頼るという申し訳なさが半分といったところか。
「あらあら。シズネは確かにかわいい子だけど……。おいたは駄目よ?」
 『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)は茶目っ気交じりに、『許されるんだったら、私がかわいい子を皆……』と言いかけ、口をつぐんでいた。
「男4人で女子を狙うって、普通じゃねーってか、卑怯だよな。絶対に守りきらねーと!」
 『デジタル陰陽師』成瀬 翔(CL2000063)は、ついでに犯人を捕まえて、何を企んでいるのかを吐かせようと意気込む。
「4人組を捕まえたら、詳しく聞き出した方が良さそうだな」
 けいの話を聞いた亮平は、古妖狩りの時のように、何かの実験の為に覚者を攫おうとしている可能性もあると考えていた。
「やることは簡単だね! 蹴って正す! 悪いことを懲らしめ、言って聞かせる!」
 敵背後にどんな事情があり、組織がバックについていようとも、悲しむ仲間の為に。力強くそう主張する禊は、なんとも頼もしいお姉さんである。
「悪そうなお兄さんには、しっかりお仕置きしないとダメやと思うんよ」
「どういう目的かは解りませんが、きつくお灸を据えて差し上げなければいけませんわね!」
 誕生日を祝った大切な友達を、危険な目に遭わせたくないと茨田・凜(CL2000438)も意気込む。いのりもまた、敵を全力で相手しようと考えていた。
「本当に……嬉しいですわ」
 覚者達に頼もしさを覚える静音は、そんな本音を漏らすのである。

 『F.i.V.E.』から静音が出る前に、メンバー達は可能な限りのことを行う。
 『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)は静音の帰宅ルートを地図で確認する。その上で、予め人通りの少ない地点を確認し、要注意地点として抑えていた。
 満月はというと、『F.i.V.E.』所属の学生や、周辺住民に事件が発生することを伝達する。その上で、なるべく事件の予知された場所に近づかないように、そして、不自然でない形で行動してほしいと『F.i.V.E.』に通達を願う。
 できれば、満月は敵に関する情報も集めたかったのだが、残念ながら、敵の素性がほぼ分からぬ状況では、集めようがないというのが実情だったようだ。
 そうして、メンバーは五麟大学付属中学校校門付近に集まり、作戦を開始する。
 メンバーからの忠告として、強い匂いがある物は身に付けないで欲しいとだけ、禊からの要請があり、静音はそれに従う。その際、いのりは犬系の守護使役ガルムの『かぎわける』の力で、静音の匂いを覚えようとしていた。
「きっと皆でお守りいたしますので、ご安心くださいませ」
 いのりを含め、先行組は先に出発していく。
「静音。囮だなんて怖い思いをさせてすまん。だが俺達が居るから、安心してくれ」
 またも、表情を硬くしてしまっていた静音に、満月が声をかける。どの面さげて女子に怖い役目を背負わすのか。そんなことを考えながら。
「呼んでくれたら、すぐ助けに行く。呼ばなくても助けるがな」
 後発組と共に、満月が静音へと告げた。
「改めて、よろしくお願いしますわ」
 静音は覚者達へと丁寧に頭を下げ、先行組から距離を取ってから、彼女もまた帰宅の途につく。
 それから程なくして、後発組も静音を見失わぬよう追っていくのだった。

●誘拐犯の襲撃
 さて、先行して学校を出たのは、いのり、翔、凜、禊の4人だ。
 高校生である凜は五麟大学付属高等学校の制服を着て、下校するように見せかける。
(ホントに帰り道になりそうだけど)
 ちなみに、体操服姿が多い凜が制服を着ているのは珍しい。
 そんな凜は、感情探査で警戒を行う。焦ると精度が落ちるのではと懸念し、深呼吸を行っていたようだ。
 隣にいるいのりは凜と四方山話をしつつ、静音を匂いで位置を確認しつつ、一定距離を保つよう歩く速度を調整する。
 同じく、禊も静音に近づきすぎないよう守護使役みーくんの力で匂いを『かぎわける』。ただ、彼女は隠れるようにして移動を行っていた。
(敵の中には拳銃を使うのがいるみたいだから、近くにいれば火薬の臭いがきつくなるだろうからね)
 禊は硝煙の香りなどに注意を払い、襲撃に備える。
 翔はというと、先行を心がける。友達と下校中のフリをしてさりげなさを装いながらも、守護使役の空丸を飛ばし、『ていさつ』で怪しい人物を探す。
 彼はさらに透視を使い、物陰を見通しておかしな人物を見つけるようにと視線を走らせていた。
(静音さん、異常はない?)
 その上、送受心で静音に連絡をとる翔。できる限りのことをやろうと、彼は忙しなく動く。
(……大丈夫ですわ)
 ややぎこちなく笑う静音の後方からは、亮平、ラーラ、エメレンツィア、満月が追跡を行う。
 その中で、やや先行して班員を手引きするのはラーラだ。彼女はしのびあしを使い、気配を隠すよう意識して静音を尾行する。これも、前方に追跡者がいるという想定の上での行動だ。
 続く満月は薄暗くなって来た周囲を、暗視を使って周囲の把握に努める。
 同じく、エメレンツィア。超視力を駆使し、それらしき集団がいないかと探す。
(私なんていつも車だから、歩くのはなんだか新鮮だわ。ちょっと観光気分ね……)
 前方にいる静音と20メートルほどの距離を保ちつつ、エメレンツィアは不自然にならないように心かげて歩く。
(それにしても、毎日歩いているのね。偉いわね。……っと、見失わないようにしないと)
 考え事をしていた彼女は、静音のことを考えるうちに、危うく置いていかれそうになっていた。
 追跡班で送受心・改を使用するのは、亮平だ。彼もまた他の仲間と同じように囮役から距離を取り、守護使役による『ていさつ』を、そして、鷹の目を使い、可能な限り状況把握と、仲間との意思疎通を図る。
 そうして、静音を挟む形で要注意地点、人気のない路地までやってきた覚者達。英霊の力を引き出して力を高めるラーラが、さらなる注意を仲間に喚起していると……。やや強面の男達4人が物陰、そして上空から、ほぼ同時に現れた。
 戸惑う静音の両脇を抱える、翼持ちの男達。嫌がる静音が抵抗して、制服が多少破けてしまうが、翼人の男達は構わうことなく彼女を上空へと連れ去ろうとする。
「女の子を4人がかりで攫おうとするなんて卑劣です……。許しませんよ!」
「この女帝の前で狼藉を働こうなんて、いい度胸ね?」
 後方から駆けつけるラーラ、エメレンツィア。亮平、満月も接敵し、男達を牽制する。
 前からも、敵の出現を察したメンバーが駆けつけてくる。
 禊は問答無用と反応速度を上げつつ、リーゼントの男……つっぱりに近寄り、拳に火力を集中させ、そいつ目掛けて叩きつける!
 翔も細心の注意を払って敵の出現を警戒していたが、敵は覚者の行動をある程度は警戒しているのだろう。地上の2人、スキンヘッド……坊主とつっぱりで抑える間に、翼持ちの2人、モヒカンとパンチパーマ……パンチが静音を上空へと連れ去ろうとする。
「不埒な真似は、許しませんわ!」
 前から現れたいのりが男達へと呼びかけた。隣の凜は敵の姿を見て、頬を膨らませる。
(パンチとか坊主みたいなチンピラっぽいのばっかりで、何でイケメンお兄さんとかシブいおじさまみたいなのがいないんよ)
 そうして、覚醒した2人は、仲間の後衛へと付いた。
 彼女達の前に立つメンバー達。静音を捕らえる男達へと怒りを露わにする。
「貴様等。男の風上にも置けんな。少女1人、集るなんぞ恥ずかしいとは思わんか」
 普段は笑顔の満月だが、その表情は真剣そのものだ。静音は渡さないと、メンバー達が主張する。
 男達は多数の覚者に囲まれ、やや動揺していたが、すぐに睨みを利かせ、覚者達を威嚇してくる。
「十天がひとり! 鐡之蔵 禊、乙女を守りに推参だよ!」
「十天、一色・満月。おして参る」
 そうして、次々に名乗りを上げる覚者達。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
 ラーラもまた覚醒し、路地に響く声で叫ぶと、地上の男2人が武器を抜き、覚醒して襲い掛かってきたのだった。

●捕獲を狙うも……
 地上で覚者達を相手にする、坊主とつっぱり。そいつらは獲物を手にし、襲い掛かってくる。坊主に向けて亮平が飛びかかり、猛り狂う獣の一撃を叩きつける。
 亮平が見上げれば、敵はすでに静音を捕らえ、宙へと飛び上がろうとしている。
「静音、大丈夫だ。すぐ怖いの、終らせる」
 飛び立たせるわけにはと、満月は掌に集めた空気を熱圧縮させ、起こる衝撃を敵へと叩きつける。
 覚醒し、小学生の姿から23歳に成長した自身の姿に変身していた翔。初撃にと考えていたのは、天行スキル『脣星落霜』だったが、敵が静音を連れて飛び去ろうとしているのを見て、撃ち落とすことを優先させようとする。波動弾を飛ばしてモヒカンへと命中させ、そいつを地面へと叩き落とす。
 パンチにも波動弾は当たっており、若干怯んだ隙に静音は逃れ、宙を舞って男達から距離を取る。静音が思惑通り動いてくれたことに、翔はにっこりと微笑む。
 一方、地上では、禊がモヒカン目掛けて、目にも留まらぬ速さで蹴りを2連続で叩き込む。坊主が振りかざす大槌を、禊はさらりと躱して見せた。
「そう簡単に触らせないよ」
 彼女はにんまりと笑んで、次なる攻撃を仕掛ける。
 他の敵もまた、手にする武器やスキルを行使して襲い来る。それを前線のメンバーが受け止める後ろから、いのりは高密度の霧を発生させて、誘拐犯どもの身体能力をダウンさせようとする。
 そのいのりを含め、先行班が移動してくる静音を囲い込もうとする。
 静音を保護して安堵するのも束の間のこと。まずは、強面の男達を撃退せねばならない。
 つっぱりは、前に立つ覚者へと危険植物の毒を流し込もうとしてくる。地味に体力を削るそれが危ないと判断した凜は、毒に侵されたメンバーをすぐに、深層水の神秘の力で毒を消し去る。
 そして、逆側後方にいるエメレンツィアは前列一人一人に海のベールを纏わせて、敵の攻撃に耐える力を与える。
 その隣のラーラ。彼女の狙いも水行を操るモヒカンの翼人だ。狙いを定めて拳大の炎の塊を連続して飛ばす。モヒカンは炎によって火傷を負い、悲鳴を上げた。
 もちろん、覚者達がそれで攻撃の手を止めることはない。敵を弱らせて捕らえるべく、攻撃を続けていくのである。

 路地での戦いは続く。
 覚者達は静音を含めた先行班と後続班とで4人の怪しい男を挟み、戦いを繰り広げていた。
 向かい側にいる静音に安堵する満月。仲間が庇ってくれているからと、安心して目の前の敵の相手に専念する。
 事前の通達依頼もあってか、この路地に近づく者はいない。覚者達は襲撃犯に対し、集中して相手することができていた。
 亮平の一撃で致命効果を受けていた坊主。しかも、回復役として宛てにしていたモヒカンが集中して攻められている状況を見て、かなり苛立ちを見せる。
 本気で覚者へと襲い掛かろうと、坊主は全身を硬化させて力を溜め、亮平目掛けて大槌を叩き込んでくる。それを受け止めた亮平は、ナイフを操り、さらにそいつの身体を刻む。
 翔は改めて、脣星落霜……星のように輝く光の粒を敵へと降らせる。敵の混乱を誘うことができればと考えたが、さすがに男達はそれで怯む様子はない。
 モヒカンはハンドガンから発砲し、攻撃を仕掛けてくる。前に立つ禊は避けようとするが、そう何度も躱すのは難しい。弾丸をその身に受けながらも、敵へと踊りかかった。
(できれば、捕まえられたら早いけれど。そういう技術もないからね)
 禊はまたもモヒカンを思いっきり蹴り飛ばす。気絶させれば御の字と思うが、さすがに敵もそう易々とは沈んでくれない。
 後ろの凜は、モヒカンが放つ弾丸……流れ弾に警戒していた。うまく避けられるようにと立ち回り、彼女は仲間の回復に当たり続ける。
「ふふ、大丈夫? さあ、これでまだまだいけるわね」
 エメレンツィアも凜と手分けしつつ、仲間の回復を行っていた。回復役もうまく先行班、後続班と分かれていたこともあり、基本的には自班の支援、回復といった具合に役割分担を行っていたようだ。
 一方の敵は、覚者達を品定めするような視線を走らせる。
 モヒカンはちょっとだけ頬を赤らめ、静音を見ていたが。パンチに促され、襲い掛かる対象を変更しようとする。その対象は……、逆側にいたラーラだ。
 小柄といえば、小学生のいのりや翔も小さいが、彼らは現の因子持ち。2人とも覚醒して、大人の体格をしている。覚者の中で一番小柄な彼女ならばと、敵は狙いを定めたのかもしれない。
 だが、いのりはわずかに、その可能性を考えていた。狙いをモヒカンに定めつつ、波動弾を飛ばす。モヒカンはまたも撃ち落とされ、ラーラを狙うのは完全に失敗してしまう。
「何やってんだ、ボケェ!」
 パンチがモヒカンを叱責する。一応はパンチがこの中ではリーダーのように振舞うが、その戦闘能力はさほど変わらぬ様子。しかしながら、全員が弐式スキルを操る腕前。油断はできない。
 翔は敵陣目掛けて雷雲を呼び起こし、そこから激しい雷を落とす。
 身体に痺れを走らせた男達。ラーラはモヒカン目掛け、またも火球を連続で放った。それをまともに受けたモヒカンは完全に意識を失い、崩れ落ちた。
「チッ、引くぞ」
 それを見た他の3人は、危険を察して逃げ出そうとする。
 敵の逃走を察した亮平は、敵全体へと眠りを誘う空気に包み込む。それで眠り始めたつっぱりを、亮平を始め数人が取り押さえ始めた。
 満月は次なる目標、パンチを狙おうとするのだが、そいつはすでに空高くに舞い上がり、戦線から離れてしまっている。メンバーがつっぱり、パンチに気を取られる間に、坊主もまた路地の狭い建物の間へと逃げ込み、その場から姿を消していたのだった。

●男達の目的は……?
 2人を取り逃がしてしまったが、無事、静音を守ることはできた。
 襲われた際、制服が破けた静音を配慮し、満月は上着を被せていた。
 一方、モヒカンとつっぱりは、亮平がバッグから取り出した捕縛用のロープで縛り付けられていた。
「こいつら、何でこんな事したんかな」
 その様子を見ながら、翔は唸る。翼人が目当てなのかとも考えたが、戦闘時にモヒカンが頬を赤らめていたのを見ていた彼。静音狙いの線も否定できない。
「もしかして、不良仲間にしようとしたのか??」
 ブッと噴き出すつっぱりを、翔は睨む。
「どうしてこんなことを? 誰かに言われてやってるんですか?」
 ラーラは男2人を問いただす。静音を捕らえようとする意図、そして、その黒幕についてだ。
「この場で吐かないなら、『F.i.V.E.』に連れて帰って、吐くまで絞るだけだけどね」
 くすりと笑うエメレンツィア。そこで、頬を染めるのはつっぱりである。こいつはもしかして、女性に攻められたいタイプなのだろうか。
「ふふ、どっちが苦しいか、想像して御覧なさい。さあ、知っている事を教えなさい?」
 しかしながら、両方共に、口を割る素振りは見せない。
「何故静音様を狙ったのか、洗い浚い吐いてもらいますわ!」
 応えなければ、この場から去ったスキンヘッドと同じ頭にしてしまうと、いのりは威風を使い、男達を威圧する。
「言わないなら……。君達の頭に、油性ペンやバリカンで恥ずかしい絵や文字を描くぞ」
 亮平はペンとバリカンを手にして男達に迫る。モヒカンはともかく、髪型にこだわりを見せるつっぱりには、それがかなりのプレッシャーとなったようで。
「か、覚者を、とら……ぐふっ」
 そこで、モヒカンが体当たりをし、つっぱりを気絶させてしまう。
 ともあれ、この場で詳しい情報を聞き出すのは難しそうだ。幸い、ここは『F.i.V.E.』のお膝元である。一行は男達を本拠地へと連行し、たっぷりと締め上げることに決めたのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

リプレイ、公開です。
静音の保護、本当にありがとうございました。
残念ながら、男達全員の確保とは行きませんでしたが、
捕らえた2人から、
何か情報を引き出すことができるかもしれません。
『F.i.V.E.』に連行した後の尋問で
何か情報が得られることを期待しましょう。
MVPは、
敵の狙いをわずかでも察したあなたへ。

今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!!




 
ここはミラーサイトです