《島根動乱》戦乱の傷を癒すぞ人の手で
●島根動乱
島根県を妖が襲う――
妖は人間を攻撃するよりも島根という土地を占拠するように動くため、妖の規模に反して被害は少ない。だがその攻撃性がなくなったわけではなく、そこに住む人や進路上にいた人達はその犠牲になり、路頭に迷うことになる。
幸いにしてFiVEを始めとした覚者が島根の包囲網を崩し、島根内部に突入することが出来た。後に島根県内に橋頭堡を作り、そこを拠点に妖を駆逐し始めている。だがそれにはまだ時間がかかるだろう。
そして妖と戦う事だけが、人間の闘いではない――
●FIVE
「ざっくり言えば、妖に住処を奪われた者の支援だ」
久方 相馬(nCL2000004)は集まった覚者を前にそう説明する。
「島根県の妖被害で家を奪われた人たちは、避難所で生活している。大怪我をした人は病院に搬送されたけど、怪我人も少なくない。
そういった人達に炊き出しや治療、いろんなことで元気づけてほしい」
島根県解放のためにFiVEの覚者達が動いているのは、避難所の人達も聞いている。そう言った人からの言葉は、彼らにとっての激励になるだろう。また、単純な食事や治療も生きるために必要だ。幸いにして物資は整っている。
「妖は覚者の力でいつか駆逐できるかもしれないけど、事件で生まれた心の傷を埋めることは源素じゃできない。人の優しさしかないんだ。
戦いで疲れているかもしれないけど、お願いできないかな?」
相馬のお願いに、貴方は――
島根県を妖が襲う――
妖は人間を攻撃するよりも島根という土地を占拠するように動くため、妖の規模に反して被害は少ない。だがその攻撃性がなくなったわけではなく、そこに住む人や進路上にいた人達はその犠牲になり、路頭に迷うことになる。
幸いにしてFiVEを始めとした覚者が島根の包囲網を崩し、島根内部に突入することが出来た。後に島根県内に橋頭堡を作り、そこを拠点に妖を駆逐し始めている。だがそれにはまだ時間がかかるだろう。
そして妖と戦う事だけが、人間の闘いではない――
●FIVE
「ざっくり言えば、妖に住処を奪われた者の支援だ」
久方 相馬(nCL2000004)は集まった覚者を前にそう説明する。
「島根県の妖被害で家を奪われた人たちは、避難所で生活している。大怪我をした人は病院に搬送されたけど、怪我人も少なくない。
そういった人達に炊き出しや治療、いろんなことで元気づけてほしい」
島根県解放のためにFiVEの覚者達が動いているのは、避難所の人達も聞いている。そう言った人からの言葉は、彼らにとっての激励になるだろう。また、単純な食事や治療も生きるために必要だ。幸いにして物資は整っている。
「妖は覚者の力でいつか駆逐できるかもしれないけど、事件で生まれた心の傷を埋めることは源素じゃできない。人の優しさしかないんだ。
戦いで疲れているかもしれないけど、お願いできないかな?」
相馬のお願いに、貴方は――

■シナリオ詳細
■成功条件
1.避難所の人達を支援する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
島根動乱、幕間。
●説明っ!
島根県を襲った妖の群れ。妖から島根県を解放しようと覚者達が戦っています。
その最中、妖被害から難を逃れて避難所に逃げ込んだ人たちがいます。彼らを元気づけ、心の傷を癒しましょう。
方法はいくらでもあります。炊き出し、怪我の治療、激励、一芸、覚者の力を見せて強さを誇示……。
FiVEの活躍は皆知っているため、基本的に避難者は好意的に受け入れてくれるでしょう。
●場所情報
島根県にある学校。その体育館。そこに百人ほどの人が避難しています。ライフラインに不備はなく、生命に危機がある怪我人はいません。ですが妖の蹂躙に心を痛め、多少なりと傷を負った人もいます。
炊き出し用の食材や簡易な医療器具、その他必要なものがあれば常識的な範囲(最大で車一台ぐらい)で用意は可能です。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】という タグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
13/∞
13/∞
公開日
2018年05月28日
2018年05月28日
■メイン参加者 13人■

●
避難所のライフラインは整っているとはいえ、生活を奪われた人たちの空気は重い。妖の暴力による不満や、これからの生活の不安もあって彼らは前を見ることが出来ない状態だった。それ自体は致し方ない事である。万人が理不尽に顔を上げれる強さを持っているわけではない。希望なしに前を向くことが出来ないのが、普通なのだ。
「そうですか。家を……それは大変でしたね」
そんな避難所の人達の話を聞きながら叶・笹(CL2001643)は話を治療を施していた。消毒や包帯の交換。そう言った清潔面の維持はこういった生活では十分な病気の防止策になる。術で傷を癒すこともできるが、それだけでは心の傷はいえない。
「何か足りない物はありますか? ああ、保育用のミルクとオムツですね。あちらに用意してありますよ」
こういった際に不足しがちな物資は、過去の例から予測できる。笹はそれを事前に調べて、FiVEに用意させていた。医療経験は積んである。その経験に基づいて、一つずつ丁寧に避難者達と接していた。
「今はまだ帰る事は出来ませんが、帰れる日は必ず来ますからね」
希望をつなぐこと。その事を告げること。それが大事なのだと笹は理解していた。
●
「豚汁を作るよ!」
元気よく工藤・奏空(CL2000955)が鍋の前で気合を入れる。自炊している程度の料理経験だが、それでもできることをやろうという心が伝わってくる。豚汁の材料を前に包丁を手にした。先ずは……と、事前に教えてもらったメモを広げる。
「鍋に火を通す前に油と豚肉を入れて炒める……水を足すのはその後?」
鍋で肉を炒めるなんて初めてだなぁ、と思いながら奏空はメモ通りに具を加えていく。昆布と水、その後に切り分けた野菜類。アクを掬いながら煮込んでいく。最後にみそを加え、沸騰しない温度で過熱していく。味を見るために、少しお椀に入れて口をつけた。
「おお、これいける!」
そして豚汁の炊き出しが始まった。渡す人に声をかけていく奏空。
「よく頑張ったね。大丈夫、妖はFiVEがなんとかするから」
「今は辛いでしょうけど、すぐに島根を元に戻すわ」
隣で環 大和(CL2000477)が頷く。島根を占領した妖。その数はFiVEを始めとした覚者の活躍により少しずつ減ってきている。けして楽な戦いではないが、それでも少しずつ前に進んでいるのだ。島根のために戦っている者の言葉は、確かな励みとなっていた。
「はい。ミートボールのトマト煮込みよ。これを食べて元気をつけてね」
パスタと一緒に用意したミートボールを子供たちに配る。冷凍の肉団子を解凍し、野菜やパスタと一緒に煮込む。簡単だが味のインパクトを含めて子供達には大人気だ。元気よく食べる子供達の頬に着いた汚れを、布巾で拭き取る大和。
「慌てて食べなくても、お替りはたくさんあるわ」
「一緒におにぎりはどうでしょうか?」
「焼きおにぎりや混ぜおにぎり、おにぎらずといった変わり種もあるよ」
柳 燐花(CL2000695)と蘇我島 恭司(CL2001015)はトレイの中に沢山のおにぎりを用意していた。定番であるおにぎり、醤油で焼いた焼きおにぎり、海苔や天かすなどが混じった混ぜおにぎり、野菜や肉などを挟んだおにぎらずといった多種多様な組み合わせだ。
なぜこのような構成になったかというと、
「選べる物が少ないと状況の厳しさを実感しちゃうからね。少しでも、皆に楽しんでもらえたらなって」
「食べるだけじゃなく楽しみも……ですか」
という恭司のセリフに頷く燐花。料理は見た目も重要だという言葉がある。色彩その者があ時に影響するわけではないが、見た目の麗しさは人の気持ちを和やかにする。事、こういった落ち込んだ空気を払拭するにはそう言ったひと手間が重要になってくる。
「では私も……主に小さい子向けの顔にぎりです」
燐花が用意したのは白い米に海苔で表情を描いた顔おにぎりだ。髪の毛はそぼろやふりかけで作り、赤い明太子で鼻や頬を染めていた。海苔で描かれた顔は笑顔が多く、避難者もその表情に吊られて笑みを浮かべる。
笑う事。それは前を向くためのエネルギー。島根の状況はまだ先が長いけど、それでも笑うことで苦難に屈しない力を与えてくれるだろう。
●
「よっしゃ。なら一曲行くで!」
ギターを手に焔陰 凛(CL2000119) が元気良く叫ぶ。弦の調律は済んである。試しとばかりに全ての弦をなぞるようにして鳴らした。心地の良い弦楽器の響きが避難所に響く。注目を集めた後に、演奏を開始した。
「お爺ちゃんお婆ちゃん達も、一緒に歌おうや」
凛がリクエストされたのは四十年前に流行ったコミカルな曲が多かった。演歌系が主かと思ったが、こういう時は『皆が知ってて合唱できる楽しい曲』が好まれるようだ。脳内で店舗を思い出しながら、ギターを奏でる凛。
「ま、ええわ。めったにでけへん経験やしな!」
「よーし、わたしも歌うか。ひま、行くよ」
「ええ、あーさん。色々用意はしてきたわ」
芦原 ちとせ(CL2001655)と向日葵 御菓子(CL2000429)は音楽で盛り上がる避難所で笑顔を浮かべて立ち上がる。元ジュニアアイドルと音楽教師。共に演奏には縁がある。持ってきた楽器を手にリズムを刻む。
「~♪」
ちとせが歌うのは、ジュニアアイドルだった頃のデビュー曲だ。彼女の活躍を知る者は、その声に黄色い声をあげる。そのままメドレーのように次の曲に移行する。ジュニアアイドルとは異なった大人のちとせの歌声が体育館に響く。
「もー。あーさんたら元気いっぱいね」
アップテンポなちとせの歌に御菓子は苦笑する。一歩出遅れた分を取り戻すように、元気よくスネアドラムを叩いた。全身に楽器を用意した御菓子が動くたびに、様々な音楽が流れだす。踊るようにリズムを取り、見た者を楽しませるライブが始まった。
「さあ、みんなで楽しみましょう!」
「次の曲は――」
音の祭典は終わらない。不安を吹き飛ばすような音楽と合唱が、島根に響いた。
●
「お待たせしましたですっ。温かいお食事になりますっ」
離宮院・さよ(CL2000870)は作られた料理を手に避難所を走り回っていた。直接料理を取りに来れない人たちに、作った料理を運ぶためである。恐怖で知らない人と接することが出来ない人も少なくない。さよの笑顔はそういった人達の心を解かしていた。
「元気になるおまじないをかけましたっ」
まだ幼く見えるさよ。頼りがいがある、問いよりは可憐さを彷彿させる姿は妖に立ち向かうイメージを与えない。むしろこうした純粋な笑顔の方が、源素よりも人を癒す力があるのだろう。彼女の笑顔を見た者は、そんな感想を抱いていた。
「こういう時は暖かいもの、甘いものなどが喜ばれると聞いたです」
菊坂 結鹿(CL2000432)は言いながらお湯を沸かしていた。その手元には様々な野菜とお茶の葉がある。炊き出しの献立と被らないように仕分けされており、結果トウモロコシとカボチャを中心としたベジタブルスープになった。
「暖かいものはこれで良し。甘い物は……と」
スープを煮込む間にポットを手にする。コーヒー豆を挽いたのちにフィルターに入れ、サーバーの上に乗せた。一度80℃のお湯で蒸らした後にしばらく置いて、再びお湯を注いでいく。豊潤な香りが鼻腔をくすぐった。
「はい。あったかいコーヒーですよ。じっくり味わってください」
コーヒーも淹れ方によって味が大きく変わる。結鹿の笑顔と共に出されたコーヒーは、避難者の心を温めていく。
「はーい。怪我した人はこっちに来てねー。絆創膏を張ってあげよう」
「瓦礫や修理はこれであらかた片付いたかな」
「みなさーん。甘い物がありますよー」
麻弓 紡(CL2000623)と如月・彩吹(CL2001525)と天野 澄香(CL2000194)の【四葩】は避難所の外で活動していた。紡が怪我人を術で癒し、彩吹が翼と持ち前の体力を活かして瓦礫を撤去したり屋根の修理を、澄香が料理の腕を生かして御菓子を作って配っていた。
「はーい。みんな、ちゅうもーく」
大きく手を振って紡が子供達を呼び寄せる。雲一つない満天の青空に向かって、手を掲げる。その瞬間小雨が降りだした。飴は太陽の光を反射して七色のアーチを生み出した。
「ふふ。では私も――」
澄香は御菓子をテーブルに置いたのちに、源素を解放する。森の中に注ぐ木漏れ日のような淡い光が、辺りを照らす。優しく自然を照らす癒しの光。それは静かに避難者達に降り注いでいた。
「よし。では私は!」
翼を広げ、彩吹が空を舞う。紡が作った虹と、澄香が生み出した光。その隙間を縫うように空を舞う。ふわり、と滑空する時もあれば力強く翼をはためかせて素早く飛ぶ。空中で繰り広げられるサーカスに、子供達は大はしゃぎになった。
「一緒に飛びたい? それなら肩に捕まって」
着地した彩吹は自分達も空を飛びたいとせがまれる。その程度ならお安い御用とばかりに一人を抱いて、一人を肩に乗せて宙に舞う。子供を落とさないようにゆっくりとした速度で空を舞う。
「待っている子達はこちらをどうぞ。ネコさんとウサギさんですよ」
空を舞う彩吹を待つ子供達に澄香は御菓子を差し出す。ネコとウサギの型番を使って焼いたパンケーキだ。チョコペンで顔を書いたり、ホイップクリームで彩ったりと澄香の御菓子作りスキルが如実に表れている。
「にゃんけーき、おいしー」
紡は子供たちに交じってそのパンケーキを頂いていた。数はたくさんあるし、一つぐらいはかまわないだろう。仕事が終わって疲れた体に当分は最高のご褒美だ。この癒しで皆が立ち直ってくれればいいのだけど、と紡は言葉なく思っていた。
【四葩】の活動はまだまだ続く。今日は一日、大変だ。
●
支援を終えた覚者達は避難所を後にする。
とはいえ、島根にはまだこういった避難所がたくさんあるのだ。FiVEの覚者達は地図を見ながら、次はどうするかを考える。
妖を倒すのは覚者の役目だ。その為の『力』がここにある。
だが人を癒すのは『力』ではない。人としての『心』なのだ。
島根の動乱はまだ終わらない。だがしかし、それに抗う人達は確かにいる。
その活動がある限り、人は妖に屈しない――
避難所のライフラインは整っているとはいえ、生活を奪われた人たちの空気は重い。妖の暴力による不満や、これからの生活の不安もあって彼らは前を見ることが出来ない状態だった。それ自体は致し方ない事である。万人が理不尽に顔を上げれる強さを持っているわけではない。希望なしに前を向くことが出来ないのが、普通なのだ。
「そうですか。家を……それは大変でしたね」
そんな避難所の人達の話を聞きながら叶・笹(CL2001643)は話を治療を施していた。消毒や包帯の交換。そう言った清潔面の維持はこういった生活では十分な病気の防止策になる。術で傷を癒すこともできるが、それだけでは心の傷はいえない。
「何か足りない物はありますか? ああ、保育用のミルクとオムツですね。あちらに用意してありますよ」
こういった際に不足しがちな物資は、過去の例から予測できる。笹はそれを事前に調べて、FiVEに用意させていた。医療経験は積んである。その経験に基づいて、一つずつ丁寧に避難者達と接していた。
「今はまだ帰る事は出来ませんが、帰れる日は必ず来ますからね」
希望をつなぐこと。その事を告げること。それが大事なのだと笹は理解していた。
●
「豚汁を作るよ!」
元気よく工藤・奏空(CL2000955)が鍋の前で気合を入れる。自炊している程度の料理経験だが、それでもできることをやろうという心が伝わってくる。豚汁の材料を前に包丁を手にした。先ずは……と、事前に教えてもらったメモを広げる。
「鍋に火を通す前に油と豚肉を入れて炒める……水を足すのはその後?」
鍋で肉を炒めるなんて初めてだなぁ、と思いながら奏空はメモ通りに具を加えていく。昆布と水、その後に切り分けた野菜類。アクを掬いながら煮込んでいく。最後にみそを加え、沸騰しない温度で過熱していく。味を見るために、少しお椀に入れて口をつけた。
「おお、これいける!」
そして豚汁の炊き出しが始まった。渡す人に声をかけていく奏空。
「よく頑張ったね。大丈夫、妖はFiVEがなんとかするから」
「今は辛いでしょうけど、すぐに島根を元に戻すわ」
隣で環 大和(CL2000477)が頷く。島根を占領した妖。その数はFiVEを始めとした覚者の活躍により少しずつ減ってきている。けして楽な戦いではないが、それでも少しずつ前に進んでいるのだ。島根のために戦っている者の言葉は、確かな励みとなっていた。
「はい。ミートボールのトマト煮込みよ。これを食べて元気をつけてね」
パスタと一緒に用意したミートボールを子供たちに配る。冷凍の肉団子を解凍し、野菜やパスタと一緒に煮込む。簡単だが味のインパクトを含めて子供達には大人気だ。元気よく食べる子供達の頬に着いた汚れを、布巾で拭き取る大和。
「慌てて食べなくても、お替りはたくさんあるわ」
「一緒におにぎりはどうでしょうか?」
「焼きおにぎりや混ぜおにぎり、おにぎらずといった変わり種もあるよ」
柳 燐花(CL2000695)と蘇我島 恭司(CL2001015)はトレイの中に沢山のおにぎりを用意していた。定番であるおにぎり、醤油で焼いた焼きおにぎり、海苔や天かすなどが混じった混ぜおにぎり、野菜や肉などを挟んだおにぎらずといった多種多様な組み合わせだ。
なぜこのような構成になったかというと、
「選べる物が少ないと状況の厳しさを実感しちゃうからね。少しでも、皆に楽しんでもらえたらなって」
「食べるだけじゃなく楽しみも……ですか」
という恭司のセリフに頷く燐花。料理は見た目も重要だという言葉がある。色彩その者があ時に影響するわけではないが、見た目の麗しさは人の気持ちを和やかにする。事、こういった落ち込んだ空気を払拭するにはそう言ったひと手間が重要になってくる。
「では私も……主に小さい子向けの顔にぎりです」
燐花が用意したのは白い米に海苔で表情を描いた顔おにぎりだ。髪の毛はそぼろやふりかけで作り、赤い明太子で鼻や頬を染めていた。海苔で描かれた顔は笑顔が多く、避難者もその表情に吊られて笑みを浮かべる。
笑う事。それは前を向くためのエネルギー。島根の状況はまだ先が長いけど、それでも笑うことで苦難に屈しない力を与えてくれるだろう。
●
「よっしゃ。なら一曲行くで!」
ギターを手に焔陰 凛(CL2000119) が元気良く叫ぶ。弦の調律は済んである。試しとばかりに全ての弦をなぞるようにして鳴らした。心地の良い弦楽器の響きが避難所に響く。注目を集めた後に、演奏を開始した。
「お爺ちゃんお婆ちゃん達も、一緒に歌おうや」
凛がリクエストされたのは四十年前に流行ったコミカルな曲が多かった。演歌系が主かと思ったが、こういう時は『皆が知ってて合唱できる楽しい曲』が好まれるようだ。脳内で店舗を思い出しながら、ギターを奏でる凛。
「ま、ええわ。めったにでけへん経験やしな!」
「よーし、わたしも歌うか。ひま、行くよ」
「ええ、あーさん。色々用意はしてきたわ」
芦原 ちとせ(CL2001655)と向日葵 御菓子(CL2000429)は音楽で盛り上がる避難所で笑顔を浮かべて立ち上がる。元ジュニアアイドルと音楽教師。共に演奏には縁がある。持ってきた楽器を手にリズムを刻む。
「~♪」
ちとせが歌うのは、ジュニアアイドルだった頃のデビュー曲だ。彼女の活躍を知る者は、その声に黄色い声をあげる。そのままメドレーのように次の曲に移行する。ジュニアアイドルとは異なった大人のちとせの歌声が体育館に響く。
「もー。あーさんたら元気いっぱいね」
アップテンポなちとせの歌に御菓子は苦笑する。一歩出遅れた分を取り戻すように、元気よくスネアドラムを叩いた。全身に楽器を用意した御菓子が動くたびに、様々な音楽が流れだす。踊るようにリズムを取り、見た者を楽しませるライブが始まった。
「さあ、みんなで楽しみましょう!」
「次の曲は――」
音の祭典は終わらない。不安を吹き飛ばすような音楽と合唱が、島根に響いた。
●
「お待たせしましたですっ。温かいお食事になりますっ」
離宮院・さよ(CL2000870)は作られた料理を手に避難所を走り回っていた。直接料理を取りに来れない人たちに、作った料理を運ぶためである。恐怖で知らない人と接することが出来ない人も少なくない。さよの笑顔はそういった人達の心を解かしていた。
「元気になるおまじないをかけましたっ」
まだ幼く見えるさよ。頼りがいがある、問いよりは可憐さを彷彿させる姿は妖に立ち向かうイメージを与えない。むしろこうした純粋な笑顔の方が、源素よりも人を癒す力があるのだろう。彼女の笑顔を見た者は、そんな感想を抱いていた。
「こういう時は暖かいもの、甘いものなどが喜ばれると聞いたです」
菊坂 結鹿(CL2000432)は言いながらお湯を沸かしていた。その手元には様々な野菜とお茶の葉がある。炊き出しの献立と被らないように仕分けされており、結果トウモロコシとカボチャを中心としたベジタブルスープになった。
「暖かいものはこれで良し。甘い物は……と」
スープを煮込む間にポットを手にする。コーヒー豆を挽いたのちにフィルターに入れ、サーバーの上に乗せた。一度80℃のお湯で蒸らした後にしばらく置いて、再びお湯を注いでいく。豊潤な香りが鼻腔をくすぐった。
「はい。あったかいコーヒーですよ。じっくり味わってください」
コーヒーも淹れ方によって味が大きく変わる。結鹿の笑顔と共に出されたコーヒーは、避難者の心を温めていく。
「はーい。怪我した人はこっちに来てねー。絆創膏を張ってあげよう」
「瓦礫や修理はこれであらかた片付いたかな」
「みなさーん。甘い物がありますよー」
麻弓 紡(CL2000623)と如月・彩吹(CL2001525)と天野 澄香(CL2000194)の【四葩】は避難所の外で活動していた。紡が怪我人を術で癒し、彩吹が翼と持ち前の体力を活かして瓦礫を撤去したり屋根の修理を、澄香が料理の腕を生かして御菓子を作って配っていた。
「はーい。みんな、ちゅうもーく」
大きく手を振って紡が子供達を呼び寄せる。雲一つない満天の青空に向かって、手を掲げる。その瞬間小雨が降りだした。飴は太陽の光を反射して七色のアーチを生み出した。
「ふふ。では私も――」
澄香は御菓子をテーブルに置いたのちに、源素を解放する。森の中に注ぐ木漏れ日のような淡い光が、辺りを照らす。優しく自然を照らす癒しの光。それは静かに避難者達に降り注いでいた。
「よし。では私は!」
翼を広げ、彩吹が空を舞う。紡が作った虹と、澄香が生み出した光。その隙間を縫うように空を舞う。ふわり、と滑空する時もあれば力強く翼をはためかせて素早く飛ぶ。空中で繰り広げられるサーカスに、子供達は大はしゃぎになった。
「一緒に飛びたい? それなら肩に捕まって」
着地した彩吹は自分達も空を飛びたいとせがまれる。その程度ならお安い御用とばかりに一人を抱いて、一人を肩に乗せて宙に舞う。子供を落とさないようにゆっくりとした速度で空を舞う。
「待っている子達はこちらをどうぞ。ネコさんとウサギさんですよ」
空を舞う彩吹を待つ子供達に澄香は御菓子を差し出す。ネコとウサギの型番を使って焼いたパンケーキだ。チョコペンで顔を書いたり、ホイップクリームで彩ったりと澄香の御菓子作りスキルが如実に表れている。
「にゃんけーき、おいしー」
紡は子供たちに交じってそのパンケーキを頂いていた。数はたくさんあるし、一つぐらいはかまわないだろう。仕事が終わって疲れた体に当分は最高のご褒美だ。この癒しで皆が立ち直ってくれればいいのだけど、と紡は言葉なく思っていた。
【四葩】の活動はまだまだ続く。今日は一日、大変だ。
●
支援を終えた覚者達は避難所を後にする。
とはいえ、島根にはまだこういった避難所がたくさんあるのだ。FiVEの覚者達は地図を見ながら、次はどうするかを考える。
妖を倒すのは覚者の役目だ。その為の『力』がここにある。
だが人を癒すのは『力』ではない。人としての『心』なのだ。
島根の動乱はまだ終わらない。だがしかし、それに抗う人達は確かにいる。
その活動がある限り、人は妖に屈しない――
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
