囚われた 座敷童を助け出せ!
囚われた 座敷童を助け出せ!


●ツキに恵まれる方法
 運とは何か。
 一般的には努力や意志でどうにもならない事象やめぐりあわせを指す。コインの表裏、サイコロの目、ルーレットの行く先、棒の倒れる方向。そう言った人が関与できない領域の何かを指す言葉である。
 古来よりそう言った事象に対し、どうにかしようとする思いがあった。
『ツキの流れ』と呼ばれるものがあり、それを読み切る。例えばコインの表裏は50%だが、表と裏が交互に訪れるわけではない。表が連続で続くこともあれば、そう思わせて裏が来るときもある。
 また、ジンクスやまじないなどで運を自分の望む方向に向ける事が出来ると主張する意見もある。特定の時間に行動して幸運を呼び寄せる。御守りを握りしめて行動する。特定の色を身に着ける等である。
 総じて科学的な根拠はない。強いて言えばそう行動することで結果を得たという経験論だ。決定的に人は運をコントロールすることはできない。だからこそ人は努力し、研鑽し、失敗を重ねて進み続けるのだ。そして運と言う不特定な何かを克服していく。
 だがそれは人に限った話。
「ふひ、ふひひひ! お前さえいれば私の会社は安泰だ! 逃がさないぞ、逃がすものか!」
 とあるビルの社長室。その奥に一人の男と古妖がいた。男はこの会社の社長で、表向きは食品流通だが裏では憤怒者などに兵器を密売する企業を行っていた。数年前から憤怒者の活動が収まり裏稼業は下火になっていたが、会社が傾くことはなかった。
 なぜなら――
「出して……ここから出してください……」
「駄目だ。お前がいれば運が向いてくるからな!」
 部屋の奥に居る少女の姿をした古妖に向かい、男は嗤う。女性の髪の毛と呪符で構成された結界。物理的には脆いが、力のない古妖を閉じ込めるには十分な呪詛強度を持っていた。
「お前がいればこの会社と俺は安泰だ! はっはっは!」
 座敷童。住む家に幸運を与えると言われる古妖。その家が幸せになればそっと姿を消すのだが、男は金に糸目を付けず座敷童を閉じ込めていた。
「FiVEがしゃしゃり出てくれたおかげで兵器の需要が減ったが、まあ許してやるさ。俺は寛大だからな!」
 椅子に座り笑みを浮かべる男。運がいい自分は何をしても儲かる。今までも、そしてこれからも。故に笑って許せる。無理に非合法な商売に手を出さずに済むのだから万々歳だ。誰にも迷惑をかけないクリーンな会社と触れ込無のも悪くない。皆が儲かるウィンウィンの関係だ。
「出して……お願いですから、出してください……」
 明かりなき部屋の中、座敷童の瞳から涙が零れ落ちていた。

●FiVE
「女の子を泣かせるなんて許せないじゃないか!」
 憤慨する久方 相馬(nCL2000004)。古妖が男だったらいいのか、という疑問はさておき覚者達は急ぎ会議室を出た。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:どくどく
■成功条件
1.小山と社員5名の戦闘不能
2.なし
3.なし
 どくどくです。
 運だけで生きていければ幸せなのでしょう。

●敵情報
・小山大輔(×1)
 食品流通会社『KOYAMA』の社長です。座敷童を閉じ込め、得た幸運で財を成しています。三十代後半男性。過去の罪状(武器の密売)などから法的な検挙は可能です。
 戦闘力はありませんが、座敷童の幸運に守られています。

 戦闘方法
『座敷童の幸運』 特遠全 小山自身が意識せず発しています。敵対者を不幸にし、結果的に幸運を得ます。【ダメージ0】【凶】

・『KOYAMA』社員(×5)
『KOYAMA』社員です。全員隔者。戦いになれば社長を護るように動きます。
『五織の彩』『圧撃・改』『灼熱化』『火纏』『寿老力』『透視』『火の心』等を活性化しています。

●NPC
・座敷童
 社長室奥に張られた結界内に閉じ込められた古妖です。住む家と人に幸運を与えると言われています。10歳ぐらいの和服を着た少女の姿をしています。
 結界の解除は宣言だけで可能です。

●場所情報
 都内ビルの五階フロア。そこにある食品流通会社『KOYAMA』の社長室。部屋の前までは何の問題もなくいけます。
 社長室の奥の扉(敵後衛にあります)を開ければ座敷童がいます。扉の鍵は一般的な物で、鍵は小山が持っています。明かりと広さは戦闘に支障なし。
 戦闘開始時、敵前衛に『社員(×5)』が、敵中衛に『小山(×1)』がいます。
 事前付与は一度だけ可能です。

状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2019年03月24日

■メイン参加者 6人■

『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『緋焔姫』
焔陰 凛(CL2000119)
『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『天を翔ぶ雷霆の龍』
成瀬 翔(CL2000063)
『五麟の結界』
篁・三十三(CL2001480)
『地を駆ける羽』
如月・蒼羽(CL2001575)


 ビルにある『KOYAMA』の看板を確認し、逃亡路を塞ぐためにエレベーターと階段に分かれて進む覚者達。
「少女を拉致監禁とかとんだHENTAI野郎やな。仕事抜きにしても懲らしめてやらんな気がすまんでマジで!」
 階段をのぼりながら怒りの声をあげる『緋焔姫』焔陰 凛(CL2000119)。古妖は成長しないから見た目は少女でも年齢は――え? それがいい? まあ良くない事にはには違いない。怒りのままに階段を蹴ってのぼり上がる。
「自分の利益を追求するためにこんなこと……許されることじゃありません」
『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)は凛の言葉に頷き、同意する。運を引き寄せるおまじないや占いによる未来予測。これらは魔女術にも存在する。だが運の為に古妖を捕らえ、軟禁するなどあってはならない事だ。
「運に縋りたい気持ちは分かる。しかーし! こうも露骨な行動に出る奴がいるとは!」
 拳を握って『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が声を張り上げる。幸運に頼りたい、という気持ちは確かに理解できる。しかしそれはやるべきことをやってからの話だ。最初から運に頼るなどあってはならないし、古妖を捕らえる等言語道断だ。
 そしてエレベーターの中では、
「ひでーおっさんだな! ヒーローとしては見過ごせねー事件だぜ!」
 上がっていく数字を見ながら『天を翔ぶ雷霆の龍』成瀬 翔(CL2000063)は手のひらを拳で叩く。外に出たがる古妖を閉じ込め、自分だけの利益にする。座敷童が悲しもうが構わないその精神。決して許してはおけなかった。
「このような方法で運気を得ようとは、浅ましい限り。いや、それほどまでに座敷童の幸運というものは本物なのだろう」
 うん、と頷く篁・三十三(CL2001480)。その小山という男も座敷童の幸運を知らなければ、こういう事はしなかったのだろう。それだけに与えられた幸運が魅力的だったのだ。勿論、古妖を監禁していい理由にはならないが。
「運もツキも自分の力で引き寄せるものだ」
 言って口を結ぶ『地を駆ける羽』如月・蒼羽(CL2001575)。やるべきことをやり、全てが終わって初めて天命を待つ。それが大事なのだ。最初から運に頼り、努力を放棄しても何の意味もない。その努力にこそ、結果が付いてくるのだから。
 六名の覚者達は五階フロアで合流し、会社の看板を確認する。扉の奥からは複数名の声が聞こえてきた。
「部屋の構造は?」
「三部屋構造だな・オフィス部分と社長室。その奥に座敷童」
「いっせえのーで、で突入や。準備はええな?」
 凛の声に頷き、覚醒する覚者達。
「いっせぇのー、でっ!」
 扉を開け、雪崩れ込む覚者達。オフィス部分を一気に駆け抜け、社長室に突入した。そこに居た隔者と小山は突然のことに驚き、そして臨戦態勢を取る。
「なななななな、まさか、FiVEか!?」
「罪状を並べる必要はなさそうだな。奥に居る座敷童を解放させてもらうぞ!」
「さ、させるか!? お前ら追い返せ!」
 FiVE相手に誤魔化しきれないと悟ったのか、実力行使に出る小山。
 しかし覚者達は慌てることなく神具を構え、戦いに挑む。


「ピンクのリボンがアナタに幸運をもらたすよ☆って事で髪に結んで来ました! えっとまぁ、ご愛嬌で!」
 髪に結んだリボンを見せながら奏空が刀を構える。座敷童の力を得た小山対策だとか。当然奏空もこれが直接身を守ってくれるなど思ってはいない。だがそう信じる事で前に進むきっかけにはなる。その一歩が重要なのだ。
 呼吸を整え、意識を沈める。奏空の魂と繋がる別の魂。もうこの世にはなく、しかし確かにつながるのある前世。その魂の経験と知恵が奏空に降臨する。刀を握る動きにためらいはなく、流れる様に刃は煌いた。
「少女座敷童拉致監禁の現行犯で御用だ!」
「こ、古妖に人としての戸籍はないから監禁罪は無効だ!」
「うっせー! 閉じ込めてることには違いないだろうが!」
 小山の言い分を一蹴する翔。法律的にはそうかもしれないが、だからと言ってやっていることを許すつもりはない。自分自身の欲望の為に古妖を閉じ込め、益を得る。たとえ法が許したとしてもヒーローは許さない。
『DXカクセイパット』を手にして、右足を前に出す翔。液晶画面に移るリズムと足の運び方。それに沿うように足を動かしていく。兎歩。旅の無事を願う陰陽術のまじない。祖のまじないが仲間の不運を払っていく。
「なあ、社員のみんな! アンタ達は社長のやってる事知ってるのかよ! 知ってて従ってるんならアンタらも警察に突き出すからな、覚悟しろよ!」
「その反応から察するに、無関係とはいえないようですね」
 翔の声に目を逸らす隔者を見て三十三が頷いた。AAA時代からこういう輩の反応は見てきた。小山に取り入って、おこぼれを貰っているのだろう。何よりも今敵対している時点で立派にクロだ。
 体の力を抜き、水の源素を意識する。燃え盛る炎を沈める水。潤いにより、生命を育む透明な一滴。イメージは形になり、形となった力はその方向に動いていく。三十三から広がる癒しの力が、仲間達の傷を塞いでいく。
「どうあれ座敷童は解放させてもらう。その後にしかるべき処置を」
「ま、まて! お前達何が欲しい? 金か? 女か?」
「そうだね。とりあえず貴方を殴りたいかな」
 小山の取引をばっさり切り捨てる蒼羽。笑顔のように見えるが目は笑っていない。そんな顔でガントレットを構える。怒れば怒るほど笑顔になり、そして前に出ていく。そんな蒼羽の性格を示すかのように、足は前に進んでいく。
 隔者の振るう武器を身をかがめて避け、そのまま滑るように前に進む蒼羽。懐まで潜り込むと同時に相手の腹に拳を叩き込み、その動きを止めた。笑顔をさらに深め、もう片方の拳を隔者の顔面に叩き込む。
「自分の欲のために 小さな女の子を捉えるなんて。……相馬くんの言う通りだ。許せないね」
「まて、相手は古妖だ! 人間じゃないんだぞ!?」
「古妖だから捕まえていい道理なんてありません!」
 小山の言葉に怒りの言葉を返すラーラ。古妖は人間じゃない。座敷童だって人間の姿を模しているだけで、幸運という目に見えない流れを操る化物だ。だから人間のように扱うのは間違っている。古妖だって人を見下す者もいるのだから、意見としては正しい。
 それでもラーラは叫ぶ。古妖だから捕らえていい道理はない。欲望の為に自由を奪っていいわけがない。人に害為す古妖が許せないように、古妖に害なす人を許さない。炎は一瞬で室内に広がり、熱波が隔者の体力を奪っていく。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
「こらHENTAI共! 座敷童は解放させてもらうで!」
 にやり、と笑みを浮かべて刀を振るう凛。会話から察するにいかがわしい事はしていないだろうが、それでも十歳の少女風古妖を閉じ込めている三十代のおっさんは、そう呼称したくなる。
 刀を構え、戦場を睨む。それだけで凛はスイッチが入ったかのように怜悧になり、同時に闘志の炎が燃え上がる。冷たく、そして熱く。その二面により研ぎ澄まされる闘争心はまさに日本刀の如く。踏み込みからの二連撃が隔者達を切り裂いた。
「しょうもない。運に頼らんと実力で勝負せいや!」
「これがFiVEの精鋭……!」
 座敷童の幸運をもってしても押し返せない覚者達に、小山が動揺する。
 個人としての強さもあるが、連携能力の高さが際立っていた。小山側の戦術のキモである座敷童の幸運を押さえる事を最優先として立ち回り、攻撃を重ねていく。じわり、じわりと押されていく。
(だが、それも無限には続くまい)
 冷静に分析する小山。覚者の攻撃には気力の限界があるが、座敷童の幸運には底が無い。覚者の気力が尽きるまで耐えれば、あとはこちらの勝ち。そんな分析をしていた。要は籠城戦だ。幸運が尽きない限り、負けはない。
 それは正しかった。有限と無限。その格差は比べるまでもない。故に座敷童を捕らえた小山は今までつまづくことなく成功し続けてきた。だから今回も乗り切れる――
 座敷童をめぐる戦い。その終焉は少しずつ近づいて来ていた。


 戦いは覚者が押していた。
 三十三の回復と翔の厄払いにより安定した足場を持ち、ラーラ、凛、奏空、蒼羽の攻めで一人、また一人と隔者を倒していく。
 そして覚者を足止めする隔者が減った時、覚者達は動き出す。
「そら!」
 蒼羽が雷撃を放ち、隔者と小山の目と耳を背ける。それと同時に前衛の覚者達が隔者を押さえ、翔が壁に向かって走り出す。
「行くぜ!」
 社長室の壁に向かって走り出す翔。そのまま壁にぶつか――ることなく通り抜けた。
「物質透過!? まさか、座敷童を!」
 覚者達の目的に気付くが、時すでに遅し。
「結界壊れろ!」
『DXカクセイパット』に霊気の刃を宿らせ、糸の結界を切り捨てる。術符が舞い、結界が破壊された。
「さあこれで」
「お前が得た幸運はなくなった。どうする?」
 言いながら戦意を高めていく覚者達。小山もここで引き下がるような性格なら、初めから座敷童を軟禁したりはしない。隔者に戦うように指示する。隔者も自分達が何で恩恵を受けていたのか知っているため、必死になって戦いに挑む。
「こちらへ。用が終わったらまたここへ向かえに来るからね」
 三十三は座敷童を抱えて、窓から飛び出す。翼を広げて飛び降り、待機していたFiVEスタッフに座敷童を預けた。座敷童の黒髪を撫でながら笑顔で告げる。もう閉じ込める者はいないと不安を打ち消すように。
「ほーらおっさん、蛇の抜け殻に四つ葉のクローバーだよ! 欲しいだろ~? 欲しいだろ~?」
 奏空は小山に向けて四葉のクローバーや蛇の抜け殻を見せびらかせながら挑発する。共に幸運をよぶアイテムとして有名なそれ。幸運の元である座敷童を失った小山からすれば喉から手が出るほど欲しいだろう。
「もうこんなおっさんに座敷童を取られるわけにはいかねーぜ!」
 稲妻を放ちながら翔は隔者を攻める。長い間閉じ込められていた座敷童。その涙の跡をみた翔は怒りに震えていた。その怒りを示すかのように稲妻は鋭く、そして轟音と共に隔者に叩きつけられる。
「ようやった! 加減無しでいくで!」
 座敷童を救出したのを見て、笑みを浮かべる凛。不幸誘発による同士討ちを恐れていたが、それが無いとわかれば加減はいらない。古流剣術焔陰流ここにあり。炎が野を侵略するが如の勢いで、凛の刃は隔者を伏していく。
「反省してもらいます!」
 ラーラの炎が戦場を走る。凝縮され、だんだんと化した炎の球が隔者達を打ち払った。自分達が幸せになる為、誰かを犠牲にする。それはある意味人間の欲の縮図だ。だからこそ自らを律さなければならない。
「力も幸運も 身の丈にあったものが一番ですよ。無理やり座敷童から奪った幸運……なくなったらどうなるのかな」
 拳を振るいながら問いかける蒼羽。幸運には波があると言う。座敷童の幸運で上乗せされていた小山の幸運は、その波が引いた時にどこまで下がるのか。もっとも、その前に人為的な災害が待っているのだが。拳を握り、断行する。
 小山が得ていた幸運がなくなったことにより、隔者の殲滅速度は一気に増した。元より個人の戦闘能力は覚者にかなわない。瞬く間に駆逐され、最後に残ったのは小山のみ。
「おっさん一般人やからな。ま、逃げれん程度には痛めつけさせてもらうで」
 逃げようとする小山の背後に迫る凛。無造作に刀を振り上げ、その首元に叩きつける。手加減は難しいが、それを誤る凛ではない。トス、という音と共に崩れ落ちる小山。
「HENTAI退治終了や」
 納刀した凛が笑顔で告げる。それがこの戦いの終幕となった。


『KOYAMA』内は一時期騒然となった。
 いきなり覚者が飛び込んできたと思うと、社長が犯罪者として捕まったのだ。慌てない方がおかしい。だが座敷童を捕らえ、幸運を得ていたと言う話をすれば社員もどことなく納得していた。あんなやり方でうまくいくなんておかしい、と思われていたらしい。
 座敷童の幸運で得たお金は社員の退職金や会社が解体することで発生する他社への賠償金などに当てられ、最終的にはほとんど残らなかったと言う。そして小山自身は過去の罪が明るみになり、法的な処分を受けることになった。
「運不運ってのは確かにあるやろけどな、それでも道は自分の力で切り開いていくもんやろ。幸運の存在にただ縋ってだけの人生なんて、本当に生きてるとはあたしは思えん」
 凛は小山にそう告げたが、さて聞いてくれたか。それは今後の小山の人生が証明するだろう。
「座敷童さん、ごめんなさい。人間を代表して謝るなんて傲慢かもしれないですが……でも、人間がこんな方々ばかりとは思って欲しくなくて」
 座敷童に頭を下げるラーラ。同じ人間と閉じ込めるなんてして恥ずかしい、と言わんがばかりである。座敷童は気にしてないよ、よいいたげにラーラの頭を撫でる。優しい動きが、人間を憎んでいない事を示していた。
「さて、座敷童をどうするかだな」
 仲間や座敷童の傷を癒しながら三十三は呟く。長い間囚われていた座敷童だが、肉体的には特に異常はなかった。封鎖と肉体維持。力の弱い古妖を永遠に閉じ込める。そういう結界なのだろう。
「元居た場所……と言うのは何処かわからないからなあ」
 腕を組んで考える蒼羽。座敷童は家を転々とする古妖だ。幸運を与えては去り、また別の家に行く。全国を流浪する古妖に安住の家はない。いや、人が住む家そのものが座敷童の安住の家なのだ。
「んじゃ、このままここでお別れってのが一番かな!」
 言って笑みを浮かべる翔。住む家が無いなら探してあげようと思ったけど、その必要が無いなら十分だ。結界からでれば座敷童もその本来の動きに沿って動き出す。運がよければどこかで出会うこともあるかもしれない。
「これはお土産だよ。はい」
 奏空は自分がつけていたリボンを取り外し、座敷童につけてやる。座敷童は言葉なくほほ笑み、そのまま虚空に消えていった。どこかまた新しい家に移動したのだろう。最後に見せた微笑みを思い出し、奏空も微笑んだ。


 かくして事件は終わりを告げる。
 誰しも幸運を求める行為は否定できない。行動の指針として占いを見たり、判断ができない選択を前に運に頼ることはある意味健全な精神状態だ。
 だがそれはやれることをすべてやった後のみ。、
 人事を尽くしてはじめて、天命を待つことを許される。初めから幸運に頼ってしまえば、人は成長しない。
 
 今日もどこかで座敷童の声が聞こえる。
 そう例えば、貴方の家で――


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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