≪福利厚生2017≫夏だ! 海だ! 海だ!
●F.i.V.E.の夏休み
夏であった。
夏休みであった。
というわけで、君達は友ヶ島にやってきたのである!
夏! 夏と言えば海! 大丈夫、今年は変な妖とか、百合とか、そう言うのは(少なくともこのお話においては)いないから!
舞台は友ヶ島のビーチ。天気もよろしく、絶好の海水浴日和だ。
観光客はそれなりにいるので、貸し切りとはいかないけれど、そこは我慢していただきたい。
近場には海の家や屋台もあり、簡単なものではあるが、食べ物も期待できるだろう。
というわけで、今年の夏は、ビーチでひと夏の思い出とかを作りつつ、ゆっくり羽を伸ばしていただきたい!
夏であった。
夏休みであった。
というわけで、君達は友ヶ島にやってきたのである!
夏! 夏と言えば海! 大丈夫、今年は変な妖とか、百合とか、そう言うのは(少なくともこのお話においては)いないから!
舞台は友ヶ島のビーチ。天気もよろしく、絶好の海水浴日和だ。
観光客はそれなりにいるので、貸し切りとはいかないけれど、そこは我慢していただきたい。
近場には海の家や屋台もあり、簡単なものではあるが、食べ物も期待できるだろう。
というわけで、今年の夏は、ビーチでひと夏の思い出とかを作りつつ、ゆっくり羽を伸ばしていただきたい!

■シナリオ詳細
■成功条件
1.遊ぶ。
2.思いっきり遊ぶ。
3.全力で遊ぶ。
2.思いっきり遊ぶ。
3.全力で遊ぶ。
福利厚生イベントとなっております。
こちらのシナリオでは夏のビーチであれやこれやを楽しむことができます。
具体的には、
1.ビーチ
浜辺から沖合まで。海に関してはこちらにおまかせ!
ただし、一般の方もいらっしゃるので、あまり派手な事は禁止です。
2.人気のない所
ビーチの外れの方には、人気のない場所や、洞窟などがあるかもしれません。
2人っきりになりたい時などにお使いください。
ただし、アラタナルは全年齢向けPBWです。
3.屋台、海の家
ビーチにはお祭りめいた屋台や、定番の海の家などがあります。
遊び疲れた時に休んだり、ご飯を食べたりしてもいいかもしれません。
なぁに、料金は中さんが支払ってくれる。
ただし、お店を潰すようなことはご勘弁ください。
以上のようなスポットがあります。
一つ、遊びたい場所を選んでください。
プレイングに【番号】と記入しておくと良いかと思われます。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。
それでは、皆様のご参加お待ちしております。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
6日
6日
参加費
50LP
50LP
参加人数
25/∞
25/∞
公開日
2017年09月15日
2017年09月15日
■メイン参加者 25人■

●覚者達の夏
今年も夏がやってきた。今年も海にやってきた。
天気は晴天、海水温度も程よく心地よい。波は程々。砂浜はどこまできらめいていて、見ているだけで心をくすぐる。
さてさて、そんなビーチで、覚者達はと言うと――。
●オン・ザ・ビーチ!
「夏だ! 海だ! スイカ割りだーー!!」
「夏といえばスイカ! そしてスイカ割り! だよね!」
鹿ノ島・遥の言葉に、御影・きせきが同意した。
スイカを用意したのは、工藤・奏空だ。檀家さんに頂いたスイカを持参したとの事だが、どれも大きくて、中身を見るまでもなく美味しそうに感じる。
「果たしてこのスイカを割る事が出来るかな!」
挑戦的な笑みを浮かべる奏空。
「任せて! ナナン、スイカ割りは得意な気がするのだ!」
「そのスイカ、見事粉砕し、皆に均等に振舞ってみせよう!」
皐月 奈南と遥がその挑戦受けた、と言わんばかりに返答する。
「やる気いっぱいなのは良いですけど、粉々にしちゃったら食べられませんからね……?」
守衛野 鈴鳴が優しく注意する様に言った。
若干頬が赤く、何処かもじもじしているのは、おろしたての水着を着たことが少々気恥ずかしいからだろう。おへその見える水着は初めて、との事だから、鈴鳴としてはちょっとした冒険だったのかもしれない。
――うん、水着っていいよね……。
という遥の内心の声はさておき、奏空ときせき、賀茂 たまきはスイカの準備。きせきがちゃんと割れるように隠し包丁を入れて、奏空とたまきの二人でスイカを設置した。
「せっかく持ってきてくださったスイカを割ってしまうのは、少しだけ勿体ない気持ちもしますが……」
呟くたまきに、
「うーん……なんとなく、戦場に我が子を送り出す気分?」
と、奏空が苦笑しつつ言った。とは言え、せっかく収穫されたものである。しっかり食べてあげなくては、それこそバチが当たるという物。
「遥くーん、いいよー!」
手を振りながら、きせきが言った。
「任せろ! 行くぞ、奈南!」
「まかせるのだ!」
と、目隠しをした遥がその場で回転を始めた。奈南はそれをさらに強力にサポートし、竜巻めいた回転の渦が生まれる。いや、ちょっと回り過ぎではないだろうか。でも2人とも楽しそうなのでいいのかもしれない。
と、思う存分回転した所で、遥はぴたりと止まった。
「よしいくぞ! オレに棒は必要ない! この拳でスイカを割って見せる!」
と、宣言する遥。
友人たちの、先導する声が聞こえた。時にはしゃぎながら、笑い声も交えて。多少ふらつきつつも、遥はスイカがあると思わしき場所まで歩を進めた。
腰を落とし、体を引き絞って右手を腰に。瓦割りの要領で、気合と共に、遥は拳を振り下ろした。
「ああ、スイカさーん!!」
見事に真っ二つに割れたを見て、奏空の悲鳴が上がった。
その後も、仲のいい6人のスイカ割りは続いた。
「あははー! 面白いのだ!」
「奈南ちゃん、ま、回りすぎ……!」
面白がって回っている奈南に、鈴鳴が目を回してしまったりとか。
「アレ? スイカが半分になってしまったのだ」
ついクセで、棒を横方向に振ってしまった奈南が、スイカの上半分を海へ飛ばしてしまったりとか。
「たまきちゃんもっと右だよ右! そうそう、そのまま真っすぐ!」
「は、はい……!」
たまきを誘導する奏空の応援に、ものすごく力がこもっていた事とか……。
6人の笑い声は尽きない。ひと夏の、楽しい楽しい時間が過ぎていく。
「よし! そこだー!」
きせきが最後のスイカを割って、ひとまず、スイカ割りの時間は終わりを告げた。
「それじゃあ、皆で食べましょう」
鈴鳴がビーチパラソルを立てて、皆を呼んだ。
スイカはどれも甘くて、極上の味わいだ。
きっと、スイカ本来の味に、今日の楽しさもプラスされた味なのだろう。
「今日は本当に……楽しかったですね」
鈴鳴の言葉に、
「うん、みんなで遊べて楽しかったねー!」
にこにこと、きせきが笑いながら同意した。
「ナナンも楽しかったのだ! またスイカを割りたいのだ!」
「そうですね。また来年も皆で、海に行きましょう」
奈南の言葉に、たまきが答える。
「よーし、次もスイカは任せたぜ、奏空!」
「まかせろー!」
笑いながら、遥と奏空。
きっと来年も、その次の年も。
6人の楽しい夏は、変わらずやってくるのだろう。
そう思わせる、楽しいひと時だった。
「うおー! 海だー! 海水!」
と、叫ぶや否や、ごくごくと海水を飲み始める切裂 ジャック。
「しょっぱい!! オエェェッ!!」
と、思いっきり吐き出した。それはそうだろう。
「よし、今年もノルマクリア」
「海水しょっぱくて当たり前だろうが。ほら水飲め水」
もっとまともなノルマを課せよ、と内心突っ込みつつ、ミネラルウォーターを手渡す香月 凜音。
水を飲んで復活したのか、キラキラとした瞳で、
「凜音、凜音! 浮輪、乗って。俺、押す! あそこのブイまで!」
と、ブイを指さしながらジャックが言うので、凜音は素直に浮輪にのって――泳げないわけではないのだが、その方が楽だったので――海へ出た。と。
「おりゃぁぁ!」
突然の攻撃。ジャックが浮輪の片側に体重をかけてバランスを崩しにかかるものだから、
「ちょ、ま!?」
完全に油断しきっていた凜音は海中にザブン。そんな様子をみてゲラゲラと笑うジャック。だが、その笑い声は直ぐにやむことになる。
というのも、海中から顔を出した凜音は、何やら不敵な笑みを浮かべ、
「やられたらやり返す。当たり前だよなぁ……?」
突然ジャックの頭を抱え、海中に引きずり込んだからだ。
「え? あ、ちょまっ!!」
なすすべもなく沈んでいくジャック。ギブアップ、と言いたくても言えないので、ジェスチャーを使って何とか許しを請う。
凜音は程々の所で許してやった。海面でお互い顔を突き合わせ、ケラケラと笑う。
「これに懲りたら程々にしとけよ?」
「ぷはっ! お仕置きが怖くて悪戯できっかよ!!」
2人の笑い声は、海上にしばらく響いていた。
「ウーミーデスー!」
「今日は! 大人気なく! 遊ぶ! ぞっ!」
と、リーネ・ブルツェンスカと華神 悠乃が言った。
「……すまないな、悠乃、少々大所帯になってしまった」
天明 両慈が悠乃へ言う。悠乃は首を振って、
「ううん、大勢の方が楽しいよね?」
と答える。
「海で、遊ぶ、よく解らない。何する、の?」
小首をかしげる神々楽 黄泉に、
「うん、今日はビーチで、スイカ・わ・り! ぃぇー!」
と、片手を突き上げる悠乃。つられてぃぇー、と片手を突き上げる黄泉だが、
「スイカ、割り?」
どうやら知らない様子であった。
「スイカ割り、デスカ?」
リーネも知らないらしい。
「目隠しして、皆の声を頼りにスイカを割る遊びさ」
葦原 赤貴が、簡単に説明する。
「目隠しして、スイカを割る、の?」
黄泉は、んー、と少し悩んだ後、
「……これ、駄目?」
と、手のひらの第三の目が、ぎょろりと開く。
「目隠しをするから、第三の目は閉じるルールだぞ」
赤貴の言葉に、黄泉はこくり、と頷いた。
「フムフム……とにかく、やってミマスネ!」
リーネもワクワクとした表情で、目隠しをつける。
「これで、回るんデスか?」
なれない様子で、くるくると、リーネが回転する。とは言え、回転数の少ないうちからフラフラとしていて、なんだか危なっかしい……と思っていたら。
「ハワー!?」
と、転びそうになるリーネ。すかさず赤貴が支えに入った。
「……怪我は、ないか?」
「アイタタタ……すみマセンn……ホワァ!?」
目隠しをとり、謝罪の言葉を告げようとしたリーネの顔が、ぼっ、と真っ赤に染まった。
支える態勢の問題で、リーネの顔のすぐ近くに赤貴の顔がある。
一瞬、ドキッとしてしまった。その事実を認識した途端、リーネの頭は混乱してしまった。目がぐるぐると回って、頭の中もぐるぐると。
「ワ、ワ、ワワワワ私はまた! 一体何て事ヲ……そして、何を考えてるデスカー!」
うわーん、と声をあげながら、スイカの所まで走り、なぜかスイカにひたすら頭突きを繰り返すリーネ。
そんな姿を見ながら、あぜんとした表情で、
「スイカは、頭で割るものでは……」
赤貴が呟く。
一方で。
「黄ー泉ー……アターーーーックーーーー」
気の抜ける声で、斧、『超燕潰し』を展開し、スイカに叩きつける黄泉。
スイカは見事に割れ……というか、潰れた。
「ふぅ……当たった?」
尋ねる黄泉へ、
「斧は……まぁ崩すよりは……当たってはいるが……」
何とも困った表情で、赤貴が言った。
「うんうん、皆楽しんでるようでよろしい」
そんな様子をニコニコと眺めながら悠乃。
「ところで、悠乃。それは水着、なのか……?」
と、少々顔を赤らめながら、両慈が言った。
「水着です」
「その、」
「水着ですとも」
自信満々に見せつける悠乃。両慈は頭をかきつつ、
「そ、そうか……悠乃、木刀を借りて構わないか? 久しぶりに獲物を振るうのも悪くない」
照れ隠しなのか、木刀を手に、スイカの前に立つ。と。
「………ウ、ラァァァァァ!!」
凄まじい気合の声。悠乃も思わず目を丸くした。気合とともに放たれた一閃は、見事にスイカを両断する。
「無事斬れた様だな……数年握っていなかったので不安であったが……ん、どうした?」
「いや、凄い掛け声」
「掛け声? いや、俺は無心に木刀を振るっただけだが……?」
どうやら、無自覚のうちに出たものらしい。
悠乃は苦笑を浮かべた。
割ったスイカは綺麗に切って、潰れてしま多スイカはジュースにして。
5人はスイカを堪能した。
ちなみに、リーネは顔を真っ赤にして、まだ何かぶつぶつと言っていたりする。
黄泉は悠乃の膝の上を占拠していた。
変わるものと変わらないもの。
5人に、良き永遠と、良き変化が訪れますよう。
「わっ……ぷっ……ううっ……!」
波にさらわれながら、椿 那由多は、しまった、と思った。
浮輪で浮かんでのんびりとしていた所、突然の強い波で浮輪は転覆。投げ出されてしまった。
完全に油断しきっていて、普段なら冷静に対処できることができない。
このままではまずい、そう思っていたところで――。
「キミ、大丈夫……?」
声と共に、優しく、温かな手に引き上げられ、強く抱き留められた。
「ぷはっ」
息を整える。落ち着いてから、
「……お姉さん、助けてくれてありがとう」
礼を言って、那由多は命の恩人――丹羽 志穂の姿に目を奪われた。
優しそうな顔と、たわわな胸は、女性である那由多から見ても魅力的だ。
ひとまず浅瀬に戻り、2人は自己紹介をした。2人とも、1人で遊びに来ていたという事で、
「ね。もしよかったら、一緒に遊ぶ?」
志穂の誘いを、那由多は喜んで受けた。
2人で遊んでいるうちに、2人は以前からの友人のように、すぐに打ち解けていった。
志穂は、那由多の猫耳から、勤めている猫カフェの子を思い出して、なんだか親近感がわいた、らしい。
「那由多、ほら、もっとこっちだよ」
「し、志穂お姉さん。近すぎん…?」
それから、2人は、記念に携帯で写真を撮ることにした。
フレームに収まるため、2人はぴったりとくっついている。那由多はちょっと頬を赤らめている。2人は笑顔で写真をパチリ。
「友達になった記念、だよ。今日はありがとう、楽しい日になったよ」
そう言う志穂へ、
「ともだち、記念日……はい、おおきにですっ♪」
嬉しそうに、那由多は答えるのだった。
「西園寺……泳げませんが、海へとやって来ました……」
泳げないとはいえ、海で遊ぶことは山ほどある。
西園寺 海は水着に着替えて、波打ち際に立った。
引き寄せる波と、移動する砂が足をくすぐり、こそばゆい。
「泳げなくても、こうやって波打ち際で遊ぶのもいいと思うんよ……って西園寺さん、なにしてるん?」
困惑した表情で尋ねる結那に、
「見てわかりませんか? 西園寺、万全を期す為に、ポールを浜辺に打ち立てて、ロープで浮輪と固定しています」
それはまずいのではないだろうか。
とは言え、海は浮輪に乗ると、ぷかぷかと、海を堪能し始めた。
「本当はお友達と来たかったけれど……西園寺、まだお友達が少なくて……残念です」
ふと漏らした言葉を、結那は聞き逃さなかったらしい。
「えと、今日会ったばかりやけど……私達、お友達になれないかな」
海が驚いたような表情で、結那を見た。が、次の瞬間には元の表情に戻り、
「西園寺、お腹が減りました」
と、バシャバシャと海から上がってしまった。苦笑する結那を尻目に、
「焼きとうもろこしと焼きそばと、何か飲み物を摂取しないと。……行きましょう、速水。速水は何が食べたいですか」
と尋ねる。結那は笑顔で、海の後を追った。
●2人だけの場所で
柳 燐花と蘇我島 恭司は、泳ぎの練習中にたまたま見つけた洞窟を探検する事に決めた。
「突然探検し始めたけど、案外明るいものだねぇ」
恭司の言う通り、何処からか明りが入ってくるのか、洞窟内部は暗くはない。
「もっと暗いかと思っていました。でも、足元は海藻等で滑りやす……」
ずるっ、と。燐花が滑ってしまった。慌てて恭司が、抱きしめるような形で支える。流石にサンダル履きでの洞窟探検は、少々危険だったかもしれない。謝罪の言葉を告げて離れようとした燐花を、恭司は強く抱きしめた。
「あの……?」
頬を染めて、燐花が言う。急なアプローチに、少々混乱気味な様子だ。
「折角の二人っきりだからね……少し、こうして居たいかな?」
恋人同士で2人きり。せっかくだから、少しくらい甘えてみたい。
「じゃあ、誰か来るまで、少しだけ……」
燐花は、冷静になろう、と思えば思うほど、心臓の鼓動は早くなって、上手く考えがまとまらない。何とか絞り出した答えに、恭司は、
「うん、もう少しだけ……」
と答える。
水着であるため、お互いの肌のぬくもりが、お互いの鼓動が、とてもよく感じられる。洞窟の涼しい空気が、上気した体に心地よい。
聞こえるのは、2人の鼓動の音と、波の音だけ。
「こうしていると、恋人さん同士っぽくてどきどきします」
「ぽい……というか、僕らは恋人同士だからね?」
恭司は抱きしめる力を少し強めた。
「……僕のドキドキも、これなら聞こえるかな?」
恭司の鼓動に包まれながら、燐花は幸せそうに瞳を閉じた。
向日葵 御菓子と菊坂 結鹿は、メインのビーチから少し離れた、隠れ家な場所にいた。
メインのビーチとは異なり、すぐそばに緑に木々が生い茂り、豊かな自然を身近に感じさせた。その木々の色を反射してか、海もエメラルドグリーンに輝き、とても美しい。
わぁ、と結鹿は思わず声をあげた。
周囲にはだれもおらず、姉妹2人っきりの貸し切りビーチだ。
「気に行ったみたいね」
微笑む御菓子に、
「うん、とってもロマンチックで……素敵です!」
最高の笑顔で、結鹿は返した。たまらず、海へと駆け出す結鹿。楽しそうな妹の姿を見ていると、こっちも嬉しくなってくる。抑えきれず笑みを浮かべ、御菓子も結鹿の後を追った。
2人は、2人っきりのビーチを思う存分堪能した。
浅瀬で水を掛け合ったり、少し遠出して、泳いで追いかけ合ったり。
大好きな2人で遊ぶのだから、何をやっても楽しく、何をしても幸せだ。
「いろいろがんばったから、きっとこれは神様がくれたご褒美なんですね」
少し遊び疲れたので、砂浜にパラソルとシートを設置して、2人で並んで横になる。
御菓子は優しく、結鹿の髪を撫でた。くすぐったそうに、結鹿が目を細める。
「うん、これはいいご褒美だね」
御菓子も頷いて、目を細めた。
「今日は……ううん、いつも私と一緒にいてくれて、ありがとう。お姉ちゃん、だ~いすき!」
甘えるように、結鹿は御菓子に抱き着いた。御菓子も、優しく結鹿を抱き留める。
2人っきりの幸せな時間は、まだまだ続くのだ。
●海の家の一日
「身体を動かした後は補給だな! お腹空いたぞ!」
海で泳ぎつかれたシャーロット・クィン・ブラッドバーンと天堂・フィオナは、休憩のため、海の家へとやってきた。
こういった場所は初めてのシャーロットは、座敷にしかれた畳をツンツンとつついたり、興味津々の様子で店内を見渡している。
「暑い海辺でも、暖かいメニューもあるのですね」
「そうだぞ! 温かい、アフタヌーンティー……は流石にないみたいだけど、色々あるんだ。そうだ! 身体も冷えてるだろうし、日本っぽい物と言う事で、らーめんを食べよう!」
にこにこと笑うフィオナの提案に、シャーロットは頷いた。フィオナのおススメで、味玉を追加したしょうゆラーメンを2人で注文して、座敷に上がる。事前に日本文化はしっかり予習してきたのか、しっかりと正座するシャーロットに、
「足を崩してもいいんだぞ」
と、フィオナが言った。
ほどなくして、温かいラーメンが、2人の前にやってきた。
「箸は使えるかな?」
心配するフィオナにだったが、日本育ちのフィオナより、綺麗に、器用に箸を扱うシャーロットであったが、
「でも……すする、というのが難しいですね」
悪戦苦闘するシャーロット。
「こう……ずずずーっ、ってやるんだぞ」
やって見せるフィオナ。シャーロットも何とか真似してみようとするが、上手くいかない。
「む、難しい……です……」
「うーん、これは要練習、だな!」
とりあえず、レンゲにまとめて食べると良い、とアドバイスするフィオナであった。
何とかラーメンを平らげた2人は、今度はデザートでも、と相談し始めた。
2人の食事は、もう少し続く。
海の家の一角に、大量の食器が積まれていた。
その中心で、黙々と食べ物をほおばるのは、獅子神・玲だ。
玲の対面に座りながら、困ったような、でも楽しいような、色々と入り混じった笑顔でそれを見つめるのが、飛騨・直斗である。
「よしよし……美味いかい? 玲さん」
玲は食べる手を休めず、こくこくと頷く。直斗は、そんな玲の口元を拭いてやった。
2人にとっては、海より団子と言った所だろうか?
大量の食器を空にしながら、玲の勢いは止まりそうもない。
「次は何を食べる? 屋台から何か買ってこようか」
直斗の提案に、玲は目を輝かせて頷いた。直斗は苦笑しながら――でも楽しげな表情で――立ち上がった。
2人がビーチの食材を空にしてしまうのも、そう遠くないかもしれない。
「若いってのは良いもんだ」
海の家で、アルコールの入ったジョッキを傾けるのは、田場 義高だ。外を見やれば、ビーチではしゃぐ人々の姿が目に入る。皆楽しそうに、幸せそうに、今を謳歌している。その姿が、義高にとっては最高の酒の肴だ。
「これも平和な証ってことだな。お~い、今日は酒も肴も俺のおごりだ! 客も店員も思う存分飲んで、食べて楽しもうぜ!」
気分を良くした義高がそういうや、店内の人々から歓声が上がる。誰ともなく発した『乾杯』の音頭にグラスを交え、ジョッキをぶつけあった。
そんな様子を眺めながら、義高は笑みを漏らした。
「これだ、これだよな。これのために俺たちは体張ってんだよな」
にっ、と笑って、再びジョッキを傾けるのだった。
●夏の終わり
覚者達の夏休みはまだまだ続くが、今回の話はここまで。
明日からは、また日常が彼らを待ち受けるのだろう。
だが、どれだけ辛いことがあっても、きっと、今日の思い出が、皆の心の支えになるはずだ。
来年も、再来年も、その次の年も。
また皆で、笑って夏を楽しめることを信じて。
今年も夏がやってきた。今年も海にやってきた。
天気は晴天、海水温度も程よく心地よい。波は程々。砂浜はどこまできらめいていて、見ているだけで心をくすぐる。
さてさて、そんなビーチで、覚者達はと言うと――。
●オン・ザ・ビーチ!
「夏だ! 海だ! スイカ割りだーー!!」
「夏といえばスイカ! そしてスイカ割り! だよね!」
鹿ノ島・遥の言葉に、御影・きせきが同意した。
スイカを用意したのは、工藤・奏空だ。檀家さんに頂いたスイカを持参したとの事だが、どれも大きくて、中身を見るまでもなく美味しそうに感じる。
「果たしてこのスイカを割る事が出来るかな!」
挑戦的な笑みを浮かべる奏空。
「任せて! ナナン、スイカ割りは得意な気がするのだ!」
「そのスイカ、見事粉砕し、皆に均等に振舞ってみせよう!」
皐月 奈南と遥がその挑戦受けた、と言わんばかりに返答する。
「やる気いっぱいなのは良いですけど、粉々にしちゃったら食べられませんからね……?」
守衛野 鈴鳴が優しく注意する様に言った。
若干頬が赤く、何処かもじもじしているのは、おろしたての水着を着たことが少々気恥ずかしいからだろう。おへその見える水着は初めて、との事だから、鈴鳴としてはちょっとした冒険だったのかもしれない。
――うん、水着っていいよね……。
という遥の内心の声はさておき、奏空ときせき、賀茂 たまきはスイカの準備。きせきがちゃんと割れるように隠し包丁を入れて、奏空とたまきの二人でスイカを設置した。
「せっかく持ってきてくださったスイカを割ってしまうのは、少しだけ勿体ない気持ちもしますが……」
呟くたまきに、
「うーん……なんとなく、戦場に我が子を送り出す気分?」
と、奏空が苦笑しつつ言った。とは言え、せっかく収穫されたものである。しっかり食べてあげなくては、それこそバチが当たるという物。
「遥くーん、いいよー!」
手を振りながら、きせきが言った。
「任せろ! 行くぞ、奈南!」
「まかせるのだ!」
と、目隠しをした遥がその場で回転を始めた。奈南はそれをさらに強力にサポートし、竜巻めいた回転の渦が生まれる。いや、ちょっと回り過ぎではないだろうか。でも2人とも楽しそうなのでいいのかもしれない。
と、思う存分回転した所で、遥はぴたりと止まった。
「よしいくぞ! オレに棒は必要ない! この拳でスイカを割って見せる!」
と、宣言する遥。
友人たちの、先導する声が聞こえた。時にはしゃぎながら、笑い声も交えて。多少ふらつきつつも、遥はスイカがあると思わしき場所まで歩を進めた。
腰を落とし、体を引き絞って右手を腰に。瓦割りの要領で、気合と共に、遥は拳を振り下ろした。
「ああ、スイカさーん!!」
見事に真っ二つに割れたを見て、奏空の悲鳴が上がった。
その後も、仲のいい6人のスイカ割りは続いた。
「あははー! 面白いのだ!」
「奈南ちゃん、ま、回りすぎ……!」
面白がって回っている奈南に、鈴鳴が目を回してしまったりとか。
「アレ? スイカが半分になってしまったのだ」
ついクセで、棒を横方向に振ってしまった奈南が、スイカの上半分を海へ飛ばしてしまったりとか。
「たまきちゃんもっと右だよ右! そうそう、そのまま真っすぐ!」
「は、はい……!」
たまきを誘導する奏空の応援に、ものすごく力がこもっていた事とか……。
6人の笑い声は尽きない。ひと夏の、楽しい楽しい時間が過ぎていく。
「よし! そこだー!」
きせきが最後のスイカを割って、ひとまず、スイカ割りの時間は終わりを告げた。
「それじゃあ、皆で食べましょう」
鈴鳴がビーチパラソルを立てて、皆を呼んだ。
スイカはどれも甘くて、極上の味わいだ。
きっと、スイカ本来の味に、今日の楽しさもプラスされた味なのだろう。
「今日は本当に……楽しかったですね」
鈴鳴の言葉に、
「うん、みんなで遊べて楽しかったねー!」
にこにこと、きせきが笑いながら同意した。
「ナナンも楽しかったのだ! またスイカを割りたいのだ!」
「そうですね。また来年も皆で、海に行きましょう」
奈南の言葉に、たまきが答える。
「よーし、次もスイカは任せたぜ、奏空!」
「まかせろー!」
笑いながら、遥と奏空。
きっと来年も、その次の年も。
6人の楽しい夏は、変わらずやってくるのだろう。
そう思わせる、楽しいひと時だった。
「うおー! 海だー! 海水!」
と、叫ぶや否や、ごくごくと海水を飲み始める切裂 ジャック。
「しょっぱい!! オエェェッ!!」
と、思いっきり吐き出した。それはそうだろう。
「よし、今年もノルマクリア」
「海水しょっぱくて当たり前だろうが。ほら水飲め水」
もっとまともなノルマを課せよ、と内心突っ込みつつ、ミネラルウォーターを手渡す香月 凜音。
水を飲んで復活したのか、キラキラとした瞳で、
「凜音、凜音! 浮輪、乗って。俺、押す! あそこのブイまで!」
と、ブイを指さしながらジャックが言うので、凜音は素直に浮輪にのって――泳げないわけではないのだが、その方が楽だったので――海へ出た。と。
「おりゃぁぁ!」
突然の攻撃。ジャックが浮輪の片側に体重をかけてバランスを崩しにかかるものだから、
「ちょ、ま!?」
完全に油断しきっていた凜音は海中にザブン。そんな様子をみてゲラゲラと笑うジャック。だが、その笑い声は直ぐにやむことになる。
というのも、海中から顔を出した凜音は、何やら不敵な笑みを浮かべ、
「やられたらやり返す。当たり前だよなぁ……?」
突然ジャックの頭を抱え、海中に引きずり込んだからだ。
「え? あ、ちょまっ!!」
なすすべもなく沈んでいくジャック。ギブアップ、と言いたくても言えないので、ジェスチャーを使って何とか許しを請う。
凜音は程々の所で許してやった。海面でお互い顔を突き合わせ、ケラケラと笑う。
「これに懲りたら程々にしとけよ?」
「ぷはっ! お仕置きが怖くて悪戯できっかよ!!」
2人の笑い声は、海上にしばらく響いていた。
「ウーミーデスー!」
「今日は! 大人気なく! 遊ぶ! ぞっ!」
と、リーネ・ブルツェンスカと華神 悠乃が言った。
「……すまないな、悠乃、少々大所帯になってしまった」
天明 両慈が悠乃へ言う。悠乃は首を振って、
「ううん、大勢の方が楽しいよね?」
と答える。
「海で、遊ぶ、よく解らない。何する、の?」
小首をかしげる神々楽 黄泉に、
「うん、今日はビーチで、スイカ・わ・り! ぃぇー!」
と、片手を突き上げる悠乃。つられてぃぇー、と片手を突き上げる黄泉だが、
「スイカ、割り?」
どうやら知らない様子であった。
「スイカ割り、デスカ?」
リーネも知らないらしい。
「目隠しして、皆の声を頼りにスイカを割る遊びさ」
葦原 赤貴が、簡単に説明する。
「目隠しして、スイカを割る、の?」
黄泉は、んー、と少し悩んだ後、
「……これ、駄目?」
と、手のひらの第三の目が、ぎょろりと開く。
「目隠しをするから、第三の目は閉じるルールだぞ」
赤貴の言葉に、黄泉はこくり、と頷いた。
「フムフム……とにかく、やってミマスネ!」
リーネもワクワクとした表情で、目隠しをつける。
「これで、回るんデスか?」
なれない様子で、くるくると、リーネが回転する。とは言え、回転数の少ないうちからフラフラとしていて、なんだか危なっかしい……と思っていたら。
「ハワー!?」
と、転びそうになるリーネ。すかさず赤貴が支えに入った。
「……怪我は、ないか?」
「アイタタタ……すみマセンn……ホワァ!?」
目隠しをとり、謝罪の言葉を告げようとしたリーネの顔が、ぼっ、と真っ赤に染まった。
支える態勢の問題で、リーネの顔のすぐ近くに赤貴の顔がある。
一瞬、ドキッとしてしまった。その事実を認識した途端、リーネの頭は混乱してしまった。目がぐるぐると回って、頭の中もぐるぐると。
「ワ、ワ、ワワワワ私はまた! 一体何て事ヲ……そして、何を考えてるデスカー!」
うわーん、と声をあげながら、スイカの所まで走り、なぜかスイカにひたすら頭突きを繰り返すリーネ。
そんな姿を見ながら、あぜんとした表情で、
「スイカは、頭で割るものでは……」
赤貴が呟く。
一方で。
「黄ー泉ー……アターーーーックーーーー」
気の抜ける声で、斧、『超燕潰し』を展開し、スイカに叩きつける黄泉。
スイカは見事に割れ……というか、潰れた。
「ふぅ……当たった?」
尋ねる黄泉へ、
「斧は……まぁ崩すよりは……当たってはいるが……」
何とも困った表情で、赤貴が言った。
「うんうん、皆楽しんでるようでよろしい」
そんな様子をニコニコと眺めながら悠乃。
「ところで、悠乃。それは水着、なのか……?」
と、少々顔を赤らめながら、両慈が言った。
「水着です」
「その、」
「水着ですとも」
自信満々に見せつける悠乃。両慈は頭をかきつつ、
「そ、そうか……悠乃、木刀を借りて構わないか? 久しぶりに獲物を振るうのも悪くない」
照れ隠しなのか、木刀を手に、スイカの前に立つ。と。
「………ウ、ラァァァァァ!!」
凄まじい気合の声。悠乃も思わず目を丸くした。気合とともに放たれた一閃は、見事にスイカを両断する。
「無事斬れた様だな……数年握っていなかったので不安であったが……ん、どうした?」
「いや、凄い掛け声」
「掛け声? いや、俺は無心に木刀を振るっただけだが……?」
どうやら、無自覚のうちに出たものらしい。
悠乃は苦笑を浮かべた。
割ったスイカは綺麗に切って、潰れてしま多スイカはジュースにして。
5人はスイカを堪能した。
ちなみに、リーネは顔を真っ赤にして、まだ何かぶつぶつと言っていたりする。
黄泉は悠乃の膝の上を占拠していた。
変わるものと変わらないもの。
5人に、良き永遠と、良き変化が訪れますよう。
「わっ……ぷっ……ううっ……!」
波にさらわれながら、椿 那由多は、しまった、と思った。
浮輪で浮かんでのんびりとしていた所、突然の強い波で浮輪は転覆。投げ出されてしまった。
完全に油断しきっていて、普段なら冷静に対処できることができない。
このままではまずい、そう思っていたところで――。
「キミ、大丈夫……?」
声と共に、優しく、温かな手に引き上げられ、強く抱き留められた。
「ぷはっ」
息を整える。落ち着いてから、
「……お姉さん、助けてくれてありがとう」
礼を言って、那由多は命の恩人――丹羽 志穂の姿に目を奪われた。
優しそうな顔と、たわわな胸は、女性である那由多から見ても魅力的だ。
ひとまず浅瀬に戻り、2人は自己紹介をした。2人とも、1人で遊びに来ていたという事で、
「ね。もしよかったら、一緒に遊ぶ?」
志穂の誘いを、那由多は喜んで受けた。
2人で遊んでいるうちに、2人は以前からの友人のように、すぐに打ち解けていった。
志穂は、那由多の猫耳から、勤めている猫カフェの子を思い出して、なんだか親近感がわいた、らしい。
「那由多、ほら、もっとこっちだよ」
「し、志穂お姉さん。近すぎん…?」
それから、2人は、記念に携帯で写真を撮ることにした。
フレームに収まるため、2人はぴったりとくっついている。那由多はちょっと頬を赤らめている。2人は笑顔で写真をパチリ。
「友達になった記念、だよ。今日はありがとう、楽しい日になったよ」
そう言う志穂へ、
「ともだち、記念日……はい、おおきにですっ♪」
嬉しそうに、那由多は答えるのだった。
「西園寺……泳げませんが、海へとやって来ました……」
泳げないとはいえ、海で遊ぶことは山ほどある。
西園寺 海は水着に着替えて、波打ち際に立った。
引き寄せる波と、移動する砂が足をくすぐり、こそばゆい。
「泳げなくても、こうやって波打ち際で遊ぶのもいいと思うんよ……って西園寺さん、なにしてるん?」
困惑した表情で尋ねる結那に、
「見てわかりませんか? 西園寺、万全を期す為に、ポールを浜辺に打ち立てて、ロープで浮輪と固定しています」
それはまずいのではないだろうか。
とは言え、海は浮輪に乗ると、ぷかぷかと、海を堪能し始めた。
「本当はお友達と来たかったけれど……西園寺、まだお友達が少なくて……残念です」
ふと漏らした言葉を、結那は聞き逃さなかったらしい。
「えと、今日会ったばかりやけど……私達、お友達になれないかな」
海が驚いたような表情で、結那を見た。が、次の瞬間には元の表情に戻り、
「西園寺、お腹が減りました」
と、バシャバシャと海から上がってしまった。苦笑する結那を尻目に、
「焼きとうもろこしと焼きそばと、何か飲み物を摂取しないと。……行きましょう、速水。速水は何が食べたいですか」
と尋ねる。結那は笑顔で、海の後を追った。
●2人だけの場所で
柳 燐花と蘇我島 恭司は、泳ぎの練習中にたまたま見つけた洞窟を探検する事に決めた。
「突然探検し始めたけど、案外明るいものだねぇ」
恭司の言う通り、何処からか明りが入ってくるのか、洞窟内部は暗くはない。
「もっと暗いかと思っていました。でも、足元は海藻等で滑りやす……」
ずるっ、と。燐花が滑ってしまった。慌てて恭司が、抱きしめるような形で支える。流石にサンダル履きでの洞窟探検は、少々危険だったかもしれない。謝罪の言葉を告げて離れようとした燐花を、恭司は強く抱きしめた。
「あの……?」
頬を染めて、燐花が言う。急なアプローチに、少々混乱気味な様子だ。
「折角の二人っきりだからね……少し、こうして居たいかな?」
恋人同士で2人きり。せっかくだから、少しくらい甘えてみたい。
「じゃあ、誰か来るまで、少しだけ……」
燐花は、冷静になろう、と思えば思うほど、心臓の鼓動は早くなって、上手く考えがまとまらない。何とか絞り出した答えに、恭司は、
「うん、もう少しだけ……」
と答える。
水着であるため、お互いの肌のぬくもりが、お互いの鼓動が、とてもよく感じられる。洞窟の涼しい空気が、上気した体に心地よい。
聞こえるのは、2人の鼓動の音と、波の音だけ。
「こうしていると、恋人さん同士っぽくてどきどきします」
「ぽい……というか、僕らは恋人同士だからね?」
恭司は抱きしめる力を少し強めた。
「……僕のドキドキも、これなら聞こえるかな?」
恭司の鼓動に包まれながら、燐花は幸せそうに瞳を閉じた。
向日葵 御菓子と菊坂 結鹿は、メインのビーチから少し離れた、隠れ家な場所にいた。
メインのビーチとは異なり、すぐそばに緑に木々が生い茂り、豊かな自然を身近に感じさせた。その木々の色を反射してか、海もエメラルドグリーンに輝き、とても美しい。
わぁ、と結鹿は思わず声をあげた。
周囲にはだれもおらず、姉妹2人っきりの貸し切りビーチだ。
「気に行ったみたいね」
微笑む御菓子に、
「うん、とってもロマンチックで……素敵です!」
最高の笑顔で、結鹿は返した。たまらず、海へと駆け出す結鹿。楽しそうな妹の姿を見ていると、こっちも嬉しくなってくる。抑えきれず笑みを浮かべ、御菓子も結鹿の後を追った。
2人は、2人っきりのビーチを思う存分堪能した。
浅瀬で水を掛け合ったり、少し遠出して、泳いで追いかけ合ったり。
大好きな2人で遊ぶのだから、何をやっても楽しく、何をしても幸せだ。
「いろいろがんばったから、きっとこれは神様がくれたご褒美なんですね」
少し遊び疲れたので、砂浜にパラソルとシートを設置して、2人で並んで横になる。
御菓子は優しく、結鹿の髪を撫でた。くすぐったそうに、結鹿が目を細める。
「うん、これはいいご褒美だね」
御菓子も頷いて、目を細めた。
「今日は……ううん、いつも私と一緒にいてくれて、ありがとう。お姉ちゃん、だ~いすき!」
甘えるように、結鹿は御菓子に抱き着いた。御菓子も、優しく結鹿を抱き留める。
2人っきりの幸せな時間は、まだまだ続くのだ。
●海の家の一日
「身体を動かした後は補給だな! お腹空いたぞ!」
海で泳ぎつかれたシャーロット・クィン・ブラッドバーンと天堂・フィオナは、休憩のため、海の家へとやってきた。
こういった場所は初めてのシャーロットは、座敷にしかれた畳をツンツンとつついたり、興味津々の様子で店内を見渡している。
「暑い海辺でも、暖かいメニューもあるのですね」
「そうだぞ! 温かい、アフタヌーンティー……は流石にないみたいだけど、色々あるんだ。そうだ! 身体も冷えてるだろうし、日本っぽい物と言う事で、らーめんを食べよう!」
にこにこと笑うフィオナの提案に、シャーロットは頷いた。フィオナのおススメで、味玉を追加したしょうゆラーメンを2人で注文して、座敷に上がる。事前に日本文化はしっかり予習してきたのか、しっかりと正座するシャーロットに、
「足を崩してもいいんだぞ」
と、フィオナが言った。
ほどなくして、温かいラーメンが、2人の前にやってきた。
「箸は使えるかな?」
心配するフィオナにだったが、日本育ちのフィオナより、綺麗に、器用に箸を扱うシャーロットであったが、
「でも……すする、というのが難しいですね」
悪戦苦闘するシャーロット。
「こう……ずずずーっ、ってやるんだぞ」
やって見せるフィオナ。シャーロットも何とか真似してみようとするが、上手くいかない。
「む、難しい……です……」
「うーん、これは要練習、だな!」
とりあえず、レンゲにまとめて食べると良い、とアドバイスするフィオナであった。
何とかラーメンを平らげた2人は、今度はデザートでも、と相談し始めた。
2人の食事は、もう少し続く。
海の家の一角に、大量の食器が積まれていた。
その中心で、黙々と食べ物をほおばるのは、獅子神・玲だ。
玲の対面に座りながら、困ったような、でも楽しいような、色々と入り混じった笑顔でそれを見つめるのが、飛騨・直斗である。
「よしよし……美味いかい? 玲さん」
玲は食べる手を休めず、こくこくと頷く。直斗は、そんな玲の口元を拭いてやった。
2人にとっては、海より団子と言った所だろうか?
大量の食器を空にしながら、玲の勢いは止まりそうもない。
「次は何を食べる? 屋台から何か買ってこようか」
直斗の提案に、玲は目を輝かせて頷いた。直斗は苦笑しながら――でも楽しげな表情で――立ち上がった。
2人がビーチの食材を空にしてしまうのも、そう遠くないかもしれない。
「若いってのは良いもんだ」
海の家で、アルコールの入ったジョッキを傾けるのは、田場 義高だ。外を見やれば、ビーチではしゃぐ人々の姿が目に入る。皆楽しそうに、幸せそうに、今を謳歌している。その姿が、義高にとっては最高の酒の肴だ。
「これも平和な証ってことだな。お~い、今日は酒も肴も俺のおごりだ! 客も店員も思う存分飲んで、食べて楽しもうぜ!」
気分を良くした義高がそういうや、店内の人々から歓声が上がる。誰ともなく発した『乾杯』の音頭にグラスを交え、ジョッキをぶつけあった。
そんな様子を眺めながら、義高は笑みを漏らした。
「これだ、これだよな。これのために俺たちは体張ってんだよな」
にっ、と笑って、再びジョッキを傾けるのだった。
●夏の終わり
覚者達の夏休みはまだまだ続くが、今回の話はここまで。
明日からは、また日常が彼らを待ち受けるのだろう。
だが、どれだけ辛いことがあっても、きっと、今日の思い出が、皆の心の支えになるはずだ。
来年も、再来年も、その次の年も。
また皆で、笑って夏を楽しめることを信じて。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
