<五麟祭>学園に祭の歌が鳴り響く
<五麟祭>学園に祭の歌が鳴り響く


●五麟の祭
 五麟祭――それは五麟学園の学園祭である。
 五麟学園の文化祭、それは学園すべてが会場となる一大イベントである。小中高大全ての生徒と校舎を使ったお祭りは、毎年かなりの客がやってくるイベントとなる。
 展示を出すのは学生だけではない。手続きを取って検査に合格すれば、外部の人間も店を出すことができるのだ。屋台やパフォーマンスなどの野外イベントから、教室を借り切っての喫茶店やお化け屋敷。体育館などの会場を借りての演劇や演奏など様々だ。
 そして五麟祭のうわさを聞きつけて、とある覚者が足を運ぶのであった。

●お嬢様とその従者
「ここが五麟学園……巨大さだけが売りの田舎臭い学園ですわね。あ、綿あめ一つくださいな」
「はは。しかし庶民の祭に触れておくこともよきことナリ。ややっ! あちらにはお化け屋敷があるナリ」
「確かに若さゆえのパワーはあるようですが、それだけでいい祭ができるものでもないでゴザル。……むむ、一時からライブがあるでゴザルよ!」
 学園の校門で三人の覚者達がパンフレットを見ながら、仁王立ちしていた。仁王立ちしながら、どうイベントを回ろうか考えていた。
 偉そうに上から目線ではあるが、祭全部を回る気満々である。周りの人も何かのパフォーマンスかなぁ、とあまり気にしていない。
「いいでしょう。この恵比寿・姫子((えびす・ひめこ)がこの学園の祭を試して進ぜましょう。朽木、猿飛、ついてらっしゃい!」
「「はい。お嬢様!」」
 ――こうして、祭り審査するつもりだけど祭を楽しむ気満々の第三者お上りさんが五麟祭に足を運ぶのであった。

●企画受付窓口
「はい。五麟祭企画窓口です。やりたい企画名と人数、そして使いたい会場をこちらに記入してください。
 それでは学園祭当日は頑張ってくださいね」



■シナリオ詳細
種別:イベント
難易度:楽
担当ST:どくどく
■成功条件
1.企画を立てて、祭りを楽しむ。
2.なし
3.なし
 どくどくです。
 突然ですが学園祭です。学園祭と言いながら、一般人参加OKなのですが。

◆説明ッ!
 五麟学園学園祭です。皆様には学園祭の企画を立てていただきます。
 企画は学生でなくても立てることができます。また、学生であってもグループが同学年である必要もありません。PC一人で名無しNPC(クラスのみんなとか、家族を巻き込んでとか)での企画も可能です。もちろん一人で屋台も可能です。
 どんな企画でも構いません。カフェ系、オバケ屋敷系、展示物系、演劇系……あなたの発想の分だけ企画が存在します。安全性さえ考慮すれば、格闘ショーなども可能。度が過ぎると止められますのでご注意を。
 禁則事項を挙げるとすれば、

・食べられないものを売る(衛生的、味的、様々な理由で)。
・ダメージを受けるほどの危険性の高い出し物(ギャグ的なダメージは可。むしろ推奨)。
・未成年者(実年齢)の飲酒喫煙行為。
・その他、常識に照らし合わせて不適と判断されたこと。

来訪客
・恵比寿・姫子((えびす・ひめこ)
 天の翼人。一七歳女性。お嬢様口調。『アイドルオーラ』とか『覚醒爆光』とかを活性化しています。
 このキャラクターが皆様の企画を回っていく、という形でリプレイは進行していきます。お嬢様なので学園祭の知識はなく、何でもかんでも派手に驚きます。ぶっちゃけ、リアクション芸人。

・朽木&猿飛
 姫子の従者。リアクション芸人2&3。『猟犬』とか『鋭聴力』でイベントを発見する役割です。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】という タグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
(0モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
50LP
参加人数
22/∞
公開日
2015年10月17日

■メイン参加者 22人■

『緋焔姫』
焔陰 凛(CL2000119)
『RISE AGAIN』
美錠 紅(CL2000176)
『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『かわいいは無敵』
小石・ころん(CL2000993)
『ゆるゆるふああ』
鼎 飛鳥(CL2000093)
『独善者』
月歌 浅葱(CL2000915)
『未知なる食材への探究者』
佐々山・深雪(CL2000667)
『ハルモニアの幻想旗衛』
守衛野 鈴鳴(CL2000222)
『影を断つ刃』
御影・きせき(CL2001110)
『行く先知らず』
酒々井・千歳(CL2000407)
『ワイルドキャット』
猫屋敷 真央(CL2000247)


「文化祭は何度か参加しましたが、こんなに盛大な規模のものは初めてです」
 太郎丸は初の五麟祭に驚いていた。力の発現とともにこの学園に入学し、初の学園祭。まさかこれほどの規模になるとは予想外だった。折角だから知り合いを誘えばよかった。
「それに色々な出し物もあるみたいですね」
 見渡す限りの出店と展示。教室を使ってのお化け屋敷やショータイム。向こうでは音楽が響き、ジャグリングを披露するピエロまでいる。噂では最強を決める裏レスリングまであるとかないとか。
「来年は何か参加してみようかな」
 そんな未来を思いながら祭を回る太郎丸。その横を恵比寿が通り過ぎる。さてどこに行こうかと迷っていると、
「いらっしゃーい。どこいく~?」
 そりに座った円が話しかけてきた。キョトンとする恵比寿に言葉をつづける円。
「学校内なら乗せて案内するよー」
「タクシーのようなものですね。それではお願いしようかしら」
 三人はそりに乗り、円はそれを確認して学園内を走りだす。さてその乗り心地はというと、
「こ。これは何という揺れ! まさか階段をそのまま上るとか思いませんでしたわ!?」
「歩いた方が何倍もマシだったナリ……」
 まあ、筆舌に尽くしがたいほどだった。いきなりの洗礼だったが、
「つかれたー。こうたいしてー」
「しかも引手交代でゴザルか!?」
 円のゴーイングマイウェイっぷちはさらに続いたという。

『出張懺悔室。
 カミサマ、ネコもシャクシも平等にすくいますよ? いかがですか?』
 と、言う看板。そして巨大な段ボールで作られた箱。
 懺悔室というのは日本ではなじみがないが、簡単に言えば『悪いことをした、あるいは反省すべき事がある時にその事を聞いてもらう』部屋である。心に溜まったことを聞いてもらうことで心の重みを下ろす。これは心理学的にも正しい行為である。
 だが、
「折角頑張って作ってみましたのに、誰もいらっしゃらないのはなぜでしょう」
 段ボールで作った防音室の中、キリエはしくしくと泣いていた。
「外の露店で焼きそばとかタコヤキとか買ってくるしますのですね……」
『休業中』の札を張り、露天に向かうキリエ。迷えるものが少ないことは、よきことである。
 そんな休業中の懺悔室を横目に通過しながら、恵比寿たちは五麟祭の喧騒を歩いていく。
「慈雨さんと鈴の展示をするのですよっ。張り切って準備しましょうかーっ」
「自分の趣味がこんなところで役に立つとは」
 浅葱と慈雨が鈴の展示をしていた。様々な飾り紐を纏わせた小鈴を、てきぱきと並べていく慈雨。明かりの角度等も計算した店づくり。それを見て感嘆の声をあげる浅葱。
「むむっ、慈雨さんのセンス良いですねっ。可愛い鈴を引き立てる並べ方っ」
「浅葱ったらもう、褒めても何も出ないよ? でもありがとね」
 口元に手を当て、笑みを返す慈雨。それに対抗するように、浅葱は大きな鈴……というか鐘を取り出す。
「ならば私は逆をやりましょうっ。大きい鈴、即ち梵鐘っ!」
「梵鐘!? どこから持ってきたの浅葱……!」
 浅葱が持ち出した梵鐘に驚く慈雨。しかし嬉しそうに笑う浅葱を見て、慈雨も笑みを浮かべる。これはこれでいいのかもしれない。
「ふむむ、並んだ鈴見てるとちょっと身に付けたくなっちゃいますねっ。一つ付けても良いですかっ?」
「いいわよ。一つと言わず、折角だからもう少し付けてみない?」
 慈雨は言って浅葱の髪に鈴をつける。浅葱が動くたびに鈴が鳴り、それが嬉しいのかはしゃぐ浅葱。
「元気一杯な浅葱が付けると、鈴も楽しそうに良く鳴って素敵ね」
「慈雨さんの優しさに包まれてるみたいですっ」
 鳴り響く鈴の音。それに導かれて客がやってくる。
「あら、いらっしゃいませお客様。鈴の様に可憐な子に導かれて、如何かしら?」
『鈴の様に可憐な』浅葱は踊りながら客を引き、慈雨が対応する。
 二人の展示は客足が途絶えることがなかった。


「とりあえず、喉が渇きましたね。喫茶系に行きましょう……あら?」
 恵比寿が目を向けたのはたい焼き屋。屋台で深雪がしょんぼりしている。
「失礼。たい焼きは焼いていないんですか?」
「焼いていたよ。究極のたい焼きを焼いていたんだ」
 普段は食べる専門の深雪だが、意外なことに料理も作れる。作ることも経験して初めて、食べる楽しみが増えるのだ。
「皮は薄くぱりっと」
「ほう!」
「中の餡は大粒のあずきを丁寧に煮詰めて口の中でほろっととろける仕上がりで」
「ほうほう!」
「鉄板も昔ながらの一尾ずつ焼き上げる。いわゆる『天然』と呼ばれるたい焼きだっ」
「なんと素晴らしいですわ! それでそのたい焼きはいずこに!」
 問われて深雪は空を見上げる。手はお腹をさすりながら、
「試食しすぎて……売る分がなくなったんだ」
 どこか満足げな深雪であった。
「それは残念……あら、あちらからクレープの香りが」
 振り向く恵比寿の先にはゲイルが経営しているクレープ屋があった。衛生面を気にしてか尻尾と耳を隠し、犬と猫のアップリケが付いたエプロンをしている。
「いらっしゃい。何にしますか?」
「イチゴクリームを頂こうかしら」
 恵比寿の一言に笑顔で答え、ゲイルはクレープを作る。手慣れた手つきでホットプレートで生地を作り、イチゴとクリームを盛り付けて巻いていく。
「ふっ、単純なレシピであるからこそその腕が見える。あなたの腕前見極めさせてもらいま……ほおおっ!? まさかここまでとは!」
 背後に稲妻背負って驚く恵比寿。その反応に笑みを浮かべる。
「伊達にスイーツ好きだったり料理好きなわけではないのでな」
「ふん、少し驚いただけですわ! もう一つください!」
 追加でクレープをもう一つ頼み、恵比寿は次に進む。
「うふふ! 素人どもにプロのカフェリストっていうのを教えてあげる!」
「一応、名目としてはアルバイトだからプロと言い切るのはどうかな……」
 数多と千歳。メイド&ウェイター姿の酒々井の兄妹だ。二人が自衛している『茂美路メトロ』の出張版である。宣伝も兼ねての登場だ。
「まずはにーさま、味見してもらえる?」
 数多はシフォンケーキを一口サイズに切り、フォークに刺す。手を添えて千歳の口元に持って行った。何のためらいもなくそれを口にする千歳。
「うん、美味しいんじゃないかな。お店に並べても良いレベルだと思うよ、紅茶もケーキに合っているし」
「はわあああああああ! うれしいですにーさま!」
 褒められたこととあーんできたことの二重の意味で喜ぶ数多。ケーキに合わせた紅茶とコーヒー。それに気づいてくれたことも嬉しい。このまま時が止まればいいのに――
「さあ、それじゃ張り切って売り切ってしまおう。その後は二人で五麟祭を見て回ろうか」
「はい! 数多、さっさと売り尽くして、にーさまと文化祭見に行きます!」
 だめだめ。時を止めては。千歳の言葉に数多は我に返る。楽しい時間はまだ続くのだ。その為にも出店を頑張らなくては!
「よってらっしゃい見てらっしゃい! うぉりゃあ! しゃあ!」
「……これは入ってお二人の為に協力すべきか、お二人の邪魔をせずに帰るか迷いますわねー」
 見てるだけでケーキよりも甘々です、という顔で恵比寿は呟いた。

「あちらにも喫茶店があるナリ」
 指さす先には棄々がいた。獣憑なのかウサギ耳を頭から生やし、フレアスカートの制服を着ていた。
「いらっしゃい、出張店舗だけれどここの紅茶の味は確かよ?」
 棄々は淡々としかしてきぱきと客を案内していく。隔者時代は人には言えない仕事ばかりだったため、こういう仕事は新鮮だ。学園祭の間だけのアルバイトだが、決して悪い気分ではなかった。
「いらっしゃいませー! よーこそーっ」
「ようこそカンパニュラへ。いらっしゃいませなのよ」
「こちらの席へどうぞ!」
「いらっしゃいませー! おいしい紅茶とデザートはいかがですか?」
 ククルと飛鳥と真央と百が元気よく客を出迎える。
 ククルは髪の色に合わせたのか桃色が基調の制服だ。ふわりとひろがるスカートから猫の尻尾がぴょこんとはみ出ている。
(わ~~~っこのせいふくかわゆっ)
 時々くるくる回転して、制服を確認するククル。その可愛さと元気の良さで接客し、場のムードを盛り上げていく。
 飛鳥は逆に髪の毛の白に反するような黒系の制服だ。細いヒールを吐いて、少し歩きにくそうに立っている。それでも健気に一礼し、客を出迎えた。
「あわわ……お客さま、あぶないのでおどきくださいなのよ、ととと……」
 ハイヒールが歩きにくいのか、時々転びそうになる飛鳥。それでも何とか頑張ってこぼさずに紅茶とケーキを運びきる。
 真央の制服も髪の毛の色に反して白系の物だった。あるいはネコミミとしっぽの色に合わせたのだろうか。動くたびにスカートと尻尾がふわりと揺れる。
「おまたせしましたっ! ご注文のお品はお揃いでしょうかっ!」
 田舎の学校ではここまで人がいないため、学園祭ということが初めての真央。働くのは初めてだが、みんなと一緒に何かをするのは楽しい。
 百の制服は可愛いらしい女子のものとは違ってギャルソン系のものだ。白いワイシャツに黒のジャケット。半ズボンなのは丁度よかったものがなかったからか。
「このあーるぐれいとかいうのがあっちの席で、こっちのおれんじぺこだったかは向こうのテーブル……」
 たくさんの注文を前に右往左往する百。メニューを覚えるのも大変だが、それが何番のテーブルに持っていくかも覚えなくてはいけない。職業体験とはいえなかなか大変だ。
「なかなかかわいらしい店員さんですわね」
 恵比寿は【カンパニュラ】で働く店員たちを見ながら、笑みを浮かべていた。学園祭だからということもあるが、小さくてかわいい店員たちだ。
「募集をかけたら結構集まりましたの」
 紅茶を持ってきたころんが一礼して話しかける。見た目十八歳ぐらいのころんだが実は成人しており、しっかり働いているのだ。
「本日のおすすめメニューなの」
「これは……! インド由来の二番摘みアッサム! そしてタルトには……巨峰!」
 ころんの作ったおすすめメニューを口にして、恵比寿が驚きの声をあげる。羽を広げ、感激を表現していた。
「かわいいころんと店員たち。それと美味しい紅茶セットの相乗効果。ごゆっくりお楽しみくださいなの♪ 」
「ふっ、そこまで言われたのなら仕方ありませんわね。アッサムおかわり!」
 喫茶エリアは、楽しい声が途切れることがなかったという。


「こちらは……ライブステージですわね」
 体育館にはライブステージが用意され、様々なバンドグループがそれぞれの歌を披露していた。
「うっしゃあ、いくでー!」
 気合を入れてギターを抱える凛。FiVEの任務で練習がおろそかになってはいるが、それでもそれなりに練習は積んできた。バンドメンバーと最後の打ち合わせも終わり、ステージの上に立ちギターを軽く鳴らす。
「わぷ! 音大きすぎですわ!」
「悪い悪い。アンプの設定おかしかったみたいや」
 片手を立てて謝罪のポーズを取り、改めて凜はギターを鳴らす。今度はきちんとした音量だ。
『黄金(きん)の髪なびかせ! 疾く走る獣!』
「これは! どこかのびーえぬなんとかの何とか王の歌ですわ! よく思い出せませんけど!」
 ロック調で歌う凜の曲名をなんとなく思い出す恵比寿。覚えていないともいう。
「次はあたしか」
 出番が来てあまり抑揚のない口調で紅がステージに上がる。アンプを後ろに置き、マイクを手にする。
 音楽が好きで、でも仲間にはあまり恵まれなかった紅。周りは様々な理由で辞めていき、今は一人だ。でも一人でも歌は歌える。
『踏み出した一歩が 始まりの合図。視界いっぱい広がる 新しい世界』
 作詞作曲自分の歌だ。アップテンポな曲の流れは紅が皆を元気にさせたいという心の表れ。
『夢見てた世界は 思ってたよりずっと大きくて。広がってく感覚に 胸を躍らせた。
 この手を取って 一緒にいこう。目の前のステージ 見えるでしょ?』
 この音楽が誰かの耳に残り、この学園祭を楽しむエネルギーになれば。紅はマイクを握りしめて、楽しげに歌う。

 音の祭典はライブステージだけではなかった。
「中等部の皆が鼓笛隊をするので、中等部音楽教師としては参加しないわけにはいきません」
 音楽教師の御菓子が指揮を執る【五麟祭中等部鼓笛隊】だ。青を基調としたベレー帽とジャケット。男子は白のズボン。女子は白のスカート。衣装を合わせて作り、鼓笛を披露していた。
「みんなは音楽を専門にしてるわけではないですから、曲の出来不出来、パフォーマンスの出来不出来は問いません」
 音楽を楽しむこと。演奏者とみてくれる人とリズムを共感すること。音楽で楽しませること。それができれば十分だと御菓子は言う。
「それじゃ、精一杯楽しんで、力一杯遊んでこようねっ! 曲名は――Pomp and Circumstance!」
『Pomp and Circumstance』――日本では『威風堂々』と呼ばれる行進曲である。英国では愛国歌として愛され、日本では広くTVなどで聞かれる組曲だ。
(この日の為にたくさん練習した!)
 鍵盤ハーモニカを奏でる奏空。五麟祭で鼓笛隊をすることになってから、毎日練習を重ねた事を思い出していた。大勢の前で演奏することは緊張するし、今でも視線を前にして震えそうになる自分がいる。
 でも積み重ねた練習が、苦しいと思った練習が、自然と震えを止めて体を動かしていた。次に何をすればいいかと考えることもなく、体は動いている。青空の下、胸を張って演奏をするハーモニカ隊は、確かに目立ったパートはないがそれでも演奏全体を支えていた。
(沢山、沢山、練習しました……動きも頑張って覚えました)
 グロッケンを前にたまきは緊張していた。最初楽器の名前を聞いた時はどんな楽器か想像もできなかった。どういうふうに持ち、どう体に固定させるかもわからなかった楽器は、今ではよく体になじんだ重さとなっていた。
 自分のパートじゃない時もリズムを刻み、自分のパートが来た時に鍵盤を叩く。自分だけが奏でるのではない。皆と一緒になって音楽を奏でる。その意味を練習を通じて少しずつ理解し始めていた。そして今、大観衆の前でたまきは音を奏でている。
(お友達や学校の人達と一緒に行うのは新鮮だし。ふふ、とっても心が踊りますっ)
 マーチングバンドに所属している鈴鳴は場慣れしている事もあり、楽しむ余裕があった。五麟学園の紋章を中央に描いた旗を手に、先頭に立って旗を振る。音楽に合わせて旗を振り、見るものを魅了する。
 動きが激しいパートに入れば動きを大きくし回転する等に旗を振り、動きが小さく優しい流れの時は、その流れに合わせるように波打つように旗を振り。音楽とともに行進する。それにより生まれる笑顔こそが、鈴鳴の最大の報酬なのだ。
(音楽って、覚者も覚者じゃない子も一緒に力を合わせて合奏できるから楽しい!)
 大太鼓を叩きながらきせき。ただ叩くだけの楽器と最初は思っていたが、叩く強さを変えることで音がいろいろ変わることに気づいた。それから太鼓が楽しいと思い、いろんな音の出し方を人から聞いて、実践し、そして今日こうして青空の下にいる。
 隣で一緒に太鼓を叩いているクラスメイトは覚者ではない。だが叩く音に貴賤はなく、それが笑顔を生み出すことは変わりなかった。これはこの学園特有なのかもしれない。だけど確実に『楽しい』は存在していた。
 最後の一音が終わる。
 音の余韻が消えると同時、割れんばかりの拍手と歓声が校庭に響いた。

「やりますわね、五麟学園! 今年の所は楽しかったと言ってあげますわ!」
 恵比寿は去り際にそう言って笑顔で校庭をくぐる。そのあとをついていく従者たち。
 恵比寿だけではない。多くの人間が笑顔で校庭を潜って帰っていく。今年の五麟祭は楽しかったな、と。
 祭りは終わる。だけどまた来年、祭はまたやってくる。
 来年の祭を期待しながら、彼らは帰路につくのであった。


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

 どくどくです。
 22人すべて描写しました。抜けがあれば連絡ください。

 学園祭、楽しんでいただけたでしょうか?
 楽しい思い出になれば。幸いです。

 それではまた、五麟市で。




 
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