年末に坊さん一人で大暴れ
●僧兵一人
頭に布をかぶり、袈裟を着た男。
橋の上で立つその姿は、かつて五条大橋で牛若丸と戦った僧兵を想起させる。
だがそれは妖。それは霊。橋を渡る人を襲う存在。
通りかかった好戦的な覚者は返り討ちに会い、事態を重く見た警察関係は橋を封鎖。この年末の慌ただしさもあり、AAAの応援は遅れるという。
如何なる原因で発生したかなど調べる時間はない。大事なのはそれが橋を渡る人間を襲うということ。そして――
●FiVE
「ランク3の妖だ」
久方 相馬(nCL2000004)の言葉に覚者達がざわめいた。
妖にはランクがある。そのランクが高ければ高いほど強いという指標だが、今までFiVEが戦ってきたのはランク2あたり。単体とはいえ、ランク3の肩書を持つ妖はそうみられたものではない。
それを端的に言えば、
「強い。純粋な身体能力もあるが、持っている能力も厄介な者ばかりだ。
弱点らしいものは見当たらない。正面から挑むしかないようだ」
とのことだ。相馬の言葉に嘘はないだろう。
「勝てないと思えば逃げればいい。橋の外までは追って出れないからな」
「それは橋の外から遠距離射撃すればいいんじゃないのか?」
「それができる相手なら、苦労はしないさ」
渡れた資料の一部を見て、覚者達は呻きをあげる。全く面倒な相手だ。
「FiVEが秘匿解除されて名乗りを上げるには……まあ強すぎるかな。だがそれだけの強さだ」
昨今隠密活動を解除したFiVE。世間に存在を知らしめるためには、確かに強敵を伏したというのはいい宣伝になる。そういう意味では負けられない相手だ。
「現状人的被害はないが、橋の封鎖で救急車が行き来できくなる可能性もある。長期の放置は危険だ。
とにかく無理はするなよ。皆の力を見せつけてこい!」
頭に布をかぶり、袈裟を着た男。
橋の上で立つその姿は、かつて五条大橋で牛若丸と戦った僧兵を想起させる。
だがそれは妖。それは霊。橋を渡る人を襲う存在。
通りかかった好戦的な覚者は返り討ちに会い、事態を重く見た警察関係は橋を封鎖。この年末の慌ただしさもあり、AAAの応援は遅れるという。
如何なる原因で発生したかなど調べる時間はない。大事なのはそれが橋を渡る人間を襲うということ。そして――
●FiVE
「ランク3の妖だ」
久方 相馬(nCL2000004)の言葉に覚者達がざわめいた。
妖にはランクがある。そのランクが高ければ高いほど強いという指標だが、今までFiVEが戦ってきたのはランク2あたり。単体とはいえ、ランク3の肩書を持つ妖はそうみられたものではない。
それを端的に言えば、
「強い。純粋な身体能力もあるが、持っている能力も厄介な者ばかりだ。
弱点らしいものは見当たらない。正面から挑むしかないようだ」
とのことだ。相馬の言葉に嘘はないだろう。
「勝てないと思えば逃げればいい。橋の外までは追って出れないからな」
「それは橋の外から遠距離射撃すればいいんじゃないのか?」
「それができる相手なら、苦労はしないさ」
渡れた資料の一部を見て、覚者達は呻きをあげる。全く面倒な相手だ。
「FiVEが秘匿解除されて名乗りを上げるには……まあ強すぎるかな。だがそれだけの強さだ」
昨今隠密活動を解除したFiVE。世間に存在を知らしめるためには、確かに強敵を伏したというのはいい宣伝になる。そういう意味では負けられない相手だ。
「現状人的被害はないが、橋の封鎖で救急車が行き来できくなる可能性もある。長期の放置は危険だ。
とにかく無理はするなよ。皆の力を見せつけてこい!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.『僧兵』の打破。
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
年末に強敵。お暇があればどうぞ。
●敵情報
『僧兵』(×1)
心霊系・妖。ランク3。物理に強く、特殊に弱いタイプです。
頭を布で覆い、袈裟を着た男の幽霊です。錫杖を手に、格闘めいた動きで攻めてきます。
お経のようなものを唱えながら襲い掛かってきます。最も信仰心などなく、その経に意味があるわけではありません。知性らしいものは見受けられますが、人間以上ではありません。もっとも、戦いでは的確に弱い部分をついてくるでしょう。
橋から外に出ることはできず、橋の外に攻撃ができません。なので『橋の外に出て回復。その後橋に入って参戦』という戦略は可能です。
攻撃方法
捻刺棍 物近貫2 棍を捻じりながらついてきます。〔出血〕
旋風撃 物近列 棍を回転させ、払うように振りかぶります。〔弱体〕〔鈍化〕
剛の棍 物近単 全身の筋肉を使って放つ一撃です。〔溜1〕〔必殺〕
一喝! 特遠単 大声を上げ、動きを封じます。〔呪い〕
九字印 特遠全 印を切り、相手の動きを乱します。
呼吸法 P 特殊な呼吸法により、毎ターンの終了に体力50回復。
回転歩 P 「かいてんのあゆみ」特殊な歩法で囲みを突破します。ブロックに三人必要。
橋の護 P 橋の外からの攻撃(3m以内の飛行なら可能)は、ダメージが0になります。
仏の理 P 攻撃を受けたキャラクターの持つ『悪名』に応じて、追加の防御点無視ダメージが発生します。
●場所情報
町の橋。大きさは便宜上10×10メートルとします。時刻は夜。街頭が橋を照らしているため、明かりの問題はなし。足場も問題ないモノとします。車などは通行止めのため撤去されており、人も遠巻きに見ているだけで近づいてきません。
一応通行止めされていますが、適当に突破した後からのスタートとなります。なのでどう突破するかは書かずとも問題ありません。
戦闘開始時の配置は自由です。事前付与なども好きなだけ行ってください。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年01月14日
2016年01月14日
■メイン参加者 8人■

●
ランク3の妖。
積極的に暴れまわる存在ではないが、橋に入る者には容赦なく襲い掛かるそれ。橋の外にいれば安全と分かり、遠巻きに見る者が増えてくる。時折妖退治に挑戦する覚者もいたが、皆返り討ちにあっていた。
「橋を封鎖するランク3の妖デスカ……強敵の予感がシマスネ!」
そんな場所に明るい声で拳を握って現れる『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)。戦闘服に身を包み、金髪を靡かせて颯爽と橋の上を歩いていく。土の加護は既にかけてある。不安はあるが、負けるつもりはなかった。
「わざわざ強敵と判っている奴の相手とか実に嫌なのですが、その分インセンティブも多い位と云うものなのです」
『偽弱者(はすらー)』橡・槐(CL2000732)はそんなことを呟きながら、車椅子から降りて橋を進む。除名されない程度に働く、とは槐の弁だ。この戦いが終わったらゆっくり正月休みを取ろうと心に誓った。
「マサにベンケーって事ね! ま、打ち倒してもケライにはならないのがチョト損な気分だけど……」
妖の風貌を見て『デブリフロウズ』那須川・夏実(CL2000197)が苦笑する。橋に入ることなく、境界の一歩後ろで待機する夏実。前世との絆を強めながら、作戦の内容を再確認する。作戦の齟齬がないよう、皆と話し合う。
「ボクは、ちまちま嫌がらせでお坊さんの隙を作ってみるから、攻撃よろしくね」
ライフルを手にリリス・スクブス(CL2001265)が柔軟運動をしていた。見た目は小学生女子だが、一世紀を生きた大人の女性だ。最も言動は見た目と変わらない。ライフルさえなければ、大人に止められそうな風貌だ。
「以前、ランク3一歩手前の妖を相手にしたことがありますが……ついに、ランク3の妖を相手にする時が来てしまいましたね」
呼吸を整えながら『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)が妖を見る。妖のランクは知性と戦闘力で判断されるという。ならば成りかけと成った者とその差がどれほどのものなのか。それを今肌で感じる事になる。
「ランク2の妖でも充分厄介だというのに、ランク3となると一体どれだけ脅威となるのか……」
緊張した声で『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)が口を開く。個体差こそあれ度、ランク2の妖は決して油断できない存在だ。その一つ上のランク。それがどれだけの脅威となるのか。これ以上力をつける前に、ここで祓わなくては。
「ですが、怯んでばかりも、居られませんね」
妖から視線を逸らすことなく『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)が告げる。相手の強さは十分に理解している。だが立ち止まるつもりはない。土の加護を身に纏わせ、妖の前に立ち構えを取る。
「でも、何だろう。少しわくわくもする……ね!」
これから始まる戦いに胸を躍らせる御白 小唄(CL2001173)。揺れる狐の尻尾はこれから始まる激戦を感じながら、しかし興奮を隠しきれない証か。制服を翻し、真っ直ぐに橋を歩いて妖の前にやってくる。
橋を歩き、各々のポジションに構える覚者達。
妖の前に祇澄と槐と小唄が。
その後ろに控えるようにゲイルとリーネが。
さらに後方には妖を打ち据えようとするリリスとラーラが。
そして橋の外から味方を癒そうと夏実が。
『ギャーテーギャーテー、ハラギャーテー』
その気迫を戦闘開始と受け取ったか、妖が祈るように手を動かす。そして棍を覚者達に向け、経を唱えた。意味などないのだろう。そこにあるのは明確な戦意。
それぞれの思いを込めて、覚者達と妖の戦いは幕を開ける。
●
「いくぞ! これでもくらえっ!」
先陣を切ったのは小唄だ。天の源素を身に纏い、ステップを踏んで舞い踊る。清楚な空気が仲間たちに行き届き、神具の切れ味を増す。その動きを維持したまま体を回転させ、妖に向かって蹴りを放った。刃のような一撃が妖を裂く。
心霊系の妖は物理的な攻撃に耐性を持つ。だが絶対の防御ではない。小唄の足から伝わる確かな感覚。それは深手を負わせたわけでは無いが、無傷でもない。少しずつ、確実に。それが勝利への最短の道だと知っているから。
「くっ、手ごたえが薄い……それでもっ!」
「問題ないです。ガンガンやってください」
盾を構えて槐が攻撃を促す。槐が前衛にいるのは純粋な火力源としてではない。妖を後ろに通さないための壁役としてである。自然治癒力を高める香を周囲に巻きながら、妖の行動を盾の後ろから睨むように見みる。
妖が動くより早く槐が動く。天の源素を霧に変えて振りまき、その視界と動きを封じる。蜘蛛の糸の如くまとわりつく高密度の霧。それは妖の体を傷つけることはないが、その動きを封じることで結果、仲間達への負担を減らしていた。
「私の正月休みの為にも境界の端に沈むが良いのです。信仰無き僧兵」
「いざ、参ります!」
拳に土の加護を纏わせ、祇澄が妖に迫る。棍の動きに注意しながら、重心を崩すことなく間合いを詰めていく。硬化した肉体と拳で棍の打撃を弾きながら、さらに一歩前に。その歩みが描くは円。回るように相手の懐に。
重心を動かさぬ動きは、まるで滑るように。荒々しい戦いの中においても、剣舞のような優雅さを失わない。その動きに妖も見惚れたか、構えに一瞬のスキが生じる。その隙を逃すことなく、祇澄は硬化した拳の一撃を妖に突き立てた。
「少々、荒っぽく、なりますが!」
「シュトゥルム・ウント・ドラング! 一気に行くデスネ!」
元気よく叫んで神具を構えるリーネ。相手は心霊系の妖。ホラーは苦手だが、それを怖がっている余裕はない。ここで一手遅れれば、それは後に大きく響くのだ。恐怖を打ち消すように明るく叫ぶ。
事前準備は十分だ。あとは一気に攻めるのみ。リーネの周りを青の蝶が飛び回る。それはリーネに神秘的な力を与え、神具の攻撃力を増していく。神具より放たれる貫くような一撃。それは妖の肩を穿ち、その動きを一瞬止める。
「作戦は命を大事にデース!」
「ああ、誰一人殺させやしない」
決意を口にするゲイル。いざとなれば橋の外に出れば攻撃されない。そうと分かっていても、目の雨の妖を前にすればそれが容易でないことが感じ取れる。だからこそ、皆で勝利を勝ち取ろう。その決意。
腕を肩の位置まで持ち上げて、目をつぶる。イメージするのは大海原。寄せては返す波の音。イメージの波のリズムに合わせて、手を動かし呼吸をする。水の源素がゲイルの体内で循環し、傷を癒す雨となって仲間に降り注ぐ。
「これ以上力をつける前に、ここで倒しきる!」
「うん。じゃあ行くよ」
黒の羽をふわりと広げ、リリスが宙を舞う。地面から足を話しながら、しかし飛行が不安定にならないぎりぎりの高さ。妖までの射線は十分通っている。それを確認した後で、ライフルを構えた。
両脇をしっかりししめて、骨で挟むようにライフルを固定する。羽を小刻みに動かして高度を安定させる。呼吸を整えながら妖を狙う。彼我の距離、重力、風、弾丸の重さ……様々な条件を脳内で計算し、ライフルの引き金を引く。
「うまく相手の攻撃リズムを崩せばっ!」
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
魂の炎を燃やし、ラーラが神秘の力を蓄える。妖の動きを見て、それを見てからラーラは動く。目まぐるしく変わる戦況のすべてを把握することはできない。だからこそ、あえて一歩遅れて状況を整えてから動く。
冬の夜を明るく暖かく照らすように炎を生み出す。熱く熱く熱く、明るく明るく明るく。念じるままに炎は大きくなり、それはラーラの力により弾丸のように変わる。圧縮された赤い熱弾を妖に向かって放った。弾丸は命中し、。一気に爆ぜる。
「味わいなさい、魔女の一撃!」
「皆無理しちゃ駄目だからネ! 弱ったら交代するノヨ!」
橋の外側から夏実が言う。一人安全圏から戦いを観察するの。効率の良さをとはいえ、自分以外の覚者が傷ついているのを見るのは罪悪感を感じる。だが泣き言を言っている余裕はない。
言葉で仲間と確認を取りながら、一番傷を受けている人間を判断する。医術の知識と戦闘経験。そこから解を導き出し、夏実は倒れそうな人間に癒しの術を施す。余裕はそんなに多くない。それを肌で感じながら、焦ることなく回復に徹する。
「危なくなったらスイッチ! 中衛組は位置を入れ替えて捻刺棍の被害をブンサンよ!」
夏実の指示が飛び、覚者達は流動的に位置を変えながら妖に挑む。
今まで退治した妖なら、問題なく倒せていただろう。だが、相手はまだ倒れる気配がない。息を乱さず、鋭い攻撃を繰り返す。
戦いは少しずつ激化していく。
●
円を描くような足運びと、直線的な棍の動き。時折混ぜられる術式のような攻撃。
その一撃一撃が今まで戦った妖を凌ぐものだ。薙ぎ払って弱ったところを責め立てられ、喝の一声で動きを一瞬封じられる。
「く、ぅっ……この、程度で、負けませんよ!」
「まだだっ、まだ戦えるっ!」
「マダマダ、デスネー!」
祇澄、小唄、リーネがその攻撃を前に大きく体力を削られ、命数を使い意識を保つ。
「一旦避難します!」
限界を感じたラーラが一時攻撃から逃れるために橋の外に避難する。これにより火力が減衰したのを好機と見たのか、妖は棍を握る力を籠める。
『ハラソギャーテー』
弓の様に自信を引き絞り、棍を矢とする。己自信を一つの武器と化した一撃を――
「ソイツ溜まってるわ! 気を付けて!」
「夢の中で力んでいるが良いのですよ」
槐が眠りを誘う舞を踊り、その集中を弛緩させる。その為にわざわざ行動を控えていたと言わんばかりの笑みを浮かべる。
「ええと、こっちに意識は向いてないみたいだから……って――」
リリスは妖の意識が自分に向いているか否かで行動を決めていた。だが意識と同時に攻撃されるのが戦場。攻撃の意志を察した時には、妖の一撃を受けていた。命数を削るほどの傷を受け、意識を切り替える。
「交代だ。前に出るぞ」
「はい、すぐに、戻ります」
中衛のゲイルが疲弊した前衛と入れ替わるように前に出る。本来後ろで回復を行うゲイルだが、状況的にそれがベストであるなら前に出ることを躊躇わない。
この妖を後衛に通さないこと。その為に流動的に動くこと。それが作戦の要。ダメージは全体的に分散されるが、戦闘不能者を可能な限り出さないために。
故に、
「御白、そろそろ危険だ。後ろに下が――」
「へへっ……! 何か、楽しくなってきた!」
前線に立ち続けようとする小唄は他の覚者に比べて深くダメージを受けていた。ただひたすらに攻撃を。その分与えたダメージは多いが、敵からの攻撃を受ける数も増える。
「まだだ……!」
「ぎゃーてーぎゃーてうるさいんですよ」
「流石ランク3ですね……!」
ゲイル、槐、ラーラが九字の印を切られ、命数を失うほどの傷を受ける。
「はっ、くぅ……!」
「ご免、後は任せ……た……」
リリスと小唄が力尽きて倒れ伏す。その穴を埋めるようにリーネが前に出る。
「相手も疲れてるワ。このまま攻めマショウ!」
夏実が回復の術を施す。こちらの疲弊も激しいが同様に相手の疲弊も激しい。ここで一気に攻め立てれば、勝利に手が届く。
「相手が誰だろうと私がやることは変わりませんっ!」
「っ、まだ、いけます!」
ラーラが炎の弾丸を放ち、祇澄が硬化した肉体で妖を打つ。妖を退治し、世を守る。その意思が乗った鋭い一撃。
「ああもう、しゃーねーっすね」
「すまん、恩に着る」
「気力カツカツデスヨー!」
回復を行うゲイルやリーネが気力不足を訴え、槐がその気力回復に立ちまわる。回復が途切れれば前線が崩れ落ちる。そうなれば敗色濃厚になるだろう。
一手間違えれば押し返される。それを肌で感じながら、しかし覚者達は退くつもりはなかった。
安全圏からの一撃離脱戦法をとっていれば、時間はかかるが倒せていただろうか。
拳を交わしてようやくわかる。それは否だ。戦略として上策かもしれないが、気持ちで負けていれば隙を突かれて押し負ける。
勝敗を分けたのは、けして退かぬという強い意志。ランク3の妖という暴威に恐れず挑む鋼の心。それと幾多の妖戦を経て得た経験と肉体。心技体を兼ね備えた覚者の体。
『ボージーソワカ』
「マインゴート! ここまでデス……」
「流石ランク3……ですが……」
リーネとラーラが妖の攻撃で膝を屈するが、勝敗は既に決していた。
「AAAにばかり、頼るわけにも、行きません」
限界が近い体に鞭を打ち、相手の懐に潜り込む祇澄。既に気力も体力も限界が近い。ここで決めなければ次の攻撃で倒れてしまうだろう。そんな状態であっても、変わらず体は動いてくれる。日々の鍛錬に感謝しながら、祇澄は滑るように歩を進める。
「必ず倒します。その為に、私達は来たのです!」
硬化した肉体で妖を穿つ祇澄。
その心、その一撃に屈するように、妖は空気に溶けるように消え失せた。
●
「なんと勝てたようネ……」
夏実は妖が消えたことを確認し、橋の中に入る。そのまま倒れている覚者へ治療を始めた。気力がほぼ尽きているため簡単な応急処置程度しかできないが、それでもないよりはましだ。
「初めての依頼だったけど、きつかったね」
言って頭を掻くリリス。戦闘が終われば子供っぽさが表情に現れるのか、痛みをこらえるように笑みを浮かべた。経験不足もあって一番深手を負ってしまった。橋の上で反身を起こし、守護使役に頼みライフルをしまってもらう。
「これで正月休みに入れます。あー、疲れた」
覚醒状態を解除し、車椅子に乗る槐。疲れを表現するように気だるげにため息をついた。FiVEでは必要最低限しか動かないと決めたのだが、これは過剰だったか。首を振って正月休みに何をするかに考えを移行させる。
「ホント疲れまシター。愛しの彼に癒してもらうデス」
リーネは傷ついた体を確認しながらそんなことを言う。一目ぼれした愛しの彼。この傷を見れば、きっと心配してくれるだろう。そこからアピールすればきっと……。そんな恋する乙女の戦略。それがどうなるかは、また別の物語。
「安らかに眠ってくれ」
妖が消えた位置で祈りを捧げるゲイル。心霊系の妖が何故発生するかはわからない。だが無念をもって生まれたというのなら、その無念がこれで消えてくれる事を願う。死した魂に弔いを。そして安らかな眠りを。
「そうですね。安らかな、眠りを」
ゲイルに倣うように祈りを捧げる祇澄。妖が廃すべき対象とはいえ、死して消えた者を悪しざまに攻めるつもりはない。死した魂は、自然に帰る。それは祇澄が奉ずる教えの一つ。相対した仲だからこそ、真摯に祈りを捧げる。
「これからこの強さの妖と戦うことが増えてくるのでしょうか」
戦いを反芻しながらラーラが三角帽子をの位置を直す。端的に言って強かった。事前付与や安全圏など、こちらに有利な状況であってもこの疲弊だ。これが妖に有利なフィールドでの戦いだったら……。それを思うと身震いする。
「僕達FiVEの、勝ちだ!」
橋の真ん中で声高々に叫ぶ小唄。秘匿解除したFiVE、その存在を示すように大きく。妖の強さは誰の目にも明らかで、それを調伏した覚者集団の強さは語るまでもない。橋の外から歓声が上がる。覚者の勝利を祝う声が。
その歓声応えるように手をあげて、帰路につく覚者達。拍手喝采の中、勝利の道を進んでいく。
覚者を称える音は、彼らがFiVEの用意した送迎者に乗り、その車が消えるまで鳴り続けた。
古くより、橋には水難を避けるために人身御供が捧げられるという風習があった。あの橋も、そういった時代に作られた橋を改修して今に至る。その生贄には生娘や徳の高い僧が選ばれたという。
あの僧兵が何故妖になって迷い出たかの真偽は不明だ。この逸話に関係あるのかもしれない。無いのかもしれない。
ただ言えることは、この橋にもう僧兵の妖は現れないということだ。
今日もこの橋は、対岸を結び交通の要として機能している。
年の終わりを告げる除夜の鐘が、静かに鳴り響いた――
ランク3の妖。
積極的に暴れまわる存在ではないが、橋に入る者には容赦なく襲い掛かるそれ。橋の外にいれば安全と分かり、遠巻きに見る者が増えてくる。時折妖退治に挑戦する覚者もいたが、皆返り討ちにあっていた。
「橋を封鎖するランク3の妖デスカ……強敵の予感がシマスネ!」
そんな場所に明るい声で拳を握って現れる『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)。戦闘服に身を包み、金髪を靡かせて颯爽と橋の上を歩いていく。土の加護は既にかけてある。不安はあるが、負けるつもりはなかった。
「わざわざ強敵と判っている奴の相手とか実に嫌なのですが、その分インセンティブも多い位と云うものなのです」
『偽弱者(はすらー)』橡・槐(CL2000732)はそんなことを呟きながら、車椅子から降りて橋を進む。除名されない程度に働く、とは槐の弁だ。この戦いが終わったらゆっくり正月休みを取ろうと心に誓った。
「マサにベンケーって事ね! ま、打ち倒してもケライにはならないのがチョト損な気分だけど……」
妖の風貌を見て『デブリフロウズ』那須川・夏実(CL2000197)が苦笑する。橋に入ることなく、境界の一歩後ろで待機する夏実。前世との絆を強めながら、作戦の内容を再確認する。作戦の齟齬がないよう、皆と話し合う。
「ボクは、ちまちま嫌がらせでお坊さんの隙を作ってみるから、攻撃よろしくね」
ライフルを手にリリス・スクブス(CL2001265)が柔軟運動をしていた。見た目は小学生女子だが、一世紀を生きた大人の女性だ。最も言動は見た目と変わらない。ライフルさえなければ、大人に止められそうな風貌だ。
「以前、ランク3一歩手前の妖を相手にしたことがありますが……ついに、ランク3の妖を相手にする時が来てしまいましたね」
呼吸を整えながら『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)が妖を見る。妖のランクは知性と戦闘力で判断されるという。ならば成りかけと成った者とその差がどれほどのものなのか。それを今肌で感じる事になる。
「ランク2の妖でも充分厄介だというのに、ランク3となると一体どれだけ脅威となるのか……」
緊張した声で『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)が口を開く。個体差こそあれ度、ランク2の妖は決して油断できない存在だ。その一つ上のランク。それがどれだけの脅威となるのか。これ以上力をつける前に、ここで祓わなくては。
「ですが、怯んでばかりも、居られませんね」
妖から視線を逸らすことなく『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)が告げる。相手の強さは十分に理解している。だが立ち止まるつもりはない。土の加護を身に纏わせ、妖の前に立ち構えを取る。
「でも、何だろう。少しわくわくもする……ね!」
これから始まる戦いに胸を躍らせる御白 小唄(CL2001173)。揺れる狐の尻尾はこれから始まる激戦を感じながら、しかし興奮を隠しきれない証か。制服を翻し、真っ直ぐに橋を歩いて妖の前にやってくる。
橋を歩き、各々のポジションに構える覚者達。
妖の前に祇澄と槐と小唄が。
その後ろに控えるようにゲイルとリーネが。
さらに後方には妖を打ち据えようとするリリスとラーラが。
そして橋の外から味方を癒そうと夏実が。
『ギャーテーギャーテー、ハラギャーテー』
その気迫を戦闘開始と受け取ったか、妖が祈るように手を動かす。そして棍を覚者達に向け、経を唱えた。意味などないのだろう。そこにあるのは明確な戦意。
それぞれの思いを込めて、覚者達と妖の戦いは幕を開ける。
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「いくぞ! これでもくらえっ!」
先陣を切ったのは小唄だ。天の源素を身に纏い、ステップを踏んで舞い踊る。清楚な空気が仲間たちに行き届き、神具の切れ味を増す。その動きを維持したまま体を回転させ、妖に向かって蹴りを放った。刃のような一撃が妖を裂く。
心霊系の妖は物理的な攻撃に耐性を持つ。だが絶対の防御ではない。小唄の足から伝わる確かな感覚。それは深手を負わせたわけでは無いが、無傷でもない。少しずつ、確実に。それが勝利への最短の道だと知っているから。
「くっ、手ごたえが薄い……それでもっ!」
「問題ないです。ガンガンやってください」
盾を構えて槐が攻撃を促す。槐が前衛にいるのは純粋な火力源としてではない。妖を後ろに通さないための壁役としてである。自然治癒力を高める香を周囲に巻きながら、妖の行動を盾の後ろから睨むように見みる。
妖が動くより早く槐が動く。天の源素を霧に変えて振りまき、その視界と動きを封じる。蜘蛛の糸の如くまとわりつく高密度の霧。それは妖の体を傷つけることはないが、その動きを封じることで結果、仲間達への負担を減らしていた。
「私の正月休みの為にも境界の端に沈むが良いのです。信仰無き僧兵」
「いざ、参ります!」
拳に土の加護を纏わせ、祇澄が妖に迫る。棍の動きに注意しながら、重心を崩すことなく間合いを詰めていく。硬化した肉体と拳で棍の打撃を弾きながら、さらに一歩前に。その歩みが描くは円。回るように相手の懐に。
重心を動かさぬ動きは、まるで滑るように。荒々しい戦いの中においても、剣舞のような優雅さを失わない。その動きに妖も見惚れたか、構えに一瞬のスキが生じる。その隙を逃すことなく、祇澄は硬化した拳の一撃を妖に突き立てた。
「少々、荒っぽく、なりますが!」
「シュトゥルム・ウント・ドラング! 一気に行くデスネ!」
元気よく叫んで神具を構えるリーネ。相手は心霊系の妖。ホラーは苦手だが、それを怖がっている余裕はない。ここで一手遅れれば、それは後に大きく響くのだ。恐怖を打ち消すように明るく叫ぶ。
事前準備は十分だ。あとは一気に攻めるのみ。リーネの周りを青の蝶が飛び回る。それはリーネに神秘的な力を与え、神具の攻撃力を増していく。神具より放たれる貫くような一撃。それは妖の肩を穿ち、その動きを一瞬止める。
「作戦は命を大事にデース!」
「ああ、誰一人殺させやしない」
決意を口にするゲイル。いざとなれば橋の外に出れば攻撃されない。そうと分かっていても、目の雨の妖を前にすればそれが容易でないことが感じ取れる。だからこそ、皆で勝利を勝ち取ろう。その決意。
腕を肩の位置まで持ち上げて、目をつぶる。イメージするのは大海原。寄せては返す波の音。イメージの波のリズムに合わせて、手を動かし呼吸をする。水の源素がゲイルの体内で循環し、傷を癒す雨となって仲間に降り注ぐ。
「これ以上力をつける前に、ここで倒しきる!」
「うん。じゃあ行くよ」
黒の羽をふわりと広げ、リリスが宙を舞う。地面から足を話しながら、しかし飛行が不安定にならないぎりぎりの高さ。妖までの射線は十分通っている。それを確認した後で、ライフルを構えた。
両脇をしっかりししめて、骨で挟むようにライフルを固定する。羽を小刻みに動かして高度を安定させる。呼吸を整えながら妖を狙う。彼我の距離、重力、風、弾丸の重さ……様々な条件を脳内で計算し、ライフルの引き金を引く。
「うまく相手の攻撃リズムを崩せばっ!」
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
魂の炎を燃やし、ラーラが神秘の力を蓄える。妖の動きを見て、それを見てからラーラは動く。目まぐるしく変わる戦況のすべてを把握することはできない。だからこそ、あえて一歩遅れて状況を整えてから動く。
冬の夜を明るく暖かく照らすように炎を生み出す。熱く熱く熱く、明るく明るく明るく。念じるままに炎は大きくなり、それはラーラの力により弾丸のように変わる。圧縮された赤い熱弾を妖に向かって放った。弾丸は命中し、。一気に爆ぜる。
「味わいなさい、魔女の一撃!」
「皆無理しちゃ駄目だからネ! 弱ったら交代するノヨ!」
橋の外側から夏実が言う。一人安全圏から戦いを観察するの。効率の良さをとはいえ、自分以外の覚者が傷ついているのを見るのは罪悪感を感じる。だが泣き言を言っている余裕はない。
言葉で仲間と確認を取りながら、一番傷を受けている人間を判断する。医術の知識と戦闘経験。そこから解を導き出し、夏実は倒れそうな人間に癒しの術を施す。余裕はそんなに多くない。それを肌で感じながら、焦ることなく回復に徹する。
「危なくなったらスイッチ! 中衛組は位置を入れ替えて捻刺棍の被害をブンサンよ!」
夏実の指示が飛び、覚者達は流動的に位置を変えながら妖に挑む。
今まで退治した妖なら、問題なく倒せていただろう。だが、相手はまだ倒れる気配がない。息を乱さず、鋭い攻撃を繰り返す。
戦いは少しずつ激化していく。
●
円を描くような足運びと、直線的な棍の動き。時折混ぜられる術式のような攻撃。
その一撃一撃が今まで戦った妖を凌ぐものだ。薙ぎ払って弱ったところを責め立てられ、喝の一声で動きを一瞬封じられる。
「く、ぅっ……この、程度で、負けませんよ!」
「まだだっ、まだ戦えるっ!」
「マダマダ、デスネー!」
祇澄、小唄、リーネがその攻撃を前に大きく体力を削られ、命数を使い意識を保つ。
「一旦避難します!」
限界を感じたラーラが一時攻撃から逃れるために橋の外に避難する。これにより火力が減衰したのを好機と見たのか、妖は棍を握る力を籠める。
『ハラソギャーテー』
弓の様に自信を引き絞り、棍を矢とする。己自信を一つの武器と化した一撃を――
「ソイツ溜まってるわ! 気を付けて!」
「夢の中で力んでいるが良いのですよ」
槐が眠りを誘う舞を踊り、その集中を弛緩させる。その為にわざわざ行動を控えていたと言わんばかりの笑みを浮かべる。
「ええと、こっちに意識は向いてないみたいだから……って――」
リリスは妖の意識が自分に向いているか否かで行動を決めていた。だが意識と同時に攻撃されるのが戦場。攻撃の意志を察した時には、妖の一撃を受けていた。命数を削るほどの傷を受け、意識を切り替える。
「交代だ。前に出るぞ」
「はい、すぐに、戻ります」
中衛のゲイルが疲弊した前衛と入れ替わるように前に出る。本来後ろで回復を行うゲイルだが、状況的にそれがベストであるなら前に出ることを躊躇わない。
この妖を後衛に通さないこと。その為に流動的に動くこと。それが作戦の要。ダメージは全体的に分散されるが、戦闘不能者を可能な限り出さないために。
故に、
「御白、そろそろ危険だ。後ろに下が――」
「へへっ……! 何か、楽しくなってきた!」
前線に立ち続けようとする小唄は他の覚者に比べて深くダメージを受けていた。ただひたすらに攻撃を。その分与えたダメージは多いが、敵からの攻撃を受ける数も増える。
「まだだ……!」
「ぎゃーてーぎゃーてうるさいんですよ」
「流石ランク3ですね……!」
ゲイル、槐、ラーラが九字の印を切られ、命数を失うほどの傷を受ける。
「はっ、くぅ……!」
「ご免、後は任せ……た……」
リリスと小唄が力尽きて倒れ伏す。その穴を埋めるようにリーネが前に出る。
「相手も疲れてるワ。このまま攻めマショウ!」
夏実が回復の術を施す。こちらの疲弊も激しいが同様に相手の疲弊も激しい。ここで一気に攻め立てれば、勝利に手が届く。
「相手が誰だろうと私がやることは変わりませんっ!」
「っ、まだ、いけます!」
ラーラが炎の弾丸を放ち、祇澄が硬化した肉体で妖を打つ。妖を退治し、世を守る。その意思が乗った鋭い一撃。
「ああもう、しゃーねーっすね」
「すまん、恩に着る」
「気力カツカツデスヨー!」
回復を行うゲイルやリーネが気力不足を訴え、槐がその気力回復に立ちまわる。回復が途切れれば前線が崩れ落ちる。そうなれば敗色濃厚になるだろう。
一手間違えれば押し返される。それを肌で感じながら、しかし覚者達は退くつもりはなかった。
安全圏からの一撃離脱戦法をとっていれば、時間はかかるが倒せていただろうか。
拳を交わしてようやくわかる。それは否だ。戦略として上策かもしれないが、気持ちで負けていれば隙を突かれて押し負ける。
勝敗を分けたのは、けして退かぬという強い意志。ランク3の妖という暴威に恐れず挑む鋼の心。それと幾多の妖戦を経て得た経験と肉体。心技体を兼ね備えた覚者の体。
『ボージーソワカ』
「マインゴート! ここまでデス……」
「流石ランク3……ですが……」
リーネとラーラが妖の攻撃で膝を屈するが、勝敗は既に決していた。
「AAAにばかり、頼るわけにも、行きません」
限界が近い体に鞭を打ち、相手の懐に潜り込む祇澄。既に気力も体力も限界が近い。ここで決めなければ次の攻撃で倒れてしまうだろう。そんな状態であっても、変わらず体は動いてくれる。日々の鍛錬に感謝しながら、祇澄は滑るように歩を進める。
「必ず倒します。その為に、私達は来たのです!」
硬化した肉体で妖を穿つ祇澄。
その心、その一撃に屈するように、妖は空気に溶けるように消え失せた。
●
「なんと勝てたようネ……」
夏実は妖が消えたことを確認し、橋の中に入る。そのまま倒れている覚者へ治療を始めた。気力がほぼ尽きているため簡単な応急処置程度しかできないが、それでもないよりはましだ。
「初めての依頼だったけど、きつかったね」
言って頭を掻くリリス。戦闘が終われば子供っぽさが表情に現れるのか、痛みをこらえるように笑みを浮かべた。経験不足もあって一番深手を負ってしまった。橋の上で反身を起こし、守護使役に頼みライフルをしまってもらう。
「これで正月休みに入れます。あー、疲れた」
覚醒状態を解除し、車椅子に乗る槐。疲れを表現するように気だるげにため息をついた。FiVEでは必要最低限しか動かないと決めたのだが、これは過剰だったか。首を振って正月休みに何をするかに考えを移行させる。
「ホント疲れまシター。愛しの彼に癒してもらうデス」
リーネは傷ついた体を確認しながらそんなことを言う。一目ぼれした愛しの彼。この傷を見れば、きっと心配してくれるだろう。そこからアピールすればきっと……。そんな恋する乙女の戦略。それがどうなるかは、また別の物語。
「安らかに眠ってくれ」
妖が消えた位置で祈りを捧げるゲイル。心霊系の妖が何故発生するかはわからない。だが無念をもって生まれたというのなら、その無念がこれで消えてくれる事を願う。死した魂に弔いを。そして安らかな眠りを。
「そうですね。安らかな、眠りを」
ゲイルに倣うように祈りを捧げる祇澄。妖が廃すべき対象とはいえ、死して消えた者を悪しざまに攻めるつもりはない。死した魂は、自然に帰る。それは祇澄が奉ずる教えの一つ。相対した仲だからこそ、真摯に祈りを捧げる。
「これからこの強さの妖と戦うことが増えてくるのでしょうか」
戦いを反芻しながらラーラが三角帽子をの位置を直す。端的に言って強かった。事前付与や安全圏など、こちらに有利な状況であってもこの疲弊だ。これが妖に有利なフィールドでの戦いだったら……。それを思うと身震いする。
「僕達FiVEの、勝ちだ!」
橋の真ん中で声高々に叫ぶ小唄。秘匿解除したFiVE、その存在を示すように大きく。妖の強さは誰の目にも明らかで、それを調伏した覚者集団の強さは語るまでもない。橋の外から歓声が上がる。覚者の勝利を祝う声が。
その歓声応えるように手をあげて、帰路につく覚者達。拍手喝采の中、勝利の道を進んでいく。
覚者を称える音は、彼らがFiVEの用意した送迎者に乗り、その車が消えるまで鳴り続けた。
古くより、橋には水難を避けるために人身御供が捧げられるという風習があった。あの橋も、そういった時代に作られた橋を改修して今に至る。その生贄には生娘や徳の高い僧が選ばれたという。
あの僧兵が何故妖になって迷い出たかの真偽は不明だ。この逸話に関係あるのかもしれない。無いのかもしれない。
ただ言えることは、この橋にもう僧兵の妖は現れないということだ。
今日もこの橋は、対岸を結び交通の要として機能している。
年の終わりを告げる除夜の鐘が、静かに鳴り響いた――

■あとがき■
どくどくです。
書いた後で、なんで坊さんにしたのか自分でもわからなくなってしまいました。あれぇ?
ランク3との戦いは如何だったでしょうか?
強敵を倒せたのは、皆様の努力と作戦の結果です。
……もう少しBS混ぜてもよかったかなぁ……?(ぶつぶつ)
ともあれお疲れさまでした。先ずは傷を癒してください。
それではまた、五麟市で。
書いた後で、なんで坊さんにしたのか自分でもわからなくなってしまいました。あれぇ?
ランク3との戦いは如何だったでしょうか?
強敵を倒せたのは、皆様の努力と作戦の結果です。
……もう少しBS混ぜてもよかったかなぁ……?(ぶつぶつ)
ともあれお疲れさまでした。先ずは傷を癒してください。
それではまた、五麟市で。
