水流を押しのけて……
水流を押しのけて……


●北西の小部屋の妖
 奈良県のとある遺跡群。
 その中央に、古妖「麒麟」が鎮座する遺跡がある。
 真下に自身と同じ姿をした大妖らしき存在を封じている彼は何らかの影響もあって自我を失い、荒れ狂ってしまっていた。
 先日、F.i.V.E.の覚者達がこの地の調査を行う最中に麒麟を鎮め、彼と話をしたことでようやく、この遺跡群について存在意義などが徐々に明らかになってきつつある。
 その四方にはそれぞれ、似たような構造の遺跡が確認されていた。
 遺跡の奥に妖がいるのであれば、対処をして欲しいと麒麟から依頼を受けている状況だ。
 これまでに、北の大亀遺跡、南の朱鳥遺跡を調査、それぞれ奥にいた妖、大亀と朱鳥を撃破しており、西の遺跡の白虎も先日の探索で討伐が完了している。
 現状、東の水が流れる遺跡を探索を覚者達は進めている状況だ。

 この東の遺跡を仮称『水竜遺跡』と呼称し、探索と攻略を進めるF.i.V.E.の覚者達。
 先に到着した一行はアナウンスしてくれるMIAの2人を待つが、いつまでやっても現われない。
 程なくして、F.i.V.E.のスタッフと数人の覚者に引き連れられ、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が姿を現す。
「すまんの。MIAの2人は別用で来ることができなくなったようじゃ」
 なんでも、彼女達は遺跡調査を行う学者達から、妖討伐と調査の手を貸して欲しいという依頼が絶えないらしい。
 今回、MIAの2人はスケジュール管理がうまくいっておらず、ダブルブッキングとなっていた。
 さすがに覚者と一般人の学者の依頼だと、身を守る為の手段のない後者を優先せざるを得なかったとのこと。
『本当に申し訳ない。次は救援に向かうよ』
『ごめんなんだよー』
 MIAの2人、翼人の水玉・彩矢と酉の獣憑である荒石・成生の謝罪の言葉が携帯電話越しに聞こえてくる。
 覚者達もやむなしと割り切り、このまま今回の目的を果たすことにした。
「状況確認は、うちから行うのじゃ」
 この場に訪れる覚者が初めて、もしくは久々という者がいる可能性も考慮し、遺跡の探索状況について説明を始める。
 遺跡に入る目的は、最奥にいると思われる妖の撃破。ほぼ間違いなく、水竜の姿の妖がいるだろうと見られている。
 ただ、これと戦うには、通路と最奥の部屋で起こる鉄砲水を食い止めたいところ。
 この解除の為、覚者達は4方向にある小部屋にいる妖の討伐を進めていた。
 遺跡の構造は正方形の通路、上辺と下辺の中央から垂直に通路が延び、それぞれ元々の入り口と大部屋がある。
 そして、頂点から対角線上に伸びる通路、その先にそれぞれ小部屋がある。
「今回は最後となる、北西の小部屋じゃな」
 突入は西側通路中央からロープで降り、そこから北上して北西の小部屋を目指す。
「通路には膝下くらいの高さで水が流れておって、短時間で鉄砲水が起こる場所があるようじゃな」
 北西部は比較的、遺跡の破損部が小さい。
 どこから鉄砲水が起こるかが分からぬこと、そして、戦いの最中だろうともお構いなしで水が噴き出して来ることが面倒な状況だ。
 鉄砲水は通路の壁から壁へと真横に飛び出すが、急な水の流れは通路にも及ぶ。
「水が噴き出す度に止まって、その場でやり過ごす必要が出てきてしまうのじゃ」
 ただ、通路上には、水蛇のような妖が3体ほどの群れを作って蠢いている。この対処をしつつ、鉄砲水対策とやや忙しい状況だ。
 そして、北西の小部屋の妖、『乾』。
「資料は事前に渡しておるがの。水で構成された妖で、犬の頭に猪の身体を持った敵なのじゃ」
 すでに、他3ヶ所の小部屋の妖は撃破済み。
 油断せず参加メンバー全員立ち向かえば、撃破は可能なはずだ。
「以上なのじゃ。……皆の検討を祈っておるのじゃ」
 けいの守りをこの場に駆けつけたメンバーに託し、覚者達は遺跡の中へと突入していくのである。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.乾の撃破。
2.なし
3.なし
覚者の皆様、こんにちは。なちゅいです。

東の遺跡攻略3回目です。
残る北西の小部屋へと向かい、妖の討伐を願います。

●妖(自然系)
通路はランク2弱1体とランク1が2体との戦闘を1~3回、
(小部屋との往復で遭遇の可能性があります)
小部屋でそれぞれ、ランク2強1体、ランク2弱3体と交戦します。

◎ランク2強
○【北西】乾(けん)……全長3mほどある妖です。
 頭が犬、胴体が猪を思わせる水でできた妖です。
・噛み付き……物近単・出血
・猪突猛進……物近単貫3[100・60・40%]
・水砕爆流……特全・重圧

◎ランク2弱
○水蛇……全長1.2m程度の妖です。
 同じランク2ですが、艮より格下の相手です。
・食らいつき……物近単
・飲み込み……特遠単・負荷
・のしかかり……物近単貫2[100・50%]

◎ランク1
○水塊……全長60cmほどの長い水のかたまりです。
 便宜上、水蛇と区分けして呼称します。
・噛み付き……物近単・毒
・水しぶき……特遠単

●状況
膝程度の高さの水の流れる通路では、
突入直後、確実に1度、
運が悪ければ、道中、帰りにもそれぞれ、
妖の群れに遭遇します。

また、通路には3ターンに1度、
鉄砲水を発するトラップがあります。
小部屋に至るまで1ヶ所ありますが、
発射口がどこにあるのかがわかりません。

鉄砲水のタイミングのみ流れが急になりますので、
飛行、水上歩行しながらダッシュ、
壁につかまるなど、
流されぬよう対策を練る必要があります。

なお、鉄砲水に巻き込まれた場合、
逆側の壁から通路外に押し出されるようですが、
どこに流されてしまうかは分かっていません。

●NPC
◎『MIA』……発現者女性2人組。
遺跡探索などで関連依頼に置いて助力をしております。
別の依頼の都合で、今回この場には現れません。

それでは、よろしくお願いいたします
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
3/6
公開日
2018年05月28日

■メイン参加者 3人■


●いつもの倍頑張る!
 奈良県の遺跡群。
 その東の遺跡、『水竜遺跡』と呼称する地に、F.i.V.E.の覚者達がやってくる。
「私にとっては、遺跡調査、第二弾ですね!」
 高台から、『意志への祈り』賀茂 たまき(CL2000994)は眼下に広がる荒れ果てた遺跡を見下ろす。
 その遺跡は天井が崩れ落ちており、通路の所々が外からでも露出していた。
 通路は、膝下程度の水が常に緩やかな流れを作っている。
 時折、聞こえてくるのは、壁に仕掛けより発せられる鉄砲水。その一時は水が通路を勢いよく駆け抜けていた。
 さて、今回遺跡に臨む覚者は3人と、前回の調査時よりも参加者が少ない状況。
 だからこそ、以前の倍は頑張らなければと、たまきは気合を入れる。
「私に出来る限りの力で、妖さんのお相手と、遺跡の調査を、少しでも進めていきたいと、思います!」
 意気揚々と叫ぶたまきのそばでは、淡々とした態度の大辻・想良(CL2001476)が遺跡北西部に視線を向けて。
「……小部屋の妖はこれで最後」
 すでに、3ヶ所は討伐済み。最後の1体なので、なんとしても撃破したいところ。
「水竜の遺跡、最後の小部屋。ここを制すれば、いよいよ水竜とご対面が叶う」
 遺跡調査の最終目標は、奥の大部屋にいるはずの妖と対面すること。『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)はその為の下準備が整うと主張する。
 小部屋の妖を全て倒すことで、通路だけでなく大部屋の鉄砲水もなくなる。周囲のことを考えずに妖の討伐に専念できるはずだ。
「想良さん、奏空さん、今回も宜しく御願い致します。頑張りますね」
 たまきの呼びかけに、想良が頷き、奏空も気合を入れて。
「頑張って行こうか!」
 それを見送る『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)と彼の守りに当たる覚者数名。
 奏空、想良、たまき。
 今回は、この3人で遺跡の調査へと乗り出していく。

●突入からの襲撃
 3人の覚者達は、遺跡の西側へと回りこむ。
 遺跡の西側通路中央に降り立つわけだが、遺跡内からは人間の突入に敏感な妖が彼らを狙う。
 突入に先んじて、覚醒するメンバー達。
 髪を金色に、瞳を桃色へと変色させた奏空が発した瑠璃光で全員を包み、自身は英霊の力を引き出すのを忘れない。
 また、赤い髪を黒く染めたたまきは、肩口に白い翼を広げた想良に対して防御シールドを展開していく。
 そうして事前準備を整えてから、3人はロープを伝って遺跡へと降りていく。
 通路に流れる水は緩やかに動いているが、短期間に鉄砲水が通路を洗い流すように押し寄せる。
 この対策としてまず、奏空、たまきは、水上歩行・改で水面を歩き、想良は自らの翼で水面近くを飛行する。
 そうした間に、迫ってくる妖の集団。
 水中を泳ぐ、水で構成された大小の蛇は3人の覚者目掛けて飛びかかって来るのだった。

 現われた妖は、3体。
 2体は60cm程度の長さをした水の塊。そして、1m強ある蛇1体が首をもたげて威嚇してくる。
「前衛にいきます……」
「私も前衛で攻撃していきますね」
 そいつらに対し、想良、たまきの女性コンビが並び立つように前に出る。
「今回も俺が回復をメインをするから」
 男性である奏空は、彼女達の後方支援に当たるようだ。
 向かい来る水蛇どもが飛ばす水しぶきや、直接その身で飲み込もうとしてくるのを抑える女性2人。
 彼女達に前衛を頼む状況に、奏空は些か胸を痛めてしまうが。
「2人とも心強い仲間だ! 任せたよ!」
 彼女達の力を信じ、奏空は素早く頭上に雷雲を発生させて妖へと雷を叩き落とす。
 その身を痺れさせる小型の妖から、想良もまた雷雲より雷を落とし、無力化をはかる。
 続き、たまきは全身から気を放出し、相手にプレッシャーを与えていく。
 確かに、覚者の人数は少ない状況ではあるが、それでも、丁寧に戦えば倒せぬ相手ではない。
 覚者達は相手の攻撃をやり過ごしながら攻め立てるが……、前方で突如鉄砲水が壁から放たれる。
 大量の水は、多くは開いた逆側の壁から外側へと流れ落ちていくのだが、残りは通路へと勢いよく溢れて全てを流そうとしていく。
 だが、覚者達はその対策も万全にしていた。
 奏空はそのタイミング、水上をダッシュして水の流れをやり過ごし、想良がたまきの体を抱きかかえ、僅かに水面から翼を羽ばたかせて飛び上がる。
 水蛇達も全力で泳ぎ、この場を凌ごうとしていた。
 そいつら目掛け、抱えられたたまきは1人悠然と豪腕を叩き込み、水塊を霧散させてしまう。
 その後ろにいた水蛇は水塊と合わせて態勢を整え直し、覚者達へと襲い来る。
 しかしながら、程なく奏空が叩き落とした雷に焼かれて、水塊は妖としての活動を停止してしまった。
 続き、攻め立てる覚者達。
 大きく口を開く水蛇を、たまきが正面から迎え撃って符術を操る。
 ――『龍槍円舞』。
 それは符の力によって大地との親和性を高め、土に眠る龍の槍を呼び起こす技。
「お願いします。あの妖の動きを止めてください……!」
 舞う様に迫る龍の槍は、水蛇の体を貫く。
 水蛇は周囲に水を撒き散らして暴れ狂っていたが、やがて体力が尽きてただの水となったのだった。

●最後の小部屋へ
 突入直後に襲撃してきた妖を撃破した覚者達は、そこから北上して北西の小部屋を目指す。
 移動に当たっては、奏空は水上歩行を働かせたまま。
 女性2人は、戦闘時とは逆でたまきが想良を抱える形で進む。この方が効率よく進めると判断した為だ。
 移動していく途中、数m先で再度鉄砲水が発生する。
 戦闘中にも鉄砲水が起こっていたことで、3人ともある程度発射される位置を把握していた。
 この為、一行は直接鉄砲水を浴びぬように、そして勢いに飲まれて流されぬように対処しながら先へと進む。
 そうして、3人は小部屋の前までたどり着く。
 妖との戦いは無難に対処できたが、それでも全員に多少の傷はある。
 奏空は小部屋突入前に、自分達のバイタルが低下しているのを感じ、癒力大活性に大填気とできる限り最善の状態に近づけていく。
 その上で、たまきが再び想良へと防御シールドを張り巡らせる。
 想良もまた、植物の生命力を凝縮した雫で仲間達を癒し、さらに精神力を増幅させていた。
 態勢を整え直した3人は、ゆっくりと小部屋の扉を開いて――。
 待ち受ける妖は、水路にもいた水蛇が3体。
 そして、その背後に犬の頭に猪の胴体を持つ『乾』がいる。
 事前情報によれば、犬の食らいつきに猪のような突進、それに水の力を操る難敵だ。
 相手はいずれもレベル2。しかも、数も相手のほうが多いと厳しい状況。
「今度は猪のケンちゃんか……、さっそくだけど倒させて貰うよ!」
 声を荒げる奏空。
 若い覚者達は臆することなく、妖達へと向かっていくのである。

 水の妖は声を上げることはなかったが、それでも、唸り声が聞こえてきそうな態勢で襲い掛かってくる。
 3人の覚者達は、通路での戦闘とと同じ立ち位置で戦いに臨む。
 女性2人、想良とたまきが前に立ち、身体を飲み込もうとする水蛇達と、乾の噛み付きを交互に受け止める。
 その上で、たまきは先ほどと同様に気を放ち、相手にプレッシャーを与えていく。
 想良は呼び出した雷雲から雷を叩き落とす。水蛇達が横一列に並んでいるのは覚者達にとって思うツボ。
 ただ、後方に下がっている乾までは届かない。全ての敵を纏めて攻撃できないのは歯痒いところだ。
 こちらの戦力がかなり少ない状況もあり、長期戦は免れない。想良は相手にエネミースキャンを使いつつ、妖の体力を見つめる。
 手数を使ってしまうのは惜しいが、それだけ効率的に立ち回りたい状況だ。
 奏空はここでも回復メインで立ち回るが、さすがに回復に徹するとは行かず、敵陣へと雷を浴びせかける。
 どこまで戦う事ができるか。彼らは全精力を持って妖へと立ち向かう。

●北西小部屋の妖『乾』
 戦いの最中、敵を、特に乾の姿をたまきはじっと見つめる。
 どんな動きをするのか、どんな所を守るようにして攻撃を仕掛けてくるのか。
 乾は確かにこの小部屋内を駆け回ってはいたが、常に部屋の中央を戻るような動きをしている。
 それは、何かを守っているようにも見えないだろうか。
(そういえば、仕掛けの解除に妖の討伐が必要だって……)
 たまきはそこで、そんな話を思い出す。
 これまで、遺跡の仕掛けは小部屋にあった勾玉、鏡といったアイテムが機能することで発動していた。
 最初の遺跡「大亀遺跡」は、地殻変動によって完全に通路が寸断されていた。
 遺跡の仕掛けはトラップであるゴーレムが妖と同化するような形で動いており、小部屋にあった勾玉との因果関係など考えられもしなかった。
 次の遺跡「朱鳥遺跡」では覚者達が小部屋から鏡を持ち去り、かつ妖を倒すことで徐々に遺跡内通路を包む炎が消えていった。
 なお、通路に壁から炎が噴き出すトラップが別途あったが、それは同伴のMIAが解除してくれていた経緯があるが、それはさておき。
 前回の遺跡「白虎遺跡」は儀礼剣を引き抜くことで、突風の勢いが弱まっていた。ちなみに、この地の小部屋に妖は不在だった。
 今回はアイテムがなく妖のみ存在している。丁度、今回と前回は真逆な状況だ。
 ――遺跡トラップと妖。
 これらが絡み合ったり、絡み合わなかったりしているのは遺跡環境にもよるところだが、勾玉や鏡などのアイテムと妖はほぼ同じ役割を果たしているようにも思える。
 これらが意味することは……。
 ただ、覚者達に考える暇などない。
 想良は自身や仲間達の気力低下を気遣い、増幅させた精神力を振り撒く。
 そこで、正面から水蛇が覚者達へとのしかかってくる。
 一瞬も気の抜けぬ状況が続く。
 奏空は想良が倒れないかと注視し、瑠璃光を発して回復に当たる。
 回復の手を止めると、それだけであっさり体力を持っていかれそうだ。
 そうして体力を幾分か戻した想良が攻撃の補佐を行い、たまきが纏めて敵を薙ぎ払う。
 序盤は気を発していたたまきも、水蛇が1体、また1体と倒れていくのを見て、豪腕を叩きつけて後方の乾と合わせて衝撃を与える。
「「「はぁ、はぁ……」」」
 すでに、全員が息を荒くしているが、まだ乾は余力を残して覚者達へと溢れんばかりの水流を浴びせかけてくる。
 それに耐える想良が何とか、高圧縮した空気で残る水蛇を霧散させた。
 メンバー達は気力を振り絞り、最後の1体『乾』の撃破を目指す。

 8人で戦っても、『乾』はかなりの難敵であっただろう。
 その半数以下で戦うこの状況では、ほぼジリ損になってしまうのはやむをえないこと。
 ただ、3人はそれを戦略でうまくカバーしつつ、相手の突進、噛み付きに耐えながら耐えていく。
 この遺跡の妖は列攻撃を持たない。だからこそ、前衛2人に中衛1にといった布陣を覚者は選んでいる。
 時に、後ろの奏空が想良を気遣い交替するなど、互いに気を掛けながら、戦い続けていた。
「まだ、半分くらい!」
 奏空は物理攻撃も試してみようと、日本刀「MISORA」を握りしめ、踊るように敵へと攻め入って斬撃を見舞っていく。
 ただ、自然系妖に、物理攻撃はさほど効力が高くない。
 それもあって、彼は雷獣を主として繰り出していたようだ。
 奏空のフォローもあって後方に下がる想良は、乾の噛み付き、そして、爆流による圧力から仲間達の異常を振り払おうと、深層水を振り撒いて癒しに当たる。
 小部屋に入ってから、どのくらい戦っているだろうか。
 どこまで続くとも分からぬ戦いに、膝を屈してしまいそうになる覚者達。しかしながら、命にすがることなく、ギリギリの戦いを続けて……。
「もう……少し」
 かすれそうな声で想良が呼びかけると、たまきは最後の力を振り絞る。
「頑張ると……決めたんです……!」
 御朱印帳と大護符の力で、彼女は幾度目かの竜の槍を地面より解き放つ。
 荒れ狂うその槍は乾の体を貫いて。
「…………!!」
 苦しそうに小部屋を駆け回り、暴れていた乾はようやくその身を横たえ、全身を崩していく。
 その水は小部屋の側溝へと流れ落ち、遺跡内の水と同化してしまったのだった。

●地上へと戻って……
 乾を撃破した3人は疲労困憊。
 しばし、この場で奏空が手当てに当たりながら、休憩をとることになる。
「折角ですから、この小部屋、調べてみませんか?」
 たまきの提案もあって、この小部屋の探索に当たる覚者達。
 何か見つかるといいのだがという願いを込めながら、たまきは周囲を見回す。
 元々が荒れ果てた遺跡ということもあり、新発見に関してはさほど期待できぬ状況ではあるのだが、それでも、一縷の望みを捨てきれない。
 部屋の周囲に張られていたと思われる、千切れて小さくなった布切れ。そして、瓦礫のようなものがあちらこちらに散らばっている。
「これ、何が書かれているのでしょうね……」
 たまきは布切れには何かが書かれているのに気付くが、解読できない。読むことができるメンバー、考古学者がいれば分かったかもしれないが……。
 ともあれ、それだけを回収し、覚者達は入り口へと戻ることにした。

 戻る途中にも一度、妖の群れとの交戦を行ったが、戦闘中を含めて鉄砲水が出ることはなくなった。
 妖を撃破した3人は今回の成果を実感しながらも、突入口から地上へと戻っていく。
「2人ともお疲れ様!」
「……ありがとうございます」
 奏空が女性2人を気遣ってタオルを差し出すと、想良が小声で礼を告げてそれを受け取り、濡れた身体を丁寧に拭いていく。
「奏空さん、ありがとうございます」
 同じく、受け取ったたまきは物陰で替えのワンピースを羽織ってから、魔法瓶に入れてきた温かいスープを2人に差し出す。
「冷えた身体を、これで温めてくださいね」
 それを口にしつつほっこりしながら、彼らはしばらく互いの健闘を称え合うのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

お疲れ様でした。
これで、遺跡奥の大部屋に突入する準備が整いました!

今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!!




 
ここはミラーサイトです