【after】アラタナル世界で、聖なる日をキミと
【after】アラタナル世界で、聖なる日をキミと


●いつもの3人組は
「猫耳……」
 マジか、と宮下 刹那は妹の頭にある耳を見て呟く。
「尻尾もあるよー」
 可愛い? ねぇ可愛い? と何度も訊いてくる妹に、己の額に手を置き刹那は首を振った。
「いや。全然可愛くない」
 白い耳とか尻尾とか、本当にカンベンしてくれ、と頭痛を覚えていた。
「おっはようございまーす!」
 玄関から聞こえた元気な声に、「うるさいのがまた……」と顔を顰める。
「刹那さんおはようございます! 永久ねこちゃんもおはようございます」
 ネコいいなー、今日も可愛いねー、と頭を撫でている。
「気安く触るな」
 出禁にするぞ、と言えば、「妬いてるね」「妬いてるよね」と2人でコソコソと笑い合っている。
「よし帰れ」
 首根っこを掴んで言えば、「冗談です。寒空に放り出さないで!」と相沢悟が慌てた。
「今日はクリスマス。寛大になるには、とても良い日ですよ」
 ニッコリ笑う悟を、コノヤロどうしてやろうかと考えていた。

●親友達は
「なっ! 俺の言う通りだっただろ!!」
 年下の親友をチロリと見下ろし、保坂啓介は何度目かの溜息を吐く。
「発現したら見てみろ! 病にだって負けなかったろ。死神もどっか行ったじゃないか!!」
 あーそうだな、と啓介は何故かドヤ顔の小川敦を見返した。
「だけど流石に、『はい健康体です』とはいかないぞ。ちょっと運動しただけでも、今はすぐに息が切れるし――」
「いいんだ。生きててくれてんだから……」
 それだけで充分だ、と呟いて、啓介の首の入れ墨のような模様に指先で触れた。
「ごめんな、前世持ちじゃなくて」
「いいよ。何言ってんだ」
 そんなの全然いい、と自分のマフラーを外して啓介の首へと巻く。
「お前……またモコモコにするつもりじゃないだろうな」
 呆れて言えば、風邪ひいたら大変だからな、と敦は無邪気に笑った。

●相変わらず腐ってる
「お、アイツら絶対デキてんな」
 クリスマスで賑わう街を、トルテはスケッチブックを片手に歩き回る。
「キスくらいしろよ、今日がなんの日だと思ってやがんだ。アイツら」
 その後ろをついて歩きながら、セムラとラスクは顔を見合わせる。
「相変わらず、脳と目が腐ってやがんな」
「どう見ても、部活帰りのオトモダチ同士ッス」
 小声で話す2人の声は聞こえない。
 聞こえたら聞こえたで無茶振りがこちらに向くので、2人もおおっぴろには突っ込めないのだ。
「直にお前に触れてぇ。全部脱げよ、オレの翼で隠してやるから――なーんてなッ!!」
 ゲラゲラと高らかに笑うトルテが振り向かぬ事を祈りつつ、セムラとラスクは連れだと思われぬよう、距離を取った。

●死の導師たち
「つまんねぇ世の中になっちまったな」
 誰もが発現した世界に、聖羅は街中を歩きながらボヤく。
 その隣を、司祭の衣装を纏った男が歩いていた。
「おやおや。リーダーがこれではね。死の導師は解散、ですか?」
「どうだかなー。世の中から、恨みが消えた訳じゃないしな」
 これからゆっくり考えるさ、と言った青年に、ルファはクスリと笑う。
「結局、私にはあなたが何をしたかったのか解りませんでしたよ」
「死にたかった……」
「……え?」
「なーんて言ったら、お前は信じる?」
「さあ、どうでしょうね」
 腹を探り合うように視線を交わし合い、互いに笑み零して、2人は人込みに紛れた。

●聖なる日をキミと
 全ての人が発現した世界。
 変わったところもあれば、変わらない事もある。

 聖なる日の、過ごし方も――。

 アラタナル世界でのクリスマス。
 あなたは誰と、過ごしたいですか?


■シナリオ詳細
種別:イベント
難易度:楽
担当ST:巳上倖愛襟
■成功条件
1.クリスマスを楽しむ。
2.戦闘はしない。
3.なし
皆様こんにちは。巳上倖愛襟です。
アラタナルでの最後のクリスマス。
ぜひ楽しい時間をお過ごし下さい。

■場所
場所はどこでも結構です。特に場所がどこかを記して頂く必要はありませんが、こだわりがある場合などはご記入下さい。

■時間帯
朝でも昼でも夜でもお好きな時間帯を。
但し、1つの時間帯だけに絞って下さい。

■持ち込み品について
今回は、装備されていないアイテムも持ち込み可となります。
お相手へのプレゼントなど、何かある場合はお持ち下さい。

■名前・描写について
基本的には、参加者のみの描写となります。
相手が一般人の場合など、キャラクター登録が出来ない場合などでどうしてもお名前を出して欲しい場合は、『EXプレイング』にてその旨をご記入下さい。
EXプレイングに書かれていない場合や、マスタリング判定の結果で等、描写出来ない場合もございます。
ご了承下さいませ。

■NPC
こちらも巳上のシナリオに登場した事のあるNPC以外は描写が出来ませんので、他ST様のNPCは登場出来ません。巳上のNPCで会っても良い者などがおりましたなら、OPに登場していないNPCについてもご指名下さい。
喜んでお会いさせて頂きます。

■イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。


以上です。
それでは皆様が大切な方と素敵な時間が過ごせますよう、お祈りしております。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
(2モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
50LP
参加人数
10/30
公開日
2019年12月31日

■メイン参加者 10人■

『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『居待ち月』
天野 澄香(CL2000194)
『モイ!モイ♪モイ!』
成瀬 歩(CL2001650)
『Mr.ライトニング』
水部 稜(CL2001272)
『エリニュスの翼』
如月・彩吹(CL2001525)
『地を駆ける羽』
如月・蒼羽(CL2001575)
『五麟の結界』
篁・三十三(CL2001480)
『想い重ねて』
蘇我島 恭司(CL2001015)
『想い重ねて』
蘇我島 燐花(CL2000695)


 全員が覚者という、新しい世界になってから初めてのクリスマス。
 戸惑う人も、混乱している人も、きっと少なくはないだろう。
 けれどもクリスマス色に染まる街は、これまでのものと変わらない。

 工藤・奏空は歩きながら、そんな街を見渡す。
 そして彼の隣を、恋人の賀茂 たまきが歩いていた。

 去年と全てが一緒、という訳ではない。
 それでも再び、この日を2人で迎えられた事が、たまきはとても嬉しかった。
 繋ぎ合った手のぬくもりが、伝わってくる。
 ほぅ、と吐き出された彼女の白い息が、薄く染まる頬を撫でるように流れていった。

 2人が辿り着いたのは、大きなクリスマスツリーがよく見える高台。
 たまきは奏空とは繋いでいない方の手を胸へとあてる。
 その瞳の先には、クリスマスツリーの金色の星が輝いていた。

 今まで、この世界の為に。
 そして未来を、作る為に。
 命を賭して下さった方々の御霊が、再び、この世界に、巡って来られますよう……。

 祈りに瞼を閉じて。そして誓いに、胸へとあてた手をキュッと握った。

 その方々が、安心して、産まれて来られる様に、未来を守り抜きます――。

 奏空もまた、マリスマスツリーを見つめ、思いを馳せていた。
 魂を散らせてまで、背中を押してくれた仲間達。
 彼等の為にも、きっとこの新しい世界を生きて行く――。

 そして。
 この手は2度と離さないようにと、きゅっと繋ぐ手に力を込めた。

「たまきちゃん……」
 真剣な奏空の声に、たまきが彼の瞳をまっすぐ見返す。
「ちょっと先の話なんだけどさ……。たまきちゃんも、俺も……大学を卒業したらさ。――……結婚しよう」
 僅かに、目を、見開いて。
 たまきは詰まった胸の服を掴む。
「ずっと……ずっと、一緒の気持ちです……」
 奏空の服も掴んだたまきに、奏空の手が添えられた。
「……ふ……不束者ですが――」
 嬉しそうに笑った彼の唇が、重なって。温かな両腕に抱き寄せられる。
「……どうか、その……宜しく御願い致します」
 奏空の腕の中、掠れ気味のたまきの声が、囁いていた。



「歩ちゃん、お待たせしました」
 水部 稜と共に迎えに来た天野 澄香の声に、成瀬 歩は嬉しそうに笑う。
「あっ! すみちゃんとりょうちゃん、お迎えありがとー!」
 靴を履いて自宅から飛び出してきた歩に、2人も笑顔を浮かべる。
 少女を真ん中に挟んで、パーティ会場へと歩き始めた。
「今日はお兄ちゃんは来ないんですね」
 澄香の言葉に、歩はつまらなそうに言葉を放つ。
「あゆみ置いてけぼりー!」
 ぷんぷんと怒っている歩に、「あらあら」と微笑んだ澄香は、少女の向こう。
 見知った顔を見つけて笑みを深めた。
「ほら、あそこに三十三くんがいますよ」
「えっ! さとみん?」
 澄香が指差した先。夕陽の光を受ける青年を見つけて、歩が走り出す。
「さとみーん!」
 まっすぐ走って行って、歩の声に振り返った篁・三十三の手を両手で握った。
 その様子を、稜が呆気にとられた顔で見つめる。
 隣からのクスクスと笑う声に顔を巡らせて、不思議そうに首を傾げた。
「澄香、どうした?」
「鈍いですよ、もと……稜さん」
 呼び直した新妻の顔が、僅かに染まっている。
 まだ、慣れないのはお互いに。
 けれども自分達を包む暖かな空気に、2人で微笑み合った。
「さとみん、どこ行くの? これからクリスマスパーティするんだよ、いっしょに行かない?」
 澄香達を振り返りながら言う歩に、身を屈めるように歩に手を引かれていた三十三が目を向ける。
 依頼でよく一緒になった澄香と、初めて会う彼女の夫へと挨拶をした。
「しかし、迷惑なのでは」
 自分が同行してもいいものかと思案する。けれどもすぐさま歩から否定された。
「そんなことないよー! ねっ、すみちゃんもりょうちゃんもいいよね?」
 三十三の手を両手で握ったままの歩に、澄香が笑顔で頷く。
「ええ。大勢の方が楽しいですから、ぜひ」
 やったー! とさっきの不機嫌が嘘のよう。歩はご機嫌で前を行く。それを温かな瞳で見下ろしている三十三の横顔を、後ろからついて行く澄香が嬉しげに眺めていた。
「なんか気づいたのか?」
 稜の言葉に、彼の腕へと澄香はそっと腕を絡める。
「後で三十三くんには『女の子は大人になるの早いんですよ』と言っておかなくては、ね」
 ふふっと笑った。

「あれ乗ろう!」
 道すがら、見つけた観覧車を歩が指差す。
「こんな所に観覧車なんてあったんですね……」
 見上げた澄香は目を細め、稜を振り返った。
「せっかくなので稜さん、乗りましょう?」
 歩と共に、子供のように笑った澄香に思わず見惚れる。
 誘われるままに、稜と三十三も観覧車へと歩きだした。
「すみちゃんを旦那様と2人にしてあげて」
 クイクイと袖を引かれ身を屈めた三十三に、歩が背伸びするように耳へと囁く。
 了解だ、と三十三が微笑んだ。
 夫妻を先に乗せて、三十三に手を取られエスコートされながら、歩が観覧車に乗り込む。
 向かいへと座った三十三を見つめて、少女は膝の上でキュッと己の両手を握る。
 なぜだろう……。
 ドキドキとして、仕方なかった。
「暗くなってきましたね」
 夕暮れから宵闇に変わる街を見ながら、澄香がバックからプレゼントの包みを取り出す。
 差し出してくる彼女に、「考えることは一緒か」と稜も苦笑を浮かべた。
「俺からもプレゼントだ」
 互いに贈り合ったのは、ネクタイピンと指輪。
「まぁ、今つけてる指輪に比べたら大した指輪じゃあないかもしれんが、受け取ってくれ」
 指へと嵌めた澄香が、「サイズ、憶えていたんですね」と悪戯げに笑う。
「そりゃ妻の指のサイズぐらい覚えているさ」
 当然だと言いたげな彼の言葉が、純粋に嬉しい。
「また来年も貰って下さいね」
「来年はもっといいプレゼントを用意するからな」
 コツンと互いの額を合わせ、幸せに笑った。

「少し、付き合ってくれるかな」
 今度は三十三が歩の手を引いて、ティーンズ向けのお店へと入っていく。
 慣れぬ様子で店内を歩いて。彼が選んだのは、ピンクゴールドのオープンハートのネックレス。
 つけて欲しいと願った歩に、片膝を地面へと付けた。
 首へとかけてあげれば、頬をピンクに染めた少女が、はにかみ笑う。
「ハートがとってもかわいい! えへへ、だいじにするね」



 料理担当の澄香に対し、如月・蒼羽と如月・彩吹はパーティ用の買い出し担当。
 お菓子と飲み物を抱え、街中を歩いていた。
「兄さん」
 隣の妹からの声に、「ん?」とのんびりと蒼羽は答える。
「クリスマスはこれでいいの?」 
 きょとん、として。首を傾げた。
「新婚夫婦を冷やかしにいこうと決めたじゃないか。――まあ、僕は御夫君の蕩けた顔が楽しみなんだけど」
 クスリと笑った蒼羽に、彩吹は更に言葉を紡ぐ。
「――私 義姉さんがいても仲良くできると思うよ」
 しばらくの間目を瞠ってから、蒼羽は微笑を浮かべた。
「僕も 義弟ができても仲良くできるよ」
 コテンと首を傾げ、少し考えた彩吹がにこりと笑う。
「お互い様ということ? じゃあ、来年以降のお楽しみで」

「あっ」
 街を行き交う人々。その先に何かを見つけ、彩吹が洩らす。
 どうした? と蒼羽が問う前に、荷物を兄に預け走り出した。
「――ルファ!」
 人込みの中、ガシリと司祭服の男の腕を掴む。
 青年2人が、同時に振り返った。
「え? 如月さん?」
「この時期によく会うね。クリスマスだからかな。元気だった? そっちの彼も」
 目を細め、柔らかな笑顔で言葉をかけた彩吹に、驚くルファの隣で聖羅が楽しげに笑っていた。
「面白いヤツが現れたな」
「生きていてくれて、会えて嬉しい」
「そうですか。私も嬉しいですよ、あなたに会えて」
 ポンポン、と腕を掴む彩吹の手を軽く叩いて。――次の瞬間、ルファが剥がそうとする。
 笑顔の彩吹は知ってか知らずか手に力を込め、女性とは思えぬ力で腕を掴み続けていた。
 互いに笑顔で繰り広げられる攻防に、聖羅が呆れた声を出す。
「何やってんだ、お前等は」
「彩吹。司祭様を襲撃しているように見えるよ」
 聖羅の言葉に同意するように、蒼羽の声が重なった。
「おいおい。更にFiVEがいんのかよ。癒雫はやるから、俺は見逃せ」
「え? ちょっと、何を勝手に聖羅!」
 踵を返した聖羅の腕も、空いていた方の彩吹の手に掴まれる。
「何してる? 癒雫のご友人」
「え、いやだって。目を離すとあなた達、いなくなってしまいそうだから」
「そう、正解だ。いなくなろうとしてんのに、邪魔するな」
「まあまあ」
 ごめんね。パワフルなスキンシップする妹で、と蒼羽が彩吹をのんびり制する。
「妹?」
 驚くルファに、彩吹が互いを示した。
「そう兄さん。彼等は『死の導師』のルファと聖羅」
「ああ、お噂はかねかね」
 兄の蒼羽です、と彩吹とよく似た笑顔を浮かべる。
「妹がお世話になっています」
 蒼羽の言葉に目を剥いて、聖羅は呆れたように溜息を吐いた。
「兄妹揃って変わってるな。で? どうするんだ? 俺等を捕まえるか?」
「そんな事はしないよ。ただ――たまにでいいから、顔を見せてよ」
 は? と聖羅が怪訝な顔をする。
「なぜ、お前に顔を見せなくてはいけない?」
「友だちになりたいからじゃない?」
 それ以外に理由がいるの? と言いたげな彩吹に、クスリと蒼羽が瞼を閉じ笑った。
「あ、ねぇそうだ。友人とこれからパーティなんだ。一緒にどう?」
 チラリと目を向けてきた聖羅に、蒼羽も笑顔を浮かべる。
「予定がなければご一緒にどうですか? パーティは人が多い方が楽しいし」
 肩を竦めて、聖羅は再び彩吹へと視線を戻した。
「わかった。癒雫は行く。俺は行かない。理解できたらすぐ手を離せ」
 残念だな、と眉を下げ笑う彩吹を一瞥して、聖羅が再び背を向ける。
 その腕を、蒼羽が摑んだ。
「今度はなんだ? 俺は気が長い方じゃない」
 聖なる日に戦闘したいか?
 そうニヤリと笑んだ聖羅へと、蒼羽がお菓子の入った小さな包みを差し出す。
「は?」
「クリスマスプレゼントです」
 しばらく固まった聖羅が、ゆっくりと手を差し出した。
 掌に乗ったお菓子を、キュッと握る。
 驚いた顔のルファと彩吹に目を遣り、最後に蒼羽を見てから微笑を浮かべた。
「兄、って存在に、俺は弱い」
 じゃな、と背を向け去って行く。
「私達も行こうか」
 彩吹の言葉に、青年達が微笑む。
 荷物を持ってくれた2人へと腕を絡め、楽しそうに笑う彼女を挟んで歩きだした。



 2人でイルミネーションを見た帰り道。
 恋人達は語らいながら夜道を歩く。
「めいちゃんには、クリスマス用に豪華な猫缶を用意してるのですよ」
 楽しそうに話す柳 燐花を見下ろしていた蘇我島 恭司は、そっとポケットへと手を入れる。
「はい、燐ちゃん、メリークリスマス!」
 差し出された小箱。突然のサプライズに、燐花が目を瞠った。
「……本当は、もっと早く渡したかったんだけれど……つい渡しそびれちゃって」
 くしゃりと己の頭を掻く恭司は、いつもの落ち着いた態度。
 けれども様子が、なんだか違う気が燐花はしていた。
「ありがとうございます……。蘇我島さんへのプレゼントは、帰ってからお渡ししますね」
「うん。燐ちゃんからのプレゼントも楽しみだ。……っと、箱を開けてみて」
 彼の言葉に促されて、燐花が小箱を開けた。

 開けた箱の中には、リングとネックレスチェーン。

 固まっている彼女に、恭司が言葉を添える。
「いつまでも一緒に居て欲しい……そういう想いを籠めてみたんだけれど……どうかな?」
「……えと……こういうとき、なんていえばいいのか…その」

 言葉にできない程の嬉しさと。
 隠しきれない戸惑いと。

 その両方を滲ませる燐花へと、恭司が微笑んだ。
「難しい質問だったかな?」
 大人な対応。
 どこまでも優しく受け入れてくれる恋人を見上げ、燐花の頬が薄く染まる。
 こういう場合って――。

 嬉しいでいいの? 不束者ですがといえばいいの? もっといいお返事は……。

 頭はグルグル、上手く働いてくれなくて。
 バクバク鳴っている鼓動は、隣の彼にまで聞こえてしまいそうで。
「お家帰ったら、嵌めて貰っていいですか?」
 そんなひと言を返すのが、精一杯で。自分で情けなくなってしまう。
「うん、勿論だよ」
 そう返してくれた彼から、顔を俯ける。

 ――お家につくまでにお返事考えるので、少し待ってくださいね。

 明確な答えでは無かったけれど。恭司は胸を撫で下ろす。

(受け入れては貰えたようで、一安心……だね)
 瞬く星を見上げ、ほぅ、と密かに息を吐き出した。



■シナリオ結果■

大成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

ご参加、誠にありがとうございました。
最後までアラタナルを愛して下さった事にも、心よりの感謝を。
私自身も、皆さまへの愛を込め、執筆させて頂きました。

皆様どうぞお幸せに!
ありがとうございました。




 
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