≪初夢語≫硬直した夢の中で
≪初夢語≫硬直した夢の中で


●ふっふっふだゾー!
 気づけば、覚者達はいつの間にかとある神社の境内にいた。
 沢山の人々が初詣へと訪れている。その中心にいたのは、可愛らしいフォルムに凶悪な面をした生き物だ。
「ムッフフ~ン♪ ファイヴの皆、あけまして、おめでとう~」
 それは、バクと呼ばれる生き物だった。
「ちょっとだけ楽しいゲームをしにきたよ~」
 いい初夢を見ていたはずの覚者達は、状況を確認する。そこはとある神社。たくさんの人がいるが、その誰もが覚者達やバクには気づいていない。
「今から時を止めるよ。キミタチだって例外じゃない」
 何かが止まった。体が動かない。かろうじて、意識だけは保たれている、そんな状況だ。
 そこに現れた一つ目の坊主。古妖狩人で覚者達が助け出した一つ目小僧だ。夢の中なので、さすがに本人ではないだろうが。
「ふふふ、これは悪戯のしがいがあるんだゾ!」
 にやにやして笑う、夢の中の一つ目はくすくすと笑い、何をしようかと画策している。
「ムッフフ~ン♪ 一方的じゃ面白くないから……」
 覚者の1人が突然動けるようになる。少しだけ動けてはいたが、すぐにまた固まったかのように動かなくなる。すると、別のメンバーが動けるようになった。だが、それもしばしのこと。またその覚者も固まってしまい、さらに違うメンバーが動く。
「ルールは分かったかな。一つ目は常に動く。君達はそれぞれ10秒ずつ、1人ずつしか動けない。一つ目を捕まえれば、キミタチの勝ちだよ、ムッフフ~ン♪」
 個々にしか動けない覚者達。連携することが難しい状況の中、いたずらをする一つ目を捕まえねばならない。
 一つ目は気が済むか、危機を感じたら敷地外へと逃げ出してしまう。一つ目を逃してしまうと、このゲーム……依頼は失敗となるので注意したい。
「では、よい夢を~。ムッフフ~ン♪」
 バクはそう告げ、覚者の前から消えたのだった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.一つ目を捕まえること(戦闘不能にすること)。
2.なし
3.なし
 初めましての方も、どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
 初夢依頼をお送りします。皆様が見る夢の中で現れた一つ目ちゃんの確保を願います。

●敵
○一つ目小僧……小学生低学年くらいの体型の坊主です。
 捕まえられるのが嫌なのか、抵抗を図るようです。人々の顔に落書きをしたり、変なポーズをさせたりします。
 もちろん、悪戯は固まっている覚者の皆様にも及びます。夢の中なので、されたくない悪戯を敏感に感じ取って行います。プレイングでされたくないことを記述していただければと思います。
 また、抵抗する場合、一つ目は以下のスキルを使用します。
・おどかし……特近単・混乱
・舐め回し……物近列・虚弱
・睨み付け……特全・痺れ
・お豆腐……自・体力回復
 思う存分悪戯して気が済んだ場合、また、危機を感じた場合は敷地外へと逃げようとします。一つ目が敷地外へ出てしまうと、依頼は失敗となります。

 夢で出てくる一つ目は、現実の本人とは無関係です。予めご了承くださいませ。

●状況(特殊ルール)
 とある神社の境内です。広さは50メートル四方くらいです。そこに、散らばるようにして50人ほどの人が立っています。
 覚者の皆様は10秒のみ1人だけ、ローテーションで行動可能です。乱数の為、必ずではありませんが、反応速度順に行動する形です。なお、連続攻撃も通常通りの判定で発生します。一方、一つ目は毎ターン行動可能というアドバンテージがありますが、序盤はいたずらに夢中ですので、すぐに逃げられる心配はありません。
 ゲーム終了と同時に、全員が動けるようになります。

●サポート
 終始動けません。悪戯される役です。メインの方と同じく、されたくない悪戯をプレイングにお願いします。状況をお楽しみいただければ幸いです。

●初夢依頼について
 この依頼は参加者全員が見ている同じ夢の中での出来事となります。
その為世界観に沿わない設定、起こりえない情況での依頼となっている可能性が
ありますが全て夢ですので情況を楽しんでしまいしょう。
またこの依頼での出来事は全て夢のため、現実世界には一切染み出す事はありません。

※要約すると一夜限りの夢の出来事なので思いっきり楽しんじゃえ!です。

 それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
4/6
サポート人数
0/2
公開日
2016年01月13日

■メイン参加者 4人■

『マジシャンガール』
茨田・凜(CL2000438)
『見守り続ける者』
魂行 輪廻(CL2000534)

●さあ、ゲームの始まりだ
 そこは、眠りに包まれた中、夢の世界。
 年が明けて早々見た夢の中で、『F.i.V.E.』の覚者達は、青く、丸っこい獏に出会い……、気づくとどこかの神社の前にいた。
(……新年開けてから、まだ夢見てなかったよな……。つーことは、これ初夢?)
 和泉・鷲哉(CL2001115)は自身の意識があることを自覚すると、現状を確認する。
 どうやら、この場にいる覚者は自分を含めて4人。そんな彼らの前に現れたのは、古妖、一つ目小僧だ。今回参加している覚者達にとっては、顔見知りの相手である。
「ふふふ、これは悪戯のしがいがあるんだゾ!」
 うきうきとしている一つ目。メンバー達は対応しようとするのだが、どうにも体が動かない。
(ええっと、一つ目小僧を捕まえたらゲームクリアになるらしいけど、こっちはちょっとずつしか動けないのか)
 『BCM店長』阿久津 亮平(CL2000328)は改めて、ルールを確認する。
 1回の行動に与えられる時間は、1人あたり10秒程度。それを4人でローテーションする。
 対する一つ目はずっと動き、周辺の人々を悪戯し放題。現実の一つ目は関係ないという話があった為、単に獏が作りだした想像上の存在なのだろうが、なんとも、憎たらしい相手ではある。
「あらあら♪ 悪戯好きの一つ目小僧ちゃんねぇ♪」
 魂行 輪廻(CL2000534)はくすりと笑う。別に悪いことをしているわけではないので、少しだけこのゲームに付き合おうと彼女は考えていた。
「何か幼稚園の先生になったような気分だけど、がんばってみるんよ」
 いたずらっ子の一つ目を捕まえようと意気込むのは、茨田・凜(CL2000438)だ。お正月に神社ということで、彼女は晴れ着に下駄という格好でこの場にいた。
「悪い子はメッなんよ」
「なんつー……。いや、ある種、縁ある奴だしな。全力でやろう、全力で」
「悪戯を受けた分、捕まえたら悪戯しちゃうわよん?」
 やる気を出す鷲哉、輪廻はにこにことしている。
「それじゃ、いくゾー!」
 早速、一つ目が動き出し、境内でのゲームが開始されたのだった。

●悪戯だゾー!
 さて、一番早く動き出したのは亮平。覚者達4人は50人もの棒立ちして動かぬ人の中、ランダムに配置されていた。
(50人の人は……避けていくしかないかな、これは)
 亮平は人に紛れている一つ目小僧を探し、駆け出す。一つ目はすでに凜の元へと近づいていた。
「ふふふ、これされると嫌なんだゾ」
 ちょっきん、ちょっきん。
 一つ目がにやりと笑うと、彼の手にはなぜかハサミが常備されていて。さすが夢である。
 しかしながら、凜にとってはたまらない。彼女は下駄の鼻緒を着られたら困ると考えていたのだ。
(そんなことされたら、動こうとしたときにずっこけてしまうんよ)
 それに、神社の境内は砂利が多い。裸足で歩こうものなら、足の裏が痛くなってしまう。
「むふふーのふー、だゾー!」
 じょっきん。
 一つ目は躊躇なく、凜の右の下駄の鼻緒を切ってしまう。凜は抵抗したくとも、身体が動かない。夢の中とはいえ、これは地味に嫌がらせな悪戯である。
 そこに向け、亮平は走り出す。素早く移動を始めた彼だが、ある程度進むと、体が急に動かなくなってしまう。
「ふふ、次はこっちなんだゾ」
 次に一つ目が狙いを定めたのは、こちらに近づいてきた亮平だ。
「何がいいかな~なんだゾ」
 一つ目は亮平のちょっとしたトラウマをさぐる。むむむと大きな瞳が亮平の顔を見つめていた。
 一方の亮平も、先ほどの凜を見ていると、どうしてもされたくないことを頭に思い浮かべてしまう。
(こんにゃくが顔に当たるのが、すごく……嫌なんだ……)
 そんなことを考える亮平。別にこんにゃくが食べられないわけではない。おでんやみそ田楽に入っているこんにゃくは、ちゃんと食べられる。亮平にとって、こんにゃくは食に関する好き嫌いの対象ではない。
 小さい頃、お化け屋敷に行った際、べちょりと顔に当たったこんにゃく。それで散々な目にあったことがある。去年、遊園地のお化け屋敷でも、同じ目に遭って悲鳴を上げていたのだ。
「ふっふふのふー、だゾー」
 生き生きとした表情をする一つ目。目元がにやけ、頬がつり上がってにんまりと笑う。
 ぞくり。
 亮平の背筋に寒気が走る。
(な、なんだ……? 気のせいかな)
 しかしながら、それは気のせいではない。これまたいつの間にか、こんにゃくを手にした一つ目は亮平の頭上から糸でたれ下げ、彼の顔にひんやりと、ぬるっとした感触が……。
 声にならないような叫び。それを聞き、他のメンバー達も驚く。
 その間に動いていたのは輪廻だ。輪廻は動けない間に、見える目、聞こえる耳で一つ目の位置を把握する。鋭聴力によって、今は亮平が何かをされて叫んでいることは分かっていた。
(今は悪戯だけで済んでいるようだけど……ねん)
 動けるようになったとしても、安易に近づいたりはしない。今のところは覚者へと悪戯するのに夢中な彼を、メンバー達は相手と仲間の位置を感知しつつ、包囲網を狭めていたのだ。

●悪戯はそろそろ……ね
 動かぬものはたくさんいる神社の境内。そこでは、覚者と一つ目小僧だけが動くことができる。
 常に動く一つ目にとっては、時折動く覚者が気になるらしく、思いつく悪戯と、対象となる覚者の嫌なことをちょっとずつやらかす。凜には、顔をむにーっと自身の顔で変形させてみたり、亮平の顔に口ひげとあごひげを書いて見せたり。子供の悪戯のレベルは越えないものの、やはりやられるとイライラは募るもので。
(油性……か)
 一つ目のペンに表記されたそんな文字が亮平にも見え、彼はがっくりと心の中でうな垂れる。後でエタノールを使って落とすべきか。いや、これは夢だから、きっと。そんな淡い期待をする亮平である。
 一つ目の興味は、輪廻へと向いていた。ぺろっと長い舌で輪廻の顔を舐めるが、いまいち反応はない。
(子供の悪戯と思っちゃうねん)
 ならばと一つ目はポーズを取らせて見ようとするのだが、元々輪廻は着物を着崩しており、肌を露出している。これ以上は非常に危ない。検閲的な意味で。
「は、恥ずかしいん……だゾ……」
 輪廻の色気に恥ずかしさを覚え、一つ目は思わずたじろいでしまう。
 別段、嫌な悪戯という物はない輪廻だが、一つ目は何かに気づいて笑いだした。
「ふっふふのふー、だゾー」
 相手のちょっとした嫌なラインを敏感に感じ取る一つ目。彼は輪廻の着物の帯をさっと取り払ってしまう。
 大事なところは見えないので、念の為。彼女の着物とか、守護使役や人垣がカバーしてくれるので、安心である。
「あらん、大胆ねん」
「わ、わわ、だゾ!!!」
 ちょっとだけ恥じらう輪廻だが、それほど気にする素振りもなく。純情な一つ目は帯を解かれた輪廻本人以上に、色っぽいその姿にドギマギ。彼はすぐに、帯を輪廻へと返してしまう。
(流石に動けないと隠せないから、私もちょっと恥ずかしいしねん♪)
 とはいえ、慌て恥じらう一つ目が帯まで戻すことは無く。彼は別のメンバーの元へと走っていく。
(ただ……、捕まえたら、倍返しよん♪)
 輪廻はにやりと、心の中で笑い返すのである。
 その間に、鷲哉もまた、仲間と一つ目の位置の把握に務めていた。動けるタイミングになると、彼は自身の身体能力を上げてから、一つ目に少しずつ詰め寄っていく。
(とりあえず、どんな悪戯されても特にどうっていうのは、……ないっちゃないけど)
 輪廻が先ほど帯を取られ、素肌を肌蹴させていたのが目に入る。大事な部分は決して見えていない。
(悪戯される度に、野球拳の如く少しずつ服剥かれるのは、勘弁願いたいかな……)
「ふふ、こっちは脱がすのがいいんだゾ」
 さっきは脱がしてなお、それを武器にしてたじろがされたものだが、今度は手をワキワキさせつつ、一つ目は状況を楽しむ。
(ちょ、マジか……、こんな時ばっかり、第六感発揮させまくりやがって……!)
 まずは上から。鷲哉のスーツを脱がす一つ目は、なんとも楽しそうだ。
 次に動けるようになった凜。下駄の鼻緒が切れてしまい、仕方なく片方は素足で歩く羽目になっていた。
(『だるまさんが転んだ』みたいにちょっとしか動ける時間ないけど、がんばってみるんよ)
 彼女にとって、一つ目を包囲するイメージは『かごめかごめ』。鬼を囲うようにして逃げられないようにできれば……。
 凜は最初の行動で一つ目の周囲に霧を発生させていた。そして、後は仲間と同じように一つ目に向かって動く。
 その後も続く、一つ目の悪戯。鷲哉の上半身をひんむいて、筋肉を強調するようなポージングをさせたり、輪廻の顔を舐め回し、『はずかしいんだゾ』とほっぺに落書きしたりする。ペンはもちろん油性である。
 彼の興味はあちらこちらへと飛び、その度に楽しそうに笑う。
 しかし、一つ目は気づいていなかった。覚者達が一つ目包囲網を敷いていたことを。
 悪戯に夢中になっていた彼は、覚者が近づいていたことに、ギリギリになって気づく。人数が少なかったことで、巡ってくるローテーションも早かったことも、覚者にとっては若干プラスに働いていたようだ。
 仕掛ける亮平が一つ目の周りに発生させたのは、眠りへと誘う空気だ。
「むー、眠いんだゾ……」
 しかし、一つ目はそれに抵抗し、眠ることはなかったようだ。
 覚者が近づいていることをようやく察した一つ目。しかし、すでに彼に対する包囲網は完成してしまっていたのだった。

●お仕置きタイム……だゾ?
「だ、だゾー!?」
 抵抗しようとジタバタとする一つ目小僧。睨み付け、おどかし、舐め回しと、ずっと攻撃し続けることで覚者に攻撃を続けるものの……。
「俺ら以外に、ぼったちしてる人等も気になりはするけど……。悪戯される分、仕返しはしっかりやらせてもらうぜ!」
 鷲哉は手のひらに集めた空気を熱圧縮させ、撃ち放つ。ふっとんだ一つ目の対角線上にいたのは、凜だ。
「だーるまさんがこーろんだっ」
「うっ、だゾ!?」
 凜の声に驚いて身をすくめる一つ目。しかしながら、動ける覚者がさらに包囲網を狭めていて。
「お仕置きかしらねん」
 攻撃するなら、ちょっとだけ。輪廻もナックルでの2連撃を叩き込む。そこで、亮平が再び眠りの空気を作りだすと、一つ目は目を回してその場でちょこんと眠ってしまう。
 その間に、覚者達は代わる代わる近寄り、一つ目をむんずと捕まえ、無力化したのだった。

「…………だ、だゾー!?」
 目を覚ました一つ目。気づけば、彼は輪廻に優しく抱きしめられ、むぎゅっと大きな胸で挟み込まれていた。悪戯したというのに、なんともうらやまけしからん状況である。
「ドキドキお姉さんなんだゾ……」
 真っ赤にしつつ、一つ目はもじもじとしている。その姿はなんとも可愛らしい。
 他のメンバー達もすでに動けるようになっている。この勝負はどうやら覚者の勝ちらしい。気づけば、沢山いた人達も姿がなくなっていた。
「お疲れー。あー……、とんだ初夢だわ……。この分だと今年もバタバタするんだろうなぁ」
 鷲哉は苦笑しつつ、この場から消えていく。凜も、亮平も、そして、輪廻も、この場から姿を消していった。
 どうやら、朝が来たらしい。メンバー達は目を覚まし、新たなる年の一日を過ごし始めることだろう。
 余談だが。この1件について、現実の一つ目小僧は何も知らず、覚者達から話を受けて、申し訳なさそうに謝っていたことだけ付け加えておく。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『ドキドキお姉さん』
取得者:魂行 輪廻(CL2000534)
特殊成果
なし



■あとがき■

なちゅいです。リプレイをお送りします。
少数参加の依頼ということでしたが、
逆にそれが効果的に働いた形でした。

皆様、効果的に行動されていましたので、
MVPは悩みましたが、
一つ目をもっとも困惑させたあなたへ
お送りさせていただきます。
一つ目からの称号もどうぞ。

今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!




 
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