マルタ修道会より 死者のための祈りと冒涜
●死者の歩くこと悪夢のごとく
「聖トマス教会付属病院にて、新型インフルエンザによる死亡者が多数発生したことが、我々が事件を知ったはじまりだった」
インフルエンザ。感染性の高い風邪の一種とされるが、昔から死亡例は珍しくない。国内だけでも年間数百人、世界的に見れば数十万人の死者が出る病気である。
とはいえ、一つの病院で60人ほどの死者が出たことは、やはり異常な偏りであった。
「葬儀のため集めた死体30体がある日突然にして安置所から消え、その翌日には残り30体ほどが消えた。
死体を盗む何者かがいたにしても大がかりすぎる。
まるで自ら起き上がりどこかへ歩いて行ったかのような、突然の消失だ」
そこで、レコーダーを置く。自らの考えを音声にまとめていたのだ。
緑髪の修道女は眉間をもむようにして疲れの息を吐いた。
「ただの怪事件ではないと思っていたが、まさかな」
先月における聖ミカエル教会からの報告書が、レコーダーの下に置かれている。
教会を武装して襲った30体ほどの暴徒。その特徴が死体たちと一致したのだ。
死体が歩き出し、結託して人を襲っているのだ。
録音スイッチを押し直し、緑髪の修道女は続けた。
「大昔の悪夢がよみがえろうとしている。我々はこれを『ブラックテラー』と呼び、対策を始めることにした。
愛しき我らが隣人、日本国の民を助けるべく、戦うことにしたのだ」
背後の扉が開き、光が差し込む。
銀色の二丁拳銃を備えた修道女と、金色のタンバリンを備えた修道女。
彼女たちに振り返り、茨の冠を手に取った。
「さて、我々も行くとしようか」
●そして悪夢は現実となって
扉を叩く音。
無数の叩く音。
銃撃がドアノブを砕く音。
開く扉の軋む音。
悲鳴。
悲鳴。
銃声と銃声。
静寂。
そうした一連の音楽が、ある村で無数に奏でられた。
一夜にして寒村の住民全てが殺されるという事件が、起きたのである。
「……というのが、今回感知した事件です。予め感知していれば防げたものと、思わざるをえません」
悲しげに語るのは久方 真由美(nCL2000003)。ファイヴの夢見である。
ここはファイヴの会議室。集められたのは、覚者たちだ。
「この一団は死体を大きな袋に回収した後、どこかへ消えました。
しかし新たに現われるであろう場所は特定することができました。
スタッフの手によって住民避難は済んでいます。
これより現地に向かい、迎撃作戦に移ってください」
現われる一団というのは、『ペストマスクをつけた集団と、四つ足の怪物』である。
ペストマスクは人間の死体が妖化したものとされ、実銃などで武装している。
ヨツアシは全長3メートルほどの巨体をもち、黒い粘液のようなものをはきかけるほか、死体を飲み込んで格納する能力を持っているようだ。
「余談ですが、現地には別の覚者集団が向かっており、場合によっては協力できるようです。
これ以上同様の被害を出すわけにはいきません。皆さん、なんとしても妖たちを倒してください」
「聖トマス教会付属病院にて、新型インフルエンザによる死亡者が多数発生したことが、我々が事件を知ったはじまりだった」
インフルエンザ。感染性の高い風邪の一種とされるが、昔から死亡例は珍しくない。国内だけでも年間数百人、世界的に見れば数十万人の死者が出る病気である。
とはいえ、一つの病院で60人ほどの死者が出たことは、やはり異常な偏りであった。
「葬儀のため集めた死体30体がある日突然にして安置所から消え、その翌日には残り30体ほどが消えた。
死体を盗む何者かがいたにしても大がかりすぎる。
まるで自ら起き上がりどこかへ歩いて行ったかのような、突然の消失だ」
そこで、レコーダーを置く。自らの考えを音声にまとめていたのだ。
緑髪の修道女は眉間をもむようにして疲れの息を吐いた。
「ただの怪事件ではないと思っていたが、まさかな」
先月における聖ミカエル教会からの報告書が、レコーダーの下に置かれている。
教会を武装して襲った30体ほどの暴徒。その特徴が死体たちと一致したのだ。
死体が歩き出し、結託して人を襲っているのだ。
録音スイッチを押し直し、緑髪の修道女は続けた。
「大昔の悪夢がよみがえろうとしている。我々はこれを『ブラックテラー』と呼び、対策を始めることにした。
愛しき我らが隣人、日本国の民を助けるべく、戦うことにしたのだ」
背後の扉が開き、光が差し込む。
銀色の二丁拳銃を備えた修道女と、金色のタンバリンを備えた修道女。
彼女たちに振り返り、茨の冠を手に取った。
「さて、我々も行くとしようか」
●そして悪夢は現実となって
扉を叩く音。
無数の叩く音。
銃撃がドアノブを砕く音。
開く扉の軋む音。
悲鳴。
悲鳴。
銃声と銃声。
静寂。
そうした一連の音楽が、ある村で無数に奏でられた。
一夜にして寒村の住民全てが殺されるという事件が、起きたのである。
「……というのが、今回感知した事件です。予め感知していれば防げたものと、思わざるをえません」
悲しげに語るのは久方 真由美(nCL2000003)。ファイヴの夢見である。
ここはファイヴの会議室。集められたのは、覚者たちだ。
「この一団は死体を大きな袋に回収した後、どこかへ消えました。
しかし新たに現われるであろう場所は特定することができました。
スタッフの手によって住民避難は済んでいます。
これより現地に向かい、迎撃作戦に移ってください」
現われる一団というのは、『ペストマスクをつけた集団と、四つ足の怪物』である。
ペストマスクは人間の死体が妖化したものとされ、実銃などで武装している。
ヨツアシは全長3メートルほどの巨体をもち、黒い粘液のようなものをはきかけるほか、死体を飲み込んで格納する能力を持っているようだ。
「余談ですが、現地には別の覚者集団が向かっており、場合によっては協力できるようです。
これ以上同様の被害を出すわけにはいきません。皆さん、なんとしても妖たちを倒してください」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖すべての撃退
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
これまでの流れを一旦解説してから、まとめに入りましょう
【マルタシリーズのあらすじ】
国土なき国マルタ修道会(ロドス及びマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会)はカトリック系騎士修道会である。
当会は妖災害をうけた日本各地に教会を建設し、支援活動を行なってきた。
だがそんなおり、教会のひとつが妖による襲撃を受ける。
象徴的なペストマスク。度重なる妖襲撃事件。
これに夢見を介して関わることになったファイヴ一行は……。
・サンヴァレット修道院より ダンス・マカブル
/quest.php?qid=1298
・マルタ修道会 タランテラ・メロディ
/quest.php?qid=1407
【依頼内容のまとめ】
●現場
山々に挟まれた小さな村です。
過疎が進み老人ばかりになり、小集落化していました。
家々が集まり、細く未舗装の坂道が多くあります。
各家々の集まった中に籠城したり、どこかの家の中に陣取ったりすると戦闘を有利に進められるでしょう。
籠城作戦の場合、防御・回避判定にボーナス。
また家々を盾にする場合序盤は微少ボーナス。相手も同じく盾に出来る状況になればボーナスは相殺されてなくなります。
●敵戦力
・ペストマスク暴徒×30 (R1妖 系統不明)
妖に操られた死体。低い戦闘力のわりに人間並みの判断力をもつ。
小銃(遠単物)、グレネード(遠列物)を装備。
ベースは無名憤怒者並だが、HPをはじめ基礎戦闘値が強化されている。
・ヨツアシ×2
ペストマスクをつけた四つ足の巨獣。全長3m。 (R2生物系妖)
死体を大量に格納する能力をもつ。
突進(物近列)、粘液放射(貫2、毒)
●味方戦力
現地にはマルタ修道会から派遣された3人の覚者が向かっています。
連絡先とかは知らないですが過去2件の依頼で一定の信頼を得ているので、(顔見知りが一人でもいれば)一旦事情を説明して協力してもらうことが可能でしょう。
システム的には八重紅AIで動くので詳細なプレイング指示を必要としません。頼みたいことがあったら本人にお願いしてください。
メンバーは以下の三名。
・ジャンナ:スピード型二丁拳銃使い。中衛。
・小崎:舞踏療法士、特殊体術使い。反撃技に優れる。前衛。
・茨木:不明。遠距離ヒールタイプ。後衛。(※まだ会ったことのないひと)
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2017年12月29日
2017年12月29日
■メイン参加者 6人■

●優しい世界なんかない
兵士が戦闘前に銃の点検をするように、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)もある家のリビングで魔導書の表面を指でなぞっていた。
ラーラの魔力が甘い香りになってふわふわと浮かび、時折タンポポの綿毛のような光を作っては消えていく。
その光景を、森宮・聖奈(CL2001649)は向かいのテーブルから眺めていた。ラーラが照れたように視線を返す。
「聖奈さんも、点検を?」
「いえ……私は、これをどう扱えばいいのかまだよくわからなくて」
魔導書や術書それ自体が神秘的性質を持つことは古くから知られており、日本に妖や覚者が現われた当初は科学信仰バリバリの兵器で対抗していた人類もコストやポテンシャルの面から魔術道具を使う傾向が増えた……という話を聞く。
聖奈のこれはファイヴの武器庫からポイントで購入した聖書だが、これもいまや立派な武器だ。
「そういえば、以前に小崎さんからタンバリンを頂いていたような……」
「あ、はい! 持ってきていますよ。けどどう扱えばいいのか」
会話を遮るように、外でドンという落とした。
銃声。それに爆弾の爆ぜる音と振動だ。
二人は素早く壁に背をつけ、窓から外を覗いた。
細い坂道を上り、こちらに接近してくるペストマスクの一団。
それを見下ろすようにして、真屋・千雪(CL2001638)は高い空の上から様子を眺めていた。
「あれって全部死んでるんだよね?」
「そのはずなんだけどね」
背後からちょっぴりハスキーな声がした。飛行能力をもたない千雪が、『ニュクスの羽風』如月・彩吹(CL2001525)に抱えられるかたちで間接飛行していたのだ。
「とてもそうは見えないな。死体に糸をつけるみたいに操ってるならもっとギクシャクするはずなのに、あんまりにもスムーズだ」
人間という生物のもつ機能をまるごと乗っ取って再利用しているかのような、きわめて的確な動きをしている。恐らく肉体のリミッターを解除することで常人を超越した身体機能も発揮していることだろう。常時火事場の馬鹿力状態だ。
「疑問に説明はついたけど、もっとイヤな疑惑がわいたね」
「疑惑って?」
密着しすぎて振り返れないが、目線だけをわずかに後ろに向ける千雪。
表情は見えないが、あまりいい顔はしていなさそうだ。
声で分かる。
「状態が規格化されてるってことは、規格化した奴が居る。オオモトがいるってことなんだ」
民家の屋根に登り、接近する一団を双眼鏡で確認する『秘心伝心』鈴白 秋人(CL2000565)。
「数も武装も情報通りだ。それにしても、動きがまるで統率された兵隊だね。他の仲間に通信を送っておいて」
「りょーかい」
耳に手を当て、送受心でチーム内ハブ通信を行なう『眩い光』華神 悠乃(CL2000231)。
「シスターさんたちは?」
「まだ見えない。この段階で見えないってことは、人目につかないコースを進んでるんだろうね。ということは……」
「まずは私たちで食い止めます、かっ」
悠乃はぴょんと屋根から飛ぶと、ごろんと転がって衝撃を逃がしつつ着地。
戦闘開始の通信を送った。
空に彩吹たちを堂々と浮かべていたのでむりもないが、ペストマスクたちはあらかじめ戦闘に入ることを予測していたようだ。
集落に立ち入る前にヨツアシを盾にするよう陣形を組み駆け足で向かってくる。
こちらが堂々と接近戦をしかけられないように波のような牽制射撃を行ない、グレネードを投げる。
とてもじゃないがランクの低い妖がやるような連係プレイじゃない。知的すぎる。
「ランク3でもここまでやらないぞ。バックになにがいるんだか」
爆風と弾幕を民家の影に隠れることでやりすごし、合流のハンドサインを送る悠乃。
そしてすぐさま身を乗り出し、ペストマスクの集団へと突撃をしかけた。
いわゆるストリートファイトにおいて集団に突っ込むのは自殺行為でしかない。十秒間に出来ることの限られる覚者戦闘でもそれは同じだ。しかし悠乃が新たに獲得したある技能をもってすれば、この状況は好機となる。
「こう、してっと」
どこか奇妙な構えをとる悠乃。弾幕を手足の装備で器用に弾き、飛んでくるグレネードをしっぽで打ち返す。
跳弾は奇妙な軌道を描きペストマスクへ帰って行き、爆発もまたペストマスクたちへと打ち返される。
普通ならこのぶっこわれたカウンタープレイに混乱するところだが、ペストマスクたちは痛覚も感情も無くしたかのような動きで攻撃を継続。
悠乃はどこかやりにくさを感じつつも、爪の先に宿った炎で兵士たちを薙ぎ払いにかかった。
「ヨツアシを一体、そっちに誘導するよ。かかってくれればいいけど」
ペストマスクの盾になっていたヨツアシのひとつに狙いをつけ、秋人が空圧を纏わせた矢を打ち込んでいく。
ヨツアシは口のような部位を大きく開いてごうごうと吠えたかと思うと、秋人の方へと走り寄ってくる。
ペストマスクたちと違ってあまり知能が高くはなさそうだ。
秋人はよしと頷いて、屋根から屋根へ飛び移るようにして誘導を始めた。
その一方で、千雪と彩吹はがら空きになったペストマスクたちへの襲撃を始める。
「下ろして大丈夫だよー。てか、そろそろ手ぶらに持ってらんなくなったんじゃない?」
「確かに。格闘しながらじゃ守り切れないや」
彩吹は千雪を民家の影にすとんと下ろすと、翼を広げて低空を滑空。途中からスライディングのフォームへ切り替えると、ペストマスクの前衛団を一気に蹴倒していった。
「うーん、守られるより守りたいって心境なんだけど……経験値不足はつらいねー、琴巫姫(ことぶき)ちゃん!」
千雪は竪琴を奏でるようにして清廉珀香を開始。
彩吹や悠乃の保護をし始めた。
一方、民家の中に陣取って籠城作戦をとっていたラーラと聖奈。
秋人が誘導してきたヨツアシに狙いをつけ、早速攻撃を始めていた。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
開ききった窓から手を突き出し、魔方陣越しに炎のマシンガンショットを繰り出すラーラ。
対抗して毒液をはきかけてくるヨツアシだが、サッと壁に隠れることでその殆どを防いだ。
とはいえ少しは浴びてしまったようで、手のひらについた毒液がじりじりと焼けるような痛みを放った。
「つ……!」
「ラーラさん、身を伏せてください。今治療しますから!」
聖奈は腰ベルトにつけたバッグからプラスチックボトルを二つほど引っ張り出すと、神への祈りを呟きながらラーラの手にかけていった。
まるで酸でもかけられたような手がみるみる綺麗な姿を取り戻していく。
「わ、なんですか」
「聖別されたワインと、傷薬と、お祈りと……あと色々です! ラーラさん次!」
「は、はい!」
ヨツアシが勢いよく接近してくる足音。
ラーラは窓から身を乗り出すようにして火焔連弾を放つ――と、その横から激しい銃撃が加わった。
更にタンバリンの音色と輝く星の軌跡をひいて、修道女が殴りかかる。
「小崎さん、それに……ジャンナさんも!」
「またお会いしましたね」
ジャンナはおっとりとした、いかにも聖女然とした微笑みをラーラに向けた。
「そこで秋人さんに会いまして、話は全て聞きました。敵を囲い込む作戦ですね」
こくりと頷きあうジャンナとラーラ。
小崎もそこに加わって、聖奈が『わー、小崎さん小崎さん』といってタンバリンをしゃらしゃらしていた。
「…………」
加わっていないのは茨木のみ。
ラーラたちを観察するような目で見ていた。
「挨拶はそのくらいにしておけ。行くぞ。ブラックテラーは待ってくれない」
茨木に言われ、ジャンナたちが駆けだしていく。聖奈は手を振り、そして小首を傾げた。
「ぶらっくてらー?」
●科学信仰が覆い隠したもの
ペストマスクの猛攻をいつまでも食い止められるものではない。
じわじわと集落内に押し込まれ、民家を盾にした戦術も効果が薄れてきた頃。
ファイヴとマルタ修道会は協力して敵軍を囲い込む作戦に出た。
その要となったのが、最前衛で格闘する悠乃とひらひらと飛び回りながら銃撃を誘う彩吹であった。
ヒュウ、という不思議な呼吸法と共に掌底を繰り出す悠乃。
ペストマスクはそれをクロスアームで受け、絡めるように腕をホールド。横から別のペストマスクが首を刈り取るようなハイキックを繰り出してくる。
「ぐっ……!」
歯を食いしばる。奴らの身体能力なら、最悪首をへしおられかねない。
ホールドされた腕を軸に飛び、相手に足から絡みつくようにして相手の腕を逆向きに開く。関節技でタップしてくれる相手ではないので、へし折る寸前のところで開放して離脱。ごろごろ転がってその場を逃れた。
「おっ、活躍のチャンス!」
千雪はここぞとばかりに杖を地面に突き立て、竪琴を美しく素早く奏でた。するとあたりの土から雑草が凄まじい勢いで伸び、ペストマスクたちの足に絡みついた。
逃れる悠乃への追撃をハズすには十分な妨害だ。
悠乃が建物の角に飛び込んでいったところで、入れ替わりに彩吹が身をさらした。
追いかけるペストマスクにカウンターを入れるように、不意打ち気味のフライングニーキックだ。
別のペストマスクが銃を構える。これ見よがしに挑発したあと、彩吹はサッと建物の裏へと回り込んだ。
射撃線を維持するべく追いかけるペストマスク。
すると、その退路を塞ぐようにマルタ修道会の修道女たちが展開しはじめた。
「その人たちを大地に還せ、ブラックテラー。そいつは魂への冒涜だ」
指を鳴らし、きゅぱっとペストマスクたちを指さすのは茨木。緑髪のドレッドヘアーだ。彼女に応じるように茨で出来たサークレットが飛び出し、ペストマスクたちの上を旋回。巨大な方陣を組むと、聖なる光を降り注がせた。
そこへ飛び込んでいくジャンナと小崎。
「今です。集中砲火を」
「無理に突っ込んでも構わない。回復は任せて」
秋人が物陰から飛び出し、矢を斜め上に発射。空中で爆発した矢が治癒液のシャワーになって降り注ぐ。
それに伴って、闇雲に弾幕をはるペストマスクへとラーラが飛び出してきた。
空中に指で即席の魔方陣(魔法施術した爪で描く逆三角形)を作ると炎の獅子を生成。肩や胸に銃弾を受けるも、聖奈が後ろから浴びせかけた聖水によってぬるりと払われていく。
無数の銃弾、炎、その他諸々が叩き込まれ、ペストマスクたちはついに膝を突き、死体へと還ったのだった。
●見えない明日のために
ペストマスクたちと違って、ヨツアシはどろりと泥のように溶けたかと思うと跡形も無く消えてしまった。
生物系妖が跡形も無く消えるというのは聞いたことが無い。元になった生物の死体が残るはずなのだが……。
「や、小崎さん。また会えたね」
「こんな場所でなければゆっくりお話もできたのですが。私たちは遺体を火葬して遺族に返す役目があるのですが、皆さんは帰りますか?」
小崎と握手を交わして、彩吹は苦笑した。
「ううん、手伝うよ。よかったら話も聞かせて」
「そうだよー。ここまで付き合って定時退社なんて、冷たいことしないよー」
ぽんぽんと自分の杖を叩いて見せる千雪。
小崎は『それではお言葉に甘えて』といって微笑んだ。
それから暫く。
ペストマスクに『された』人々の死体を略式葬儀をへて火葬し、遺骨をそれぞれ布に包んでいった。こんな姿でも元は人。家族がいて、人生があった。それが唐突に奪われた悲しみに寄り添うことはできずとも、手助けくらいはできるはずだ。その一つが、火葬して骨を返すことだった。
両手を組んで祈りを捧げる聖奈。
彼女の持っていたタンバリンを目にして、秋人が遠慮がちに声をかけた。
「森宮さん。もし余計なことだったらごめんね。そのタンバリンは正式に装備したほうがいいと思うよ」
「……?」
「えっと、ステータスシートの装備アイテムの所に『装備変更』ってボタンがあるから、それを押してみて」
というところまで説明して、秋人はじゃあと言ってその場を離れた。ヨツアシたちのことが気になったのだ。
解けて消えたあとの土。なんのへんてつもない土。元になった生物はいないのか? いや、ただ見えないだけでそこにいるのでは。例えばきわめて小さい、そう、細菌のような……。
「それにしても、死体を集めてどうするんだろう。そんなの、薬売りくらいしか心当たりが――」
「いいえ、秋人さん。もう一人居たはずです。私たちは見て、知っているはず」
「……」
背後からラーラに声をかけられ、秋人はゆっくりと振り返った。
「秋人さん。癒力組の皆さんとは冷酷島以来連絡をとっていますか? 『あの事件』の顛末は、確認していますか?」
「いや……していないね……」
「先日花組の皆さんに確認を取ってきました。彼女たちはこう言いました。『あれから事件は起きていない』と。どういうことか分かりますか? あれは終わってなんか居ないはず。『あれ』がやめるはずなんかない。なら、本体も目的も変異したと……そう考えるのが自然ではありませんか」
ラーラの話に、あとからやってきた聖奈が『?』という顔をしている。
秋人は手を翳して首を振った。
「確証がないから、断定はよそう。それに、分からない人たちに対して説明がしづらいよ」
祈りを終えたジャンナ・ヴァレット。彼女の前には灰の山。
おっとりとした修道女の背後に、悠乃が腕組みをして立っていた。
「これからどうするんです?」
「帰って、お食事の準備をしますわ」
「誤魔化さなくてもいいんですよ」
悠乃の目が、うっすらと見開く。
「これらが大きな存在である可能性を、あなたちは認識している。ただの妖事件じゃない。『組織的な妖』、ないしは『大妖クラスの存在』を認識した。そうでしょう?」
「……『ブラックテラー』」
ジャンナはそう呟いて、振り返った。
「我々はそう呼ぶことにしました。本国からも追加の兵隊が送られて来ます。覚者の素質を持った修道女たちが」
「戦争をするつもりなんだ。私たちをのけものにして」
「そんなつもりでは……」
目をそらすジャンナ。
悠乃は一歩、大きく踏み込んだ。
「私たちはファイヴ。『国の旗印になるため』の国家公認組織。私たちは、協力できるはずです。そうでしょう?」
「……わかりました」
ジャンナは、本性を見せるかのように目の色を変えた。
「お話し合いをしましょう。責任者を集めて、場を設けます。ダンスのお誘いは、その時に」
こうして、ファイヴは自ら踏み込んでいくことになる。
マルタ修道会とブラックテラー。
人妖戦争のさなかへ。
兵士が戦闘前に銃の点検をするように、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)もある家のリビングで魔導書の表面を指でなぞっていた。
ラーラの魔力が甘い香りになってふわふわと浮かび、時折タンポポの綿毛のような光を作っては消えていく。
その光景を、森宮・聖奈(CL2001649)は向かいのテーブルから眺めていた。ラーラが照れたように視線を返す。
「聖奈さんも、点検を?」
「いえ……私は、これをどう扱えばいいのかまだよくわからなくて」
魔導書や術書それ自体が神秘的性質を持つことは古くから知られており、日本に妖や覚者が現われた当初は科学信仰バリバリの兵器で対抗していた人類もコストやポテンシャルの面から魔術道具を使う傾向が増えた……という話を聞く。
聖奈のこれはファイヴの武器庫からポイントで購入した聖書だが、これもいまや立派な武器だ。
「そういえば、以前に小崎さんからタンバリンを頂いていたような……」
「あ、はい! 持ってきていますよ。けどどう扱えばいいのか」
会話を遮るように、外でドンという落とした。
銃声。それに爆弾の爆ぜる音と振動だ。
二人は素早く壁に背をつけ、窓から外を覗いた。
細い坂道を上り、こちらに接近してくるペストマスクの一団。
それを見下ろすようにして、真屋・千雪(CL2001638)は高い空の上から様子を眺めていた。
「あれって全部死んでるんだよね?」
「そのはずなんだけどね」
背後からちょっぴりハスキーな声がした。飛行能力をもたない千雪が、『ニュクスの羽風』如月・彩吹(CL2001525)に抱えられるかたちで間接飛行していたのだ。
「とてもそうは見えないな。死体に糸をつけるみたいに操ってるならもっとギクシャクするはずなのに、あんまりにもスムーズだ」
人間という生物のもつ機能をまるごと乗っ取って再利用しているかのような、きわめて的確な動きをしている。恐らく肉体のリミッターを解除することで常人を超越した身体機能も発揮していることだろう。常時火事場の馬鹿力状態だ。
「疑問に説明はついたけど、もっとイヤな疑惑がわいたね」
「疑惑って?」
密着しすぎて振り返れないが、目線だけをわずかに後ろに向ける千雪。
表情は見えないが、あまりいい顔はしていなさそうだ。
声で分かる。
「状態が規格化されてるってことは、規格化した奴が居る。オオモトがいるってことなんだ」
民家の屋根に登り、接近する一団を双眼鏡で確認する『秘心伝心』鈴白 秋人(CL2000565)。
「数も武装も情報通りだ。それにしても、動きがまるで統率された兵隊だね。他の仲間に通信を送っておいて」
「りょーかい」
耳に手を当て、送受心でチーム内ハブ通信を行なう『眩い光』華神 悠乃(CL2000231)。
「シスターさんたちは?」
「まだ見えない。この段階で見えないってことは、人目につかないコースを進んでるんだろうね。ということは……」
「まずは私たちで食い止めます、かっ」
悠乃はぴょんと屋根から飛ぶと、ごろんと転がって衝撃を逃がしつつ着地。
戦闘開始の通信を送った。
空に彩吹たちを堂々と浮かべていたのでむりもないが、ペストマスクたちはあらかじめ戦闘に入ることを予測していたようだ。
集落に立ち入る前にヨツアシを盾にするよう陣形を組み駆け足で向かってくる。
こちらが堂々と接近戦をしかけられないように波のような牽制射撃を行ない、グレネードを投げる。
とてもじゃないがランクの低い妖がやるような連係プレイじゃない。知的すぎる。
「ランク3でもここまでやらないぞ。バックになにがいるんだか」
爆風と弾幕を民家の影に隠れることでやりすごし、合流のハンドサインを送る悠乃。
そしてすぐさま身を乗り出し、ペストマスクの集団へと突撃をしかけた。
いわゆるストリートファイトにおいて集団に突っ込むのは自殺行為でしかない。十秒間に出来ることの限られる覚者戦闘でもそれは同じだ。しかし悠乃が新たに獲得したある技能をもってすれば、この状況は好機となる。
「こう、してっと」
どこか奇妙な構えをとる悠乃。弾幕を手足の装備で器用に弾き、飛んでくるグレネードをしっぽで打ち返す。
跳弾は奇妙な軌道を描きペストマスクへ帰って行き、爆発もまたペストマスクたちへと打ち返される。
普通ならこのぶっこわれたカウンタープレイに混乱するところだが、ペストマスクたちは痛覚も感情も無くしたかのような動きで攻撃を継続。
悠乃はどこかやりにくさを感じつつも、爪の先に宿った炎で兵士たちを薙ぎ払いにかかった。
「ヨツアシを一体、そっちに誘導するよ。かかってくれればいいけど」
ペストマスクの盾になっていたヨツアシのひとつに狙いをつけ、秋人が空圧を纏わせた矢を打ち込んでいく。
ヨツアシは口のような部位を大きく開いてごうごうと吠えたかと思うと、秋人の方へと走り寄ってくる。
ペストマスクたちと違ってあまり知能が高くはなさそうだ。
秋人はよしと頷いて、屋根から屋根へ飛び移るようにして誘導を始めた。
その一方で、千雪と彩吹はがら空きになったペストマスクたちへの襲撃を始める。
「下ろして大丈夫だよー。てか、そろそろ手ぶらに持ってらんなくなったんじゃない?」
「確かに。格闘しながらじゃ守り切れないや」
彩吹は千雪を民家の影にすとんと下ろすと、翼を広げて低空を滑空。途中からスライディングのフォームへ切り替えると、ペストマスクの前衛団を一気に蹴倒していった。
「うーん、守られるより守りたいって心境なんだけど……経験値不足はつらいねー、琴巫姫(ことぶき)ちゃん!」
千雪は竪琴を奏でるようにして清廉珀香を開始。
彩吹や悠乃の保護をし始めた。
一方、民家の中に陣取って籠城作戦をとっていたラーラと聖奈。
秋人が誘導してきたヨツアシに狙いをつけ、早速攻撃を始めていた。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
開ききった窓から手を突き出し、魔方陣越しに炎のマシンガンショットを繰り出すラーラ。
対抗して毒液をはきかけてくるヨツアシだが、サッと壁に隠れることでその殆どを防いだ。
とはいえ少しは浴びてしまったようで、手のひらについた毒液がじりじりと焼けるような痛みを放った。
「つ……!」
「ラーラさん、身を伏せてください。今治療しますから!」
聖奈は腰ベルトにつけたバッグからプラスチックボトルを二つほど引っ張り出すと、神への祈りを呟きながらラーラの手にかけていった。
まるで酸でもかけられたような手がみるみる綺麗な姿を取り戻していく。
「わ、なんですか」
「聖別されたワインと、傷薬と、お祈りと……あと色々です! ラーラさん次!」
「は、はい!」
ヨツアシが勢いよく接近してくる足音。
ラーラは窓から身を乗り出すようにして火焔連弾を放つ――と、その横から激しい銃撃が加わった。
更にタンバリンの音色と輝く星の軌跡をひいて、修道女が殴りかかる。
「小崎さん、それに……ジャンナさんも!」
「またお会いしましたね」
ジャンナはおっとりとした、いかにも聖女然とした微笑みをラーラに向けた。
「そこで秋人さんに会いまして、話は全て聞きました。敵を囲い込む作戦ですね」
こくりと頷きあうジャンナとラーラ。
小崎もそこに加わって、聖奈が『わー、小崎さん小崎さん』といってタンバリンをしゃらしゃらしていた。
「…………」
加わっていないのは茨木のみ。
ラーラたちを観察するような目で見ていた。
「挨拶はそのくらいにしておけ。行くぞ。ブラックテラーは待ってくれない」
茨木に言われ、ジャンナたちが駆けだしていく。聖奈は手を振り、そして小首を傾げた。
「ぶらっくてらー?」
●科学信仰が覆い隠したもの
ペストマスクの猛攻をいつまでも食い止められるものではない。
じわじわと集落内に押し込まれ、民家を盾にした戦術も効果が薄れてきた頃。
ファイヴとマルタ修道会は協力して敵軍を囲い込む作戦に出た。
その要となったのが、最前衛で格闘する悠乃とひらひらと飛び回りながら銃撃を誘う彩吹であった。
ヒュウ、という不思議な呼吸法と共に掌底を繰り出す悠乃。
ペストマスクはそれをクロスアームで受け、絡めるように腕をホールド。横から別のペストマスクが首を刈り取るようなハイキックを繰り出してくる。
「ぐっ……!」
歯を食いしばる。奴らの身体能力なら、最悪首をへしおられかねない。
ホールドされた腕を軸に飛び、相手に足から絡みつくようにして相手の腕を逆向きに開く。関節技でタップしてくれる相手ではないので、へし折る寸前のところで開放して離脱。ごろごろ転がってその場を逃れた。
「おっ、活躍のチャンス!」
千雪はここぞとばかりに杖を地面に突き立て、竪琴を美しく素早く奏でた。するとあたりの土から雑草が凄まじい勢いで伸び、ペストマスクたちの足に絡みついた。
逃れる悠乃への追撃をハズすには十分な妨害だ。
悠乃が建物の角に飛び込んでいったところで、入れ替わりに彩吹が身をさらした。
追いかけるペストマスクにカウンターを入れるように、不意打ち気味のフライングニーキックだ。
別のペストマスクが銃を構える。これ見よがしに挑発したあと、彩吹はサッと建物の裏へと回り込んだ。
射撃線を維持するべく追いかけるペストマスク。
すると、その退路を塞ぐようにマルタ修道会の修道女たちが展開しはじめた。
「その人たちを大地に還せ、ブラックテラー。そいつは魂への冒涜だ」
指を鳴らし、きゅぱっとペストマスクたちを指さすのは茨木。緑髪のドレッドヘアーだ。彼女に応じるように茨で出来たサークレットが飛び出し、ペストマスクたちの上を旋回。巨大な方陣を組むと、聖なる光を降り注がせた。
そこへ飛び込んでいくジャンナと小崎。
「今です。集中砲火を」
「無理に突っ込んでも構わない。回復は任せて」
秋人が物陰から飛び出し、矢を斜め上に発射。空中で爆発した矢が治癒液のシャワーになって降り注ぐ。
それに伴って、闇雲に弾幕をはるペストマスクへとラーラが飛び出してきた。
空中に指で即席の魔方陣(魔法施術した爪で描く逆三角形)を作ると炎の獅子を生成。肩や胸に銃弾を受けるも、聖奈が後ろから浴びせかけた聖水によってぬるりと払われていく。
無数の銃弾、炎、その他諸々が叩き込まれ、ペストマスクたちはついに膝を突き、死体へと還ったのだった。
●見えない明日のために
ペストマスクたちと違って、ヨツアシはどろりと泥のように溶けたかと思うと跡形も無く消えてしまった。
生物系妖が跡形も無く消えるというのは聞いたことが無い。元になった生物の死体が残るはずなのだが……。
「や、小崎さん。また会えたね」
「こんな場所でなければゆっくりお話もできたのですが。私たちは遺体を火葬して遺族に返す役目があるのですが、皆さんは帰りますか?」
小崎と握手を交わして、彩吹は苦笑した。
「ううん、手伝うよ。よかったら話も聞かせて」
「そうだよー。ここまで付き合って定時退社なんて、冷たいことしないよー」
ぽんぽんと自分の杖を叩いて見せる千雪。
小崎は『それではお言葉に甘えて』といって微笑んだ。
それから暫く。
ペストマスクに『された』人々の死体を略式葬儀をへて火葬し、遺骨をそれぞれ布に包んでいった。こんな姿でも元は人。家族がいて、人生があった。それが唐突に奪われた悲しみに寄り添うことはできずとも、手助けくらいはできるはずだ。その一つが、火葬して骨を返すことだった。
両手を組んで祈りを捧げる聖奈。
彼女の持っていたタンバリンを目にして、秋人が遠慮がちに声をかけた。
「森宮さん。もし余計なことだったらごめんね。そのタンバリンは正式に装備したほうがいいと思うよ」
「……?」
「えっと、ステータスシートの装備アイテムの所に『装備変更』ってボタンがあるから、それを押してみて」
というところまで説明して、秋人はじゃあと言ってその場を離れた。ヨツアシたちのことが気になったのだ。
解けて消えたあとの土。なんのへんてつもない土。元になった生物はいないのか? いや、ただ見えないだけでそこにいるのでは。例えばきわめて小さい、そう、細菌のような……。
「それにしても、死体を集めてどうするんだろう。そんなの、薬売りくらいしか心当たりが――」
「いいえ、秋人さん。もう一人居たはずです。私たちは見て、知っているはず」
「……」
背後からラーラに声をかけられ、秋人はゆっくりと振り返った。
「秋人さん。癒力組の皆さんとは冷酷島以来連絡をとっていますか? 『あの事件』の顛末は、確認していますか?」
「いや……していないね……」
「先日花組の皆さんに確認を取ってきました。彼女たちはこう言いました。『あれから事件は起きていない』と。どういうことか分かりますか? あれは終わってなんか居ないはず。『あれ』がやめるはずなんかない。なら、本体も目的も変異したと……そう考えるのが自然ではありませんか」
ラーラの話に、あとからやってきた聖奈が『?』という顔をしている。
秋人は手を翳して首を振った。
「確証がないから、断定はよそう。それに、分からない人たちに対して説明がしづらいよ」
祈りを終えたジャンナ・ヴァレット。彼女の前には灰の山。
おっとりとした修道女の背後に、悠乃が腕組みをして立っていた。
「これからどうするんです?」
「帰って、お食事の準備をしますわ」
「誤魔化さなくてもいいんですよ」
悠乃の目が、うっすらと見開く。
「これらが大きな存在である可能性を、あなたちは認識している。ただの妖事件じゃない。『組織的な妖』、ないしは『大妖クラスの存在』を認識した。そうでしょう?」
「……『ブラックテラー』」
ジャンナはそう呟いて、振り返った。
「我々はそう呼ぶことにしました。本国からも追加の兵隊が送られて来ます。覚者の素質を持った修道女たちが」
「戦争をするつもりなんだ。私たちをのけものにして」
「そんなつもりでは……」
目をそらすジャンナ。
悠乃は一歩、大きく踏み込んだ。
「私たちはファイヴ。『国の旗印になるため』の国家公認組織。私たちは、協力できるはずです。そうでしょう?」
「……わかりました」
ジャンナは、本性を見せるかのように目の色を変えた。
「お話し合いをしましょう。責任者を集めて、場を設けます。ダンスのお誘いは、その時に」
こうして、ファイヴは自ら踏み込んでいくことになる。
マルタ修道会とブラックテラー。
人妖戦争のさなかへ。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
