おいやめろ。こっちにくるな河童の手
●河童に憑かれた男三人
河童。
緑色の肌を持ち、背中に甲羅を背負った水辺に棲む古妖である。川が多い日本では割合ポピュラーな古妖と言えよう。
だが、それが人に取り憑くということはあまり知られていない。河童に取り憑かれた者は心身ともに消耗し、我を失ったかのようにふらふらと歩きまわるようになる。
そして――
「ちちしりふとももー!」
「男! 筋肉! イケメン!」
「ちっちゃいっこらぶっ!」
取り憑いた人間の性的な欲求を増大させ……まあ、えっちぃ行為をするようになるという。
渓流で釣りに来て河童に取り憑かれた三人の男達は、そんなことを叫びながら街の方に進んでいく。己の欲望を満たすために。
●FiVE
「――ということが起きるみたいなんです」
集まった覚者を前に、間延びした口調で久方 真由美(nCL2000003)が出迎える。人数分の粗茶とお茶請け。それが置かれたテーブルに全員が座ったことを確認し、真由美は説明を開始した。
なお、真由美は努めて笑顔で話しているが、会議室の空気はとても冷え切っていた。
「河童に憑かれた人は三名。身体能力は増していますが特別な技に目覚めたわけではありません。飛び道具もなく迫ってくるのですが……」
「ですが?」
「いろいろ触ってきます」
あ―……。覚者達はその一言でいろいろ察した。
「また、河童の身体能力と水を掻くような動きで、人の壁をあっさり乗り越えてきます。あと空を飛んでも飛びついてきます」
メタなこと言うと、ブロックができなかったり飛行で逃げるのもだめなのですね、わかりました。
これはまずい。具体的に言うとセクシャル的にハラスメントだ。如何に全年齢とはいえ敵は明確にそういう意図をもって触ってくる相手だ。迂闊に近づけば大変な目に合う。
そしてキャラクターのシリアス度がダウンし、ギャグ部分がアップしてしまうだろう。どんなキャラでもギャグサイドに転げ落ちるのは一瞬。シリアスキャラを保ちたいのなら、できるなら避けるべきだ。
「……まあ人的被害はないようだし、警察に任せてこのまま放置でも――」
「河童に憑かれた人はかなり消耗し、記憶障害に陥るようです。長期の放置は危険という判断がなされました。
あと――これを見たのが私だからいいですが、次は万里ちゃんが見るかもしれないので早急な解決をお願いします」
はい、退路断たれましたー。
覚悟を決めた覚者達は、互いを慰めあいながら現場に向かうのであった。
河童。
緑色の肌を持ち、背中に甲羅を背負った水辺に棲む古妖である。川が多い日本では割合ポピュラーな古妖と言えよう。
だが、それが人に取り憑くということはあまり知られていない。河童に取り憑かれた者は心身ともに消耗し、我を失ったかのようにふらふらと歩きまわるようになる。
そして――
「ちちしりふとももー!」
「男! 筋肉! イケメン!」
「ちっちゃいっこらぶっ!」
取り憑いた人間の性的な欲求を増大させ……まあ、えっちぃ行為をするようになるという。
渓流で釣りに来て河童に取り憑かれた三人の男達は、そんなことを叫びながら街の方に進んでいく。己の欲望を満たすために。
●FiVE
「――ということが起きるみたいなんです」
集まった覚者を前に、間延びした口調で久方 真由美(nCL2000003)が出迎える。人数分の粗茶とお茶請け。それが置かれたテーブルに全員が座ったことを確認し、真由美は説明を開始した。
なお、真由美は努めて笑顔で話しているが、会議室の空気はとても冷え切っていた。
「河童に憑かれた人は三名。身体能力は増していますが特別な技に目覚めたわけではありません。飛び道具もなく迫ってくるのですが……」
「ですが?」
「いろいろ触ってきます」
あ―……。覚者達はその一言でいろいろ察した。
「また、河童の身体能力と水を掻くような動きで、人の壁をあっさり乗り越えてきます。あと空を飛んでも飛びついてきます」
メタなこと言うと、ブロックができなかったり飛行で逃げるのもだめなのですね、わかりました。
これはまずい。具体的に言うとセクシャル的にハラスメントだ。如何に全年齢とはいえ敵は明確にそういう意図をもって触ってくる相手だ。迂闊に近づけば大変な目に合う。
そしてキャラクターのシリアス度がダウンし、ギャグ部分がアップしてしまうだろう。どんなキャラでもギャグサイドに転げ落ちるのは一瞬。シリアスキャラを保ちたいのなら、できるなら避けるべきだ。
「……まあ人的被害はないようだし、警察に任せてこのまま放置でも――」
「河童に憑かれた人はかなり消耗し、記憶障害に陥るようです。長期の放置は危険という判断がなされました。
あと――これを見たのが私だからいいですが、次は万里ちゃんが見るかもしれないので早急な解決をお願いします」
はい、退路断たれましたー。
覚悟を決めた覚者達は、互いを慰めあいながら現場に向かうのであった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.河童憑き三人の打破。
2.犬に噛まれたと思ってあきらめる。
3.なし
2.犬に噛まれたと思ってあきらめる。
3.なし
アラタナル開始前からずっと温めていたネタ……今こそここに!
●敵情報
・河童憑き(×3)
分類するなら古妖。河童が人間に憑依しています。憑かれた人間は休日に釣りに来た高校生男子です。
憑依した人間の性的な欲望を増幅させます。また身体能力を増幅させ、覚者並の身体能力を得ます。ですが源素には目覚めていないため、実質通常攻撃程度です。
ですが彼らはその能力を『欲望を満たす』ことのみに使用します。具体的にはセクハラ。体の各部分に触ったりしてきます。老若男女関係ありません。どうやらストライクゾーンはかなり広いようです。もう男子ってー。
河童はきちんとしたお祓いをすればすぐに離れます。その為にも一度戦闘不能にしないといけません。
ぶっちゃけギャグシナリオです。難しく考えずに、適当に攻撃していれば倒れます。その間に何をされるかは、まあお察しください。
なお、参加者全員が一二歳以下だった場合、通常攻撃しかしない相手と殴り合う純戦となります。紳士協定は重要です。
戦闘能力
水を掻く P 水を掻くような動きで人の壁を乗り越えます。ブロックできません。
河童跳躍 P 跳躍して攻撃してきます。〔飛行〕で飛んでいても攻撃可能。
●場所情報
とある山の中。街に下る山道の途中が戦場になります。広さや足場に問題なし。
時刻は昼。人が来る可能性はほぼゼロ。
戦闘開始時、敵前衛に『河童憑き』が三体います……が、すぐに乱戦になると思いますので隊列とか気にしなくていいです。
●備考
EXプレイングに【覚悟完了】と書かれた方は容赦なく触らせてもらいます。逆に書かれていない方には、それなりに対応します。
依頼に参加した時点で覚悟済みとは思いますが、どうしても避けてほしいこと(体に傷があるとか)がある方はプレイング(EXでも可)に明記してください。考慮いたします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年01月02日
2016年01月02日
■メイン参加者 8人■

●
目の前には河童に憑かれた男子高校生三名。
その前に立つのは河童から解放すべく立ちふさがる覚者八名。
彼我の戦力差は言うまでもない。数の優位は言うまでもなく、源素の力が使えるか否かは戦いに大きく影響する。如何に河童に憑かれた者の身体能力が覚者並になったとはいえ、源素を使えるか否かは大きい。その有無は単純な火力差というだけではなく、戦いの選択肢が増えるという意味も含めて大きな差なのだ。
繰り返そう。彼我の戦力差は言うまでもない。この勝負、FiVEの覚者が勝利したも同然だ。
だが――
河童憑きを迎え撃つ覚者の顔は、一様にして余裕がなかった。
「河童に憑かれてしまうとは高校生達も不憫だなぁ」
高校生たちを見ながら、『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は呟いた。桜の花弁が描かれた空色の着物を風に揺らし、腕を組んで首を縦に振っている。男子高校生に罪はない。悪いのは河童なのだ。
「俺的には触られる程度なら別にへーきだと思ってるんだけど……甘い?」
工藤・奏空(CL2000955)は夢見の話を思い出し、そんな言葉を口にする。五麟学園中等部の制服を着た中学生男子。男子高校生に狙われることはないだろうと高をくくっているのだが……世の中にはそういう需要もあるということを身をもって知ることになる。
「えっちなのは、いけないことじゃないよ。でも時間と場所と相手の気持ちを考えないとだめだよ」
言って金色の髪をかき上げる『デウス・イン・マキナ』弓削 山吹(CL2001121)。五麟学園高等部のブレザーを着た山吹。彼女はそういう気持ちを否定しない。それでもTPOはわきまえなくてはいけない。少なくとも古妖に憑かれて行うのはダメだ。
「え? えっちなんですか……最近、そんなお仕事をうっかり請けちゃってます……」
怯えるような目で男子高校生を見る菊坂 結鹿(CL2000432)。五麟学園中等部制服を着た結鹿。品行方正な結鹿からすれば、高校生男子の遠慮ない行動を見るだけでも驚きなのに。それが自分に向かってくるなんて……どうして私はこの仕事を受けてしまったのでしょうか?
「このような、おいたをするとは……懲らしめて、差し上げましょう」
拳を握り決意を露にする『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)。白の小袖と赤い袴の巫女服を着て、戦いに挑む。祇澄にとってこの服は正装。悪しき古妖に鉄槌を下し、不運にも取り憑かれた一般人を助けよう。そんな気合の入った衣装だ。
「女性の敵が現れたようですね。あ、男性もですか……つまり人類の敵ですね! 許せません!」
怒りの表情を隠すことなく『蒼炎の道標』七海 灯(CL2000579)が河童憑きを睨む。五麟学園の制服に身を包み、鎖鎌を手に凛と立つ灯。夜に迷うものに灯りを示すがごとく、迷わぬ心で灯は敵を見据える。具体的に言うとえろい男子許すまじ。
「櫻火真陰流、酒々井数多、殺ります。男子のスケベ心を斬り落とす」
愛刀の『愛対生理論』を手にして『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)が闘志を燃やす。緋鞘に赤い柄の刀と五麟学園高校生の制服。河童に取り憑かれたとはいえ、その行動の元……つまりえっちぃ心はその男子の心なのだ。許すまじ。
「相手は、変な古妖さんに、憑かれてるとはいえ……普通の、一般人……なんだよね……?」
そんな二人に静止をかけるように『罪なき人々の盾』明石 ミュエル(CL2000172)がおろおろと慌てふためく。普段来ているガーリーな服装ではなく、五麟学園制服に身を包んだ彼女。河童に憑かれた可哀そうな男子を助けなくては。彼らに悪気はない――
「お、あんなところにかわいい子がいるぞ。JC一人にJK四人と巫女一人!」
「巨乳……普通……貧胸……ここはおっぱいの桃源郷やー」
「あの筋肉はいいものだ。少年もまたいいものだ」
男子高校生に悪気ない。これぐらいは誰もが心に抱き、しかし表に出すことなく思うもの。それを押さえるのが理性であり、理性を崩している河童こそ、諸悪の根源なのだ。
だが、その発言と手の動きは覚者達もドン引きだった。
●
冒頭の繰り返しになるが、戦闘という意味では覚者が圧倒する。
だが、圧倒とはいえそれなりに時間がかかるのは事実だ。鎧袖一触、一撃必殺でない以上はどう頑張っても被害は出る。
そしてSTとは、依頼の描写を事細かにしないといけない仕事ダカラナー。シカタナイヨナー。
「女性陣の影に隠れてっていうのは男として色々とダメな気がするからな」
先陣を切ったのはゲイル。彼は本来後衛だが、男としてあえて前に出る。河童憑きの一人に立ちふさがり、右手を袖から抜いた『肩脱ぎ姿』となる。鍛えられたゲイルの筋肉がさらされ――
「ああ、鍛えられた腹筋、胸筋……!」
「こら、触るな!」
「犬耳青年の和服肩脱ぎマッチョとか! もう憧れを通り越して神!」
「やめ、変な手つきで触るんじゃ……うわあああ! 落ち着け! イケメンとかならともかく俺みたいなおっさんのそういう場面というのは誰も得しないだろう!」
「そんなことありません! おじさんは……僕の理想です!」
紳士にゲイルを見つめる男子。その言葉に、二人は見つめ合い淡いトーンがかかった世界が生まれた。
「悪い子には、お仕置きで――」
「巫女さーん!」
「ひゃああああ!」
力を込めた一撃を放とうとする祇澄に飛びついてくる男子。琴富士の溜めターンの隙をついての行動だ。いやだって溜め中は回避できないし。抱き着くように手を回し、巫女服の布を味わうように頬と手を動かす男子。
「くっ……この程度……ううっ」
「新鮮な布の肌触り。洗い立ての清潔な香り。そしてそれに混じる巫女さんの匂い」
「なっ、そんなこと、言わな、んっ……!」
「そして巫女服を通して伝わってくる巫女さんのボディライン。これは上からはちz――」
「ざ、蔵王っ! これで、正確なサイズは、わかりません! これなら、大丈夫っ!」
とっさに蔵王を使って土の守りを施す祇澄。余り大丈夫じゃない気もするけど、まあ。
「ああ、ああう。そうだ……機化硬!」
迫る河童憑きとその手つき。その意味を理解しているのか硬直するミュエル。祇澄の方を見て、これだと付喪の因子で身を固くする。だが、
「体硬くしても、関係なく、触ってくる……あんまり、意味ない……」
もにもにと触ってくる男子。その感覚は例え身を固くしてもダイレクトに伝わってくる。指が動くたびにミュエルの心を恐怖が支配していく。怖くて一歩も動けない。
「金髪……アルビノ……」
「っ……そんなに、触らないで……」
「なんで? こんなに可愛いのに。人形みたいだ……」
「え……?」
ハーフの容貌が理由で奇異な目で見られたミュエル。その象徴である金髪と色白の肌を褒められて、ミュエルの心に綻びが――
「この小さな胸も、とても可愛いよ」
「ふぇええええん!」
そんなことはなかった。
「す、少しでも早く戦闘不能にして早く終わらせましょう!」
「背中をつーっと」
「きぁん!」
惨劇に焦りながら鎖鎌を振り回す灯。動揺しているのか背後に迫る河童憑きに気づかず、背中をつつー、と指でなぞられてしまう。ぞわぞわした感覚と焦りによって手元が狂い、鎖鎌は河童憑きではなく自分を絡めとってしまう。
「ちょっと、これは……!」
「ああ、これはいけない。俺が解いてあげよう」
「ありがと――ちょっと、そこは引っ張らないでください! 鎖が擦れて……んっ」
「ええ、そこってどこかなー。口に出してくれないとわからなーい」
「これは河童憑きのせい、河童憑きのせい。この人に悪意はな……ひんっ!」
自分を縛る鎖鎌を言いように引っ張られて、体を震わせる灯。それは怒りの為かあるいは別の何かか。
「男子! さいってー! にーさまを見習ってよねっ! 紳士で! かっこよくて! 優しくて! えっちなことなんて絶対しないもん!」
刀を鞘走らせ数多が叫ぶ。
「ではそのにーさまが河童に憑かれて強引に迫って来たらどうする!?」
「え……?」
そんなことはない。にーさまはえっちなことをかんがえたりはしない、でももし仮ににーさまがそういうふうに迫って来たら……幼いころから共に育ってきたにーさま。それが強引に自分に迫り、数多の頬を撫でる。
「…………にーさまはそういうことしないけど…………河童に憑かれたなら不可抗力だし……だよね……」
そしてもう片方の手で数多の肩に触れる。ゆっくりと顔を近づけてくるにーさま。ああ、ダメですにーさま。だけど抵抗を許さぬとばかりに強引に体を引き寄せられる。そして重なる二人の影。にーさまの手はゆっくりと下がり数多の胸に――
「――って触るなー! この巨乳はにーさまのためにあるんだからっ!」
妄想に陥っていた数多は胸を触ろうとしていた河童憑きの手を払いのける。やばい、ナチュラルに妄想に耽ってた。場の空気って怖い。
「早く河童を祓って助けてあげないと……!」
カオスな戦場で奏空は男子を撃退しようと奮闘していた。
「落ち着け。君も少し楽しもうぜ」
「うわあああ!」
背後から抱き着かれ、耳元で囁かれた奏空。その手つきに思わず続々としたものを感じる。
「ちょっと待て。俺はちちしりふとももの肉付きも悪く、そして筋肉もない。萌えどころが微妙な設定のキャラクターだぞー!」
「いや、萌えはある。金髪少年はいつの時代においても不動の萌え対象だ。古くはローマ時代に遡り――」
「こんな俺でもストライクゾーンに入るの……?」
「まだ未発達というところが萌え要素なのだ! 成熟していないがゆえにこういう手の動きにも……」
「ひぃあああ! やめろ俺に酷いことする気だな! 姉の本棚にあった薄い本みたいに! 薄い本みたいみたいに!」
大事なことなので二度言いました。
「……ほぅ」
周りの惨劇を見ながら、山吹が守護使役からカメラを受け取る。これはなかなかいい感じではございませんか。
カメラで仲間達の活躍(?)を納めながらうずうずしてきた山吹。時間と場所を考えればえっちなことは許されるわけで、それは例えば今現在こういう状況ならOKだよね? このどさくさ紛れだとわからないよね。うん。
「さてと……じゃあ本気でいこうかー」
ブレザーを脱いで、本気を出す山吹。その手は河童憑きと組みあっている仲間に迫る。
「あれ? 弓削さん、どうしてこっちに迫ってくるの? ってきゃああああ!」
「うわ、すごいわね。何をどうしたらこうなるの?」
「やめ、やめ……っ、そこ、はっ! この裏切者ー!」
「いやー。私も河童に憑かれちゃったみたいでさー。仕方ないよねー」
弓削山吹、一七歳乙女。いろいろしたくなるお年頃なのだ。男にも女にも。
河童憑き+一名は、それぞれの触り心地を比べながら堪能していた。
奏空や結鹿の体は新雪の如く純粋。それを我が手で壊す楽しみ。自分の色に染める快楽があった。
ゲイルの鍛えられた筋肉は努力の結晶。完成された美術品をなぞる喜び。完璧を落とす背徳が。
巫女服を着た祇澄は、穢してはならないならない領域を踏みにじる愉悦感。神聖な者を壊す喜びが。
兄に強く依存する数多は、兄以外の男に触られまいとする抵抗、それを押しのける達成感が。
何をしても反抗しないミュエルは、嫌悪しながらも人形のようにただ触られ続け、その被虐性が行為を加速していく。
鎖に縛られた灯は、動けない相手へ嗜虐心のをそそられる。心折れずに耐えるところがさらに素晴らしいとばかりに。
なんと素晴らしいことか。桃源郷はここにあったのだ。
理性を失った男子高校生はの行為はどんどん加速していく。
●
さて。
菊坂結鹿は真っ白だった。具体的に何がとは言わないが、そのせいもあって河童憑きに体中触れて、ダウンしていた。
「もう……こんな依頼は嫌です……お姉ちゃん……ごめんなさい……」
だが河童憑きの猛攻もここまで。三度目になるが彼我の戦力差は圧倒的だ。
「巫女さんの胸、たーっち。ああ、柔らかい……この弾力、うわぶっ!」
「触りましたね! 誰にも触られた事なかったのに! 絶対に許さない……馬鹿!」
あまりの狼藉にブチキレる祇澄。そして耐えかねたのは祇澄だけではなかった。
「ふっふっふ。ようやく解けました。覚悟してくださいね……」
「アタシの、心の痛み……あなたたちにも、味わわせてあげる……」
「にーさまにも触られたことがないのに……!」
灯、ミュエル、数多も同じようにブチ切れていた。
「あ、あれ? これはもしかしてヤバい雰囲気? ああ、河童憑きどこか行ったみたい――」
仲間達の怒りに我に返る山吹。だがまあ、許してもらえるわけがなかった。
しばらくはダイジェストでお送りします。
「そういえば私の胸を見て小さいとか言いましたね! 言いましたよね!」
「青の炎が赤く変わっていく……これが彼女の暗黒面なのか!?」
「ねぇ、痛い……? 痛いよね……? これ、アタシ達の、心の痛みのぶん、だよ……?」
「ちょ、そんな硬くて鋭いのらめええええ!」
「こっちに来るなぁ! 奏空くん、任せたわよ! 圧撃のノックB!」
「ぎゃあああああ! こっちに飛ばすなぁ! そっちの覚醒はしたくなーい! ゲイルさんタッチ!」
「やめろ! 俺は回復に専念するんだ! ストイックなキャラを維持し……くぅ……っ!」
「もう怒りました。ええ、怒りましたよ!」
「やべぇ。あの巫女。マウントポジションで琴桜パンチしてる……そこにしびれるあこがれるぅ!」
「スカートめくられても、下着じゃないから恥ずかしくないもん!」
「水着でも恥じようよ、酒々井さん。河童憑きガン見してるよ」
「え、マジで……! 許してくださいにーさまー! 私、私……っ!」
「あ。私はこの辺で……」
「逃がすか裏切者ー! さんざん触ってくれたお返し!」
「きゃあああ! だめ……胸は……お願い……うう……」
「あ、しおらしくなった。弓削さんもしかして自分から触るのはいいけど、触られるのに弱いクチ?」
敵味方入り混じっての乱戦は、地力の差もあって河童憑きが一人、また一人と倒れていく。
「これで終わりだっ!」
ゲイルは足を振り上げ、河童憑きに振り下ろす。獣の力が乗ったその一撃は、河童に憑かれて得た防御力を易々と乗り越えて、その脳みそを揺さぶった。その衝撃に力尽きる男子。
「……ああ、何かに目覚め……る」
最後に呟いた男子の声を、ゲイルは聞かなかったとばかりに目をそらした。
●
戦いが終わり――
いろいろ触られて乱れた衣服をただし、覚者達は立ち上がる。いや、服とかは守護使役が一瞬で交換できるのだが、そこは気分である。っていうか直さないと気が済まない。この戦いを忘れるための儀式のようなものだ。
男子三人は気を失っていた。色々怒りはあるが、彼らは犠牲者。先ずは原因である河童を祓わなくては。水気を通さない注連縄で囲んで教えてもらった儀式を行う。憑依していた河童が消えていくのがわかる。
「大丈夫か? 痛いところがあったら言ってくれ」
ゲイルが意識を取り戻した男子を癒す。その一人が頬を赤らめているのに、全力で気づかないふりをするゲイル。落ち着け。もう河童はいない。ということはつまり……いや、深く考えるな!
「……記憶はないようですね。よかった……」
灯が男子三人に質問し、河童に憑かれた間の記憶の有無を確認する。もし覚えていたらどうしてくれようかと思っていた。植物系守護使役がいない以上、記憶を消す手段はない。物理的な口封じもやむなしかと……落ち着こう、私。灯は深呼吸を繰り返す。
「とりあえずこれで一件落着かな。動けないみたいだし、背負って帰るよー」
山吹が動けない高校生を背負い、帰路につく。他の男子はゲイルと奏空が背負うことになった。戦いの様子もカメラに納めたし色々ご満足である。そういえば男子の釣り具とかも持って帰らないといけないかなぁ……と思っていたら、そちらの方に向かう覚者がいた。
「あれ? 帰らないの?」
「河童さん達にお仕置きをしに行きます。乙女を辱めた報いを受けていただきましょう」
「そうだよね……河童さんの、本体……いるんだよね……」
「スケベな指斬り落とすのって何本までセーフ? 首斬り落とすのとか何本までセーフ?」
「いたずらのつもりも、許しませんよ。ええ」
灯、ミュエル、数多、祇澄の乙女達は怒りのオーラを迸らせて、男子たちが釣りをしていた渓流に向かって歩き出す。そこに憑依した河童の本体がいるはずだ。
「ああ、その……頑張ってくれ」
奏空はそのオーラに圧されるように、四人を見送った。女子怖えぇ……と顔を引きつらせながら、結鹿と男子を背負う。河童に同情の余地はないが、それでも憐れには思った。せめて半殺し程度で済みますように。
第二ラウンド、開始――!
渓流に、乙女の怒声と河童の悲鳴が響き渡った。
めでたしめでたし。
目の前には河童に憑かれた男子高校生三名。
その前に立つのは河童から解放すべく立ちふさがる覚者八名。
彼我の戦力差は言うまでもない。数の優位は言うまでもなく、源素の力が使えるか否かは戦いに大きく影響する。如何に河童に憑かれた者の身体能力が覚者並になったとはいえ、源素を使えるか否かは大きい。その有無は単純な火力差というだけではなく、戦いの選択肢が増えるという意味も含めて大きな差なのだ。
繰り返そう。彼我の戦力差は言うまでもない。この勝負、FiVEの覚者が勝利したも同然だ。
だが――
河童憑きを迎え撃つ覚者の顔は、一様にして余裕がなかった。
「河童に憑かれてしまうとは高校生達も不憫だなぁ」
高校生たちを見ながら、『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は呟いた。桜の花弁が描かれた空色の着物を風に揺らし、腕を組んで首を縦に振っている。男子高校生に罪はない。悪いのは河童なのだ。
「俺的には触られる程度なら別にへーきだと思ってるんだけど……甘い?」
工藤・奏空(CL2000955)は夢見の話を思い出し、そんな言葉を口にする。五麟学園中等部の制服を着た中学生男子。男子高校生に狙われることはないだろうと高をくくっているのだが……世の中にはそういう需要もあるということを身をもって知ることになる。
「えっちなのは、いけないことじゃないよ。でも時間と場所と相手の気持ちを考えないとだめだよ」
言って金色の髪をかき上げる『デウス・イン・マキナ』弓削 山吹(CL2001121)。五麟学園高等部のブレザーを着た山吹。彼女はそういう気持ちを否定しない。それでもTPOはわきまえなくてはいけない。少なくとも古妖に憑かれて行うのはダメだ。
「え? えっちなんですか……最近、そんなお仕事をうっかり請けちゃってます……」
怯えるような目で男子高校生を見る菊坂 結鹿(CL2000432)。五麟学園中等部制服を着た結鹿。品行方正な結鹿からすれば、高校生男子の遠慮ない行動を見るだけでも驚きなのに。それが自分に向かってくるなんて……どうして私はこの仕事を受けてしまったのでしょうか?
「このような、おいたをするとは……懲らしめて、差し上げましょう」
拳を握り決意を露にする『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)。白の小袖と赤い袴の巫女服を着て、戦いに挑む。祇澄にとってこの服は正装。悪しき古妖に鉄槌を下し、不運にも取り憑かれた一般人を助けよう。そんな気合の入った衣装だ。
「女性の敵が現れたようですね。あ、男性もですか……つまり人類の敵ですね! 許せません!」
怒りの表情を隠すことなく『蒼炎の道標』七海 灯(CL2000579)が河童憑きを睨む。五麟学園の制服に身を包み、鎖鎌を手に凛と立つ灯。夜に迷うものに灯りを示すがごとく、迷わぬ心で灯は敵を見据える。具体的に言うとえろい男子許すまじ。
「櫻火真陰流、酒々井数多、殺ります。男子のスケベ心を斬り落とす」
愛刀の『愛対生理論』を手にして『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)が闘志を燃やす。緋鞘に赤い柄の刀と五麟学園高校生の制服。河童に取り憑かれたとはいえ、その行動の元……つまりえっちぃ心はその男子の心なのだ。許すまじ。
「相手は、変な古妖さんに、憑かれてるとはいえ……普通の、一般人……なんだよね……?」
そんな二人に静止をかけるように『罪なき人々の盾』明石 ミュエル(CL2000172)がおろおろと慌てふためく。普段来ているガーリーな服装ではなく、五麟学園制服に身を包んだ彼女。河童に憑かれた可哀そうな男子を助けなくては。彼らに悪気はない――
「お、あんなところにかわいい子がいるぞ。JC一人にJK四人と巫女一人!」
「巨乳……普通……貧胸……ここはおっぱいの桃源郷やー」
「あの筋肉はいいものだ。少年もまたいいものだ」
男子高校生に悪気ない。これぐらいは誰もが心に抱き、しかし表に出すことなく思うもの。それを押さえるのが理性であり、理性を崩している河童こそ、諸悪の根源なのだ。
だが、その発言と手の動きは覚者達もドン引きだった。
●
冒頭の繰り返しになるが、戦闘という意味では覚者が圧倒する。
だが、圧倒とはいえそれなりに時間がかかるのは事実だ。鎧袖一触、一撃必殺でない以上はどう頑張っても被害は出る。
そしてSTとは、依頼の描写を事細かにしないといけない仕事ダカラナー。シカタナイヨナー。
「女性陣の影に隠れてっていうのは男として色々とダメな気がするからな」
先陣を切ったのはゲイル。彼は本来後衛だが、男としてあえて前に出る。河童憑きの一人に立ちふさがり、右手を袖から抜いた『肩脱ぎ姿』となる。鍛えられたゲイルの筋肉がさらされ――
「ああ、鍛えられた腹筋、胸筋……!」
「こら、触るな!」
「犬耳青年の和服肩脱ぎマッチョとか! もう憧れを通り越して神!」
「やめ、変な手つきで触るんじゃ……うわあああ! 落ち着け! イケメンとかならともかく俺みたいなおっさんのそういう場面というのは誰も得しないだろう!」
「そんなことありません! おじさんは……僕の理想です!」
紳士にゲイルを見つめる男子。その言葉に、二人は見つめ合い淡いトーンがかかった世界が生まれた。
「悪い子には、お仕置きで――」
「巫女さーん!」
「ひゃああああ!」
力を込めた一撃を放とうとする祇澄に飛びついてくる男子。琴富士の溜めターンの隙をついての行動だ。いやだって溜め中は回避できないし。抱き着くように手を回し、巫女服の布を味わうように頬と手を動かす男子。
「くっ……この程度……ううっ」
「新鮮な布の肌触り。洗い立ての清潔な香り。そしてそれに混じる巫女さんの匂い」
「なっ、そんなこと、言わな、んっ……!」
「そして巫女服を通して伝わってくる巫女さんのボディライン。これは上からはちz――」
「ざ、蔵王っ! これで、正確なサイズは、わかりません! これなら、大丈夫っ!」
とっさに蔵王を使って土の守りを施す祇澄。余り大丈夫じゃない気もするけど、まあ。
「ああ、ああう。そうだ……機化硬!」
迫る河童憑きとその手つき。その意味を理解しているのか硬直するミュエル。祇澄の方を見て、これだと付喪の因子で身を固くする。だが、
「体硬くしても、関係なく、触ってくる……あんまり、意味ない……」
もにもにと触ってくる男子。その感覚は例え身を固くしてもダイレクトに伝わってくる。指が動くたびにミュエルの心を恐怖が支配していく。怖くて一歩も動けない。
「金髪……アルビノ……」
「っ……そんなに、触らないで……」
「なんで? こんなに可愛いのに。人形みたいだ……」
「え……?」
ハーフの容貌が理由で奇異な目で見られたミュエル。その象徴である金髪と色白の肌を褒められて、ミュエルの心に綻びが――
「この小さな胸も、とても可愛いよ」
「ふぇええええん!」
そんなことはなかった。
「す、少しでも早く戦闘不能にして早く終わらせましょう!」
「背中をつーっと」
「きぁん!」
惨劇に焦りながら鎖鎌を振り回す灯。動揺しているのか背後に迫る河童憑きに気づかず、背中をつつー、と指でなぞられてしまう。ぞわぞわした感覚と焦りによって手元が狂い、鎖鎌は河童憑きではなく自分を絡めとってしまう。
「ちょっと、これは……!」
「ああ、これはいけない。俺が解いてあげよう」
「ありがと――ちょっと、そこは引っ張らないでください! 鎖が擦れて……んっ」
「ええ、そこってどこかなー。口に出してくれないとわからなーい」
「これは河童憑きのせい、河童憑きのせい。この人に悪意はな……ひんっ!」
自分を縛る鎖鎌を言いように引っ張られて、体を震わせる灯。それは怒りの為かあるいは別の何かか。
「男子! さいってー! にーさまを見習ってよねっ! 紳士で! かっこよくて! 優しくて! えっちなことなんて絶対しないもん!」
刀を鞘走らせ数多が叫ぶ。
「ではそのにーさまが河童に憑かれて強引に迫って来たらどうする!?」
「え……?」
そんなことはない。にーさまはえっちなことをかんがえたりはしない、でももし仮ににーさまがそういうふうに迫って来たら……幼いころから共に育ってきたにーさま。それが強引に自分に迫り、数多の頬を撫でる。
「…………にーさまはそういうことしないけど…………河童に憑かれたなら不可抗力だし……だよね……」
そしてもう片方の手で数多の肩に触れる。ゆっくりと顔を近づけてくるにーさま。ああ、ダメですにーさま。だけど抵抗を許さぬとばかりに強引に体を引き寄せられる。そして重なる二人の影。にーさまの手はゆっくりと下がり数多の胸に――
「――って触るなー! この巨乳はにーさまのためにあるんだからっ!」
妄想に陥っていた数多は胸を触ろうとしていた河童憑きの手を払いのける。やばい、ナチュラルに妄想に耽ってた。場の空気って怖い。
「早く河童を祓って助けてあげないと……!」
カオスな戦場で奏空は男子を撃退しようと奮闘していた。
「落ち着け。君も少し楽しもうぜ」
「うわあああ!」
背後から抱き着かれ、耳元で囁かれた奏空。その手つきに思わず続々としたものを感じる。
「ちょっと待て。俺はちちしりふとももの肉付きも悪く、そして筋肉もない。萌えどころが微妙な設定のキャラクターだぞー!」
「いや、萌えはある。金髪少年はいつの時代においても不動の萌え対象だ。古くはローマ時代に遡り――」
「こんな俺でもストライクゾーンに入るの……?」
「まだ未発達というところが萌え要素なのだ! 成熟していないがゆえにこういう手の動きにも……」
「ひぃあああ! やめろ俺に酷いことする気だな! 姉の本棚にあった薄い本みたいに! 薄い本みたいみたいに!」
大事なことなので二度言いました。
「……ほぅ」
周りの惨劇を見ながら、山吹が守護使役からカメラを受け取る。これはなかなかいい感じではございませんか。
カメラで仲間達の活躍(?)を納めながらうずうずしてきた山吹。時間と場所を考えればえっちなことは許されるわけで、それは例えば今現在こういう状況ならOKだよね? このどさくさ紛れだとわからないよね。うん。
「さてと……じゃあ本気でいこうかー」
ブレザーを脱いで、本気を出す山吹。その手は河童憑きと組みあっている仲間に迫る。
「あれ? 弓削さん、どうしてこっちに迫ってくるの? ってきゃああああ!」
「うわ、すごいわね。何をどうしたらこうなるの?」
「やめ、やめ……っ、そこ、はっ! この裏切者ー!」
「いやー。私も河童に憑かれちゃったみたいでさー。仕方ないよねー」
弓削山吹、一七歳乙女。いろいろしたくなるお年頃なのだ。男にも女にも。
河童憑き+一名は、それぞれの触り心地を比べながら堪能していた。
奏空や結鹿の体は新雪の如く純粋。それを我が手で壊す楽しみ。自分の色に染める快楽があった。
ゲイルの鍛えられた筋肉は努力の結晶。完成された美術品をなぞる喜び。完璧を落とす背徳が。
巫女服を着た祇澄は、穢してはならないならない領域を踏みにじる愉悦感。神聖な者を壊す喜びが。
兄に強く依存する数多は、兄以外の男に触られまいとする抵抗、それを押しのける達成感が。
何をしても反抗しないミュエルは、嫌悪しながらも人形のようにただ触られ続け、その被虐性が行為を加速していく。
鎖に縛られた灯は、動けない相手へ嗜虐心のをそそられる。心折れずに耐えるところがさらに素晴らしいとばかりに。
なんと素晴らしいことか。桃源郷はここにあったのだ。
理性を失った男子高校生はの行為はどんどん加速していく。
●
さて。
菊坂結鹿は真っ白だった。具体的に何がとは言わないが、そのせいもあって河童憑きに体中触れて、ダウンしていた。
「もう……こんな依頼は嫌です……お姉ちゃん……ごめんなさい……」
だが河童憑きの猛攻もここまで。三度目になるが彼我の戦力差は圧倒的だ。
「巫女さんの胸、たーっち。ああ、柔らかい……この弾力、うわぶっ!」
「触りましたね! 誰にも触られた事なかったのに! 絶対に許さない……馬鹿!」
あまりの狼藉にブチキレる祇澄。そして耐えかねたのは祇澄だけではなかった。
「ふっふっふ。ようやく解けました。覚悟してくださいね……」
「アタシの、心の痛み……あなたたちにも、味わわせてあげる……」
「にーさまにも触られたことがないのに……!」
灯、ミュエル、数多も同じようにブチ切れていた。
「あ、あれ? これはもしかしてヤバい雰囲気? ああ、河童憑きどこか行ったみたい――」
仲間達の怒りに我に返る山吹。だがまあ、許してもらえるわけがなかった。
しばらくはダイジェストでお送りします。
「そういえば私の胸を見て小さいとか言いましたね! 言いましたよね!」
「青の炎が赤く変わっていく……これが彼女の暗黒面なのか!?」
「ねぇ、痛い……? 痛いよね……? これ、アタシ達の、心の痛みのぶん、だよ……?」
「ちょ、そんな硬くて鋭いのらめええええ!」
「こっちに来るなぁ! 奏空くん、任せたわよ! 圧撃のノックB!」
「ぎゃあああああ! こっちに飛ばすなぁ! そっちの覚醒はしたくなーい! ゲイルさんタッチ!」
「やめろ! 俺は回復に専念するんだ! ストイックなキャラを維持し……くぅ……っ!」
「もう怒りました。ええ、怒りましたよ!」
「やべぇ。あの巫女。マウントポジションで琴桜パンチしてる……そこにしびれるあこがれるぅ!」
「スカートめくられても、下着じゃないから恥ずかしくないもん!」
「水着でも恥じようよ、酒々井さん。河童憑きガン見してるよ」
「え、マジで……! 許してくださいにーさまー! 私、私……っ!」
「あ。私はこの辺で……」
「逃がすか裏切者ー! さんざん触ってくれたお返し!」
「きゃあああ! だめ……胸は……お願い……うう……」
「あ、しおらしくなった。弓削さんもしかして自分から触るのはいいけど、触られるのに弱いクチ?」
敵味方入り混じっての乱戦は、地力の差もあって河童憑きが一人、また一人と倒れていく。
「これで終わりだっ!」
ゲイルは足を振り上げ、河童憑きに振り下ろす。獣の力が乗ったその一撃は、河童に憑かれて得た防御力を易々と乗り越えて、その脳みそを揺さぶった。その衝撃に力尽きる男子。
「……ああ、何かに目覚め……る」
最後に呟いた男子の声を、ゲイルは聞かなかったとばかりに目をそらした。
●
戦いが終わり――
いろいろ触られて乱れた衣服をただし、覚者達は立ち上がる。いや、服とかは守護使役が一瞬で交換できるのだが、そこは気分である。っていうか直さないと気が済まない。この戦いを忘れるための儀式のようなものだ。
男子三人は気を失っていた。色々怒りはあるが、彼らは犠牲者。先ずは原因である河童を祓わなくては。水気を通さない注連縄で囲んで教えてもらった儀式を行う。憑依していた河童が消えていくのがわかる。
「大丈夫か? 痛いところがあったら言ってくれ」
ゲイルが意識を取り戻した男子を癒す。その一人が頬を赤らめているのに、全力で気づかないふりをするゲイル。落ち着け。もう河童はいない。ということはつまり……いや、深く考えるな!
「……記憶はないようですね。よかった……」
灯が男子三人に質問し、河童に憑かれた間の記憶の有無を確認する。もし覚えていたらどうしてくれようかと思っていた。植物系守護使役がいない以上、記憶を消す手段はない。物理的な口封じもやむなしかと……落ち着こう、私。灯は深呼吸を繰り返す。
「とりあえずこれで一件落着かな。動けないみたいだし、背負って帰るよー」
山吹が動けない高校生を背負い、帰路につく。他の男子はゲイルと奏空が背負うことになった。戦いの様子もカメラに納めたし色々ご満足である。そういえば男子の釣り具とかも持って帰らないといけないかなぁ……と思っていたら、そちらの方に向かう覚者がいた。
「あれ? 帰らないの?」
「河童さん達にお仕置きをしに行きます。乙女を辱めた報いを受けていただきましょう」
「そうだよね……河童さんの、本体……いるんだよね……」
「スケベな指斬り落とすのって何本までセーフ? 首斬り落とすのとか何本までセーフ?」
「いたずらのつもりも、許しませんよ。ええ」
灯、ミュエル、数多、祇澄の乙女達は怒りのオーラを迸らせて、男子たちが釣りをしていた渓流に向かって歩き出す。そこに憑依した河童の本体がいるはずだ。
「ああ、その……頑張ってくれ」
奏空はそのオーラに圧されるように、四人を見送った。女子怖えぇ……と顔を引きつらせながら、結鹿と男子を背負う。河童に同情の余地はないが、それでも憐れには思った。せめて半殺し程度で済みますように。
第二ラウンド、開始――!
渓流に、乙女の怒声と河童の悲鳴が響き渡った。
めでたしめでたし。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
一日で書けた……だと!
