ドキッ! 覚者だらけの忘年会!
ドキッ! 覚者だらけの忘年会!


●ドキッ! 覚者だらけの忘年会!
 唐突な話であるが、年末年始と言えば色々と忙しい時期である。
 年越しやクリスマス等の楽しいイベントに事欠かない……それは同時に書き入れ時であり、非常に忙しい時期でもあるのだ。
 そんな面々にとっては心の底から楽しむ事も中々出来ず、時に歯がゆい思いをする事もあるだろう。
 ならば一足先にソレを楽しんでしまえば良い。
 そして同時に飲み、食い、騒げば良い。

 ―――まあ、要するに宴会のお誘いである。

●『チキチキ年忘れ鍋大会! 隠し芸もあるよ!』
「んー、何か違うな……」
 水瀬 珠姫(nCL2000070)はペンを片手に考えていた。どう書けばより多くの人が集められるかと。そしてどうすればあまり日持ちしない鍋セットを上手く片付けられるかと。
「仕送りは嬉しいけど、どうしてこう大量に……」
 五麟学園内の寮に居住している珠姫にとって親類からの援助は嬉しいのだが、以前の芋の山のように困る事も多々ある。今回もそんな状態だった。
「でも、ただ集まって食べるだけってのは前もやったし……どうせなら忘年会っぽくしてみるとか?」
 まあその辺は追々考えよう、と今は学園内の一室の使用許可証にペンを走らせるのだった。


■シナリオ詳細
種別:イベント
難易度:楽
担当ST:杉浦則博
■成功条件
1.鍋をいっぱい食べよう!
2.飲んで食べて楽しもう!
3.なし
●場面
・五麟学園内の一室、それなりに広い部屋で鍋パーティーです。年末が忙しい人向け、とは書いてありますが勿論全てに参加して頂いても何も問題は有りません。
・一般的な鍋の具材やカセットコンロ等は用意してありますが、その他食材等で必要だと思う物は各自持ち寄って下さい。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記願います。グループ参加の場合、参加者全員が【グループ名】をプレイング冒頭につけてください。記載する事で個別のフルネームとIDを書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
(0モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
50LP
参加人数
13/30
公開日
2015年12月10日

■メイン参加者 13人■

『花守人』
三島 柾(CL2001148)
『相棒捜索中』
瑛月・秋葉(CL2000181)
『可愛いものが好き』
真庭 冬月(CL2000134)
『BCM店長』
阿久津 亮平(CL2000328)
『身体には自信があります』
明智 珠輝(CL2000634)
『天を翔ぶ雷霆の龍』
成瀬 翔(CL2000063)


「あー、ちょっと換気するね」
 水瀬 珠姫(nCL2000070)が立ち上がって風が通るように窓を開ける。当然その後ろからは寒いとブーイングされるが、しかしそれ以上に空気が大変な事になっていたのでそれはスルーされていた。
 香り立つ鍋、揮発する酒、そしてトドメにカカオ臭。全てが混然一体となった空気を一言で表すなら、
「これは酷い」
 ……しかし、そう言う表情は朗らかであり、やがて窓を閉めた珠姫は再び鍋空間へと舞い戻っていった。


「あぁ、遂に私も秋人さんと鍋を囲む仲に……うっ!」
 明智 珠輝(CL2000634)がややエリンギやしいたけ等のキノコ類の多い鶏の水炊きを前に、恍惚とした表情を浮かべる。
 が、その次の瞬間、隣で火加減を見ていた鈴白 秋人(CL2000565)が鍋に視線を向けたままで人差し指を珠輝の側頭部に突き入れた。
「……うん、そろそろ食べましょうか」
 程よく煮立った鍋から秋人が器に取り分け、息を吹きかけて少しでも冷まそうとする。流石に熱々の具を食べさせるような真似はしないようだ。
「ふー、ふー……熱いので、気を付けて下さい」
「あーん☆」
 しかし珠輝はただ口を開けて待つ。手ずから食べさせる形にしたいのだろう。が、秋人はそれをスルーして珠輝の前に器を置いて自分の分を取り分け始めた。
「ふふ……いけずですね。さぁ皆さん、私のキノコを頬張むぐっ!?」
 それでもへこたれない珠輝が周囲へ高らかに鍋の完成を伝えようとするが、その瞬間に鍋から出したての鶏肉が口の中へ詰め込まれていた。
「あぁ、生きててよかった……ッ」
 熱々の肉を突っ込まれながらも念願の「あーん」を達成した珠輝は、どこまでも幸せそうであった。

「ユスだな、よろしくな!」
「よろしくお願いしますわ、カケル」
 成瀬 翔(CL2000063)が元気に挨拶をしていたのは、熊の縫いぐるみを抱えたユスティーナ・オブ・グレイブル(CL2001197)であった。
 体積がリットル単位のプリンに興味津々の翔にユスティーナはそれをズイっと差し出す。
「ユス、お鍋の具じゃなくて立派なオバケプリンを持ってきたんですわ! ……オバケ?」
「バケツ、プリンね」
 麻弓 紡(CL2000623)は苦笑して訂正しつつ、豚バラ白菜鍋を翔に取り分けた。翔はそれを受け取り、代わりにと持って来たゆで卵を差し出す。鍋に卵、無敵の黄金タッグだ。
 そんな鍋には大根おろしで作られた辛うじて熊と解る物体が鎮座している。ユスティーナの力作であるが、本人は上手く作れないとしょんぼりしていた。
「なんだこれ!? 大根おろし!? じゃあ食べられるんだな! って、ユス-? なんで泣きそうな顔……」
「……食べちゃうんですの?」
「クマ親子もちゃんと食べてあげようね? ……ん。ハジメテだけど、美味しい」
 取り分けられた分を早速平らげた翔がそれに気付き、手を伸ばすとユスティーナがショックを受ける。それを傍目に紡はスパークリング日本酒の入ったコップを傾けていた。
「紡-、酒飲んでないで手伝って……ん? 酒? 未成年は酒飲んじゃダメなんだぞ!」
「ん」
 見た目小学生にしか見えない紡の飲酒に翔が反応するが、即座に差し出されたのは学生証。そこには生年月日が刻まれており、二十歳を超えている事を証明していた。
「って、えっ、ハタチ!? マジ!? ……今年一番のビックリニュースだなあ」
 見た目と実年齢がズレている事が多い覚者だが、それでも未成年か否かは大きな驚きを伴うようだ。

 ジュースがメインのグループがある一方、完全に酒が入っている面々も居た。三島 柾(CL2001148) 、瑛月・秋葉(CL2000181) 、阿久津 亮平(CL2000328) が作るみぞれ鍋のグループだ。
「三島サンとちゃんと話すんはこれが初めてやね、よろしゅう頼んます。いつか同じ依頼行きたいわぁ」
「ああ、これからよろしく……流石阿久津、手際が良いな」
「柾さんこそ」
 昔から妹の面倒を見てきた柾と飲食店店長の亮平のコンビは鍋の準備も手早く進めている。秋葉も旅人故にそういった料理はできるが、今は二人に任せた方が良いと判断したようだ。
「んー、ええ匂い。二人ともほんと料理上手いなぁ……ええ奥さんになるんとちゃう?」
「ならお嫁に行きましょうか?」
「もらってくれる相手がいたらいいんだけどな」
 そう言い三人は笑い出す。完全に出来上がった男衆の図であった。
「でもやっぱり忘年会ゆーたら一発芸やろ! 三島サンの見てみたいわぁ」
「いや忘年会といえばってそんな無茶苦茶な」
「そうだな……んんっ! 『もう一杯食べないか?』」
 徐々に赤ら顔になっている秋葉の無茶なフリに柾が平然と返す。が、その内容は何故か亮平の声真似であった。
「はっはは! 何やすごいレアなもん見た気ぃするわぁ……あ、雰囲気はばっちりやけど阿久津君はもっと噛んでるで! 『お代わりいるかにゃ……な?』みたいな」
「あー成程」
「あの……何で二人して俺のモノマネなんて始めてるんですか」
 三十代二人に絡まれる二十代前半の苦悩と言うべきか、弄られ始めた亮平はやがてそっぽを向いてしまった。
「あ、あっくん照れとるー?」
「照れてません。『にゃ?』とか言いません」
「悪かったって……しかし、鍋はいいよなぁ」
 そうしみじみと呟いた柾は酒を煽る。その視線の先には新たな酒を注ぎに来た真庭 冬月(CL2000134) の姿。次の生贄が決まった瞬間だった。

「今宵は鍋パーティである。フォンデュは洋風鍋である。ゆえに、チョコレートフォンデュを楽しむのである! Q.E.D.!」
 そう高らかに宣言するのは離宮院・太郎丸(CL2000131)を侍らせた春霞 ビスコ(CL2000888) であった。
「ふふふふ~ん♪ きゃー、うちってば、女子力たっかーい! チョモランマ級やで!!」
「折角の忘年会ですっ食べ物の種類も色々あってもいいですよねっ」
 実年齢よりも幼く見える太郎丸を傍らにハイテンションにブランデーを飲むビスコの姿は、場所が場所なら事案になっていただろう。
「ちょっち塩気のあるパンなんかも美味しいのよねー。黒パンとか」
「ボクはやっぱりマシュマロが一番好きですっ」
「んー、バナナはハズレなし! イチゴもサッパリしてええやねー」
 他にもクッキー等の菓子類や幾つかのフルーツをパクパクと食べているが、既に会話がドッジボールになり始めている。本当に放置していて大丈夫だろうか。
「それにしても忘年会ですか……もうこちらにお世話になってからだいぶ経ちますね……」
「ほらほら、たろちゃん、あーん♪ ああん、ほっぺにチョコついてりゅー☆」
 しんみりする太郎丸と、それをぶち壊すビスコ。
「チームの皆さんにも妹共々良くして頂いているので、いつかお返しをしないといけないですね」
「ちゅーしてほしいのかー? これは誘ってるのかー? おっとこのこだねー。おねーちゃん、まいっちんぐよ、いしし♪」
 組み付こうとするビスコと、それをスルーしながらガードして手四つに組む太郎丸。
「ちょっと早いですが……今年もお疲れ様でした。そして来年も頑張りますっ!」
 そして足を払い、見事に太郎丸は酔っ払いを制する。ドリンクや酒類を配って回っていた珠姫が思わず「一本」と言ってしまう程に見事な技であった。

 そんな喧噪の反対側には何やら豪華な具が並んでいる。
「さてどんな鍋に…え、フグ!? マジ!? 大奮発じゃん!」
「態々鍋を不味くする訳にもいかないからな」
 持参した水餃子を一度脇に置き、四月一日 四月二日(CL2000588) は何度も具材と持って来た赤祢 維摩(CL2000884)とを見比べる。
「俺との忘年会そんな楽しみにしてくれてたワケ? いやーひねくれ者と思ってたけど結構イイヤツだなー赤祢くん!」
「ふん、鉄砲に当たれば後腐れないんだがな。どうせ食中毒で死ぬほど繊細な胃など持ってないだろう?」
「……前言撤回。やっぱひねくれてるわ」
 ニコニコと笑う四月二日をバッサリと切り捨てる維摩。年の瀬であってもこの二人の関係は変わらないようだ。
「注いでくれるとか…何この親切さ。怖い! 何企んでんの?」
「馬鹿か、企みが怖いなら泥酔して寝てろよ」
「じゃあキミも飲めよな。折角の忘年会だぜ?」
「……ふん。お前には兎も角、鍋に罪はないか」
 とは言え鍋に酒は付き物であり、酒は人を素直にする。互いに酒を注ぎあい、また鍋を黙々とつついていたのだが。
 カツン、と二人の箸が鍋の上でぶつかり合う。
「……酒で馬鹿になった舌には不要だろう?」
「……いやいや。酒飲み続けて20年、この程度酔ってるうちに入らねえし」
 カッ、と二人の箸が同じ具を掴む。
「ふん、なんだ縦に飽き足らず横に伸びる気か?」
「キミこそ細いし小さいしお腹一杯じゃない?」
 そして始まる大人げない具の奪い合い。覚者としての能力を存分に揮った攻防が鍋の上で始まっていた。
「あとはフグも肉も俺に任せて! 野菜とか白滝とか豆腐とかまだ残ってるよー!」
「倒れる前に野菜でも貪ってろよ。物足りんなら、そっちの煮えすぎた肉がお似合いだ」
 ……やはり、この二人の関係はどこまでいっても変わらないようだ。これも友情の形だろう。多分。

「隣、良いですか?」
「ああ、大丈夫だよ」
 何とか酔っ払いの絡みから逃れた冬月の隣に、フグ鍋の入った皿と何故かプリンの塊を持った珠姫がやって来る。チョコフォンデュの具と同じ皿に入れているせいか別種の何かになっていた。
「前より人数少ないのになんか疲れるな……」
「お酒が入ってる人も居るからね。えっと、ジュースで良いかい?」
「ええ、未成年なので」
 見た目じゃ解らないからねぇ、と冬月の言葉に珠姫が頷く。流石に年齢の都合上、酒類を用意できなかった珠姫は色々と持って来てくれた冬月に感謝していた。
「明智さんの所の水炊きもありますけど、食べますか?」
「ああ、貰うよ。鶏肉美味しいよね。鳥はいい。愛でてよし、食べてよし」
「あー。私は魚派ですかね、実家が海沿いなので」
 一緒に住む家族は居ないが、妖や隔者が跳梁跋扈するこのご時世では珍しい話でもない。今日の参加者でも柾が妖により婚約者を失っていると聞いた事がある。
 二十人も居ないこの部屋にそういった境遇の者が複数居る程度には被害は多く、また大きい。しかし、それでも生きているのだ。前を向いて。
「成程、だからフグか。僕も後で貰ってこようかな……1人で食べてるだけじゃつまらないしね」
 そして今日は辛い事を忘れ、飲み、食い、騒ぐ日なのだ。

 水炊きに浅葱を散らした卵雑炊まで食べ切ったものの、飲み過ぎで潰れた珠輝の介抱の為に秋人は部屋の隅まで移動し膝枕の体勢になっていた。
「今日は皆さんお疲れ様でした。とても楽しかった。明智さんもね」
 ……それは「珠輝と一緒だったから楽しかった」のか「珠輝が見ていて楽しかった」のか、どちらなのだろうか。
 秋人はぼんやりと具の取り合いをしている間に横から大量に奪われている四月二日と維摩や、形勢逆転して太郎丸に馬乗りになっているビスコ等を見ていると、不意に下から声がかかる。
「一緒に市の美術館に出掛けたり……素敵な首輪もいただけたり、幸せな一年でした」
「目が覚めましたか。ええ、俺も楽しかったですよ」
 普段の奇天烈な言動は鳴りを潜め、穏やかな表情を浮かべる珠輝とそれに微笑み返す秋人。だが、その空気も一瞬で霧散する。
「お返しに私の全てを―――っ、要りませんか」
 途中で四本指での突きを額に入れられ、珠輝は言葉を止める。最早扱いも慣れたものである。
「ならば此方を……!」
 そう言い取り出した小箱は、少し早めのクリスマスプレゼントか、はてさて。


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『仲良く喧嘩します』
取得者:四月一日 四月二日(CL2000588)
『仲良く喧嘩します』
取得者:赤祢 維摩(CL2000884)
『私のキノコは如何ですか?』
取得者:明智 珠輝(CL2000634)
『酔いどレディ』
取得者:春霞 ビスコ(CL2000888)
特殊成果
なし




 
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