【FiVE村】皆で作ろうFiVEの村!
●まずは土地を手に入れよう!
某県某市。妖によってよって人が済むことができなくなった村がある。
元々の住民たちは妖発生をうけて避難し、大半は他県へ移って新しい暮らしに入っている。
元村長の話はこうだ。
「あの村を捨ててから、もう十年だ。みんなそれぞれの生活になじんでおる。今更なんとも言えんが……もし村がもどったら、少しでも人が帰ってくるじゃろうか」
そこへ立ち上がったのはスーパー公務員アタリ。ではなくF.i.V.Eである。
実質的に国へ売却された村を土地ごと買い取り、ここに新たな村を建設することにしたのだ!
「だけどまずは、住み着いてる妖をやっつけないとね!」
久方 万里(nCL2000005)はぱちんとウィンクして言った。
村には熊の動物系妖が四体出現し、内部をうろうろとしているそうだ。
こいつをやっつけないことには村を作るどころではない。
FiVE村の第一歩として、まずは安全な土地を手に入れるのだ!
「熊妖はランク1だけど腕力があるよ。囲まれたりすると大変だから、ペア分けして個別にきっちり倒そうね!」
某県某市。妖によってよって人が済むことができなくなった村がある。
元々の住民たちは妖発生をうけて避難し、大半は他県へ移って新しい暮らしに入っている。
元村長の話はこうだ。
「あの村を捨ててから、もう十年だ。みんなそれぞれの生活になじんでおる。今更なんとも言えんが……もし村がもどったら、少しでも人が帰ってくるじゃろうか」
そこへ立ち上がったのはスーパー公務員アタリ。ではなくF.i.V.Eである。
実質的に国へ売却された村を土地ごと買い取り、ここに新たな村を建設することにしたのだ!
「だけどまずは、住み着いてる妖をやっつけないとね!」
久方 万里(nCL2000005)はぱちんとウィンクして言った。
村には熊の動物系妖が四体出現し、内部をうろうろとしているそうだ。
こいつをやっつけないことには村を作るどころではない。
FiVE村の第一歩として、まずは安全な土地を手に入れるのだ!
「熊妖はランク1だけど腕力があるよ。囲まれたりすると大変だから、ペア分けして個別にきっちり倒そうね!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.熊妖を倒す
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
F.i.V.E覚者がF.i.V.E覚者の力を使って村を作って復興させていく一大シリーズ『FiVE村』が始まりました!
このシリーズは一ヶ月に一回ずつOPが公開され、前作参加者には参加優先権が付与されます。もちろん途中離脱もOK!
あなたの知恵と力が村を作っていくのです。
●第一段階:安全な土地を確保しよう
熊妖四体が離ればなれにうろついている村に入り、これらを撃破します。
相手のスペックからして一体ずつ同時に相手するのが効率的なのでペアを四組作ってコトにあたるのがベストでしょう。
村といってもほとんど集落程度のもので、殆どの家々は崩壊して更地同然となっています。雑草も生え放題です。
●村長を名乗れるぞ!
参加者八人全員の承認があれば、FiVE村の村長を一時的に名乗ることが出来ます。具体的には称号がつきます。
村長は決めずに、八人全員で『管理者』を名乗るのもアリです。
●村人が戻ってくるぞ!
元村長をはじめとしてごくごく僅かな人数が村に戻ってきます。
手始めに今回は集落の家々を建てていた大工のゲンさんがやってきます。
ですがそのためには家が必要です。この村に何を作るべきかを相談しましょう。
ちなみに資金は少ないので、まずは民家と集会場から作り始めましょう。
でもなんていうのかな。
急に無茶なこと言い出して尚且つ叶えるF.i.V.Eって、素敵やん。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年01月22日
2016年01月22日
■メイン参加者 8人■

●村を取り返せ!
「一度は捨てられた村、か」
『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は両手に霊力を展開。帯術処理をした刀の鞘を握り込むと、鍔を指で弾いた。
彼を覆う大きな影。
影は高く腕をあげ、そして叩き付けてきた。
ゲイルは素早く飛び退き、間に『罪なき人々の盾』鐡之蔵 禊(CL2000029)が滑り込む。
禊は掲げた足の裏で相手の、熊妖の打撃を支えていた。
「ふるさとが無いってのは、悲しいからね。できることをするよ!」
足のバネで熊を押しのけると、両足を入れ替えてスピンキック。熊妖はそれをのけぞりによって回避したが、禊のキックから放たれた真空刃が熊の腹を切り裂く。
うなりをあげた熊妖は破れかぶれの爪撃を繰り出してくる。
攻撃直後の禊に直撃。バランスをとってバク転で距離をとるが、腕を切り裂かれた。
「いったた……」
「交代だ。任せろ」
ゲイルは霊力の糸に治癒液を混ぜて禊の腕に巻き付けると、強制止血と治癒を同時に行なった。
前に出て刀を抜く。刀といっても斬撃神具としての性能はない。あくまで儀式剣。しかし儀式剣だからこそだせる威力もあった。
ゲイルは寒空に諸肌を脱ぎ晒すと、両手握りした刀で突きを繰り出した。
熊に届かぬ距離での突きであるがしかし、放たれた水礫の刃は熊の脳天を貫き、そして絶命させた。
一方その頃ゆかり・シャイニング(CL2001288)は。
「くらえー! 手からビーム! あっ間違えた、目からビーム!」
熊妖に向けて掌のチャクラから光線を乱射していた。
光線の直撃をうけながらもガンガン突っ込んでくる熊妖。
ゆかりはガバッと振り返って叫んだ。
「やばいですエレメンツィアさん! 四つ足の熊超早い! 『ハチミツおいしーなー』とか言ってる生物とは思えないです!」
「あらあら、仕方ないのね」
『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)は口元に手を当てて上品に笑うと、指先で空に文様を描き始めた。曇った窓に文字を書くようにして完成したそれは霧の幕となってゆかりへ巻き付いていく。
「恐れずに戦いなさいね」
「ありがとございまっ――ぬわああああああ!?」
熊妖の突撃をうけてずりずり押されていくゆかり。
手斧をがしがし叩き付けるが熊妖は止まらない。
「エレメンツィアさんヘルプ、ヘルプです!」
そろそろ限界かなと思った所で、いつの間にか側面に回り込んでいたエレメンツィアが熊妖の脇腹に手を添えた。
「よく頑張ったわね。もういいわよ」
水の槍が熊妖を貫通。元々ダメージの蓄積していた熊妖は力尽き、どっしりと地面に横たわった。
いっぽーそのころ。
「さぁ行こう我が民アッキー! きっと余の前とか歩きやすいよ? ね?」
プレイングをまんまコピペしたようなことを言って、プリンスは雑草をぷちぷち抜いていた。
「きっとこれ『いっぽーそのころ』を繰り返して戦闘してる様子を見せるフリした自己紹介タイムだから、たぶん苦戦しないから」
「どこの次元で話をしてるんですか。まあやることはやりますが……」
鈴白 秋人(CL2000565)はネクタイをきゅっと締め直し、身体の周りに水気を纏い始めた。
しかし目は瞑っている。
視界よりも勘に頼ろうという考えだ。
崩れた民家の影から熊妖が飛び出してくるが、勘を研ぎ澄ましていた秋人には丸わかりだった。何回もリハーサルを重ねた殺陣のように爪撃を紙一重でかわすと、水気を纏った手刀を叩き込む。
華麗なカウンターをうけて転倒する熊妖。
雑草を抜いてちっちゃいガーデニング遊びをしていたプリンスは地面に手を当て術式を発動。電撃が地面を走り、転倒した熊妖を電子レンジに入れすぎた生肉のように破裂させた。
「これでいいかな。他の民もそろそろ倒し終えてる頃だから、戻ろっかアッキー」
「……」
秋人は振り向き。
「アッキー……」
確認するように呟いた。
はいいっぽーそのころ!
「熊に負けるかー!」
『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)は熊妖の斬撃を刀で受け止め、キックでもって押し返した。
追撃をはかろうとする熊妖に、鋭く飛来する鎖分銅。
分銅の直撃によってよろめいた熊妖に、『蒼炎の道標』七海 灯(CL2000579)は草刈鎌片手に飛びかかった。
熊妖の喉元を的確に切断。
宙の鎖分銅をキャッチすると、熊妖の足に振り込んで巻き付けた。
引き込み、転倒させる。体格こそ違うが合気道の要領だ。軸足弾きからの押し倒しである。
「この村は、村長さんたちにとって大事な村だ。返して貰うぜ!」
聖華は倒れた熊妖に飛び乗ると、両逆手に握った刀を熊妖の脳天へと突き刺した。
びくんと痙攣し、絶命する熊妖。
灯は額の汗をぬぐうと、集合場所にしていた仮設テントへと振り返った。
「天楼院さん。皆さんがテントに戻っている頃です。私たちも戻りましょう」
既に武器は消え、刺青の輝きも消えていた。
「村作りが、始まりますよ!」
●村作りは一軒のお家から
エレメンツィアは雑草だらけの土地に噴霧器をかけて歩いていた。
珍しそうに眺めるプリンス。
「何やってんの? 雑草育ててるの?」
「逆よ。薄めた除草剤をかけて枯らしているの。一度雑草を枯らしてから土をひっくり返せば、効率的に雑草を処理できるのよ」
「へー、庭の民だったんだねメッツ」
「メッツ?」
雑草は手作業で抜いたり芝刈り機で切ったりしても地中にはった根っこからまた生えてしまう。これごと駆除する除草剤は、園芸用品店には沢山売っている。ネコソギカラースみたいなまんまな名前で。
「これが終わったら、畑をならしておきましょうか。家庭菜園レベルでも自給を始めないとね。……あら、何してるの?」
噴霧器を停止させて立ち止まるエレメンツィア。
聖華が妙な機械の下をざくざく掘っていた。
「井戸ほってんだぜ!」
「いど……」
半眼になるエレメンツィアだが、プリンスが脇から説明を加えた。
「別に新しく掘ってるわけじゃないよ。この村、元々井戸があって、それを自動で組み上げる機械も設置されてたのね。それを復旧してるとこなの。上下水のパイプも多少生きてたから、後から掘り返して修理すれば村中に電気と水を巡らせることもできると思うよ」
「意外とものを考えてるのね」
「余って王子だしね」
「それで、他の皆さんは?」
「ああ……」
土のついた手で額をぐいぐいぬぐうと、聖華は顔を上げた。
「こっちについた大工と一緒に家作ってるみたいだな」
「おう、覚者が何人もそろってるってのは本当だったんだな。こりゃはかどるぜ」
安全になったら村に来ると言っていた大工のゲンさんは、組み立てられていく家のどだいを眺めながら頷いた。
土台の上を禊が器用に歩き、木材を設置しては釘を打っていく。
ゲンさんの横では木材を切ったりという作業を秋人が担当していた。
カンナをかけるのはゲンさんの仕事である。こればっかりは職人技術がいる。
廃材からまだ使える木材やなにかを持ってきたゲイルが、ゲンさんの足下にそれらをおろした。
「覚者ってのは人間よりずっと頑丈でパワフルだからな。大工の技術と知識に俺たちのパワーを合わせれば、作業効率はかなり上がるだろう」
AAAがザッと調べた資料によると覚者は千人に一人くらいとされ、覚醒するにも色々と消耗するので非常時にそなえてポンポンやらないもんではあるが、覚者が大量に集まって夢見が二桁いるF.i.V.Eだとその常識もしばしば崩れている。そらもうやりたい放題である。
「これなら期間中にもう一件建てられるかもしれんな。村長宅兼集会場でいいんだな? 希望はあるか」
「プリンスが『しゃちほこつけたい』と言っている」
「放っておきましょう」
「今後のことは、そこで話し合ったらいいよね」
木材の設置を終えた禊が上から呼びかけ、ゲイルが下降済みの建材を投げて渡す。
その様子を見て、ゲンさんは破顔した。
「いや、こりゃ余裕で終わりそうだな」
余力を怠惰に使い流すか、それとも現状の向上につとめるか。
ゆかりや灯は後者である。
触れると危ないガラス片やなにかをテレキネシスで除去し、つかえる建材を集めて柵を作り、設置して回っていた。
「この柵があるとどう変わるんです?」
「野犬などの中型動物が入ってきにくくなりますね。村中をかこうには材料と人手が足りませんけど、今建てている二軒をかこうことは出来るはずです。そのうち大型動物への対策も考えましょうか」
「ですねえ」
ゆかりは柵をハンマーで地面に固定し終え、ふうと息をついた。
●村の未来を考えよう
「こりゃ驚いた……」
元村長は、完成した自宅兼集会場を見て口をあんぐりとやった。
破棄された家々の材料をかき集め、一部は新たに作り直す形で組み上げた広い家である。
二十人くらいは余裕で収容できるだろう。村のスタートとしては充分すぎる出来だ。
あと木彫りのシャチホコがなんでかしらんけど屋根に乗ってるし。
その隣には大工のゲンさんが住むこじんまりとした家が建設されている。ゲンさんに長く住んで貰える家をと考えていたが、ゲンさん自身が自分の家より村の設備をと言ってリソースを集会場に割いた結果である。この二軒を徐々に改築し、場合によっては拡張していくことになるだろう。
「じゃ、早速話し合いをしよ! 入って入って!」
禊は元村長の手を引き、集会場へと案内した。
元村長が見たもの。
『王子マッチョマックス村』と書かれた大看板。
『王子村長』と書かれたタスキをかけたプリンス。
あとテーブルの真ん中に置かれた金のしゃちほこ。
「やあ民のみんな、余がこの村の王子だよ! 村の名前は、『王子マッチョマックス村(暫定)』だよ!」
「……」
元村長あらため副村長は、数秒間真顔を維持した後。
親指をビッと立てた。
「イイネ!」
「いいんだ!?」
二度見する禊。
そうこうしている間にゆかりたちがお茶やらなんやらを運んできて、ゲンさんも交えた全員が卓についた。
マイク片手にコホンと咳払いするプリンス。
「まずは村の……アッキーお願い」
二秒でパス。
パスをうけた秋人は資料を手に咳払いした。
「はい、まずは村の現状を確認しましょう。建物は副村長宅兼集会場とゲンさん宅の二軒のみ。上下水道の整備は未完ですが、プリンスさんがパイプラインを大まかに確認してくれたので数日間の工事で整うでしょう。電気は灯油燃料による熱発電機に頼っている状態ですので、電線工事が必要になります。こちらは手配が済んでいるのでじきに完了するはずです。食糧自給に関してですが……エレメンツィアさん」
マイクをパスされて、エレメンツィアが野菜の種をテーブルに置いた。
「隣の畑を少しだけならして、野菜の種をまいておいたわ。自給自足にはほど遠いけど、育てていけば多少食費を浮かすことはできるわね」
「水は井戸から引いたのを使えるらしいぜ!」
横からぐいっと割り込む聖華。
「井戸水が飲めるなら、水には困らないよな」
「蛇口設置型の浄水器をつけたから、確かに飲み水の心配はいらなくなったわ。ただくみ上げに電力を使っているから、電力問題を解決させてからじゃないと安心できないわね。次は……はい」
流れでマイクをパスされて、ゲイルは少しとまどった顔をした。
「あー、建てた家は生活最低限のものだ。冬は寒く夏は暑い。設備にかける資金を確保したいんだが……」
ちらりとプリンスたちを見る。
禊が難しい顔をした。
「そりゃあ、悪い人から大金を横取りしたり、国からお金をもぎ取ってきたりはできるかもしれないけど、それじゃあ村の人たちが生きていくことにはならないよね。住民が増えればそれだけお金も必要になるし、だから……」
「村自体にある程度の収入源が必要ってことですか」
うーむと唸るゆかり。
「………………」
ゲイルはきわめて男らしい顔で天井を見た。
が、その脳内にはなんかふわふわもこもこした生物がぴょんぴょん飛び交っている光景だった。ウェルカムゲートには『ふわもこぼくじょう』とか書かれている。
回ってきたマイクを受け取るプリンス。
「うん、まあ現状はこんなところかな。徐々に解決していこっか。で、これから……つまり村の未来についてなんだけど。ちょっと余、F.i.V.Eとかけあってきたよ」
プリンスは分厚い資料をテーブルに広げた。
そこにはいくつかの契約書がきっちりとした形にもとづいて作成されている。
誰が作ったんだろうこんなの、と思う無かれ。スーパー公務員アタリマンの本領発揮である。
「余と民はね、この村を古妖と共存する村にしたいと思ってるよ」
「古妖と共存する村! イイですね! 素晴らしい!」
ガッと身を乗り出すゆかり。
身を乗り出したまま副村長を見る。
「けど古妖、大丈夫ですか? 副村長さんやゲンさんの気持ちを確認してからでないと……」
「ほへ?」
副村長がぼけたおじいちゃんみたいな声を出した。
「こようってのは、なんじゃ? 外国人さんかい?」
「ふむ」
高齢者にとって、つい二十余年前から普及した知識というのは追いつきにくいものである。
おじいちゃんにA○B48について説明するようなものだ。実際、古妖と妖の区別がついていない人もちらほらいるくらいである。
だがこの場合、古妖に対する無知は先入観の無さでもあり、非常に都合がよかった。
「わしは構わんよ。村を取り戻してくれたのはF.i.V.Eの皆さんじゃ。行く末も皆さんに任せたい」
「ありがとうございます、副村長」
灯は胸に手を当てて瞑目した。
「私たち人間は、古妖たちに対して酷いことをしました。理由は沢山あるでしょうけれど、不理解も原因の一つだと思うんです。これまで日本が国を超えた共存をはかったように、古妖との共存を目指していきたいと……そう思っています」
「それに実際、古妖の生態を間近で観察することは神秘解明っていうF.i.V.Eの目的に即しているしね。今のところは『村の運営に関わったF.i.V.E覚者にのみ招待する権限を与える』っていう契約に留まってるけど、そのうち開放したいよね」
プリンスはそう言って、契約書をそれぞれのメンバーに配った。
ペンを取り出すゆかり。
「この契約書にサインすることで、ゆかりたちは古妖や人をこの村に招待できるんですね」
「誰でも自由に来ていいってコトにするにはまだ早いからね。自分で始めたことは自分で責任とりますっていう契約書でもあるんだよ」
「いい村にできるかどうかは本当に俺たち次第ってことか……」
わくわくした顔で、聖華はペンをとった。
はたと顔を上げる。
「そういえば、すねこすりを村で飼う許可をとってもらう話はどうなったんだ?」
「いいってよ」
「「本当か!?」」
聖華とゲイルが同時に立ち上がった。
顔を見合わせてゆっくり座る二人。
「けど全部は無理。一部だけ住まわせてみて、様子を見るところからって契約だよ。それに、村にはまだすねこすりを住まわせるだけの受け入れ体勢が整ってないから、まずは設備と人員を確保するところからだね。さっきも言ったけど、AAA(国)のおんぶにだっこだと、何か不都合があったときにすぐ切り捨てられちゃう。自力で運営できる体制が必要なんだよ」
「そのくらいが丁度いい」
「皆さんで、いい村にしていきましょう!」
灯はぐっと手を握り、明日を見る目で契約書にペンを立てた。
●現在のFiVE村
テーマ:古妖と共存する村
村名:王子マッチョマックス村(暫定)
村長:プリンス王子
建物:副村長宅兼集会場×1、小民家×1
一般住民:副村長、ゲンさん(大工)
古妖住民:なし
水道光熱:二件分だけ確保(大規模工事費用の獲得が必要です)
セキュリティ:野犬を防げる程度
食糧自給:家庭菜園程度
資金源:なし
「一度は捨てられた村、か」
『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は両手に霊力を展開。帯術処理をした刀の鞘を握り込むと、鍔を指で弾いた。
彼を覆う大きな影。
影は高く腕をあげ、そして叩き付けてきた。
ゲイルは素早く飛び退き、間に『罪なき人々の盾』鐡之蔵 禊(CL2000029)が滑り込む。
禊は掲げた足の裏で相手の、熊妖の打撃を支えていた。
「ふるさとが無いってのは、悲しいからね。できることをするよ!」
足のバネで熊を押しのけると、両足を入れ替えてスピンキック。熊妖はそれをのけぞりによって回避したが、禊のキックから放たれた真空刃が熊の腹を切り裂く。
うなりをあげた熊妖は破れかぶれの爪撃を繰り出してくる。
攻撃直後の禊に直撃。バランスをとってバク転で距離をとるが、腕を切り裂かれた。
「いったた……」
「交代だ。任せろ」
ゲイルは霊力の糸に治癒液を混ぜて禊の腕に巻き付けると、強制止血と治癒を同時に行なった。
前に出て刀を抜く。刀といっても斬撃神具としての性能はない。あくまで儀式剣。しかし儀式剣だからこそだせる威力もあった。
ゲイルは寒空に諸肌を脱ぎ晒すと、両手握りした刀で突きを繰り出した。
熊に届かぬ距離での突きであるがしかし、放たれた水礫の刃は熊の脳天を貫き、そして絶命させた。
一方その頃ゆかり・シャイニング(CL2001288)は。
「くらえー! 手からビーム! あっ間違えた、目からビーム!」
熊妖に向けて掌のチャクラから光線を乱射していた。
光線の直撃をうけながらもガンガン突っ込んでくる熊妖。
ゆかりはガバッと振り返って叫んだ。
「やばいですエレメンツィアさん! 四つ足の熊超早い! 『ハチミツおいしーなー』とか言ってる生物とは思えないです!」
「あらあら、仕方ないのね」
『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)は口元に手を当てて上品に笑うと、指先で空に文様を描き始めた。曇った窓に文字を書くようにして完成したそれは霧の幕となってゆかりへ巻き付いていく。
「恐れずに戦いなさいね」
「ありがとございまっ――ぬわああああああ!?」
熊妖の突撃をうけてずりずり押されていくゆかり。
手斧をがしがし叩き付けるが熊妖は止まらない。
「エレメンツィアさんヘルプ、ヘルプです!」
そろそろ限界かなと思った所で、いつの間にか側面に回り込んでいたエレメンツィアが熊妖の脇腹に手を添えた。
「よく頑張ったわね。もういいわよ」
水の槍が熊妖を貫通。元々ダメージの蓄積していた熊妖は力尽き、どっしりと地面に横たわった。
いっぽーそのころ。
「さぁ行こう我が民アッキー! きっと余の前とか歩きやすいよ? ね?」
プレイングをまんまコピペしたようなことを言って、プリンスは雑草をぷちぷち抜いていた。
「きっとこれ『いっぽーそのころ』を繰り返して戦闘してる様子を見せるフリした自己紹介タイムだから、たぶん苦戦しないから」
「どこの次元で話をしてるんですか。まあやることはやりますが……」
鈴白 秋人(CL2000565)はネクタイをきゅっと締め直し、身体の周りに水気を纏い始めた。
しかし目は瞑っている。
視界よりも勘に頼ろうという考えだ。
崩れた民家の影から熊妖が飛び出してくるが、勘を研ぎ澄ましていた秋人には丸わかりだった。何回もリハーサルを重ねた殺陣のように爪撃を紙一重でかわすと、水気を纏った手刀を叩き込む。
華麗なカウンターをうけて転倒する熊妖。
雑草を抜いてちっちゃいガーデニング遊びをしていたプリンスは地面に手を当て術式を発動。電撃が地面を走り、転倒した熊妖を電子レンジに入れすぎた生肉のように破裂させた。
「これでいいかな。他の民もそろそろ倒し終えてる頃だから、戻ろっかアッキー」
「……」
秋人は振り向き。
「アッキー……」
確認するように呟いた。
はいいっぽーそのころ!
「熊に負けるかー!」
『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)は熊妖の斬撃を刀で受け止め、キックでもって押し返した。
追撃をはかろうとする熊妖に、鋭く飛来する鎖分銅。
分銅の直撃によってよろめいた熊妖に、『蒼炎の道標』七海 灯(CL2000579)は草刈鎌片手に飛びかかった。
熊妖の喉元を的確に切断。
宙の鎖分銅をキャッチすると、熊妖の足に振り込んで巻き付けた。
引き込み、転倒させる。体格こそ違うが合気道の要領だ。軸足弾きからの押し倒しである。
「この村は、村長さんたちにとって大事な村だ。返して貰うぜ!」
聖華は倒れた熊妖に飛び乗ると、両逆手に握った刀を熊妖の脳天へと突き刺した。
びくんと痙攣し、絶命する熊妖。
灯は額の汗をぬぐうと、集合場所にしていた仮設テントへと振り返った。
「天楼院さん。皆さんがテントに戻っている頃です。私たちも戻りましょう」
既に武器は消え、刺青の輝きも消えていた。
「村作りが、始まりますよ!」
●村作りは一軒のお家から
エレメンツィアは雑草だらけの土地に噴霧器をかけて歩いていた。
珍しそうに眺めるプリンス。
「何やってんの? 雑草育ててるの?」
「逆よ。薄めた除草剤をかけて枯らしているの。一度雑草を枯らしてから土をひっくり返せば、効率的に雑草を処理できるのよ」
「へー、庭の民だったんだねメッツ」
「メッツ?」
雑草は手作業で抜いたり芝刈り機で切ったりしても地中にはった根っこからまた生えてしまう。これごと駆除する除草剤は、園芸用品店には沢山売っている。ネコソギカラースみたいなまんまな名前で。
「これが終わったら、畑をならしておきましょうか。家庭菜園レベルでも自給を始めないとね。……あら、何してるの?」
噴霧器を停止させて立ち止まるエレメンツィア。
聖華が妙な機械の下をざくざく掘っていた。
「井戸ほってんだぜ!」
「いど……」
半眼になるエレメンツィアだが、プリンスが脇から説明を加えた。
「別に新しく掘ってるわけじゃないよ。この村、元々井戸があって、それを自動で組み上げる機械も設置されてたのね。それを復旧してるとこなの。上下水のパイプも多少生きてたから、後から掘り返して修理すれば村中に電気と水を巡らせることもできると思うよ」
「意外とものを考えてるのね」
「余って王子だしね」
「それで、他の皆さんは?」
「ああ……」
土のついた手で額をぐいぐいぬぐうと、聖華は顔を上げた。
「こっちについた大工と一緒に家作ってるみたいだな」
「おう、覚者が何人もそろってるってのは本当だったんだな。こりゃはかどるぜ」
安全になったら村に来ると言っていた大工のゲンさんは、組み立てられていく家のどだいを眺めながら頷いた。
土台の上を禊が器用に歩き、木材を設置しては釘を打っていく。
ゲンさんの横では木材を切ったりという作業を秋人が担当していた。
カンナをかけるのはゲンさんの仕事である。こればっかりは職人技術がいる。
廃材からまだ使える木材やなにかを持ってきたゲイルが、ゲンさんの足下にそれらをおろした。
「覚者ってのは人間よりずっと頑丈でパワフルだからな。大工の技術と知識に俺たちのパワーを合わせれば、作業効率はかなり上がるだろう」
AAAがザッと調べた資料によると覚者は千人に一人くらいとされ、覚醒するにも色々と消耗するので非常時にそなえてポンポンやらないもんではあるが、覚者が大量に集まって夢見が二桁いるF.i.V.Eだとその常識もしばしば崩れている。そらもうやりたい放題である。
「これなら期間中にもう一件建てられるかもしれんな。村長宅兼集会場でいいんだな? 希望はあるか」
「プリンスが『しゃちほこつけたい』と言っている」
「放っておきましょう」
「今後のことは、そこで話し合ったらいいよね」
木材の設置を終えた禊が上から呼びかけ、ゲイルが下降済みの建材を投げて渡す。
その様子を見て、ゲンさんは破顔した。
「いや、こりゃ余裕で終わりそうだな」
余力を怠惰に使い流すか、それとも現状の向上につとめるか。
ゆかりや灯は後者である。
触れると危ないガラス片やなにかをテレキネシスで除去し、つかえる建材を集めて柵を作り、設置して回っていた。
「この柵があるとどう変わるんです?」
「野犬などの中型動物が入ってきにくくなりますね。村中をかこうには材料と人手が足りませんけど、今建てている二軒をかこうことは出来るはずです。そのうち大型動物への対策も考えましょうか」
「ですねえ」
ゆかりは柵をハンマーで地面に固定し終え、ふうと息をついた。
●村の未来を考えよう
「こりゃ驚いた……」
元村長は、完成した自宅兼集会場を見て口をあんぐりとやった。
破棄された家々の材料をかき集め、一部は新たに作り直す形で組み上げた広い家である。
二十人くらいは余裕で収容できるだろう。村のスタートとしては充分すぎる出来だ。
あと木彫りのシャチホコがなんでかしらんけど屋根に乗ってるし。
その隣には大工のゲンさんが住むこじんまりとした家が建設されている。ゲンさんに長く住んで貰える家をと考えていたが、ゲンさん自身が自分の家より村の設備をと言ってリソースを集会場に割いた結果である。この二軒を徐々に改築し、場合によっては拡張していくことになるだろう。
「じゃ、早速話し合いをしよ! 入って入って!」
禊は元村長の手を引き、集会場へと案内した。
元村長が見たもの。
『王子マッチョマックス村』と書かれた大看板。
『王子村長』と書かれたタスキをかけたプリンス。
あとテーブルの真ん中に置かれた金のしゃちほこ。
「やあ民のみんな、余がこの村の王子だよ! 村の名前は、『王子マッチョマックス村(暫定)』だよ!」
「……」
元村長あらため副村長は、数秒間真顔を維持した後。
親指をビッと立てた。
「イイネ!」
「いいんだ!?」
二度見する禊。
そうこうしている間にゆかりたちがお茶やらなんやらを運んできて、ゲンさんも交えた全員が卓についた。
マイク片手にコホンと咳払いするプリンス。
「まずは村の……アッキーお願い」
二秒でパス。
パスをうけた秋人は資料を手に咳払いした。
「はい、まずは村の現状を確認しましょう。建物は副村長宅兼集会場とゲンさん宅の二軒のみ。上下水道の整備は未完ですが、プリンスさんがパイプラインを大まかに確認してくれたので数日間の工事で整うでしょう。電気は灯油燃料による熱発電機に頼っている状態ですので、電線工事が必要になります。こちらは手配が済んでいるのでじきに完了するはずです。食糧自給に関してですが……エレメンツィアさん」
マイクをパスされて、エレメンツィアが野菜の種をテーブルに置いた。
「隣の畑を少しだけならして、野菜の種をまいておいたわ。自給自足にはほど遠いけど、育てていけば多少食費を浮かすことはできるわね」
「水は井戸から引いたのを使えるらしいぜ!」
横からぐいっと割り込む聖華。
「井戸水が飲めるなら、水には困らないよな」
「蛇口設置型の浄水器をつけたから、確かに飲み水の心配はいらなくなったわ。ただくみ上げに電力を使っているから、電力問題を解決させてからじゃないと安心できないわね。次は……はい」
流れでマイクをパスされて、ゲイルは少しとまどった顔をした。
「あー、建てた家は生活最低限のものだ。冬は寒く夏は暑い。設備にかける資金を確保したいんだが……」
ちらりとプリンスたちを見る。
禊が難しい顔をした。
「そりゃあ、悪い人から大金を横取りしたり、国からお金をもぎ取ってきたりはできるかもしれないけど、それじゃあ村の人たちが生きていくことにはならないよね。住民が増えればそれだけお金も必要になるし、だから……」
「村自体にある程度の収入源が必要ってことですか」
うーむと唸るゆかり。
「………………」
ゲイルはきわめて男らしい顔で天井を見た。
が、その脳内にはなんかふわふわもこもこした生物がぴょんぴょん飛び交っている光景だった。ウェルカムゲートには『ふわもこぼくじょう』とか書かれている。
回ってきたマイクを受け取るプリンス。
「うん、まあ現状はこんなところかな。徐々に解決していこっか。で、これから……つまり村の未来についてなんだけど。ちょっと余、F.i.V.Eとかけあってきたよ」
プリンスは分厚い資料をテーブルに広げた。
そこにはいくつかの契約書がきっちりとした形にもとづいて作成されている。
誰が作ったんだろうこんなの、と思う無かれ。スーパー公務員アタリマンの本領発揮である。
「余と民はね、この村を古妖と共存する村にしたいと思ってるよ」
「古妖と共存する村! イイですね! 素晴らしい!」
ガッと身を乗り出すゆかり。
身を乗り出したまま副村長を見る。
「けど古妖、大丈夫ですか? 副村長さんやゲンさんの気持ちを確認してからでないと……」
「ほへ?」
副村長がぼけたおじいちゃんみたいな声を出した。
「こようってのは、なんじゃ? 外国人さんかい?」
「ふむ」
高齢者にとって、つい二十余年前から普及した知識というのは追いつきにくいものである。
おじいちゃんにA○B48について説明するようなものだ。実際、古妖と妖の区別がついていない人もちらほらいるくらいである。
だがこの場合、古妖に対する無知は先入観の無さでもあり、非常に都合がよかった。
「わしは構わんよ。村を取り戻してくれたのはF.i.V.Eの皆さんじゃ。行く末も皆さんに任せたい」
「ありがとうございます、副村長」
灯は胸に手を当てて瞑目した。
「私たち人間は、古妖たちに対して酷いことをしました。理由は沢山あるでしょうけれど、不理解も原因の一つだと思うんです。これまで日本が国を超えた共存をはかったように、古妖との共存を目指していきたいと……そう思っています」
「それに実際、古妖の生態を間近で観察することは神秘解明っていうF.i.V.Eの目的に即しているしね。今のところは『村の運営に関わったF.i.V.E覚者にのみ招待する権限を与える』っていう契約に留まってるけど、そのうち開放したいよね」
プリンスはそう言って、契約書をそれぞれのメンバーに配った。
ペンを取り出すゆかり。
「この契約書にサインすることで、ゆかりたちは古妖や人をこの村に招待できるんですね」
「誰でも自由に来ていいってコトにするにはまだ早いからね。自分で始めたことは自分で責任とりますっていう契約書でもあるんだよ」
「いい村にできるかどうかは本当に俺たち次第ってことか……」
わくわくした顔で、聖華はペンをとった。
はたと顔を上げる。
「そういえば、すねこすりを村で飼う許可をとってもらう話はどうなったんだ?」
「いいってよ」
「「本当か!?」」
聖華とゲイルが同時に立ち上がった。
顔を見合わせてゆっくり座る二人。
「けど全部は無理。一部だけ住まわせてみて、様子を見るところからって契約だよ。それに、村にはまだすねこすりを住まわせるだけの受け入れ体勢が整ってないから、まずは設備と人員を確保するところからだね。さっきも言ったけど、AAA(国)のおんぶにだっこだと、何か不都合があったときにすぐ切り捨てられちゃう。自力で運営できる体制が必要なんだよ」
「そのくらいが丁度いい」
「皆さんで、いい村にしていきましょう!」
灯はぐっと手を握り、明日を見る目で契約書にペンを立てた。
●現在のFiVE村
テーマ:古妖と共存する村
村名:王子マッチョマックス村(暫定)
村長:プリンス王子
建物:副村長宅兼集会場×1、小民家×1
一般住民:副村長、ゲンさん(大工)
古妖住民:なし
水道光熱:二件分だけ確保(大規模工事費用の獲得が必要です)
セキュリティ:野犬を防げる程度
食糧自給:家庭菜園程度
資金源:なし

■あとがき■
皆さんのプレイングが想定をはるかに超えて素晴らしかったので、新しい展開が用意されました。
このシナリオシリーズに参加したPCには、人や古妖を村に招待する事が出来ます。
この人村に招待したいなと思ったらプレイングにてその行動を起こしてください。
八重紅友禅以外のアラタナル全てのシナリオでこのアクションは有効となります。
シナリオの担当STが移住すると判定した場合、情報連携によって実際にFiVE村へ移住します。もう一度会いに行ったり生活環境を整えてあげたりといった発展シナリオが担当STから公開されるかもしれません。
このシナリオシリーズに参加したPCには、人や古妖を村に招待する事が出来ます。
この人村に招待したいなと思ったらプレイングにてその行動を起こしてください。
八重紅友禅以外のアラタナル全てのシナリオでこのアクションは有効となります。
シナリオの担当STが移住すると判定した場合、情報連携によって実際にFiVE村へ移住します。もう一度会いに行ったり生活環境を整えてあげたりといった発展シナリオが担当STから公開されるかもしれません。
