流れる水に襲い来る水
●北東の小部屋の妖を倒せ
奈良県のとある遺跡群。
その中央に、古妖「麒麟」が鎮座する遺跡がある。
真下に自身と同じ姿をした大妖らしき存在を封じている彼は何らかの影響もあって自我を失い、荒れ狂ってしまっていた。
先日、F.i.V.E.の覚者達がこの地の調査を行う最中に麒麟を鎮め、彼と話をしたことでようやく、この遺跡群についてその存在意義などが徐々に明らかになってきつつある。
その四方にはそれぞれ、似たような構造の遺跡が確認されていた。
遺跡の奥に妖がいるのであれば、対処をして欲しいと麒麟から依頼を受けている状況だ。
現在、北の大亀遺跡、南の朱鳥遺跡を調査、それぞれ奥にいた妖、大亀と朱鳥を撃破しており、西の遺跡の白虎も先日の探索で討伐が完了している。
現状、未探索は東の遺跡のみ。
覚者達は水が流れるという遺跡へと向かう。
この東の遺跡を、仮称『水竜遺跡』と呼称し、探索と攻略を進める覚者達。
先に訪れていたMIAの2人、翼人の水玉・彩矢と酉の獣憑である荒石・成生が彼らの元へとやってくる。
「来たね。待ってたよ」
「今回もよろしくー」
彼女達は一足早く遺跡を訪れ、下見を進めていたのだ。
初めての者も常連の者も挨拶をしてから、探索状況の確認を行う。
「遺跡構造は東西南北4つの遺跡全て、損壊を除けばほぼ同じ構造をしているよ」
正方形の通路、上辺と下辺の中央から垂直に通路が延び、それぞれ元々の入り口と大部屋がある。
そして、頂点から対角線上に伸びる通路、その先にそれぞれ小部屋がある。
「通路には妖もいるしー、鉄砲水のトラップもあるから小部屋の仕掛けを解除って話になったんだよねー」
それぞれの小部屋には、遺跡の力を高める為と思われる勾玉、鏡といったアイテムが納められていたらしいが、どうやらこの遺跡に限ってはすでに盗掘された後とのこと。
「代わりに、なぜか妖がいるんだね。面倒ったらありゃしない」
これらがいると、通路や奥の大部屋にある鉄砲水のトラップが発動し続けるようだ。
その解除の為、前回は4つの小部屋のうち、南東、南西の妖を討伐している。
前回は通路のトラップ、妖との遭遇を避けるべく、小部屋の真上からロープで降りることができた。
しかし、これから臨む北側はさほど遺跡が損壊しておらず、通路を歩かねば小部屋にたどり着くことができない。
メンバー達は遺跡東側通路中央に降り立ち、膝くらいの高さの水が緩やかに流れる通路を歩いて、まずは北東の小部屋を目指す。
そうなれば、今回はトラップ、妖と向き合わねばならない。この為、北側同時2ヶ所の攻略は断念せざるをえないようだ。
「でもねー、どこから水がでるのか丸見えなんだよー」
元はどこから出るのか分からないトラップだったのだろうが、壁が崩れて噴出口が露出しており、鉄砲水がどこから出るのかは一目瞭然。
後はタイミングを図って、その場を通り過ぎればよいだろう。
しかしながら、通路には水が長く伸びたような妖が出現する。戦いの中で鉄砲水に巻き込まれないよう、注意が必要だろう。
そして、小部屋の妖『艮』も手強い相手。
すでに、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が夢見の力で敵の情報を視てくれているので、作戦立案に生かしていきたい。
「それじゃ、健闘を祈っているよ」
「頑張ってねー」
お互いにと覚者達もMIAの2人を気遣いつつ、妖討伐へと乗り出すのだった。
奈良県のとある遺跡群。
その中央に、古妖「麒麟」が鎮座する遺跡がある。
真下に自身と同じ姿をした大妖らしき存在を封じている彼は何らかの影響もあって自我を失い、荒れ狂ってしまっていた。
先日、F.i.V.E.の覚者達がこの地の調査を行う最中に麒麟を鎮め、彼と話をしたことでようやく、この遺跡群についてその存在意義などが徐々に明らかになってきつつある。
その四方にはそれぞれ、似たような構造の遺跡が確認されていた。
遺跡の奥に妖がいるのであれば、対処をして欲しいと麒麟から依頼を受けている状況だ。
現在、北の大亀遺跡、南の朱鳥遺跡を調査、それぞれ奥にいた妖、大亀と朱鳥を撃破しており、西の遺跡の白虎も先日の探索で討伐が完了している。
現状、未探索は東の遺跡のみ。
覚者達は水が流れるという遺跡へと向かう。
この東の遺跡を、仮称『水竜遺跡』と呼称し、探索と攻略を進める覚者達。
先に訪れていたMIAの2人、翼人の水玉・彩矢と酉の獣憑である荒石・成生が彼らの元へとやってくる。
「来たね。待ってたよ」
「今回もよろしくー」
彼女達は一足早く遺跡を訪れ、下見を進めていたのだ。
初めての者も常連の者も挨拶をしてから、探索状況の確認を行う。
「遺跡構造は東西南北4つの遺跡全て、損壊を除けばほぼ同じ構造をしているよ」
正方形の通路、上辺と下辺の中央から垂直に通路が延び、それぞれ元々の入り口と大部屋がある。
そして、頂点から対角線上に伸びる通路、その先にそれぞれ小部屋がある。
「通路には妖もいるしー、鉄砲水のトラップもあるから小部屋の仕掛けを解除って話になったんだよねー」
それぞれの小部屋には、遺跡の力を高める為と思われる勾玉、鏡といったアイテムが納められていたらしいが、どうやらこの遺跡に限ってはすでに盗掘された後とのこと。
「代わりに、なぜか妖がいるんだね。面倒ったらありゃしない」
これらがいると、通路や奥の大部屋にある鉄砲水のトラップが発動し続けるようだ。
その解除の為、前回は4つの小部屋のうち、南東、南西の妖を討伐している。
前回は通路のトラップ、妖との遭遇を避けるべく、小部屋の真上からロープで降りることができた。
しかし、これから臨む北側はさほど遺跡が損壊しておらず、通路を歩かねば小部屋にたどり着くことができない。
メンバー達は遺跡東側通路中央に降り立ち、膝くらいの高さの水が緩やかに流れる通路を歩いて、まずは北東の小部屋を目指す。
そうなれば、今回はトラップ、妖と向き合わねばならない。この為、北側同時2ヶ所の攻略は断念せざるをえないようだ。
「でもねー、どこから水がでるのか丸見えなんだよー」
元はどこから出るのか分からないトラップだったのだろうが、壁が崩れて噴出口が露出しており、鉄砲水がどこから出るのかは一目瞭然。
後はタイミングを図って、その場を通り過ぎればよいだろう。
しかしながら、通路には水が長く伸びたような妖が出現する。戦いの中で鉄砲水に巻き込まれないよう、注意が必要だろう。
そして、小部屋の妖『艮』も手強い相手。
すでに、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が夢見の力で敵の情報を視てくれているので、作戦立案に生かしていきたい。
「それじゃ、健闘を祈っているよ」
「頑張ってねー」
お互いにと覚者達もMIAの2人を気遣いつつ、妖討伐へと乗り出すのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.艮の撃破
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
東の遺跡攻略2回目です。
北2ヶ所の同時攻略を試みた覚者達でしたが、
どうやらそう簡単にはいかないようです。
●妖(自然系)
通路はランク2弱1体とランク1が2体との戦闘を1~3回、
(小部屋との往復で遭遇の可能性があります)
小部屋でそれぞれ、ランク2強1体、ランク2弱3体と交戦します。
◎ランク2強
全長3mほどある妖です。
○【北東】艮(ごん)
頭が牛、胴体が虎を思わせる水でできた妖です。
・突進……物近貫2[100・50%]
・猛虎乱舞……物近列・弱体
・揮発油……特遠列・火傷
◎ランク2弱
○水蛇……全長1.2m程度の妖です。
同じランク2ですが、艮より格下の相手です。
・食らいつき……物近単
・飲み込み……特遠単・負荷
・のしかかり……物近単2[100・50%]
◎ランク1
○水塊……全長60cmほどの長い水のかたまりです。
便宜上、水蛇と区分けして呼称します。
・噛み付き……物近単・毒
・水しぶき……特遠単
●状況
膝程度の高さの水の流れる通路では、
突入直後、確実に1度、
運が悪ければ、道中、帰りにもそれぞれ、
妖の群れに遭遇します。
また、通路には3ターンに1度、
鉄砲水を発するトラップがあります。
小部屋に至るまで2ヶ所ありますが、
発射口が露出していて発見が容易です。
なお、鉄砲水に巻き込まれた場合、
逆側の壁から通路外に押し出されるようですが、
どこに流されてしまうかは分かっていません。
◎『MIA』……発現者女性2人組。
名前は彼女達の苗字、頭文字から。
両者共にかなりの力を持つようです。
今回は、遺跡全域に現れるランク1~2の水蛇の対応の為、
覚者達とは別行動を取ります。
○水玉・彩矢(みずたま・あや)翼×水
飛行、物質透過をセット済み。
ぐいぐい引っ張るタイプのちょっと露出高めの女性。
戦闘では回復支援を行いつつ、弓矢、波動弾を放ちます。
○荒石・成生(あらいし・なるき)獣(酉)×土
面接着、守護空間をセット済み。
相棒の彩矢に振り回されがちな気弱な性格で、露出が小さな服を着た女性。
前に立って直接拳で殴りかかり、防御態勢を取ります。
それでは、よろしくお願いいたします
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
5/6
5/6
公開日
2018年04月20日
2018年04月20日
■メイン参加者 5人■

●遺跡を俯瞰しつつ探索準備
F.i.V.E.の覚者達がやってきたのは、奈良県の遺跡群。
そのうち、東の遺跡の前へと彼らは足を運ぶ。
「今回、初めて遺跡の調査に参加する事にしました。皆さん、宜しくお願い致しますね」
初めて遺跡調査、及び妖討伐の依頼に参加した『意志への祈り』賀茂 たまき(CL2000994) はおかっぱの髪を揺らし、笑顔で参加メンバー達へと挨拶する。
「来たね。待ってたよ」
「今回もよろしくー」
MIAの2人、翼人の水玉・彩矢と酉の獣憑である荒石・成生が覚者達を出迎える。
彼女達の説明を受ける中、覚者達は調査に対して気合を入れていく。
「いよいよ奥に入るんだな!」
今回のチーム最年少、『黄金の竜騎士ニーベルレオン』成瀬 翔(CL2000063)は意気揚々と語る。
前回までは、比較的楽に突入できる南側。そして、今回は北側の探索となるのだが……。
「今度はトラップ有りの部分か……」
『緑眼の黒騎士ギルフェイト』工藤・奏空(CL2000955)が腕組みしながらしばし唸りこむ。
その視線の先には荒れ果てた遺跡があり、膝下程度の水が緩やかに流れているのが、高台となるこの場所からでも確認できる。
そして、覚者達の耳にも時折、水の噴き出す音が聞こえてくる。これが事前の話にもあった鉄砲水だろう。
奏空は最後まで、そのトラップの対策についてあれこれと考えていたようだ。
「さて、まだ腕は訛ったままだが……、勘を取り戻す為にも頑張らねばな」
今回最年長、やや無愛想な印象も抱かせる『雷麒麟』天明 両慈(CL2000603)もまた、その通路を見下ろす。
所々に、通路には水蛇といった容姿の妖が蠢いている。小部屋に向かうにはこれらとの戦いは避けられない。
また、小部屋にはかなりの力を持つ妖が遺跡のトラップを機能させる柱となっている。この妖を倒すことが今回の目的だ。
「……次の小部屋は北東ですね」
「いっぺんに二つ攻略できねーのはめんどくさいけど、トラップがあるんじゃしょうがねーな」
白髪の少女、大辻・想良(CL2001476) が控えめに状況確認すると、翔がやや難色を示しつつ、同意を示していたようだ。
「工藤、今回も宜しく頼む」
「はい、よろしくお願いしま……?」
改めて、両慈は奏空へと挨拶すると、彼はなぜか笑ってしまって。
「……いや、すまない。お前とも付き合いがかなり長いなと思って、つい笑みが零れた」
今回は両慈にとって付き合い長いメンバーが多く、特に奏空には親しさを覚えている。
見知った顔ばかりでかなり話しやすい場での探索となっており、リラックスしてしまうのだろう。
「気が緩んでいるな、引き締めよう」
「いい形で次に繋げる為にも、頑張るぜー!」
翔が場を盛り上げると、たまきも微笑んで見せて。
「皆さんをお守りするのが、私の役目です。私なりに、頑張りますね……!」
「はぐれないように手を繋いだ方がよくね? 特に奏空とたまきさん!」
翔が茶化すと、2人の顔が真っ赤になるのにメンバー達から笑いが起きる。
「それじゃ、こっちも通路の妖を倒しにいくよ」
「そっちも頑張ってねー」
「水玉さんと荒石さんも、気をつけて……」
先に正面から遺跡へと下りていくMIAの2人を気遣い、想良が声をかけて送り出すと、2人は手を振って応えてくれた。
そうして彼女達を見送った後、覚者達もまた東側から遺跡を回り込むようにして突入を試みるのである。
●鉄砲水に水蛇の妖
ロープを伝い、遺跡の東側通路の中央へと降りていく5人の覚者達。
敵がすぐに現れるとの話もあった為、メンバー達は予め覚醒し、予めスキルで自分達を強化してから探索に臨む。
茶色の髪を黒く染めたたまきは真下を見下ろし、感慨深げに呟く。
「こういった場所へ足を踏み入れると、昔の方は、どういった思想で、この遺跡を作っていたのかと、想いを馳せる物がありますね……」
どれくらい昔に、この遺跡は役目を果たしていたのか。どういった人々がこの遺跡で何をしてきたのか。
そういったことを、この遺跡群においても考古学者達が調査をしており、MIAがその手助けを行っている。
何かかしら解明できることを、メンバー達は切に願いつつ遺跡へと降り立つ。
そこで、髪を金色に染めた奏空が改めて、懸念していたトラップについて考える。
「『30秒毎に水鉄砲って、鬼ですか!』って悩んで、どう対策するか考えたけど……」
結果、奏空が思い至った対策は……。
「水上歩行改! これがあれば、水鉄砲が来てもへっちゃら!」
膝上くらいの高さの水上に、彼は着地してみせる。
同じく、たまき、翔もまた【水上歩行・改】を活性化しており、水の上で存分に動き回る事ができるようにしていた。
ただ、こちらのスキルを持たぬ想良と両慈。
翼人である想良は自らの白い翼で飛行して対処するのだが、両慈には代替の対処手段はない。
「すまないが、よろしく頼む」
髪を銀色へと変色させた両慈は鉄砲水の発生の度、想良に抱えてもらうよう依頼していた。
これで、1人だけ水に流されてはぐれる状況だけは防げそうだ。
「水浸しになって、服が濡れたら透けちゃって大変! ……みたいな事は全然考えてなかったよ! うん!」
奏空は動向する女性2人を見つつ、あたふたしながら自分からそんな本音を漏らす。
「服が濡れないよう、気をつけないとですね」
(そこまで、薄着ではありませんが……)
たまき、想良は少し戸惑いを見せていたが、ここは妖の巣食う遺跡内。敵は目ざとく、覚者を見つけて接近してくる。
それは、水蛇を思わせる姿の妖。
2体の小型と共にやや大きな1体が鎌首をもたげ、水の流れに逆らうようにしてこちらに近づく。
「下流から来るぞ」
両慈が紫の瞳でしっかりとそれらを発見して仲間達へと伝えると、皆討伐へと当たり始める。
相手は水の塊、つまりは自然系の妖。
物理攻撃の効果が薄い相手の為、メンバーは特殊攻撃主体で攻めていく。
奏空は予め引き出した英霊の力で雷雲を呼び起こし、敵陣へと雷を叩き落とす。
「オレはとにかく、ガンガン攻める係だな!」
大人の姿となっていた翔も前に出て、同じく相手を雷獣で薙ぎ払う。
「なるべく早く妖やっつけて、鉄砲水に備えないとだしな!」
こちらへと噛み付き、飲みこようとしてくる敵へ、彼はさらにスキルを発していく。
とはいえ、そう手早く相手を片付けるのは難しい。
程なく通路の奥で、右手側の壁の亀裂からおびただしい量の水が噴射された。
その多くは逆側の壁の隙間へと飲み込まれるのだが、通路にも勢いよく水が流れ出す。
噴出口の前に立っているならともかく、通路に立っていても壁にしがみつくなどすれば堪えられそうな水流ではあるが……。
「うぉぉぉぉぉぉーーーーー!!」
叫ぶ翔は、奏空、たまきと共に水上を走り、その場から流されぬよう努める。
さすがの妖達もこのタイミングでは何もできず、流されぬよう対処するだけで手いっぱいだったらしい。
ただ、このタイミングで唯一手が空いた形となったのは、想良に抱えられた両慈だ。
「……俺はこうやって抱えられる事が多いな……。何故だ……」
この状況に戸惑う両慈だが、彼のみが唯一手隙であり、絶好の攻撃チャンスをもらう形となる。
陣形が崩れた敵を雷獣でまとめて狙うのは難しい。そう判断した両慈は天行の一つ、雷の力を自在に操り、龍を象る。
その口から発せられる光線は頭上から妖どもへと降り注ぎ、弱い水の塊を霧散させていく。
水蛇は怯まず襲いかかろうとするものの、覚者達の勢いが勝る。
皆を守ると意気込むたまきが『御朱印帳』を広げていき、それに込められた力を解き放って相手を強く威圧していく。
仲間達の攻撃が集まる中、想良が高圧縮させた空気を発射して水蛇の首を飛ばす。
胴体だけとなった妖は水に溶けるようにして、この場から消えて行ったのだった。
妖の群れを討伐した覚者一行。
先にたまきが土の心を使い、遺跡の様子を確認する。
「……事前に聞いたとおりの構造ですね」
ある程度彼女が把握したところで、メンバーは北に向かって歩き出す。
すぐに、一行は鉄砲水が噴き出す場所を確認して。
「目に見える罠と目に見え辛い敵。本来なら逆だが、これもかなり面倒だな……」
直接鉄砲水によって通路外に押し出されると、どこへ向かうのだろうか。それはおいおい、調査で明らかになることだろう。
ともあれ、またすぐ鉄砲水が噴き出すこともあり、メンバー達は全力移動で通路を駆け抜ける。
幾度か襲い来る鉄砲水による水の流れをやり過ごし、メンバー達は分かれ道を右に折れてさらに進む。
外からでも感じられる妖の気配。
両慈は仲間達へと潤しの雨を降らせ、さらに奏空が自らの精神力を仲間に分け与えていく。
できる限り万全の状態にしてから、メンバー達は小部屋の扉を開くのである。
●北東小部屋の妖『艮(ゴン)』
小部屋の中、中央には1体の妖が鎮座していた。
そいつの体は水で構成されてはいたが、姿は牛のような頭と虎のような身体を持っている。
つまりは丑寅……『艮』というわけだ。
「……本当に牛と虎なんですね……」
その姿をまじまじと見つめる想良。
奏空もまた気合を入れて、構えを取って。
「さって、ゴンちゃんだね!」
すぐさま、艮を守るように、通路でも現われた大きい水蛇が3体も現れる。
奏空がすぐさま高密度の霧を放って相手を牽制していくと、想良も通路と同様に呼び出した雷雲から雷を艮目掛けて叩き落とす。
「痺れてくれたら、助かるのですが……」
ただ、相手もかなりの力を持つようで、簡単に痺れてはくれない。
「ムオオオオオォォゥゥ!!」
牛のように嘶いた敵は、一直線に突進してきた。
それを抑えるのは、前に立つたまきだ。
彼女は術式防御の型をとり、相手の特殊攻撃を反射軽減させる符の盾を展開する。
「よし、前に出るぜ!」
群がってくる水蛇に対して翔が前に出て、相手の飲み込み、のしかかりを受ける。
その反撃として彼は後ろの艮と纏めて波動弾で貫通し、相手を巻き込むように殲滅をはかっていく。
艮を直接叩きたいところではあるが、前に立ちはだかる水蛇がかなり邪魔なのだ。
「早くこいつらを片付けたいな!」
翔はスキルを行使し、雷を相手に叩き落とす。
そして、後方からも両慈が相手に雷を浴びせかけ、水蛇を纏めて薙ぎ払う。
ぶつかる覚者と水の妖。
水を避けてここまで来た覚者達ではあったが、その身を徐々に濡らしながらも妖の殲滅に力を入れていくのである。
水蛇は通路と同じく、丁寧に対処すれば問題ない相手。
だが、水蛇はこちらの体を飲み込むことで威圧し、体力を大きく削いでくる。
さらに、荒ぶる水の妖、艮は虎のように部屋を駆け回って暴れて覚者達へと飛び掛り、鋭い爪で薙ぎ払って猛攻撃を仕掛けていた。
それらは、メンバーの体を大きく弱らせてしまう。
特に、前に立つたまきや翔が攻撃にさらされ、体力も合わせて削られて疲弊することとなる。
その体力の回復には奏空がメインとなって動き、仲間の気の流れを大きく活性させ、体力の回復に努めていた。
後方に立つ想良、両慈も攻撃の合間に回復の補佐へと当たっていく。
大気中の浄化物質を凝縮して仲間に振り撒く想良は、時折エネミースキャンで相手の体力をチェックする。
「まだ、体力を多く残しているようですね……」
その艮は直接暴れる他にも、油を放って攻撃してくることがあった。
揮発性のある油は空中で大きく燃え上がり、覚者達へと襲い掛かっていく。
「誰にも、怪我を負って欲しくはありませんから……!」
飛んでくる油の前へと、たまきが身を張る。
彼女は燃え上がる油に身を焦がされながらも、展開する盾でしっかりと反射して燃える油を艮自身にも浴びせかけていた。
その間にも、覚者達は水蛇へと攻撃を続けていて。
両慈の落とす雷が水蛇1体を霧散させ、続く翔の雷がさらに1体の水蛇の体を崩して水蒸気のようにして消し去ってしまう。
さらに、たまきが気を放出して残る水蛇を消し飛ばせば、残るは艮のみとなる。
「ムオオオオオォォゥゥ!!」
自らに攻撃してくる覚者に煩わしさを覚えていたらしく、艮は身体から蒸気のようなものを発しながら突進してくる。
抑える翔へと奏空は癒しの力を活性化させ、回復支援を行う。
ここで負けるわけには行かないと、翔も波動弾を打ち続けて相手の体力を削る。
「……もう少しです」
敵の体力を視ていた想良は雷を落としつつ、仲間達にそう伝えた。
後は、畳み掛けるのみ。
書物を手にする両慈が雷を叩き込み、翔の波動弾が相手の体を貫通する。
「ウ、ウモゥゥ……」
揮発油を発して飛ばしてきた艮だが、それが最後の一足掻き。
たまきはそれを符の盾で一部反射しつつ、放出した気を浴びせかけた。
「これで、終わりです……!」
ついに、身体を維持できなくなった艮は溶ける様に全身を崩す。
その水は部屋の周囲の側溝に流れ落ち、遺跡に流れる水と同化していったのだった。
●一仕事終えて
妖を討伐して、一息つく覚者達。
この場もまた、両慈や奏空が仲間の傷を気遣って治療に当たる。
「トラップは止められるんですよね……?」
その最中、想良がそんな確認をしたものの、外からはまだ鉄砲水が噴き出す音が聞こえる。
ただ、水の勢いは3ヶ所の小部屋の妖が討伐されていることもあってかなり弱まってはいるが、依然噴出していることに変わりはなさそうだ。
「部屋の捜索は、一応しますか……?」
想良はもう1つ仲間達に問うと、奏空がすでに盗掘済みと把握をしながらも、超直感を働かせる。
とはいえ、やはり金目の物がなくなっていること、他遺跡以上に傷みが激しい遺跡であることもあって、めぼしい発見は得られずじまいだった。
さらに1戦、通路で鉄砲水をやり過ごしながら妖との戦いをこなしたメンバー達は、東通路中央から高台へと登って遺跡から脱出する。
そして、最初の地点に戻ると、奏空が皆に用意していたタオルを差し出す。
暖かくなってきたとはいえ、やはり水は冷たい。仲間の身体が冷えないようにと彼は配慮していたのだ。
そして、もう1人、メンバー達を気遣うたまきがバスケットを差し出す。
「お疲れ様です。お腹すいてませんか?」
その中には、彼女の握った美味しそうなおむすびがぎっしりと詰められていた。
早速、それを手に取る覚者達。翔はそれを口にしながら、残る小部屋があと1つだと叫んで。
「もうちょっとで竜に会えるな! 頑張るぞーー!」
そんな翔の叫びに戻ってきたMIAも苦笑しつつ、礼を言いながらタオルとおむすびを合わせて手に取るのだった。
F.i.V.E.の覚者達がやってきたのは、奈良県の遺跡群。
そのうち、東の遺跡の前へと彼らは足を運ぶ。
「今回、初めて遺跡の調査に参加する事にしました。皆さん、宜しくお願い致しますね」
初めて遺跡調査、及び妖討伐の依頼に参加した『意志への祈り』賀茂 たまき(CL2000994) はおかっぱの髪を揺らし、笑顔で参加メンバー達へと挨拶する。
「来たね。待ってたよ」
「今回もよろしくー」
MIAの2人、翼人の水玉・彩矢と酉の獣憑である荒石・成生が覚者達を出迎える。
彼女達の説明を受ける中、覚者達は調査に対して気合を入れていく。
「いよいよ奥に入るんだな!」
今回のチーム最年少、『黄金の竜騎士ニーベルレオン』成瀬 翔(CL2000063)は意気揚々と語る。
前回までは、比較的楽に突入できる南側。そして、今回は北側の探索となるのだが……。
「今度はトラップ有りの部分か……」
『緑眼の黒騎士ギルフェイト』工藤・奏空(CL2000955)が腕組みしながらしばし唸りこむ。
その視線の先には荒れ果てた遺跡があり、膝下程度の水が緩やかに流れているのが、高台となるこの場所からでも確認できる。
そして、覚者達の耳にも時折、水の噴き出す音が聞こえてくる。これが事前の話にもあった鉄砲水だろう。
奏空は最後まで、そのトラップの対策についてあれこれと考えていたようだ。
「さて、まだ腕は訛ったままだが……、勘を取り戻す為にも頑張らねばな」
今回最年長、やや無愛想な印象も抱かせる『雷麒麟』天明 両慈(CL2000603)もまた、その通路を見下ろす。
所々に、通路には水蛇といった容姿の妖が蠢いている。小部屋に向かうにはこれらとの戦いは避けられない。
また、小部屋にはかなりの力を持つ妖が遺跡のトラップを機能させる柱となっている。この妖を倒すことが今回の目的だ。
「……次の小部屋は北東ですね」
「いっぺんに二つ攻略できねーのはめんどくさいけど、トラップがあるんじゃしょうがねーな」
白髪の少女、大辻・想良(CL2001476) が控えめに状況確認すると、翔がやや難色を示しつつ、同意を示していたようだ。
「工藤、今回も宜しく頼む」
「はい、よろしくお願いしま……?」
改めて、両慈は奏空へと挨拶すると、彼はなぜか笑ってしまって。
「……いや、すまない。お前とも付き合いがかなり長いなと思って、つい笑みが零れた」
今回は両慈にとって付き合い長いメンバーが多く、特に奏空には親しさを覚えている。
見知った顔ばかりでかなり話しやすい場での探索となっており、リラックスしてしまうのだろう。
「気が緩んでいるな、引き締めよう」
「いい形で次に繋げる為にも、頑張るぜー!」
翔が場を盛り上げると、たまきも微笑んで見せて。
「皆さんをお守りするのが、私の役目です。私なりに、頑張りますね……!」
「はぐれないように手を繋いだ方がよくね? 特に奏空とたまきさん!」
翔が茶化すと、2人の顔が真っ赤になるのにメンバー達から笑いが起きる。
「それじゃ、こっちも通路の妖を倒しにいくよ」
「そっちも頑張ってねー」
「水玉さんと荒石さんも、気をつけて……」
先に正面から遺跡へと下りていくMIAの2人を気遣い、想良が声をかけて送り出すと、2人は手を振って応えてくれた。
そうして彼女達を見送った後、覚者達もまた東側から遺跡を回り込むようにして突入を試みるのである。
●鉄砲水に水蛇の妖
ロープを伝い、遺跡の東側通路の中央へと降りていく5人の覚者達。
敵がすぐに現れるとの話もあった為、メンバー達は予め覚醒し、予めスキルで自分達を強化してから探索に臨む。
茶色の髪を黒く染めたたまきは真下を見下ろし、感慨深げに呟く。
「こういった場所へ足を踏み入れると、昔の方は、どういった思想で、この遺跡を作っていたのかと、想いを馳せる物がありますね……」
どれくらい昔に、この遺跡は役目を果たしていたのか。どういった人々がこの遺跡で何をしてきたのか。
そういったことを、この遺跡群においても考古学者達が調査をしており、MIAがその手助けを行っている。
何かかしら解明できることを、メンバー達は切に願いつつ遺跡へと降り立つ。
そこで、髪を金色に染めた奏空が改めて、懸念していたトラップについて考える。
「『30秒毎に水鉄砲って、鬼ですか!』って悩んで、どう対策するか考えたけど……」
結果、奏空が思い至った対策は……。
「水上歩行改! これがあれば、水鉄砲が来てもへっちゃら!」
膝上くらいの高さの水上に、彼は着地してみせる。
同じく、たまき、翔もまた【水上歩行・改】を活性化しており、水の上で存分に動き回る事ができるようにしていた。
ただ、こちらのスキルを持たぬ想良と両慈。
翼人である想良は自らの白い翼で飛行して対処するのだが、両慈には代替の対処手段はない。
「すまないが、よろしく頼む」
髪を銀色へと変色させた両慈は鉄砲水の発生の度、想良に抱えてもらうよう依頼していた。
これで、1人だけ水に流されてはぐれる状況だけは防げそうだ。
「水浸しになって、服が濡れたら透けちゃって大変! ……みたいな事は全然考えてなかったよ! うん!」
奏空は動向する女性2人を見つつ、あたふたしながら自分からそんな本音を漏らす。
「服が濡れないよう、気をつけないとですね」
(そこまで、薄着ではありませんが……)
たまき、想良は少し戸惑いを見せていたが、ここは妖の巣食う遺跡内。敵は目ざとく、覚者を見つけて接近してくる。
それは、水蛇を思わせる姿の妖。
2体の小型と共にやや大きな1体が鎌首をもたげ、水の流れに逆らうようにしてこちらに近づく。
「下流から来るぞ」
両慈が紫の瞳でしっかりとそれらを発見して仲間達へと伝えると、皆討伐へと当たり始める。
相手は水の塊、つまりは自然系の妖。
物理攻撃の効果が薄い相手の為、メンバーは特殊攻撃主体で攻めていく。
奏空は予め引き出した英霊の力で雷雲を呼び起こし、敵陣へと雷を叩き落とす。
「オレはとにかく、ガンガン攻める係だな!」
大人の姿となっていた翔も前に出て、同じく相手を雷獣で薙ぎ払う。
「なるべく早く妖やっつけて、鉄砲水に備えないとだしな!」
こちらへと噛み付き、飲みこようとしてくる敵へ、彼はさらにスキルを発していく。
とはいえ、そう手早く相手を片付けるのは難しい。
程なく通路の奥で、右手側の壁の亀裂からおびただしい量の水が噴射された。
その多くは逆側の壁の隙間へと飲み込まれるのだが、通路にも勢いよく水が流れ出す。
噴出口の前に立っているならともかく、通路に立っていても壁にしがみつくなどすれば堪えられそうな水流ではあるが……。
「うぉぉぉぉぉぉーーーーー!!」
叫ぶ翔は、奏空、たまきと共に水上を走り、その場から流されぬよう努める。
さすがの妖達もこのタイミングでは何もできず、流されぬよう対処するだけで手いっぱいだったらしい。
ただ、このタイミングで唯一手が空いた形となったのは、想良に抱えられた両慈だ。
「……俺はこうやって抱えられる事が多いな……。何故だ……」
この状況に戸惑う両慈だが、彼のみが唯一手隙であり、絶好の攻撃チャンスをもらう形となる。
陣形が崩れた敵を雷獣でまとめて狙うのは難しい。そう判断した両慈は天行の一つ、雷の力を自在に操り、龍を象る。
その口から発せられる光線は頭上から妖どもへと降り注ぎ、弱い水の塊を霧散させていく。
水蛇は怯まず襲いかかろうとするものの、覚者達の勢いが勝る。
皆を守ると意気込むたまきが『御朱印帳』を広げていき、それに込められた力を解き放って相手を強く威圧していく。
仲間達の攻撃が集まる中、想良が高圧縮させた空気を発射して水蛇の首を飛ばす。
胴体だけとなった妖は水に溶けるようにして、この場から消えて行ったのだった。
妖の群れを討伐した覚者一行。
先にたまきが土の心を使い、遺跡の様子を確認する。
「……事前に聞いたとおりの構造ですね」
ある程度彼女が把握したところで、メンバーは北に向かって歩き出す。
すぐに、一行は鉄砲水が噴き出す場所を確認して。
「目に見える罠と目に見え辛い敵。本来なら逆だが、これもかなり面倒だな……」
直接鉄砲水によって通路外に押し出されると、どこへ向かうのだろうか。それはおいおい、調査で明らかになることだろう。
ともあれ、またすぐ鉄砲水が噴き出すこともあり、メンバー達は全力移動で通路を駆け抜ける。
幾度か襲い来る鉄砲水による水の流れをやり過ごし、メンバー達は分かれ道を右に折れてさらに進む。
外からでも感じられる妖の気配。
両慈は仲間達へと潤しの雨を降らせ、さらに奏空が自らの精神力を仲間に分け与えていく。
できる限り万全の状態にしてから、メンバー達は小部屋の扉を開くのである。
●北東小部屋の妖『艮(ゴン)』
小部屋の中、中央には1体の妖が鎮座していた。
そいつの体は水で構成されてはいたが、姿は牛のような頭と虎のような身体を持っている。
つまりは丑寅……『艮』というわけだ。
「……本当に牛と虎なんですね……」
その姿をまじまじと見つめる想良。
奏空もまた気合を入れて、構えを取って。
「さって、ゴンちゃんだね!」
すぐさま、艮を守るように、通路でも現われた大きい水蛇が3体も現れる。
奏空がすぐさま高密度の霧を放って相手を牽制していくと、想良も通路と同様に呼び出した雷雲から雷を艮目掛けて叩き落とす。
「痺れてくれたら、助かるのですが……」
ただ、相手もかなりの力を持つようで、簡単に痺れてはくれない。
「ムオオオオオォォゥゥ!!」
牛のように嘶いた敵は、一直線に突進してきた。
それを抑えるのは、前に立つたまきだ。
彼女は術式防御の型をとり、相手の特殊攻撃を反射軽減させる符の盾を展開する。
「よし、前に出るぜ!」
群がってくる水蛇に対して翔が前に出て、相手の飲み込み、のしかかりを受ける。
その反撃として彼は後ろの艮と纏めて波動弾で貫通し、相手を巻き込むように殲滅をはかっていく。
艮を直接叩きたいところではあるが、前に立ちはだかる水蛇がかなり邪魔なのだ。
「早くこいつらを片付けたいな!」
翔はスキルを行使し、雷を相手に叩き落とす。
そして、後方からも両慈が相手に雷を浴びせかけ、水蛇を纏めて薙ぎ払う。
ぶつかる覚者と水の妖。
水を避けてここまで来た覚者達ではあったが、その身を徐々に濡らしながらも妖の殲滅に力を入れていくのである。
水蛇は通路と同じく、丁寧に対処すれば問題ない相手。
だが、水蛇はこちらの体を飲み込むことで威圧し、体力を大きく削いでくる。
さらに、荒ぶる水の妖、艮は虎のように部屋を駆け回って暴れて覚者達へと飛び掛り、鋭い爪で薙ぎ払って猛攻撃を仕掛けていた。
それらは、メンバーの体を大きく弱らせてしまう。
特に、前に立つたまきや翔が攻撃にさらされ、体力も合わせて削られて疲弊することとなる。
その体力の回復には奏空がメインとなって動き、仲間の気の流れを大きく活性させ、体力の回復に努めていた。
後方に立つ想良、両慈も攻撃の合間に回復の補佐へと当たっていく。
大気中の浄化物質を凝縮して仲間に振り撒く想良は、時折エネミースキャンで相手の体力をチェックする。
「まだ、体力を多く残しているようですね……」
その艮は直接暴れる他にも、油を放って攻撃してくることがあった。
揮発性のある油は空中で大きく燃え上がり、覚者達へと襲い掛かっていく。
「誰にも、怪我を負って欲しくはありませんから……!」
飛んでくる油の前へと、たまきが身を張る。
彼女は燃え上がる油に身を焦がされながらも、展開する盾でしっかりと反射して燃える油を艮自身にも浴びせかけていた。
その間にも、覚者達は水蛇へと攻撃を続けていて。
両慈の落とす雷が水蛇1体を霧散させ、続く翔の雷がさらに1体の水蛇の体を崩して水蒸気のようにして消し去ってしまう。
さらに、たまきが気を放出して残る水蛇を消し飛ばせば、残るは艮のみとなる。
「ムオオオオオォォゥゥ!!」
自らに攻撃してくる覚者に煩わしさを覚えていたらしく、艮は身体から蒸気のようなものを発しながら突進してくる。
抑える翔へと奏空は癒しの力を活性化させ、回復支援を行う。
ここで負けるわけには行かないと、翔も波動弾を打ち続けて相手の体力を削る。
「……もう少しです」
敵の体力を視ていた想良は雷を落としつつ、仲間達にそう伝えた。
後は、畳み掛けるのみ。
書物を手にする両慈が雷を叩き込み、翔の波動弾が相手の体を貫通する。
「ウ、ウモゥゥ……」
揮発油を発して飛ばしてきた艮だが、それが最後の一足掻き。
たまきはそれを符の盾で一部反射しつつ、放出した気を浴びせかけた。
「これで、終わりです……!」
ついに、身体を維持できなくなった艮は溶ける様に全身を崩す。
その水は部屋の周囲の側溝に流れ落ち、遺跡に流れる水と同化していったのだった。
●一仕事終えて
妖を討伐して、一息つく覚者達。
この場もまた、両慈や奏空が仲間の傷を気遣って治療に当たる。
「トラップは止められるんですよね……?」
その最中、想良がそんな確認をしたものの、外からはまだ鉄砲水が噴き出す音が聞こえる。
ただ、水の勢いは3ヶ所の小部屋の妖が討伐されていることもあってかなり弱まってはいるが、依然噴出していることに変わりはなさそうだ。
「部屋の捜索は、一応しますか……?」
想良はもう1つ仲間達に問うと、奏空がすでに盗掘済みと把握をしながらも、超直感を働かせる。
とはいえ、やはり金目の物がなくなっていること、他遺跡以上に傷みが激しい遺跡であることもあって、めぼしい発見は得られずじまいだった。
さらに1戦、通路で鉄砲水をやり過ごしながら妖との戦いをこなしたメンバー達は、東通路中央から高台へと登って遺跡から脱出する。
そして、最初の地点に戻ると、奏空が皆に用意していたタオルを差し出す。
暖かくなってきたとはいえ、やはり水は冷たい。仲間の身体が冷えないようにと彼は配慮していたのだ。
そして、もう1人、メンバー達を気遣うたまきがバスケットを差し出す。
「お疲れ様です。お腹すいてませんか?」
その中には、彼女の握った美味しそうなおむすびがぎっしりと詰められていた。
早速、それを手に取る覚者達。翔はそれを口にしながら、残る小部屋があと1つだと叫んで。
「もうちょっとで竜に会えるな! 頑張るぞーー!」
そんな翔の叫びに戻ってきたMIAも苦笑しつつ、礼を言いながらタオルとおむすびを合わせて手に取るのだった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
特殊成果
なし

■あとがき■
リプレイ、公開です。
成り行きもありましたが、
結果として通路の妖の手早い殲滅に繋がったこともあり、
女の子に抱えられながら雷獣を使って妖を倒したあなたへ
MVPをお送りさせていただきます。
今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!!
成り行きもありましたが、
結果として通路の妖の手早い殲滅に繋がったこともあり、
女の子に抱えられながら雷獣を使って妖を倒したあなたへ
MVPをお送りさせていただきます。
今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!!
