<忍者探偵>狙われしサイコマキモノ!
●ニンジャ。それは現代に潜む不可視の闇!
ネオン輝く中華街に一陣の風と閃光が走った――のでは、ない。
不可思議に振動しながら走行する人型の物体を、人々は目視することすらできなかったのだ。
しかし暦因子トゥルーサーをはじめとする覚者超視力を持つ諸兄なら見えるだろう。
つま先から頭までをすっぽりと不思議な装束で包んだ男の姿を! 顔の殆どは漆黒の面頬(メンポ)で覆われ、目だけが鋭い光を宿しているのを!
まるで古い娯楽映画に登場するニンジャのごときその装束。
嗚呼、これぞ典型。
現代に生き残る『ニンジャ』の姿である!
「ここまで逃げれば安心だろう」
閃光と風はあるビルの谷間で止まった。
メンポを外し、中から現われたのは十代なかばという少年。
その顔には一滴の汗もなく、呼吸も一切乱れていない。
忍者走行術と忍者呼吸法をマスターした彼には、高速での移動でも乱れることはないのだ。
それだけではない。彼を包む忍者装束はサイバネティクスの粋をこらした一品だ。反射神経や代謝効率を向上させるだけでなく、一見ただの布にしか見えぬこの装備は銃弾をも防ぐという。
「このマキモノは誰にも渡すわけにはいかぬ。なんとしても守り通さねば」
突如!
少年を黒い影が覆った!
否――黒い忍者装束を纏った集団があまりに高速で動くせいで、常人の肉眼ではとらえきれなかったのだ!
「貴様は、トライシ!」
「そう、我だ! ゴンゾウ少年!」
素早く逆手に握って繰り出した忍者刀と、黒い影の繰り出した鎖鎌がぶつかり合う!
忍者鍛冶術で錬成した刃は小刻みに振動し相手の刃をも打ち砕かんとするが、それは相手もまた同じ。ぶつかり合った振動が黄金の火花となって激しく散った。
「マキモノを渡せ! それは我らトライシニンジャクランが預かる」
「ならぬ! これは人々の平和な暮らしを壊すもの。決して表に出てよいものではない!」
「なぜだ。人々は我らを世の闇へ隠すため、娯楽作品で偽りの忍者感を植え付け、ニンジャを名乗れば馬鹿にされるようしむけたのだぞ。その力を使えば、奴らを屈服させ、支配することすらできるというのに!」
「ならぬといったらならぬ! 『ニンジャは影より人世を見守るべし』……父の言葉、ゆめゆめ忘れたとは言わせぬぞ!」
「死んだ者の言葉になんの意味がある! やれい!」
「何……!?」
ゴンゾウ少年の背後から現われた黒影の集団が、一斉に手裏剣を放った!
フィクション作品の中ではただのとがった鉄の板として扱われるそれも、忍者鍛冶術によって生み出された特殊金属。銃弾の何倍もの威力を持つ恐ろしい武器なのだ!
「ぐあああ!?」
無数の手裏剣が少年に突き刺さる。
サイバネティクス装束を貫き吹き上がる鮮血!
少年の志は潰えてしまうのか!?
人々の平和な日常を守らんとした彼の願いは、踏みにじられてしまうのか!?
否――!
●人の形をした希望
「俺たちがいる!」
久方 相馬(nCL2000004)はそう、説明を区切った。
ところはファイヴの会議室。ある覚者と隔者の争いを予知したという彼は、ファイヴ覚者を集めて説明を行なっていた。
「ハストリ ゴンゾウという少年は古くから忍者の血を引いている、そうだ。真偽はともかく、彼は父の教えを守って人々の世を影からこっそりと守り、見えない悪意に平和な生活が脅かされないように戦い続けてきた。
しかし父の死後、右腕だったトライシという男が組織を掌握し、人々を支配しようともくろみ始めた。
ゴンゾウ少年はその鍵が『サイコマキモノ』にあるとして、家から持ち出して逃げたのんだが……」
その未来は今説明した通りである。
「だが、俺たちの手で未来を回避することができる。
この現場に駆けつけ戦うんだ。
どっちに味方するかなんて、もう決まってるよな!」
ネオン輝く中華街に一陣の風と閃光が走った――のでは、ない。
不可思議に振動しながら走行する人型の物体を、人々は目視することすらできなかったのだ。
しかし暦因子トゥルーサーをはじめとする覚者超視力を持つ諸兄なら見えるだろう。
つま先から頭までをすっぽりと不思議な装束で包んだ男の姿を! 顔の殆どは漆黒の面頬(メンポ)で覆われ、目だけが鋭い光を宿しているのを!
まるで古い娯楽映画に登場するニンジャのごときその装束。
嗚呼、これぞ典型。
現代に生き残る『ニンジャ』の姿である!
「ここまで逃げれば安心だろう」
閃光と風はあるビルの谷間で止まった。
メンポを外し、中から現われたのは十代なかばという少年。
その顔には一滴の汗もなく、呼吸も一切乱れていない。
忍者走行術と忍者呼吸法をマスターした彼には、高速での移動でも乱れることはないのだ。
それだけではない。彼を包む忍者装束はサイバネティクスの粋をこらした一品だ。反射神経や代謝効率を向上させるだけでなく、一見ただの布にしか見えぬこの装備は銃弾をも防ぐという。
「このマキモノは誰にも渡すわけにはいかぬ。なんとしても守り通さねば」
突如!
少年を黒い影が覆った!
否――黒い忍者装束を纏った集団があまりに高速で動くせいで、常人の肉眼ではとらえきれなかったのだ!
「貴様は、トライシ!」
「そう、我だ! ゴンゾウ少年!」
素早く逆手に握って繰り出した忍者刀と、黒い影の繰り出した鎖鎌がぶつかり合う!
忍者鍛冶術で錬成した刃は小刻みに振動し相手の刃をも打ち砕かんとするが、それは相手もまた同じ。ぶつかり合った振動が黄金の火花となって激しく散った。
「マキモノを渡せ! それは我らトライシニンジャクランが預かる」
「ならぬ! これは人々の平和な暮らしを壊すもの。決して表に出てよいものではない!」
「なぜだ。人々は我らを世の闇へ隠すため、娯楽作品で偽りの忍者感を植え付け、ニンジャを名乗れば馬鹿にされるようしむけたのだぞ。その力を使えば、奴らを屈服させ、支配することすらできるというのに!」
「ならぬといったらならぬ! 『ニンジャは影より人世を見守るべし』……父の言葉、ゆめゆめ忘れたとは言わせぬぞ!」
「死んだ者の言葉になんの意味がある! やれい!」
「何……!?」
ゴンゾウ少年の背後から現われた黒影の集団が、一斉に手裏剣を放った!
フィクション作品の中ではただのとがった鉄の板として扱われるそれも、忍者鍛冶術によって生み出された特殊金属。銃弾の何倍もの威力を持つ恐ろしい武器なのだ!
「ぐあああ!?」
無数の手裏剣が少年に突き刺さる。
サイバネティクス装束を貫き吹き上がる鮮血!
少年の志は潰えてしまうのか!?
人々の平和な日常を守らんとした彼の願いは、踏みにじられてしまうのか!?
否――!
●人の形をした希望
「俺たちがいる!」
久方 相馬(nCL2000004)はそう、説明を区切った。
ところはファイヴの会議室。ある覚者と隔者の争いを予知したという彼は、ファイヴ覚者を集めて説明を行なっていた。
「ハストリ ゴンゾウという少年は古くから忍者の血を引いている、そうだ。真偽はともかく、彼は父の教えを守って人々の世を影からこっそりと守り、見えない悪意に平和な生活が脅かされないように戦い続けてきた。
しかし父の死後、右腕だったトライシという男が組織を掌握し、人々を支配しようともくろみ始めた。
ゴンゾウ少年はその鍵が『サイコマキモノ』にあるとして、家から持ち出して逃げたのんだが……」
その未来は今説明した通りである。
「だが、俺たちの手で未来を回避することができる。
この現場に駆けつけ戦うんだ。
どっちに味方するかなんて、もう決まってるよな!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.トライシとその部下を倒し、追い払うこと
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
シリーズとはいっても毎回単発扱いで公開していく予定ですので、新規参入をいつでも歓迎しております。どうぞお気軽にご参加くださいませ。
●状況
赤忍者ゴンゾウ少年が黒忍者トライシとその部下に襲われています。
皆さんが駆けつけるのは、予知の結末に至る寸前くらい。
ゴンゾウめがけて沢山の手裏剣が襲いかかる所に割り込み『助太刀するぞ!』的な登場をするのが一番相手にも分かりやすくかつ美味しいかと思います。
戦闘する相手はトライシ(土暦高レベル)とその部下(火、水、木、天、土の暦)。
全てないしはほとんどを倒すことで彼らは撤退します。
忍者撤退術をマスターした彼らはとらえられることなく瞬時に全力撤退することができるため、今回の任務はあえて『追い払うこと』としています。
味方戦力はゴンゾウ少年(火暦)。
小太刀二刀流。これを逆手に握って戦います。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2017年07月17日
2017年07月17日
■メイン参加者 8人■

●忍者、それは世界に閃く不可視の光!
赤き忍者ハストリ ゴンゾウ。
彼の背に迫る無数の手裏剣。空を裂き凶悪にぎらつくメタルの刃。
やがてゴンゾウのサイバネティクス忍者装束を貫くかというその刹那――。
「ちょっとまった!」
ゴンゾウと手裏剣の間に突き刺さる剣。
剣が纏った雷がはじけ、さらには天空から下りた龍のごとき雷が合わさり手裏剣の軌道を反らしていく。
さらには手下の忍者たちの足下に硬化した護符が突き刺さり、反射的に飛び退かせる。
最後に拳と膝で着地した少年が蹴りと手刀で手裏剣をたたき落とし、次々と少年少女がビルの谷目へと飛び降りてきた。
「ムム、何奴――ッ!」
般若能面のごとき面頬の奥で、黒忍者トライシが目を光らせた。
明滅するネオンの光。
夜闇に紛れ、ともしびの光が彼らの背を照らした。
「人の世を守る信念を、力でねじ曲げるその蛮行。月が許してもファイヴが許さないよ!」
振り返り、素顔を晒す『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)。
「奏でる空に舞う灰色の脳細胞! ファイヴアッシュ!」
同じく振り返る『白の勇気』成瀬 翔(CL2000063)。
「天翔る赤き流星、ファイヴレッド!」
更に振り返る『雷切』鹿ノ島・遥(CL2000227)。
「鍛えた鉄拳、理不尽穿つ! レイクサンダー、ファイブホワイトッ!」
更に更に振り返る、賀茂 たまき(CL2000994)。
「皆さんへ希望を繋ぐ薄紅の環、ファイブピンクです!」
彼らを照らしていたともしびをちらちら調整しつつ、こちら(?)を二度見する『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)。
「あっ、お金がなくてもオダイジン! 大臣じゃなくて王子だけど、ファイブゴールド!」
締まらない様子に、額に手を当ててため息をつく『導きの鳥』麻弓 紡(CL2000623)。
「絆を紡ぐ光の糸、ファイヴイエロー……みたいな?」
独特なポーズで暫く固まっていた彼らを。
ゴンゾウと。
トライシと。
あと部下の忍者たちは暫くじーっと見つめ。
「……それは、やる必要があったのか?」
と呟いた。
急に顔を劇画調にして遠くを見る翔。
こんかいは とくさつようそ なかったな
――翔、心の俳句
あとからおずおずと出てきた『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)が困り顔をしていた。
「あの、私はどうしましょうか。互換的にはアッシュもいいんですが、奏空さんがとってしまいましたし、シルバーとか……いえ、できれば炎に関係した色とかありますでしょうか?」
「ごめんラーラさん、今回やらなくてよかった。俺が悪かった」
手を合わせて頭を下げる翔である。
その時!
音もなく闇夜にあらわれ、『美獣を狩る者』シャーロット・クィン・ブラッドバーン(CL2001590)が剣をするりと抜いた。
白い鳥の羽が幻覚のようにひらひらと舞い、瞑目していたシャーロットがうっすらと瞳をひらく。
「Expectation is the root of all heartache」
しゃん、と鈴が鳴るかのような凜とした鋭さで、シャーロットは剣を突きつけた。
「Be blue……I\'m F.i.V.E. blue」
「カッコよくキメてくれたのにごめんなさいシャーロットさんほっとまじで! 今回特撮要素全然なかったほんとまじ!」
「いや、忍者モノって特撮のハシリじゃなかったか?」
「大丈夫だよギリギリあってるギリギリ!」
「元気出してください、ぎりぎり大丈夫だそうですから。ね」
「ぎりぎり……」
なんだか既に和やかな空気になりつつあるファイヴの八人だが。
しかし。
「ゴンゾウだったな。困ってるみたいだから、手を貸すぜ!」
「なぜ拙者の名を」
「こまけーことはいいじゃんか。屈服だの支配だの、そーゆー言葉を使う奴の好きにはさせないぜ!」
翔と遥がそれぞれバシッと拳を構えた。
「うわっ、ほんとにニンジャだ。オメイシいいですか? ワタクシコーユーモノデ……べっぷ!?」
プリンスが自分の顔がプリントされたテレホンカードを取り出したところで、紡が横から小麦粉弾を発射した。
わたわたした様子で顔を拭いてあげるたまき。
「ええと、大勢でひとりを追いかけ回すなんて趣味が悪いですよ」
言うべきことは言っとこうという様子でラーラがトライシたちへと向き直る。
一方。マイペースなのかメンタルが無敵なのか、登場のテンションをそのまま維持して剣を構えていたシャーロットがトライシに狙いを定めた。
「どうあれ、忍者の方々と競える機会、興味深く思います」
「というわけだ! 俺たちファイヴは赤忍者のゴンゾウに加勢する! あときみ俺とキャラ被ってるよね!」
「言っている意味が分からない」
ゴンゾウは小さく首を振った。そして。
「加勢の意志、今は信じるしかない。ゆえに、信じるぞ!」
「信じてくれ!」
奏空は刀を逆手に握って引き抜き、トライシたちへと構えた。
「応えてみせる!」
●闇なる戦い
奏空は刀を逆手持ちしたままもう片方の手で印を結んだ。
「天衣無縫!」
奏空の呼び出したエネルギーがたまきやゴンゾウたちへと被さり、まるで神仏が宿ったかのように身体を軽くした。
「俺が皆をサポートする。まずは周りの忍者たちを倒すんだ!」
「ゴンゾウさんと奏空さんは、私がお守りします!」
さっとゴンゾウの近くに陣取ったたまきは、蛇腹状の御朱印帳を結界のように展開してゴンゾウに力の膜を張った。返す刀ならぬ返す護符で自らの力を引き上げる膜を張る。
「私が傷つくのは構いませんが、皆さんを傷付けることは許しません!」
御朱印帳を今度は鞭のように放ち、エネルギーの波を起こして忍者たちへ浴びせかける。
「いや、たまきちゃんは俺が傷付けさせない!」
と言って、忍者たちに斬りかかる奏空。
「奏空のやつ、ここぞとばかりにイチャイチャしてるぜ……」
「あいぼー、ボクちょっと寂しい……」
と言って、和やかなテンションを混ぜにいく翔と紡。
片手間ってわけじゃあないが、くるっと振り返ってゴンゾウに戦巫女之祝詞をかけてやった。
「回復はいるかな?」
「不要だ。かたじけない」
ピッと片手で祈るジェスチャーをするゴンゾウ。
仕草の自然さと堅さから彼が厳格な環境で育ってきたことを示していた。
「とにかく、後ろは任せて」
「じゃあ俺はちょい前へ出とくか!」
翔はタブレットPCに指で雷の文字を描くと、投射した立体陰陽陣から雷の龍を生み出した。
龍が忍者たちへ襲いかかる中で、ラーラもまた魔方陣を展開。
「お手伝いします」
一つの魔方陣が無数の小さな魔方陣を生み、陣から炎でできた猫を生み出していく。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を・・……イオ・ブルチャーレ!」
雷の龍と炎の猫。
不可思議な術式を相手に、しかし忍者たちも負けていなかった。
ビルの壁をジグザグに跳ねながら手裏剣や忍者刀をぶつけて防御していく。
それでも防ぎきれなかった者たちが直撃をうけ、積まれたビールケースや明滅するネオンサインへと突っ込んでいく。
「では、センエツながらワタシも」
シャーロットは剣を右へ左へ振り、指揮棒のように風を切ってから忍者たちへと襲いかかった。
地面はまるで濡れていないのに、まるで水たまりを走ったように水滴がはねていく。
そのたびに彼女の速度が冴え、剣の軌道が鋭くなった。
「その程度の剣術で我らにかなうわけが――」
忍者刀で刀をたたき落とそうとした忍者。
しかし、シャーロットはまるでかすみように実態をブレさせ、気づいたときにはあたり一帯の忍者たちの胸に十字架のごとき傷を刻み込んでいた。
「ば、ばかな……!」
息絶える寸前、心臓部に埋め込んだ特殊センサー式小型爆弾が爆発。忍者が爆発四散した。死体から証拠を残さぬための徹底した処理方法なのだ。
「やるなあ。武術ってか、おとぎ話の技みてーだ」
鼻頭を親指でぬぐい、ニッと笑う遥。
彼は残る忍者へと飛びかかった。
「次はオレだ! 特技は空手! おねがいします!」
「何が空手だ。忍者格闘術の前にはあらゆる武術が――」
遥の蹴りを一度手刀で払う忍者。しかし遥の跳び蹴りはまるで空中に制止したかのように続き、二発三発と連続で忍者に叩き込まれた。
「嘘だ! こいつも忍者格闘術を……!?」
「知らねぇな。めっちゃ練習しただけだ!」
忍者の首を蹴りつけ、くるくると回転してから着地する遥。
爆発四散する忍者を背に、深呼吸と共に構え直した。
一方。
「ヌハハハハ! ぬるいぬるい!」
プリンスによる猛攻を受けても尚、トライシは小揺るぎもしなかった。
仁王立ち(この場合弁慶立ちが近い)のまま、プリンスのハンマーアタックを顔や腹に食らっている。
「もっと打ってくるがいい。そして己の無力さを知るのだ!」
「ニンジュツだー! ベンケーだー!」
プリンスはプリンスで劣勢っぽい筈なのにちょっと楽しそうだった。
「フン、調子の狂う奴め。ならばよい! 苦悶の顔を見せるのだ!」
トライシは防御一辺倒だった構えを解き、鎖鎌を放った。
プリンスの腕や首に巻き付く鎖鎌。
「所詮貴様も忍者を小馬鹿にしているのだろう。恐怖と共に心底に刻むがいい!」
「余、忍者ばかにしてないよ!? なるとすきだよ!?」
「ええいもう黙れぃ!」
ぎちぎちと締めにかかるトライシ。
プリンスの身体を補強していた装甲やパワーアシストがべきべきと音を立てて破壊されていく。
やがてプリンスの肉体をもへし折ろうとした、その時……!
上空から飛来したエネルギーボールが、プリンスを締め付けていた鎖を破壊した。
解き放たれたプリンスは喉をおさえてけほけほとやったが、すぐそばに下りてきた紡にステッキの端でぺちんとやられた。
「殿、遊びすぎ」
「ごめんなさい」
「あっちは片付いたから、反撃しちゃいなさい」
紡の言葉にハッとした様子で、トライシは周囲を見回した。
はじめは一対多で数の優位をとっていた忍者たちが次々と葬られ、今は自分だけとなっていたのだ。
「ぐぬぅ……敵の力を侮ったか」
「敵の力、ね」
紡は奏空にアイコンタクトを送ったが、奏空は小さく首を振った。
密かにエネミースキャンを走らせ彼らの能力を(できれば戦闘開始すぐに)把握したかったのだが、ことごとくスキャンが失敗し続けたのである。
まあ大体戦闘序盤から全容が分かるなんてことはそうないので、終盤になればあるいはと思っていたが、ここまで分からないとなるとトライシ自身に何かありそうな気がしてきた。
とはいえ。
「このトライシって男もそこまで強いわけじゃない筈だよ。戦い方から推察もつくし……」
奏空が(スキャンのいらない範囲で)把握したトライシの戦闘スタイルは、タイマン封殺型である。
自己防御を上げに上げて、麻痺系BSによって相手の動きを止めていくというものだ。
その間部下に倒させるのが常套手段のようで、ゴンゾウを仕留める時の手段もまさにそれであった。
「けど弱点は見破った! 防御型の弱点、それはすなわち……防御ターンの隙だ!」
びしりと指を突きつける奏空。
トライシは歯を食いしばって後じさりした。
「超防御からの封殺は所見殺しだ。けど一度見破ればはがせる。体術や術式を封じれば防御が弱まるし、防御技の使用ターンの間だけは防御がかからない」
土行の防御術式はいくつかあるが、このスタイルである以上種類は限られる。その効果ターン数を思いだし、カウントしていけば、隙となるターンを導き出せるのだ。
「それが今なんだろう、トライシ!」
奏空が電流を生み出し、トライシめがけて解き放った。
瞬間的に合わせていく翔とたまき。
「これでもくらえ、『雷⿓の舞』!」
「……『⿓槍円舞』!」
雷の龍と土の龍が合わさり、鋼の龍となってトライシへと食らいつく。
「畳みかけますよ――良い⼦に⽢い焼き菓⼦を、悪い⼦には⽯炭を、イオ・ブルチャーレ!」
魔方陣を多重起動したラーラがここぞとばかりに大量の炎弾を乱射。
吹き飛ばされたトライシへと浴びせていく。
「ニンジャみせてくれたお礼だよ! せーのっ!」
パワーアシスト抜きでの豪快なゴルフスイングを叩き込むプリンス。
大きく空に舞い上がったトライシは、しかし土壇場で力を振り絞った。
「な、なめるでないわ! トライシニンジャクランの術を見せてやる!」
途端、トライシの全身が鋼鉄化。
サイバネティクス忍者装束をも打ち破るプリンスたちの打撃力をもはねのける、文字通り鋼の肉体へとチェンジした。
「で、あれば――」
シャーロットは、落ちてくるトライシを曇り無い瞳で見上げた。
息をするように力をたくわえ。
息を吐くように生命を捨てた。
そして、一瞬のうちに剣を走らせ、トライシの鋼の肉体に大きなヒビを入れた。
「今更おせーんだ、そんな技!」
遥もまた、トライシの腹に拳をめり込ませ、強引にぶち抜いていく。
「ぐ、ぐおお……!?」
最後に、プリンスが腹に穴の空いたトライシの胸に自らのスマイルプレートを刻み込んだ。
「やあ、余の国の通貨になっちゃいなよ!」
フルスイング。
ビルの壁をぶち破り、転がるトライシ。
常人なら死んでいる場面だが、しかし……。
「ぎぎ、ぎぎぎ……おのれファイヴクラン、トライシニンジャクラン最強とうたわれたこのワシを倒すとは。次はないぞ! 覚えておれ!」
むくりと起き上がり、自らの肉体損傷を修復。そして驚くべき速度でその場から撤退していった。
●獣の一党
「拙者は『獣の一党』に属する忍者、ハストリ ゴンゾウ」
「俺は工藤奏空。なあ君やっぱり俺とキャラ被ってるよね?」
「先程も聞いたが、どこが類似しているのかまるでわからない」
「いや、ほら……えっと……どこだろ?」
奏空にパスされて、遥がこちらを二度見した。
「どこってほら……えっと……なんだ?」
言われてみるとどこがどう似てるのかよくわかんなかった。どこも似ていないとすら言える。
「ま、とにかく。俺たちはファイヴ! あんたを助けに来たんだ。いきなり信用してもらうのは難しいけど……」
「否」
ゴンゾウは首を横に振った。
「忍者の義は命より重きもの。命を救って貰ったこの恩義、信頼に余りある」
「……いまなんていったの?」
お茶すすっていたプリンスが紡へ振り向いた。
「仲良くなれるんだって」
「ふーん」
同じくお茶すすっていた紡に(かなりやっつけな)翻訳をされたが、プリンスはそれだけで終わった。
こういうときにがっつかないのがプリンスである。
「どうやら、明るい少年たちのおかげで信頼はつなげたようですね」
シャーロットはシャーロットで独自の解釈で現状を理解しているようだ。
でもって、翔は。
「なあ、もしかしてカクセイジャーと知り合いだったりない?」
「何者だ? 隠れ忍者?」
「ごめんわすれて」
今回なんでこっち方向にいっちゃったんだろう、と自分でも省みるところのある翔であった。
「それより、マキモノってなんなんだ? ニンジャって他にも沢山いるのか?」
「ふむう……」
核心を突いた質問に唸るゴンゾウ。
このことには興味があったようで、たまきやラーラもちょこっと身を乗り出していた。
「拙者以外の忍者については、義によって教えられぬ。世の闇を担う者も、秘密を守ろうとする者も多いのだ。しかしマキモノについては教えよう」
ゴンゾウが印を結ぶと、空中に半透明なマキモノが現われた。
「我ら『獣の一党』は十二あるマキモノをそれぞれの氏族(クラン)で管理していた。世に出れば人々を恐怖に陥れ、混乱と狂気によって支配してしまう力をもっているマキモノだ。ゆえに世に出さず、永遠に隠し続けることとしていた。しかし一党を仕切っていた父の死後、党首の座を巡る争いが起き、自然とマキモノを最も多く所有したものが党首となるというルールが暗黙のうちにできあがった。だが……」
「一つのところに集まれば、悪用する人がきっと出る」
誰かの呟きに、ゴンゾウはこくりと頷いた。
「だったら、残りのマキモノとその所有者を守ればいいってことだよな! 協力するよ、ゴンゾウ!」
握手を求めて出した奏空の手を、ゴンゾウは強く握った。
「かたじけない」
こうして、『獣の一党』と『十二のマキモノ』をめぐる影なる戦いに、ファイヴという戦士たちの名が刻まれることとなる。
しかしてその運命やいかに。
赤き忍者ハストリ ゴンゾウ。
彼の背に迫る無数の手裏剣。空を裂き凶悪にぎらつくメタルの刃。
やがてゴンゾウのサイバネティクス忍者装束を貫くかというその刹那――。
「ちょっとまった!」
ゴンゾウと手裏剣の間に突き刺さる剣。
剣が纏った雷がはじけ、さらには天空から下りた龍のごとき雷が合わさり手裏剣の軌道を反らしていく。
さらには手下の忍者たちの足下に硬化した護符が突き刺さり、反射的に飛び退かせる。
最後に拳と膝で着地した少年が蹴りと手刀で手裏剣をたたき落とし、次々と少年少女がビルの谷目へと飛び降りてきた。
「ムム、何奴――ッ!」
般若能面のごとき面頬の奥で、黒忍者トライシが目を光らせた。
明滅するネオンの光。
夜闇に紛れ、ともしびの光が彼らの背を照らした。
「人の世を守る信念を、力でねじ曲げるその蛮行。月が許してもファイヴが許さないよ!」
振り返り、素顔を晒す『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)。
「奏でる空に舞う灰色の脳細胞! ファイヴアッシュ!」
同じく振り返る『白の勇気』成瀬 翔(CL2000063)。
「天翔る赤き流星、ファイヴレッド!」
更に振り返る『雷切』鹿ノ島・遥(CL2000227)。
「鍛えた鉄拳、理不尽穿つ! レイクサンダー、ファイブホワイトッ!」
更に更に振り返る、賀茂 たまき(CL2000994)。
「皆さんへ希望を繋ぐ薄紅の環、ファイブピンクです!」
彼らを照らしていたともしびをちらちら調整しつつ、こちら(?)を二度見する『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)。
「あっ、お金がなくてもオダイジン! 大臣じゃなくて王子だけど、ファイブゴールド!」
締まらない様子に、額に手を当ててため息をつく『導きの鳥』麻弓 紡(CL2000623)。
「絆を紡ぐ光の糸、ファイヴイエロー……みたいな?」
独特なポーズで暫く固まっていた彼らを。
ゴンゾウと。
トライシと。
あと部下の忍者たちは暫くじーっと見つめ。
「……それは、やる必要があったのか?」
と呟いた。
急に顔を劇画調にして遠くを見る翔。
こんかいは とくさつようそ なかったな
――翔、心の俳句
あとからおずおずと出てきた『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)が困り顔をしていた。
「あの、私はどうしましょうか。互換的にはアッシュもいいんですが、奏空さんがとってしまいましたし、シルバーとか……いえ、できれば炎に関係した色とかありますでしょうか?」
「ごめんラーラさん、今回やらなくてよかった。俺が悪かった」
手を合わせて頭を下げる翔である。
その時!
音もなく闇夜にあらわれ、『美獣を狩る者』シャーロット・クィン・ブラッドバーン(CL2001590)が剣をするりと抜いた。
白い鳥の羽が幻覚のようにひらひらと舞い、瞑目していたシャーロットがうっすらと瞳をひらく。
「Expectation is the root of all heartache」
しゃん、と鈴が鳴るかのような凜とした鋭さで、シャーロットは剣を突きつけた。
「Be blue……I\'m F.i.V.E. blue」
「カッコよくキメてくれたのにごめんなさいシャーロットさんほっとまじで! 今回特撮要素全然なかったほんとまじ!」
「いや、忍者モノって特撮のハシリじゃなかったか?」
「大丈夫だよギリギリあってるギリギリ!」
「元気出してください、ぎりぎり大丈夫だそうですから。ね」
「ぎりぎり……」
なんだか既に和やかな空気になりつつあるファイヴの八人だが。
しかし。
「ゴンゾウだったな。困ってるみたいだから、手を貸すぜ!」
「なぜ拙者の名を」
「こまけーことはいいじゃんか。屈服だの支配だの、そーゆー言葉を使う奴の好きにはさせないぜ!」
翔と遥がそれぞれバシッと拳を構えた。
「うわっ、ほんとにニンジャだ。オメイシいいですか? ワタクシコーユーモノデ……べっぷ!?」
プリンスが自分の顔がプリントされたテレホンカードを取り出したところで、紡が横から小麦粉弾を発射した。
わたわたした様子で顔を拭いてあげるたまき。
「ええと、大勢でひとりを追いかけ回すなんて趣味が悪いですよ」
言うべきことは言っとこうという様子でラーラがトライシたちへと向き直る。
一方。マイペースなのかメンタルが無敵なのか、登場のテンションをそのまま維持して剣を構えていたシャーロットがトライシに狙いを定めた。
「どうあれ、忍者の方々と競える機会、興味深く思います」
「というわけだ! 俺たちファイヴは赤忍者のゴンゾウに加勢する! あときみ俺とキャラ被ってるよね!」
「言っている意味が分からない」
ゴンゾウは小さく首を振った。そして。
「加勢の意志、今は信じるしかない。ゆえに、信じるぞ!」
「信じてくれ!」
奏空は刀を逆手に握って引き抜き、トライシたちへと構えた。
「応えてみせる!」
●闇なる戦い
奏空は刀を逆手持ちしたままもう片方の手で印を結んだ。
「天衣無縫!」
奏空の呼び出したエネルギーがたまきやゴンゾウたちへと被さり、まるで神仏が宿ったかのように身体を軽くした。
「俺が皆をサポートする。まずは周りの忍者たちを倒すんだ!」
「ゴンゾウさんと奏空さんは、私がお守りします!」
さっとゴンゾウの近くに陣取ったたまきは、蛇腹状の御朱印帳を結界のように展開してゴンゾウに力の膜を張った。返す刀ならぬ返す護符で自らの力を引き上げる膜を張る。
「私が傷つくのは構いませんが、皆さんを傷付けることは許しません!」
御朱印帳を今度は鞭のように放ち、エネルギーの波を起こして忍者たちへ浴びせかける。
「いや、たまきちゃんは俺が傷付けさせない!」
と言って、忍者たちに斬りかかる奏空。
「奏空のやつ、ここぞとばかりにイチャイチャしてるぜ……」
「あいぼー、ボクちょっと寂しい……」
と言って、和やかなテンションを混ぜにいく翔と紡。
片手間ってわけじゃあないが、くるっと振り返ってゴンゾウに戦巫女之祝詞をかけてやった。
「回復はいるかな?」
「不要だ。かたじけない」
ピッと片手で祈るジェスチャーをするゴンゾウ。
仕草の自然さと堅さから彼が厳格な環境で育ってきたことを示していた。
「とにかく、後ろは任せて」
「じゃあ俺はちょい前へ出とくか!」
翔はタブレットPCに指で雷の文字を描くと、投射した立体陰陽陣から雷の龍を生み出した。
龍が忍者たちへ襲いかかる中で、ラーラもまた魔方陣を展開。
「お手伝いします」
一つの魔方陣が無数の小さな魔方陣を生み、陣から炎でできた猫を生み出していく。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を・・……イオ・ブルチャーレ!」
雷の龍と炎の猫。
不可思議な術式を相手に、しかし忍者たちも負けていなかった。
ビルの壁をジグザグに跳ねながら手裏剣や忍者刀をぶつけて防御していく。
それでも防ぎきれなかった者たちが直撃をうけ、積まれたビールケースや明滅するネオンサインへと突っ込んでいく。
「では、センエツながらワタシも」
シャーロットは剣を右へ左へ振り、指揮棒のように風を切ってから忍者たちへと襲いかかった。
地面はまるで濡れていないのに、まるで水たまりを走ったように水滴がはねていく。
そのたびに彼女の速度が冴え、剣の軌道が鋭くなった。
「その程度の剣術で我らにかなうわけが――」
忍者刀で刀をたたき落とそうとした忍者。
しかし、シャーロットはまるでかすみように実態をブレさせ、気づいたときにはあたり一帯の忍者たちの胸に十字架のごとき傷を刻み込んでいた。
「ば、ばかな……!」
息絶える寸前、心臓部に埋め込んだ特殊センサー式小型爆弾が爆発。忍者が爆発四散した。死体から証拠を残さぬための徹底した処理方法なのだ。
「やるなあ。武術ってか、おとぎ話の技みてーだ」
鼻頭を親指でぬぐい、ニッと笑う遥。
彼は残る忍者へと飛びかかった。
「次はオレだ! 特技は空手! おねがいします!」
「何が空手だ。忍者格闘術の前にはあらゆる武術が――」
遥の蹴りを一度手刀で払う忍者。しかし遥の跳び蹴りはまるで空中に制止したかのように続き、二発三発と連続で忍者に叩き込まれた。
「嘘だ! こいつも忍者格闘術を……!?」
「知らねぇな。めっちゃ練習しただけだ!」
忍者の首を蹴りつけ、くるくると回転してから着地する遥。
爆発四散する忍者を背に、深呼吸と共に構え直した。
一方。
「ヌハハハハ! ぬるいぬるい!」
プリンスによる猛攻を受けても尚、トライシは小揺るぎもしなかった。
仁王立ち(この場合弁慶立ちが近い)のまま、プリンスのハンマーアタックを顔や腹に食らっている。
「もっと打ってくるがいい。そして己の無力さを知るのだ!」
「ニンジュツだー! ベンケーだー!」
プリンスはプリンスで劣勢っぽい筈なのにちょっと楽しそうだった。
「フン、調子の狂う奴め。ならばよい! 苦悶の顔を見せるのだ!」
トライシは防御一辺倒だった構えを解き、鎖鎌を放った。
プリンスの腕や首に巻き付く鎖鎌。
「所詮貴様も忍者を小馬鹿にしているのだろう。恐怖と共に心底に刻むがいい!」
「余、忍者ばかにしてないよ!? なるとすきだよ!?」
「ええいもう黙れぃ!」
ぎちぎちと締めにかかるトライシ。
プリンスの身体を補強していた装甲やパワーアシストがべきべきと音を立てて破壊されていく。
やがてプリンスの肉体をもへし折ろうとした、その時……!
上空から飛来したエネルギーボールが、プリンスを締め付けていた鎖を破壊した。
解き放たれたプリンスは喉をおさえてけほけほとやったが、すぐそばに下りてきた紡にステッキの端でぺちんとやられた。
「殿、遊びすぎ」
「ごめんなさい」
「あっちは片付いたから、反撃しちゃいなさい」
紡の言葉にハッとした様子で、トライシは周囲を見回した。
はじめは一対多で数の優位をとっていた忍者たちが次々と葬られ、今は自分だけとなっていたのだ。
「ぐぬぅ……敵の力を侮ったか」
「敵の力、ね」
紡は奏空にアイコンタクトを送ったが、奏空は小さく首を振った。
密かにエネミースキャンを走らせ彼らの能力を(できれば戦闘開始すぐに)把握したかったのだが、ことごとくスキャンが失敗し続けたのである。
まあ大体戦闘序盤から全容が分かるなんてことはそうないので、終盤になればあるいはと思っていたが、ここまで分からないとなるとトライシ自身に何かありそうな気がしてきた。
とはいえ。
「このトライシって男もそこまで強いわけじゃない筈だよ。戦い方から推察もつくし……」
奏空が(スキャンのいらない範囲で)把握したトライシの戦闘スタイルは、タイマン封殺型である。
自己防御を上げに上げて、麻痺系BSによって相手の動きを止めていくというものだ。
その間部下に倒させるのが常套手段のようで、ゴンゾウを仕留める時の手段もまさにそれであった。
「けど弱点は見破った! 防御型の弱点、それはすなわち……防御ターンの隙だ!」
びしりと指を突きつける奏空。
トライシは歯を食いしばって後じさりした。
「超防御からの封殺は所見殺しだ。けど一度見破ればはがせる。体術や術式を封じれば防御が弱まるし、防御技の使用ターンの間だけは防御がかからない」
土行の防御術式はいくつかあるが、このスタイルである以上種類は限られる。その効果ターン数を思いだし、カウントしていけば、隙となるターンを導き出せるのだ。
「それが今なんだろう、トライシ!」
奏空が電流を生み出し、トライシめがけて解き放った。
瞬間的に合わせていく翔とたまき。
「これでもくらえ、『雷⿓の舞』!」
「……『⿓槍円舞』!」
雷の龍と土の龍が合わさり、鋼の龍となってトライシへと食らいつく。
「畳みかけますよ――良い⼦に⽢い焼き菓⼦を、悪い⼦には⽯炭を、イオ・ブルチャーレ!」
魔方陣を多重起動したラーラがここぞとばかりに大量の炎弾を乱射。
吹き飛ばされたトライシへと浴びせていく。
「ニンジャみせてくれたお礼だよ! せーのっ!」
パワーアシスト抜きでの豪快なゴルフスイングを叩き込むプリンス。
大きく空に舞い上がったトライシは、しかし土壇場で力を振り絞った。
「な、なめるでないわ! トライシニンジャクランの術を見せてやる!」
途端、トライシの全身が鋼鉄化。
サイバネティクス忍者装束をも打ち破るプリンスたちの打撃力をもはねのける、文字通り鋼の肉体へとチェンジした。
「で、あれば――」
シャーロットは、落ちてくるトライシを曇り無い瞳で見上げた。
息をするように力をたくわえ。
息を吐くように生命を捨てた。
そして、一瞬のうちに剣を走らせ、トライシの鋼の肉体に大きなヒビを入れた。
「今更おせーんだ、そんな技!」
遥もまた、トライシの腹に拳をめり込ませ、強引にぶち抜いていく。
「ぐ、ぐおお……!?」
最後に、プリンスが腹に穴の空いたトライシの胸に自らのスマイルプレートを刻み込んだ。
「やあ、余の国の通貨になっちゃいなよ!」
フルスイング。
ビルの壁をぶち破り、転がるトライシ。
常人なら死んでいる場面だが、しかし……。
「ぎぎ、ぎぎぎ……おのれファイヴクラン、トライシニンジャクラン最強とうたわれたこのワシを倒すとは。次はないぞ! 覚えておれ!」
むくりと起き上がり、自らの肉体損傷を修復。そして驚くべき速度でその場から撤退していった。
●獣の一党
「拙者は『獣の一党』に属する忍者、ハストリ ゴンゾウ」
「俺は工藤奏空。なあ君やっぱり俺とキャラ被ってるよね?」
「先程も聞いたが、どこが類似しているのかまるでわからない」
「いや、ほら……えっと……どこだろ?」
奏空にパスされて、遥がこちらを二度見した。
「どこってほら……えっと……なんだ?」
言われてみるとどこがどう似てるのかよくわかんなかった。どこも似ていないとすら言える。
「ま、とにかく。俺たちはファイヴ! あんたを助けに来たんだ。いきなり信用してもらうのは難しいけど……」
「否」
ゴンゾウは首を横に振った。
「忍者の義は命より重きもの。命を救って貰ったこの恩義、信頼に余りある」
「……いまなんていったの?」
お茶すすっていたプリンスが紡へ振り向いた。
「仲良くなれるんだって」
「ふーん」
同じくお茶すすっていた紡に(かなりやっつけな)翻訳をされたが、プリンスはそれだけで終わった。
こういうときにがっつかないのがプリンスである。
「どうやら、明るい少年たちのおかげで信頼はつなげたようですね」
シャーロットはシャーロットで独自の解釈で現状を理解しているようだ。
でもって、翔は。
「なあ、もしかしてカクセイジャーと知り合いだったりない?」
「何者だ? 隠れ忍者?」
「ごめんわすれて」
今回なんでこっち方向にいっちゃったんだろう、と自分でも省みるところのある翔であった。
「それより、マキモノってなんなんだ? ニンジャって他にも沢山いるのか?」
「ふむう……」
核心を突いた質問に唸るゴンゾウ。
このことには興味があったようで、たまきやラーラもちょこっと身を乗り出していた。
「拙者以外の忍者については、義によって教えられぬ。世の闇を担う者も、秘密を守ろうとする者も多いのだ。しかしマキモノについては教えよう」
ゴンゾウが印を結ぶと、空中に半透明なマキモノが現われた。
「我ら『獣の一党』は十二あるマキモノをそれぞれの氏族(クラン)で管理していた。世に出れば人々を恐怖に陥れ、混乱と狂気によって支配してしまう力をもっているマキモノだ。ゆえに世に出さず、永遠に隠し続けることとしていた。しかし一党を仕切っていた父の死後、党首の座を巡る争いが起き、自然とマキモノを最も多く所有したものが党首となるというルールが暗黙のうちにできあがった。だが……」
「一つのところに集まれば、悪用する人がきっと出る」
誰かの呟きに、ゴンゾウはこくりと頷いた。
「だったら、残りのマキモノとその所有者を守ればいいってことだよな! 協力するよ、ゴンゾウ!」
握手を求めて出した奏空の手を、ゴンゾウは強く握った。
「かたじけない」
こうして、『獣の一党』と『十二のマキモノ』をめぐる影なる戦いに、ファイヴという戦士たちの名が刻まれることとなる。
しかしてその運命やいかに。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『機密文書A』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:賀茂 たまき(CL2000994)
『機密文書B』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
『機密文書C』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:成瀬 翔(CL2000063)
『機密文書D』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『機密文書E』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:シャーロット・クィン・ブラッドバーン(CL2001590)
『機密文書F』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鹿ノ島・遥(CL2000227)
『機密文書G』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)
『機密文書H』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:麻弓 紡(CL2000623)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:賀茂 たまき(CL2000994)
『機密文書B』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
『機密文書C』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:成瀬 翔(CL2000063)
『機密文書D』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『機密文書E』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:シャーロット・クィン・ブラッドバーン(CL2001590)
『機密文書F』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鹿ノ島・遥(CL2000227)
『機密文書G』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)
『機密文書H』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:麻弓 紡(CL2000623)

■あとがき■
おつかれさまでした。
お楽しみ要素のひとつとして、参加者の皆様のうち誰かにある秘密が付与されています。
そのことを公開してもいいですし、しなくても構いません。
自由に選択し、お楽しみください。
お楽しみ要素のひとつとして、参加者の皆様のうち誰かにある秘密が付与されています。
そのことを公開してもいいですし、しなくても構いません。
自由に選択し、お楽しみください。
