《真なる狩人》古妖狩人の強化部隊
《真なる狩人》古妖狩人の強化部隊


●実験強化部隊
「破!」
 一人の憤怒者が、分厚い鉄板に対し気合いの乗った一撃を繰り出す。
 普通に考えれば。
 生身の人間では体を痛めて終わり、という愚行だろう。だが……
「粉、砕!」
 まるで隕石がぶつかったかのような衝撃音。
 その握った拳は、見事に的を粉々にしてのける。周囲の仲間は、一斉に喝采をあげた。
「素晴らしい!」
「上々の結果だよ、古狩君!」
 琵琶湖湖畔近くにある工場群。
 古妖狩人達の本拠たる一室で、古狩と呼ばれた男は一礼してみせる。
「ご期待に応えられて光栄です。これも皆さんのお力添えあってこそ」
 彼は古妖を使っての実験結果により生まれた憤怒者であり。常人以上の力を得たことを、実践してみせたのだ。周りの仲間達は、こぞって賞賛の声をあげる。
「力を得た者は、他にもいるが。君はその中でも相当の上位だ」
「強化部隊がいれば、ここの警備も万全というものだな」
 皆の期待の眼差しに礼儀正しく応じながら。
 古狩はそっと口元を拭う。そこには、強化の反動による吐血の痕が生々しく残っていた。


「ついに古妖狩人の本拠地が判明しました。決戦の時です」
 久方 真由美(nCL2000003)が覚者達に説明を始める。
 古妖を狩る憤怒者組織、古妖狩人。
 FiVE覚者メンバーの戦いと、未知の因子を持つ『安土八起』の能力により、その本拠地を特定できたのだ。
「場所は滋賀県近江八幡。琵琶湖湖畔近くにある工場群になります」
 今回は、ここに攻め込み。
 敵の活動を完全に抑え込みにかかる。
「皆さんに担当してもらうのは、強化部隊が警備を行っている区画になります」
 古妖狩人の強化部隊は薬物や機械などを使い、身体能力を増している。
 間違いなく精鋭揃いであり、これを引きつけておくだけでも全体の助けになる。
「強化部隊は、古妖を使っての実験による成果のようですが。肉体への負荷は大きく、相当無茶をしているようですね」
 敵対することになる部隊の、リーダーは古狩という男であり。
 小型の古妖達が囚われている棟を守っている。出来れば、檻に入れられている古妖達も助け出しておきたいところだ。
「相手は、超人的な力を手に入れた憤怒者です。どうか、くれぐれも気をつけて。皆さんの健闘を祈ります」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:睦月師走
■成功条件
1.強化部隊の撃退
2.なし
3.なし
 睦月師走です。
 今回は、新興組織『古妖狩人』に関連するシナリオとなります。

●古妖狩人の実験強化部隊
 強化された憤怒者の精鋭です。人数は七人。リーダーは古狩という男。小型の古妖達が囚われている棟を、囲むように警備しています。この強化部隊には、行動のたびに自身にダメージを受けるペナルティがあります。主な攻撃手段は以下の通り。

 ナイフ 物近単 〔出血〕〔毒〕〔痺れ〕
 電磁警棒 物近単 〔鈍化〕〔弱体〕
 機関銃 物遠列 

●現場
 琵琶湖湖畔近くにある工場群。そのうち、小型の古妖達を閉じ込めている一棟が現場になります。そこまで忍び込むルートには、罠はあっても人はいません。強化部隊が問題の棟の周囲を警備しており、棟の中には古妖が檻に閉じ込められています。

 それでは、よろしくお願いします。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
10/10
サポート人数
1/4
公開日
2015年12月22日

■メイン参加者 10人■

『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『アイティオトミア』
氷門・有為(CL2000042)
『F.i.V.E.の抹殺者』
春野 桜(CL2000257)
『使命を持った少年』
御白 小唄(CL2001173)
『ぬばたまの約束』
檜山 樹香(CL2000141)
『独善者』
月歌 浅葱(CL2000915)

■サポート参加者 1人■



「さて、行くとしようかの、お前様方」
 『樹の娘』檜山 樹香(CL2000141)が仲間を顧みる。
 薄暗い工場群は、それこそ幽霊が出てもおかしくない不気味な雰囲気だ。
(さて、古妖が捕まっている場所まで、罠がある道を進まねばならぬが。先頭には危険予知を持っている仲間が立って進んでくれる)
 そんな仲間の後について、自らも超直観を使用し周囲の警戒を行う。無論、回避できる罠は回避だ。覚者達は敵の本拠地へと潜り込み、自分達が任されたポイントへと急ぐ。
「さて、とにかく進みましょう。彼らが精鋭であるのならここで撃破できれば他の方々の助けになるでしょうしね」
 『便利屋』橘 誠二郎(CL2000665)が、超視力で周囲を警戒。罠が発動すればすぐに警告と退避が出来るように備える。さらに、かぎわけるを使って人の臭いが残っていないかも注意だ。
「うぇー、何か薄気味悪いなあ。しかも、無理やりな事をした憤怒者が相手でしょー? やだなぁ……なんで、人間同士が争わなきゃいけないんだよ。そんな、羨むような力でもないのに」
 御白 小唄(CL2001173)が懐中電灯で道を照らす。守護使役のみんとも、ともしびで光を灯した。長めの棒を持ち込み、超直観を頼りに周りをつついて確認して進む。
「どう? 嫌な感じする?」
「このまま進むと、まずい感じがするな。回り道しよう」
 藤倉 隆明(CL2001245)が危険予知をして、物理的なトラップを察知する。先行して罠の対策を行いつつ。ルートを変更して進み、無効化していった。
「ま、本番前に怪我しちゃあ世話ぁねぇからなぁ。セーフティーに行こうぜ」
「不意打ち食らっても問題ですしねっ」
 『独善者』月歌 浅葱(CL2000915)も危険予知で、罠への警戒を怠らない。しのびあしで、足音を消してばれないように。懐中電灯の光も最小限にだ。
(まあ、罠警戒は先行組に頼らせてもらおうか。兵書に曰く、能く人を択びて勢に任ぜしむ、ってな。適した能力を持つ者に適所を任せれば勢いがつくものさ)
 なので、先行組をなるべく邪魔しないように動こう。
 と、『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)などは達観している。守護使役のともしびの灯りが、ゆらゆらと主人の周りで揺れた。
「足元になんかある! 危ないから気をつけてね!」
 小唄が、懐中電灯を明滅させて合図を送り。離宮院・さよ(CL2000870) が、送受心・改でメンバー間の連絡役をこなす。先行役もそれ以外の者も、すぐに情報は味方内で共有されスムーズに事は運んでいく。
(解除ができるかは物によりますが、最も引きたくはない警報系に限れば場所の把握とハイバランサーがあれば何とか……?)
 棟の周囲に行くまでは、『アイティオトミア』氷門・有為(CL2000042)は後方の主グループで行動している。罠の存在は仲間が知らせてくれているが、こちらでも危険予知を使っておく。
「可能なら存在を察知されないうちに奇襲したい所です」
 と、そこで覚者達の横を小さな影が横切る。これだけの工場だ。鼠の一匹や二匹いても不思議ではないが。この時はタイミングが悪かった。
「まずい」
 銃声。
 工藤・奏空(CL2000955)が、ハイバランサーでぎりぎり反応すると。その鼻先を衝撃が掠める。覚者達が細心の注意を払った横で、小動物が無遠慮に危険区域に足を踏み入れて罠を突いてしまったのだ。ライフルの自動発射装置が作動し、後方から銃弾が覚者達へと襲いかかる。
「警戒しておいて、正解ね」
 やや後ろにいた春野 桜(CL2000257)も、超視力を発揮。同じくハイバランサーで、上手く身体を動かして寸での所で躱してみせる。おかげでというべきか、大した被害は出ずに済んだ。
「冷や冷やさせてくれる……」
「気をつけて進みましょう」
 そんな、アクシデントはあったものの。
 覚者達は、気づかれることなく問題の棟の近くへとたどり着く。その外観は、古びた廃工場のようだ。
「黒服の連中が七人。この建物を、ぐるっと囲んで見張っているな」
 守護使役であるふく丸のていさつによって、見えた光景を隆明が味方に伝えた。皆は頷き合って、敵の一人に目標を定める。和泉・鷲哉(CL2001115)は、ステルスを使って準備をしておく。
「……強化部隊っていうから、見た目的にもないわーって感じなのかと思ったけど割と普通なんだな……負荷以外は」
 警備を行っている敵の姿は、確かに通常の人間と比べて変わった様子はない。
 ただ、その物腰には隙がなく。実験の結果なのか、服の上からも精強な肉体の所持者であることが見て取れた。


「それでは、橘流杖術橘誠二郎、推して参ります」
 誠二郎が飛燕で、最も棟から離れた黒服を強襲する。
 不意を突かれた憤怒者は、まともに杖の連撃を受け後退する。
(オレの適所は、戦場だ。可能ならば、敵勢の薄い所を攻め、素早く数を減らしたいもんだが)
 続いて懐良も、目にも止まらぬ二連撃を叩きこむ。
 敵を確認した覚者達は、先行組と合流し。敵が集まる前に襲撃を仕掛けていく。
「さあ、始めようかの、お前様方」
 五織の彩を、樹香が炸裂させて本格的な口火を切る。各個撃破を狙う鷲哉は、敢えて皆から離れて死角突く形で炎撃、飛燕を主体に攻撃する。
「お、闇討ち上手く行った感じ?」
 錬覇法で能力アップをして、離れすぎないよう注意。
 近場から遠目から。敵へと一方的に、覚者達は総攻撃を加えていった。隆明は機化硬で自身を強化して、接敵したら後衛に下がった。さよは、水衣を前衛に付与する。
「悪いけど、手加減なしだ!」
 棒を投げ捨てて、小唄は攻撃に移る。
 ナックルの一撃を喰らって。黒服の憤怒者は、ようやく事態が飲み込めたように頭を振った。
「……なるほど。お前達は、覚者か。ならば、加減の必要はないな」
 ボキリ。
 何か不吉な、音がする。
「俺は、ここの警備を任されている古狩というものだ。責任者として……お前達を殲滅させてもらう」
 瞬間、憤怒者の姿が消えた。
 超人的な超速度を持って、鉄を砕く固い拳が飛び出す。
「天が知る地が知る人知れず。古妖救助のお時間ですねっ。ふっ、助けが必要とあらば即参上っ」
 それに対するは、浅葱だ。
 機化硬で防御アップを施して、ブロックする。
「粉砕!」
 裂帛と共に、恐るべき爆発音が響く。
 最早、拳打というより小型爆弾のような様相だが。意識を必死に繋げとめて、何とか浅葱は耐えてみせる。
「ふっ、そう簡単に私は砕けませんよっ。思いの強さと硬さと比べてみましょうかっ」
「なるほど、少しは頑丈そうだ」
 古狩が、不意に咳き込む。
 実験の副作用なのか、口からは明らかに血が滲んでいる。
「目ぇ覚ませよ! 古狩さん、あんたならわかるんじゃないのか? 本当の敵が……あんた達はただ利用されているって気づいてるんじゃないのか? あんた達はデータ取得の為の捨て駒に過ぎないって事……」
 ……そんなデータを元に力を手に入れて……あんた達の上層は何を企んでいるのか……
 奏空が叫び。古妖狩人は口元を拭った。
「……捨て駒には、捨て駒なりの矜持がある。全ては覚者無き世界がため」
「覚者を倒した先の世界ってなんだよ……所詮取って代わりたいだけなんじゃないのか!?」
 錬覇法によって自身の攻撃力を上げ。
 後衛から、召雷。小さな雲から想いのこもった雷撃を繰り出す。
(さて、本格的に面倒事になってきました。古妖に飽き足らず自分達の身まで削り始めるとか、犠牲の範囲が広がってるのは看過できませんね……一旦技術として確立してしまったら手遅れな気がするのでここで止めたいですが)
 今度は前衛から、有為の疾風斬りが駆け抜ける。
 対象が一人でも出し惜しみせず。できれば増援が少ない内に各個撃破したい。
「力あるものを否定し辿り着いた先が力を手に入れる事だなんて本末転倒もいい所だわ。おまけにそれで命を削るだなんて滑稽すぎて笑えるわよ」
 中衛担当の桜は、初手に清廉香。
 長期戦に備える。
「滑稽で結構。笑いたくば笑え」
 覚者の攻撃を受け続けながらも。
 古狩は頑強な肉体で防御し、譲らずに肉弾戦を挑んでくる。
「これが、持たざる者が選んだ一つの答えだ」
「一撃はだいぶ重そうだね」
 なるべく避けたいが。
 彼らの痛みもわかるから、小唄は受けた痛みには全力で応じる!
「そんな苦しみを得てまで欲っしなきゃいけないほど、力なんていいものじゃないんだよ! 僕だって、覚者になって初めてわかった。人と違うっていうのはいいことだけじゃない! その苦しみは、わかって貰えないのかもしれないけど。だからって、自分を追い詰めてまで力を得ようとするのは間違ってる!!」
 人間離れした動きで、覚者達に対抗する相手は。
 その度に、身体のどこかが軋む音が聞こえてくるかのようだ。
「……何が間違っているか、それは全てが終わってからでないと分からない」
「このぉ、わからずやっ!!」
 怒号と衝撃。
 憤怒者の男は多勢に無勢の中、恐るべきタフネスで覚者達と渡り合う。
「古狩隊長!」
「ご無事ですかっ?」
 そのうちに騒ぎを聞きつけた、他の古妖狩人が駆けつけてくる。同じ強化部隊の精鋭達は、リーダーを救わんと割り込んだ。
「さぁさぁ楽しい闘争の時間だぜ! ハッハッハー! 踊れ踊れ踊れェ!!」
「何を! 隊長、今お助けします!」
 出来るだけ敵が固まっているところへ目掛けて、隆明が鉛弾バラ撒きぶち込む。普通の人間ならば、それだけで怯むところだが。相手も人智を超えた力を得た者達。傷を受けても、迷わずに突撃してくる。
「人を超えた、我らが力を思い知らせるくれる!」
「貴方がたは人を超えたのではなく人から外れただけなのですよ。古妖由来の強化でなぜ人のままで居られると思ったのです?」
 超視力で相手の攻撃を見極め、誠二郎は直撃を避けダメージを減らすことを意識して立ち回る。同時に、相手を揺さぶって対応を図った。
「肉体への負荷はその歪さの証ではないのですか? 超人でなく人外ならば我々と変わりませんよ。貴方がたはもはや人ではなく畏怖され狙われる人外なのです。認められませんか?」
「この、言わせておけば!」
「! 挑発に乗るな!」
 古狩が部下を制するように声を張るが、少し遅い。
 突出してしまった一人の憤怒者が、狙い撃ちされた。
「……毎回思うけど、そこまでして力を手に入れて何したいんだかな。憤怒者になる理由なんて様々だし、下衆いのもいれば俺達側が悪さした事でっていう……こっちとしてもやりきれない理由の奴もいる。まぁ、どんな理由があったってコレはないわって思うけど」


「所詮はただ自分に無いものを持つ者を羨み、妬み、嫉み、だからただ否定し殺す。そんなクズならそのまま死んで頂戴」
 桜は非薬・紅椿で毒をばら撒き。
「それにしても力を手に入れて今度は自分達が迫害されるかもしれないって分かってるのかしら?」
 棘一閃で出血を重ね。
「内ゲバでも起こして死んでくれればいいのに。ま、その前に殺しましょう殺しましょう。ゴミはゴミにクズはクズに、一片の慈悲も無くただ殺しましょう。琵琶湖の藻屑となればいい」
 深緑鞭で追撃して行く。
 最優先するのは古狩と、ナイフ使いだ。
「生かしてもすぐ死にそう殺しましょうそれが私達の為になるあはは」
「……どうやら、お互いにそう誇れた道を歩んできたわけではないようだな」
 容赦のない桜の様子に。
 古狩は敵意と敵意とは違う何かを、視線に込めて味方を庇う。
「聞くだけ聞こうか。お前たちは、なんで憤怒に身を落とした?」
 懐良は、問いかけ。
 前列の敵に地烈を放つ。
「力への憧憬か? それとも復讐か。身を削ってまで力を得る、となると、安い思想ではなさそうだが」
 理解しようとしてみよう。
 必要なのは、多角的な視点だ。
 敵対者の視点というものも、拒否するのではなく、理解せねば。そう、懐良は思う。
(理解した上で、オレはオレとして戦うがね)
 警戒心をこちらに向けさせて、閉じ込められた古妖達に意識を向けさせないように、という意図もある。消耗している敵を確実に潰すことに専心。突出していた敵の一人が倒れた。
「……さて。それは人それぞれだな。例えば今ダウンした俺の部下は、家族を覚者に殺されたらしい。それ故、挑発に一番に乗ってしまったわけだが」
「……そこまでしても、ワシたちが憎いのか。自らの体を弄ってまで……。理解はしてやれん。同情もできぬ。だからこそ、全力でもって相手をする。それが礼儀じゃ」
 樹香が前線に立って戦う。
 数はこちらの方が多いが、複数への遠距離攻撃やバッドステータス付与の攻撃を行ってくる。
(油断など全くはせぬ。全力を持って戦わなければの)
 大量の弾丸が飛び交い。
 超人的なパワーとスピードで、薬が塗られた白刃が舞う。
 覚者達と憤怒者達の戦いは拮抗して容易に決着がつかない。だが、長期戦になればなるほど古狩率いる強化部隊は、身体に反動を受けて消耗する。
「回復は任せてください」
 対して、覚者の方は常に回復を行える状態にしてサポート。回復役のさよを筆頭にして癒しの霧や填気でしっかりと補給を行い。戦線を維持する。
「ふっ、無理を押し通し、目的のために力をつける姿は正しいですねっ。尊い努力は認めましょうっ。もっともぶつかる以上は打ち砕かせてもらいますけどねっ」
 浅葱は弱った相手から飛燕で攻撃する。
 一人一人確実に。
 仲間の攻撃が効果的になるよう体勢を崩すように狙う。
「ちっ!」
「ふっ、二連で終わると思いましたかっ。まだありますよっ」
 ――仲間の攻撃ですけどねっ。
 浅葱の言葉通り。一点集中。遠距離から奏空の飛苦無が、バランスを崩して隙が生まれた敵へと撃ちこまれ。また一人、憤怒者を仕留める。
「なぁ、気づいているか? あんた達が古妖にしてる事は力で弱い者を虐げている事なんだぞ? あんた達、憤怒者が覚者が憎い理由ってなんだよ。まさにそれだったんじゃないのか?」
 奏空は檻にいる古妖達に攻撃が当たらないよう気を付け。
 少しずつ移動し、戦場を徐々に檻から離れていくように仕向ける。充分、距離が開いたと判断すると、さよは静かに戦線から離脱した。
(皆さんが狩人を撃退するまで古妖さんの護衛を行います)
 捕まっている古妖達の下へ。
 一人、檻となっている棟へと向かって移動する。
「この!」
「可能なら死なない程度に処置はしておきたいのですけどね」
 電磁警棒の一撃をかいくぐり。
 敵中衛へと、有為は一撃を撃ち放ち。消耗していた憤怒者は、地へと崩れる。
「古狩隊長、このままでは!」
「強化の代償か……だが、それは最初から覚悟していたことだ」
 時間が経つほどに、強化部隊は動きが重くなる。
 鷲哉はそんな者達のリーダーと対峙した。 
「……んで、そんな無茶な強化してさ。自分がしたかった事は成せた訳? 俺はあんたがどういう理由で憤怒者になったかなんて知らねーし、知る気もねーけどさ。今の状態が、あんたが憤怒者になってまでしたい事だったのか?」
「……」
「まぁ、答えが返ってくるなんて思っちゃいねーけどさ。『お前等能力者に俺達の気持ちがー』って言われるのがオチだと思うしな」
 覚者の意志によって、地面より燃え盛る炎の柱が出現。
 激しい火柱が、憤怒者達を蹂躙する。そこへ、懐良の剣が煌めき、誠二郎の棘一閃が敵を裂いた。
(我々が戦う場所には古妖が捕らえられておるからの。流れ弾がそちらにいかぬように配慮せねばならぬ。さよが古妖たちを護ってくれるがワシらも配慮せねばな)
 樹香は仲間と連携して、敵を削り。
 適宜、樹の雫で味方を回復を行う。
「強くなってるのかもしれないけど、反動を受けるような状態で相手になるわけないじゃん!」
「ミートパテはお好きかい!? ハッハァ! イィィヤッフゥゥゥゥ!!」
「のたうち回り、苦しみ抜いて死ね。死んでよ、ねぇあははは」
 小唄の地烈が、複数の敵を巻き込み。
 隆明が撃って撃ちまくる。桜の非薬・鈴蘭が毒を注ぎ込んだ。
「ここまでか。覚者の力がこれほどとはな……だが、最後まで足掻かせてもらう!」
 残っているのは、古狩ただ一人。
 憤怒者は、電磁警棒を振りかぶって思い切り突進し。   
「なるほどっ、大した力ですねっ。ですがっ、私を砕くには足りないのですよっ」
 ガードした浅葱に激突した警棒は、折れて砕けた。
 そして、限界を迎えた憤怒者はそのまま吐血して、地へと伏せる。
「砕けたのは……こちらの方か」
「自分の事しか考えない人間は単なる迷惑ですが。自分の事を大切にできない人間は他人にも優しくできないそうですよ。まあ、父親の受け売りですけど」
「……耳が痛いな」
 有為の弁に、顔をしかめた後。
 古狩は、静かに息を引きとった。倒れた他の憤怒者も同様で、それが無理な実験によって蝕まれた結果なのは明らかだった。
「何が古妖狩人だ……何が強化部隊だ……お前らは一体何がしたいんだ……!」
 奏空の言葉に。
 亡骸となった者達が、答える術はない。
「……古妖たちを檻から出して逃がさねば。無論帰りの道も、彼らが罠を仕掛けている可能性がある。油断せず、気を張って帰るとしようぞ」
 樹香を始めとして、覚者達はさよが待つ檻へと合流し。
 解放したすねこすりや、座敷童など小型の古妖達が一目散に逃げていく。そんな背を、皆と一緒に鷲哉は警戒しつつ見送る。
「馬鹿やってごめんな。言いたい事は山程あると思うけど、今は逃げてくれ」

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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