スパリゾート、五華ランドへようこそ!
●グランドオープン、五華ランド!
プール!
温泉!
レストラン!
カフェ!
ゲームセンター!
一日かけても遊び尽くせないビッグなスパリゾートがグランドオープン!
メインプロデューサーのファイヴにも特別招待券が届きました。
早速各スポットのご紹介です!
『プールゾーン』
ハワイアンな音楽と人口砂浜によって作られた広大な温水プール。
他にも流れるプールやウォータースライダーなど遊びどころ盛りだくさん。
水着を持ってきていない人にもレンタルサービスがあるから安心です!
『温泉ゾーン』
水着をつけて入る混浴タイプの温泉がなんと五種類!
古代ローマのテルマエをイメージした高級感あふれるスペースで、くつろぎのひとときをお過ごしください。
マッサージサービスや、大人限定の日本酒サービスなんかも充実しております。
『五華カフェ』
五華といえば五華カフェ! 古妖屋敷をイメージしたレトロモダンな空間でゆったりしてみませんか?
当店舗は特別に『足湯カフェ』となっておりまして、無料で足湯を楽しみながらパフェやラテをお召し上がりいただけます。
『五華レストラン』
沢山遊んでくつろげばお腹がすくもの。しかし食べ過ぎてお腹が出ちゃうなんて嫌ですよね。でも大丈夫、五華レストランはヘルシーなオーガニックダイニングを採用して、美味しい豆腐料理を中心に沢山のメニューを美味しく健康的に楽しむことが出来ます。
これって豆腐なの!? と驚くほどのステーキやスイーツをぜひご堪能ください。
『ゲームセンター』
一日じゅう過ごすことの出来る五華ランド。お子様はプールと温泉だけじゃ満足できません。けど大丈夫、館内ゲームセンターは大手ゲーム会社が手がける本気のゲームセンターです。館内で貰えるスペシャルコインで何度も遊べる特別な時間についつい夢中になっちゃうかも!
チケットは持ちましたか?
さあ、早速出かけましょう!
プール!
温泉!
レストラン!
カフェ!
ゲームセンター!
一日かけても遊び尽くせないビッグなスパリゾートがグランドオープン!
メインプロデューサーのファイヴにも特別招待券が届きました。
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『プールゾーン』
ハワイアンな音楽と人口砂浜によって作られた広大な温水プール。
他にも流れるプールやウォータースライダーなど遊びどころ盛りだくさん。
水着を持ってきていない人にもレンタルサービスがあるから安心です!
『温泉ゾーン』
水着をつけて入る混浴タイプの温泉がなんと五種類!
古代ローマのテルマエをイメージした高級感あふれるスペースで、くつろぎのひとときをお過ごしください。
マッサージサービスや、大人限定の日本酒サービスなんかも充実しております。
『五華カフェ』
五華といえば五華カフェ! 古妖屋敷をイメージしたレトロモダンな空間でゆったりしてみませんか?
当店舗は特別に『足湯カフェ』となっておりまして、無料で足湯を楽しみながらパフェやラテをお召し上がりいただけます。
『五華レストラン』
沢山遊んでくつろげばお腹がすくもの。しかし食べ過ぎてお腹が出ちゃうなんて嫌ですよね。でも大丈夫、五華レストランはヘルシーなオーガニックダイニングを採用して、美味しい豆腐料理を中心に沢山のメニューを美味しく健康的に楽しむことが出来ます。
これって豆腐なの!? と驚くほどのステーキやスイーツをぜひご堪能ください。
『ゲームセンター』
一日じゅう過ごすことの出来る五華ランド。お子様はプールと温泉だけじゃ満足できません。けど大丈夫、館内ゲームセンターは大手ゲーム会社が手がける本気のゲームセンターです。館内で貰えるスペシャルコインで何度も遊べる特別な時間についつい夢中になっちゃうかも!
チケットは持ちましたか?
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■シナリオ詳細
■成功条件
1.五華ランドを楽しむ
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
新しく買った水着を着て行くもよし、日々の依頼でたまった疲れ(命数減少)を癒やすもよし。
のびのび楽しんでくださいませ!
●館内の細かい説明
・五華ランドは時間分の『入館料』を支払うことで全てのサービスを自由に楽しむことができる総合スパリゾートです。
皆さんに配られている特別優待券は24時間無料になるというもので、全てのサービスを無料で楽しむことが出来ます(今回は新幹線の交通費も持ってくれています)。
・プール
人工砂浜:砂っぽいけど砂じゃないやわらかい浜辺で海気分を味わえます。プールは常に波打っているので、ぷかぷか揺られて遊びましょう。
流れるプール:一般的な流れるプールです。一般との違いとして、ハワイっぽい装飾やちょこちょこ見えるオブジェのおかげで流れる時間を飽きさせません。
ウォータースライダー:ちょっぴりスリリングなぐるぐるスライダーです。お子様でも安心して楽しむことが出来ます。
他にも子供向け番組の流れる子供向けプールや、家族連れにも安心のサービスが沢山あります。
・温泉
ローマを思わせる高級感ある温泉。
ノーマルな温泉に加えて、炭酸温泉、サウナ、疑似露天風呂などが楽しめます。
水着をつけてお楽しみください。
ご注文いただければ疑似露天風呂につかりながらとっくりで日本酒をいただくこともできます。
・カフェ
足湯カフェ。ゆっくりくつろぎながら美味しいコーヒーやパフェを楽しめます。
入館者は勿論、カフェだけのご利用も可能です。
温泉やプールってガラじゃないけど、カフェでくつろいで命数回復したいなって方もぜひぜひご利用ください。
・レストラン
豆腐料理を中心としたヘルシーなレストラン。
勿論ご希望の方には牛肉ステーキやオムライスといったオーソドックスなメニューもご用意しています。
お勧めは豆腐ハンバーグと湯葉サラダ、豆腐餅の団子のついたヒトツメセットです。
・ゲームセンター
大手企業Sエンタープライゼス社がてがけるガチのゲームセンター。
沢山のゲーム筐体が並び、中には最新筐体も。
入館者は通常プレイ20回分という破格のスペシャルコインで思う存分楽しむことが出来ます。
スペースの装飾は社のネットゲームをモチーフにしており、なんだか宇宙感がある。
●イベシナとしてのご注意
こちらはイベントシナリオです。LPその他の規則はマニュアルをご覧頂くとして……。
プレイングは文字数も限られますので、気になったスポット一つに絞って書くことをお勧めします。
キャラクターは施設を一通り楽しんておりますが、その一部を描写することになるでしょう。
お友達や恋人と参加する場合は必ず『ユアワ・ナビ子(nCL2000122)と参加』というようにフルネームとIDをプレイング冒頭に記載するようにしてください。無くても精一杯察しますが、ないとうっかりはぐれる危険がございます。
また、八重紅友禅の担当するネームドNPCであれば誰でも呼ぶことができますのでプレイング内で申告してください。人と事情によっては来れない場合があることと、NPCを読んでも描写総量が増えないことのみご了承くださいませ。
●特別待遇
もしご希望の場合は五華ランドのスタッフとして働くこともできます。
(半公式設定ですので、キャラクター設定に組み込んで頂いても構いません)
その際は当プレイングの冒頭で『スタッフ希望』と記載してください。
●オマケの説明
当施設『五華ランド』は地域の真の安全化を目指すプロジェクトの一環です。
この施設が建設された地域には定期的に覚者が巡回し、妖や隔者被害を防ぎます。
また有事の際にはこの施設がシェルター化し、近隣住民を収容しつつ(そして無料で楽しませつつ)何日も安全を維持することができます。
出資者は企業連合体ムラキヨグループとその会長です。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
10日
10日
参加費
50LP
50LP
参加人数
29/50
29/50
公開日
2017年08月15日
2017年08月15日
■メイン参加者 29人■

●ビーチサイドがやってくる
『花屋の装甲擲弾兵』田場 義高(CL2001151)は久方ぶりのデートに来ていた。
なんでも娘が友達の家にお泊まりだというので、夫婦水入らずでプール遊びとしゃれ込もうという話である。
「と言っても、娘を連れてくるための下見でもあるんだがな」
更衣室の前で妻を待ちながら、義高はぼうっと虚空を見上げていた。
若者向けのスパリゾート。それも小中学生の子供をもつ家族連れをターゲットにしているようで、義高にはぴったりなのだ。
やがて、おまたせと言って妻がやってくる。
はたと振り返り、ピンク色のワンピース水着をきた妻に見とれる義高。
彼女の差し出した手を、小さく笑って握った。
命がけの毎日を忘れて、今日は何気ない幸せを噛みしめよう。
「暑い日はやっぱり泳ぐのが一番なの!」
『愛求独眼鬼/パンツハンター』瀬織津・鈴鹿(CL2001285)は両手をグーにしてばんざいした。
水着はおニューのピンクパレオ。身体の傷も誇らしげに、ちょっぴりオトナな鈴鹿である。
に、対して。
「やっほー、待たせたわねん♪」
手をぱたぱたやって現われた『悪意に打ち勝ちし者』魂行 輪廻(CL2000534)。
当たり前のようにヒモ水着である。
「マックスハートでオトナなの! さすが輪廻姉様なの!」
「プールで着るにはちょっと過激すぎたかしらねん?」
目をキラキラさせて身を乗り出す鈴鹿に、輪廻はわざとらしく頬に手を当てて首を傾げて見せた。
「さあ姉様、早速遊ぶの!」
手を引いてプールへ飛び込む鈴鹿と輪廻。
が、次の瞬間には輪廻の水着が消え去っていた。
「気配を感じさせずに奪うとは、腕をあげたわねん」
「姉様の水着はもらったの♪」
「こーら、返しなさーい♪」
プールサイドで水着を握って走る鈴鹿。
それを不自然なほど巧みに局所をかくして追いかける輪廻。
それを猛ダッシュで追いかけて止めようとするスタッフ。
「……なんだいまの」
目の前を通り過ぎるハプニング集団を、『雷切』鹿ノ島・遥(CL2000227)は巧みの目をして見送った。
「今だけオレの目に録画機能とかつかねーかな」
「何か言った?」
背後からかけられた声に振り返る。
水着姿の『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)が立っていた。
下から舐めるように上がっていくアニメカットで、ぜひご想像頂きたい。
目をそらして腕組みする数多。
「な、なんか言いなさいよ」
「今だけオレの目に録画機能とかつかねーかな!」
「せい!」
あまたみぞおちぱんち(↓溜→P)が炸裂した。
両手を腰に当てて微動だにしない遥。
「これはもう、オレの夏始まったんじゃないかな!」
「せめて痛がりなさいよ!」
「十六分割されたんだぜ? 今更鳩尾に食らったくらいでオレが痛がるわけなグヴォア!?」
後から来る衝撃で軽く死にそうになった遥だが、ギリでこらえた。
「ウォーミングアップも済んだことだしウォータースライダーいこうぜ! 乗り放題だぞ!」
「恐っ! 不自然にのけぞったまま喋らないで! まあいいわ、最低五往復はするわよ!」
わーいと言ってウォータースライダーに直行する二人。
遥は匠の目をして思った。
『オレは知ってるぜ。先輩が滑る→水着が取れる→ご来光……っていう黄金パターンを』
あーしてこーしてなんやかんやで滑り。
そして。
「ぎゃあああああああ!?」
結びの甘かった遥のパンツがどっかいった。
「あいつ……何をやってるんだ」
股間を隠してふるえる遥を横目に、『歪を見る眼』葦原 赤貴(CL2001019)はウォータースライダーへの階段を上っていた。
「赤貴君、ちゃんと日も結びマシタ? ウン、それにしても似合ってマスネ」
横で顔を覗き込むようにしてくる『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)。
ちらりと目をそらす赤貴。
リーネは小走りに階段を駆け上がると、きゅっと腰をひねるようなポーズをとって振り返った。
「ホラ、私の水着も似合ってると思いマセンカ?」
「……ああ、すごく。にあってる」
一度視線を合わせてから、再び反らす赤貴。
頭にハテナを浮かべて首を傾げるリーネ。
「ほら、到着デス。待機列がないからすぐデスネ!」
係員に言われるままウォータースライダーのスタート位置に座るリーネ。そして赤貴の手を引くと、自分の膝をぺちぺちと叩いた。
「ドウゾ」
「…………」
固まる赤貴。それをがしっと膝の上に抱えるリーネ。
「さ、行きマスヨー!」
この後、赤貴は未曾有の感覚に振り回されることになる。
虚空を見上げたままぼうっとしている赤貴を横目に、『恋結びの少女』白詰・小百合(CL2001552)はきょろきょろと辺りを見回していた。
「うまれて初めて、こんな場所に来てしまいました……」
どこで何をすればいいの分からないといった様子である。
和風のビキニを着込んでいるが、それがなんだか恥ずかしくて更に小百合を引っ込み気味にさせていた。
だがパーカーを羽織って端っこで縮まるばかりではいられない。
「これも社会勉強。がんばりましょう。『なんぱ』というものも、あると聞きますし……」
ぐっと拳を握り、小百合は人工砂浜へと歩き出し――た直後に男性集団に声をかけられた。
「こういう所初めてですか? ご案内、しましょうか?」
「ふぁい!?」
男性の集団に親切心で声をかけられてあたふたする小百合……という光景をそっとスルーしつつ、『プロ級ショコラティエール』菊坂 結鹿(CL2000432)は隣を歩く『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)を見上げた。
御菓子の水着はブルーのワイヤードビキニだった。胸のラッフフリルにラインストーン。
なんだか人生をエンジョイしてる中学生みたいだったが、結鹿の過去回想によれば『今年はオトナな感じで行くね!』とか言っていた筈である。
結鹿は一旦考えるのをやめた。色々飲み込んだ大人の目(女子中学生がしない目)をしていた。
「どうしたの、結鹿ちゃん」
御菓子が問いかけてきて、結鹿は照れ笑いを返した。
「ううん。えっと……」
何か言いたげな結鹿に、御菓子は少しばかり思案した。
結鹿の水着はピンク色の大人っぽいビキニである。
「なんか変、ですか?」
あんまり見過ぎたからかもじもじし始めた結鹿。
御菓子は誤魔化すように両手を振った。
「ううん、ごめんね、変じゃない。可愛いよ結鹿ちゃんっ」
そして、御菓子はそっと自分の胸に触れてみた。
発育という一点において、結鹿は御菓子よりオトナだった。
いかん。
気を取り直さねば。そして結鹿ちゃんを楽しませねば。
御菓子はぐっとファイティングポーズをとると、結鹿の手を引いた。
「さ、結鹿ちゃん! 今日は楽しもう! 張り切っちゃうから!」
それから御菓子は結鹿をあっちこっちへ持って行き、プールで泳ぎーのスライダーを滑りーの波間で揺れーのはしゃぎーの、した結果……。
「…………」
「お、お姉ちゃん……だいじょうぶ……?」
いるかの浮き具にひっかかって漂う御菓子と、それを心配げに見守る結鹿。
そのそばを通り過ぎ、『想い重ねて』柳 燐花(CL2000695)は人工砂浜にすとんと腰を下ろした。
同じように横に座る『想い重ねて』蘇我島 恭司(CL2001015)。
「人工砂浜だからって、普通の砂浜みたいな砂はないと思ってたけど」
「はい……」
手元をさらりと撫でる燐花。恭司は苦笑した。
「思い切り砂浜なんだねえ」
よくあるプール施設は汚れるからという理由で砂浜に見立てた柔らかい地面を作るだけなのだが、五華ランドはびっくりするほど砂浜だった。
ワイキキビーチを一とする人工砂浜は専用の砂を定期的にコンクリート海岸に撒いて作るのだが、ここに至っては波から景色から砂に至るまで人工物だった。どうやら自動でいい具合に砂が維持され続ける仕組みになっているようで、気分はすっかりビーチサイドである。
帽子を被り、水着の上にシャツを来た燐花。
その横顔に恭司はなんと声をかけるべきか迷った。迷って……。
「折角だし、砂遊びでもしようか」
「そう、ですね」
二人は黙々と砂の山とトンネルを作り始めた。
冷静に考えたらお互い砂遊びという歳でも無いのだが、決めたら黙々と続けるのが恭司と燐花である。
やがてできあがった山を丁寧にくりぬいて、両側から手を触れあう。
「……ぁ」
燐花の声に、ぴたりと手が止まる恭司。
「……」
そっと手を握る。
燐花もまた、その手を握り返した。
二人の手は、波で砂が崩れても離れなかった。
プールのそばには水着で入る温泉がついている。
妖災害があった際の避難所として機能する五華ランドは『避難民がかえって楽しくなるほどに』を裏コンセプトとして作られている。
それゆえ温泉もどこか非日常的な、ローマ遺跡めいた空間になっている。
『復讐兎は夢を見る』花村・鈴蘭(CL2001625)はどこか整頓された露天風呂に身を浸し、うっとりと息を吐いた。
「所属した長さに問わずチケットを配るとは、なかなか気前のいい組織のようですね。ファイヴ……」
肩まで湯につかるが、湯の下は思い切りバニースーツである。
水着だろうとバニースーツをやめないのが鈴蘭のスタイルであった。
桶にのって流れてくる徳利とお猪口を手にとる。
「これで素敵な殿方がいれば言うことなしなのですけれど……」
贅沢は言いますまい。鈴蘭はお猪口に注いだ酒を飲み干した。
目を閉じ、開く。
「……雪花姉さん。私、頑張るよ。――するから」
●五華カフェ
「凛は健康ランドのPもやらせて貰ったし、この企画を逃す手はないんよ」
五華ランドに併設された五華カフェ。足湯とオシャレなカフェを同時に楽しめるというサービスがこの店舗の魅力である。
実際そういったカフェはいくつかの温泉地や、都内でいうと御徒町なんかにあってそれなりに好評なのだが、コレ単体でかつ通常のカフェと変わらない金銭感覚で楽しめる場所となるとちょっと新しかった。
『マジシャンガール』茨田・凜(CL2000438)はそんなカフェで、娘と一緒にパフェをつついていた。
屋内なのでしっかり冷房が効いているし、その上で足が温かくて身体がほっこりし、最終的に冷たいスイーツでさっぱりしているという、なんだか二重にも三重にも贅沢な時間である。
さすがにカフェから始まった(それも大規模フードチェーンの下地つき)というだけあって不満点はまるでない。強いて言うなら子供と並んでカウンター席に座ると子供のほうが足湯を楽しめないことくらいだが、席を選べばその問題も解決する。
そしてなにより……。
「これで、凛もはれてカフェ店員」
ぴらりと採用通知を翳して、凛はにっこりと笑った。
五華カフェは元々『覚者常駐によるタウンセキュリティ』をコンセプトとしているせいか、覚者の特殊体型や守護使役同伴の入店に寛容だった。
よくペットと一緒に入れるカフェなんてものがあるが、ふよふよ浮いてるまるっこい物体と一緒に入る施設というものは今世紀に至るまで無かったのだが……。
「ペスカと一緒にカフェを楽しめるなんて、思ってもみませんでしたね」
『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)はにこにこしながらパフェをつついていた。
人間用のテーブルのそばに守護使役用のミニ足湯なるものが設置されていて、ペスカはそこに浸っていた。
「気持ちよいからってのぼせないように気をつけるんですよ」
などと言いながら、ちらりと横を見やる。
そこでは……。
結婚式場のパンフレット(ゼクシィ的な何か)を挟んだカップルが真剣そうな面持ちで見つめ合っていた。
誰が見ても分かるほど、結婚間近のカップルである。
『雷麒麟』天明 両慈(CL2000603)と『眩い光』華神 悠乃(CL2000231)である。
交際が始まってからおよそ一年。22歳と20歳。
早いようにも思えるが、ことファイヴに勤める覚者としては遅すぎるくらいのスパンだった。なにせ、昨日まで一緒に遊んでいた友人が朝起きたら死んでいたなんてこともある環境である。
それゆえというべきか、二人は両親への挨拶も終えていたらしい。
「しかし、この間は緊張したな……妖との戦いでもあれ程のことは無かった」
「お互い気に入ってくれたようで、何よりですよ」
ほっこりと笑う悠乃。両慈は咳払いをした。
父親から『何かあったら殺す』と言われたことを思い出したらしい。
「あはは……とーさんは誰にでもああですから。大丈夫、追い出されてないってことは、バッチリ気に入られてますよ!」
「だといいが」
両慈は基本、期待には実績で応えるタイプの男である。
そうでなくとも、本当に気に入られるか、そして期待に応えられるかどうかは、両慈がこの先の行動で示していく必要があった。
さしあたっては。
「まずは、これから決めなくてはな」
開いた式場のページを、指でトンと叩いた。
●ゲームセンター
「コスプレイヤー魂にかけて、ゆねるん大変身なの!」
レースクイーンのコスチュームを着た『スーパーコスプレ戦士』立花 ユネル(CL2001606)が人差し指と親指と立ててポーズした。
かと思えば早き替えで格闘ゲームキャラになりきってポーズし、かと思えば警官の衣装を着てオモチャの銃を構えてみせる。
ここは五華ランド内にあるゲームセンター。
来場者はほぼ飽きるまでガチのゲーム筐体で遊べるというちょっと夢みたいなエリアである。
型落ちしたゲーム筐体がラウンドワン的施設についでで入っていることは多々あれど、本気のゲームセンター企業が手がけるここはクオリティが段違いである。今日はオープン記念と筐体の宣伝もかねて最新筐体がお目見えしていた。
ユネルはそのミニイベントのスタッフとして働いている次第である。
「それじゃあ早速プレイしてみせるの。レースゲームは得意なの!」
ユネルの宣伝した筐体はマッドドライブというレースゲームだ。軽自動車からスクールバスまで様々な自動車から自機を選択して危険いっぱいの町中でゴールまでのタイムと『被害総額』を競うというお馬鹿な要素が魅力だ。
「ガードレールや自販機を壊せば壊すほど得点があがるの? す、すごい。っていうか凍った地面がすべる……!」
ハンドルをきりながら、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)の運転するダンプカーがコンビニへ突っ込んでいく。
被害総額がものすごい勢いでカウントされ、奏空は目をまわしかけた。
隣では『ファイブピンク』賀茂 たまき(CL2000994)が妙に真面目な顔でハンドルを握り、恐ろしく器用なハンドルさばきとギアチェンジで凍ったS字カーブを最高速で抜けていく。
放って置いてもその辺の自動車を吹き飛ばすゲームにおいて無事故を貫くという、ある意味恐ろしい才能を発揮していた。
「たまきちゃん、これは被害総額を競うゲームだから」
「そ、そうなのですか? けどなんだか悪い気がして……」
向いてるのか向いてないのか。
ゲームを終えた二人はクレーンゲームでぬいぐるみを狙ってみた。
軽く数十回はプレイできるとあって難易度はかなり高いのだが……。
「奏空さん、頑張ってくださいっ」
「まかせて。今度こそ……」
数十回目のプレイでようやくぬいぐるみの端っこにクレーンアームをひっかけ、ついに取り出し穴へと転げ落ちていく。
「わあ……っ」
奏空は出てきたぬいぐるみを掴み取ると、たまきへとプレゼントした。
ぎゅっと抱きしめ、微笑むたまき。
「それじゃあ、私も頑張って奏空さんの分を取ってみますね!」
その後、たまきが新たな才能を見せることになるが、その話はまた後日。
「あら、可愛らしいですね。チャレンジしてみましょうか」
ぬいぐるみを抱っこして立ち去るたまきと奏空を見送って、『深緑』十夜 八重(CL2000122)と『泪月』椿 那由多(CL2001442)はクレーンゲームの前に立ち止まった。
と言うのも。
「すねこすりのぬいぐるみ……可愛らし……」
ガラスにぴったりと那由多が張り付いていたからである。
トランペットのショーウィンドウに張り付く少年さながらの光景である。
こんな姿を見て足を止めなかったら嘘だ。
八重はくすりと笑って、入場時に渡されたチャージカードを取り出した。
「あら、難しいですね」
「もう少しなんやけど……」
フリープレイの残数がゼロになった頃、那由多はしゅんとしながら傾いたすねこすり人形を見つめていた。猫耳なんてぺったんこになっている。
日本の竿の間にはさまったぬいぐるみを徐々に傾けながら下に落とすというゲームなのだが、これがなかなか難しいのだ。
「ふふ、もう一回だけチャレンジしてみましょうか」
八重はカードを筐体に翳した。フリープレイ分を使い切ってもカード内にチャージしたお金を使ってプレイできるのだ。
ぴこんと立ち上がる那由多の耳。
そして……。
「とれた! とれました!」
那由多はすねこすり人形を掲げてぴょんぴょんと跳ねた。
そして、八重の胸に抱かせる。
「こっちは八重さん、こっちはうちの」
「はい、大切にしますね」
二人は微笑みあって、ぬいぐるみを抱きしめた。
「来たぜ、ゲーセン!」
かっこいいポーズでitucaカードを掲げる『ファイブレッド』成瀬 翔(CL2000063)。この手のガジェットが大好きな彼である。
その後ろから、『導きの鳥』麻弓 紡(CL2000623)と桂木・日那乃(CL2000941)が左右非対称に顔を覗かせた。
「……はじめて、きた、かも」
「そうなんだ。音ゲーなんかどう? あれなら一緒にやればゲームオーバーにならないし」
と言って、紡は太鼓が二つならんだゲーム筐体を指さした。
S社のゲームセンターにC社の最新筐体が普通に置いてあるあたり、なかなかの品揃えである……という話はさておいて。
「紡、音ゲーやるんだ」
「割とイケる自身あるよー」
力こぶを作るポーズをして、紡はウィンクした。
その様子を見て頷く日那乃。
「……やる」
早速バチを持って協力プレイを始める紡と日那乃。
暫くドントコやった後、待ってましたとばかりに翔が日那乃を引っ張った。
「次オレ! オレとレースゲームしようぜ!」
あれやこれやと楽しんだ所で、三人はクレーンゲームの前へとやってきた。
「お菓子、とるの? 皆で、食べられる?」
「そういうこと。実際やってみるのが一番だよな!」
翔がカードを翳してプレイを開始。クレーンでうまいことキャンディをすくい取って、動く台座に乗せて手前の穴に導いていくという簡単そうでなかなか難しいゲームだ。
日那乃もまねしてやってみるが、クレーンですくうところからして難しかった。
「……」
「ね、これあげる」
ふとすると、紡が自分のとったお菓子を手渡してくれた。
両手で受け取って、黙って見つめる日那乃。
「ねえ、日那ちゃんって呼んでもいい?」
「……ん」
うなづく日那乃。翔はにかっと笑って、自分のお菓子を紡に手渡した。
「遊んだら腹減ってきたな。メシ喰おうぜ! メシ!」
「そーだね。じゃあここはやっぱり……」
●五華レストラン
「いらっしゃいませ。来てくれたんですね、皆さんっ」
紡たちの訪れを、『世界樹の癒し』天野 澄香(CL2000194)が給仕服で出迎えた。
ここは五華レストラン。素朴な雰囲気と料理が魅力なレストランだ。
澄香はここでホールスタッフとして働いていた。凛のような正式スタッフとは違って、今日だけのお手伝いではあるが、店からは正社員待遇でお待ちしておりますと言われている立場である。
「席にご案内しますね。ゆっくりしていってください」
紡たちを席に案内してから、澄香は別の注文を取りにハンディコントローラーを手に取った。
「なあ玲さん、何喰う?」
「うん……」
『ボーパルホワイトバニー』飛騨・直斗(CL2001570)と『悪食娘「グラトニー」』獅子神・玲(CL2001261)がメニューを広げて向かい合っていた。
女性に人気の豆腐フルコースなんていうのもおもしろいが、お子様大喜びのハンバーグやエビフライもしっかり完備している。普通に見えてちょこちょこ目移りするという、いいメニューセンスだった。
「……」
メニュー越しに玲を見やる直斗。
つい数ヶ月前、大きな戦争の場で親友を喪った玲。それ以降ちょっとした引きこもり状態になっていた所を、引っ張り出される形で直斗にここへ連れてこられたのだった。
玲も玲で直斗の気遣いに感謝しつつ、少しは明るく振る舞うべきかと迷っている所である。
と、そんな二人に。
「アキちゃん! 偶然ね! こんな所で出会うなんて!」
「あァ?」
直斗の背後から背もたれごしに聞こえた声。振り向くと『獅子心王女<ライオンハート>』獅子神・伊織(CL2001603)が身を乗り出していた。
「……って、なんであなたがいらっしゃるの?」
先刻までの華やいだ声とは裏腹に、軽く人を殺しそうな声と目を向けてくる伊織。
直斗はバツの悪い顔をして前に向き直った。
玲はというと……。
「イオ姉ェ! この前ぶりだね! 直くんとも知り合いだったの? じゃあ一緒にご飯食べよう!」
めっちゃキャッキャしていた。
直斗がプール行こうぜって言ったときよりキャッキャしていた。
「知り合いといいますかなんといいますか……」
直斗の肩に手を置く伊織。直斗的には首筋にナイフを当てられたのと同じ状態である。小声で問いかける伊織。
「アキちゃんとどういう関係?」
「お世話しているというか、姉の関係だよ」
「…………」
姉の関係。その単語で、伊織は黙った。
「直くんこっちに詰めて詰めて」
手招きされて移動する直斗。
「おう……あ、玲さん口汚れてるって」
「むぐぐ」
ナプキンで口をぬぐってやる直斗と、目を瞑ってなすがままにされる玲。
伊織は今にもハンカチを噛み千切りそうな顔をして震えた。
「なにいちゃついてますの」
「いちゃついてねえよ」
「イオ姉ェ、ポテトあるよ。はいあーん」
五華ランドは今日も大好評。
これからも沢山の人々を楽しませることになるだろう。
『花屋の装甲擲弾兵』田場 義高(CL2001151)は久方ぶりのデートに来ていた。
なんでも娘が友達の家にお泊まりだというので、夫婦水入らずでプール遊びとしゃれ込もうという話である。
「と言っても、娘を連れてくるための下見でもあるんだがな」
更衣室の前で妻を待ちながら、義高はぼうっと虚空を見上げていた。
若者向けのスパリゾート。それも小中学生の子供をもつ家族連れをターゲットにしているようで、義高にはぴったりなのだ。
やがて、おまたせと言って妻がやってくる。
はたと振り返り、ピンク色のワンピース水着をきた妻に見とれる義高。
彼女の差し出した手を、小さく笑って握った。
命がけの毎日を忘れて、今日は何気ない幸せを噛みしめよう。
「暑い日はやっぱり泳ぐのが一番なの!」
『愛求独眼鬼/パンツハンター』瀬織津・鈴鹿(CL2001285)は両手をグーにしてばんざいした。
水着はおニューのピンクパレオ。身体の傷も誇らしげに、ちょっぴりオトナな鈴鹿である。
に、対して。
「やっほー、待たせたわねん♪」
手をぱたぱたやって現われた『悪意に打ち勝ちし者』魂行 輪廻(CL2000534)。
当たり前のようにヒモ水着である。
「マックスハートでオトナなの! さすが輪廻姉様なの!」
「プールで着るにはちょっと過激すぎたかしらねん?」
目をキラキラさせて身を乗り出す鈴鹿に、輪廻はわざとらしく頬に手を当てて首を傾げて見せた。
「さあ姉様、早速遊ぶの!」
手を引いてプールへ飛び込む鈴鹿と輪廻。
が、次の瞬間には輪廻の水着が消え去っていた。
「気配を感じさせずに奪うとは、腕をあげたわねん」
「姉様の水着はもらったの♪」
「こーら、返しなさーい♪」
プールサイドで水着を握って走る鈴鹿。
それを不自然なほど巧みに局所をかくして追いかける輪廻。
それを猛ダッシュで追いかけて止めようとするスタッフ。
「……なんだいまの」
目の前を通り過ぎるハプニング集団を、『雷切』鹿ノ島・遥(CL2000227)は巧みの目をして見送った。
「今だけオレの目に録画機能とかつかねーかな」
「何か言った?」
背後からかけられた声に振り返る。
水着姿の『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)が立っていた。
下から舐めるように上がっていくアニメカットで、ぜひご想像頂きたい。
目をそらして腕組みする数多。
「な、なんか言いなさいよ」
「今だけオレの目に録画機能とかつかねーかな!」
「せい!」
あまたみぞおちぱんち(↓溜→P)が炸裂した。
両手を腰に当てて微動だにしない遥。
「これはもう、オレの夏始まったんじゃないかな!」
「せめて痛がりなさいよ!」
「十六分割されたんだぜ? 今更鳩尾に食らったくらいでオレが痛がるわけなグヴォア!?」
後から来る衝撃で軽く死にそうになった遥だが、ギリでこらえた。
「ウォーミングアップも済んだことだしウォータースライダーいこうぜ! 乗り放題だぞ!」
「恐っ! 不自然にのけぞったまま喋らないで! まあいいわ、最低五往復はするわよ!」
わーいと言ってウォータースライダーに直行する二人。
遥は匠の目をして思った。
『オレは知ってるぜ。先輩が滑る→水着が取れる→ご来光……っていう黄金パターンを』
あーしてこーしてなんやかんやで滑り。
そして。
「ぎゃあああああああ!?」
結びの甘かった遥のパンツがどっかいった。
「あいつ……何をやってるんだ」
股間を隠してふるえる遥を横目に、『歪を見る眼』葦原 赤貴(CL2001019)はウォータースライダーへの階段を上っていた。
「赤貴君、ちゃんと日も結びマシタ? ウン、それにしても似合ってマスネ」
横で顔を覗き込むようにしてくる『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)。
ちらりと目をそらす赤貴。
リーネは小走りに階段を駆け上がると、きゅっと腰をひねるようなポーズをとって振り返った。
「ホラ、私の水着も似合ってると思いマセンカ?」
「……ああ、すごく。にあってる」
一度視線を合わせてから、再び反らす赤貴。
頭にハテナを浮かべて首を傾げるリーネ。
「ほら、到着デス。待機列がないからすぐデスネ!」
係員に言われるままウォータースライダーのスタート位置に座るリーネ。そして赤貴の手を引くと、自分の膝をぺちぺちと叩いた。
「ドウゾ」
「…………」
固まる赤貴。それをがしっと膝の上に抱えるリーネ。
「さ、行きマスヨー!」
この後、赤貴は未曾有の感覚に振り回されることになる。
虚空を見上げたままぼうっとしている赤貴を横目に、『恋結びの少女』白詰・小百合(CL2001552)はきょろきょろと辺りを見回していた。
「うまれて初めて、こんな場所に来てしまいました……」
どこで何をすればいいの分からないといった様子である。
和風のビキニを着込んでいるが、それがなんだか恥ずかしくて更に小百合を引っ込み気味にさせていた。
だがパーカーを羽織って端っこで縮まるばかりではいられない。
「これも社会勉強。がんばりましょう。『なんぱ』というものも、あると聞きますし……」
ぐっと拳を握り、小百合は人工砂浜へと歩き出し――た直後に男性集団に声をかけられた。
「こういう所初めてですか? ご案内、しましょうか?」
「ふぁい!?」
男性の集団に親切心で声をかけられてあたふたする小百合……という光景をそっとスルーしつつ、『プロ級ショコラティエール』菊坂 結鹿(CL2000432)は隣を歩く『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)を見上げた。
御菓子の水着はブルーのワイヤードビキニだった。胸のラッフフリルにラインストーン。
なんだか人生をエンジョイしてる中学生みたいだったが、結鹿の過去回想によれば『今年はオトナな感じで行くね!』とか言っていた筈である。
結鹿は一旦考えるのをやめた。色々飲み込んだ大人の目(女子中学生がしない目)をしていた。
「どうしたの、結鹿ちゃん」
御菓子が問いかけてきて、結鹿は照れ笑いを返した。
「ううん。えっと……」
何か言いたげな結鹿に、御菓子は少しばかり思案した。
結鹿の水着はピンク色の大人っぽいビキニである。
「なんか変、ですか?」
あんまり見過ぎたからかもじもじし始めた結鹿。
御菓子は誤魔化すように両手を振った。
「ううん、ごめんね、変じゃない。可愛いよ結鹿ちゃんっ」
そして、御菓子はそっと自分の胸に触れてみた。
発育という一点において、結鹿は御菓子よりオトナだった。
いかん。
気を取り直さねば。そして結鹿ちゃんを楽しませねば。
御菓子はぐっとファイティングポーズをとると、結鹿の手を引いた。
「さ、結鹿ちゃん! 今日は楽しもう! 張り切っちゃうから!」
それから御菓子は結鹿をあっちこっちへ持って行き、プールで泳ぎーのスライダーを滑りーの波間で揺れーのはしゃぎーの、した結果……。
「…………」
「お、お姉ちゃん……だいじょうぶ……?」
いるかの浮き具にひっかかって漂う御菓子と、それを心配げに見守る結鹿。
そのそばを通り過ぎ、『想い重ねて』柳 燐花(CL2000695)は人工砂浜にすとんと腰を下ろした。
同じように横に座る『想い重ねて』蘇我島 恭司(CL2001015)。
「人工砂浜だからって、普通の砂浜みたいな砂はないと思ってたけど」
「はい……」
手元をさらりと撫でる燐花。恭司は苦笑した。
「思い切り砂浜なんだねえ」
よくあるプール施設は汚れるからという理由で砂浜に見立てた柔らかい地面を作るだけなのだが、五華ランドはびっくりするほど砂浜だった。
ワイキキビーチを一とする人工砂浜は専用の砂を定期的にコンクリート海岸に撒いて作るのだが、ここに至っては波から景色から砂に至るまで人工物だった。どうやら自動でいい具合に砂が維持され続ける仕組みになっているようで、気分はすっかりビーチサイドである。
帽子を被り、水着の上にシャツを来た燐花。
その横顔に恭司はなんと声をかけるべきか迷った。迷って……。
「折角だし、砂遊びでもしようか」
「そう、ですね」
二人は黙々と砂の山とトンネルを作り始めた。
冷静に考えたらお互い砂遊びという歳でも無いのだが、決めたら黙々と続けるのが恭司と燐花である。
やがてできあがった山を丁寧にくりぬいて、両側から手を触れあう。
「……ぁ」
燐花の声に、ぴたりと手が止まる恭司。
「……」
そっと手を握る。
燐花もまた、その手を握り返した。
二人の手は、波で砂が崩れても離れなかった。
プールのそばには水着で入る温泉がついている。
妖災害があった際の避難所として機能する五華ランドは『避難民がかえって楽しくなるほどに』を裏コンセプトとして作られている。
それゆえ温泉もどこか非日常的な、ローマ遺跡めいた空間になっている。
『復讐兎は夢を見る』花村・鈴蘭(CL2001625)はどこか整頓された露天風呂に身を浸し、うっとりと息を吐いた。
「所属した長さに問わずチケットを配るとは、なかなか気前のいい組織のようですね。ファイヴ……」
肩まで湯につかるが、湯の下は思い切りバニースーツである。
水着だろうとバニースーツをやめないのが鈴蘭のスタイルであった。
桶にのって流れてくる徳利とお猪口を手にとる。
「これで素敵な殿方がいれば言うことなしなのですけれど……」
贅沢は言いますまい。鈴蘭はお猪口に注いだ酒を飲み干した。
目を閉じ、開く。
「……雪花姉さん。私、頑張るよ。――するから」
●五華カフェ
「凛は健康ランドのPもやらせて貰ったし、この企画を逃す手はないんよ」
五華ランドに併設された五華カフェ。足湯とオシャレなカフェを同時に楽しめるというサービスがこの店舗の魅力である。
実際そういったカフェはいくつかの温泉地や、都内でいうと御徒町なんかにあってそれなりに好評なのだが、コレ単体でかつ通常のカフェと変わらない金銭感覚で楽しめる場所となるとちょっと新しかった。
『マジシャンガール』茨田・凜(CL2000438)はそんなカフェで、娘と一緒にパフェをつついていた。
屋内なのでしっかり冷房が効いているし、その上で足が温かくて身体がほっこりし、最終的に冷たいスイーツでさっぱりしているという、なんだか二重にも三重にも贅沢な時間である。
さすがにカフェから始まった(それも大規模フードチェーンの下地つき)というだけあって不満点はまるでない。強いて言うなら子供と並んでカウンター席に座ると子供のほうが足湯を楽しめないことくらいだが、席を選べばその問題も解決する。
そしてなにより……。
「これで、凛もはれてカフェ店員」
ぴらりと採用通知を翳して、凛はにっこりと笑った。
五華カフェは元々『覚者常駐によるタウンセキュリティ』をコンセプトとしているせいか、覚者の特殊体型や守護使役同伴の入店に寛容だった。
よくペットと一緒に入れるカフェなんてものがあるが、ふよふよ浮いてるまるっこい物体と一緒に入る施設というものは今世紀に至るまで無かったのだが……。
「ペスカと一緒にカフェを楽しめるなんて、思ってもみませんでしたね」
『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)はにこにこしながらパフェをつついていた。
人間用のテーブルのそばに守護使役用のミニ足湯なるものが設置されていて、ペスカはそこに浸っていた。
「気持ちよいからってのぼせないように気をつけるんですよ」
などと言いながら、ちらりと横を見やる。
そこでは……。
結婚式場のパンフレット(ゼクシィ的な何か)を挟んだカップルが真剣そうな面持ちで見つめ合っていた。
誰が見ても分かるほど、結婚間近のカップルである。
『雷麒麟』天明 両慈(CL2000603)と『眩い光』華神 悠乃(CL2000231)である。
交際が始まってからおよそ一年。22歳と20歳。
早いようにも思えるが、ことファイヴに勤める覚者としては遅すぎるくらいのスパンだった。なにせ、昨日まで一緒に遊んでいた友人が朝起きたら死んでいたなんてこともある環境である。
それゆえというべきか、二人は両親への挨拶も終えていたらしい。
「しかし、この間は緊張したな……妖との戦いでもあれ程のことは無かった」
「お互い気に入ってくれたようで、何よりですよ」
ほっこりと笑う悠乃。両慈は咳払いをした。
父親から『何かあったら殺す』と言われたことを思い出したらしい。
「あはは……とーさんは誰にでもああですから。大丈夫、追い出されてないってことは、バッチリ気に入られてますよ!」
「だといいが」
両慈は基本、期待には実績で応えるタイプの男である。
そうでなくとも、本当に気に入られるか、そして期待に応えられるかどうかは、両慈がこの先の行動で示していく必要があった。
さしあたっては。
「まずは、これから決めなくてはな」
開いた式場のページを、指でトンと叩いた。
●ゲームセンター
「コスプレイヤー魂にかけて、ゆねるん大変身なの!」
レースクイーンのコスチュームを着た『スーパーコスプレ戦士』立花 ユネル(CL2001606)が人差し指と親指と立ててポーズした。
かと思えば早き替えで格闘ゲームキャラになりきってポーズし、かと思えば警官の衣装を着てオモチャの銃を構えてみせる。
ここは五華ランド内にあるゲームセンター。
来場者はほぼ飽きるまでガチのゲーム筐体で遊べるというちょっと夢みたいなエリアである。
型落ちしたゲーム筐体がラウンドワン的施設についでで入っていることは多々あれど、本気のゲームセンター企業が手がけるここはクオリティが段違いである。今日はオープン記念と筐体の宣伝もかねて最新筐体がお目見えしていた。
ユネルはそのミニイベントのスタッフとして働いている次第である。
「それじゃあ早速プレイしてみせるの。レースゲームは得意なの!」
ユネルの宣伝した筐体はマッドドライブというレースゲームだ。軽自動車からスクールバスまで様々な自動車から自機を選択して危険いっぱいの町中でゴールまでのタイムと『被害総額』を競うというお馬鹿な要素が魅力だ。
「ガードレールや自販機を壊せば壊すほど得点があがるの? す、すごい。っていうか凍った地面がすべる……!」
ハンドルをきりながら、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)の運転するダンプカーがコンビニへ突っ込んでいく。
被害総額がものすごい勢いでカウントされ、奏空は目をまわしかけた。
隣では『ファイブピンク』賀茂 たまき(CL2000994)が妙に真面目な顔でハンドルを握り、恐ろしく器用なハンドルさばきとギアチェンジで凍ったS字カーブを最高速で抜けていく。
放って置いてもその辺の自動車を吹き飛ばすゲームにおいて無事故を貫くという、ある意味恐ろしい才能を発揮していた。
「たまきちゃん、これは被害総額を競うゲームだから」
「そ、そうなのですか? けどなんだか悪い気がして……」
向いてるのか向いてないのか。
ゲームを終えた二人はクレーンゲームでぬいぐるみを狙ってみた。
軽く数十回はプレイできるとあって難易度はかなり高いのだが……。
「奏空さん、頑張ってくださいっ」
「まかせて。今度こそ……」
数十回目のプレイでようやくぬいぐるみの端っこにクレーンアームをひっかけ、ついに取り出し穴へと転げ落ちていく。
「わあ……っ」
奏空は出てきたぬいぐるみを掴み取ると、たまきへとプレゼントした。
ぎゅっと抱きしめ、微笑むたまき。
「それじゃあ、私も頑張って奏空さんの分を取ってみますね!」
その後、たまきが新たな才能を見せることになるが、その話はまた後日。
「あら、可愛らしいですね。チャレンジしてみましょうか」
ぬいぐるみを抱っこして立ち去るたまきと奏空を見送って、『深緑』十夜 八重(CL2000122)と『泪月』椿 那由多(CL2001442)はクレーンゲームの前に立ち止まった。
と言うのも。
「すねこすりのぬいぐるみ……可愛らし……」
ガラスにぴったりと那由多が張り付いていたからである。
トランペットのショーウィンドウに張り付く少年さながらの光景である。
こんな姿を見て足を止めなかったら嘘だ。
八重はくすりと笑って、入場時に渡されたチャージカードを取り出した。
「あら、難しいですね」
「もう少しなんやけど……」
フリープレイの残数がゼロになった頃、那由多はしゅんとしながら傾いたすねこすり人形を見つめていた。猫耳なんてぺったんこになっている。
日本の竿の間にはさまったぬいぐるみを徐々に傾けながら下に落とすというゲームなのだが、これがなかなか難しいのだ。
「ふふ、もう一回だけチャレンジしてみましょうか」
八重はカードを筐体に翳した。フリープレイ分を使い切ってもカード内にチャージしたお金を使ってプレイできるのだ。
ぴこんと立ち上がる那由多の耳。
そして……。
「とれた! とれました!」
那由多はすねこすり人形を掲げてぴょんぴょんと跳ねた。
そして、八重の胸に抱かせる。
「こっちは八重さん、こっちはうちの」
「はい、大切にしますね」
二人は微笑みあって、ぬいぐるみを抱きしめた。
「来たぜ、ゲーセン!」
かっこいいポーズでitucaカードを掲げる『ファイブレッド』成瀬 翔(CL2000063)。この手のガジェットが大好きな彼である。
その後ろから、『導きの鳥』麻弓 紡(CL2000623)と桂木・日那乃(CL2000941)が左右非対称に顔を覗かせた。
「……はじめて、きた、かも」
「そうなんだ。音ゲーなんかどう? あれなら一緒にやればゲームオーバーにならないし」
と言って、紡は太鼓が二つならんだゲーム筐体を指さした。
S社のゲームセンターにC社の最新筐体が普通に置いてあるあたり、なかなかの品揃えである……という話はさておいて。
「紡、音ゲーやるんだ」
「割とイケる自身あるよー」
力こぶを作るポーズをして、紡はウィンクした。
その様子を見て頷く日那乃。
「……やる」
早速バチを持って協力プレイを始める紡と日那乃。
暫くドントコやった後、待ってましたとばかりに翔が日那乃を引っ張った。
「次オレ! オレとレースゲームしようぜ!」
あれやこれやと楽しんだ所で、三人はクレーンゲームの前へとやってきた。
「お菓子、とるの? 皆で、食べられる?」
「そういうこと。実際やってみるのが一番だよな!」
翔がカードを翳してプレイを開始。クレーンでうまいことキャンディをすくい取って、動く台座に乗せて手前の穴に導いていくという簡単そうでなかなか難しいゲームだ。
日那乃もまねしてやってみるが、クレーンですくうところからして難しかった。
「……」
「ね、これあげる」
ふとすると、紡が自分のとったお菓子を手渡してくれた。
両手で受け取って、黙って見つめる日那乃。
「ねえ、日那ちゃんって呼んでもいい?」
「……ん」
うなづく日那乃。翔はにかっと笑って、自分のお菓子を紡に手渡した。
「遊んだら腹減ってきたな。メシ喰おうぜ! メシ!」
「そーだね。じゃあここはやっぱり……」
●五華レストラン
「いらっしゃいませ。来てくれたんですね、皆さんっ」
紡たちの訪れを、『世界樹の癒し』天野 澄香(CL2000194)が給仕服で出迎えた。
ここは五華レストラン。素朴な雰囲気と料理が魅力なレストランだ。
澄香はここでホールスタッフとして働いていた。凛のような正式スタッフとは違って、今日だけのお手伝いではあるが、店からは正社員待遇でお待ちしておりますと言われている立場である。
「席にご案内しますね。ゆっくりしていってください」
紡たちを席に案内してから、澄香は別の注文を取りにハンディコントローラーを手に取った。
「なあ玲さん、何喰う?」
「うん……」
『ボーパルホワイトバニー』飛騨・直斗(CL2001570)と『悪食娘「グラトニー」』獅子神・玲(CL2001261)がメニューを広げて向かい合っていた。
女性に人気の豆腐フルコースなんていうのもおもしろいが、お子様大喜びのハンバーグやエビフライもしっかり完備している。普通に見えてちょこちょこ目移りするという、いいメニューセンスだった。
「……」
メニュー越しに玲を見やる直斗。
つい数ヶ月前、大きな戦争の場で親友を喪った玲。それ以降ちょっとした引きこもり状態になっていた所を、引っ張り出される形で直斗にここへ連れてこられたのだった。
玲も玲で直斗の気遣いに感謝しつつ、少しは明るく振る舞うべきかと迷っている所である。
と、そんな二人に。
「アキちゃん! 偶然ね! こんな所で出会うなんて!」
「あァ?」
直斗の背後から背もたれごしに聞こえた声。振り向くと『獅子心王女<ライオンハート>』獅子神・伊織(CL2001603)が身を乗り出していた。
「……って、なんであなたがいらっしゃるの?」
先刻までの華やいだ声とは裏腹に、軽く人を殺しそうな声と目を向けてくる伊織。
直斗はバツの悪い顔をして前に向き直った。
玲はというと……。
「イオ姉ェ! この前ぶりだね! 直くんとも知り合いだったの? じゃあ一緒にご飯食べよう!」
めっちゃキャッキャしていた。
直斗がプール行こうぜって言ったときよりキャッキャしていた。
「知り合いといいますかなんといいますか……」
直斗の肩に手を置く伊織。直斗的には首筋にナイフを当てられたのと同じ状態である。小声で問いかける伊織。
「アキちゃんとどういう関係?」
「お世話しているというか、姉の関係だよ」
「…………」
姉の関係。その単語で、伊織は黙った。
「直くんこっちに詰めて詰めて」
手招きされて移動する直斗。
「おう……あ、玲さん口汚れてるって」
「むぐぐ」
ナプキンで口をぬぐってやる直斗と、目を瞑ってなすがままにされる玲。
伊織は今にもハンカチを噛み千切りそうな顔をして震えた。
「なにいちゃついてますの」
「いちゃついてねえよ」
「イオ姉ェ、ポテトあるよ。はいあーん」
五華ランドは今日も大好評。
これからも沢山の人々を楽しませることになるだろう。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
