《初夢語》荒くれ者は荒野を荒らす
●
バキューンバキューン。
どこか軽い銃声は命を容易に奪う音。硝煙の臭いが鼻をつく。
超大西部(すーぱーびっぐせいぶ)、略してSBSを渡る風は今日も乾いている。
その乾きを血と暴力で癒やさんと、荒くれ者が小さな村を襲ったのだ。
「ひゃっはー! 水と食料をよこせー!」
闇夜を見通す恐ろしい目。ぬばたまに紛れる黒い毛皮。
その手に隠された爪は研ぎ澄まされ、音を殺した足は生まれながらの狩人か。
「おい、こいつこんなモン隠してやがったぜ!」
「ああっ、か、返せ! それを持って行かれたら、育てる種がなくなってしまう!」
追いすがる哀れな村人を蹴り飛ばし、無法者は群れの頭に戦利品を投げ渡した。
頭は受け取った袋を掲げ、鋭く尖った牙で引き裂く――中からこぼれ落ちたのは。
「ハッ。こんな小さな村にマタタビがあるなんてなあ!」
悪黒猫団(ばっどぶらっくきゃっとだん)、略してバブ団の首領、クロは獰猛な笑みを浮かべた。
●
悪逆非道の限りを尽くすバブ団に立ち向かうため、あなたたちは立ち上がった。
近くの村で雇われたのかもしれない。あの村に幼馴染の婚約者がいたのかもしれない。事情はひとそれぞれだろう。だが、あなたたちに共通する思いがひとつある。――このままバブ団の好き勝手を許すわけにはいかない。
今日の平穏を守るため、明日のマタタビを守るため。
SBSに立ち上がった勇者たち――それが、あなたたちだ!
●
という夢を見たんだ。
バキューンバキューン。
どこか軽い銃声は命を容易に奪う音。硝煙の臭いが鼻をつく。
超大西部(すーぱーびっぐせいぶ)、略してSBSを渡る風は今日も乾いている。
その乾きを血と暴力で癒やさんと、荒くれ者が小さな村を襲ったのだ。
「ひゃっはー! 水と食料をよこせー!」
闇夜を見通す恐ろしい目。ぬばたまに紛れる黒い毛皮。
その手に隠された爪は研ぎ澄まされ、音を殺した足は生まれながらの狩人か。
「おい、こいつこんなモン隠してやがったぜ!」
「ああっ、か、返せ! それを持って行かれたら、育てる種がなくなってしまう!」
追いすがる哀れな村人を蹴り飛ばし、無法者は群れの頭に戦利品を投げ渡した。
頭は受け取った袋を掲げ、鋭く尖った牙で引き裂く――中からこぼれ落ちたのは。
「ハッ。こんな小さな村にマタタビがあるなんてなあ!」
悪黒猫団(ばっどぶらっくきゃっとだん)、略してバブ団の首領、クロは獰猛な笑みを浮かべた。
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悪逆非道の限りを尽くすバブ団に立ち向かうため、あなたたちは立ち上がった。
近くの村で雇われたのかもしれない。あの村に幼馴染の婚約者がいたのかもしれない。事情はひとそれぞれだろう。だが、あなたたちに共通する思いがひとつある。――このままバブ団の好き勝手を許すわけにはいかない。
今日の平穏を守るため、明日のマタタビを守るため。
SBSに立ち上がった勇者たち――それが、あなたたちだ!
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という夢を見たんだ。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.バブ団と戦う
2.誰かを助ける
3.なし
2.誰かを助ける
3.なし
■初夢依頼について
この依頼は参加者全員が見ている同じ夢の中での出来事となります。
その為世界観に沿わない設定、起こりえない情況での依頼となっている可能性が
ありますが全て夢ですので情況を楽しんでしまいしょう。
またこの依頼での出来事は全て夢のため、現実世界には一切染み出す事はありません。
※要約すると一夜限りの夢の出来事なので思いっきり楽しんじゃえ!です。
■このシナリオ個別の注意事項
●あなたたちって誰よ
つまりは夢を見ているPCです。
世界観があほほど違いますが便宜上、外見と名前はそのままとします(偽名を名乗るのは可)
立場とかはOP熟読の上、いけそうなものを自己申告してください。
指定のない場合、バブ団から守ってくれと依頼を受けてやって来たはいいものの一足遅かった用心棒になります。
他参加者との関係性は現実と継続してもいいし、夢だからと完全に初対面設定でも構いませんが、どういう関係性かひとことあるとももんがが助かります。
●バブ団
バブ団は人間サイズの黒猫たち10匹で構成されています。
どいつもこいつも黒猫なので、ほとんど見た目には大きな違いがありません。
ただしクロは大きな鈴をつけているのですぐわかります。
武器は銃と爪と牙など。なお、可愛いものほど凶悪に感じる価値観を有しています。
現在は、襲った村で祝マタタビを上げています。
●成功条件に「誰か」ってあるけど
誰かです。襲われた村の誰かでもいいです。バブ団の誰かでもいいです。
ぜんぜん違うところで転んだひとを助けても構いません。
全員で大人数をでも構いませんし、ひとりだけがひとりをでも構いません。
最低でもひとり以上を明確に「助けて」ください。
●怪我したりしたらどうなるの?
何も起きません、夢ですので。
バブ団との戦いの末に死んだとしても夢ですので無傷です。
突然の愛の逃避行の果てに畳の上で子孫に囲まれて眠るように穏やかに死んでも何も残りません。
●待て、戦いについての情報がない
地形は平坦、天候は晴れ。
村の中心にある広場で酒盛りしているバブ団はそれぞれが人間サイズの猫ですので、ダメージは強烈、スピードも激速。まともに立ち向かえばかなりの強敵でしょう。しかし猫。なんとかする方法はきっとあります。
爪・牙 物近単
銃 特遠単
バズーカ 物遠敵全
●なにか使えるものはあるのだろうか
村はバブ団の支配下にあります。その状態の農村でこっそり調達することができそうな物は「調達できた」ことにして構いませんが、乗り物、機械的なもの、金目のもの、食料、お酒やマタタビ等の嗜好品は不可とします。
●もう一度言うけど
あなたたちは、そういう夢を見たんだ。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/7
6/7
公開日
2018年01月19日
2018年01月19日
■メイン参加者 6人■

●
SBSの乾いた風の中にも、明るい声は響きわたる。
先頭を行く『モイ!モイ♪モイ!』成瀬 歩(CL2001650)と、手を繋いで楽しそうに笑い合う『モイ!モイ♪モイ!』ユスティーナ・オブ・グレイブル(CL2001197)。その少し後ろを、真屋・千雪(CL2001638)がついて歩いている。
見慣れた丘を越え、歩がユスティーナと千雪を振り返る。
「ユスちゃん、ちゆちゃん、おばあちゃんの村はもうすぐだよ!」
「うふふっ、手編みのセーターを頂けるなんて嬉しいんですわ♪」
一行は近隣の村に住む歩の祖母を尋ねに、近くの村から向かっているところだった。
新しいセーターを編むから採寸させて欲しいと、それは足が悪い祖母が孫の顔を見たくて作った理由だろうけれど――会いに行くのは楽しみだったのだ。
「可愛いお姫様達とお散歩とか役得だね~」
のんびりした口調で呟きつつも、千雪はユスティーナお嬢様とその友人の歩から目を離したりはしない。
最近はバブ団なる怪しげな輩が暴れているなど、危ない話も耳にする。子供だけで出かけさせるわけには――そう判断したユスティーナの親は護衛として、使用人である千雪を同行させたのだ。
そうしてふと、歩が指し示した先を見たユスティーナが、表情を曇らせた。
ほぼ同時に、歩と千雪も足を止める。
「チユキ……様子を見てきてくださいな」
胸騒ぎと呼ぶには確信めいた違和感に、ユスティーナは短い指示を出す。
千雪は小さく頷くと、祖母の身に何か起きていないかとの不安に駆け出そうとする歩の頭に手を置いて笑いかけてから一足先に村へと足を運んだ。
――近寄ってみれば、村の異様はすぐわかる。
何と言っても、村をすべて手中に収めたと思ったバブ団の連中は、大々的にマタタビ盛りを開いていたのだから。
「わーお。なにあれ」
でっかい黒猫の群れを見た千雪がそう呟いているうちに、ひとり(一匹?)の黒猫が近くにいた少女をどやしつけ始めた。
「おい、カッブはないのか!」
「か、カッブ……?」
「ああ? カッブって言ったらカツブシに決まってるだろ、鰹節!」
早く持って来い! と、黒猫が少女を蹴り飛ばす。泣きながら駆け出した少女は、角を曲がったところで転びそうになり、人影に抱きとめられた。
「お嬢さん大丈夫?」
千雪はそうして、少女からこの町に何が起こっているのかを知った。
「バブ団? マタタビ略奪? ……わーお。マタタビはあげちゃダメなの?
あ、特産品なの? そりゃあ守らなきゃだねー」
なるほどねー、と頷きながら、さてどうしたものかと千雪は考え込む。
――その様子を、物陰から見ている者がいた。
●
「バブ団、か。悠長にまたたび盛りしているなんて、油断もいいとこね」
情報収集をしていた芦原 ちとせ(CL2001655)である。
SBSの荒野では腕の立つ用心棒として鳴らしていたちとせは、この村が野盗に襲われたと知った隣村の民から、バブ団の討伐を依頼されていた。
その村から送られてきた用心棒はひとりではない。野武 七雅(CL2001141)もまた、ちとせと同行してバブ団の悪行を目の当たりにしていた。
「ほわぁぁぁぁ、これはどうにかしてなつねが村を救ってあげないといけないの!」
――依頼してきたのは、歩たちが住んでいる村とは別の隣村だ。しかしそこの名産もまた、マタタビ。この村が襲われたとなれば次に狙われるのがどこかなど、考えるまでもない。そう思えば増援も、村の判断としては当然よね、と、ちとせも納得していた。
「わたしとしても報酬さえもらえれば、断る理由なんてないわ」
千雪に助けられた少女が一礼し、慌てて小さな家に駆け込んだのが見える。鰹節を取りに行ったのだろう。――バブ団は明らかに、ただマタタビ盛りを楽しんでいる。村の人間たちを人質にするような頭がなさそうなことは幸いだったが、そのことを脅された当事者である村人たちが理解できるかと言えば、別の問題だろう。
「それにしてもおっきな猫さんなの」
七雅が憤りの声を上げる。確かにあの大きさの猫に引っかかれたらと思うと、ぞっとしないものがある。
「猫さんだから恐ろしい武器は爪でもなんでもなくってそのもっふもふなフォルム! 肉体! なんて卑怯なの!」
人間の掌サイズから繰り出されるぷにっとした肉球の、ポップコーンめいた匂い。引っかかれた日にはそれを全力で堪能させられ――あれ、そういう問題だったっけ。
「そんなもっふもふにゃんこが10匹も!
これは今まで出会ったどんな敵よりも一番手ごわい相手なの!」
あ、はい。そういう問題ですね。
●
ところで一方。
歩の兄である『天を翔ぶ雷霆の龍』成瀬 翔(CL2000063)もまた、バブ団に襲われた村へと向かっていた。所用で出かけていた間に、妹たちが出かけてしまったと聞いて後を追ってきたのだ。
「オレだってばあちゃんに会いたいのに!」
と飛び出そうとした翔を、大人たちは子供ひとりで出かけるなんて危ないと引き止めたのだが、近くの村まで行く程度のことに危険なことなど、本来であればそうそうないし、子供扱いされていると思えば腹立たしくもなる。ばあちゃんとこは今まで何度も行ってるし楽勝だぜ! とばかり飛び出してきてしまったのだ。
「じーさん、もうすぐ着くぜ」
「おお、すまんの」
その途中で見かけた、腰を痛めた老人は、祖母の家の近所に住んでいる男だった。
小柄な老人を背負うのなど、成長期な負けず嫌い系男子にとっては容易なことだ。
「だがの、翔よ。村の入り口までで構わんからの」
何故か老人がそう繰り返すことが、翔には気にかかる。
祖母の家も、老人の家も、村のはずれにある――腰を痛めているのに少しばかり遠い距離を歩かせる気にはなれない。
だが、村に近づくほど、奇妙な――きな臭い、とでも言えば良いだろうか。そんな感覚が伝わってくるのだ。
「なあ、じーさん……」
「ダメじゃ、わしを下ろしたら、村に帰りなさい」
「……オレにおんぶされてるのに、子供扱いするんじゃねーよ!」
翔はそう言ってニッと笑う。
老人は数度瞬きすると、それもそうじゃったのう、と困ったように笑った。
●
「チユキ。状況はわかりましたの?」
村の外れ、歩と翔の祖母の家の中で、ユスティーナが戻ってきた千雪に声をかける。
歩の祖母は荒くれ者たちが襲ってきてすぐに家の中に逃げ込んだのだが、その時に足を怪我したために詳しい話はわからなかったのだ。手当は歩が既に済ませたものの、村で育てた作物を荒らされてしまって、祖母はすっかり気落ちしてしまっていた。
「ううん……悪い猫さんが村を乗っ取っちゃったんだね!
だったらあゆみが退治してあげるんだよ! 悪い子にはめっ! ってしてあげなきゃ」
「ええ、悪いクロネコ退治ミッションスタートですわ。
悪い子にはお仕置きが必要ですものね?」
義憤に燃えた声を上げた歩に、ユスティーナが微笑みを浮かべながらも同意する。ユスティーナは千雪が戻る前にも、村から逃げ出そうとして転んだ少年を見かけたのだ。怪我を治療していたところで子供とはぐれて探していた母親に引き渡すことができたが――猫が怖いと怯える子供の姿は、見ていて痛ましいものがあった。
おしおきタイムに入る気満々だねー、なんて苦笑いをした千雪も、ふたりが突っ走らないように体を張るしかないか、とやんわり覚悟を決めている。
何か使えるものはないかと歩が祖母の机に目を向けた時、家の外から女性の悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあああ!」
「こっっの、スケベ野郎が~~っ!」
――ほんの少しだけ、時間を遡る。
バブ団の黒猫たちは、盛大に酔っていた。
何せマタタビである。猫とマタタビで動画検索するともうふんふんした途端にぐでんぐでんころんころんしている動画が多数発見できる。この黒猫たちもまた例外ではない。ところでマタタビって木なんじゃないのかとか気にしてはいけない。夢なんだから。夢ってそういうものじゃないか。猫草とごっちゃになってたとかそういうことはトップシークレットなのだ。
とにかく。
そうして酔っ払った黒猫たちは、様々なかたちで陶酔を表現していた。
鰹節に噛み付く者あり、必死の形相で爪をとぐ者あり、一心不乱に食べ物を貪る者あり――そうした中で一匹、下卑た笑いを浮かべた者が、さっき鰹節を持って越させた少女の足にすりつき始めたのだ。
「なーねーちゃん。ゴロニャンしようやー」
「ご、ごろにゃん?」
「ゴロニャンはゴロニャンやろー!」
「ひ、きゃ、きゃあああ!」
ごろにゃーご! と威嚇するような鳴き声をあげて、黒猫は少女の首元をわさわさし始める。あたかも猫が喉をゴロニャン鳴らすのを期待して撫で回すかのように!
そのあまりにも卑猥な手つきに、ブチ切れた者がいた。
「こっっの、スケベ野郎が~~っ!」
ギザギザ刃の斧を振りかぶったちとせが、黒猫の群れへと踊りかかったのだ。
●
「まったく酔っ払いってのは、見境がない……!」
今のうちに逃げなさい、と。少女に手早く指示をしてから、ちとせはバブ団を睨みつける。
「ここからは私がたっぷりお相手してあげるわ。熱い一撃を……ね」
「なんだあ、おまえは……」
ぐでんぐでんではあったものの、突然の、敵意に満ちた乱入者を見過ごすようでは荒くれ者とは名乗れまい。猫達はよろよろと立ち上がり、爪をぎらつかせはじめた。
腕にこそ自信はあれど、ひとり突撃してしまっては多勢に無勢。ちとせとて最初から頭目狙いでこそあったが、向こうもさすがに頭目が前に出ていることはなく、宴の端の不埒者を相手取って立つことになってしまった。
だが、素早い猫が飛びかかってくる直前、ちとせは予め掴んでおいた地面の砂を投げつける。
「ふぎゃっ、目が、目がー!」
「――卑怯だなんていわないでよね。生き残る為には手段は選んでなんていられないの」
使えるものはなんだって使う。それが荒野を生き抜く術。
「貴様ぁ……!」
しかし如何せん、相手は多数。じり、と間合いを詰められた矢先。
「えーいっ!」
「な、なに!?」
ころころと、足元を転がる複数の何か。
赤色桃色青色緑色――それはいくつもの毛糸玉であった。
祖母の毛糸玉を次々と転がして、歩は猫達の注意を惹きつける。その隣ではユスティーナが、大きめのハタキをパタパタと上下させていた。
「――はっ。こんなものに俺たちが釣られニャニャー!」
酔っぱらい猫達が盛大に釣り上げられていく。毛糸に絡まったり、ハタキの先のひらひらを必死でつかもうとしたりの大騒ぎだ。
「可愛いなー、もー」
とかほっこりしている千雪が見ている前で、あっという間に数匹の猫がぐだぐだになっていく。釣られなかったのは、頭目を含めてたったの3匹。
そしてさらに。
「猫だもの、ぬいぐるみとかをポーンて投げるとそれに夢中になってしまうに違いないの!」
そう言って七雅が追撃に、投げつけたぬいぐるみは――。
「……ええーっと」
「なんでだろう……これ、俺達の価値基準的には、怖いような気がしなくもないが……」
「……うん、なんか、これにビビるのも、じゃれるのも、なんでか妙に抵抗ある……」
それはちょっと尖った爪につぶらな目、みょーんとした皮膜を持つげっ歯類、モモンガの形を模したぬいぐるみであった。
何故か急にテンションの下がった正気の猫3匹は、揃って咳払いをし、せーのであわせてもう一度牙を剥いた。
「俺たちにそんな子供だましは効かねえぜ!」
「女子供ばかりだからと甘く見るような俺たちじゃ――あれ、あいつ女なの男なの?」
「今それ気にしてる場合かよ! とにかくやっちまえー!」
そう言って猫が飛びかかったのは、一番幼い歩。
「きゃっ、どうしよう――って、え!?」
「って!! あぶねーっっっ!!」
――の、はずが。
実際にその爪を受け止めたのは、間一髪、歩の前に割り込んだ翔だった。
「お兄ちゃん、どうしているのー?!」
「なんでいるのじゃねーよ、何やってんだ!
……まあ、この猫共が悪さしたらしいってのは見たら判るけどな」
近所の老人を送り届けて騒ぎに気付き駆けつけた翔は、黒猫達と妹たちを見比べる。
この場で何があったかなど、今の翔には関係ない。
わかるのは、ただひとつ。
「妹にもユスにも手は出させねーぜ。オレが相手だ、かかってこいよ!」
この猫どもが、妹の敵だということだ!
「くらえっ、鋭刃想脚!」
「頭目は用心棒のわたしに任せて! 火焔連弾!」
「じゃあ僕、捕縛蔓するねー」
「なつねのスペシャルな術式でどーんと! 薄氷っ!」
「水礫だよー、えいっ」
「アユミに何かしようものなら、ユスが霞返しで反撃しますわよ?」
――形勢逆転、猫達はあっという間に蹴散らされたのだった。
●
逃げられぬよう、ちとせがしっかりと捕縛した猫達を前に、ユスティーナはハタキをパタパタと振るのを繰り返している。
「あっ、あっ、闘争本能が著しく刺激されて体力が消耗させられるっ……!」
縛られて前脚も後ろ脚も出ないのに、飛びかかりたくてうずうずしている猫が嘆きの声を上げる。
「ねぇ、オイタよりユス達と遊んでる方が懸命だと思いますのよ?」
「猫さん達、みんなで仲良くしようよ。その方がずっと楽しいと思うよ?」
歩は手近な猫の喉をナデナデしつつ、ユスティーナに続いてそう声をかける。
状況を把握した翔は、バブ団の首領クロの前で腰に手を当て、仁王立ちで睨みつけた。
「なあ、猫共。種食っちまったら無くなるだろうが。
人間に作って貰って、お前らはそれ手伝って駄賃貰えば定期的に食えるんじゃねーか?」
――それは至極まっとうな、正論だったのだが、猫は首を傾げるばかりである。
「いやな、にーちゃん。考えても見ろって。
俺ら、猫だぞ。それを育ててとか……育つ前に我慢できずに食っちまうだろ」
「あー。やっぱ猫だよなー、目先の事しか考えてねーよなあ」
猫なりの正論を返されてがっくりと項垂れる翔。千雪は猫に言い聞かせる3人を見ながら、うん、と頷く。
「結論。猫は小さい方が可愛い。
お嬢様と歩くんはめちゃ可愛い。
小さな騎士くんは僕より強い、年上の威厳仕事して」
千雪の最後の結論は、自戒を籠めたものだった――かもしれない。
結局バブ団は、自警団に突きだそうということになった。
ところで、七雅はと言うと。
「これで村が平和になって、嬉しいの。なのにどうしてかな……よくわからないけれど、砂で汚れたモモンガのぬいぐるみをみていると、なんだか物凄く罪悪感……。
きっと貸してくれた女の子に申し訳ないという気持ちになったからかな。
いや、それとは違う何かなの――わからないの。
悲しそうな瞳のぬいぐるみ。ぬいぐるみなのになんで悲しそうなの?
でも小さな犠牲のおかげで村は救われたの!
そうに違いないの!」
ぬいぐるみを抱えて、何故かものすごくどういうわけかピンポイントにコメントに困るモノローグを呟いていた。ぬいぐるみから、ぼ○ぼの的に汗が飛んでる様を想像してもらえるときっと誰かが助かります。
●
そうしてSBSの平和は今日も守られた。
ありがとう勇者たち! この初夢はきっと誰の記憶にも残らないけれど、君たちが守ったものは確かにここにあったのだ!
「あ、一富士二鷹三茄子も犬すらいないねー、猫可愛いからいっか」
――あ。素で忘れてた。
今からでもこのバブ団を犬ってことにして……だめ? だめかー。
〈了〉
SBSの乾いた風の中にも、明るい声は響きわたる。
先頭を行く『モイ!モイ♪モイ!』成瀬 歩(CL2001650)と、手を繋いで楽しそうに笑い合う『モイ!モイ♪モイ!』ユスティーナ・オブ・グレイブル(CL2001197)。その少し後ろを、真屋・千雪(CL2001638)がついて歩いている。
見慣れた丘を越え、歩がユスティーナと千雪を振り返る。
「ユスちゃん、ちゆちゃん、おばあちゃんの村はもうすぐだよ!」
「うふふっ、手編みのセーターを頂けるなんて嬉しいんですわ♪」
一行は近隣の村に住む歩の祖母を尋ねに、近くの村から向かっているところだった。
新しいセーターを編むから採寸させて欲しいと、それは足が悪い祖母が孫の顔を見たくて作った理由だろうけれど――会いに行くのは楽しみだったのだ。
「可愛いお姫様達とお散歩とか役得だね~」
のんびりした口調で呟きつつも、千雪はユスティーナお嬢様とその友人の歩から目を離したりはしない。
最近はバブ団なる怪しげな輩が暴れているなど、危ない話も耳にする。子供だけで出かけさせるわけには――そう判断したユスティーナの親は護衛として、使用人である千雪を同行させたのだ。
そうしてふと、歩が指し示した先を見たユスティーナが、表情を曇らせた。
ほぼ同時に、歩と千雪も足を止める。
「チユキ……様子を見てきてくださいな」
胸騒ぎと呼ぶには確信めいた違和感に、ユスティーナは短い指示を出す。
千雪は小さく頷くと、祖母の身に何か起きていないかとの不安に駆け出そうとする歩の頭に手を置いて笑いかけてから一足先に村へと足を運んだ。
――近寄ってみれば、村の異様はすぐわかる。
何と言っても、村をすべて手中に収めたと思ったバブ団の連中は、大々的にマタタビ盛りを開いていたのだから。
「わーお。なにあれ」
でっかい黒猫の群れを見た千雪がそう呟いているうちに、ひとり(一匹?)の黒猫が近くにいた少女をどやしつけ始めた。
「おい、カッブはないのか!」
「か、カッブ……?」
「ああ? カッブって言ったらカツブシに決まってるだろ、鰹節!」
早く持って来い! と、黒猫が少女を蹴り飛ばす。泣きながら駆け出した少女は、角を曲がったところで転びそうになり、人影に抱きとめられた。
「お嬢さん大丈夫?」
千雪はそうして、少女からこの町に何が起こっているのかを知った。
「バブ団? マタタビ略奪? ……わーお。マタタビはあげちゃダメなの?
あ、特産品なの? そりゃあ守らなきゃだねー」
なるほどねー、と頷きながら、さてどうしたものかと千雪は考え込む。
――その様子を、物陰から見ている者がいた。
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「バブ団、か。悠長にまたたび盛りしているなんて、油断もいいとこね」
情報収集をしていた芦原 ちとせ(CL2001655)である。
SBSの荒野では腕の立つ用心棒として鳴らしていたちとせは、この村が野盗に襲われたと知った隣村の民から、バブ団の討伐を依頼されていた。
その村から送られてきた用心棒はひとりではない。野武 七雅(CL2001141)もまた、ちとせと同行してバブ団の悪行を目の当たりにしていた。
「ほわぁぁぁぁ、これはどうにかしてなつねが村を救ってあげないといけないの!」
――依頼してきたのは、歩たちが住んでいる村とは別の隣村だ。しかしそこの名産もまた、マタタビ。この村が襲われたとなれば次に狙われるのがどこかなど、考えるまでもない。そう思えば増援も、村の判断としては当然よね、と、ちとせも納得していた。
「わたしとしても報酬さえもらえれば、断る理由なんてないわ」
千雪に助けられた少女が一礼し、慌てて小さな家に駆け込んだのが見える。鰹節を取りに行ったのだろう。――バブ団は明らかに、ただマタタビ盛りを楽しんでいる。村の人間たちを人質にするような頭がなさそうなことは幸いだったが、そのことを脅された当事者である村人たちが理解できるかと言えば、別の問題だろう。
「それにしてもおっきな猫さんなの」
七雅が憤りの声を上げる。確かにあの大きさの猫に引っかかれたらと思うと、ぞっとしないものがある。
「猫さんだから恐ろしい武器は爪でもなんでもなくってそのもっふもふなフォルム! 肉体! なんて卑怯なの!」
人間の掌サイズから繰り出されるぷにっとした肉球の、ポップコーンめいた匂い。引っかかれた日にはそれを全力で堪能させられ――あれ、そういう問題だったっけ。
「そんなもっふもふにゃんこが10匹も!
これは今まで出会ったどんな敵よりも一番手ごわい相手なの!」
あ、はい。そういう問題ですね。
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ところで一方。
歩の兄である『天を翔ぶ雷霆の龍』成瀬 翔(CL2000063)もまた、バブ団に襲われた村へと向かっていた。所用で出かけていた間に、妹たちが出かけてしまったと聞いて後を追ってきたのだ。
「オレだってばあちゃんに会いたいのに!」
と飛び出そうとした翔を、大人たちは子供ひとりで出かけるなんて危ないと引き止めたのだが、近くの村まで行く程度のことに危険なことなど、本来であればそうそうないし、子供扱いされていると思えば腹立たしくもなる。ばあちゃんとこは今まで何度も行ってるし楽勝だぜ! とばかり飛び出してきてしまったのだ。
「じーさん、もうすぐ着くぜ」
「おお、すまんの」
その途中で見かけた、腰を痛めた老人は、祖母の家の近所に住んでいる男だった。
小柄な老人を背負うのなど、成長期な負けず嫌い系男子にとっては容易なことだ。
「だがの、翔よ。村の入り口までで構わんからの」
何故か老人がそう繰り返すことが、翔には気にかかる。
祖母の家も、老人の家も、村のはずれにある――腰を痛めているのに少しばかり遠い距離を歩かせる気にはなれない。
だが、村に近づくほど、奇妙な――きな臭い、とでも言えば良いだろうか。そんな感覚が伝わってくるのだ。
「なあ、じーさん……」
「ダメじゃ、わしを下ろしたら、村に帰りなさい」
「……オレにおんぶされてるのに、子供扱いするんじゃねーよ!」
翔はそう言ってニッと笑う。
老人は数度瞬きすると、それもそうじゃったのう、と困ったように笑った。
●
「チユキ。状況はわかりましたの?」
村の外れ、歩と翔の祖母の家の中で、ユスティーナが戻ってきた千雪に声をかける。
歩の祖母は荒くれ者たちが襲ってきてすぐに家の中に逃げ込んだのだが、その時に足を怪我したために詳しい話はわからなかったのだ。手当は歩が既に済ませたものの、村で育てた作物を荒らされてしまって、祖母はすっかり気落ちしてしまっていた。
「ううん……悪い猫さんが村を乗っ取っちゃったんだね!
だったらあゆみが退治してあげるんだよ! 悪い子にはめっ! ってしてあげなきゃ」
「ええ、悪いクロネコ退治ミッションスタートですわ。
悪い子にはお仕置きが必要ですものね?」
義憤に燃えた声を上げた歩に、ユスティーナが微笑みを浮かべながらも同意する。ユスティーナは千雪が戻る前にも、村から逃げ出そうとして転んだ少年を見かけたのだ。怪我を治療していたところで子供とはぐれて探していた母親に引き渡すことができたが――猫が怖いと怯える子供の姿は、見ていて痛ましいものがあった。
おしおきタイムに入る気満々だねー、なんて苦笑いをした千雪も、ふたりが突っ走らないように体を張るしかないか、とやんわり覚悟を決めている。
何か使えるものはないかと歩が祖母の机に目を向けた時、家の外から女性の悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあああ!」
「こっっの、スケベ野郎が~~っ!」
――ほんの少しだけ、時間を遡る。
バブ団の黒猫たちは、盛大に酔っていた。
何せマタタビである。猫とマタタビで動画検索するともうふんふんした途端にぐでんぐでんころんころんしている動画が多数発見できる。この黒猫たちもまた例外ではない。ところでマタタビって木なんじゃないのかとか気にしてはいけない。夢なんだから。夢ってそういうものじゃないか。猫草とごっちゃになってたとかそういうことはトップシークレットなのだ。
とにかく。
そうして酔っ払った黒猫たちは、様々なかたちで陶酔を表現していた。
鰹節に噛み付く者あり、必死の形相で爪をとぐ者あり、一心不乱に食べ物を貪る者あり――そうした中で一匹、下卑た笑いを浮かべた者が、さっき鰹節を持って越させた少女の足にすりつき始めたのだ。
「なーねーちゃん。ゴロニャンしようやー」
「ご、ごろにゃん?」
「ゴロニャンはゴロニャンやろー!」
「ひ、きゃ、きゃあああ!」
ごろにゃーご! と威嚇するような鳴き声をあげて、黒猫は少女の首元をわさわさし始める。あたかも猫が喉をゴロニャン鳴らすのを期待して撫で回すかのように!
そのあまりにも卑猥な手つきに、ブチ切れた者がいた。
「こっっの、スケベ野郎が~~っ!」
ギザギザ刃の斧を振りかぶったちとせが、黒猫の群れへと踊りかかったのだ。
●
「まったく酔っ払いってのは、見境がない……!」
今のうちに逃げなさい、と。少女に手早く指示をしてから、ちとせはバブ団を睨みつける。
「ここからは私がたっぷりお相手してあげるわ。熱い一撃を……ね」
「なんだあ、おまえは……」
ぐでんぐでんではあったものの、突然の、敵意に満ちた乱入者を見過ごすようでは荒くれ者とは名乗れまい。猫達はよろよろと立ち上がり、爪をぎらつかせはじめた。
腕にこそ自信はあれど、ひとり突撃してしまっては多勢に無勢。ちとせとて最初から頭目狙いでこそあったが、向こうもさすがに頭目が前に出ていることはなく、宴の端の不埒者を相手取って立つことになってしまった。
だが、素早い猫が飛びかかってくる直前、ちとせは予め掴んでおいた地面の砂を投げつける。
「ふぎゃっ、目が、目がー!」
「――卑怯だなんていわないでよね。生き残る為には手段は選んでなんていられないの」
使えるものはなんだって使う。それが荒野を生き抜く術。
「貴様ぁ……!」
しかし如何せん、相手は多数。じり、と間合いを詰められた矢先。
「えーいっ!」
「な、なに!?」
ころころと、足元を転がる複数の何か。
赤色桃色青色緑色――それはいくつもの毛糸玉であった。
祖母の毛糸玉を次々と転がして、歩は猫達の注意を惹きつける。その隣ではユスティーナが、大きめのハタキをパタパタと上下させていた。
「――はっ。こんなものに俺たちが釣られニャニャー!」
酔っぱらい猫達が盛大に釣り上げられていく。毛糸に絡まったり、ハタキの先のひらひらを必死でつかもうとしたりの大騒ぎだ。
「可愛いなー、もー」
とかほっこりしている千雪が見ている前で、あっという間に数匹の猫がぐだぐだになっていく。釣られなかったのは、頭目を含めてたったの3匹。
そしてさらに。
「猫だもの、ぬいぐるみとかをポーンて投げるとそれに夢中になってしまうに違いないの!」
そう言って七雅が追撃に、投げつけたぬいぐるみは――。
「……ええーっと」
「なんでだろう……これ、俺達の価値基準的には、怖いような気がしなくもないが……」
「……うん、なんか、これにビビるのも、じゃれるのも、なんでか妙に抵抗ある……」
それはちょっと尖った爪につぶらな目、みょーんとした皮膜を持つげっ歯類、モモンガの形を模したぬいぐるみであった。
何故か急にテンションの下がった正気の猫3匹は、揃って咳払いをし、せーのであわせてもう一度牙を剥いた。
「俺たちにそんな子供だましは効かねえぜ!」
「女子供ばかりだからと甘く見るような俺たちじゃ――あれ、あいつ女なの男なの?」
「今それ気にしてる場合かよ! とにかくやっちまえー!」
そう言って猫が飛びかかったのは、一番幼い歩。
「きゃっ、どうしよう――って、え!?」
「って!! あぶねーっっっ!!」
――の、はずが。
実際にその爪を受け止めたのは、間一髪、歩の前に割り込んだ翔だった。
「お兄ちゃん、どうしているのー?!」
「なんでいるのじゃねーよ、何やってんだ!
……まあ、この猫共が悪さしたらしいってのは見たら判るけどな」
近所の老人を送り届けて騒ぎに気付き駆けつけた翔は、黒猫達と妹たちを見比べる。
この場で何があったかなど、今の翔には関係ない。
わかるのは、ただひとつ。
「妹にもユスにも手は出させねーぜ。オレが相手だ、かかってこいよ!」
この猫どもが、妹の敵だということだ!
「くらえっ、鋭刃想脚!」
「頭目は用心棒のわたしに任せて! 火焔連弾!」
「じゃあ僕、捕縛蔓するねー」
「なつねのスペシャルな術式でどーんと! 薄氷っ!」
「水礫だよー、えいっ」
「アユミに何かしようものなら、ユスが霞返しで反撃しますわよ?」
――形勢逆転、猫達はあっという間に蹴散らされたのだった。
●
逃げられぬよう、ちとせがしっかりと捕縛した猫達を前に、ユスティーナはハタキをパタパタと振るのを繰り返している。
「あっ、あっ、闘争本能が著しく刺激されて体力が消耗させられるっ……!」
縛られて前脚も後ろ脚も出ないのに、飛びかかりたくてうずうずしている猫が嘆きの声を上げる。
「ねぇ、オイタよりユス達と遊んでる方が懸命だと思いますのよ?」
「猫さん達、みんなで仲良くしようよ。その方がずっと楽しいと思うよ?」
歩は手近な猫の喉をナデナデしつつ、ユスティーナに続いてそう声をかける。
状況を把握した翔は、バブ団の首領クロの前で腰に手を当て、仁王立ちで睨みつけた。
「なあ、猫共。種食っちまったら無くなるだろうが。
人間に作って貰って、お前らはそれ手伝って駄賃貰えば定期的に食えるんじゃねーか?」
――それは至極まっとうな、正論だったのだが、猫は首を傾げるばかりである。
「いやな、にーちゃん。考えても見ろって。
俺ら、猫だぞ。それを育ててとか……育つ前に我慢できずに食っちまうだろ」
「あー。やっぱ猫だよなー、目先の事しか考えてねーよなあ」
猫なりの正論を返されてがっくりと項垂れる翔。千雪は猫に言い聞かせる3人を見ながら、うん、と頷く。
「結論。猫は小さい方が可愛い。
お嬢様と歩くんはめちゃ可愛い。
小さな騎士くんは僕より強い、年上の威厳仕事して」
千雪の最後の結論は、自戒を籠めたものだった――かもしれない。
結局バブ団は、自警団に突きだそうということになった。
ところで、七雅はと言うと。
「これで村が平和になって、嬉しいの。なのにどうしてかな……よくわからないけれど、砂で汚れたモモンガのぬいぐるみをみていると、なんだか物凄く罪悪感……。
きっと貸してくれた女の子に申し訳ないという気持ちになったからかな。
いや、それとは違う何かなの――わからないの。
悲しそうな瞳のぬいぐるみ。ぬいぐるみなのになんで悲しそうなの?
でも小さな犠牲のおかげで村は救われたの!
そうに違いないの!」
ぬいぐるみを抱えて、何故かものすごくどういうわけかピンポイントにコメントに困るモノローグを呟いていた。ぬいぐるみから、ぼ○ぼの的に汗が飛んでる様を想像してもらえるときっと誰かが助かります。
●
そうしてSBSの平和は今日も守られた。
ありがとう勇者たち! この初夢はきっと誰の記憶にも残らないけれど、君たちが守ったものは確かにここにあったのだ!
「あ、一富士二鷹三茄子も犬すらいないねー、猫可愛いからいっか」
――あ。素で忘れてた。
今からでもこのバブ団を犬ってことにして……だめ? だめかー。
〈了〉
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
