学校に宿る噂があらわれた!
学校に宿る噂があらわれた!


●花骨牌暗躍。その結果――
「七星剣が座敷童に罪を着せようと――」
「よし。FiVEが七星剣から守ってやる。とりあえず五麟市に来るんだ!」

「七星剣が蜃気楼に罪を着せようと――」
「隔者はやっつけた! 念のために五麟市で匿おう!」

「七星剣が狗神に――」
「仔細ない。追撃を避けるため、五麟市へ来ることを進める」

「七星剣が――」「五麟市に――」

●中のお仕事
「『花骨牌』の命令と思われる古妖の動きは収まりつつある。だが――」
 中 恭介(nCL2000002)は書類を手に覚者達に話しかける。事件リストとその結果、そしてその後に出された提案書だ。その多くが『助けた古妖の安全確保案』という内容だ。
「七星剣からの魔の手を割けるために五麟市に連れてきた古妖の数が多すぎる。端的に言えば住む場所が不足している状態だ」
 FiVEが如何に支援を受けようが、様々な古妖を預かるとなると大変な手間暇がかかる。単にスペースだけあればいい、というものではないのだ。
 例えば温度。雪女などの冬の古妖と、火車などの炎を発する古妖とでは最適温度が異なる。
 例えば湿度。カエル系の多湿を好む古妖が最適とされる湿度は、他の古妖からすればじめじめして仕方ない。
 例えば日照、例えば音、例えば風、例えば匂い、例えば料理――
 全ての古妖に最適という環境はなく、その古妖に応じた環境を提供するしかない。
「とりあえず静かな場所を求める古妖の為に、廃校になった小学校の校舎を使う許可が下りた。清掃やライフライン復旧のために調査にはいったのだが、そこに『先客』がいてね」
 中が手渡したのは、古い新聞だ。小学校の校舎に入り、ウサギを殺した異常者の事件。
「犯人は既に捕まっている。だが当時は様々な憶測が入り乱れ、最終的には『夕方に現れる殺人鬼』と言う噂になったという。それがそのまま学校の七不思議になった」
 よくあるゴシップだ。だがここでそれを出すということは――
「予想通りだ。この噂通り、夕方に現れる殺人鬼の心霊系妖が出没する。
 ウサギ小屋に近づいた者を殺す習性を持っている。これの討伐をお願いしたい。こればかりは覚者以外にはたのめないからな」
 よろしく頼むよ、と言って中は覚者達を送り出した。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:どくどく
■成功条件
1.妖の撃破
2.なし
3.なし
 どくどくです。
 イベント幕間でございます。

●敵情報
・ぼくのかんがえたさつじんき(×3)
 心霊系妖。ランク2。とある小学校でウサギ惨殺事件が起き、子供の妄想のままに作られた殺人鬼像です。それぞれ『さいきょうまじゅう』『やみのころしや』『地獄の魔戦士・黒那由他』です。

『さいきょうまじゅう』
 三つ首龍のような黒い影です。正確に描写すれば、球状の黒丸に三つのキノコのようなモノが生えて、先端が口みたいに開いている何かです。

 攻撃方法
かみつく 物近単 噛みついてきます。がぶり。
こうせん 特遠単 口のような何かからびりびりと光線が飛びます。【呪い】
にらむ  特遠全 最強の獣に睨まれれば、怯えてしまいます。【不安】【ダメージ0】

『やみのころしや』
 人の形をした黒い何かです。手にナイフを持っています。二重人格設定で、夕方になると闇の人格が表に出るそうです。

 攻撃方法
ないふ    物近単 ナイフで切り裂きます。【致命】
しゅばば   物近列 なんかしゅばばっとうごいて血の雨を降らせます。【出血】
ばっくすたぶ 物遠単 影になって地面を移動し、背後をざくっと刺します。その後、影が崩れて元の位置に戻ります。
ちかよるな  P   3ターンごとに発動。光の人格が理性を取り戻し、自分を押さえ込みます。このターン行動不能。

『地獄の魔戦士・黒那由他』
 黒いローブを纏った……んだと思われる黒い三角錐です。大きな剣のようなオブジェを持っています。

 攻撃方法
壱の死曲・永遠のセレナーデ 特近列 死神の歌に込められた力は聞く者の寿命を削る。何人たりともこの歌が与える運命に逆らうことはできないのだ。
葬送の逆火・黒獄炎龍斬   物近単 地獄の黒い炎を召喚して剣に纏わせ、斬りかかる。消えることのない炎は相手が死ぬまで燃え続けるのだ。【必殺】
少女が与えた涙。      P   死神の心に宿った、一滴の水。それは一度だけ助けた少女が暮れたうるおいだった……。HPが0になった時、一度だけHPが半分の状態で復活します。

●場所情報
 廃校になった小学校。その一角にあるウサギ小屋跡。そこに入ろうと三体の妖が現れます。何もしなければ夜になって消えていきますが、誰かの姿を見つけたら妖は襲い掛かってきます。広さや足場は戦闘に支障なし。
 戦闘開始時、『さいきょうまじゅう』『やみのころしや』『地獄の魔戦士・黒那由他』の三体が敵前衛にいます。
 事前付与は一度だけ可能です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
3/6
公開日
2018年12月05日

■メイン参加者 3人■

『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『星唄う魔女』
秋津洲 いのり(CL2000268)
『居待ち月』
天野 澄香(CL2000194)


「古妖さん達の行き場がないのでは大変ですよね……」
 ため息をつきながら『居待ち月』天野 澄香(CL2000194)は学校への道を進む。もう人が通うことのない学校は手入れがされておらず、所々埃や汚れが溜まっていた。ある意味妖怪めいた住居と言えなくもないが、掃除ぐらいはした方がいいだろう。
 七星剣から古妖を守るために五麟市への保護を続けるFiVE。その為に必要なものは多い。廃校となった校舎があるからよかったものの、いずれ許容量を超えてしまうかもしれない。それまでに古妖の安全を確保しなくては。
「そう言えば、古妖達を集めた村を以前作りませんでしたっけ……?」
「FiVE村ですね。あそこにも古妖を送っているみたいですわ。あと依頼で知り合った古妖さんにもいろいろと相談しているみたいですね」
 答えたのは 『星唄う魔女』秋津洲 いのり(CL2000268)だ。FiVEの活動に感銘を受ける人や古妖は多い。そのコネを使って様々な古妖を受け入れる体制を整えているようだ。裏で動くスタッフに感謝をささげるいのり。
 預かった鍵を使って、学校の門を開ける。ウサギ小屋と思われる場所を見つけ、そちらに向かっていのりは歩を向けた。木造と金網の小さなスペース。かつては子供とウサギが戯れる光景があったのだろうが、今は閑散としていた。
「寂しいものですわね。……でもそういう雰囲気を好む古妖さんにはうってつけですわ」
「トイレの花子さんや学校由来の付喪神。走り回る系の古妖もいるや」
『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が見ているのは、この廃校に向かわせる予定の古妖達を纏めたリストだ。本来争いを望まないが、人の生活圏内に現れれば大騒ぎになる古妖ばかりである。古妖が世にある程度認知されているとはいえ、怖いものは怖いのだ。
 古妖の全てが人間に友好的ではないように、全ての人間が古妖に友好的ではない。手を取り合って生きて行くのが理想だが、摩擦が起きるのは仕方がなかった。……とはいえ、七星剣のように利用するとなればまた話は別だ。
「古妖の魂魄を操るだなんて……そんなことはさせないよ。その為にも、ここを押さえないと」
 リストをしまって時計を見る奏空。時計の針は、もうすぐ一六時半を少し過ぎたころ。黒い靄のようなモノが実体化するのが目に見えた。
「出たかな」
 神具を構える覚者達。実体化したのはかつて噂された『殺人鬼』が実体化したもの。噂と言う亡霊の妖。
「しっかし僕の考えた殺人鬼かぁ」
「噂や妄念が妖を生み出すというのは恐ろしい物ですわね」
「子供の想像力というのは凄いですね……」
 どこか落書き目いたフォルムの妖を前に、覚者達はため息をつく。多くは語らないが、自分が小学生のころを思い出す。こういう絵をかく人、クラスにいたよなあ。三者三様だが、大体そんな表情を浮かべていた。
 ともあれ、この妖を倒さない事には古妖を住まわすことはできない。覚者達は神具を手に、戦意を燃やす。
 夕暮れの学校。三体の妖と三人の覚者が相まみえた。


「負の心により生まれし妖よ。汝らの姿こそ罪なりし!」
 奏空は刀の柄に手をかけて、抜刀と共に叫ぶ。殺人鬼に怯える子供の恐怖心から生まれた姿。怯える心から生まれ、生き物を喰らうために誕生した闇の獣――妖。その存在は生きとし生ける者の利にはならず、ただ破壊のみをうむ害悪也。
 目を開き、一気に妖に迫る奏空。その動きに迷いなく、その瞳に揺らぎなく。鉄の心で振るわれる刀は、白銀となって妖を裂く。返す刀でさらに刃を振るい、恐怖から生まれた存在の動きを止める。そのまま切っ先を突きつけ、名乗りを上げた。
「負ある所に正義の使者あり! 天が呼ぶ暦の探偵戦士、工藤奏空推参!」
「あ、今日はそういうノリでいくんですね。頑張ってください」
 自分でもなんだろうこれ、と思う奏空に激励の言葉を贈る澄香。こういうノリが好きな従兄弟がいるので、なんとなく心境は理解できた。男の子ってこういうの好きだなー、と言う大人の女性の余裕である。
 タロットカード型の神具を手にして、戦場を見回す澄香。ふざけた姿だが、妖には違いない。事実、仲間が受けている傷は放置できないレベルのものだ。源素を解放し、木漏れ日の光を仲間に注がせる。陽光が体を温め、傷を癒していく。
「どうせなら、この悪い物を倒すヒーローも妄想してくれれば良かったのに」
「そうですわね。その想像ができないほど、参っていたんでしょう。可哀そうなことですわ」
 言ってため息をつくいのり。飼っていたウサギが無残に殺され、その落ち込みの中で描かれた子供の心境。それを想像して胸が痛んだ。殺人鬼をやっつける英雄よりも、殺人鬼への恨みと恐怖が勝ってしまったのだ。
 だからこそここで討たねばならない。その気迫を乗せるようにいのりは源素を集中させる。自由に空をかける天の源素。その力を集め、宙に撃ち放つ。虚空で散開した源素hじゃやとなって地上の妖に降り注ぐ。光の矢が闇の心から生まれた妖を貫いた。
「貴方達の居場所はここにはありません。消え去りなさい!」
 覚者の攻撃を受け、揺らぐ妖。しかし倒れることなく反撃をしてくる。魔獣が光を放ち、殺し屋のナイフが夕日に煌めく。魔剣士が奏でる曲が肉体に染み入ってくる。
「流石妄想から生まれただけあって、強いなあ。
 でも俺達は絶対に負けないよ。悪が勝つ物語なんてないからね!」
「正直彼らが活躍するフィクションを読んでみたい気もしますわね。きっと悪から正義に目覚めるいいお話になりそうですわ」
「かもしれませんね。子供心ながらに悪に憧れて、でも悪いことは良くないってわかっているのでしょうし」
 奏空、いのり、澄香が妖の攻撃を捌きながら口を開く。
 生まれた妄想は破壊の対象を描くように見えるが、同時に人は完全に悪に染まらないという深層心理が見える。魔剣士にはわずかな優しさが見て取れ、殺人鬼は悪に抗おうとする心が見える。人ではない魔獣のみが破壊衝動を抑えきれていない。意図して書かれた者ではないのだろうが、その思いを汲むことはできる。
 悪に染まらなかった子供達。その妄想を断ち切るように、覚者達は神具を振るう。


 覚者達はまず殺し屋を討たんと動く。ナイフによる深手を警戒しての作戦だ。回復が滞れば、その隙に追い込まれるかもしれない。
「強い正の感情。その心が戦う者を突き動かし強くしているんだ!」
 妖に向かって叫ぶ奏空。それは妖と言うよりは子供の妄想に向けて放たれた言葉だ。この妖が子供の負の心から生まれた者なら、反対の正の心で生まれる力もある。その力を心に宿し、闇を裂く。
 殺し屋の心の中にあった正義の心(と言う設定)が、妖の動きを止める。その隙を逃すことなく、奏空は刀を振るった。手ごたえはない。手ごたえなく奏空の刃は殺し屋の首を薙ぎ、妖は影となって消えていった。
「これが正義の心だ!」
「所詮は昔の子供が描いた妄想。消え去るのが道理ですわ」
 鎌を持つ妖に目を向けたいのり。想像や空想を否定はしない。だけどそれは現実にしみ出してはいけないものだ。人の心の中で生まれ、その人の糧となる。決して人を傷つけるような存在になってはいけないのだ。
『冥王の杖』を回転させ、源素を杖の先に集める。死に対する不安から生まれた妄想を、天から降り注ぐ流れ星で討つ。光り輝く流星はいつだって希望を指し示す。絶望ではなく希望を。綺羅星は妖を穿ち、追い詰めていく。
「この現実の世界は貴方達のいるべき場所ではありませんわ!」
「ええ。悪い人は捕まりました。成敗されたのです」
 頷く澄香。ウサギ殺しの犯人は捕まっている。人が努力して悪を裁き、真実を照らしたのだ。だからウサギを襲う殺し屋も死神も魔獣もいない。だからこの妄想も消えなくてはいけないのだ。
 澄香の掌に宿る温かな炎。それは『炎鳥』の炎を模した再生の炎。灰より甦る不死鳥の如く、如何なる艱難辛苦の状況においても人を立ち上がらせる希望の灯。その火を仲間に宿らせ、不屈の心をよみがえらせる。
「私達は負けません。古妖と、そして私達の未来のために」
 覚者達は攻防バランスよく妖を攻め立てる。一度膝をついた魔剣士を追撃して無に帰せば、あとは魔獣のみ。そうなれば回復に回っていた澄香も攻める余裕が生まれ、妖は見る間に傷だらけになる。
「これでおしまいですわ!」
 いのりが杖を構え、源素を放出する。鋭い衝撃波が妖を穿った。三つ首の魔獣はその衝撃に耐えきれずに崩れ去っていく。
「さようならですわ。もう不安におびえる必要はないのです」
 妖が消えた場所に向かって、静かに呟くいのり。不安の産物はもう、現れない――


 妖退治の報を受け、FiVEのバックアップスタッフが学校内に入ってくる。
 それと同時に様々な古妖も校内に入り、気に入った場所を確保していく。
「といれー」
「廊下の影もらい!」
「理科室……」
 同時に警護として常備する覚者達の為に、ライフライン確保などの工事が始まった。学校の景観を壊さないようにしながらの為、持ち込める物も限られる。
「とりあえずはどうにかなりそうですね」
 作業の様子を見ながら澄香は安堵のため息をつく。人と古妖の共存。これはその一つの形なのだ。七星剣の策謀により追い立てられたのが原因だが、古妖と人を繋ぐ結果となった。否、お互いに歩み寄った結果なのだ。
(簡単な道ではないかもしれません。それでも……)
 大きさも寿命も考え方も違う古妖達。その全てと共存することは不可能なのかもしれない。しかし歩み寄ろうとする努力はできる。お互いが歩み寄れるのなら、すれ違ってもいつかは手を取り合えるのだ。
「古妖の皆様、気に入ってくださったようですわね」
 学校内から聞こえてくる楽しげな声。古妖達が自分達の居場所で遊んでいる声だ。七星剣の追撃を避けるためとはいえ、古妖を住み慣れた場所から五麟市に連れてきてしまったのだ。不慣れな場所ではストレスを感じていたかもしれない。
「本当にスタッフさんには感謝しなくてはいけませんわね」
 古妖の生態や子のみを調べ、それに適した場所や施設を用意する。それが出来るのはFiVEが今まで戦ってきた経験から得たものだ。苦労し、悩み、突き進んできたこれまでの闘い。それはこういう形でも生かされているのだ。
「麒麟や九尾狐……ほかにも力のある古妖の力を借りることが出来れば……」
 奏空は言ってからかぶりを振る。神具七星剣は古妖を使役する剣。強力な古妖であっても、使役される可能性があるのだ。それに七星剣が古妖を巻き込んでいるからと言って、こちらも古妖を戦いに巻き込んでいい理由にはならない。
(神具・七星剣。それが古妖を使役すると言うのなら、やはり人間がどうにかするしかないのか……?)
 古妖に対して強力な支配能力を持つ神具。しかし逆に言えば、古妖以外にはその特異性は発揮されない。少なくとも八神は人間を剣で操ってはいないのだから。

 FiVEはあらゆるコネと知恵を駆使して、古妖の安全を確保している。使える施設は使い、頭を下げて古妖の受け入れ許容量を確保している。
 今回の件もまさにそれ。不安におびえる古妖を救うために、FiVEの覚者を始めとした面々が必死になって戦っている。
 いつかこの努力が実ると信じて――


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『古妖の塗り絵』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員




 
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