≪初夢語≫覚者達の初夢
●その名は獏
古妖「獏」は愉快そうに微笑んだ。
覚者達に面白い夢を見せてやろう。そう思って、皆を強制的に夢の世界へと誘っていく。
夢とは見る者の心を露わにしたもの。
さて、とっておきの悪夢をどうぞ。
古妖「獏」は愉快そうに微笑んだ。
覚者達に面白い夢を見せてやろう。そう思って、皆を強制的に夢の世界へと誘っていく。
夢とは見る者の心を露わにしたもの。
さて、とっておきの悪夢をどうぞ。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.夢の世界で出現する敵を全て撃退
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
今回は、古妖の獏に関連するシナリオとなります。
■夢の世界の敵
覚者の心の中を投影した敵が出現します。
参加する方は、覚者のトラウマの象徴や苦手にしている相手など。自分が出したい敵を一体指定してみてください。(ただし、絶対それが採用されるとは限りません)
指定がない場合などには、夢を見ている覚者と同じ姿をした敵が襲いかかってきます。
プレイングの参考としては、夢の世界の敵にどう苦しめられて、どう悪夢を乗り越えるかなどがあるといいかもしれません。
■初夢依頼について
この依頼は参加者全員が見ている同じ夢の中での出来事となります。
その為世界観に沿わない設定、起こりえない情況での依頼となっている可能性がありますが全て夢ですので情況を楽しんでしまいしょう。
またこの依頼での出来事は全て夢のため、現実世界には一切染み出す事はありません。
※要約すると一夜限りの夢の出来事なので思いっきり楽しんじゃえ!です。
それでは、よろしくお願いします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/10
6/10
サポート人数
0/4
0/4
公開日
2016年01月16日
2016年01月16日
■メイン参加者 6人■

●
「獏が夢の中に出て来た…と思ったら……ここは……?」
どこか見覚えがあるような街の交差点。
自分がどこいて、どこに立っているのか分からぬまま。
灰色の群衆の中で、鈴白 秋人(CL2000565)は、すれ違った親子連れに目を奪われた。
「……小さい頃の俺……それから両親……育ててくれた祖父と……大きくなった俺……?」
父と母に連れられた子供は、何か言いたそうにしつつ。
それを我慢して飲み込んでいるのが、秋人には分かる。だって、それは過去の自分と瓜二つ。思わず親子の姿を視線で追うと、今度は世話になった祖父と自分が一緒にいた。背丈は子供の頃より伸びたものの、その表情は変わらないまま――
「!!?」
一瞬で場面が変わる。
すぐ目の前にいるのは自分自身。良く知る現の因子を持つ覚者が、水礫を撃ち放ち。不意打ちを受けた秋人へと直撃する。
「こ……これは……?」
攻撃を受けて、実際に走る痛みに少し戸惑う合間。
相対する、鏡写しの様な自分が口を開く。自分と全く同じ声で。
『……俺はキミだ』
「!」
『そして、キミは俺だ』
「何を……」
周囲の風景がフラッシュバックしていく。秋人の記憶にある、秋人の過ごしてきた思い出の居場所が転々と流転する。
『本当は、気づいているんだろう? 夢として、どうして俺が呼び出されたのか……』
「……」
『それとも……また、黙っているつもりか? 昔のように……』
「っ」
息が途端に苦しくなる。
酸素が足りない。暗い海中で、もがくように。秋人は秋人としか思えぬ何かに、無意識のうちに水礫を撃ち返した。
「初夢がこんな事だなんてちょっとヤだな……」
目の前にいるのは……第三の眼が開いた僕。
百目木 縁(CL2001271)は、次に相手がこう言うのを知っていた。
『ほら、武器を持って戦えよ。好きなんだろ? 戦うのが?』
だから、返す。
「ちがう、好きじゃない。僕は普通に平和に暮らしていたかっただけだ……!」
あの日……第三の眼が開いた時……
おじいちゃんとおばあちゃんにその事を話したら……
二人とも驚かなかった……いずれそんな日が来るって知っていたみたいだった。
そして話してくれた。僕が捨て子だった生い立ちを……。
そんなの知りたくなかった。発現なんかしたくなかった
「ずっとおじいちゃんとおばあちゃんの孫で平穏に暮らしていたかった……!」
そして……あいつら……古妖狩人達が襲って来た……
僕の村で祀っている古妖を狙って……
僕は……村を守る為覚醒して戦った……無我夢中だった……
気が付いたら……あいつらも……村の皆も……立っているものはほとんどいなかった……
「おじいちゃんおばあちゃん…助ける事、出来なかった……僕は……戦いに我を忘れていたんだ……そんな自分が赦せない……」
『なら僕を倒せばいいだろう……』
そう笑う目の前の僕。
「そうだ。お前を倒せば僕は僕は救われるんだ……!」
『愛求める独眼鬼』瀬織津・鈴鹿(CL2001285)の前に現れたのは、古妖狩人の男だった。
現実世界では既に死亡しているはずの憤怒者は、記憶に深く焼きついた通りのサディスティックな笑みを浮かべている。
「初夢……一つだけ言える事があるの」
『ほう?』
これは悪夢。
相手をいたぶって苦悶の表情を見るのを、何より楽しみとした男が今ここにいる。手に持つのは拷問用のナイフと鞭、蝋燭だ。
「だって、わたしを最もいじめた人が目の前に居るの。お父さんとお母さんと一緒にいたわたしは人間じゃないって何度も何度もいたい事してきた……」
全身にある切り傷、火傷痕、そして眼帯に隠された空洞化した右目。
生々しい傷跡が、全てを物語る。
「きらい! ひどいことする人間なんて大きらい!」
でもそれ以上にこわい……いたいのいやだ。
「……助けて、お父さん、お母さん……」
『はは。笑わせてくれるな』
震える鈴鹿に。
悪夢の男は、一歩ずつ近付いてくる。
『古妖などというのは、我々に利用されるしか能のない使えない屑共だ。お前を守る者など、もうこの世界のどこにもいはしない』
それは、決して耳にしたくなかったこと。
それは、決して受け入れることができないこと。
『お前が親と慕う化け物共は、とっくに死んでいるんだよ!!』
現実で起きたことが。
「……えっ、お父さんとお母さんはもう居ない、覚者に討伐されて死んだ?」
夢の中で追想され。
「……嘘だ! お父さんもお母さんもどこかで生きてるの!」
心を病んだ少女は、さらに心のどこかを病んでいく。
「……貴様か。正直、二度と見たくない顔だったのだがな」
天明 両慈(CL2000603)が、子供の頃に正当防衛の名の元に返り討ちにした。
故人で天明両慈の実の父。
「……まぁ良い。ここが現実なのか……はたまた夢かそれとも幻か……どれにしても、貴様が俺の前に現れたのならやる事はただ一つ……」
憤怒者で自分の子の両慈すら殺そうとした男。
それが夢の形を借りて、大型の銃を構えていた。
『お前は、生まれてくるべきではなかった……覚者は存在すべきではない……』
実父の姿をした悪夢は。
敵意に血走った眼で、殺気を撒き散らす。
「閻魔でも正せなかったその腐った性根、この俺が叩き直してもう一度地獄に送り直してやる」
過去の幻影に負けじと。
両慈は演舞・清爽による高等演舞で、自身を強化する。
『地獄に堕ちるのは、お前の方だ……』
敵は、躊躇なく引き金を引き。
大口径から連続して弾丸が発射される。けたたましい音が空気を引き裂き迫る大量の鉛玉を、両慈はぎりぎりのところで回避する。事前に強化を施しておいたおかげだ。
「邪魔だ」
天行壱式。
小さな雷雲を発生させ、眩い落雷が轟く。憤怒者を鋭い雷撃がとらえた。
(早く親父を倒して他の味方の援護に向かわないと……優先するべきは今回はリーネだな)
……何か嫌な予感がする。
背中に冷たい感触が走ったが、両慈は頭を振って雑念を振り払う。
(……だが、こんな事を考えていたらアイツの事だ、直ぐ喜んで調子に乗ってしまうから黙っていないとだな……)
結論から言うと、両慈の不安は当たっていた。
皆と同じように悪夢と向き合っていた『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)は……
「ナ、ナゼ……何故貴方がココニ……!?」
『くくく……また、会ったな。今度は、お前を助けてくれる者は誰もいないぞ』
過去にリーネが不意を突かれて死の恐怖を一番感じた憤怒者。
「オ、オカシイデース……貴方はあの時、両慈と一緒に倒したハズなのに……!」
当時の両慈が乱入して助けてくれなければ、殺されていただろうという思いが深く心の奥底にこびりついている、リーネの恐怖の対象を前にして。
「ヒッ……!? こ、来ないで…来ないでクダサーイ……!!」
……完全に。
及び腰になってしまっていた。
『ふふ……俺が怖いか?』
「しょ、正直…怖くて脚が竦んで震えてマスネ……デ、デモ……あれから私も沢山経験を積んで強くなってマスネ……! 今度は……私一人で貴方を倒シテ、恐怖を乗り越えてミセマ……ヒッ!?」
何とか、勇気を振り絞ってみたものの。
それも憤怒者が、ちょっとでも動きを見せると途端に霧散してしまう。
「や、やっぱり怖い……来ないでクダサイィィ……!」
ナイフを振るって、攻撃してくる相手に対し。
何とか蔵王と蒼鋼壁を使って防御を固め。B.O.T.で応戦らしきことを試みるが。
『ふん。どこを狙っている?』
敵はせせら笑うように。
俊敏な動きで、白刃を閃かせる。
『そんな恐怖で震えた手では、狙いも何もあったものじゃないな』
ナイフがかすって、リーネは肩口から出血した。
恐る恐る触ってみると、手には真っ赤に染まって鉄臭い匂いが漂う。
「リョ、両慈……助けて……助けてクダサーーーイ!!」
絶叫が木霊する。
誰も彼もが自力で恐怖を乗り越えれるわけではない……
しずは、古妖と関わりのある山奥の小さな村で暮らしてきました。
だから、まだ普通の人間が怖いです……。
倶鞍 静(CL2001287)は、夢の中で心の声を聴く。
「……きっと、夢でも襲ってくるに違いないのです」
悪夢の中で、大勢の人影に囲まれ。
ニヤニヤと笑う人間達は、誰も彼も見分けがつかず同じに見えた。それぞれ手に凶器を持ち、ゆらゆらと陽炎のように揺れる。
「敵はかなりお強そうですね……」
人様は怖い……。
敵意を向けられるのが怖い……。
「が……頑張って、攻撃してみるのです!」
蔵王で鎧を纏い。
破眼光をバッドーステータス狙いで撃っていく。第三の目が右手の甲に開き、手をかざすと光が敵を薙ぎ払う。
「!」
――が。
一人が倒れても、すぐに次の人影が立ち塞がり。覚者への包囲網を狭めてくる。刃物を突き立てられ、鈍器で殴られ、火炎瓶を投げられた。
静は懸命に亀のようになって、多勢からの暴力に耐え続け。
好機をうかがう。
「……人様には怖い人もいるけど、そうじゃないって……そう信じるって決めて村から出てきたのですから」
山奥の小さな村で隠れるように暮らしていた。
そこから決心して出てきたのだ。こんな悪夢に負けるわけにはいかない。
「だ、だけど……。うわぁーん! やっぱり怖い人は怖いのですー!」
至近してきた人影を、なんとか隆槍で迎撃して。
それすらも焼け石に水で。
静の受難は、まだまだ終わらない。
●
『僕を倒せば、僕は救われる』
でも違う……自分の罪から逃れる為じゃない。
お前に負けない為……僕が僕のままで戦い、そして救いたい命の為に戦う!
『……へえ?』
だから……お前も……殺さない!
共に生きる。僕の為に力を貸せ!
『それが、僕の答えかい?』
そして……助けられなかった命に報いる為に僕も生きる……!
『……』
夢の中。
悠久か、それとも一瞬か。
第三の目が開いた自分は薄く笑って、手を差し出した。
『それなら、どこまで出来るかやってみると良い。僕はいつでも見ているよ』
縁は。
そっと相手の手を取って、ただ受け入れる。
それだけで良かった。それだけで良かったのだ。
嫌悪してた『第三の眼の自分』は静かに消えていき、やがて一つになっていく。
「親父が敵として現れたなら、やる事は一つ……徹底的に叩き潰してやるだけだ」
両慈の父親に対する敵意は高い。
一対一の状況で、物理的攻撃を打ち合う。
『ふん、大層な口を利くようになったな』
傷を癒しの霧で回復し。
状態異常を演舞・舞衣でリカバーする。
消耗を抑えつつ、両慈は敵の銃口に気を配った。
「これを機会にお前と言う過去を完全に消し去ってやろう」
凶弾をかいくぐり。
天行弐式・雷獣を展開。激しい雷が、頭上から父親の悪夢を貫いた。
『!』
断末魔は、落雷の暴音によって掻き消された。
最期の言葉を聞くことはなく。
言葉通りに相手は消し炭となって、完全にその姿は消滅する。
「……用は済んだな」
埃を払って、両慈は早急にその場を去る。
感慨に浸る暇はない。その前に、やるべきことがまだあるはずだった。
『ははは! いつまで、逃げているつもりだ?』
「う、うう……」
憤怒者のナイフが、執拗に追い回してくる。
何とか逃れながら、リーネは死の恐怖に呑まれて怯えきっていた。
「っ」
足を挫いて、覚者は転倒する。
いつもと違って動きが鈍いことが災いした。
『ふん、ここまでだな!』
リーネの中で、過去の恐怖の映像が甦る。
不意を突かれて、最も死を間近に感じたあの時。こちらは咄嗟に動けない。同じ顔をした男が、トレースするごとく全く同じように手を伸ばし。
(やっぱり、私一人では怯えてまともに戦えそうにナイデス……)
もはやこれまで。
絶対絶命というところで――
「無事か、リーネ」
歴史は繰り返し。
同じ救世主が現れる。
「両慈!」
自分の相手を片付けた両慈は、騒ぎのする方へと急行。間一髪、我が身を滑りこませて憤怒者の凶刃を防ぐことに成功した。
(もうっ……あの時と同じデス!)
誰かが来てくれるだけでとても嬉しい。
それがさらに、求める相手であるのならば。
「両慈、やっぱり両慈は私のナイトデス! もう大好きデース♪」
リーネは両慈へと、思い切り飛び付きハグ。
両慈の方はと言うと……恋愛対象として見ていないが、特別に今回だけは「少しだけ」優しくしてやらんでもない、という心境だった。
(……怖かった、だろうからな)
怯えない様に、励ましの言葉を選ぶ。
他者の力があって乗り越えられる。そういうことは、本当にあるのだから。
「立てるな? なら、一緒にやるぞ」
リーネは力強く頷き、両慈に支えられて立ち上がる。
「もう、怖いものなんてないデス!」
『く!』
両慈が雷撃で援護をし。
しっかりと狙いを定めたB.O.T.が敵を撃つ。憤怒者の悪夢が、過去と同じ結末を辿ったのは言うまでもない。
鈴鹿の第六感が発動。
警戒していた不意打ちを、何とか回避する。長い鞭の一撃は空を切った。
『小生意気な動きをするな、化け物の子が』
「お父さんとお母さんの悪口……ゆるさない!」
額にある第三の目から破眼光を繰り出す。
光線を受けた、古妖狩人は顔を険しくした。
『許さない? どうやら、自分の立場を理解していないようだな』
蝋燭の火が歪んだ男の顔を照らす。
ナイフが弧の軌道を描き、覚者の首をかすめた。危うく頸動脈を切断させられるところだった。
「嘘つきもいじめるのも……ころしてやる!」
飛燕による連撃で、鈴鹿は反撃する。
現実と夢とが混ざり合い。
追想の先へと、世界は進む。
『はん、お前のような奴ほどいたぶり甲斐があるというものだ』
『お前はこれから、何のために生きる?』
『復讐のためか?』
『それとも、もう存在もしない両親のためか?』
『お前の生きる理由など、何一つとしてありはしない』
『しょせん、お前の歩む道に光などない』
『なら……ここで絶望を抱いて永遠に眠れ』
憤怒者の雑音が、夢の世界を埋め尽くさんとする。
二人は激突を繰り返し。
こちらが連撃を見舞えば、古妖狩人の鞭が的を射抜く。頭の中で反響し続ける声を、必死に鈴鹿は振り払った。
「きらい! わたしをいじめる人なんて死んじゃえ!」
水礫が対象を撃ち抜く。
気が付けば、相手の声が止み。それがトドメになったのだと鈴鹿が認識するまで、幾許かの時が必要だった。
「他人からがっかりされる、突き放される事を恐れて、周りに素直に甘えたり、我儘を言って来なかった自分――」
それが相手の正体だと、秋人は気づいていた。
気づいていながら、心は乱れて身体は強張り防戦に傾く。
『そうだよ。俺はキミの弱さだ。だからこそ、キミは俺に敵わない』
B.O.T.を撃ち合い、鋭刃脚で応戦し。
鏡に写されたように同じ技が繰り出され、ことごとく上をいかれる。
『もがいても無駄だ。自分の弱さには誰も勝てない』
抑えていた気持ちの具現体。
自分に攻められながら、それでももがくことは止めない。一方的な傷が増えていき、感覚が次第に消える。
(自身の敵を安心、克服して――)
弱い面も自分の一部。
それを受け入れる事。
自身の気持ち、敵の荒ぶる気持ちをコントロールしようと試みる。
『……自分の弱さを克服? そんなことが出来ると本当に思うのか?』
分からない。
それは分からない。
だけど……気付いてしまったのなら、見て見ぬふりは出来ない。
『過去は変えられない。だが、変えられるものもある、か。さて、俺はどうなるかな……』
もう一人の秋人は、無防備に身を晒し。
覚者の一撃が、静かに決着をつける。
「俺自身でも気付いていなかった部分を なんとか出来て、良かった……」
無限に続くかと思える、人波に飲まれようとしながら。
静はずっと、一人で戦い続けていた。怖さに身が震えるのを必死に耐えて。
「うわわわ! も、もう駄目かも、です……」
物言わぬ人影達が群がって。
息をするのも苦しくなって、夢の中へと溺れていき――
「どうやら、ここで最後か」
「そうみたいデスネ」
そこへ、味方の覚者達が乱入する。
両慈が雷獣で影を一掃し。リーネが癒しの霧で回復を施し、蒼鋼壁で味方の防御を固めた。
「ありがとう。獏さん! お陰でいじめてきた人に仕返し出来たの! これで心置きなくお父さんとお母さんを探せるの」
「早速、第三の目の力を貸してもらうよ」
祓刀・大蓮小蓮で、鈴鹿は多くの敵を巻き込んで列攻撃。傷ついてる人が居れば癒しの滴で回復する。縁も破眼光を放ち、懸命に小太刀を振るう。
「み、皆さんっ!」
味方の覚者に助けられた静は、息を整えて後衛と回る。
前衛の者を優先して蒼鋼壁で防御を上げていった。
「しずは人でも無く、妖でもありません。でも、もっと歩み寄るって決めたから……、逃げないで、目を逸らさないで、皆様の戦いをサポートするのです」
いつか、きっと強くなって、一緒に肩を並べて戦うために。
「まとめて撃つ」
秋人の波動弾が残りの群を食い破り。
少しずつ戦場に慣れてきた静は、双刀・鎬をぶんぶん振り回して最後の一体を打ち払う。
「他の皆様がお強いので、まねっこしていれば、しずもきっと同じくらい強くなれるかもなのです」
『ふふ……そうなれると、良いね』
渾身の一撃を受けた人影は、一瞬だけ獏の顔に変わり。
――さて、初夢は楽しんでもらえたかな。そろそろ、お目覚めの時間だよ。
そんな声と共に、夢の世界はゆっくりと幕を引く。覚者達は、光に包まれた。これは誰もが良く知る感覚。
朝日だ。
日の出が差して、もう少しで現実の瞼が開く……夢の終わりだった。
「獏が夢の中に出て来た…と思ったら……ここは……?」
どこか見覚えがあるような街の交差点。
自分がどこいて、どこに立っているのか分からぬまま。
灰色の群衆の中で、鈴白 秋人(CL2000565)は、すれ違った親子連れに目を奪われた。
「……小さい頃の俺……それから両親……育ててくれた祖父と……大きくなった俺……?」
父と母に連れられた子供は、何か言いたそうにしつつ。
それを我慢して飲み込んでいるのが、秋人には分かる。だって、それは過去の自分と瓜二つ。思わず親子の姿を視線で追うと、今度は世話になった祖父と自分が一緒にいた。背丈は子供の頃より伸びたものの、その表情は変わらないまま――
「!!?」
一瞬で場面が変わる。
すぐ目の前にいるのは自分自身。良く知る現の因子を持つ覚者が、水礫を撃ち放ち。不意打ちを受けた秋人へと直撃する。
「こ……これは……?」
攻撃を受けて、実際に走る痛みに少し戸惑う合間。
相対する、鏡写しの様な自分が口を開く。自分と全く同じ声で。
『……俺はキミだ』
「!」
『そして、キミは俺だ』
「何を……」
周囲の風景がフラッシュバックしていく。秋人の記憶にある、秋人の過ごしてきた思い出の居場所が転々と流転する。
『本当は、気づいているんだろう? 夢として、どうして俺が呼び出されたのか……』
「……」
『それとも……また、黙っているつもりか? 昔のように……』
「っ」
息が途端に苦しくなる。
酸素が足りない。暗い海中で、もがくように。秋人は秋人としか思えぬ何かに、無意識のうちに水礫を撃ち返した。
「初夢がこんな事だなんてちょっとヤだな……」
目の前にいるのは……第三の眼が開いた僕。
百目木 縁(CL2001271)は、次に相手がこう言うのを知っていた。
『ほら、武器を持って戦えよ。好きなんだろ? 戦うのが?』
だから、返す。
「ちがう、好きじゃない。僕は普通に平和に暮らしていたかっただけだ……!」
あの日……第三の眼が開いた時……
おじいちゃんとおばあちゃんにその事を話したら……
二人とも驚かなかった……いずれそんな日が来るって知っていたみたいだった。
そして話してくれた。僕が捨て子だった生い立ちを……。
そんなの知りたくなかった。発現なんかしたくなかった
「ずっとおじいちゃんとおばあちゃんの孫で平穏に暮らしていたかった……!」
そして……あいつら……古妖狩人達が襲って来た……
僕の村で祀っている古妖を狙って……
僕は……村を守る為覚醒して戦った……無我夢中だった……
気が付いたら……あいつらも……村の皆も……立っているものはほとんどいなかった……
「おじいちゃんおばあちゃん…助ける事、出来なかった……僕は……戦いに我を忘れていたんだ……そんな自分が赦せない……」
『なら僕を倒せばいいだろう……』
そう笑う目の前の僕。
「そうだ。お前を倒せば僕は僕は救われるんだ……!」
『愛求める独眼鬼』瀬織津・鈴鹿(CL2001285)の前に現れたのは、古妖狩人の男だった。
現実世界では既に死亡しているはずの憤怒者は、記憶に深く焼きついた通りのサディスティックな笑みを浮かべている。
「初夢……一つだけ言える事があるの」
『ほう?』
これは悪夢。
相手をいたぶって苦悶の表情を見るのを、何より楽しみとした男が今ここにいる。手に持つのは拷問用のナイフと鞭、蝋燭だ。
「だって、わたしを最もいじめた人が目の前に居るの。お父さんとお母さんと一緒にいたわたしは人間じゃないって何度も何度もいたい事してきた……」
全身にある切り傷、火傷痕、そして眼帯に隠された空洞化した右目。
生々しい傷跡が、全てを物語る。
「きらい! ひどいことする人間なんて大きらい!」
でもそれ以上にこわい……いたいのいやだ。
「……助けて、お父さん、お母さん……」
『はは。笑わせてくれるな』
震える鈴鹿に。
悪夢の男は、一歩ずつ近付いてくる。
『古妖などというのは、我々に利用されるしか能のない使えない屑共だ。お前を守る者など、もうこの世界のどこにもいはしない』
それは、決して耳にしたくなかったこと。
それは、決して受け入れることができないこと。
『お前が親と慕う化け物共は、とっくに死んでいるんだよ!!』
現実で起きたことが。
「……えっ、お父さんとお母さんはもう居ない、覚者に討伐されて死んだ?」
夢の中で追想され。
「……嘘だ! お父さんもお母さんもどこかで生きてるの!」
心を病んだ少女は、さらに心のどこかを病んでいく。
「……貴様か。正直、二度と見たくない顔だったのだがな」
天明 両慈(CL2000603)が、子供の頃に正当防衛の名の元に返り討ちにした。
故人で天明両慈の実の父。
「……まぁ良い。ここが現実なのか……はたまた夢かそれとも幻か……どれにしても、貴様が俺の前に現れたのならやる事はただ一つ……」
憤怒者で自分の子の両慈すら殺そうとした男。
それが夢の形を借りて、大型の銃を構えていた。
『お前は、生まれてくるべきではなかった……覚者は存在すべきではない……』
実父の姿をした悪夢は。
敵意に血走った眼で、殺気を撒き散らす。
「閻魔でも正せなかったその腐った性根、この俺が叩き直してもう一度地獄に送り直してやる」
過去の幻影に負けじと。
両慈は演舞・清爽による高等演舞で、自身を強化する。
『地獄に堕ちるのは、お前の方だ……』
敵は、躊躇なく引き金を引き。
大口径から連続して弾丸が発射される。けたたましい音が空気を引き裂き迫る大量の鉛玉を、両慈はぎりぎりのところで回避する。事前に強化を施しておいたおかげだ。
「邪魔だ」
天行壱式。
小さな雷雲を発生させ、眩い落雷が轟く。憤怒者を鋭い雷撃がとらえた。
(早く親父を倒して他の味方の援護に向かわないと……優先するべきは今回はリーネだな)
……何か嫌な予感がする。
背中に冷たい感触が走ったが、両慈は頭を振って雑念を振り払う。
(……だが、こんな事を考えていたらアイツの事だ、直ぐ喜んで調子に乗ってしまうから黙っていないとだな……)
結論から言うと、両慈の不安は当たっていた。
皆と同じように悪夢と向き合っていた『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)は……
「ナ、ナゼ……何故貴方がココニ……!?」
『くくく……また、会ったな。今度は、お前を助けてくれる者は誰もいないぞ』
過去にリーネが不意を突かれて死の恐怖を一番感じた憤怒者。
「オ、オカシイデース……貴方はあの時、両慈と一緒に倒したハズなのに……!」
当時の両慈が乱入して助けてくれなければ、殺されていただろうという思いが深く心の奥底にこびりついている、リーネの恐怖の対象を前にして。
「ヒッ……!? こ、来ないで…来ないでクダサーイ……!!」
……完全に。
及び腰になってしまっていた。
『ふふ……俺が怖いか?』
「しょ、正直…怖くて脚が竦んで震えてマスネ……デ、デモ……あれから私も沢山経験を積んで強くなってマスネ……! 今度は……私一人で貴方を倒シテ、恐怖を乗り越えてミセマ……ヒッ!?」
何とか、勇気を振り絞ってみたものの。
それも憤怒者が、ちょっとでも動きを見せると途端に霧散してしまう。
「や、やっぱり怖い……来ないでクダサイィィ……!」
ナイフを振るって、攻撃してくる相手に対し。
何とか蔵王と蒼鋼壁を使って防御を固め。B.O.T.で応戦らしきことを試みるが。
『ふん。どこを狙っている?』
敵はせせら笑うように。
俊敏な動きで、白刃を閃かせる。
『そんな恐怖で震えた手では、狙いも何もあったものじゃないな』
ナイフがかすって、リーネは肩口から出血した。
恐る恐る触ってみると、手には真っ赤に染まって鉄臭い匂いが漂う。
「リョ、両慈……助けて……助けてクダサーーーイ!!」
絶叫が木霊する。
誰も彼もが自力で恐怖を乗り越えれるわけではない……
しずは、古妖と関わりのある山奥の小さな村で暮らしてきました。
だから、まだ普通の人間が怖いです……。
倶鞍 静(CL2001287)は、夢の中で心の声を聴く。
「……きっと、夢でも襲ってくるに違いないのです」
悪夢の中で、大勢の人影に囲まれ。
ニヤニヤと笑う人間達は、誰も彼も見分けがつかず同じに見えた。それぞれ手に凶器を持ち、ゆらゆらと陽炎のように揺れる。
「敵はかなりお強そうですね……」
人様は怖い……。
敵意を向けられるのが怖い……。
「が……頑張って、攻撃してみるのです!」
蔵王で鎧を纏い。
破眼光をバッドーステータス狙いで撃っていく。第三の目が右手の甲に開き、手をかざすと光が敵を薙ぎ払う。
「!」
――が。
一人が倒れても、すぐに次の人影が立ち塞がり。覚者への包囲網を狭めてくる。刃物を突き立てられ、鈍器で殴られ、火炎瓶を投げられた。
静は懸命に亀のようになって、多勢からの暴力に耐え続け。
好機をうかがう。
「……人様には怖い人もいるけど、そうじゃないって……そう信じるって決めて村から出てきたのですから」
山奥の小さな村で隠れるように暮らしていた。
そこから決心して出てきたのだ。こんな悪夢に負けるわけにはいかない。
「だ、だけど……。うわぁーん! やっぱり怖い人は怖いのですー!」
至近してきた人影を、なんとか隆槍で迎撃して。
それすらも焼け石に水で。
静の受難は、まだまだ終わらない。
●
『僕を倒せば、僕は救われる』
でも違う……自分の罪から逃れる為じゃない。
お前に負けない為……僕が僕のままで戦い、そして救いたい命の為に戦う!
『……へえ?』
だから……お前も……殺さない!
共に生きる。僕の為に力を貸せ!
『それが、僕の答えかい?』
そして……助けられなかった命に報いる為に僕も生きる……!
『……』
夢の中。
悠久か、それとも一瞬か。
第三の目が開いた自分は薄く笑って、手を差し出した。
『それなら、どこまで出来るかやってみると良い。僕はいつでも見ているよ』
縁は。
そっと相手の手を取って、ただ受け入れる。
それだけで良かった。それだけで良かったのだ。
嫌悪してた『第三の眼の自分』は静かに消えていき、やがて一つになっていく。
「親父が敵として現れたなら、やる事は一つ……徹底的に叩き潰してやるだけだ」
両慈の父親に対する敵意は高い。
一対一の状況で、物理的攻撃を打ち合う。
『ふん、大層な口を利くようになったな』
傷を癒しの霧で回復し。
状態異常を演舞・舞衣でリカバーする。
消耗を抑えつつ、両慈は敵の銃口に気を配った。
「これを機会にお前と言う過去を完全に消し去ってやろう」
凶弾をかいくぐり。
天行弐式・雷獣を展開。激しい雷が、頭上から父親の悪夢を貫いた。
『!』
断末魔は、落雷の暴音によって掻き消された。
最期の言葉を聞くことはなく。
言葉通りに相手は消し炭となって、完全にその姿は消滅する。
「……用は済んだな」
埃を払って、両慈は早急にその場を去る。
感慨に浸る暇はない。その前に、やるべきことがまだあるはずだった。
『ははは! いつまで、逃げているつもりだ?』
「う、うう……」
憤怒者のナイフが、執拗に追い回してくる。
何とか逃れながら、リーネは死の恐怖に呑まれて怯えきっていた。
「っ」
足を挫いて、覚者は転倒する。
いつもと違って動きが鈍いことが災いした。
『ふん、ここまでだな!』
リーネの中で、過去の恐怖の映像が甦る。
不意を突かれて、最も死を間近に感じたあの時。こちらは咄嗟に動けない。同じ顔をした男が、トレースするごとく全く同じように手を伸ばし。
(やっぱり、私一人では怯えてまともに戦えそうにナイデス……)
もはやこれまで。
絶対絶命というところで――
「無事か、リーネ」
歴史は繰り返し。
同じ救世主が現れる。
「両慈!」
自分の相手を片付けた両慈は、騒ぎのする方へと急行。間一髪、我が身を滑りこませて憤怒者の凶刃を防ぐことに成功した。
(もうっ……あの時と同じデス!)
誰かが来てくれるだけでとても嬉しい。
それがさらに、求める相手であるのならば。
「両慈、やっぱり両慈は私のナイトデス! もう大好きデース♪」
リーネは両慈へと、思い切り飛び付きハグ。
両慈の方はと言うと……恋愛対象として見ていないが、特別に今回だけは「少しだけ」優しくしてやらんでもない、という心境だった。
(……怖かった、だろうからな)
怯えない様に、励ましの言葉を選ぶ。
他者の力があって乗り越えられる。そういうことは、本当にあるのだから。
「立てるな? なら、一緒にやるぞ」
リーネは力強く頷き、両慈に支えられて立ち上がる。
「もう、怖いものなんてないデス!」
『く!』
両慈が雷撃で援護をし。
しっかりと狙いを定めたB.O.T.が敵を撃つ。憤怒者の悪夢が、過去と同じ結末を辿ったのは言うまでもない。
鈴鹿の第六感が発動。
警戒していた不意打ちを、何とか回避する。長い鞭の一撃は空を切った。
『小生意気な動きをするな、化け物の子が』
「お父さんとお母さんの悪口……ゆるさない!」
額にある第三の目から破眼光を繰り出す。
光線を受けた、古妖狩人は顔を険しくした。
『許さない? どうやら、自分の立場を理解していないようだな』
蝋燭の火が歪んだ男の顔を照らす。
ナイフが弧の軌道を描き、覚者の首をかすめた。危うく頸動脈を切断させられるところだった。
「嘘つきもいじめるのも……ころしてやる!」
飛燕による連撃で、鈴鹿は反撃する。
現実と夢とが混ざり合い。
追想の先へと、世界は進む。
『はん、お前のような奴ほどいたぶり甲斐があるというものだ』
『お前はこれから、何のために生きる?』
『復讐のためか?』
『それとも、もう存在もしない両親のためか?』
『お前の生きる理由など、何一つとしてありはしない』
『しょせん、お前の歩む道に光などない』
『なら……ここで絶望を抱いて永遠に眠れ』
憤怒者の雑音が、夢の世界を埋め尽くさんとする。
二人は激突を繰り返し。
こちらが連撃を見舞えば、古妖狩人の鞭が的を射抜く。頭の中で反響し続ける声を、必死に鈴鹿は振り払った。
「きらい! わたしをいじめる人なんて死んじゃえ!」
水礫が対象を撃ち抜く。
気が付けば、相手の声が止み。それがトドメになったのだと鈴鹿が認識するまで、幾許かの時が必要だった。
「他人からがっかりされる、突き放される事を恐れて、周りに素直に甘えたり、我儘を言って来なかった自分――」
それが相手の正体だと、秋人は気づいていた。
気づいていながら、心は乱れて身体は強張り防戦に傾く。
『そうだよ。俺はキミの弱さだ。だからこそ、キミは俺に敵わない』
B.O.T.を撃ち合い、鋭刃脚で応戦し。
鏡に写されたように同じ技が繰り出され、ことごとく上をいかれる。
『もがいても無駄だ。自分の弱さには誰も勝てない』
抑えていた気持ちの具現体。
自分に攻められながら、それでももがくことは止めない。一方的な傷が増えていき、感覚が次第に消える。
(自身の敵を安心、克服して――)
弱い面も自分の一部。
それを受け入れる事。
自身の気持ち、敵の荒ぶる気持ちをコントロールしようと試みる。
『……自分の弱さを克服? そんなことが出来ると本当に思うのか?』
分からない。
それは分からない。
だけど……気付いてしまったのなら、見て見ぬふりは出来ない。
『過去は変えられない。だが、変えられるものもある、か。さて、俺はどうなるかな……』
もう一人の秋人は、無防備に身を晒し。
覚者の一撃が、静かに決着をつける。
「俺自身でも気付いていなかった部分を なんとか出来て、良かった……」
無限に続くかと思える、人波に飲まれようとしながら。
静はずっと、一人で戦い続けていた。怖さに身が震えるのを必死に耐えて。
「うわわわ! も、もう駄目かも、です……」
物言わぬ人影達が群がって。
息をするのも苦しくなって、夢の中へと溺れていき――
「どうやら、ここで最後か」
「そうみたいデスネ」
そこへ、味方の覚者達が乱入する。
両慈が雷獣で影を一掃し。リーネが癒しの霧で回復を施し、蒼鋼壁で味方の防御を固めた。
「ありがとう。獏さん! お陰でいじめてきた人に仕返し出来たの! これで心置きなくお父さんとお母さんを探せるの」
「早速、第三の目の力を貸してもらうよ」
祓刀・大蓮小蓮で、鈴鹿は多くの敵を巻き込んで列攻撃。傷ついてる人が居れば癒しの滴で回復する。縁も破眼光を放ち、懸命に小太刀を振るう。
「み、皆さんっ!」
味方の覚者に助けられた静は、息を整えて後衛と回る。
前衛の者を優先して蒼鋼壁で防御を上げていった。
「しずは人でも無く、妖でもありません。でも、もっと歩み寄るって決めたから……、逃げないで、目を逸らさないで、皆様の戦いをサポートするのです」
いつか、きっと強くなって、一緒に肩を並べて戦うために。
「まとめて撃つ」
秋人の波動弾が残りの群を食い破り。
少しずつ戦場に慣れてきた静は、双刀・鎬をぶんぶん振り回して最後の一体を打ち払う。
「他の皆様がお強いので、まねっこしていれば、しずもきっと同じくらい強くなれるかもなのです」
『ふふ……そうなれると、良いね』
渾身の一撃を受けた人影は、一瞬だけ獏の顔に変わり。
――さて、初夢は楽しんでもらえたかな。そろそろ、お目覚めの時間だよ。
そんな声と共に、夢の世界はゆっくりと幕を引く。覚者達は、光に包まれた。これは誰もが良く知る感覚。
朝日だ。
日の出が差して、もう少しで現実の瞼が開く……夢の終わりだった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
