「水分を取りましょうね」
「水分を取りましょうね」



 外気温はもとより室内気温も上がる季節。
 満員電車から吐き出されて、駅から出ればまた灼熱地獄だ。
「水を飲んでくださいね!
 駅前で満面の笑みを振りまくボランティアグループは善意であふれている。
「ジュースやコーヒーじゃなく、水をとってくださいね! あなた、すっごく顔色悪いもの。特別なの上げますからね!」
 そのおばちゃんは、笑顔でペットボトルを握らせてきた。
 口元にある大きなほくろが印象に残る。
「あなただけ。特別、よ。『これはとてもおいしい水なの。これを飲んだら、後はたくさんたくさん飲みたいだけお水を飲んでね。水分補給さえしてれば絶対大丈夫なんだから』」

  その水は大層甘くてうまかった。自分が喉を鳴らして呑み込んでいる自覚がある。
 すれ違ったOLがいぶかしげにこちらを見た。
 水を飲んで何が悪い。視線が不快だったので路地裏に入った。ここならあんな目を向けられなくて済む。
 会社に遅刻の時間だが、そんなことはどうでもいい。水を飲まなくてはならない。
 コンビニに寄れたのはいいことだった。持てるだけの水を買った。俺はするべきことをしているのだという達成感と高揚感がある。
 胃袋が急速に膨らみ、足元に転がるペットボトルの数が増えていく。
 食道から喉、口腔なでいっぱいに水がいきわたり、水に苦くてすっぱい胃液が混ざり、むくんでがんがんと痛む脳味噌がのどを動かすことを指令し続ける。
 鼻から噴き出す水。喉の奥がゲゴリと嫌な音がして、入ってはいけないところに水が流れ込んでいく感触がした。
 体中の穴から水を逆流させながら、筋肉が動きを止めるまで男はのどを動かし続けた。
 水をくれたおばちゃんが、空のペットボトルを拾っている。
 笑うと、口元にある大きなほくろも一緒に動いた。
「ごみを散らかしちゃあだめよおおお!」
 それが、男が耳にした最後の言葉になった。

 カエルのように腹を膨らませた男が倒れている。と匿名の通報があり、男は心肺停止の状態で発見された。
 走り去る救急車に、野次馬に紛れた女子高生は呟いた。
「よかれと思って言ってあげたのにぃ」
 その口元には、大きなほくろがあった。


「常識から行くと、溺れた人が路上に遺棄された。と解釈されるでしょう」
 夢見・久方 真由美(nCL2000003)は、覚者達を見回した。
「溺れて水を大量に飲み込んだのではなく、呼吸ができなくなっているのをものともせず水を大量に飲んだから溺れたのです。隔者です」
 真由美の語尾も下がり気味だ。
「識別名『コンタミおばさん』。健康食品を配り歩く。アレルギー患者に「好き嫌いはよくない」とアレルゲンをこっそり食わせたり、下戸のグラスに「お酒の席で飲まないなんて仲間外れになる」などと酒を入れたりする。健康被害や死亡事故が起こるとこう鳴きます。『ワタシハヨカレトオモッテ!』」
 真由美が真似すると、語尾の気が抜ける。
 「今回は『暑くなったらたくさん水を飲まなくちゃ!』です~。それを対象者に強制する技能があります。覚者への影響はありませんが、普通の方はひとたまりもないでしょう」
 同情する余地はないですよ? と、真由美は言った。
「未必の故意です。『ソウナルノヲミテミタイ』――好奇心の最悪な形での具現の一つです。コンタミおばさんの捕縛して下さい。ボランティアグループに紛れ込んでいます。外見は50代の小太りの女性です~。現の因子の覚醒字の姿は『自身が能力を一番発揮できる年齢』です。実際、まだ、十代のはずなんですけどね?」
 真由美は、目を細めた。
「提案なんですが、そのお水、どうにかしてもらっちゃって下さい。それで『コンタミおばさん』をおびき寄せてほしいんです」
 真由美は、やけに自信ありげだ。
「問題ありません。彼女は、具合悪くなるのは誰でもいいんです」
 具合が悪くなるのは誰であっても構わない。なんだったら死んでくれてもいいし、一命をとりとめてもそれはそれで構わない。
「『特別な水』 を飲んだ者が少なくとも具合悪くなって昏倒するのを見るまでは離れません。犠牲者が苦しむのを自分の目で見たいのです。だから、絶対近くにいます。見逃さないで下さいね。彼女は隠れることにも長けています。おびき寄せるのはここなどどうかと。おばさんには追っかけがいて駆けつけてきます」
 閉鎖された屋内駐車場。邪魔は入りそうになかった。
「捕縛が望ましいですが、できない事情が生じた場合は――よろしくお願いします。放置すると、一般人が死ぬか死ぬ目に遭い続けます」
 あ、それと。と、真由美は大したことではないのですが。と付け加えた。
「『特別な水』、ほんっとうにすっごく体にいいかもしれないと思えるほど強烈な味がします。演技力がない方が飲む場合は頑張って飲み込んでください。吹いちゃだめですよ。一般人は芳香に誘われて飲んじゃうんです。覚者に効かないのが皮肉ですね」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:田奈アガサ
■成功条件
1.隔者「コンタミおばさん」紺野多美亜の捕縛(生死問わず)
2.なし
3.なし
 田奈です。
 道を踏み外した隔者にゴールを。

隔者「コンタミおばさん」紺野多美亜
*木の変化。十代。普通の女子高生の格好をしています。覚醒時は五十代の姿に変化します。体形は、体重も年と同じだけ増加した塩梅で変化しています。同一人物の面影は口元のほくろしかありません。
*ワーズ・ワースを駆使して健康不安を煽り、一般人を楽しみのためにもてあそぶのが主目的ですが、戦闘に関しても油断は禁物です。戦闘になると毒を多用します。

隔者「おばさんのシンパ」×4
*「コンタミおばさん」の信奉者。「おばさん」の追っかけをしています。彼ら同士は連携していません。
*おばさんの盾になる者、「おばさん」を連れて逃げることを最優先にする者。おばさんを攻撃するものからロックオンして攻撃する者。「おばさん」のために覚者を足止めする者。行動指針はバラバラです。
*おばさんは彼らの「親切」に感謝し、利用する気満々です。

*「特別な水」
 大量の砂糖と壮絶な塩と突き抜ける清涼感とハードコアに交感神経を刺激するハーブを混入してある「ただの水」です。
 飲むと猛烈に動悸が早くなり、急激にのどが渇き、著しく判断能力が低下します。
 覚者にはただの強烈な味をした水ですが、すごく水を飲みたくなること請け合いです。
 覚者は判断力が落ちることはありません。解毒などして余りケロッとしているとさすがの「コンタミおばさん」も不審がる可能性があります。その場合は若干の演技力が必要です。

 保護対象:一般人「男」
*駅最寄りの企業に勤めるサラリーマンです。
 全く印象に残らない容姿です。
*放置すると、路上で水を飲んだ後コンビニ経由で路地裏で溺死することになります。 

*炎天下です。駅や路上は、朝で人通りが激しいです。
 屋内駐車場は、閑散として人目はありません。駅から300メートルほど離れています。
 中は20m×20メートル。材質はコンクリートです。
 柱が数本ありますが、遮蔽物としては不完全です。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
5/6
公開日
2017年07月16日

■メイン参加者 5人■

『獅子心王女<ライオンハート>』
獅子神・伊織(CL2001603)
『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『残念な男』
片桐・戒都(CL2001498)


 日本の夏は湿度がつらい。
 べっとりと背中に張り付く布の不快感。
 吹き抜ける風は熱風だ。
 カサカサ乾燥させられた皮膚を紫外線が焼き、湿った背中に塩が吹いて弱った皮膚にとどめを刺す。
 吸血鬼でなくとも死んでしまいそうな夏の朝。
「お水飲んでくださいねー」
 砂漠で配られる水を受け取るのをどうしてとがめられるだろう。
 口元にほくろのあるおばちゃんに差し出された水を受け取ろうとしたサラリーマンの掌の上に、スラリとした白い手が重ねられるように置かれ、ペットボトルをもぎ取った。
「この炎天下の暑さで今猛烈に水が欲しいのですの…その水、譲って下さらない? おじさま」 
『獅子心王女<ライオンハート>』獅子神・伊織(CL2001603)は、譲らないという話を聞く耳は持ち合わせていない。
 あなたのためなら行列に並び、サイリウム振り回します。と言わせる気迫と声の調子にサラリーマンは「どうぞどうぞ」とほほ笑みを浮かべて去った。見るものが見たら、彼の死亡フラグは折れたことを確認できただろう。
 食リポも仕事のアイドルたるもの、バラ色の唇に一度含んだものを口から出すなどあってはならない。
 一気に飲んでいくその様子を見ているのは、目の奥にドキドキを隠したおばさんだけではない。
 遠くから鷹の目で様子を見ている南条 棄々(CL2000459)もだ。
 うっすらと伊織の瞳に浮かんでいる涙の膜に、伊織の健闘がうかがえる。
(うわ、あんなの飲ませられたら確かにまともな水がほしくなるでしょうね。こっちも喉が渇きそうよ……)
 伊織の手が小刻みに震えている。生物として水がほしいのだろう。
 『恋結びの少女』白詰・小百合(CL2001552)も、別の位置から様子を見ている。
 小百合の位置から見えるのは、主に『コンタミおばさん』の顔だ。
 紅潮しているのは、上昇中の外気温のせいではない。
 伊織にこれから訪れる体調悪化を期待してのことなのだろうと見て取れた。
(好奇心で……人の苦しむ姿を見たがる……私には理解できない) 
 実際伊織の潤んだ目元を見れば、熱中症の初期段階に見えるだろう。
 獲物は引っかかった。
 水をあおりながら伊織が歩いていくのを、ごみ袋を持った『コンタミおばさん』が追っていく。もちろんゴミ拾いは忘れない。『コンタミおばさん』はヨカレトオモッテの人なのだ。
 駐車場では『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)が、息をひそめて駐車場で『コンタミおばさん』を待ち構えている。
 

 伊織は、駐車場横に置いてある自動販売機で大量の水を手に入れた。
 覚者は事前に打ち合わせしていたが、『コンタミおばさん』には通りすがりに買ったように見えただろう。駅前からここまでコンビニも自販機もないルートをわざと通ったのだ。
 人目を避け、日陰を求めるように伊織が駐車場に入っていくのを確認した『コンタミおばさん』の口元がつりあがり、大きなほくろの形がゆがむのを『残念な男』片桐・戒都(CL2001498)が、駐車場の非常階段の陰から見ていた。
(良かれと思って……ねぇ。本当にそう思っててやってても問題あるけれど、どうなるかわかっていて不安煽って見せかけの親切押し売りとか……)
 喜色満面の『コンタミおばさん』が建物の中に足を踏み入れたのを確認して、戒都も移動を開始する。
(それにしても、倒れる様まで見て楽しむだなんて、信じられないんだけど…? 悪趣味すぎる)
 あの隔者は、伊織が昏倒するまで観察をやめないだろうと、戒都の勘がささやく。
(医療従事者見習いとしては、こういうのは絶対に見逃せないし許せないよね)
 
 伊織が口に水を運んだのは口直しのためだ。
 一口、二口ほど飲んで、すぐやめ、駐車場の中――ラーラがいる方まで――歩く。
 少しよろめいて見せるたびに『コンタミおばさん』から声にならない喜びがあふれる。一般人でも、すごく嬉しそうなのがわかるだろう。
「よかれと思って? わざとでしょ、胸糞悪い奴ね! こんなことして楽しむ神経がわからないわ」
 棄々の体に嫌悪感でできた岩の鎧が出現する。
 ゴクリ。と水を飲みほした伊織が踵を返した。
 体中の隅々までしみ撮るようないい香りが体を包んでくれた。
 すぐ近くに補助してくれる仲間がいることを感じられる。
「私、こういう人達は心底軽蔑致しますわ……どうしてその好奇心をもっと違う方向性で発揮しないのか……不思議でなりませんわ!」
 今まで溜めに溜めていた色々を気弾に込めて掃射する。
「夏の暑い日は水分よ。糖分も塩分も必要で、ハーブも体にいいのよ! 特別なのよ。あなたにだけよ! 私はね、ヨカレトオモッテやっているの。あなたのためにしてあげたんだからあなたは私に感謝しなくちゃだめじゃないの。それが人の道ってもんでしょ」
 論理が破たんしている。
「感謝しなさい感謝しなさいこの人たちみたいに!」 
『コンタミおばさん』の前に、通りすがりの主婦のような恰好をした女がいる。おばさんのシンパだ。
 顔色が悪い。おばさんの分も気弾を食らったのだ。
「この人は大事なヒトだから。いつもみんなのことを考えてる人だから守らなきゃ――」
「そうそう、怪我は治してあげるからねー。大丈夫よぉ。だから私をかばってねぇ」
『コンタミおばさん』は、甘ったるい声でそう言った。主婦はうっとりした顔をしている。
「はいいいいいい」
「助けに来ましたよ、おばさん。こっちです!」
 おばさんの手に手を突き出しながら駆け込んでくる学生風の男。
「お前たちにおばさんを傷つけさせたりはしない!」
 首にネッカチーフを巻いた男が、熱く叫ぶ。
「あんたね、おばさんを攻撃した奴! おばさんをだますなんて、大っ嫌い!」
 女子高生。
 おばさんに救われたと思っている隔者達だ。
「あ、やばい、逃げそうな予感?」
 戒都が警告する。
『コンタミおばさん』は、もんどりうつように逃亡を手助けする男の方に移動する。
 そうはさせじと、必殺の一撃を入れる前の活性化を行う伊織に女子高生が突っ込んでくる。
 耳の形が獣。獣憑だ。
 振るわれる拳が、伊織のみぞおちに入る。肝臓にずしんと来た。女子高生は怒りに震えている。
「先ほど申した通りです」
 駐車場に低く伊織の声が響く。
 確かに感じていたどす黒い好奇の視線。
「放置してたら一般人の被害が甚大ですし……私達がお灸をすえてあげます!」
 十分に気合を入れた拳をえぐるように女子高生にお見舞いした。
 女子高生は、その場に膝をついた。
「次はあんたよ! ずたずたのボロボロにしてやるわ!」
 棄々が行く手を遮る妨害者に迫る。
「彼女は、俺を助けてくれるんだ! チョットダケおせっかいで誤解を受けやすいだけなんだ! なんでみんなわからないんだ!」 
 熱く語る男の足元空岩の槍が隆起して、男の足元を瓦解させる。
「コンタミおばさんは絶対にここで止めるよ!」
 戒都指に誘われ、空気中のむせかえるような水分は玲瓏な氷柱に変化する。
 岩と氷。二本の柱を食らった熱い男の動きは止まった。
「あ、あの、治療――」
「あの子の犠牲を無駄にしちゃだめよ。あのくらいなら命に別状はないわ! 私は逃げなくちゃ。あの子のために!」
『コンタミおばさん』は逃げる。癒しの技は届いたはずなのに。
 逃走経路を示す男に愛想笑いを浮かべた顔の横を熱いものが通過した。髪のの焦げた臭いがする。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子に石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
 公現祭の魔女・ベファーナの加護を身にまとうラーラの放つ炎は焼き菓子の香りか石炭の臭いか。
 目の前で炎に包まれる男を蹴り飛ばす勢いで、『コンタミおばさん』は逃げを打つ。
「罪のない一般人を苦しめようだなんて……」
 魔導書のページを抑える手は怒りに震えている。
「私は少々怒っていますよ? 火傷もせずに済むとは思わないでくださいね」
 更なる詠唱に入る前に、ラーラは確認した。
「熱中症対策のお水は十分でしょうか」
 主婦をラーラの方につきとばし、自分だけ逃げようとする。
「あなたは、私の代わりにあの女の相手をするの! いいわね!」
「無理、もう無理です。痛い。痛いぃ」
「どいつもこいつも使えない。あんた達、みんなこけりゃいい!」
 駐車場のコンクリートの隙間から生えていた雑草が、覚者達の足に絡みつく。
「まったく、人が親切にしてやったのにこんな仕打ちをしてどういうことなんだろうねほんとに私はこんなに世界平和やみんなのためを思って――」
「言いたいことはそれだけ……ですか……」
 おばさんの顔が引きつった。
 進路をふさぐ小百合の手の中にあるのは、棘を産む種だ。
「私は……貴方と同じ……好奇心は強い方……だけど……貴方の好奇心の対象が……理解出来ない」
 小百合が打ち出した種がおばさんの肉を苗床にして棘をはやして内部から食い破る。
 おばさんは濁った悲鳴を上げた。
 その苦悶の表情に小百合は顔を曇らせた。
「……やっぱり……わからないです……こんな事に興味を持つなんて……」
(恋とか……もっと素晴らしいモノに好奇心を持たないと……)
 ぽそぽそと呟いた言葉はおばさんの苦鳴にかき消えた。
「貴方……つまらない……無価値な人なんですね」
 顔をあげた小百合の視線の先、チェーンソーを高らかに響かせた棄々と獅子の一撃を加えんとしている伊織をラーラの撃ちだした背後から迫る火弾が照らす。
「これで済むと思ってんじゃないよ、あんたらああああ!」
 ぎりぎりまで引き付けたおばさんの体から噴き出した毒は、戒都の呼ぶ清らかな水で瞬時に洗い清められた。
 おばさんの意識は、チェーンソーのきらめきと振り下ろされる拳と身を包む炎の赤で途切れた。


『コンタミおばさん』はもういなかった。
 そこにいるのは女子高生だ。死なない程度に治療はされた。
「それこそ千回振り出しても苦いからセンブリっていうらしいけど。本気で出がらしになるまで煮ておいたわよ」
 ちゃっぷんちゃっぷんと棄々が持参の水筒を振って見せた。
 死なないくらいに自制をもって、隔者を縛り上げた覚者達は意識を飛ばした『コンタミおばさん』の周囲に集った。
「とっても苦いけど体にいいそうよ胃腸を整えたり、アンチエイジングの効果もあるんですって」
 ふたを開けると、のけぞるしかないほどのにおいがする。濃縮の成果だろうか。棄々の台所の今後が心配だ。煮出した薬缶は再起不能かもしれない。
「『よかれと思って』プレゼントしてあげてるのよ?」
 どうしても、『コンタミおばさん』 を犠牲者と同じような目に合わせなければ気が済まなかった。
(ほんとは毒でいたぶってやりたかったけど、あたしは土行、そういうのが使えないのがくやしいわ)
 窒息しないよう配慮して、口の中に流し込んでやった。
 聞いた方の心が削れそうな悲鳴。
 詳しい経緯はともかく、棄々の留飲は下がった。

「せめてちょっとだけでも、マシになるといいんだけれど…」
 戒都は、やりすぎないように待機している伊織の手に小さな包みを乗せた。
 いちごあめ。
「獅子神さんには、大変な役目をお願いしちゃったし……口の中も大変なことになっていそうだしねー」
 良かったら。と、戒都は付け加えた。
 
 心を尽くすというのは、とても難しい。
 とても暑い夏の朝の話だ。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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