《島根動乱》脅威から人を守りし稲成様
《島根動乱》脅威から人を守りし稲成様


●島根県
 島根県を妖の群れが襲う。
 妖はまるで誰かに命令されているかのように統率だって動き、島根を占拠するように動き回る。人を殺すよりも、神社を襲うなどの行動を優先しているようだ。それにより人的被害は予想よりも多くはないのだが、皆無でもない。
 この非常事態に覚者組織は団結して解決に当たる。そして覚者最大組織のFiVEもまた、その解決のために戦うのであった。
 そして――

●太皷谷稲成神社(たいこだにいなりじんじゃ)
 太皷谷稲成神社。
 日本五大稲荷神社――伏見稲荷大社、笠間稲荷神社、竹駒神社、祐徳稲荷神社、そして太皷谷稲成神社――の一つで『お稲荷』を満願成就の意味を込めて『お稲成』と呼ぶ神社である。スサノオノミコトの娘であるウカノミタマノカミを稲成大神として祀っている。
 その社にたどり着くには千本の鳥居を潜ることになり、紅色のトンネルともいえる鳥居の階段はそれだけでも見る人を魅了する。
 さて稲成大神ことウカノミタマノカミは穀物神である。五穀豊潤の神様であり端的に言えば――
(ど、どどど、どーしましょう!? 妖帰ってくれないよー!)
 ――神社付近をうろつく妖を物理的に対応できる存在ではなかった。逃げてきた人たちをかくまったまでは良かったものの、一気に攻められればどうしようもない。
 神社を守るために周囲に幻覚を施し、いつでも人間が逃げてこれるように千本鳥居には妖のみを足止めする術を張った。唯一の道である千本鳥居以外から神社には入ることはできないが、妖はそこを通れないという寸法だ。
 これで大人しく妖が撤退してくれればよかったのだが。
(あわわわ。鳥居に掛けた術を力技で破壊されたら神社に雪崩れ込まれちゃう。幸い今のところはそれほど力のある妖はいないみたいだけど……ひゃああ!?)
 ウカノミタマノカミは鳥居に与えられた衝撃を術で察知し、焦りの汗を浮かべる。今まで妖が鳥居を突破しようと突撃を繰り返してきたが、それは小さなものだった。ここまで大きな衝撃を受けたのは初めてだ。
(なにあれなにあれ!? 馬鹿でかい鹿! っていうか角じゃなくて刀!? あんな突撃何度も喰らったら鳥居の神通力が……きゃうぅん!)
 鳥居に与えられた衝撃をダイレクトに受けるウカノミタマノカミ。その様子を見ていた人達は何があったかと不思議がる。妖に怯え、神社に逃げてきた人たち。そんな彼らを不安がらせまいと、ウカノミタマノカミは笑顔を浮かべて答えた。
「なんでもない。全てわらわに任せるがよい。妖の毛一つこの境内に立ち入らせはせぬ」
 胸を張って境内にいる人達に告げるウカノミタマノカミ。しかしその内心はどうしたものかと右往左往していた。

●FiVE
「――という状況みたい」
 久方 万里(nCL2000005)はウカノミタマノカミの心情含めた状況全てを集まった覚者に説明する。あー、そういうキャラか。なんとなく納得する覚者達。
「ちなみにウカノミタマノカミは神様本人じゃなく……えーと……『信仰から生まれた神社の付喪神』っていう古妖なんだって。よくわからないけど」
 万里は言われたことを思い出すように疑問符込みで説明を続けた。神というよりは神の伝承が愛されて付喪神のような形で具現化した存在だ。なので伝承通りの能力を持つが、神本人には遠く及ばないとかなんとか。
「まあそんなことはどうでもいいよね。要は鳥居に攻撃を仕掛けている妖をバシーンと倒してきて、って話。巨大な鹿なんだけど角の先端が刃のように鋭くなってるの」
 日本刀を埋めつけられた高ランク妖。それはこの島根を襲った妖の共通的な特徴だった。刃自体が妖化するケース。刃を持った死体が妖化したケース。そして妖自体に刃が埋め込まれたケース。
「妖は神社に入ろうと鳥居に攻撃を仕掛けてるの。それを止めてあげて」
 神社付近の妖で鳥居を突破できそうなのはそれだけのようだ。鹿の妖を倒してしまえば、当面の脅威は消えるだろう。
 手を振る万里に答えるように、覚者達は現場に向かった。



■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:どくどく
■成功条件
1.妖の全滅
2.千本鳥居の結界を破られない
3.なし
 どくどくです。
 パワースポット第三戦。千本鳥居は一見の価値ありです。

●敵情報
・大剣鹿(×2 ※参加者が四名以下の場合は×1)
 生物系妖。ランク3。体長三メートル(角除く)の巨大な鹿です。角だけでも一メートルはあります。
 攻撃を仕掛けられればそちらに向かって攻撃しますが、攻撃がないターンは覚者よりも鳥居破壊を優先します。逆に言えば、攻撃を止めることで攻撃を受けないターンを作れます。
 おおよそ十回『突撃』を仕掛ければ、鳥居の術を壊せるほどの強さを持っています。

 攻撃方法
 突撃 物近単 巨大な体をぶつけてきます。【ノックB】
 角刃 物近列 角を振り回し、周りにいる者を傷つけます。【出血】【二連】
 咆哮 特遠全 甲高い声で鳴き、心を乱します。【混乱】【ダメージ0】
 呪瞳 特遠単 黒い瞳で見つめ、呪いをかけます。【呪い】
 復讐  P  誰かから攻撃を受けた時、次のターンその相手に対して命中にプラス補正がつきます。

●NPC
・ウカノミタマノカミ
 宇迦之御魂神(『日本書紀』では倉稲魂命とも)。日本神話に登場する神……が祀られた神社の想いが具現化した付喪神です。見た目は巫女服を着た狐耳を持つ女性。尻尾は隠しています。
 神社全域に幻覚を施し、唯一の出入り口である千本鳥居に妖のみ封鎖する術を仕掛けました。ですがそれを破られれば惨劇待ったなしです。

●場所情報
 太皷谷稲成神社に続く千本鳥居の麓。時刻は昼。足場や広さは戦闘に支障ないものとします。
 戦闘開始時、敵前衛に『大剣鹿(×2 ※参加者が四名以下の場合は×1)』がいます。便宜上、門は敵中衛にあるものと思ってください。彼我の距離は十メートル。適切な技能などを使えば、不意打ち等は可能でしょう。
 事前付与は幾らでも構いませんが、その間も妖は鳥居に攻撃を仕掛け続けます。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
4/6
公開日
2018年05月23日

■メイン参加者 4人■



 太皷谷稲成神社に通じる千本鳥居。その入り口で暴れる鹿のような妖。
 それは鳥居に施された術を破壊しようと暴れていた。そのパワーはすさまじく、幾度となく繰り返されれば術は破壊されてしまうだろう。
「お止めなさい!」
 その妖に向けて『星唄う魔女』秋津洲 いのり(CL2000268)が制止をかける。ここを駆け登った先には避難した人達がいる。彼らに手出しはさせはしない。誰かを守る事。それこそが覚者の使命だとその立ち様が語っていた。
 いのりの声に反応するかのように、妖は覚者達に向き直る。動かぬ鳥居の術を相手するよりは、動く獲物を追う方がいい。草食動物にはありえない強い殺気が、無言で覚者達を包み込んだ。
「申し訳ありませんが、お帰り頂きます」
 妖の殺気を受けながら、さらりと『想い重ねて』柳 燐花(CL2000695)が言葉を放つ。相手はランク3の妖。少し前なら苦戦した強さだが、戦いを重ねた燐花はその殺気を受け、動じることなく受け流していた。
 とはいえ、油断していい相手でもない。単純な体躯の差もあるが、角の先に埋められた刀。島根を襲った妖に共通する特徴として、何かしらの形で刀を有している。切れ味こそ神具に劣るが、妖の力で振るわれる刃は脅威の一言だ。それを意識して神具を構える。
「刀剣を収集する妖怪、戦蘭丸……九頭竜の将。そいつが糸を引いているのか?」
 かつてFiVEと交戦した妖の名を呟きながら『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は思考する。命を賭してその妖と戦った戦友。その顔を思い出し、頭を振った。今は戦いの時だとばかりに意識を集中する。
 地面を蹴って挑発する鹿の妖を見ながら、奏空はどう攻めるかを考える。真正面から突っ込む。左右のどちらについて、撹乱する。最初の一手で戦いの流れを決める。自分の速度を最大限に生かし、仲間を守るのだ。ちらり、と意識を後ろにいる最愛の人に向ける。
「行きましょう。島根で起こっていることを止めるために」
 頷き『意志への祈り』賀茂 たまき(CL2000994)は符を手にする。島根を襲った妖事件。これにより生まれた様々な悲劇や苦難。それを収めるためにたまきは武器を取る。それは国を守る陰陽師一族の使命。そしてたまき自身の強い願い。
 ここに来るまでに様々な場所での戦いの結果を聞いた。FiVEの仲間たちの快進撃。島根に住む覚者達の奮起、人の無事、救出された人、離れ離れになった親子の再会……。一歩一歩、島根は悲劇から立ち直りつつある。だからここも――
 フシャアアアアアアアア!
 鹿とは思えない雄たけびを上げる妖。刃が埋め込まれた角を振るい、怒りを示す。当然だが、和解の余地はない。破壊したい者、守りたい者。まさに真逆の目的だ。それを示すように、覚者達は神具を構える。
 一陣の風が戦場に吹く。その風音が合図になったかのように戦いは開始された。


「行きます」
 最初に動いたのは燐花だ。二本の妖刀をそれぞれの手に握り、一気に妖に迫る。走りながら相手の姿を観察し、思考する。頭の角の角度、足の向き、視線、呼吸……様々な情報から相手の次の動きを読みより、予測する。
 接敵する一歩手前で、全身の筋肉を引き絞る燐花。バネが収縮するように力を込め、次の一歩に力を込めた。溜めた力は速度に回し、自分の身体ごと回転するように一気に駆け抜ける。回転のベクトルを刃に込め、妖を通り抜け様に斬りかかる。
「……この技も、ずいぶん体になじんできました」
「無茶するなよ。負担大きいんだから」
 燐花に負けず劣らずの速度で奏空が告げる。彼女が使った技は奏空も知っている。速度を威力に変換する技だが、その分身体の負担が大きい。連発すれば自滅する恐れもあるのだ。相手が頷いたのを確認し、奏空は妖に意識を向ける。
 神具を手にして呼吸を整える。心を静かに、だけど戦意を衰えさせず。異なる心の動きにして、同じ心境。たん、と地面を蹴って妖に迫る。イメージは一瞬。奏空の動きはそれよりも速く。風の如き三連閃が妖を刻んでいく。
「でも相手はランク3だ。少しは無茶しないと駄目かな」
「大丈夫です。私がみんなを守ります!」
 決意を胸にするたまき。みんな。それはここで戦う覚者でもあり、千本鳥居に術を施している稲成でもあり、稲成が守っている人達でもあり、そして島根に住む人達のことでもあった。たとえどれほどの脅威が待っていようとも、その決意は揺るがない。
 指で五芒星を描くたまき。木気は火気を生じ、火気は土気を生じ、土気は金気を生じ、金気は水気を生じ、水気は木気を生じる。循環する五行こそ陰陽師の世界にして理。たまきの指の動きに呼応するように大地が動き、槍となって妖を縫い留めた。
「神社への攻撃はさせません!」
「はい。いのり達が止めてみせます」
 頷き『冥王の杖』を振るういのり。第三次妖討伐抗争に参加した両親のように、誰かのために戦うことを誇りとするいのり。不幸にも両親は帰らぬ人となったが、その志と魂は娘に受け継がれていた。危険な妖を前に、退くことなく立ち向かう。
 妖の動きを見ながら杖を構えるいのり。激しく動き回る鹿の跳躍に生まれた一瞬の隙。そこを逃すことなく力を解き放つ。細く、鋭く、回転を加えたいのりの力。それは一本の槍のように妖に迫り、その身体を穿った。
「この力は救いを求める誰かの為にあるのだから」
 覚者の攻撃に傷つき、血を流す妖。
 しかしその動きは鈍ることはない。むしろ怒りで興奮していた。草食動物とは思えない強い殺意。その激情のままに角を振るい、近寄る者を切り裂いていく。
 ランク3。その強さは決して弱くはない。気を抜けば首を刎ねられるだろう。それは皆理解している。
 ゆっくりと息を吸い、吐く。戦いはまだ始まったばかりだ。


 パワーファイター。鹿の妖を表現するならその一言だ。
 突撃でバランスを崩し、頭の角で切り裂く。攻撃された相手への復讐心が高いため、前衛で戦う燐花とたまきの疲弊は激しいものとなった。
「交代するよ!」
「おねがいします」
 傷ついた前衛に変わって中衛に控えていた奏空が前に出る。覚者のチームワークがなければ戦線が崩壊していた可能性さえあった。
「やはり螺旋崩しは効果がないか」
 妖の術を封印しようと奏空はAAA由来の技を試してみたが、術を封じる効果はなかった。源素を封じる封印術では、妖の技は封印できないという事か。予想はしていたこともあり、ショックは少ない。遅れを取り戻すように神具で切り刻んでいく。
「奏空さん!」
 奏空の名を呼びながら大地の術を施すたまき。不可視の盾が奏空を包み込む。あらゆる攻撃をも受け止め、その一部を跳ね返す防御フィールド。妖の強さを考えればこれでも足りない。だができることは何でもやる。それが勝利につながるのだ。
「待っていてください、ウカノミタマノカミ様」
 千本鳥居に術を施した者の名を口にするいのり。たとえ本物の神ではないにせよ、ウカノミタマノカミが人を守ろうとしているのは事実。その誠意を壊させるわけにはいかない。癒しの霧を放ち、仲間の傷を癒す。
「長引かせれば、その分鳥居を攻撃される回数が増える恐れがあります」
 肩で息をしながら燐花が神具を構えなおす。休むことなく攻め続けた燐花は、妖からの攻撃もあって疲弊が激しい。仲間の回復で体力を戻しても激しく動いてまた疲弊する。だが動きを止めれば鳥居が攻撃されるため、手を止めるわけにはいかない。
 フシャアアアアア!
 妖の叫びと同時に角の刃が振るわれる。技術できるのではなく、力で押し切る動き。しかし妖のパワーを考慮すれば、それでも十分な殺傷力があった。
 金属が交差する音。妖の刃を奏空の刃が受け止めた。そのまま互いに睨み合い、そして同時に離れる。だが再び相手を切り刻もうと奏空は距離を詰めた。振るった刀は妖の首を裂く。だが、浅い――
 一気に突破しようと突撃する妖。地面を蹴って、自らを弾丸と化して覚者に突撃する。その突撃を止めようとたまきが符を放つ。大地の源素を受けた術符は重量を増し、槌となって妖に衝撃を叩き込む。激しいぶつかり合いが、戦場を揺らす。
 止まった妖の動きを逃すことなく燐花が迫る。妖の横合いから迫り、妖刀で妖の腹を突き立てようとする。が、妖の瞳はその動きを見逃さなかった。首を振り、角の先端にある刃で少女を両断し――その姿が霞となって消える。斬ったのは残像。斬られる瞬間に燐花はさらに加速したのだ。燐花の妖刀が妖の腹を裂く。
 痛みで咆哮をあげる妖。強い殺意が含まれた声は聞く者を震え上がらせる。理性では押さえきれない強者への恐怖。覚者達の動きが一瞬止まった。その隙を逃す妖ではない。角の刃が横なぎに振るわれ、前に出ていた燐花と奏空の命数を奪う。これでトドメとばかりに妖は再度頭を振り上げた。そのまま奏空に向かい刀を振り落とし――
 キィン、刀と刀が交差する音。動けないはずの奏空が刀を振り上げ、妖の一撃を止めたのだ。驚愕の表情こそ浮かべなかったが、予想外のことに体を震わす妖。その視界の先にはいち早く立ち直ったいのりが恐怖をはねのける術を放ち、仲間を恐慌状態から治した姿があった。
 トドメを刺すために前に突出しすぎた妖は、一旦下がろうと後ろに飛ぼうとする。だがそれより先に奏空は刀を強く振り上げ、妖の体勢を崩した。角の刀を構えなおす時間は与えない。ここが好機とばかりに起き上がりざまに斬りかかる。
「ギオアアアアア……アア……ッ!?」
 絶叫の雄叫びをあげる妖。これ以上の戦いは必要ないと、奏空は刀を収めた。
 納刀音が軽く響く。その音が消えると同時、妖は地面に倒れ伏していた。


 妖の姿が塵となって消える。それを確認してから覚者達は千本鳥居を昇り始めた。
「伏見稲荷の千本鳥居は有名ですが、こちらの千本鳥居も見事です」
 紅色のトンネルを思わせる千本鳥居。それを昇りながら燐花はほう、とため息をついた。飾り気は不要、と祖父に教えられた彼女がこういった感情を得るに至ったのはどれほどの出会いがあった事だろうか。
「むむむ。新たな客人のようじゃな」
 太皷谷稲成神社にたどり着いた覚者達を出迎えたのは、稲成ことウカノミタマノカミだ。歓迎するように近づいていき、神社に避難している他の人に聞こえないように覚者達に告げる。
「妖を退治してくれてありがとう。もう、無理かと思ったのじゃ……」
 若干涙を流していた。本当に危なかったのだろう。
「お疲れ様でした。いのりは伏見の鳥居しか知りませんが、こちらの鳥居も見事なものですわね。
 あ、お耳を触ってよろしいでしょうか?」
 いのりは涙を流すウカノミタマノカミを慰めるように頭をなでる。そのついでにもふもふした耳も触りたいなぁ、とうずうずしてきた。許可を取ってから耳を触る。
「はー。もう。なんだって妖がここまで跋扈するんじゃ」
「それなんですが……どうもヤマタノオロチさんが関与しているそうです」
「はぁ!?」
 愚痴るウカノミタマノカミにたまきがFiVEが夢見から得た情報を語る。幾人の夢見が見た天を突く巨大な蛇。パワースポットを穢すことでヤマタノオロチを呼び出そうとしている妖。
「むむぅ……。ここを襲ったのは島根の土地を穢す為か。しかしヤマタノオロチか……いや、ならんぞ。あやつが復活すれば辺り一帯の河が大氾濫じゃ」
 諸説あるがヤマタノオロチは洪水の化身とも言われている。龍などが雨風を降らせるように、自然の一部を支配している存在だ。いけにえを捧げれば大人しくはしてくれるかもしれないが、その選択肢はない。
「もしかして狙いはヤマタノオロチの体内から出現したという草薙の剣なんじゃないか?」
 奏空はヤマタノオロチの伝承を思い出しながら推測を告げる。この妖軍勢を率いている妖は、刀剣類の収集をしている。となればその狙いはヤマタノオロチの尾から見つかった草薙剣なのではなかろうか。
「……いや、草薙剣はヤマトタケルノミコトが持ち帰っている。仮にヤマタノオロチを復活させたとしても、もうその尾には剣はない」
 奏空の推理に頭を振るウカノミタマノカミ。草薙剣を持ち去られた後のヤマタノオロチを復活させても、そこに草薙剣はない。
「となると……どういうことだ?」
 妖が古妖を復活させたい理由が思いつかない。互いの仲を考えれば手を取り合うわけがないし、神話級の古妖を御せるとは思えない。
 まだピースが足りない。戦蘭丸と呼ばれる妖のピースが。

 怪我を癒した後に、覚者達は太皷谷稲成神社を去る。鹿の妖を廃したことでこの神社を攻めるリスクが妖に伝わったのか、鳥居を攻撃しようとする妖はいなくなったという。
 だがそれも一時しのぎ。島根の動乱を収めない事には、安寧は訪れない。それは覚者達も理解している。
 次の闘いに向けて体を休めるため、覚者達は帰路につくのであった。


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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