荒れ狂う水の竜
荒れ狂う水の竜


●水竜遺跡の主……?
 奈良県のとある遺跡群。
 その中央に、古妖「麒麟」が鎮座する遺跡がある。
 真下に自身と同じ姿をした大妖らしき存在を封じている彼は何らかの影響もあって自我を失い、荒れ狂ってしまっていた。
 先日、F.i.V.E.の覚者達がこの地の調査を行う最中に麒麟を鎮め、彼と話をしたことでようやく、この遺跡群について存在意義などが徐々に明らかになってきつつある。
 その四方にはそれぞれ、似たような構造の遺跡が確認されていた。
 遺跡の奥に妖がいるのであれば、対処をして欲しいと麒麟から依頼を受けている状況だ。
 これまでに、北の大亀遺跡、南の朱鳥遺跡、西の遺跡の白虎遺跡を調査、それぞれ奥にいた妖、大亀と朱鳥、白虎の撃破を完了している。
 そして、東の水が流れる遺跡……『水竜遺跡』の探索もまた大詰めを迎えようとしていた。

 遺跡を見下ろす事のできる高台。
 そこに、F.i.V.E.の覚者達が集まってくる。
「ようやく、奥に踏み込めるね」
「長かったんだよー」
 MIAの2人、翼人の水玉・彩矢と酉の獣憑である荒石・成生が覚者達へと挨拶し、初めてこの探索に参加する覚者がいる可能性も考慮して経緯の説明を始める。
 前回までの探索において、遺跡内のトラップは解除済み。
 奥の大部屋へと突入し、強大な力を持つ妖を倒すのが今回の目的だ。
「遺跡途中の水蛇は、駆けつけた覚者の別働隊が抑えてくれるよ」
「精一杯頑張りますね」
 その中には、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)の姿もある。
 彼女も場合によっては、大部屋での戦いのサポートに加わるとのことだ。
「私達はー、大部屋の妖の対処に専念するんだよー」
 遺跡最奥の妖の能力は、この場には不在の『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が予め、夢見の力で視てくれている。
 まず、ランク3の妖、仮称、水竜。
 見た目は、4mほどの東洋の竜を彷彿とさせる水の妖だ。
 そいつは、四方の部屋にいた妖のもつスキルを1つずつ使ってくる。
 当然、その威力はこれまで戦ってきた妖とは比べ物にはならない。
 また、取り巻きとしてランク2強の水蛇達が2体襲ってくる。こちらは通路のものよりはるかに大きく、その実力は四方の部屋の妖に迫る強さだとのことだ。
「あたし達は取り巻きの相手を考えているよ」
「もし、こうしてほしいって希望あったらー、今のうちに言ってねー」
 敵能力の資料を受け取った覚者達は早速、MIAの2人と連携をとりつつ、戦略を詰める。
 状況が整うと皆頷き合い、遺跡最奥の部屋を目指して通路へと降り立っていくのだった……。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:難
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.ランク3の妖、水竜の撃破
2.なし
3.なし
覚者の皆様、こんにちは。なちゅいです。

東の遺跡攻略決戦です。
遺跡奥の大部屋に向かい、妖の討伐を願います。

●妖(自然系)
◎ランク3……水竜
全長4メートルほど。
水で構成された長い竜の姿をしています。
本来はランク4に届く力の妖ですが、
遺跡の封印の影響なのか、能力が抑えられています。
それでも強敵ですので、油断なきよう対処願います。
 
・角……物近貫3[100・60・40%]
・水砕爆流……特全・重圧
・締め付け……物近単・痺れ
・揮発油……特遠列・火傷

◎ランク2強×2
全長3mほどある水蛇の妖です。
水竜の取り巻きとして、通路の個体より強い力を持ちます。

・噛み付き……物近単・出血
・突進……物近貫2[100・50%]
・破水飛沫……特全・毒

●NPC
『MIA』……発現者女性2人組。
名前は彼女達の苗字、頭文字から。
両者共にかなりの力を持つようです。

基本的には、ランク2妖と交戦してくれます。
2人で攻撃、回復は行います。
覚者としての力は、現在の覚者達と同等程度です。

○水玉・彩矢(みずたま・あや)翼×水
飛行、物質透過をセット済み。
ぐいぐい引っ張るタイプのちょっと露出高めの女性。
戦闘では回復支援を行いつつ、弓矢、波動弾を放ちます。

○荒石・成生(あらいし・なるき)獣(酉)×土
面接着、守護空間をセット済み。
相棒の彩矢に振り回されがちな気弱な性格で、露出が小さな服を着た女性。
前に立って直接拳で殴りかかり、防御態勢を取ります。

○河澄・静音(nCL2000059)
基本、他の覚者達と通路で妖討伐に当たりますが、
参加者が5人以下の場合のみ大部屋の戦いに加わります。
(6人参加の場合は参戦しません)
皆様の支援に動きますが、
何かありましたら、ご要望にお応えさせていただきます。

●遺跡について
遺跡内部のトラップは前回解除済みです。
今回は遺跡最奥に直行し、
大妖を倒すことになります。

遺跡途中の通路に出現する妖に関しましては、
応援の覚者が対処してくれる為、
問題ありません。

それでは、よろしくお願いいたします
状態
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2018年06月27日

■メイン参加者 6人■

『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『天を翔ぶ雷霆の龍』
成瀬 翔(CL2000063)
『静かに見つめる眼』
東雲 梛(CL2001410)
『在る様は水の如し』
香月 凜音(CL2000495)

●最後の遺跡探索
 奈良県遺跡群。
 そう呼ばれるようになったのも最近の話だが、それも板についてきた感がある。
 青と金のオッドアイで大辻・想良(CL2001476) が見下ろす先には、水が流れる水竜遺跡があった。
「これで、この遺跡の妖は最後ですね……」
 数回重ねてきたこの東の遺跡の探索も、佳境を迎えている。
「久々だな、遺跡の依頼に参加するのは」
 『静かに見つめる眼』東雲 梛(CL2001410) にとっては、かなりご無沙汰な探索。
 とはいえ、感慨深いかと言われれば、微妙な感覚があったようだ。
「遺跡の調査。何度ここに足を運んだだろうなぁ……」
 ようやく終わりが見えてきた遺跡探索に、『在る様は水の如し』香月 凜音(CL2000495) も思うことがあったようで。
「今回の討伐の後、何がお目見えするのか乞うご期待ってところかねぇ」
 精々頑張ろうかと考える凜音。その討伐対象は……。
「いよいよ竜のお出ましか!」
 『ファイブレッド』成瀬 翔(CL2000063)もこの状況に、テンションが高まっている。
「四方の遺跡最後のボス水竜! こいつを倒せば、麒麟を抑制していた力が解放されるのだろうか」
 その探索の全てにかかわってきた『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955) にとっても、今回は区切りとなる依頼だ。
「思えば、長い道のりだった気がする」
 それも今、ここで終えようとしている……いや、『始まり』なのかもしれないと奏空は何かを感じていたようだ。
「それに……妖を倒したら、どうなるんでしょうか……」
 奏空に同伴するように、この遺跡探索に関わる小柄な少女、『意志への祈り』賀茂 たまき(CL2000994) もまた神妙な表情で告げた。
 たまきは途中参加であり、深い事情は仲間達から聞いた限りという状況ではあったが、遺跡の中にあったアイテム、妖は今回の水竜を倒すことで全てなくなるはずだ。
「この遺跡の妖さんを倒す事に寄って、封印を護って下さっている、麒麟さんが落ち着きを取り戻すのですよね……?」
 遺跡群中央にいる麒麟は自らの影とでも言うべき存在を封じている。
 その力を増幅させる為、周囲の遺跡群はあると麒麟は言った。それが今、逆に麒麟を苦しめる状況になっているとも。
「ならば私は、最後までそのお手伝いをしたいです」
 落ち着いたなら、たまきも麒麟と直接話がしたいと語った。
「しっかりと自分の役割を……うん。頑張ろう。足手まといにならないように」
 目的は水竜の討伐。その為に、梛は自分にできることをと言い聞かせる。
 ――とにかく、俺達は前に進むだけ……!
 奏空は西の方向を見つめて。
「麒麟待っててね! すぐに終わらせるからね!」
 大声で呼びかけ、彼は仲間と共に遺跡内部へと突入していくのである。

●遺跡探索の協力者達
 遺跡を回りこむように西側通路に垂らしたロープから遺跡に入り、固まって進むF.i.V.E.の覚者達。
 こうして進むのは、道中の妖との交戦を減らす為。
 駆けつけるサポーターの覚者達の助けを得て、水竜戦に臨むメンバーは力を温存して進むことになる。
 水が流れ続ける通路では、激しい鉄砲水はすでに起きなくなっている。
 守護使役のまもりをつつきながら、移動していく梛。彼は元気そうなMIAの2人を見る。
「今回は、また一緒なんですね。よろしく、お願いします……」
 想良は、翼人の水玉・彩矢と酉の獣憑である荒石・成生に声をかける。
「ああ、よろしく」
「よろしくねー」
「お前さんたちと共闘できてとても助かる」
 いつもの調子の2人だが、凜音は初対面だったようで挨拶しつつも、無茶はしないようにと気にもかけて。
「回復はこっちからも回すから思う存分戦ってくれ」
 これからの戦いにおいては、貴重な戦力。
 凜音は彼女達の力も当てにしつつ、水竜の撃破を目指す。
「MIAには、ランク2をお願いしたいな」
 奏空がそう2人に要望を出すと、たまきもやや心配そうに告げる。
「深手を負うなどした場合、もしくは戦闘継続が困難な場合は、妖さんはこちらに任せて即時撤退をして下さいね……?」
 頷く2人に、奏空も改めて激励の言葉を口にする。
「MIAも静音さんも頑張って行こうね!」
 現われた妖と交戦する覚者の中には、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)の姿もあった。
「はい、皆さんもご武運を……!」
 妖を討伐し、一息ついた彼女は笑顔を向けた。
 先ほど、たまきはMIAが撤退した場合の手伝いを静音に頼んでいる。
「途中の水蛇の相手……。気をつけてくださいね……」
 さらに現れる妖に対する静音へ想良が声をかけると、彼女は小さく手を振ってそちらへと向かっていくのだった。

 そうして、奥の通路を歩く覚者達は、正面に近づく奥の部屋の扉を開く。
 部屋の中央では水で構成された体の竜が目を光らせ、それに近づかせまいと2体の水蛇が前に出てくる。
「青龍って言うか、水竜なんだな……どう違うんだ?」
 どのみち、見上げるほどに大きく、手強そうな相手。それを前に、翔は気を引き締めていた。
「水で構成された竜な。見た目は涼しげだが、可愛げのない強さだよなぁ……」
 凜音はそんな感想を口にしつつ、考える。
 彼もまた、ここに至るまでの経緯を全て把握しているわけではない。
「俺達がここを訪れなければ、戦う事はなかったんだろうか?」
 だが、相手はこちらに敵意を向けてきているし、覚者達も引く気はない。
「今更か。静まってくれないなら戦うしかないのだろう」
 甘いことを考えていると、こちらがやられるかもしれないと凜音は察し、これが最後の戦いになればと祈りを捧げる。
 目の前の水竜達と対峙していく覚者達。
「さぁ、俺達も頑張って行こう!」
 仲間は揃ったと実感する奏空は、満を持して妖へと立ち向かうのである。

●押し寄せる水の流れに負けず……
 水竜を始め、妖達は部屋の中央から大きくは動かない。
 この為、覚者達は攻め込む形で仕掛けていく。
 肩口に白い翼を広げる想良は仲間の中央に位置し、曲杖を振り上げて頭上から光の粒を降り注がせる。
 それにも怯まず、跳びかかって来る水竜と水蛇達。
 後ろからは髪を金色に染めた奏空が英霊の力を強く引き出す。
 引き出した力は、事前情報によれば、水竜の起こす水の流れに抵抗する力もある。早々倒れることはないはずだ。
 素早く動く彼がさらに瑠璃光を発して仲間全員を包む中、中学生であるはずの翔が瞬時に大人の姿へと変貌して。
「行け、雷獣! あいつらの喉元に食らいつけ!!」
 仲間達の前に立つ翔は攻めくる水蛇達へと、巻き起こす雷雲より雷を叩き落とす。
 多少は痺れも与えていたが、水蛇達は臆することなく突進して翔だけでなく、後方の想良をも巻き込んで水の噴射を浴びせかける。
 もう1体の水蛇は揮発性のある液体を撒き散らし、瞬間的に炎を発した。
 ガソリンを思わせる臭いを放つ液体は、覚者達に火傷を負わせてしまうが、MIAの片割れ、成生が構うことなく突進する。
「負けないんだよー」
 戦いとなれば率先して前に出て、彼女は細腕にもかかわらず強烈な一撃を水蛇へ叩き込んだ。
「成生、援護するよ」
 成生をフォローするのは、相方の彩矢だ。
 普段は相方を引っ張る姉御肌な彼女だが、戦いでは後方支援で戦うのは面白い所。
 もちろん、覚者達もMIAの2人に負けてはいない。
 第3の眼を開眼させた梛は、植物の力を借りて治癒力を高める香りを仲間達へと振り撒いていく。
 さらに、彼はエネミースキャンも使いつつ、敵の体力を探る。
 他にも同じスキルをセットしていたメンバーもおり、できる限りこの戦いを効率よく展開させられるようにと備えていた。
 後ろの凜音は、見た目が灰色の髪へと変わっている。そして、赤い瞳で相手を見据えた彼は、しばし思考して。
(今回は回復だけじゃなくて、場合によっては攻撃にも回る)
 回復は奏空や、MIAの彩矢だってできる。
 相手の攻撃はすでに仲間へと熾烈なまでに仲間達へと文字通り浴びせかけられており、その体力を大きく削ってきていた。
 それもあり、凜音は英雄の力を引き出してすぐ、仲間に続けて水竜を狙う。
「相手の攻撃は熾烈だが、受けてばかりじゃ立ち行かないしな」
 回復役はとかく狙われるからこそ、彼は攻めの姿勢をみせるべく水のしずくを発していく。
 それを受けた水の妖には一見効果がなさそうにも見えるが、相手は自然系の妖。相手は若干態勢を崩していたようだ。
 そして、超視力を活かしつつ、赤い瞳で戦況を見定めるたまき。
 己の髪を黒く変色させていた彼女は英霊の力を引き出した後、土の力を込めた巨大術符を舞わせ、自らの身を鎧のように包む。
「いきますよ」
 その身から溢れんばかりの水を覚者達へと押し寄せてくる水竜。
 その攻撃を耐え凌いだたまきは、仲間と攻撃を同じくして水竜を抑えるべく気を溜めていくのである。

 水の竜と蛇は基本的に部屋の中央を基本的なポジションとし、攻撃の為に動きはしてもその場に戻ろうと動く。
 それもあって、覚者達はほとんど布陣を変えずに戦いを展開することとなる。
 奏空が広域に霧を発し、相手の弱体化に動く中、翔は前線で水竜の締め付けに耐えてみせた。
「…………!!」
 例えその身が裂かれそうになる威力があっても、翔は絶対に悲鳴や嗚咽といった声は上げない。
「痺れさせられるもんならやってみろー! これでも、自然治癒力は高い方なんだからなー!」
 彼が波動弾を発射して応戦する後ろから、梛が投げ付けた植物の種を急成長させ、相手の自由を奪おうとしていく。
 なんとか梛が抑える間に、翔は雷獣を起こして敵陣を雷で灼く。
 気付けば、MIAが水蛇片方を追い込んできている。
 拳で連打を浴びせかける成生、そして、弓矢で相手の体を射抜く彩矢。
 成生はうまく水蛇の気を引いてくれているが、かなり傷ついて来ている。
 そんな彼女を想良は仲間と共に、深想水で癒していく。
「大丈夫ですか……?」
「ありがとー」
 やや言葉をどもらせながらも想良が気遣いをみせると、成生が礼を返す。出遅れた彩矢が少し気合入れていたのはさておき。
 彩矢が射掛けた矢によって、水蛇が僅かに硬直した一瞬の隙。
 エネミースキャンで相手の体力見ていた梛が一気に体内の気を燃え上がらせ、狙う水蛇目掛けて体当たりを繰り出す。
 それによって水蛇が霧散したのを受け、梛は水竜の相手を続けることにしていた。
 覚者達は、徐々に疲弊してきている。
 水蛇はMIAの2人がある程度抑えてはいるものの、相手の起こす毒を含んだ水しぶきや突進はこちらの覚者にも及ぶことがあった。
 凜音は仲間の体力が大きく減っていないかを逐一確認しつつ、水のしずくで応戦し続ける。
 敵に厄介な相手だと思われるのは構わない。
 とにかく、簡単に落ちるのだけは避けたいと凜音は立ち回っていた様子だ。
 仲間達の行動もあり、メイン回復は奏空がほぼほぼ請け負うこととなる。
 できるなら、MIAの援護にも回りたい彼だが、相手はランク3だ。
 前衛メンバーの傷を癒す方がどうしても優先となり、仲間の気の流れを活性させて回復に当たり続けることとなる。
 ただ、交戦が続けば、徐々に覚者達に流れが傾く。
 成生の拳で仰け反る水蛇。
 たまきは水竜と纏めて強烈なプレッシャーと共に護符を叩きつけて行く。
 その衝撃を受けた水蛇は耐えられず、全身が弾け飛んでしまったのだった。

 牙を剥いてくる水竜はランク4にも迫る力を遺憾なく発揮し、覚者達を追い詰める。
 残念ながら、力が抑えられている影響からか、言葉としての会話はほとんど行うことが出来ない。
「相手の力が満足にあれば、話ができるんだっけか」
 水竜が浴びせかける水の爆流に耐え、翔は期待する。麒麟と何かかしら話ができれば、と。
 もちろん、話の出来ない水竜を倒さねばならぬと波動弾で応戦を続け、その手は止めない。
 梛も投げつける種を成長させ、水竜の動きを止め続けるのだが、その最中で相手のスキルを……水砕爆流を我が物と出来ないものかと考える。
 しかし、水竜はそんな梛を見逃さない。
 敵は揮発性のある油を浴びせかけ、さらに爆流を覚者達へと浴びせかけてくる。
 運悪くクリーンヒットしたこともあり、梛は意識を失ってしまうが、命の力に縋って耐え切ってみせる。もっとも、相手のスキルを覚える暇などなかったが……。
 仲間達が敵の連続攻撃で、これ以上膝をつかぬように。
 凜音も攻撃の手を止め、恵みの雨を周囲へと降らせてMIAを含む仲間全員を癒す。
「もう少し……もう少しです……」
 エネミースキャンで手数を使うのは惜しいが、それで仲間達が上手く攻撃できればと想良は仲間に呼びかけ、高圧縮した空気を敵の首の付近目掛けて狙い撃つ。
 いくら水竜とはいえ、頭を失えば動かなくなるはず。
 たまきは相手の動きを注視し、相手の喉元が丁度突き刺さるように、地面を岩槍のように隆起させた。
「今です!」
 そこで仕掛けるは翔だが、仲間の回復にも時に当たっていた彼は気力が厳しくなってきていた。
「翔、これで!」
 そこで、奏空が自身の精神力を分け与え、彼の気力を回復させていく。
 飛び込んでくる翔を、水竜は自らの長い体で締め付けようとする。
 翔はその脳天目掛けて、鮮烈なる雷を叩き落とす。
「…………!」
 水竜の頭がその雷を受けて、弾ける。
 同時に身体も合わせて飛び散り、部屋の壁に沿って流れる溝へと流れ落ちていく。
 その水を浴びた覚者達とMIA。
 部屋に飛び散る水飛沫は、これ以上なく爽快にも思えて。
「お前らもう出てくるんじゃねーぞ!」
 敵の殲滅を確認し、翔は勝利のポーズをこれ見よがしに見せ付けたのだった。

●全ての妖を倒して……
 妖も全て姿を消し、覚者達は互いの傷を確認しつつ、状況の変化を確認する。
 外では、まだ静音を含むサポーター達が交戦していたようだったが、それも程なく片がついたようだった。
「4体の妖、全部倒せたことになるんだよな? 何か新しい事実が出てくるのか?」
 翔は何かないかと、部屋の中をキョロキョロと見回す。
 見た目では、大きな変化を感じることは出来ないが……。
 奏空が超直感で何かに気付き、拾い上げる。
 それは、北西の小部屋と同じく何か書かれた布切れや瓦礫だった。
 これも合わせて研究機関にと、奏空は回収をしていく。
「……このまま、部屋を探索しますか? それとも、麒麟さんのところに行ってみるんでしょうか?」
 想良のその質問に、メンバー達は麒麟がどうなったのかと興味を抱いたらしい。
「ちょっとワクワクするよな! このまま見に行きたいくらいだ!」
 できれば、次はもっと面白いことが起きればと、翔も目を輝かせる。
 仲間達の言葉を聞きながら、これまでの四方の遺跡での妖との戦いを脳裏に過ぎらせた。
 ――大亀、朱鳥、白虎、そして今回の水竜。
 まるで四神を思わせる妖達。そして、麒麟の下に封印されている妖。
 いずれ対峙するであろう敵との戦いの前に、麒麟に対して事のあらましを聞いておきたいと、奏空は仲間と共に中央の遺跡を目指すことに決めたのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

4つの遺跡最後となる妖の討伐、お疲れ様でした。

麒麟と話をした後、
いよいよ、この関連依頼の決戦となります。
7月中を予定しておりますので、
どうぞ、よろしくお願いいたします。




 
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