≪福利厚生2017≫淡島の人形愛でて癒されて
≪福利厚生2017≫淡島の人形愛でて癒されて


●騒動終わって
 2017年8月某日。『悪しき人形神により多くの人形達が人間達に蜂起』という事件が起きた。
 世間ではそういう報道をされているが、事情を知っている人は人形に悪意がないことを知っている。単に人間への思いが解放されただけだということに。
 人形神は消えたが、人形自体は淡島神社に残っている。そして人形神の力の残滓か、僅かに言葉を喋れる人形もちらほら見れた。人に襲い掛かるほどではないが、放置していいものでもない。先の事件の認知のされ方からも、大事にすればデメリットの方が多そうだ。
 そこで――

●淡島神社観光ツアー
「折角ですので淡島神社にいきませんか?」
 久方 真由美(nCL2000003)は集まった覚者達にそう告げた。
「人形神の影響がまだ残っている人形をどうにかするのがメインなんですが……それとは別に普通に観光をしてもいいと思います」
 改めて、淡島神社の話をすると。
 和歌山県にある神社で、婦人病治癒を始めとして安産・子授け、裁縫の上達、人形供養など、女性に関するあらゆることに霊験のある淡島信仰の総本山である。人形供養で奉納された人形は万を超え、騒動の後は境内に所狭しと並べられている。
 福利厚生で行く友ヶ島とも関係が深い。友ヶ島に祀られていた祠をここでは狭かろうと現在の場所に移動させたのがこの神社の起こりと言われている。距離的にも近く、折角だしと足を延ばすのもありかもしれない。
「島で海や山と遊ぶのもいいですが、こういった所で情緒に触れるのもいいですよ」
 思えば先日は戦いに明け暮れて、神社の景観を見る余裕はなかった。ゆっくりそういった文化に触れるのもいいだろう。
 真由美の誘いに貴方は――



■シナリオ詳細
種別:イベント
難易度:楽
担当ST:どくどく
■成功条件
1.淡島神社を観光する
2.なし
3.なし
 どくどくです。
 決戦アフター……のような福利厚生イベシナです。

●説明っ!
 先の決戦で戦った人形神の影響で、神社の人形が『しゃべる程度』に古妖化しています。
 いきなり影響は出ないでしょうが、このまま放置するのはよろしくないのでカウンセリング的にお話を聞いてもらえないか、と淡島神社から依頼が来ました。
 まあそれはそれとして、せっかくの淡島神社総本山。観光とか如何ですか? 女性に関するありとあらゆる権能をもった淡島神です。祈っておくのもいいでしょう。

 行動は二種類です。それ以外を行う場合は【三】と書いてください。

【一】人形の話を聞く
 古妖化した人形に話を聞きます。人間とあそんで楽しかった人形もいれば、捨てられた恨みを持つ人形もいます。好きな人形と話して構いません。誰もいなければ、真由美が一人で行います。

【二】神社観光
 淡島神社を観光します。
 特徴的なのは万を超える人形をお面が所狭しと奉納している境内や、針供養の針塚。願い事を言いながら柱の穴を潜り抜けると願いが叶うと言われた紀文の帆柱。女性に関するありとあらゆる霊験を持つ淡島神の本堂などです。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
50LP
参加人数
8/∞
公開日
2017年09月11日

■メイン参加者 8人■



「決戦の時は大変だったけど――」
 神社の境内を歩きながら奏空(CL2000955)は口を開く。先の人形神との戦いは苛烈の一言だったが、今の神社は平和そのものだ。納められた人形達も襲ってくることはなく、静かな眼でこちらを見ている。
「人形達にもそれぞれ事情ってものがあった訳で……話くらいなら聞いてあげられるかな」
「ええ。捨てられた人形の無念を晴らすために、一緒にあそんであげましょう」
 奏空の言葉にたまき(CL2000994)が頷く。愛してくれた人間と別れてしまい、寂しい思いから人形神と共に暴れた人形達。大変ではあったけど、その気持ちは理解できなくもない。せめてその寂しさを取り払ってあげよう。
 二人は神主の許可を取り、喋れる人形と一緒に神社内を散歩する。神木など様々な場所をめぐりながら、人形に語りかける。見慣れた光景も移動するというだけでかなりの変化があり、人形も喜んでいた。あとは気が済むまで遊んであげるだけだが……。
「どうしようか。持ち主と一緒の遊び方がいいんだろうけど……」
「そうだ。しりとりをしましょう」
 さて、どうやって人形とあそぼうかと思案していると、たまきがしりとりをしようと提案する。人形にルールを教え、開始となる。たまき、人形、奏空の順となった。
「『しりとり』……りで始まる言葉です」
「『りんご』」
「言葉は一応知っているんだね。……『ゴールド』」
「『ドーナツ』……ドーナツってわかる?」
「おままごとで形だけは知ってる。『月』」
「き……き……『機関車』!」
「『山』……いつか山や機関車も見れるといいのにね」
「皆が愛してくれるなら、それで十分。……『まんじゅう』」
「う? 『浮き輪』! そういえば泳ぎに行きたいなぁ」
「『ワニ』……そうね。明日にでも友ヶ島と合流しましょう」
 夏と秋の境界の日。まだ太陽は熱く、鋭い日差しを照らしている。
 奏空とたまきは日が暮れるまで人形とあそんでいた。


 覚者達の中には、人形の話を聞いてあげようという者もいた。
「貴方はどうしてここへ来たのかしら?」
 大和(CL2000477)は人形に目線を合わせて問いかける。
『ちーちゃんが大人になったから、もういらないって』
 答える人形の声を大和は真剣に聞いていた。『ちーちゃん』というのはおそらく持ち主の名前だろう。
「そう。ちーちゃんと一緒にいた時は楽しかった?」
『うん。初めて会ったときは……』
 大和は人形の話を聞きながら、相づちを打っていた。人形を説得するのではなく、人形に話させて聞き手に徹している。
 人形の役割は子供の成長を願う為。その子が大人になれば人形が要らなくなるのは、その役割を終えた為。別れは辛いけど、それを含めての成長だ。
 大和はそうと知ってはいるが敢えて言わずに人形の話を聞く。捨てられた理由を語っても意味はない。今はその話を聞き、鬱積したものを吐き出させることが重要だ。
「そう。寂しいかもしれないけどここにはたくさんの人形がいるわ。
 いつか浄化される時まで、一緒に仲間と楽しく過ごすのがいいと思うわ」
 ここにはたくさんの人形がいる。寂しいということはないはずだ。
(人形にもガス抜きは必要よね)
 御菓子(CL2000429)は人形達の服や髪の毛を整えながら、人形達の話を聞いていた。
『ずっと箱の中に入れられて、気がついたらここにいるの。酷いと思わない』
「ええ。そうね。大変だったわね」
『私は強く振り回されて腕が取れちゃったの。縫い付けてもらったけどすぐに取れそうになって』
「あらまあ。大怪我ね」
 御菓子も基本的には聞き役として人形達の不満や恨みを聞いていた。捨てられた恨み。乱暴に扱われた恨み。遊んでもらえなかった怨み。人形の恨み言は様々だ。その恨み言を聞きながら、人形の汚れや髪の乱れを直していく。先ほどの外れかけた人形の腕も、ソーイングセットを使って綺麗に縫い付ける。
「そっかぁ、そんなことがあったんだ」
 大仰に頷く結鹿(CL2000432)。
『そうよ。あの時の大冒険は今でも覚えているわ。夜の学校に忘れ物をした聡美ちゃんが怖くなって私を連れて行ったあの夜の事』
 誇らしげに語る人形。持ち主との楽しい思い出を語っていた。
「それでそれで!」
 鈴鹿は人形達の楽しい思い出を聞いていた。持ち主との思いで。どうやって遊んだか。そしてその別れ。先の人形のような冒険譚は稀だが、様々な持ち主と人形の会話が聞けて鈴鹿も喜んでいた。
「そっかぁ。ねえ、お人形遊びしていいかな」
 人形の話を聞いて、鈴鹿は久しぶりに人形とあそんでみたくなった。その提案に人形達は喜んで同意する。遊んでもらえることに喜びを感じる人形にとって、その提案は願ったりなのだ。
「こないだは遊んであげれんかったでごめんな。今日はちゃんと遊んであげるから」
「ふふ、男の子みたいな激しい遊び方しちゃいましたしね?」
「もう。それは言わんといてぇな」
 那由多(CL2001442)と八重(CL2000122)は先日の闘いを思い出しながら、人形達の前に座る。状況が状況ゆえに力技で人形達を押さえ込んだのは仕方なかったのだが、今は人形達も大人しい。ゆっくり遊んであげることが出来る。
「さあ、お着換えの時間やよ。どの子からはじめよか?」
 那由多は持ってきた小さな着物を取り出す。那由多が気なくなった着物を使って、小さな人形用の着物を作ってきたのだ。小さな櫛も用意して人形の髪の毛を梳きながら、何処のから着替えさせようかと考えている。
「那由多さんみたいな可愛い服じゃないですけど、こんなの作っちゃいました」
 八重が取り出したのは、小さなネコミミヘアバンドだ。人形用に作られた幾つものヘアバンド。和服の人形にネコミミがついた人形は、また違った可愛さが感じられる。人になつきそうな子猫。そんな第一印象だ。
「こうしてると懐かしい気分です。昔はこう、お人形さんじゃないですけど兄様の髪で遊んでました」
「お兄さん、八重さんに愛されてるんやなぁ」
 そんなことを言いながら人形の髪を梳いたり、着物を着換えさせたり、猫耳をつけたりしている二人。
「昔遊んだお人形、お雛さん。幼い頃はそばに必ず人形さんたちがおったもんです。それがいつの頃からやろか、卒業してしもて忘れてしもてた。
 自分らの都合で手放して、今更ごめんね言うのもおかしな話やけど……」
「那由多さん……」
 憂いを含んだ表情で人形達に語りかける那由多。自分自身も人形遊びをして、その人形を手放した。人形からすれば裏切りかもしれない。その罪悪感が那由多の表情に浮かんでいた。その顔を見て心配そうな表情を浮かべる八重。
「せやけど、忘れんでね。ここに納められとる、言う事は、持ち主さんは少なからず愛情を持っとったと思うんよ」
 様々な思いや物語が人形達の中にあるのだろう。だけどそれは人に愛されたが故の話だ。千差万別の愛があり、その結果人形達は今ここにいる。それは確かな事なのだ。
「そうですね。人形は愛されてこそです。
 みてください。こうして並べるとちっちゃい那由多さんが沢山いるみたいで可愛いのです」
 八重はネコミミと着物を着た人形達を並べてみる。それは確かに猫の獣憑である那由多が並んでいるみたいだった。その光景に思わず笑みを浮かべる那由多。
「ふふ、お人形さんと遊ぶときは、しんみりより楽しげな方がきっといいですよ」
「ええ。そやね。ありがと、八重さん」
 微笑み晴れやかな気分になる八重と那由多。二人の人形遊びはまだまだ続く。


 茜色の空と烏の鳴き声。
 覚者達はそれぞれの思いを人形に抱きながら淡島神社を後にする。
「ふあああ。くくるよくねたぁ」
 境内で日向ぼっこをしていたククル(CL2001142)も伸びをして、帰路につく。
 淡島神社に奉納された人形達いは、それぞれの思いがあるのだろう。元の持ち主への想い。愛憎絡んだ様々な感情。
 だけどそれには今日出会った覚者との思い出も含まれる。それが胸にある限り、再び暴れ出すということはないはずだ。
 ありがとう、という人形の声が覚者達の耳に届いた――


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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