<南瓜夜行>YESにゃんこ、YESタッチ……?
<南瓜夜行>YESにゃんこ、YESタッチ……?


●嗜好も性癖も三者三様?

「おかしくれないといたずらしちゃうのにゃー」
「にゃー!」
 幼い少女の二人組が、あるアパートの戸を叩く。
 誘い合った友達というわけではなく、ここの町内会のハロウィンのメイン会場である、大きな公園でたまたま意気投合しただけだ。
 片方はまるで直立した猫が服を着ているような童女で、ヴァンパイアをイメージしたような、黒くフリルの多いワンピースを纏っている。
 もう一人のランドセルを背負った方はきちんと人間なのだが、頭に狐の耳が生えていて、ちょろりとした尻尾がスカートの下から覗いている。こちらの童女は魔女の帽子とマントを身に着けていた。

 そしてその戸を叩かれたアパートの一室は、独身男性の一人暮らしであった。部屋の主は佐々木 孝彦26歳彼女なし。
 かなり特殊でニッチな、普通に考えて同志のいない嗜好の持ち主である。
 ……あるのだが、外をドアスコープで窺えばその嗜好に直球ストライクの童女が二人立っている。
 片方は明らかに人間ではない。これが話には聞いていた古妖というものだろうか?それに、もう片方の女の子は人間のようだが、人間の覚者で狐の獣相というのはとんと聞いたことがないし、会った事はない。
 どうしようか、こんな貴重なチャンスは滅多にない。だが、法に触れたら自分の社会的な立場は……
「お菓子くれないのー?」
「お菓子ほしいにゃあ」
 思い悩む自分の心をよそに、つぶらな瞳が二対、自分の方を向いている。
 ああ、猫の女の子のつるつるとした体毛は触ればどんなに気持ちよいだろうか。狐の女の子の尻尾はどんなにふかふかとしていい匂いがするだろうか。

「う、うん、お菓子なら、家の中にあるんだ。お兄さんと一緒に食べようね!」
 背中からアホウドリの翼を生やした男は、目の前の誘惑に負け、二人の童女を家に上げてしまうのだった……
 カチャリと鍵の回る音がし、続いてチェーンのかけられる音も鳴り、そのアパートの玄関はそれきり静かになった。


●知らない人のお家に上がってはいけません

「ハロウィンに釣られてやってきた古妖の案件が増えていますが、今回は……」
 会議室に集った面々へ、久方 真由美(nCL2000003)がゲンナリした顔を向けた。見なきゃ良かった、という小声の愚痴も聞こえてくる
「今回は、仲良くなった覚者の女の子共々、変態の隔者に乱暴されかねない古妖の女の子を救出する任務です」
 ハロウィンの喧騒に乗じてイタズラする古妖の話で最近はFiVEも持ちきりだが、この仕事は少し変り種のようだ。
 真由美の説明を総合すると、警戒もせずに民家へお菓子を貰いに行った女の子二人組がいたのだが、その二人が訪れた家は広義の意味でロリコン、しかもニッチなサブ性癖まで併せ持つ奴の家だったのだ。
 しかもそこそこ強い覚者、いや隔者である。
 このまま放って置けば女の子達が何をされるか分かったものでない。

「何というか、理解に苦しむ人ですが……女の子達のためにも、よろしくお願いします」
 真由美は気を取り直すと、作戦のために集まった者へ深々と一礼し見送るのであった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:安曇めいら
■成功条件
1.隔者【佐々木 孝彦】の撃破
2.古妖と覚者の子供達の救出
3.なし
世界って広いですね……性癖って多種多様ですね……
ヤギコンという単語を知り、ググってみたら仰け反りました。
今回もよろしくお願いします。

●場所・時間
住宅街、町内会のハロウィン会場である公園から少し離れたアパート
夜のあまり遅くない時間帯になります
佐々木が幼女二人を招きいれ、ドアが閉じた直後にアパート入り口に到着となります。
佐々木の部屋は二階です。

●敵
隔者『佐々木 孝彦』(ささき たかひこ)
土行、翼の因子
極めてニッチかつ、同好の士がゼロに等しい性癖の持ち主
やや防御に秀でています
追い詰められると飛んで逃走する可能性があります
【所持スキル】エアブリット、蒼鋼壁、烈波、物攻強化・壱、飛行、警報空間

●救出対象
古妖『鈴々』(りんりん)
猫又の童女です
外見年齢は小学校低学年くらい
そこそこ俊敏ですが、幼い事もあり戦闘能力は皆無です
見た目はやや獣寄りであり、人目で猫の覚者でないことが分かります
にくきゅうぷにぷに

覚者『桜井 夏喜』(さくらい なつき)
天行、獣(狐)の因子
発現したて、小学一年生です
塾の帰りのため、ランドセルを背負ったままマントと魔女の帽子を身に着けています
けもみみぴこぴこ

●仮装
やりたい仮装のある方はプレイングにご記入下さい。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
7/7
公開日
2015年11月15日

■メイン参加者 7人■

『ママは小学六年生(仮)』
迷家・唯音(CL2001093)
『Queue』
クー・ルルーヴ(CL2000403)
『イッパンジン』
風織 歩人(CL2001003)
『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)

●YESにゃんこ!NOタッチ!

 ガチャリ、と鍵を閉めた直後、自身の張り巡らした警報空間の作動と共に、突然ピンポーンというチャイムの音が鳴る。
 何だろうといぶかしみつつドアへ戻る男。
 覗き込めば、アリスの姿をした犬耳のかわいい女の子がドアスコープ越しに見えるが……
 何を隠そう、クー・ルルーヴ(CL2000403) である。
「あっ、ふっ、みみ!みみ!ケモミミ!フサフサキタコレ!洋モノ!もしかして洋モノ!?」
 室内側の男、佐々木 孝彦は、思わぬ第三の獲物の出現に思いっきりガッツポーズをした。
 ただでさえ既に二匹もの天使を毒牙に掛けようとしているのに、ここにきてもう一匹追加されようとしているのである。
 さらに横には、付け耳を付けた迷家・唯音(CL2001093)の姿も。佐々木からすると付け耳というのは守備範囲外なのだが、ピンク髪と琥珀色の瞳も相俟って、ケモだけでは歓喜でもたれそうな中の口直しとしては悪くないように思えた。
 体操着にブルマという服装も、趣味の筋にとっては扇情的だ。
 
「おにいちゃん、なにしてるのー?」
「にゃにみてるのにゃー?」
 様子を変えた男に気づいて、幼女達が佐々木の脚に纏わりつこうとする。
 明言は避けるが、脚というのは意外ときわどい位置でもあり、そこに柔らかな幼女の掌や腕の感触を加えられると……ちょっとどことかかなりきわどい。レートが上がりかねない。
「あっ!ひゃっ!そ、その、お友達が来たみたいだから、あ、上がってもらうね」
 明言は避けるが(二回目)、きわどい感覚を我慢しながらドアの鍵を開ける佐々木。

 天使達への不埒な情熱に胸を躍らせる佐々木。
 だが、上がりこんできたのは天使といえば天使だが、どちらかというと裁きの天使と言った方が良い面々であった――


●だからNOタッチっつってんだろ!!

 ドアを開けた途端、何故か洋ケモロリが、セールスマンよろしく爪先をドアに挟むような仕草をしたことを少しいぶかしんだが、そんなことは次の瞬間に粉々に吹っ飛んだ。
 警報空間の範囲外から、覚者の身体能力でもって他の面々のうち、初動組が飛び込んできたのだ!
 真っ先に駆けこんできたのは三島 椿(CL2000061)と指崎 心琴(CL2001195)。
「トリックオアトリート!」
「うえっ!オスケモ趣味じゃねえよ!!」
 ケモミミをぴこぴこさせているものの、男子中学生のケモミミは佐々木の守備範囲外だったようで、謎の拒否反応を示している。
「こーいうのニュースで見たことあるよー!ろりこんって言うんだよね!おまわりさんにつかまってた!」
 子供らしいストレートな抉り方をするのは御影・きせき(CL2001110)

 子供はまだ無事だ。瞳を黒く変化させながら、唯音がまず動いた。
 嫌いなオスケモに慄いて佐々木が引き下がった隙を突いて、彼と幼女達の間に入る。
「さっきそこで夏喜ちゃんさがしてる女の人に会ったけどお母さんじゃない?」
「ほんとに!?ママが!?」
 唯音が夏喜の気を惹くような物言いをし、意識をこちらに向けさせた。
「迷子になったんじゃないかって心配してさがしてるんだよきっと」
「鈴々のおとーにゃんはー?いたー?」
 猫の大人妖は見ていないが……確かにこんな子供だけで暮らしているのも考えづらく、どこかに鈴々も親がいるのも当然だろう。
 さらに重ねがけるかのように、見目も爽やかな好青年の風織 歩人(CL2001003)も間に入る
 安心を与えるように目線を合わせるが、幼女達から見るとまるで王子様が膝を付いているかのようだ。手作りのお菓子を差し出しながら、優しく声をかける。
「ハッピーハロウィン、レディたち。もう遅いから、家に帰ったほうがいいですよ。お母さん達が心配しますよ。」
 ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)も共に外に出るように促しつつ、歩人の分と併せて、結構な量になる手作りのお菓子をあげながら
「お菓子ならお姉さんがあげますよ。もし、私達とまだお話したくても、私達が出てくるまで絶対に中に戻ってきちゃだめですからね。約束できますか…?」
 と言い聞かせる。幼女二人は、なんとなく室内のピリピリとした雰囲気を察知したのか、こくこくと頷いてアパートの階段を下りていく。
 階段を下る二人分の軽く小さな足音を聞きながら、唯音は錬覇法、続いて醒の炎を纏う。

「ちょ、ま、まって天使ちゃむ……」
 それを追おうとする佐々木の前へ立ちはだかる心琴。妖艶な魔女の衣装を身に着けている。衣装が妖艶なだけだが……
 さらに、幼女と男ケモノに気を取られている間に、ランドセルオバケのきせきが韋駄天足でさっとベランダへ通じる窓へ回りこみ、錬覇法を発動する。準備はばっちり、あとはおしおきするだけ。
「お菓子と悪戯どっちがいい?」
「うるせえ!男なんかにイタズラされても嬉かねえよ!!」
 本人としてはできる限り可愛い女の子を演じているつもりの心琴。だがどう見ても女装している男子中学生にしか見えない。
「早く答えないといたずらをしないといけないんだけど、お菓子の方がいいな」
「うるせえ!黙れ野郎なんか呼んでねえよ失せろ!!」
 しっぽもふりふりして気を引く……が、心琴を押しのけて幼女達の方へ行こうとする佐々木。既に相当イラついている。
「僕たちではダメかな?」
 ダメ押しかのようにその佐々木の服の裾を耳をしょんぼりさせる……心琴へ、ついに佐々木がキレた。しかし心琴は余裕が無いのか鈍感なのか、キレたことにまだ気付いていない。
「なんというか済まないが実は僕は男だったのだー!」
 幼女達が巻き込まれる危険が確実に無くなったところで、心琴がタネ明かし(……と、本人は多分思っている)するものの、さっきからイライラしていた佐々木が完全に怒りを顕わにする。靄のように蒼い何かが彼を包んでいくのは、恐らく蒼鋼壁だろう。
「なんで!なんでみんないつもいつも!俺のことを冷ややかに見て!バカにして汚いものを見るようにして!バカにするんじゃねえ!!」
「イテテテテ!」
 激昂して叫びながらエアブリットを放ち、心琴の身体へ強かに当て、さらには一際大きいアホウドリのものの翼を羽ばたかせ、FiVEの覚者達へ烈波を放つ佐々木。
 烈波もさることながら、心琴へ撃ったエアブリットがかなり強烈な一撃だったようで、彼はごっそりと体力を持っていかれているが、お返しと纏霧で佐々木の弱体化を図る。
「俺が嫌がっているのによぉ、趣味でもないデケぇ男のケモなんか見せられて、こっちの気持ちが分かるか!?」
 心琴に完全にキレてしまっている佐々木は、心琴が召雷を放つのと同時に二発目のエアブリットを撃つ。そのダメージと反射を受けると共に心琴がその場に倒れこむ……が、すぐに立ち上がった。
 その間、ふと佐々木が退路になりうる玄関と窓を見遣ったのだが……玄関は突入方向だったのでいうまでもなく、窓はきせきに塞がれている。無論、会ったことの無い相手の攻撃系統など推し量れないので、下手に動けないと考える佐々木。
 この押し問答の間にFiVE側はすっかり攻撃態勢を整えており、ラーラも負けじと醒の炎で強化された火炎弾を放つ。
「あんな可愛い子達ならお菓子をあげたくなる気持ちは分かります。だけど、ひどいことをしようというなら許すわけにはいきません!」
「な、酷い事じゃなくて俺は仲良くしかたっただああああああづぅぅい!」
「ッ痛っ……!」
 翼を狙った火炎弾は、しかし胴体へ着弾してしまう。むしろ、しっかりとダメージになったというべきか。蒼鋼壁で自分も反射ダメージを貰ってしまったが、大事にはまだ至っていない。
 熱さに悶えるロリコンへ、歩人が鋭い口撃も交え、新緑を帯びた五織の彩を叩き込む。
「独特な趣味趣向を持つのは全く構わないんですけど、やってる事は大人として最高にみっともないですね」
「イケメンだからって偉そうに!俺は正しいんだ!多様性は認められるべきなんだ!」
 エアブリットを歩人へ放ちながら、佐々木は尚も叫ぶ。

 蔵王で守りを固めたクーは回復手である椿の前へ布陣し隆槍を放つ。椿が玄関へのルートを塞ぐように立っているので、二重に塞ぐような形となる。後ろの椿の癒しの霧が皆を包み込み、既に命数を削る程消耗していた心琴へは、重ねてきせきの樹の雫が齎される。
 さらにきせきはそのままトリッキーに動き、お菓子のステッキから棘一閃を打ち出して佐々木を翻弄するも、蒼鋼壁の分、きせきにダメージが返されてしまう。特殊がダメならば物理だと、歩人は小太刀でもって斬・一の構えを繰り出す。

「何をするかまではわからんがみせいねんりゃくしゅは犯罪なのだ、犯罪が起きる前にお前がやめたのじゃなければ犯罪じゃないぞ」
 命数を削って尚も、バズーカでもって勇敢に戦う心琴だが、若干意味が通じていないような気がしないでもない。バズーカの発射と共に、ズレかけていた長髪のカツラが反動で飛んでいく。
「お前は本当に何がしたいんだ!犯罪を起こす前に俺がやめなければ犯罪じゃねえのか!?ああ!?」
 バズーカまで発射されめちゃくちゃな室内を見回し、烈波を室内の皆へ吹き荒らしながら、未だに若干キレ続けている佐々木。キレているので気付いているのかは怪しいが、一対七で押すために烈波を使い続けているため、体力がかなり急速に減ってきている。
「よくわかんないけど、悪い奴にはおしおきだよー!」
 パチン!という小気味いい音と共に、きせきの深緑鞭が佐々木を横薙ぎに張り倒すものの、反射ダメージと共にエアブリットが彼に打ち込まれる。
 が、椿の癒しの滴が彼に回され、大きな一撃など無かったかのように癒されていく。
 体力以外の消耗の激しい椿には、心琴がすかさず填気でフォローを入れる。

 魔法少女のようなステッキに、炎を帯びて――炎撃を繰り出す唯音。
「ケモミミもふもふの小さい子が好きなのはわかるけど、だったらやさしくしなきゃダメ!好きな子にはやさしくしなきゃだめ!ジョーシキでしょ!」
 彼女の主張そのものは社会一般の常識なのだが……認識が若干どころか大分ズレている人間には伝わらないようだ。
「俺だって今までそうしてきたさ!でも!それでも報われることは無かった!好みのロリケモに好かれることなんてなかったさ!じゃあ、報われないならやる必要無いだろ!?」
 半ば泣き叫びながら反論し、腕力だけで攻撃する佐々木。既に蒼鋼壁は切れており、反射を返されることは無い。

「痛い、もうやだ……邪魔すんな、もう帰ってくれ……」
 個人の力量としてはこちらの個々を完全に上回っていたのだが、心琴の対応でペースを乱されたこともあり、完全に袋叩き状態に陥っている。既に一度膝をついているので、体力の限界ももうすぐだろう。
 形勢がこちら寄りになってきたことで少し手の空いた椿も、水礫で攻撃に加わっている。覚者の面々と佐々木の言い争いを聞いたせいか、表情は険しい。
「若干……いえ、かなりお仕置きが必要なようですね」
 怒りも既に薄れてきて、涙目のまま応戦し続ける佐々木だが、クーの鋭刃脚を喰らったときだけは、怒りの中にもなんとなく幸せそうな表情をしていたのは……ご褒美ということだろうか。
 彼に改心の気配があるようなら、クーも自身の耳や尻尾をもふらせても良いと思っていたのだが、どうもその様子は無い。

「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を…イオ・ブルチャーレ!」 
 ちょっと二ヶ月早くないかな?という決め台詞と共に、ラーラの必殺の火炎弾が佐々木の脳天にクリーンヒット。
 ついに彼はバッタリとその場に倒れこんだのだが……まだなんだかようじょが、とか、ひとばんじゅうけもけもしたい、とか不穏な文字列がうわ言のように聞こえてくる。ぶっちゃけもう完全にアウトだ。
 おまわりさんはやくきてください、という七人分の心の悲鳴が、音も無く木霊する。
「こういうのって、さいはんりつ?が高いってニュースで言ってたよ……」
 きせきが、ぽつりとそう呟いた。やはり子供は正直に核心を突く。

 倒れたままの佐々木へ椿がスッと近寄り、藍玉の瞳を向ける。
「いくらああいう年代と格好の子たちが好きだからって、こういう事はしてはいけないわ。彼女たちの気持ちも考えてあげて。」
 佐々木をぐうの音もでないほどのド正論で叱咤する椿。しかし佐々木も精神的にはまだまだ負けていないようで……
「バレなきゃ犯罪じゃないし、ちょっともふって遊ぶだけだったし……ケモでもない年増に言われたくないぞ……」
 開き直ろうとする佐々木へ、自分がもし彼女たちの立場だったらどう思う?と怒りを顕わにしながら諭す椿。
 あまりにも反省の見られない佐々木へ、ついには乙女の鉄拳をお見舞いする。
「もし同じような事をしようとしたらまた貴方を殴りにくるわ。」
 その視線は、彼女の司る冬の力のようにあまりにも冷ややかだった。
 
●YESタッチの末路

 匿名を装ったみかげの通報により、お縄になっていく佐々木。もう二度と社会に出てこないでほしいと、皆は心底願った。覚者とおぼしきお巡りさんにパトカーに押し込められながら、未だに何か叫んでいる。
 一部、激しい主張の応酬を繰り広げた者は遠い目でパトカーを見送る。

 事が終わり、アパートの下でじっと待っていた夏喜と鈴々へ声をかけて周囲を見回す覚者達。
 夏喜の母親はいないようだが……と思ったFiVEの面々らは、こちらに近づいてくる足音に気が付いた。
「おーうい、おーい」
 心配そうな声を響かせて、成人男性程の衣服を纏った直立するネコがこちらへやってくる。近くでよく見ると意外と人間に近い外見をしており、整ったネコ目の顔立ちをしている
 おとうにゃん!と甲高く甘い声を響かせてネコ男性に駆け寄る鈴々。どうやら父親のようだ。
 今回の事件を、鈴々の父に説明するクーや歩人。
「ええっ!?そんなことがあったんですか!?人間にも変なオスがいたものですねえ……」
「安心してください。こういったことがありましたから、人間の警察も、この辺りをしっかりパトロールしてくれると思います。」
 鈴々の父は大きな目をさらに丸くし、しかし娘に何も無かったことに安堵すると、手にしていた紙袋からあるものを取り出した。
「元々、ハロウィンのために作っていたものなんですが……良かったら召し上がって下さい」
 カボチャを練りこんだと思しき、オレンジ色に染まったおやきだ。ネコの顔の形をしており、ころんとしていてなんとも可愛らしい。
「本来なら、もっとお礼をすべきですが、こんなくらいしかできなくて申し訳ありません……」
「そんなことはありませんよ。可愛いお菓子、ありがとうございます」
 ぺこりと頭を下げるラーラ。

「にゃつきちゃんと、また今度もあそぶのー!」
「りんりんちゃんと、また今度もあそぶのー!」
 揃って動物の耳としっぽをぴこりと動かす二人の幼女。夏喜の家までは、鈴々親子が送っていくようだ。古妖とはいえ、友達の保護者が送っていってくれるなら大丈夫だろう。
 それにしても、あんな目に遭いかけたというのに二人とも元気なものだ。
 遠ざかるパトカーのサイレンを聞きつつ、注意深さと用心深さを身に付けながらも、その元気さと無邪気さを失わないでほしいと、FiVEの面々は二人のまだ小さな背中を見送りながら思うのであった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『かぼねこおやき』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員




 
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