<冷酷島>ギガブレイド突入、覚者大隊戦闘を要する
●チーム結成
「空爆の手配を頼みます。対象は『ギガブレイドの巣』。目的はファイヴ大隊の突入路を作ること。必要な書類はまとめておくから書式をメールしてくれ。それから――」
冷酷島の拠点シェルターが慌ただしい。
呼び出された覚者たちに、事務方 執事(nCL2000195)はきわめて堅い顔で言った。
「危険なコミュニティへを壊滅させます。今から渡すリストから独自のチームを結成し、突入準備を始めてください」
●約束されなかった島・最終章
『冷酷島』正式名称・黎刻ニューアイランドシティは埋立式人工島である。
妖大災害によって一時は妖に占拠されたものの、ファイヴの活躍によって着々と有力妖の撃滅は進み、島内に拠点を築くまでに至った。
そして今、彼らを最大の脅威と見なしておぞましきものどもが動き出す。
島最大の敵であり、島で妖が増え続ける元凶とも言うべき存在。
準大妖級妖『おみやがえり』。
戦いは、ついに最終局面を迎えつつあった。
●ギガブレイドコミュニティ突入作戦
「今から行なうのは冷酷島中心部への攻撃です。中心には準大妖級妖『おみやがえり』が妖の長として君臨しているはず。しかし接近しようにも複数の巨大コミュニティに阻まれているのです。それらを一つ一つ各個撃破し、島の奪還を進めていこうというものです」
以前覚者たちが突入を試みたが、精鋭1チームが限界まで戦ったにもかかわらずギガブレイドとまともに戦うことすら叶わなかった。
それだけ眷属となっている妖の層が厚いと言うことだ。
「しかし二度にわたる戦いの結果データはとれています。最表層の妖を爆撃や砲撃によって鎮圧し、その隙を突いてコミュニティ中央部へ突入。ギガブレイドとの決戦に持ち込むのです」
ここで重要となる項目は三つ
・突入の際にぶつかるR2妖大隊との交戦
・眷属たちが再集結するまえにギガブレイドを撃破すること
・包囲が始まるコミュニティから無事に脱出すること
「それぞれの要点は別の資料にまとめています。それと……先程も言いましたとおり、皆さんにはそれぞれ精鋭を集めたチームのリーダーとして行動して頂きます。チーム編成についても資料を参照してください。では、ご武運を」
「空爆の手配を頼みます。対象は『ギガブレイドの巣』。目的はファイヴ大隊の突入路を作ること。必要な書類はまとめておくから書式をメールしてくれ。それから――」
冷酷島の拠点シェルターが慌ただしい。
呼び出された覚者たちに、事務方 執事(nCL2000195)はきわめて堅い顔で言った。
「危険なコミュニティへを壊滅させます。今から渡すリストから独自のチームを結成し、突入準備を始めてください」
●約束されなかった島・最終章
『冷酷島』正式名称・黎刻ニューアイランドシティは埋立式人工島である。
妖大災害によって一時は妖に占拠されたものの、ファイヴの活躍によって着々と有力妖の撃滅は進み、島内に拠点を築くまでに至った。
そして今、彼らを最大の脅威と見なしておぞましきものどもが動き出す。
島最大の敵であり、島で妖が増え続ける元凶とも言うべき存在。
準大妖級妖『おみやがえり』。
戦いは、ついに最終局面を迎えつつあった。
●ギガブレイドコミュニティ突入作戦
「今から行なうのは冷酷島中心部への攻撃です。中心には準大妖級妖『おみやがえり』が妖の長として君臨しているはず。しかし接近しようにも複数の巨大コミュニティに阻まれているのです。それらを一つ一つ各個撃破し、島の奪還を進めていこうというものです」
以前覚者たちが突入を試みたが、精鋭1チームが限界まで戦ったにもかかわらずギガブレイドとまともに戦うことすら叶わなかった。
それだけ眷属となっている妖の層が厚いと言うことだ。
「しかし二度にわたる戦いの結果データはとれています。最表層の妖を爆撃や砲撃によって鎮圧し、その隙を突いてコミュニティ中央部へ突入。ギガブレイドとの決戦に持ち込むのです」
ここで重要となる項目は三つ
・突入の際にぶつかるR2妖大隊との交戦
・眷属たちが再集結するまえにギガブレイドを撃破すること
・包囲が始まるコミュニティから無事に脱出すること
「それぞれの要点は別の資料にまとめています。それと……先程も言いましたとおり、皆さんにはそれぞれ精鋭を集めたチームのリーダーとして行動して頂きます。チーム編成についても資料を参照してください。では、ご武運を」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.ギガブレイドの撃破
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
目的はランク3妖『ギガブレイド』の撃破です。
そのために三つの困難に対処せねばなりません
・R2大隊との戦闘
カラスを巨大化させたような妖『マガツガラス』の群れと戦闘します。
マガツガラスは『食らいつく:物近単』『風の刃:特遠列』の攻撃を行ない、飛行中はこちらのブロックを無視して後衛へ近接攻撃を可能とします。その反面飛行ペナルティがかかりますが、それを補って充分な基礎戦闘力があります。
この軍勢を突き抜けるようにして移動するため、右翼左翼後方前方それぞれに壁となるチームを展開する必要があります。
敵もブロックを無視できるとて囲まれるのは嫌なので、集団で集団を囲む陣形が有効なのです。
・ギガブレイドの撃破
R3生物系妖ギガブレイドは恐ろしい戦闘力の持ち主です。
『嵐の刃:特遠全』『持ち去る:物近単、1ターン強制行動不能』『ギガブレイド:物近列二連』の攻撃を行ないます。
囲んで戦うのが一番ですが、なにせ飛び回るので必死に追いつきながら戦うことになるでしょう。
・脱出
ギガブレイドを倒しても終わりではありません
R1~R2がめちゃくちゃに暴れる群れの中を突破し、帰還しなければなりません。
ある意味ここが一番大変です。とにかく体力を維持することを心がけ、倒れた仲間を抱えて走ることも考慮して作戦をたてましょう。
【チーム戦闘】
皆さんはそれぞれ5人のNPC部下をもつチームリーダーです。
チーム種別を『軍事』『宗教』『一般』『特別』のうちから選択し、
コマンド種別を『統率集中』『率先戦闘』『臨機応変』のうちから選択してください。
最後に『チームオーダー』を指定することでPC専用のチームが完成します。
●チーム種別
NPC部下はファイヴ二次団体からなる精鋭覚者たち。
二次団体とは、これまでファイヴが行なってきた覚者保護や組織協力により培った協力者たち。命数は低めで魂は1つ。
個体ごとの戦闘レベルは高めですがリーダーを必要とします。
特徴は以下の通り。
『軍事』:物攻防が高い。
『宗教』:特攻防が高い。
『一般』:バランス型。
※『特別』チームについて
これは「過去のシナリオやシリーズで援軍に駆けつけてくれそうな絆を結んだ人たちがいるんだけど、つれてきていーい?」という方のための枠です。
シナリオ名もしくはURLを添付の上、5名まで指定してください。強すぎる時はトータルで五人分になるよう制限がかかることがあります。(古妖や武装一般人などの戦力もOK)
●コマンド種別
NPC部下は個人ごとに考えて動くためスキル選択やポジションなどの細かい指示を必要としません。(基礎戦闘システム同様に指示行動がシステム化されています)
以下のようなコマンド種別から選択してください。
『統率集中』:指示を送ることに集中します。PCの各種ダイス目が大きく低下しますが、その分チームのダイス目に大きなボーナスがかかります。チームへの指示を沢山書きたい人向け。
『率先戦闘』:PCが率先して戦い、部下たちはそのフォローに徹します。PCのダイス目にボーナスがかかります。自力で戦うの好きな人向け。
『臨機応変』:チームに指示を出しつつ要所要所で率先する、統率と率先の中間にあたるコマンド。ダイス目はそのまま。指示を沢山出したいが自分でも沢山動きたい人向け。
※チームが混乱するので依頼中のコマンド変更はできません
●チームオーダー
「土行で固めて欲しい」「全員盾装備」「回復役オンリー」などの指定をする部分です。
最強スキルや高レベルなどのメタなオーダーにはお応えしずらいですが、逆に「女子だけ」や「気の合いそうな人」といったご要望にはお応えできそうです。
特に指定が無かった場合はジムカタさんがいい感じにマッチングしてくれます。
そして最後は極めつけ。チームの名前を決定しましょう。指定が無い場合PC名から仮名されます。
大体五文字くらいにまとまるとプレイングにも優しいでしょう。
こうして完成したチームは保存され、今後も選択できます。何度も連れて行くと部下との絆が深まり、ダイス目のボーナスや特別な描写などの特典がゲットできることも。
ぜひPC自慢のオリジナルチームを結成してください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2017年09月20日
2017年09月20日
■メイン参加者 6人■

●チームオーダー受領。エントリー完了。ようこそ、リーダー。
「みんなっ、よろしくねぇ」
ホッケースティックを腰の後ろに両手で持って、『ちみっこ』皐月 奈南(CL2001483)は前屈みに笑った。
「こっちこそ。皐月さんと一緒に戦えて嬉しいわ」
「奈南ちゃんって呼んでもいいかな?」
奈南のオーダーで集まったのは五麟高校女子アイスホッケー部。センターの一人を欠いたフォワード2ディフェンス2、キーパー1の編成である。センターの奈南をあわせてきっちり6人チームというわけだ。
センター不在の理由を尋ねたかったが、その話をするとき悲しい顔をするので奈南は尋ねないことにした。三ヶ月前に学園のアイスホッケー部が実質廃部になったという噂も聞いているので、デリケートな部分だと直感したのだ。
だから、今は前だけを見る。
「皆で協力して、ギガブレイドちゃんを倒すよぉ!」
六人で三銃士よろしくスティックを交わし、空に掲げた。
「皆さん、今回は集まって頂いて、ありがとうございます」
『想い重ねて』柳 燐花(CL2000695)の前には5人の軍人が敬礼をして並んでいる。
軍服姿ではあるが、全員が女性だ。花のくきのようなほっそりしたシルエットと、小銃や重火器などの本格的な装備がどこかアンバランスだった。
「基本方針はお話した通りです。守れそうですか?」
「ご安心ください。我々は訓練を受けていますから、感情や主義で行動することはありません」
「感じることがあるとすれば、リーダーのお心への共感のみですわ」
にっこりと笑いかけられ、燐花は照れたように目をそらした。
「一緒に島の解放を目指しましょうね」
『想い重ねて』蘇我島 恭司(CL2001015)は深く頭を垂れる5人の部下たちに苦笑した。
「いや、リーダーって柄じゃあないんだけどねえ。けど、できる限り頑張るよ」
「はは……経歴は伺っています。お察しますよ」
「けど蘇我島さんほど戦闘経験を積まれた方は、プロ覚者の中でも珍しいんですよ?」
「どうか構えないでください。僕らとしては、礼節よりも戦闘指示の潤滑さを求めたいところですから」
恭司は軽く会話をする中である既視感を覚えていた。例えば海外で何かの取材をするとき、現地の記者と情報を交換する時の感覚がそれだ。
彼らは強い信念のもと、感情や行動を強く制御できる人間たちだ。それは勿論、初対面の人間と打ち解けることも含まれる。
「助かるよ。チーム名は、そうだな……『イージス』にしようか。皆を守れるようにね」
「洲本、宇山、県病前、前山、二本松――ゲイル小隊総勢五名、装剣完了してございます」
「ん……」
『献身の青』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は腕を組み、並んだメンバーを端から見た。
和服に扇子や三味線、和太鼓といった連中だ。装剣といいつつ誰も刃物を持っていない。
なんだか古い見世物小屋のような五人組だが、派手な和服姿がゲイルの風貌にはよく似合っていた。ゲイルを中央に立たせれば丁度絵になる人間を揃えたようである。
「俺たちの役目は味方の回復と補助だ。けが人が出れば抱えて逃げることもあるだろう。仲間は勿論自分たちも見捨てることはない。そのつもりでいてくれ」
「承知」
一方こちらは大辻・想良(CL2001476)。
名簿を一通り読み上げてから、小隊メンバーの顔ぶれを見た。
「オーダー通り、ですね。よろしくお願いします」
想良はこの先メンバーの入れ替えをしなくて済むようにか、隊の中でバランスがとれるように水木天火火のバランスチームを組んでいた。チーム単体でもそれなりに戦闘ができるというのも強みである。
加えて、自分が飛行して移動する際に同行しやすいという意味から全て翼人で構成している。
「戦闘中のフォーメーションは、説明した通りです。前衛と中衛の交代には、気をつけてください。必要な時には、隊の中で回復を回します」
それでは、と区切ってから、想良は小さく頭を下げた。
「名前は『翼小隊』とします……妖を、倒しましょう」
想良がスマートに挨拶を終えているのをよそに、『プロ級ショコラティエール』菊坂 結鹿(CL2000432)のチームは一転して賑やかだった。
「俺は赤城、こっちのスカした眼鏡が青葉で、太ってる肉まんみたいな男が黄河、ちっこい短パンが白露、それでこの美人のお姉さんが桃取さんだ。よろしくな!」
「こちらこそ!」
ぺこりと頭を下げる結鹿。
「皆さん知り合いなんですか?」
「おうよ、高校のTRPG同好会とその卒業生だぜ! 奇跡だろ!」
「今回一緒に戦えるって聞いて嬉しいの。よろしくね、結鹿ちゃん」
「真面目にやれ。菊坂さんは本気で戦っているんだぞ」
「まあまあ」
白露が結鹿に握手を求めた。
「ボクらの力が皆のためになれるの、嬉しいんだ! 頑張ろうね!」
●大隊編成完了。戦場へ突入します。ご武運を。
総勢36人の覚者大隊による攻撃作戦。ファイヴの募集規模で例えるなら決戦相当の人数だ。
むろん相手もそれ相応。
冷酷島中心部に拠点を構えるR3妖ギガブレイドとその眷属。通称『ギガブレイドの巣』である。
外敵へ対応するためのR2妖大隊『マガツガラス』たちは早速すり鉢状に展開。
突撃する36名の覚者たちを迎え撃つ姿勢をとった。
「みんないくよぉ、奈南小隊、突撃!」
奈南はフラッシュグレネードディスクの安全ピンを抜くと、ホッケースティックでもって打ち出した。
先行する妖の眼前で爆発するディスク。よろめく妖たちめがけ、五麟高校女子アイスホッケー部のフォワード勢が打撃を開始。閃光を逃れた妖が集中攻撃のために回り込むが、キーパーたちが割り込んで防御。その全てをかっさらうように、奈南の衝撃波が妖たちを弾いていく。
優勢? とも言いがたい。
上空をとったマガツガラスたちが翼を動かして風の刃を放ってきた。
一斉攻撃には、一斉回復だ。
「皆、散発で全体回復。事前の体力総量は見てるよね」
カメラを構えた恭司がカウンターヒールを展開。
彼にあわせて回復光やミストを展開する部下たち。
体力総量の意識というのは、単体回復を行なう際には味方の最大体力の低いメンバーの状態を優先して意識するというものだ。想定ダメージ値が敵の頭上にグラフされるわけでもないので、敵から受けるダメージがほぼ一定であると仮定して脅威度を設定するのだ。『臨機応変に回復する』という作戦の中に自動梱包されている場合が多い。
「第二波、行きます!」
結鹿は地面に剣を突き立て、氷の槍を無数に展開。その全てをマガツガラスめがけて発射した。
「――追撃!」
十字ヒトガタの護符を無数に飛ばした赤城、大砲を担いだ青葉、拳銃を持って前に出る白露というフォーメーションでマガツガラスに追撃をしかけ、反撃の真空斬を黄河と桃取の回復フィールドで防御。
「そっちの回復は任せてくれ。皆、出番だ!」
ゲイルは諸肌を脱ぐと、施術された扇子を開いた。霊力の風が巻き起こり、蛇のように身体を巻いていく。
それをキッカケに、三味線と鼓の演奏が始まった。竹笛が演奏に乗ったところで、扇子使いの水芸がゲイルの舞を彩った。
結鹿の部隊に複合的な補助効果をもたらしつつ、同時にダメージをカバーしていく。
「ノッてきた」
ギラリと目を光らせ、ゲイルは舞の過激さを増していく。
それにつれてマガツガラス大隊に突破口が見えてきた。
「突破口を開きます。援護を」
想良がダッシュの勢いをつけて低空飛行を開始。
脣星落霜による全体攻撃を仕掛けた。
想良を囲むように展開する五人の部下たち。
それぞれ翼を広げて飛行状態に入ると、想良がハンドサインを出した。
回復をゲイルと恭司の部隊に任せて攻撃に集中するサインである。
全員それぞれ武器を構えると、螺旋状のフォーメーションを組んで妖の群れを穿つように攻撃を開始した。
そこへ追加で打ち込まれるマイクロミサイル。
爆発を抜け散開した翼小隊を交代して前へ出たのは燐花小隊である。
部下たちの牽制射撃でR1妖を散らしつつ、壁となるR2妖を燐花が仕留めるという突破形態だ。
地面を蹴り、宙を舞い、高速回転を経てマガツガラスを通過。
着地と同時にマガツガラスが派手に散った。
伏せた顔を上げる燐花。
その目に、巨大な妖の影がうつる。
「ギガブレイド……」
作戦第二段階。ギガブレイドの撃破。
全作戦中最も重要となる場面だが、機動力と一定の牽制攻撃が必要になる。
知能の低い妖がそうそう肉盾作戦をとるとは思えないが、眷属たちが邪魔になればそれだけギガブレイド撃破の成功率が低くなっていく。
「牽制をお願いします。まずは――」
崩れたビルのがれきを踏んで、高く駆け上っていく燐花。
刹華小隊は彼女に続いて周囲の敵に牽制攻撃。反応速度でぬきんでた燐花が弾丸のように跳び、ギガブレイドに先制の斬撃を叩き込んだ。
大きく暴れ、離脱しようとする燐花を掴んで高く飛び上がるギガブレイド。
「燐ちゃん――!」
駆け出したい衝動を抑え、カメラを望遠レンズに切り替える恭司。
燐花にピントを合わせると、彼女が恭司をじっと見つめていることに気づいた。
シャッターを押し込む。呪術の作用によって燐花に刻まれた傷が修復されていく。
上空で手放され、放り出された燐花を翼人の部下が飛び上がってキャッチ。保持していた救急スプレーで回復を始めた。
「確保しました! 継続を!」
「残りのチームは俺が任された」
30人以上の規模ともなると、距離が大きく離れることがある。
そのため恭司とゲイルのチームを中心として、他のチームが状況に応じて広がる選択がとられていた。
縦方向の距離も確保するために、ゲイルのチームには翼人も含まれている。
演奏と舞を継続するゲイル小隊。部下の送受信をハブにして上空の想良へ通信を撮った。
「翼小隊、スキャンはどうだ」
「もうすぐ、もうすぐです」
斜めに倒れたビルの側面を飛行しながら、襲い来る妖たちを部下に撃退させる想良。攻撃も防御も、まして回避もせずエネミースキャンに集中する。部下情報収集系技能もあわせればもっと精度の高いスキャンができたろうが、今はこれで精一杯だ。
「出ました。送ります」
部下を通じてスキャン情報を転送する想良。
その様子を直感的に察知したらしいギガブレイドが周囲の風を爆発させて刃と化した。
対抗するように足を踏みならすゲイル。息を合わせた演奏と芸がギガブレイドの刃を吹き払う。
「今だ、突っ込め!」
「一斉ぃー、こうげきっ!」
ぽーんと高く放り投げたホッケーディスク。数は六つ。
仲間が攻撃や回復を続ける中、物陰に隠れて絶好のチャンスを待っていたのだ。
スティックを振りかぶった奈南は、部下たちと一緒になってギガブレイドへ集中攻撃。合わさったエネルギーが巨大なディスクになってギガブレイドの翼を切断。
落下するギガブレイドに、結鹿が走り出した。
ボスの危機を察して阻もうとする妖を赤城と青葉が物特砲撃によって排除。白露と桃取の補助攻撃によってギガブレイドへの道筋がくっきりと開いた。
黄河がカタパルト発射機のごとく結鹿を掴んで投擲。
目を大きく見開き、結鹿は剣を構える。
「ここはあなたがただけの島じゃないってことを、分からせてあげます!」
自らを十全に強化した結鹿は一本の巨大な剣となり、ギガブレイドを貫通。
巨大な穴の空いたギガブレイドはそのまま地面に墜落。轟音を立て粉塵をまき散らし、そして動かなくなった。
妖たちが動揺を示す。
人と異なるのは、統率を喪った途端に獣の如く襲いかかってくるという所だ。
「皆さん、防御を!」
結鹿の指示に応えて防御を固める部下たち。彼女のオーダー通り防御スキルを備えた面々なのだ。
「いざって時のダメージ軽減はTRPGの基本!」
根性ガードを始める赤城たち。しかし妖の波のごとき猛攻に防衛戦はたちまちに崩壊した。
が、崩壊するところまで含めて想定済みである。
ゲイルと想良の部下たちが彼らを背負い、戦場から撤退を開始。
追いすがる妖を結鹿の牽制攻撃で追い払い、立ち塞がる妖たちを燐花と奈南の小隊で強引に切り開いていく。
恭司はその際に受けるダメージを計算して回復させると、自分は眼前の妖たちめがけてシャッターを連射モードできった。
無数の小爆発。
たちのぼる煙の中を駆け抜け、彼らは戦場を無事に離脱した。
●作戦結果報告
ギガブレイドの撃破、成功。
部隊損害、軽微。
『ギガブレイドの巣』壊滅作戦――成功!
「みんなっ、よろしくねぇ」
ホッケースティックを腰の後ろに両手で持って、『ちみっこ』皐月 奈南(CL2001483)は前屈みに笑った。
「こっちこそ。皐月さんと一緒に戦えて嬉しいわ」
「奈南ちゃんって呼んでもいいかな?」
奈南のオーダーで集まったのは五麟高校女子アイスホッケー部。センターの一人を欠いたフォワード2ディフェンス2、キーパー1の編成である。センターの奈南をあわせてきっちり6人チームというわけだ。
センター不在の理由を尋ねたかったが、その話をするとき悲しい顔をするので奈南は尋ねないことにした。三ヶ月前に学園のアイスホッケー部が実質廃部になったという噂も聞いているので、デリケートな部分だと直感したのだ。
だから、今は前だけを見る。
「皆で協力して、ギガブレイドちゃんを倒すよぉ!」
六人で三銃士よろしくスティックを交わし、空に掲げた。
「皆さん、今回は集まって頂いて、ありがとうございます」
『想い重ねて』柳 燐花(CL2000695)の前には5人の軍人が敬礼をして並んでいる。
軍服姿ではあるが、全員が女性だ。花のくきのようなほっそりしたシルエットと、小銃や重火器などの本格的な装備がどこかアンバランスだった。
「基本方針はお話した通りです。守れそうですか?」
「ご安心ください。我々は訓練を受けていますから、感情や主義で行動することはありません」
「感じることがあるとすれば、リーダーのお心への共感のみですわ」
にっこりと笑いかけられ、燐花は照れたように目をそらした。
「一緒に島の解放を目指しましょうね」
『想い重ねて』蘇我島 恭司(CL2001015)は深く頭を垂れる5人の部下たちに苦笑した。
「いや、リーダーって柄じゃあないんだけどねえ。けど、できる限り頑張るよ」
「はは……経歴は伺っています。お察しますよ」
「けど蘇我島さんほど戦闘経験を積まれた方は、プロ覚者の中でも珍しいんですよ?」
「どうか構えないでください。僕らとしては、礼節よりも戦闘指示の潤滑さを求めたいところですから」
恭司は軽く会話をする中である既視感を覚えていた。例えば海外で何かの取材をするとき、現地の記者と情報を交換する時の感覚がそれだ。
彼らは強い信念のもと、感情や行動を強く制御できる人間たちだ。それは勿論、初対面の人間と打ち解けることも含まれる。
「助かるよ。チーム名は、そうだな……『イージス』にしようか。皆を守れるようにね」
「洲本、宇山、県病前、前山、二本松――ゲイル小隊総勢五名、装剣完了してございます」
「ん……」
『献身の青』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は腕を組み、並んだメンバーを端から見た。
和服に扇子や三味線、和太鼓といった連中だ。装剣といいつつ誰も刃物を持っていない。
なんだか古い見世物小屋のような五人組だが、派手な和服姿がゲイルの風貌にはよく似合っていた。ゲイルを中央に立たせれば丁度絵になる人間を揃えたようである。
「俺たちの役目は味方の回復と補助だ。けが人が出れば抱えて逃げることもあるだろう。仲間は勿論自分たちも見捨てることはない。そのつもりでいてくれ」
「承知」
一方こちらは大辻・想良(CL2001476)。
名簿を一通り読み上げてから、小隊メンバーの顔ぶれを見た。
「オーダー通り、ですね。よろしくお願いします」
想良はこの先メンバーの入れ替えをしなくて済むようにか、隊の中でバランスがとれるように水木天火火のバランスチームを組んでいた。チーム単体でもそれなりに戦闘ができるというのも強みである。
加えて、自分が飛行して移動する際に同行しやすいという意味から全て翼人で構成している。
「戦闘中のフォーメーションは、説明した通りです。前衛と中衛の交代には、気をつけてください。必要な時には、隊の中で回復を回します」
それでは、と区切ってから、想良は小さく頭を下げた。
「名前は『翼小隊』とします……妖を、倒しましょう」
想良がスマートに挨拶を終えているのをよそに、『プロ級ショコラティエール』菊坂 結鹿(CL2000432)のチームは一転して賑やかだった。
「俺は赤城、こっちのスカした眼鏡が青葉で、太ってる肉まんみたいな男が黄河、ちっこい短パンが白露、それでこの美人のお姉さんが桃取さんだ。よろしくな!」
「こちらこそ!」
ぺこりと頭を下げる結鹿。
「皆さん知り合いなんですか?」
「おうよ、高校のTRPG同好会とその卒業生だぜ! 奇跡だろ!」
「今回一緒に戦えるって聞いて嬉しいの。よろしくね、結鹿ちゃん」
「真面目にやれ。菊坂さんは本気で戦っているんだぞ」
「まあまあ」
白露が結鹿に握手を求めた。
「ボクらの力が皆のためになれるの、嬉しいんだ! 頑張ろうね!」
●大隊編成完了。戦場へ突入します。ご武運を。
総勢36人の覚者大隊による攻撃作戦。ファイヴの募集規模で例えるなら決戦相当の人数だ。
むろん相手もそれ相応。
冷酷島中心部に拠点を構えるR3妖ギガブレイドとその眷属。通称『ギガブレイドの巣』である。
外敵へ対応するためのR2妖大隊『マガツガラス』たちは早速すり鉢状に展開。
突撃する36名の覚者たちを迎え撃つ姿勢をとった。
「みんないくよぉ、奈南小隊、突撃!」
奈南はフラッシュグレネードディスクの安全ピンを抜くと、ホッケースティックでもって打ち出した。
先行する妖の眼前で爆発するディスク。よろめく妖たちめがけ、五麟高校女子アイスホッケー部のフォワード勢が打撃を開始。閃光を逃れた妖が集中攻撃のために回り込むが、キーパーたちが割り込んで防御。その全てをかっさらうように、奈南の衝撃波が妖たちを弾いていく。
優勢? とも言いがたい。
上空をとったマガツガラスたちが翼を動かして風の刃を放ってきた。
一斉攻撃には、一斉回復だ。
「皆、散発で全体回復。事前の体力総量は見てるよね」
カメラを構えた恭司がカウンターヒールを展開。
彼にあわせて回復光やミストを展開する部下たち。
体力総量の意識というのは、単体回復を行なう際には味方の最大体力の低いメンバーの状態を優先して意識するというものだ。想定ダメージ値が敵の頭上にグラフされるわけでもないので、敵から受けるダメージがほぼ一定であると仮定して脅威度を設定するのだ。『臨機応変に回復する』という作戦の中に自動梱包されている場合が多い。
「第二波、行きます!」
結鹿は地面に剣を突き立て、氷の槍を無数に展開。その全てをマガツガラスめがけて発射した。
「――追撃!」
十字ヒトガタの護符を無数に飛ばした赤城、大砲を担いだ青葉、拳銃を持って前に出る白露というフォーメーションでマガツガラスに追撃をしかけ、反撃の真空斬を黄河と桃取の回復フィールドで防御。
「そっちの回復は任せてくれ。皆、出番だ!」
ゲイルは諸肌を脱ぐと、施術された扇子を開いた。霊力の風が巻き起こり、蛇のように身体を巻いていく。
それをキッカケに、三味線と鼓の演奏が始まった。竹笛が演奏に乗ったところで、扇子使いの水芸がゲイルの舞を彩った。
結鹿の部隊に複合的な補助効果をもたらしつつ、同時にダメージをカバーしていく。
「ノッてきた」
ギラリと目を光らせ、ゲイルは舞の過激さを増していく。
それにつれてマガツガラス大隊に突破口が見えてきた。
「突破口を開きます。援護を」
想良がダッシュの勢いをつけて低空飛行を開始。
脣星落霜による全体攻撃を仕掛けた。
想良を囲むように展開する五人の部下たち。
それぞれ翼を広げて飛行状態に入ると、想良がハンドサインを出した。
回復をゲイルと恭司の部隊に任せて攻撃に集中するサインである。
全員それぞれ武器を構えると、螺旋状のフォーメーションを組んで妖の群れを穿つように攻撃を開始した。
そこへ追加で打ち込まれるマイクロミサイル。
爆発を抜け散開した翼小隊を交代して前へ出たのは燐花小隊である。
部下たちの牽制射撃でR1妖を散らしつつ、壁となるR2妖を燐花が仕留めるという突破形態だ。
地面を蹴り、宙を舞い、高速回転を経てマガツガラスを通過。
着地と同時にマガツガラスが派手に散った。
伏せた顔を上げる燐花。
その目に、巨大な妖の影がうつる。
「ギガブレイド……」
作戦第二段階。ギガブレイドの撃破。
全作戦中最も重要となる場面だが、機動力と一定の牽制攻撃が必要になる。
知能の低い妖がそうそう肉盾作戦をとるとは思えないが、眷属たちが邪魔になればそれだけギガブレイド撃破の成功率が低くなっていく。
「牽制をお願いします。まずは――」
崩れたビルのがれきを踏んで、高く駆け上っていく燐花。
刹華小隊は彼女に続いて周囲の敵に牽制攻撃。反応速度でぬきんでた燐花が弾丸のように跳び、ギガブレイドに先制の斬撃を叩き込んだ。
大きく暴れ、離脱しようとする燐花を掴んで高く飛び上がるギガブレイド。
「燐ちゃん――!」
駆け出したい衝動を抑え、カメラを望遠レンズに切り替える恭司。
燐花にピントを合わせると、彼女が恭司をじっと見つめていることに気づいた。
シャッターを押し込む。呪術の作用によって燐花に刻まれた傷が修復されていく。
上空で手放され、放り出された燐花を翼人の部下が飛び上がってキャッチ。保持していた救急スプレーで回復を始めた。
「確保しました! 継続を!」
「残りのチームは俺が任された」
30人以上の規模ともなると、距離が大きく離れることがある。
そのため恭司とゲイルのチームを中心として、他のチームが状況に応じて広がる選択がとられていた。
縦方向の距離も確保するために、ゲイルのチームには翼人も含まれている。
演奏と舞を継続するゲイル小隊。部下の送受信をハブにして上空の想良へ通信を撮った。
「翼小隊、スキャンはどうだ」
「もうすぐ、もうすぐです」
斜めに倒れたビルの側面を飛行しながら、襲い来る妖たちを部下に撃退させる想良。攻撃も防御も、まして回避もせずエネミースキャンに集中する。部下情報収集系技能もあわせればもっと精度の高いスキャンができたろうが、今はこれで精一杯だ。
「出ました。送ります」
部下を通じてスキャン情報を転送する想良。
その様子を直感的に察知したらしいギガブレイドが周囲の風を爆発させて刃と化した。
対抗するように足を踏みならすゲイル。息を合わせた演奏と芸がギガブレイドの刃を吹き払う。
「今だ、突っ込め!」
「一斉ぃー、こうげきっ!」
ぽーんと高く放り投げたホッケーディスク。数は六つ。
仲間が攻撃や回復を続ける中、物陰に隠れて絶好のチャンスを待っていたのだ。
スティックを振りかぶった奈南は、部下たちと一緒になってギガブレイドへ集中攻撃。合わさったエネルギーが巨大なディスクになってギガブレイドの翼を切断。
落下するギガブレイドに、結鹿が走り出した。
ボスの危機を察して阻もうとする妖を赤城と青葉が物特砲撃によって排除。白露と桃取の補助攻撃によってギガブレイドへの道筋がくっきりと開いた。
黄河がカタパルト発射機のごとく結鹿を掴んで投擲。
目を大きく見開き、結鹿は剣を構える。
「ここはあなたがただけの島じゃないってことを、分からせてあげます!」
自らを十全に強化した結鹿は一本の巨大な剣となり、ギガブレイドを貫通。
巨大な穴の空いたギガブレイドはそのまま地面に墜落。轟音を立て粉塵をまき散らし、そして動かなくなった。
妖たちが動揺を示す。
人と異なるのは、統率を喪った途端に獣の如く襲いかかってくるという所だ。
「皆さん、防御を!」
結鹿の指示に応えて防御を固める部下たち。彼女のオーダー通り防御スキルを備えた面々なのだ。
「いざって時のダメージ軽減はTRPGの基本!」
根性ガードを始める赤城たち。しかし妖の波のごとき猛攻に防衛戦はたちまちに崩壊した。
が、崩壊するところまで含めて想定済みである。
ゲイルと想良の部下たちが彼らを背負い、戦場から撤退を開始。
追いすがる妖を結鹿の牽制攻撃で追い払い、立ち塞がる妖たちを燐花と奈南の小隊で強引に切り開いていく。
恭司はその際に受けるダメージを計算して回復させると、自分は眼前の妖たちめがけてシャッターを連射モードできった。
無数の小爆発。
たちのぼる煙の中を駆け抜け、彼らは戦場を無事に離脱した。
●作戦結果報告
ギガブレイドの撃破、成功。
部隊損害、軽微。
『ギガブレイドの巣』壊滅作戦――成功!
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
