五麟お花見物語
●春が来る
「少し早いけど……もう咲き始めてるみたいだよっ」
元気な声で皆に話しかけたのは久方 万里(nCL2000005)だ。
五麟学園の校庭の桜。改めて見渡してみれば確かに多くの蕾の中にぽつぽつと花が咲いている。
「学園の桜はたくさんの種類があるから、なが~くお花見できるんだって! 知ってた?」
万里の笑顔はまぶしいばかりだ。
「うん、決めた! 皆でお花見しよっ!!」
こうして万里の思いつきで急遽行われる事になったお花見は、覚者達の心を一時の間穏やかにさせるのであった。
「少し早いけど……もう咲き始めてるみたいだよっ」
元気な声で皆に話しかけたのは久方 万里(nCL2000005)だ。
五麟学園の校庭の桜。改めて見渡してみれば確かに多くの蕾の中にぽつぽつと花が咲いている。
「学園の桜はたくさんの種類があるから、なが~くお花見できるんだって! 知ってた?」
万里の笑顔はまぶしいばかりだ。
「うん、決めた! 皆でお花見しよっ!!」
こうして万里の思いつきで急遽行われる事になったお花見は、覚者達の心を一時の間穏やかにさせるのであった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.お花見を楽しむ
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
●ロケーション
桜の咲いている場所であれば五麟市のどこでもOKです。時間帯はお昼か夜で指定ください。
場所、時間の指定が無い場合はお昼に校庭の桜を皆で鑑賞します。
お酒は二十歳になってから。
一緒に行動したい方がいる場合はその方を記名いただくか、共通のタグをご利用ください。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】という タグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
ご参加お待ちしております。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
10日
10日
参加費
50LP
50LP
参加人数
11/30
11/30
公開日
2019年04月06日
2019年04月06日
■メイン参加者 11人■

●
「……桜、お花見……。お弁当、作る?」
桂木・日那乃(CL2000941)は守護使役のマリンと顔を見合す。
それからしばらくあと。
桜の木の下でのんびり花を眺めつつ、自作のお弁当をマリンと仲良く分けながら食べる日那乃の姿。
お弁当の中身はおにぎり、卵焼きやおひたし。作ると決めてから急いで使ったのだろう。時間をかけずに作れるものが殆どだ。それでもお弁当を買って来ず、自分で作るのは調理師を目指す日那乃らしかった。
「ふぅ」
少しぬるめのお茶を飲み干す。
心地よい風を感じながら、日那乃とマリンの穏やかな時間は過ぎていった。
「五麟にまた春が来たね」
『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は『意志への祈り』賀茂 たまき(CL2000994)と共にお花見を楽しんでいた。
「今日は絶好のお花見日和ですね! 万里さんも、元気になられた様で、安心しました」
笑顔のたまき。こうして奏空さんと桜の下で過ごす事も、もう何度目になるでしょうか。ふとそんな事を考える。
「お弁当食べましょうか」
たまき手作りのお弁当には奏空がリクエストしたタコさんウインナー。
「俺がリクエストしたタコさんウインナーがある! やったー!ありがとう!」
喜ぶ奏空を見るたまきの顔にも笑顔が溢れる。
「おいしいっ! やっぱりたまきちゃんのお弁当最高っ!」
美味しいそうに食べる奏空の様子を嬉しそうに眺めていたたまき。
「……あら」
満腹からだろうか、気付けば少しうとうとしている奏空。
そんな様子に気付いたたまきは奏空を膝枕へ誘う。少し恥ずかしいのだろうか。照れ隠しの笑みを浮かべながらも奏空はその頭をたまきへ預けた。そんな奏空の髪をたまきはそっと撫でる。
舞い散る桜の花びらが、静かな寝息を立てる奏空の髪の上にそっと舞い落ちる。そんな様子を見ているたまき。愛おしさが溢れる。奏空への想いが溢れる。たまきに笑顔が溢れる。
欲張りな私が、奏空さんや、全てを守りきる事が出来る様に──その笑顔の中にあるのは願いと……強い覚悟。
「ん……っ」
目を覚ました奏空。木漏れ日の眩しさに目を細める。見上げれば優しく髪を撫でてくれているたまきの姿。
俺は……見た事がある気がする。ずっと、ずっと昔もこうしていたような──。
それは奏空が見た夢だったのか。それともはるか過去の記憶なのか。今は確かめる方法は無い。
けれど少なくともこれは言える。ずっと一緒にいたいという気持ちは紛れもなく本物だ。
奏空は強い瞳でたまきを見つめる。どうしました、と微笑み返すたまき。
この平穏な日々が、末永く続きます様に──そう、祈りも込めてたまきは桜を見上げる。
奏空もまたそんなたまきの横顔を見ながら桜を見上げたのだった。
●
夜の公園。街灯の明かりに夜桜が浮かび上がる。
『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)はぶらぶらと公園を散歩していた。
「日本に来てからは毎年のように見ていますけど、それでも飽きることがないっていうのは不思議でもありますね」
いつの間にか毎年この時期に桜を見る事はラーラにとって至極当然の事になっていた。
「炎みたいに真っ赤な色をしてる訳でもないんですけどね……。なぜかこの淡いピンク色に惹かれてしまうのは、私にも4分の1はこの国の血が流れてるからなのでしょうかね」
ラーラの祖母はこの国の生まれ。ラーラは所謂クォーターだ。この国に来たのは祖母の母国だったから。留学を決めたのもそのくらいの軽い気持ちだった。だが、今ラーラは確かに自らの意思で、この地を守っていた。ふとこれまでの事を思い出す。
「ずいぶん多くの敵と相対してきました……。でも戦いは激しさを増すばかり。こうして綺麗なものを見ながら心を休めるっていうのもたまには必要なことなんでしょう」
頭上を見上げる。満開の桜は月明かりに照らされ、艶やかに咲き誇る。
「この穏やかな時をこれからもずっと……」
ラーラの願いは風に舞う花びらと共に空高く舞った。
『想い重ねて』蘇我島 恭司(CL2001015)は『想い重ねて』柳 燐花(CL2000695)と人ごみでごった返す夜桜の綺麗な公園にいた。
花見の季節。賑やかな公園から、静かに夜桜を見られる場所を探して2人は歩く。気づけばその手は繋がれて──まだ少し寒く感じる夜だが、繋いだ手は暖かい。
2人が人ごみを避けて歩いた先には一本の桜の木。
「こうやって月明かりのみで見る夜桜は幻想的だねぇ」
「公園は人も多くて賑やかでしたが、ここは静かでいいですね。月と、桜だけ」
人工的な照明とは違う月の柔らかい光が、桜を幻想的に魅せていた。
「お祭り感があるのも嫌いじゃ無いんだけどね」
静かな時間が流れる。
「そういえば、誰もいませんねここ」
あたりを見渡す恭司。確かに人の気配は無い。
「これはちょっとした貸切だね」
まるで僕らに見られる為に咲いてるような──恭司の言葉にこくりと頷く燐花。こんなに綺麗なのに周りには誰もいない。まるでこの世界に私だけ取り残されたような──少しの不安。
そんな燐花を察してか、恭司は握る手にほんの少しだけ力を入れる。燐花もたどたどしくもその手を握り返す。
「では、暫く……貸切(ふたりだけ)の桜を楽しみましょうか」
そう言うと燐花は桜を見上げる。そのまま静かな時間を過ごす二人。
「うん。本当に綺麗だ」
散りゆく桜に『いつまでも』は無い。けれどこれからも、こうやって一緒にと桜を眺められますように──恭司は願う。
「本当に、綺麗」
風に舞う桜の花びらを手に取りながら燐花もまた来年も一緒に桜を見られたらいいな、と思う。
言葉にせずとも2人の思いは重なっていた。
「こんばんは紡。遊びにきたよ」
『エリニュスの翼』如月・彩吹(CL2001525)は古書茶屋・四葩庵にきていた。
そこは年中仕入れで不在な『天を舞う雷電の鳳』麻弓 紡(CL2000623)の祖父母が営む古書茶屋兼シェアハウス。
祖母から譲り受けた浅葱色に枝下桜柄の着物に白いレースの帯姿の紡は一足先に花見酒を楽しんでいた。
この日のために用意しておいたとっておきの錫の酒器セットに京都の地酒を注いで一人舌鼓。
その頬はすでに紅色に染まっていた。
「こんばんは、つーちゃん。お招きありがとう」
ほろ酔い加減な妹の親友に小さく笑うのは『地を駆ける羽』如月・蒼羽(CL2001575)。
桜の下でほろ酔い気分の紡。その様子を見ていた彩吹は指でフレームを作る。
「絵になるね」
そうだねと、蒼羽も頷く。
確かにその通りだった。つーちゃんに良く似合っている。とても綺麗だ──蒼羽もそう思う。
見とれる兄に妹は少しだけ頬を膨らせながら、兄の前でくるりと回る。
桜の枝と鶯の刺繍の入った紫紺の袴に赤色の桜と手まり柄の着物。箪笥の奥に眠っていた、着物好きだった母の形見。
蒼羽もまた紺の着流しに若草色のストール。これもまた形見の品だ。
たまには着てあげないとね──彩吹と蒼羽は顔を見合わせてにこりと微笑んだ。
「賑やかなのもいいけど、こーゆーのもいいよねぇ」
ほろ酔い気分で桜を見上げていた紡も2人に気付く。
「わぁ……素敵」
和装姿の二人に見惚れながら出迎える。聞けば両親の形見だという。
「綺麗な桜だね。桜と星とお酒とか贅沢」
彩吹は紡の隣に座ると桜の木を見上げた。春風に桜の花びらが舞い落ちる。
「可愛い娘さんが手酌で飲まなくてもいいんじゃない?」
そう言うと紡の杯にお酒を注ぐ彩吹。嬉しそうに飲み始める妹たちに苦笑する蒼羽。
「可愛い娘さん達が、こんなにも喜々として盃空けなくてもいいのに……」
そんな兄の言葉に口角を上げる妹。
「兄さんもどうぞ?」
ふいに妹からの申し出。渡された杯に蒼羽は瞬き一つ。
「両手に花で嬉しいのでしょ?」
「まあ、役得なのは否定はしないよ」
そういうと悪戯っぽく笑う蒼羽。
「そうそう、お花見だからね。色々持ってきたんだった」
桜、梅、松 伽羅や白檀。蒼羽が家から持ってきた花の透かし彫りのある香炉といくつかのお香。
「夜桜に合うものはあればいいのだけど」
優しく漂う伽羅の香りを肴に三人で朗らかにしっとりと過ごす時間。
3人はお酌をし合いながら様々な話に花を咲かせる。
「楽しいねぇ……こんな素敵な二人が隣にいたら……ボクに彼も彼女も出来なくても仕方ないよねぇ」
紡はころころと笑っていた。
「……桜、結構咲いてるね。ね、天。……綺麗」
守護使役の天と共に校舎の屋上にいたのは大辻・想良(CL2001476)。
器用にフェンスに腰掛け、校庭の桜を見渡す。
夜目の効く想良。その瞳には咲き誇る桜の木々がはっきりと映し出される。
「……でも、まだちょっと寒いかなぁ」
そう言うとパタパタと羽ばたいていた天をその胸に抱く。
想良の腕の中が心地いいのか天はうとうとしているようだ。
その様子を見ながら想良もまた、まどろみに包まれていくのであった。
春──新しい季節。
覚者がこれから迎える季節(ゆくさき)は、どのようなものになるのであろうか。それは誰にもわからない。
未来を担う覚者達の行く先にどうか幸多からん事を──
「……桜、お花見……。お弁当、作る?」
桂木・日那乃(CL2000941)は守護使役のマリンと顔を見合す。
それからしばらくあと。
桜の木の下でのんびり花を眺めつつ、自作のお弁当をマリンと仲良く分けながら食べる日那乃の姿。
お弁当の中身はおにぎり、卵焼きやおひたし。作ると決めてから急いで使ったのだろう。時間をかけずに作れるものが殆どだ。それでもお弁当を買って来ず、自分で作るのは調理師を目指す日那乃らしかった。
「ふぅ」
少しぬるめのお茶を飲み干す。
心地よい風を感じながら、日那乃とマリンの穏やかな時間は過ぎていった。
「五麟にまた春が来たね」
『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は『意志への祈り』賀茂 たまき(CL2000994)と共にお花見を楽しんでいた。
「今日は絶好のお花見日和ですね! 万里さんも、元気になられた様で、安心しました」
笑顔のたまき。こうして奏空さんと桜の下で過ごす事も、もう何度目になるでしょうか。ふとそんな事を考える。
「お弁当食べましょうか」
たまき手作りのお弁当には奏空がリクエストしたタコさんウインナー。
「俺がリクエストしたタコさんウインナーがある! やったー!ありがとう!」
喜ぶ奏空を見るたまきの顔にも笑顔が溢れる。
「おいしいっ! やっぱりたまきちゃんのお弁当最高っ!」
美味しいそうに食べる奏空の様子を嬉しそうに眺めていたたまき。
「……あら」
満腹からだろうか、気付けば少しうとうとしている奏空。
そんな様子に気付いたたまきは奏空を膝枕へ誘う。少し恥ずかしいのだろうか。照れ隠しの笑みを浮かべながらも奏空はその頭をたまきへ預けた。そんな奏空の髪をたまきはそっと撫でる。
舞い散る桜の花びらが、静かな寝息を立てる奏空の髪の上にそっと舞い落ちる。そんな様子を見ているたまき。愛おしさが溢れる。奏空への想いが溢れる。たまきに笑顔が溢れる。
欲張りな私が、奏空さんや、全てを守りきる事が出来る様に──その笑顔の中にあるのは願いと……強い覚悟。
「ん……っ」
目を覚ました奏空。木漏れ日の眩しさに目を細める。見上げれば優しく髪を撫でてくれているたまきの姿。
俺は……見た事がある気がする。ずっと、ずっと昔もこうしていたような──。
それは奏空が見た夢だったのか。それともはるか過去の記憶なのか。今は確かめる方法は無い。
けれど少なくともこれは言える。ずっと一緒にいたいという気持ちは紛れもなく本物だ。
奏空は強い瞳でたまきを見つめる。どうしました、と微笑み返すたまき。
この平穏な日々が、末永く続きます様に──そう、祈りも込めてたまきは桜を見上げる。
奏空もまたそんなたまきの横顔を見ながら桜を見上げたのだった。
●
夜の公園。街灯の明かりに夜桜が浮かび上がる。
『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)はぶらぶらと公園を散歩していた。
「日本に来てからは毎年のように見ていますけど、それでも飽きることがないっていうのは不思議でもありますね」
いつの間にか毎年この時期に桜を見る事はラーラにとって至極当然の事になっていた。
「炎みたいに真っ赤な色をしてる訳でもないんですけどね……。なぜかこの淡いピンク色に惹かれてしまうのは、私にも4分の1はこの国の血が流れてるからなのでしょうかね」
ラーラの祖母はこの国の生まれ。ラーラは所謂クォーターだ。この国に来たのは祖母の母国だったから。留学を決めたのもそのくらいの軽い気持ちだった。だが、今ラーラは確かに自らの意思で、この地を守っていた。ふとこれまでの事を思い出す。
「ずいぶん多くの敵と相対してきました……。でも戦いは激しさを増すばかり。こうして綺麗なものを見ながら心を休めるっていうのもたまには必要なことなんでしょう」
頭上を見上げる。満開の桜は月明かりに照らされ、艶やかに咲き誇る。
「この穏やかな時をこれからもずっと……」
ラーラの願いは風に舞う花びらと共に空高く舞った。
『想い重ねて』蘇我島 恭司(CL2001015)は『想い重ねて』柳 燐花(CL2000695)と人ごみでごった返す夜桜の綺麗な公園にいた。
花見の季節。賑やかな公園から、静かに夜桜を見られる場所を探して2人は歩く。気づけばその手は繋がれて──まだ少し寒く感じる夜だが、繋いだ手は暖かい。
2人が人ごみを避けて歩いた先には一本の桜の木。
「こうやって月明かりのみで見る夜桜は幻想的だねぇ」
「公園は人も多くて賑やかでしたが、ここは静かでいいですね。月と、桜だけ」
人工的な照明とは違う月の柔らかい光が、桜を幻想的に魅せていた。
「お祭り感があるのも嫌いじゃ無いんだけどね」
静かな時間が流れる。
「そういえば、誰もいませんねここ」
あたりを見渡す恭司。確かに人の気配は無い。
「これはちょっとした貸切だね」
まるで僕らに見られる為に咲いてるような──恭司の言葉にこくりと頷く燐花。こんなに綺麗なのに周りには誰もいない。まるでこの世界に私だけ取り残されたような──少しの不安。
そんな燐花を察してか、恭司は握る手にほんの少しだけ力を入れる。燐花もたどたどしくもその手を握り返す。
「では、暫く……貸切(ふたりだけ)の桜を楽しみましょうか」
そう言うと燐花は桜を見上げる。そのまま静かな時間を過ごす二人。
「うん。本当に綺麗だ」
散りゆく桜に『いつまでも』は無い。けれどこれからも、こうやって一緒にと桜を眺められますように──恭司は願う。
「本当に、綺麗」
風に舞う桜の花びらを手に取りながら燐花もまた来年も一緒に桜を見られたらいいな、と思う。
言葉にせずとも2人の思いは重なっていた。
「こんばんは紡。遊びにきたよ」
『エリニュスの翼』如月・彩吹(CL2001525)は古書茶屋・四葩庵にきていた。
そこは年中仕入れで不在な『天を舞う雷電の鳳』麻弓 紡(CL2000623)の祖父母が営む古書茶屋兼シェアハウス。
祖母から譲り受けた浅葱色に枝下桜柄の着物に白いレースの帯姿の紡は一足先に花見酒を楽しんでいた。
この日のために用意しておいたとっておきの錫の酒器セットに京都の地酒を注いで一人舌鼓。
その頬はすでに紅色に染まっていた。
「こんばんは、つーちゃん。お招きありがとう」
ほろ酔い加減な妹の親友に小さく笑うのは『地を駆ける羽』如月・蒼羽(CL2001575)。
桜の下でほろ酔い気分の紡。その様子を見ていた彩吹は指でフレームを作る。
「絵になるね」
そうだねと、蒼羽も頷く。
確かにその通りだった。つーちゃんに良く似合っている。とても綺麗だ──蒼羽もそう思う。
見とれる兄に妹は少しだけ頬を膨らせながら、兄の前でくるりと回る。
桜の枝と鶯の刺繍の入った紫紺の袴に赤色の桜と手まり柄の着物。箪笥の奥に眠っていた、着物好きだった母の形見。
蒼羽もまた紺の着流しに若草色のストール。これもまた形見の品だ。
たまには着てあげないとね──彩吹と蒼羽は顔を見合わせてにこりと微笑んだ。
「賑やかなのもいいけど、こーゆーのもいいよねぇ」
ほろ酔い気分で桜を見上げていた紡も2人に気付く。
「わぁ……素敵」
和装姿の二人に見惚れながら出迎える。聞けば両親の形見だという。
「綺麗な桜だね。桜と星とお酒とか贅沢」
彩吹は紡の隣に座ると桜の木を見上げた。春風に桜の花びらが舞い落ちる。
「可愛い娘さんが手酌で飲まなくてもいいんじゃない?」
そう言うと紡の杯にお酒を注ぐ彩吹。嬉しそうに飲み始める妹たちに苦笑する蒼羽。
「可愛い娘さん達が、こんなにも喜々として盃空けなくてもいいのに……」
そんな兄の言葉に口角を上げる妹。
「兄さんもどうぞ?」
ふいに妹からの申し出。渡された杯に蒼羽は瞬き一つ。
「両手に花で嬉しいのでしょ?」
「まあ、役得なのは否定はしないよ」
そういうと悪戯っぽく笑う蒼羽。
「そうそう、お花見だからね。色々持ってきたんだった」
桜、梅、松 伽羅や白檀。蒼羽が家から持ってきた花の透かし彫りのある香炉といくつかのお香。
「夜桜に合うものはあればいいのだけど」
優しく漂う伽羅の香りを肴に三人で朗らかにしっとりと過ごす時間。
3人はお酌をし合いながら様々な話に花を咲かせる。
「楽しいねぇ……こんな素敵な二人が隣にいたら……ボクに彼も彼女も出来なくても仕方ないよねぇ」
紡はころころと笑っていた。
「……桜、結構咲いてるね。ね、天。……綺麗」
守護使役の天と共に校舎の屋上にいたのは大辻・想良(CL2001476)。
器用にフェンスに腰掛け、校庭の桜を見渡す。
夜目の効く想良。その瞳には咲き誇る桜の木々がはっきりと映し出される。
「……でも、まだちょっと寒いかなぁ」
そう言うとパタパタと羽ばたいていた天をその胸に抱く。
想良の腕の中が心地いいのか天はうとうとしているようだ。
その様子を見ながら想良もまた、まどろみに包まれていくのであった。
春──新しい季節。
覚者がこれから迎える季節(ゆくさき)は、どのようなものになるのであろうか。それは誰にもわからない。
未来を担う覚者達の行く先にどうか幸多からん事を──
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
