ジビエを食べよう!
●猪突猛進
愛媛県の山中に、気の早い野性動物達は冬眠から目覚めて山を駆け回る。
「また、丸々と太った猪や鹿が気の早い事に、山を駆け回っておるな」
この時期は、畑には野菜は既に収穫済みなのだが、多少なりとも学習済みの動物達はビニールハウスというか年中無休で野菜や果物を育てているのは分かっている様だ。
しかし、雷獣に退治をお願いしても加減が分からずに黒焦げにしてしまうのだ。
「ならば、覚者達に捕獲してもらえば良いだろう?」
と、雷獣は町長に問う。
「猟師もお願いしたのですが、どうやら古妖が混ざっており全員病院送りにされてしまいました。どうやら、その古妖達は大岩に封じられた2体の古妖を解き放とうとしている様です」
「ねらば、電波に影響が出ない程度に私が結界を張ろう。しかし、力は弱いから何時突破されてもおかしくない……F.i.V.E.に依頼をするしかないだろう」
雷獣は低く唸り声を出しながら言った。
●F.i.V.E.
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」
九重 蒼玉(nCL2000157)がアメシストの様な瞳で、集まったアタナ達を見回した。
「愛媛のサザンカ、ツバキの2体が封じられた大岩を冬眠から目覚めた獣達を囮にし、古妖達が封印を解こうとしています。封印から解放された2体は、人への怨みを晴らすために愛媛県を各街を強襲するでしょう。ですから、皆さん、封印が解かれる前に古妖達を討伐し、ついでに町に下りてきた野性動物を狩っていただけませんでしょうか? よろしくお願いいたします」
蒼玉はアナタ達に向かって恭しく一礼をした。
愛媛県の山中に、気の早い野性動物達は冬眠から目覚めて山を駆け回る。
「また、丸々と太った猪や鹿が気の早い事に、山を駆け回っておるな」
この時期は、畑には野菜は既に収穫済みなのだが、多少なりとも学習済みの動物達はビニールハウスというか年中無休で野菜や果物を育てているのは分かっている様だ。
しかし、雷獣に退治をお願いしても加減が分からずに黒焦げにしてしまうのだ。
「ならば、覚者達に捕獲してもらえば良いだろう?」
と、雷獣は町長に問う。
「猟師もお願いしたのですが、どうやら古妖が混ざっており全員病院送りにされてしまいました。どうやら、その古妖達は大岩に封じられた2体の古妖を解き放とうとしている様です」
「ねらば、電波に影響が出ない程度に私が結界を張ろう。しかし、力は弱いから何時突破されてもおかしくない……F.i.V.E.に依頼をするしかないだろう」
雷獣は低く唸り声を出しながら言った。
●F.i.V.E.
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」
九重 蒼玉(nCL2000157)がアメシストの様な瞳で、集まったアタナ達を見回した。
「愛媛のサザンカ、ツバキの2体が封じられた大岩を冬眠から目覚めた獣達を囮にし、古妖達が封印を解こうとしています。封印から解放された2体は、人への怨みを晴らすために愛媛県を各街を強襲するでしょう。ですから、皆さん、封印が解かれる前に古妖達を討伐し、ついでに町に下りてきた野性動物を狩っていただけませんでしょうか? よろしくお願いいたします」
蒼玉はアナタ達に向かって恭しく一礼をした。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.古妖の企みを阻止せよ!
2.野性動物を狩ろう!
3.野性動物を食べよう!
2.野性動物を狩ろう!
3.野性動物を食べよう!
今年もよろしくお願いいたします。(五体窮地
【場所】
・古妖
愛媛の海岸沿いにある大岩の前
・野性動物(熊、猪、鹿)
町の中(一般人は沢山居るので注意)
【敵】
・古妖
ツバキとサザンカに酷似した、赤牛が3体
・紫煙(全特、毒)
・突進(近単)
・薙ぎ払い(近列、毒)
・野性動物(武器だけで倒せます)
熊2体(全長3m)
猪5体(全長2m)
鹿3体(全長3m)
【NPC】
雷獣(名前募集中)は要請があればお手伝いしてくれます。
蒼玉、指示が無ければ皆さんの援護をしております。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/10
6/10
公開日
2018年01月20日
2018年01月20日
■メイン参加者 6人■

●疑念
「本当にジビエをするつもりなんでしょうか?」
と、訝しげな表情で『プロ級ショコラティエール』菊坂 結鹿(CL2000432) は言った。
「しかし、現に古妖『赤牛』の手によって野生動物が町に迫っています。鹿はともかく、熊と猪となれば被害がでます」
森宮・聖奈(CL2001649)は、野生動物による被害で村が壊滅した書物を思い出す。
「人間に恨みをもった古妖が村を襲ったら……想像するだけで大変な被害になってしまうわね」
『月々紅花』環 大和(CL2000477)は小さく身体を震わせた。
牛の頭を持ち、体は鬼、胴からは節足動物の様な足が生えている赤牛が人々を襲う姿を想像してしまう。
「……被害が出るなら、消す、けど。ええと、古妖さんは、仲良くできるときは、仲良く、して。無理なら倒す、で、いい、の、ね?」
桂木・日那乃(CL2000941)が九重 蒼玉(nCL2000157)を見上げながら問う。
「ええ、そこの判断は皆さんにお任せします」
蒼玉は、アメシストの様な瞳を細めなが頷いた。
「役所の力を借りて一般人の避難もしたいから、野生動物の担当をする人はわたしに着いてきて」
芦原 ちとせ(CL2001655) が手を上げながら覚者達に声を掛ける。
「よろしくお願いします」
聖奈はちとせに歩み寄ると、恭しく一礼をし微笑んだ。
「ジビエに関しては任せて下さい」
ジビエに詳しい結鹿も駆け寄る。
「古妖の方は任せるね」
と、残った覚者達に手を振り、ちとせ達は一足先に町へと向かった。
「これが俺の初任務になる。気を引き締めて行くぞ……」
万・星(CL2001658)は頬を両手で軽く叩いた。
「それでは、現場まで案内しますので星さんは無理をなさらないで下さいね」
「い、言われなくても!」
蒼玉の言葉に星は睨みながら言った。
「古妖だけでなくとも野生動物も自然が減っているのに加え、人間の育てた作物を狙う方が楽というのを覚えてしまっているようね」
大和は瞳を伏せ、動物が棲む場所が減っている事と文明が進み一年中作物が作れる環境の良さ、どちらも大切で野生動物が楽を知れば自然とそういう行動をするのが悲しい。
「封印、解けたら。サザンカさんと、ツバキさんは、街、強襲する、かも、って。そうなったら、困る、の」
冷たい潮風が頬を撫で、日那乃は水色に透き通った空を見上げた。
愛媛の雷獣は、ツバキとサザンカが封印されている大岩への道がある前に鎮座していた。
「早く着いて良かった」
「夢見の力もあって、コチラが待ち伏せ出来るのは幸いね」
大和が雷獣に笑みを浮かべた。
●強襲
「公民館や学校へ避難、念のために狩猟会の方々と警察は護衛をお願いします」
ちとせは、町長を含めて班長や警察関係者等に役所で指示を出す。
「わたし達は直ぐにビニールハウスに向かうのよ」
役所で指示を出し終えたちとせは、外で待っていた聖奈と結鹿に声を掛けると、コンクリートで舗装された道を歩き出す。
「ジビエを食べるならでなるべく早く、一撃で仕留めるようにしましょう」
結鹿は、手帳に熊のシルエットを描くと心臓の部分に×印を描いた。
「結鹿がいうんじゃ間違いないね。こと、料理に関する知識はの子は相当だからね」
と、ちとせが感嘆の声を上げた。
「武器だけでも十分かもしれませんが、念のために」
ビニールハウスに着いたら聖奈は、演舞・清爽で二人を強化する。
そして、守護使役のぴよちゃんに偵察させる為に空に放った。
「野生動物達を発見したら連絡をします」
と、言って聖奈は地面を蹴り、水色に透き通った空へと飛び立つ。
「いってらっしゃーい」
飛び立つ聖奈に、結鹿は笑顔で声を掛けた。
「え、もう来ている……!?」
聖奈の視界に野生動物の群れか映る。
「聖奈さんはそのまま、動物達の行動を見ててください!」
結鹿は蒼龍の刀身を鞘から抜くと、ギュスターブを手にしているちとせと視線を合わせると駆け出した。
地面を震わせる程の地響きと共に、鹿が跳躍し二人の前に姿を現す。
猪突猛進する猪、重量感がある体なのに意外と速い熊が覚者達に迫る。
「さっさと、片付けるよ」
天駆で強化されたちとせは、ギュスターブを素早く鹿の心臓に向かって突き刺す。
「……っ! こんなに、大きいかったら町の人達は、簡単に瀕死になります」
結鹿は走る猪の前に立ち塞がり、足を止めようと蒼龍を振るう。
「だけど、赤牛の方が少し苦戦しているようね」
仲間からのヘルプの連絡を受けたちとせは、地塗られたギュスターブを握り締めながら言った。
「わたし達は大丈夫ですから、聖奈さんは一足先に助けに行って下さい」
「……分かりました。怪我をしたら後で言って下さいね」
結鹿の言葉に聖奈は頷くと、海岸の方に向かって翼を羽ばたかせた。
「わたしは料理は手伝わないわよ」
「はい。でも、美味しく食べてくれるだけでも良いです」
ちとせの言葉に結鹿は笑いながら答えた。
自分達の背丈よりも一回り高い熊を見上げると、二人は躊躇いなく駆け出した。
●人の業
赤牛達は、牛の様な口から白い息を蒸気機関車の様に吐きながら、大岩への道を塞ぐ覚者を見据えた。
(武器はナイフでリーチが短いが……臆することなくいくぞ……)
星はナイフ片手にゆっくりと深呼吸をした。
「封印されている古妖は貴方達の仲間? それとも好奇心のいたずらかしら」
と、落ち着いた声色で大和は、赤牛達に問う。
「仲間、ソウ、仲間。……イヤ、人ノ言葉デ言ウ、家族」
赤牛は足をゆっくりと前に進めながら答える。
「仲間であれば申し訳ないけれど人里で暴れられても困るから妨害させてもらうわね」
大和は首を横に振ると、赤牛達に向かって駆け出すと雷雲を発生させ、激しい雷を赤牛達に向かって落とす。
「ヌゥ、雷獣ノ、仕業、カ!」
赤牛が咆哮を上げると、口から紫煙が吐かれて周囲に広がる。
「でも、あなたたちは、そうして、欲しい? ふつうのひとたち。たくさん、殺したい?」
日那乃が高圧縮した空気を赤牛に当てながら問う。
「殺ス、人ガ、シタラカ、殺ス」
忘れぬ過去、赤牛達は遠い昔にされた事を何十年、何百年、経とうが怒りが心を満たす。
「根性をみせてやる」
初の任務である星は、紫煙の毒が体を蝕んでもナイフを赤牛に向かって振る。
「星さんっ!」
蒼玉が演舞・舞衣で毒を解除しようとした瞬間、赤牛が星に向かって足で凪ぎ払おうとする。
足手まとい、か? と、少し弱きな言葉が星の頭に響く。
「頑張っておる。だが、根性でやって大怪我は良くない」
雷獣が星の首根っこを掴み、後方へと連れて帰る。
「大丈夫、棘一閃で、体力、減る」
と、言うと日那乃は、神秘の力を込めて生成した水竜を赤牛達に向かって放つ。
「人と古妖が仲良く接することができればわたしも封印を解いてあげたいと思うわ。けれど、封印を解くことで他の人に迷惑が掛かるのがわかっているならば……全力で止めさせてもらうわ!」
大和が放つ雷獣の勢いが激しくなる。
その隣で日那乃が、倒すつもりでエアブリッドを放てる状態で見つめる。
「どうしますか? 大岩の赤牛とは近しいので、同じ岩に封じ込めるのは可能ですが……その分、封印の効力は今より弱くなります」
蒼玉は可能な範囲の事を覚者達に告げる。
「弱っていればという事かしら?」
「ええ、和解する未来を求めるのでしたら」
蒼玉の言葉に大和は、攻撃する手を止めた。
ぼろぼろの体を、震える足で支えながら立ち上がり、赤牛達は口元からぽとりと血を流す。
「解けない様に、わたし達が見れば良いものね。それに、雷獣の様にこうやって話して、理解して貰いたいわ」
何時までとか、そんな話はナシにして明日かもしれない明後日かもしれない近い未来に向けて、大和は真上に昇ってきた太陽を見上げた。
「名前、あったら聞いて、無かったら、付けよう」
日那乃は星を見上げながら言った。
「ど、どーしてもって言うなら!」
と、言いながら星はぷいっと顔を反らした。
「大怪我したと聞いて来ました」
聖奈が空から降りてきた。
「星さんの治療をお願いしますわね」
大和が視線を向けると、星は『こんなもん、根性で治る!』と声を上げた。
そして、瀕死になった赤牛達を大岩に封じた。
●ジビエを食べよう!
「いただきます」
結鹿が解体された熊等の肉に包丁を入れる。
心臓を貫いたモノ以外は、首に切り込みを入れて血を抜き終えると、内臓を取り出して皮を剥いで各部位に切り分けたら冷蔵庫に入れた。
「ローストとかシチューとか、パイとか鍋とかハンバーグもいいな」
と、何を作ろうか考えながら結鹿は調理を進める。
「正直、獣の肉を捌くのは初体験なので緊張してます」
お店で売られている肉とは違うのを聖奈は、興味津々に見ながら結鹿の指示通りに切る。
「獣を捌くのは人生初体験になる。貴重な経験となるだろうからしっかりと勉強させてもらうとしよう」
星は結鹿の説明を聞きながら、簡単な料理を教えて貰いそれを作る事にした。
「鹿はお刺身で、熊や猪は鍋で頂きたいと思うけれど。蒼玉さん、他に何か美味しく頂けるお料理ご存じかしら?」
と、知り得る調理方法を口にした大和は、蒼玉に問う。
「そうですね。ヨーロッパで鹿肉のステーキが高級品だと聞きます。それと、熊の手はとても美味しいのでメンチカツとか良いかもしれませんね」
「ありがとうございます。注意点等はありますかしら?」
「脂身が無い肉は、他の動物の脂身を混ぜたりして使うと良いこと位です」
大和の問いに蒼玉は答える。
「なるほど、どうして脂身が必要なのかしら?」
「簡単ですよ、赤身だけでは固いでしょう?」
と、答えると蒼玉は笑みを浮かべた。
「そういえば、豚や牛のハンバーグはあるのに他の動物のは無いですわね」
「脂身が無いので、鹿肉のハンバーグは豚肉やその脂身が入ってたりするのです」
「勉強になりましたわ」
大和は聞いた事を手帳にメモをした。
「……野生動物の、お肉。固い、とか、よく焼くとか、聞いた気がする、から。ハンバーガーに、して、みる。ひき肉にして、薄くして、よく焼いたら、大丈夫??」
日那乃は熊、鹿、猪の肉を見回しながら首を傾げた。
「脂身を混ぜたら大丈夫ですので、普通に作ってみましょう?」
結鹿が日那乃にアドバイスをする。
「作ってもらってる間に、何か飲み物を買っておこうかな……」
ちとせが立つと、雷獣が『荷物持ちとして同行しよう』と言ったので一人と一匹は町の方へ。
「雷獣の名前ねぇ……愛媛にちなんでポン、きよみ、一六、子規とか? 」
と、雷獣に名前が無い事を思い出したちとせは、候補を言う。
「子規、か……先生らしい候補だな」
「愛媛といえば、となるとこれくらいしか思い付かないのよ」
雷獣の言葉にちとせは肩を竦めた。
「悪くない、が……飲みすぎるなよ?」
ちとせがアルコール類も買っているのを見て、雷獣は酔っ払いが出ないか不安そうに言った。
「程々にするよ」
「そうしてくれ」
ちとせを背に乗せ、雷獣は仲間の元へと駆け出した。
帰ってきた雷獣とちとせに日那乃が駆け寄る。
「……雷獣さんも、食べる? 」
バンズにトマト、レタスチーズにお手製のパティを挟んだハンバーガーを雷獣に差し出した。
「折角だ、いただこう」
大きな口を開けて、日那乃のハンバーガーを一口で食べてしまう。
「美味しいぞ、覚者」
と、雷獣は優しい声色で言った。
ちとせが皆に飲み物を配り、乾杯と一斉に声を上げた。
公民館に美味しい料理の匂いがし、楽しそうな声が響く。
冷たい寒さは直ぐに終わりを告げて、次は花が咲き乱れる春が来るだろう。
その時は、また覚者達を呼んで花見でもしたいと思いながら雷獣は、覚者達の傍で見守る。
「本当にジビエをするつもりなんでしょうか?」
と、訝しげな表情で『プロ級ショコラティエール』菊坂 結鹿(CL2000432) は言った。
「しかし、現に古妖『赤牛』の手によって野生動物が町に迫っています。鹿はともかく、熊と猪となれば被害がでます」
森宮・聖奈(CL2001649)は、野生動物による被害で村が壊滅した書物を思い出す。
「人間に恨みをもった古妖が村を襲ったら……想像するだけで大変な被害になってしまうわね」
『月々紅花』環 大和(CL2000477)は小さく身体を震わせた。
牛の頭を持ち、体は鬼、胴からは節足動物の様な足が生えている赤牛が人々を襲う姿を想像してしまう。
「……被害が出るなら、消す、けど。ええと、古妖さんは、仲良くできるときは、仲良く、して。無理なら倒す、で、いい、の、ね?」
桂木・日那乃(CL2000941)が九重 蒼玉(nCL2000157)を見上げながら問う。
「ええ、そこの判断は皆さんにお任せします」
蒼玉は、アメシストの様な瞳を細めなが頷いた。
「役所の力を借りて一般人の避難もしたいから、野生動物の担当をする人はわたしに着いてきて」
芦原 ちとせ(CL2001655) が手を上げながら覚者達に声を掛ける。
「よろしくお願いします」
聖奈はちとせに歩み寄ると、恭しく一礼をし微笑んだ。
「ジビエに関しては任せて下さい」
ジビエに詳しい結鹿も駆け寄る。
「古妖の方は任せるね」
と、残った覚者達に手を振り、ちとせ達は一足先に町へと向かった。
「これが俺の初任務になる。気を引き締めて行くぞ……」
万・星(CL2001658)は頬を両手で軽く叩いた。
「それでは、現場まで案内しますので星さんは無理をなさらないで下さいね」
「い、言われなくても!」
蒼玉の言葉に星は睨みながら言った。
「古妖だけでなくとも野生動物も自然が減っているのに加え、人間の育てた作物を狙う方が楽というのを覚えてしまっているようね」
大和は瞳を伏せ、動物が棲む場所が減っている事と文明が進み一年中作物が作れる環境の良さ、どちらも大切で野生動物が楽を知れば自然とそういう行動をするのが悲しい。
「封印、解けたら。サザンカさんと、ツバキさんは、街、強襲する、かも、って。そうなったら、困る、の」
冷たい潮風が頬を撫で、日那乃は水色に透き通った空を見上げた。
愛媛の雷獣は、ツバキとサザンカが封印されている大岩への道がある前に鎮座していた。
「早く着いて良かった」
「夢見の力もあって、コチラが待ち伏せ出来るのは幸いね」
大和が雷獣に笑みを浮かべた。
●強襲
「公民館や学校へ避難、念のために狩猟会の方々と警察は護衛をお願いします」
ちとせは、町長を含めて班長や警察関係者等に役所で指示を出す。
「わたし達は直ぐにビニールハウスに向かうのよ」
役所で指示を出し終えたちとせは、外で待っていた聖奈と結鹿に声を掛けると、コンクリートで舗装された道を歩き出す。
「ジビエを食べるならでなるべく早く、一撃で仕留めるようにしましょう」
結鹿は、手帳に熊のシルエットを描くと心臓の部分に×印を描いた。
「結鹿がいうんじゃ間違いないね。こと、料理に関する知識はの子は相当だからね」
と、ちとせが感嘆の声を上げた。
「武器だけでも十分かもしれませんが、念のために」
ビニールハウスに着いたら聖奈は、演舞・清爽で二人を強化する。
そして、守護使役のぴよちゃんに偵察させる為に空に放った。
「野生動物達を発見したら連絡をします」
と、言って聖奈は地面を蹴り、水色に透き通った空へと飛び立つ。
「いってらっしゃーい」
飛び立つ聖奈に、結鹿は笑顔で声を掛けた。
「え、もう来ている……!?」
聖奈の視界に野生動物の群れか映る。
「聖奈さんはそのまま、動物達の行動を見ててください!」
結鹿は蒼龍の刀身を鞘から抜くと、ギュスターブを手にしているちとせと視線を合わせると駆け出した。
地面を震わせる程の地響きと共に、鹿が跳躍し二人の前に姿を現す。
猪突猛進する猪、重量感がある体なのに意外と速い熊が覚者達に迫る。
「さっさと、片付けるよ」
天駆で強化されたちとせは、ギュスターブを素早く鹿の心臓に向かって突き刺す。
「……っ! こんなに、大きいかったら町の人達は、簡単に瀕死になります」
結鹿は走る猪の前に立ち塞がり、足を止めようと蒼龍を振るう。
「だけど、赤牛の方が少し苦戦しているようね」
仲間からのヘルプの連絡を受けたちとせは、地塗られたギュスターブを握り締めながら言った。
「わたし達は大丈夫ですから、聖奈さんは一足先に助けに行って下さい」
「……分かりました。怪我をしたら後で言って下さいね」
結鹿の言葉に聖奈は頷くと、海岸の方に向かって翼を羽ばたかせた。
「わたしは料理は手伝わないわよ」
「はい。でも、美味しく食べてくれるだけでも良いです」
ちとせの言葉に結鹿は笑いながら答えた。
自分達の背丈よりも一回り高い熊を見上げると、二人は躊躇いなく駆け出した。
●人の業
赤牛達は、牛の様な口から白い息を蒸気機関車の様に吐きながら、大岩への道を塞ぐ覚者を見据えた。
(武器はナイフでリーチが短いが……臆することなくいくぞ……)
星はナイフ片手にゆっくりと深呼吸をした。
「封印されている古妖は貴方達の仲間? それとも好奇心のいたずらかしら」
と、落ち着いた声色で大和は、赤牛達に問う。
「仲間、ソウ、仲間。……イヤ、人ノ言葉デ言ウ、家族」
赤牛は足をゆっくりと前に進めながら答える。
「仲間であれば申し訳ないけれど人里で暴れられても困るから妨害させてもらうわね」
大和は首を横に振ると、赤牛達に向かって駆け出すと雷雲を発生させ、激しい雷を赤牛達に向かって落とす。
「ヌゥ、雷獣ノ、仕業、カ!」
赤牛が咆哮を上げると、口から紫煙が吐かれて周囲に広がる。
「でも、あなたたちは、そうして、欲しい? ふつうのひとたち。たくさん、殺したい?」
日那乃が高圧縮した空気を赤牛に当てながら問う。
「殺ス、人ガ、シタラカ、殺ス」
忘れぬ過去、赤牛達は遠い昔にされた事を何十年、何百年、経とうが怒りが心を満たす。
「根性をみせてやる」
初の任務である星は、紫煙の毒が体を蝕んでもナイフを赤牛に向かって振る。
「星さんっ!」
蒼玉が演舞・舞衣で毒を解除しようとした瞬間、赤牛が星に向かって足で凪ぎ払おうとする。
足手まとい、か? と、少し弱きな言葉が星の頭に響く。
「頑張っておる。だが、根性でやって大怪我は良くない」
雷獣が星の首根っこを掴み、後方へと連れて帰る。
「大丈夫、棘一閃で、体力、減る」
と、言うと日那乃は、神秘の力を込めて生成した水竜を赤牛達に向かって放つ。
「人と古妖が仲良く接することができればわたしも封印を解いてあげたいと思うわ。けれど、封印を解くことで他の人に迷惑が掛かるのがわかっているならば……全力で止めさせてもらうわ!」
大和が放つ雷獣の勢いが激しくなる。
その隣で日那乃が、倒すつもりでエアブリッドを放てる状態で見つめる。
「どうしますか? 大岩の赤牛とは近しいので、同じ岩に封じ込めるのは可能ですが……その分、封印の効力は今より弱くなります」
蒼玉は可能な範囲の事を覚者達に告げる。
「弱っていればという事かしら?」
「ええ、和解する未来を求めるのでしたら」
蒼玉の言葉に大和は、攻撃する手を止めた。
ぼろぼろの体を、震える足で支えながら立ち上がり、赤牛達は口元からぽとりと血を流す。
「解けない様に、わたし達が見れば良いものね。それに、雷獣の様にこうやって話して、理解して貰いたいわ」
何時までとか、そんな話はナシにして明日かもしれない明後日かもしれない近い未来に向けて、大和は真上に昇ってきた太陽を見上げた。
「名前、あったら聞いて、無かったら、付けよう」
日那乃は星を見上げながら言った。
「ど、どーしてもって言うなら!」
と、言いながら星はぷいっと顔を反らした。
「大怪我したと聞いて来ました」
聖奈が空から降りてきた。
「星さんの治療をお願いしますわね」
大和が視線を向けると、星は『こんなもん、根性で治る!』と声を上げた。
そして、瀕死になった赤牛達を大岩に封じた。
●ジビエを食べよう!
「いただきます」
結鹿が解体された熊等の肉に包丁を入れる。
心臓を貫いたモノ以外は、首に切り込みを入れて血を抜き終えると、内臓を取り出して皮を剥いで各部位に切り分けたら冷蔵庫に入れた。
「ローストとかシチューとか、パイとか鍋とかハンバーグもいいな」
と、何を作ろうか考えながら結鹿は調理を進める。
「正直、獣の肉を捌くのは初体験なので緊張してます」
お店で売られている肉とは違うのを聖奈は、興味津々に見ながら結鹿の指示通りに切る。
「獣を捌くのは人生初体験になる。貴重な経験となるだろうからしっかりと勉強させてもらうとしよう」
星は結鹿の説明を聞きながら、簡単な料理を教えて貰いそれを作る事にした。
「鹿はお刺身で、熊や猪は鍋で頂きたいと思うけれど。蒼玉さん、他に何か美味しく頂けるお料理ご存じかしら?」
と、知り得る調理方法を口にした大和は、蒼玉に問う。
「そうですね。ヨーロッパで鹿肉のステーキが高級品だと聞きます。それと、熊の手はとても美味しいのでメンチカツとか良いかもしれませんね」
「ありがとうございます。注意点等はありますかしら?」
「脂身が無い肉は、他の動物の脂身を混ぜたりして使うと良いこと位です」
大和の問いに蒼玉は答える。
「なるほど、どうして脂身が必要なのかしら?」
「簡単ですよ、赤身だけでは固いでしょう?」
と、答えると蒼玉は笑みを浮かべた。
「そういえば、豚や牛のハンバーグはあるのに他の動物のは無いですわね」
「脂身が無いので、鹿肉のハンバーグは豚肉やその脂身が入ってたりするのです」
「勉強になりましたわ」
大和は聞いた事を手帳にメモをした。
「……野生動物の、お肉。固い、とか、よく焼くとか、聞いた気がする、から。ハンバーガーに、して、みる。ひき肉にして、薄くして、よく焼いたら、大丈夫??」
日那乃は熊、鹿、猪の肉を見回しながら首を傾げた。
「脂身を混ぜたら大丈夫ですので、普通に作ってみましょう?」
結鹿が日那乃にアドバイスをする。
「作ってもらってる間に、何か飲み物を買っておこうかな……」
ちとせが立つと、雷獣が『荷物持ちとして同行しよう』と言ったので一人と一匹は町の方へ。
「雷獣の名前ねぇ……愛媛にちなんでポン、きよみ、一六、子規とか? 」
と、雷獣に名前が無い事を思い出したちとせは、候補を言う。
「子規、か……先生らしい候補だな」
「愛媛といえば、となるとこれくらいしか思い付かないのよ」
雷獣の言葉にちとせは肩を竦めた。
「悪くない、が……飲みすぎるなよ?」
ちとせがアルコール類も買っているのを見て、雷獣は酔っ払いが出ないか不安そうに言った。
「程々にするよ」
「そうしてくれ」
ちとせを背に乗せ、雷獣は仲間の元へと駆け出した。
帰ってきた雷獣とちとせに日那乃が駆け寄る。
「……雷獣さんも、食べる? 」
バンズにトマト、レタスチーズにお手製のパティを挟んだハンバーガーを雷獣に差し出した。
「折角だ、いただこう」
大きな口を開けて、日那乃のハンバーガーを一口で食べてしまう。
「美味しいぞ、覚者」
と、雷獣は優しい声色で言った。
ちとせが皆に飲み物を配り、乾杯と一斉に声を上げた。
公民館に美味しい料理の匂いがし、楽しそうな声が響く。
冷たい寒さは直ぐに終わりを告げて、次は花が咲き乱れる春が来るだろう。
その時は、また覚者達を呼んで花見でもしたいと思いながら雷獣は、覚者達の傍で見守る。

■あとがき■
ジビエを食べよう!という題なのに、戦闘なシナリオに参加して頂きありがとうございます。
ゆるやかなシナリオ提供ですが、今年もよろしくお願いいたします。
インフルB型が流行っておりますので、皆さんも注意してください。
私はもうなった後ですが!
ゆるやかなシナリオ提供ですが、今年もよろしくお願いいたします。
インフルB型が流行っておりますので、皆さんも注意してください。
私はもうなった後ですが!
