ぬめぬめざらざらした舌が……
ぬめぬめざらざらした舌が……


●このカエル……女性の敵か!
 京都県某所の路地。
 そのOLは、家路を急いでいた。
 会社の飲み会が遅くなってしまい、すっかり遅くなってしまった。タクシーを使えばよかったのだろうが、生憎と持ち金もない。仕方なく、彼女は電車を乗り継いで最寄り駅まで戻ってきていたのだが……。
「ひっ……」
 道を歩いていた女性は、突然現れたそれに驚く。
 現れたのは巨大なカエルだった。体長は2メートルほどあるだろうか。
 普通のカエルには、表情などというものがあるはずもない。しかし、そいつの口元は獲物が来たとあからさまに歪んで笑っており、飛び出た瞳がギョロギョロと相手を捉える。
「え……いやっ……!」
 女性は逃げようとするが、そのカエルからは逃れられない。カエルは舌を長く伸ばしてOLの体を縛り付けた。ぬめぬめ、そしてざらざらした舌。生暖かい感触が実に気持ち悪い。
「いやっ、離して!」
 OLは全力で叫び、そして、舌を振りほどこうとするが、カエルはものすごい力で締め付ける。そして、そいつはにやつき、OLの体をなめ回す。
 それはカエルの気が済むまで、夜通し行われたのだった……。

「……翌朝、そのOLは近所の住民によって発見されたそうです」
 淡々とした口調で語る、久方 真由美(nCL2000003)。
 妖に命を奪われずに済んだのは、幸いだったかもしれないが、精神に深い傷を負ったOLは、病院に入院したそうだ。それを聞いていた覚者の反応は様々だったが、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)はガタガタと身を震わせている。
「改めて、依頼です。このカエルの処分をお願いしますね」
 にっこりと笑う、真由美。しかし、彼女の笑いには、何か物凄く威圧する何かがある。
 確か、万里も言っていたではないか。「おねーちゃんは怒ると怖い」と。どうやらこの妖は彼女の逆鱗に触れてしまったらしいと、覚者達は悟る。
 生物系の妖に分類されるこのカエル。そのランクは2で獣並みの知性と言うことだ。
 妖は夜中、とある道を行き来する人を狙う。男性ならばすぐさま命を奪い、女性ならば、じっくりねっとりいたぶるのが確認されている。
 このカエルは主に舌を使って攻撃する。舌を鞭のように使ったり、相手を捕らえるのにも使用するようだ。
 舌を使う他にも、ぬるぬるした液体をぶっかけて相手の動きを鈍くし、大きく跳躍してのしかかり、大ダメージを与えてくるので気を付けたい。
「改めて、処分をお願いします。細胞の1つまで消し去ってくれても結構ですよ」
 うふふと笑う真由美に背を向けた覚者達。依頼の前に彼らは1つ学んだ。
 ……真由美は怒らせてはならない、と。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.妖の全滅。
2.なし
3.なし
 初めましての方も、どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
 舌を伸ばして捕らえ、ぬめった下でレロレロと……。即刻、このエロガエルの処分を願います。
 以下、詳細です。

●敵
 妖:生物系 ランク2×1体。
 カエルの妖です。以下の攻撃を使用。
・叩き付け……物近単貫1(2段、前方ダメージ大)・弱体……舌を伸ばし、鞭のように打ち付けてきます。
・縛り付け……物近列・負荷……敵の体を舌で縛り付けてしまいます。
・のしかかり……物近単・物攻プラス……大きく跳躍し、その巨体でのしかかってきます。
・ぬるぬるした液体……特遠全・鈍化……ヌメヌメした液体を口から吐きかけてきます。

●状況
 夜11時ごろ、とある路地で事件は起こります。
 OLが襲われるのを待って突入してもいいですし、その前にカエルをおびき出してもOKです。後者の場合でも、OLが戦闘中に現れる状況となります。
 道幅は人3人程が並んで通れるほど、両側の塀は3メートルほどです。

●NPC
・OL……中根・美希(なかね・みき)。20代、営業職の秘書。美人さんです。

・『頑張り屋の和風少女』河澄・静音
 今回の依頼にお邪魔します。
 何もなくとも皆様の邪魔にならないよう動きますが、効率的に動かしたい場合は指示をお願いいたします。
「河澄・静音と申します。少しでも、皆様のお力になれるよう頑張ります。よろしくお願いしますわ」

●注意
 「アラタナル」は全年齢向けのPBWです。予めご了承ください。

 それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2015年09月21日

■メイン参加者 8人■

『デウス・イン・マキナ』
弓削 山吹(CL2001121)
『豪炎の龍』
華神 悠乃(CL2000231)
『偽弱者(はすらー)』
橡・槐(CL2000732)
『マジシャンガール』
茨田・凜(CL2000438)
『ホワイトガーベラ』
明石 ミュエル(CL2000172)
『五行の橋渡し』
四条・理央(CL2000070)
『獣の一矢』
鳴神 零(CL2000669)
『見守り続ける者』
魂行 輪廻(CL2000534)

●エロガエルのおびき寄せ
 暗い路地を灯りで照らして歩いていく、『F.i.V.E.』の覚者達。
「出て来やがったな、女の大敵! そんなやつはジェノサイド!」
 女性の天敵となる妖の出現を聞き、『裏切者』鳴神 零(CL2000669)が叫ぶ。
 女性ばかりのメンバーは、この付近に現れるという妖……カエルの討伐にやってきていた。
「カエルといえば、先日動物園で見たヤドクガエルは綺麗だったなぁ」
 ウェットスーツみたいな競泳用水着に身を包む、華神 悠乃(CL2000231)。彼女が見たそのカエルは、黒に青のラインというカラーリングだったそうだ。それが自然界にいるというのは驚きだが。
「今回のは、不細工だったわね」
 一行は事前に真由美から敵の映像を見せてもらっていたが、その姿は全身にぶつぶつがあるイボガエル。妖化したことで、かなり醜悪になっていた。
「女性に卑猥なことをするエロガエルの妖ですか……」
「あらあら♪ 随分いやらしいカエルの妖ねぇ♪」
 車いすに載った橡・槐(CL2000732)も、内心では今回の相手にかなり抵抗があったようで。魂行 輪廻(CL2000534)はやや嬉しそうに語るが、それがまた、槐のテンションを下降させてしまう。
「このまま放置してこのエロガエルが大量発生していたかもと考えると、実に社会貢献度の高いお仕事だったのですね……」
 なんとか、テンションを上げようと、槐は討伐の為の理由を考えていたようだ。
「人間の女性だけを区別して嬲るとか、獣級の割には妙な知性というか、何が楽しいのだろう」
 悠乃も相手の思惑を考えていたようだが、獣の本能など理解できるはずもなく。
「思考を探ってみたくはあるけど、獣じゃ意思疎通はできなさそうだし」
「人間でもそうでなくても、自分の欲望に忠実なのは嫌いじゃないけど、だからと言って放ってはおけないわねん」
 にこにこと笑う輪廻が合いの手を入れると、『デウス・イン・マキナ』弓削 山吹(CL2001121)が溜息をついた。
「まったくもう、こういう類のやつは、妖も人間も言うほど大差ないよねぇ」
 彼女は今回の一件に備え、着替えやタオルなどを入れたバッグをあちらこちらに置いていた。それらは、別に使わないに越したことはない。ただ、カエルの飛ばす液体はおそらく、事後まで自分達を苛むだろう。
 それを想像する山吹は、実は、制服姿で依頼にやってきたのはやらしかったのではないかと、思案していたようだ。
「最近、こういう事件多くないかな。私が遭遇率高いだけ?」
「このカエル……今までにも、人を襲ったり、してるんだよね……? 許せない……。絶対、倒さなきゃ、ね……」
 そんな『Mignon d’or』明石 ミュエル(CL2000172)も、動きやすいようにと選んだ体操服にブルマ姿。手にした懐中電灯で周囲を照らす。
「いつもありがとうね☆」
 零は『ともしび』の力を使ってもらっていた守護使役のキッドに礼を言うと、キッドは嬉しそうに応じる。山吹も守護使役セリカの力で可視範囲を照らしていたようだ。
「静音ちゃんもよろしくね☆ 一緒に頑張ろ!」
「はい、よろしくお願いしますわ」
 河澄・静音(nCL2000059) は笑顔で山吹に返す。
 そこで、それまで唸りこんで考えていた四条・理央(CL2000070)が口を開いた。
「やはり、真由美さんの言う通りだね。こんな妖は研究に値せず、塵も残さず滅しないといけないね」
 理央の言葉に、メンバー達は続々と敵意を剥き出す。
「男性は問答無用で殺されてるみたいだし、欲に忠実でも女の子に酷い事をするのは駄目よねん♪」
 相手が自分だけだったら別によかったけど、と語る輪廻はちょっとだけ考えがズレているようにも思えたが。
「エロいお店のペットならともかく、その辺の女の人を襲ったりするのは絶対ゆるされないんよ」
 力説する茨田・凜(CL2000438) は、さらに続ける。
「みんなでOLさんを守って、このエロガエルは成敗するんよ」
「OLが傷つくなんて論外! 彼女が被害に遭う前に全て解決するのが、『F.i.V.E.』でしょ!」
 叫ぶ零に、皆が同意する。
「人助け優先で、いきますよ!」
 悠乃の声に応じ、8人の女性覚者が一斉に声を上げた。

 問題の路地へと一足早くたどり着いたメンバー達。
「さて、OLさんが襲われる前に、蛙を誘き出そうか。態々襲わせる必要なんてないものね」
 守護使役エンが光を灯してくれている中、悠乃が仲間達へと呼びかけると、ミュエルがそっと手を挙げた。
「アタシが囮になって……カエルを、おびき出すよ……」
「囮は任せた。出て来たら、即刻KILLなんだから」
 ミュエルが意を決して仲間達に告げると、零が全身から殺気を放つ。
(余裕があれば、隠し撮りしたかったですけれどね)
 そうすれば高く売れるかもと密かに考える槐が覚醒する。子供の姿に戻った彼女は車いすから立ちあがり、この周辺を見てくると姿を消していった。
 残るメンバーは、この場で敵の出現を警戒する。
 輪廻は迷彩を使って周囲の景色に溶け込み、不測の事態に備えてできる限りミュエルの近くで身を隠す。
 理央は結界を展開し、人払いを行っていた。
「これでOLが来なければ、万々歳なのだけれど」
 果たして、OLは現れるのかどうか……。
 不安がるミュエルが路地をそれとなく歩くのを、零は危険予知を使いながらじっと見張る。
(可愛いミュエルちゃん傷つけたら、ぶっ潰すぞこの野郎☆)
 覚者達は身を潜め、乙女の天敵が現れるのをじっと待つのである。

●ぬめぬめするエロガエル
 懐中電灯を用意し、路地をゆっくりと歩くミュエル。
 ぴちゃ、ぴちゃ……。
 そこに忍び寄る大きな影。
「ミュエルちゃん、危ない!」
 危険を感じて呼びかける零。しかし、その影は素早くミュエルの体へと長い舌を伸ばす……!
 もちろん、囮となるミュエルも黙って捕まれまいと術式を発動させ、植物のツルを呼び起こそうとする。しかし、先に、影……巨大なカエルが素早く舌を伸ばし、ミュエルの身体へと巻き付けてきた。
「ひっ……」
 怯える相手にニヤッと笑うカエル。そいつは気を良くして、ぬめった舌をミュエルの肌へにゅるりと絡みつける。
「あ……、いやっ……」
 悲鳴を上げることもできず、涙目になってしまうミュエル。彼女はされるがままになってしまう。
 そこに駆けつけてくる覚者達。とりわけ、零が真っ先に現れた。
「……女性はねえ、甘いお菓子でできてるんだよ」
 彼女が静かに語りかける間にも覚者達が1人、また1人と姿を現す。
「そんな愛らしくて甘くて、カワイイ女の子を舐めたい気持ちは分からんでもないが……」
 零の独演が続く中、周辺を歩いていた槐も韋駄天足で馳せ参じていた。
「でも、そこはやっぱり、素敵な男性が現れるまで犯してはいけない不可侵領域があんだよテメェ!!」
 突然、零の口調が変わる。それに、カエルはにやりと笑ったままで視線だけをこちらに向けてくる。
「これ以上、真由美の機嫌が斜めにならない為にも! 仲間の女子が危険にならない為にも!」
 覚者達は次々に覚醒をし、各自陣形を整えていく。
「凜も同じ水行だから、一緒にがんばろうね」
「はい……!」
 凜がそう告げると、静音も緊張の面持ちで頷く。
「この十天、鳴神。今日は本気出してやったるさかい、覚悟せぇ!!」
 いつもは開いていない右目を開く零。それは、彼女が本気になった証だった。

 覚者達はすぐさま、カエルの討伐の為に動き出す。 
 前衛に位置取る悠乃が体内の炎を燃え上がらせる。山吹も英霊の力を引き出すことで、力を得ていたようだ。
 皆が揃ったことを確認したミュエル。その頼もしさを実感した彼女はカエルの舌からなんとか逃れようと、カエルへと植物の種を植え付ける。
「……アカシアの樹より、鋭いトゲで……思いっきり、痛くして……お仕置き、だよ……」
「ゲエエエエッ」
 伸びた棘がカエルの体を貫くと、そいつは耳障りな鳴き声を上げた。
「静音ェ! 援護しろ!」
「わかりましたわ」
 零はカエルの周囲に絡みつくような霧を発生させつつ、静音へ呼びかける。同じく凜も霧を生み出す中、静音はミュエルの回復に当たり始めたようだ。
「君みたいな存在には容赦しない」
 まだ、仲間の傷は浅手だと察した理央が、飛剣で敵の動きを牽制しつつ、術符を乱れ撃った。
「女の敵はここで、完膚なきまでに潰してあげるから、覚悟しなさい」
 飛んでくる攻撃を浴びるカエルへ、中衛に立つ輪廻と槐が仕掛ける。
 仲間達が一応、体力的に問題ないことを確認した輪廻は、高速で水の礫を敵へと飛ばす。そのイボイボの体に炸裂する礫に、カエルは奇怪な声をあげる。
 そこに迫った槐。彼女が飛ばした波動弾は、カエルの体を貫く。
 カエルはそれまでニヤついていた表情を一変させる。くわっと目を吊り上げたそいつは、口からぬるぬるとした液体を覚者達へと飛ばしてきた。
 広範囲にまき散らされた液体に、覚者達は全身をぬめぬめにしてしまう。
「やだ、ぐちょぐちょ……」
 山吹は頬を赤らめる。制服のシャツから、ピンクの下着がうっすらと浮き出てしまっている。この場にいるのが男性だけだったのは、幸いか。
「いや、女の子しかいないにしたって、あんまり良くはないけどさ」
 槐も全身を滑らせつつ、その物体のダメージが想像以上だったことに驚いていた。
「被害がなくても問題ない敵なら、そもそもこのエロガエルを退治に来ていないのですよ」
「そうだね」
 山吹は足元のぬめぬめを気にかける。どうやら、さほど滑る心配はなさそうだったので、安心してカエルの対処を続けることにする。
 そこに響いて来る足音。
 その場に現れたのは、1人の女性の姿だった。

●女性の敵に鉄槌を
 何を知らずにこの場に通りがかった、OL中根。帰宅する為にこの道を通る必要がある彼女には、結界の効果がいまいち効きづらかったらしい。
「妖がいるから、退治するまで隠れてて」
「ひっ……」
 山吹が呼びかけるが、中根は聞いてはいない。不気味な妖の姿に、硬直してしまったようだ。
「皆、ちょっとごめん」
 OLの姿を確認した理央。入ってきたならば仕方ないと、彼女は仲間達へと呼びかけてからそのOLの元へと駆け寄る。
「今は妖が居て、ここは危険です。さ、こちらに避難して下さい」
 理央は中根を連れ、一度彼女が来た道の方向へと連れていった。
 しかしながら、折角罠にかかった女性を、エロガエルがみすみす見過ごすわけもなく。そいつが長い舌を伸ばしてきたのを、前に立つ悠乃がガードする。
 長く伸ばした舌は、真上から叩きつけるように繰り出されて。その一撃は槐だけでなく、後ろの輪廻にまで及ぶ。すでにぬめぬめになっていた着物姿の輪廻も、叩き付けられる舌はさらに輪廻を攻めたてる。
「ん……」
 抵抗する輪廻だが、ぬめぬめする舌の心地に嫌がる様子を見せてはいない。敢えてその舌を受け入れているようにも見えた。
 そこで、悠乃が両手に持つ槍を炎で燃え上がらせる。彼女も全身を液体で濡らしていたが、あらかじめ来ていたウェットスーツのおかげで、さほど気になってはいない様子。
「この双槍で、炎撃をざくざくといってみよう!」
 悠乃は双槍を振るい、悠乃が敵の体を焼く。ジュッという液体の焦げる音と臭いが当たりに漂った。
「諸行無常、盛者必衰。自分が常に狩る側と思うなかれ、ってね」
 その間に、理央とOLの姿はこの場からなくなっていた。せっかくの獲物を奪われ、カエルは少し苛立ちを見せていたようだ。
 その後も、メンバー達はカエルの飛ばす液体や、舌に苦しみながら攻め込む。
 前線メンバーの攻撃に続き、山吹も術符を飛ばしてガシガシ攻めていく。
 傷つくメンバーには凜が水衣での支援、そして、回復支援を行っていたが。細かい立ち回りができていないこともあり、彼女は敵の攻撃に手傷を負ってしまっていたようだ。
 体力が減った前線メンバーには、輪廻も回復に当たる。攻め込むメンバーは皆、腕に自身があると考えていた彼女は無理をすることなく、癒しの滴を振りまいていたようだ。
 見た目以上にカエルはタフでなかなか潰れない。妖のランクが2であることもあったが、回復をメインに戦うメンバー達の火力が少しばかり足りなかったのかもしれない。
 戦いは持久戦の様相を見せ、徐々に体力気力を削がれていくメンバー達。 
 ミュエルは自身の気力がなくなってきたことを実感し、ハニービー・ニードルを使ってカエルの体を突いていく。
「グエエエエッ!」
 苦しみ悶えるカエル。さすがに自身の身の危険を感じ始めたのか、辺りを見回して逃げようと考え始めていたようだ。
 そこに戻ってきた理央が飛び具を使い、さらにカエルを追いつめる。
 しかしながら、カエルも激しく抵抗を見せる。強引に突破しようとのしかかってくるが、零が大太刀の刃を上に向けて見せた。
「カエル! てめえの存在が罪だコラァ!」
「グゲエエエエッ!!」
 見事な零の反撃にカエルが悶える。零はしがみつき、その逃走を止めようとする。
 傷つく零を輪廻と凜が援護する。静音も回復に当たっていたようだ。
 槐は仲間の状態を見ながら、カエルに向き直る。
「カエルがキモくて、直視に堪えないのですよ」
 またも槐は波動弾を飛ばす。それがカエルの身体を穿ち、敵は気持ち悪い鳴き声を放つ。
「グエ、グエエエエッ!」
 それを見ていた悠乃。しばらく何かを考えていたようだが。
「……蛙の肉って、鶏肉みたいなんだってね?」
 スポーツクラブを管理している悠乃は、BBQイベントを企画したいと考えていたようで。
「この大きさなら、みんなガッツリいけるよね」
 鶏肉のように調理するなら、やっぱりから揚げがいいだろうか。
 れっつ解体と、彼女は両手の槍を握りしめる。
「行くぞ、唐揚げ! フォーク!」
 左手の槍で思いっきり敵の体を突き刺して。
「もういっちょ! ナイフ!」
 右手の槍で思いっきりその肉を引き裂く!
「ゲ、ゲ、ゲエエエエッ……」
 汚い鳴き声を上げたカエル。それが、この妖の断末魔の叫びとなったのだった。

●外道にふさわしき末路
 なんとか、妖と化したカエルの討伐を済ませた覚者一行。
 傷つく凜の主張もあって、念の為、一行はカエルの卵が残っていないかを確認するが、その確認はできなかったようだ。
「何枚かあるから、使う人どうぞ。後で、このビニール袋に入れといてね」
 それが終わると、山吹は先ほどあちらこちらに置いたカバンを集め、中に入っていたタオルを皆へと差し出す。
 理央は先ほど避難させていたOL、中根を気遣う。カエルが倒れたことで、OLは帰宅できるようになってはいたのだが。
「ごめんね、ついさっきの記憶、吸い取らせてもらうよ」
 秘匿すべきというのが、『F.i.V.E.』の現状での意向。理央は守護使役のリーちゃんに、中根のこの数分間の記憶を消去させていた。
「お姉さん、送っていくよ。この時間は、妖がわりかし活動的だしさ」
 やや呆けていた中根は、山吹に連れられて来た方向とは逆側に歩いていく。カエルは視界に入れないよう配慮して。
「……あと、良かったらでいいんだけど、シャワー貸してもらえたら助かるなぁ」
 山吹の身体はぬるぬるした物体がついている。それを可愛そうと思った中根は、山吹を連れていこうとするが、そこには同じ状況のメンバーが8人もおり、さすがに全員の受け入れはできなかった。
「あっちに銭湯を見かけたよ」
 そこで、車いすに戻った槐が合いの手を入れる。ちょっと時間が遅いが、まだ営業しているようだ。
 その間に、記憶を消された中根は、少し頭を抱えながらその場を後にしていった。
「きひ☆ 無事、カエル。なんちゃって☆」
 OLが立ち去ったのを確認した零が、茶目っ気全開でそう告げたが。内心では、しばらくカエルを見たくないと考えていたようだ。
 ただ、今もなお、カエルの残骸は残ってしまっている。
「『ぱくぱく』、使いたくない……」
 ミュエルは守護使役のレンゲさんをぎゅっと抱きしめ、ぶんぶんと首を横に振る。ミュエルもまた、身体にトラウマのような傷を敵に植え付けられてしまっていたようだ。
 ただのカエルの死骸なら放置しても害はないし、必要ならば誰かが後片付けに来るだろうしと、ミュエルは心底嫌なのか、仲間達にそう訴えていた。
「とにかく、アタシもレンゲさんも、もう触りたくないから……」
 さすがに、それを強いるわけにはいかぬと考えていたメンバー達だったが、そこで悠乃が歩み寄る。誰も引き取る様子がないならと、彼女はその残骸を集めて包んでいた。
「調理するときは、真由美さんも呼ばないとね」
 悠乃は本気で、これを食用として持ち帰るつもりらしい。
 女性の尊厳を奪おうとしたカエル。それには、外道にふさわしき末路は待っていたのである……。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

 エロガエルの妖討伐、お疲れ様でした。
 MVPは、若干トラウマを受けながら、その身を犠牲にしてくれたあなたへ。
 これで、エロガエルの犠牲になる女性がいなくなることでしょう。
 ゆっくりと体を休め、お休みくださいませ。




 
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