新生《アラタナル》! かびまりも
●かびまりも
「な、なんだありゃ!?」
ゴッツォサン・越後は、口にくわえたたばこをぽろっと落としながら、驚愕の声をあげた。
六月の雨上がりの路地を歩いていると、向こう側から――直径1mはあろうか――緑色の毛玉がダッシュしてきたのである。
ダッシュ、そう緑色の毛玉には、成人男性の如き『足』が生えている。
さらに驚異的なことに、なめらかで長いすね毛が存在し、雨上がりの生ぬるい風になびいているのだ。
「くっ!? 妖か!?」
ゴッツォサン・越後は、無精髭で垂れ目で髪はぼさぼさでトレンチコートという出で立ちであるが、料理人であり隔者なのだ。
銀一閃、刺身包丁! 斬撃を受けた毛玉は、縦に両断!
毛玉、そのうるおう脚をぴくぴくさせながら真っ二つになり、水たまりに中に突っ伏す。
「驚かせやがって、食えるのかこれ?」
おっさん、革靴のつま先で『妖』をつついてみる。
ここで変化が生ずる!
むく……。むく……。
銀一閃にて切断した断面がうごめく。
まるで水分を吸い取るかのように肥大化していく! いやさ再生している!
そして元の大きさになった緑の毛玉、不足していた成人男性のごとき片足がニョキっと生えて二足歩行を取りもどす。
一体が二体に増えたのだ!
「――!? この野郎っ! 俺を誰だと思っている!」
一閃、二閃、三、四、五! ……。
みじん切りに短冊切り、今度は生足も跳ね上げた。
ここまで細切れにすれば流石の『妖』も――
もこぉ……もこぉ……。
次の瞬間、ぽぽーんと大量に増えた。
その数、実に50!
路地はそこまで広くない。50匹の毛玉がオッスオッス! と押しくらまんじゅうしているのだ。
その皮膚感はしっとりと潤っているばかりか、もじゃ毛、剛毛、美脚、ガリ、網タイツ、いろいろな足がいっぱい。
「に、逃げ――うわおおおおおおお!?」
緑色の毛玉達は、横並びに整列す!
クラウチングスタートのポーズの如く片膝を地面に着ける。
刹那――!
短距離走者のごとく、やたら気合いの入った走りっぷりで、路地、疾走す!
●汚物、燻蒸消毒せしめるべし
「6月、よね」
樒・飴色(nCL2000110)は、電子たばこの水蒸気をたばこの煙のようにくゆらせながら、あさっての方向を向いていた。
「『妖』よ。ランク1。数は50。識別名は『かびまりも』とするわ。……辛いわね」
やけに落ち込んだ様子であるが、粋狂ナニガシと同じポジションにいることに、途方に暮れているだけである。
いやさ、知る人のみぞ知る小話だ。たいした話ではない。
「寸刻みにしても、空気中の湿度を吸収して、その刻まれた分だけ分裂して増殖再生を繰りかえす。――死なないわ」
今は6月、湿度は鬼のごとし。
ならばほぼ不死の存在! どうすればよいのか。
「焼く、物理で」
飴色は、つかつかとヒールを鳴らして部屋の隅へ。
布が被せられた何か。その布をはぎ取った。
「XI連中から押収した品よ。火行が使えれば必要ないのだけど、無い人も安心ね」
戦術手榴弾、火炎放射器、設置型の小型対空火炎放射器、やたら物騒なものばかりだ。
ふと見るとモヒカンのカツラ、やたらトケトゲしいタンクトップもある。これも押収品なのだろうか?
「それは趣味ね」
趣味っすか。飴色、モヒカンのカツラに向かう視線を察知す。
「『かびまりも』の群れから逃げている隔者も居るんだけど、一緒に焼いてもいいし、通過を待ってもいい。50匹まで増えたのは彼のせいらしいけど、まあ、まかせるわ」
飴色は、電子たばこは口に合わないと、鳩のマークがあるタバコの箱を出した。火はつけない。
「リアカーつきのバギーで良ければ、現場まで乗せていくわ。資材も持って行く。火行が無ければ、好きなのを選んで頂戴」
今回は飴色も同行するらしい。
「な、なんだありゃ!?」
ゴッツォサン・越後は、口にくわえたたばこをぽろっと落としながら、驚愕の声をあげた。
六月の雨上がりの路地を歩いていると、向こう側から――直径1mはあろうか――緑色の毛玉がダッシュしてきたのである。
ダッシュ、そう緑色の毛玉には、成人男性の如き『足』が生えている。
さらに驚異的なことに、なめらかで長いすね毛が存在し、雨上がりの生ぬるい風になびいているのだ。
「くっ!? 妖か!?」
ゴッツォサン・越後は、無精髭で垂れ目で髪はぼさぼさでトレンチコートという出で立ちであるが、料理人であり隔者なのだ。
銀一閃、刺身包丁! 斬撃を受けた毛玉は、縦に両断!
毛玉、そのうるおう脚をぴくぴくさせながら真っ二つになり、水たまりに中に突っ伏す。
「驚かせやがって、食えるのかこれ?」
おっさん、革靴のつま先で『妖』をつついてみる。
ここで変化が生ずる!
むく……。むく……。
銀一閃にて切断した断面がうごめく。
まるで水分を吸い取るかのように肥大化していく! いやさ再生している!
そして元の大きさになった緑の毛玉、不足していた成人男性のごとき片足がニョキっと生えて二足歩行を取りもどす。
一体が二体に増えたのだ!
「――!? この野郎っ! 俺を誰だと思っている!」
一閃、二閃、三、四、五! ……。
みじん切りに短冊切り、今度は生足も跳ね上げた。
ここまで細切れにすれば流石の『妖』も――
もこぉ……もこぉ……。
次の瞬間、ぽぽーんと大量に増えた。
その数、実に50!
路地はそこまで広くない。50匹の毛玉がオッスオッス! と押しくらまんじゅうしているのだ。
その皮膚感はしっとりと潤っているばかりか、もじゃ毛、剛毛、美脚、ガリ、網タイツ、いろいろな足がいっぱい。
「に、逃げ――うわおおおおおおお!?」
緑色の毛玉達は、横並びに整列す!
クラウチングスタートのポーズの如く片膝を地面に着ける。
刹那――!
短距離走者のごとく、やたら気合いの入った走りっぷりで、路地、疾走す!
●汚物、燻蒸消毒せしめるべし
「6月、よね」
樒・飴色(nCL2000110)は、電子たばこの水蒸気をたばこの煙のようにくゆらせながら、あさっての方向を向いていた。
「『妖』よ。ランク1。数は50。識別名は『かびまりも』とするわ。……辛いわね」
やけに落ち込んだ様子であるが、粋狂ナニガシと同じポジションにいることに、途方に暮れているだけである。
いやさ、知る人のみぞ知る小話だ。たいした話ではない。
「寸刻みにしても、空気中の湿度を吸収して、その刻まれた分だけ分裂して増殖再生を繰りかえす。――死なないわ」
今は6月、湿度は鬼のごとし。
ならばほぼ不死の存在! どうすればよいのか。
「焼く、物理で」
飴色は、つかつかとヒールを鳴らして部屋の隅へ。
布が被せられた何か。その布をはぎ取った。
「XI連中から押収した品よ。火行が使えれば必要ないのだけど、無い人も安心ね」
戦術手榴弾、火炎放射器、設置型の小型対空火炎放射器、やたら物騒なものばかりだ。
ふと見るとモヒカンのカツラ、やたらトケトゲしいタンクトップもある。これも押収品なのだろうか?
「それは趣味ね」
趣味っすか。飴色、モヒカンのカツラに向かう視線を察知す。
「『かびまりも』の群れから逃げている隔者も居るんだけど、一緒に焼いてもいいし、通過を待ってもいい。50匹まで増えたのは彼のせいらしいけど、まあ、まかせるわ」
飴色は、電子たばこは口に合わないと、鳩のマークがあるタバコの箱を出した。火はつけない。
「リアカーつきのバギーで良ければ、現場まで乗せていくわ。資材も持って行く。火行が無ければ、好きなのを選んで頂戴」
今回は飴色も同行するらしい。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.かびまりもの殲滅
2.一般人に被害を出さないこと
3.なし
2.一般人に被害を出さないこと
3.なし
特殊ルールとして、道具貸し出しありの『妖』殲滅クエストです。
最後の一匹が強くなります。以下詳細。
●状況
・時間は昼。雨天後の曇りです
・地形は住宅街の路地。一般人の乱入もありえます
・かびまりもは5列(5×10匹がずらっと整列して)で走ってきます
・進路方向は夢見で予知済みなので、待ち伏せて迎撃。奇襲なども可能です
迎撃ラインを通過されても、リトライ可能ですが、一般人乱入の可能性が高まります
・一般人に被害が出ると、愉快な空気(?)がぶち壊しになるのでがんばってください
●エネミー・妖
『かびまりも』×50 生物系
1mの緑カビの塊に、生足が生えてます。
いずれも成人男性の足です。もじゃ毛、剛毛、美脚、ガリ、バリエーション豊かです。
あと、その生足は実に潤ってます。
A:
肺が腐る胞子らしきもの 近貫2 あんまり痛くありません。【猛毒】
P:
・増殖革醒現象
かびまりもを消毒する度に、少しずつ強くなります。
最大でもランク2までなので、最後が強くなります
また、火行または【火傷】【炎傷】【焔傷】のBSつきの攻撃で倒さないと分裂して個体数を増やします。また体力も完全回復します。
●貸与品
・プレイングの最初に下記アルファベットを記載して頂ければ読み取ります
・現在装備している得物と切り替えて使えるものとします。
・A,B,Cはどれか一つだけ指定してください。使用回数はありません。D,Eは好きなだけ持っていってどうぞ
A.戦術手榴弾
IXからの押収品。住宅街で使用可能な水準に爆発範囲をおさえた手榴弾です。
性能:物攻+100 物遠列 異:[火傷]
B.火炎放射器
IXからの押収品。汚物を焼くのにぴったりな火炎放射器です。
性能:物攻+90 神攻+90 物近貫2 異:[火傷]
C.設置型対空火炎放射器
英国紳士な兵器を『祠堂 薫(nCL2000092)』が「HAHAHA、ユーたち」とか言いながらセンサーをつけて小型化せしめたものです。
上に向かって火炎放射します。1Tに一回設置可能。移動、通過した瞬間に発動します。
人にも反応するので自爆に注意。
性能:威力固定値300 設置場所の上のみ 異:[火傷]
D.モヒカンのカツラ
特に効果ありません
E.とげとげしいタンクトップ、またはレザージャケット
特に効果ありません
●フレンド
・樒 飴色
飴色の行動は、プレイングで指示があれば応じます。
また、相談中【飴色プレイング】と頭に記載して頂いた内容を上記プレイング上での指示と同等に扱います。
【飴色プレイング】が複数存在した場合は、最新の発言のみ考慮します。
リアカーつきのバギー持ってます。戦闘はからっきしですが、諜報、何かの敷設は得意です。械の因子:付喪なので耐久力あります。
・ゴッツォサン・越後
35才。かびまりもの群れから逃げています。打たれ弱いですが攻撃力はあります。
何もなければトンズラぶっこきます。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2017年06月22日
2017年06月22日
■メイン参加者 6人■

●今は21世紀である -End of the Century-
荒野を走るバギーとバイク。
西部劇とかで良く転がっている草みたいな丸いやつが、かさかさと転がって、どっか行く。
7人の視線は一様に、荒野の先を見据え、顔は険しい劇画調と化している!
――ような気がしているだけである。場所は街中である。
飴色が駆るバギーの後方には、玉座のごときリアカー。
リアカーの玉座に鎮座するのは『歪を見る眼』葦原 赤貴(CL2001019)である。
刺々しい鉄仮面だかヘルメットのようなものを被る。モヒカンをつけるには、まだ己はその域に達していないということで鉄仮面にしたのだが、結果として「俺の名前を省みぬ」合わせ技の完成であった。
赤貴王軍である。
王家――『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)を差し置いて!
そのプリンスはと言えば。
「民のみんな、モヒカン持ったかい?バイク漕いだかい? 好きにするのが大好きかい?それじゃいくよ、ヒャーーーハーーーーッ!」
モヒカンでノリノリであった。
西日のごとく眩しきモヒカン。服は肩パッド、ジャケット、すべてスパイク付きで、完全なるTraditionalなエンドオブセンチュリースタイル! これは完成されている趣だ。
バイクの免許がないので、手押しであるのもポイント高い。
『導きの鳥』麻弓 紡(CL2000623)は、この様子を死んだ魚のような目で、リアカーの隅っこから眺めている。
ここまで手押しで来たプリンスをぼんやり眺めている形だったが、プリンス、すでにゼエゼエと息が上がっている。
「殿、死にそう?」
「げ、元気いぱーいだよ!」
爽やかな返事だ。
『地を駆ける羽』如月・蒼羽(CL2001575)は、とりあえずレザージャケットを羽織る。戦略上重要だと聞いたからだ。
モヒカンのカツラを手に取ってどうしようか考えていると、プリンスがバイクを止めて「さあ蒸着せよ」と迫る。
刹那の一瞬間に、紡の滑空キック(確定ロール)がプリンスに。気心知れた仲だ。
蒼羽はこのやりとりに、つい有情の使い手のごとき、柔和な表情が浮かび、なかよしだな、と見守った。
「今回、これ、制服、聞いた」
『献身なる盾』岩倉・盾護(CL2000549)も準備はOK。モヒカンだ。ジャケットだ。TOUGH BOYだ。
「盾護、汚物消毒、頑張る」
決意を口に出す。取り出した火炎放射器。
此度の敵。火行や炎でのみ消毒できる手合いであったが、火行の使い手はアネモネ・モンクスフード(CL2001508)ただ一人!
すなわちアネモネ以外、全員貸与品にして、End of the Centuryである。
荒野を抜け、街を抜け、問題の路地へ至る。
夢見が予想した敵の進路と、待ち伏せ可能な丁度良い地点で、赤貴王軍は止まる。
治水があまり良くないのか、水たまりが至るところにある路地だ。
飴色が、貸与品の『設置式小型対空火炎放射器』を、『後方』に設置していく。
「これ、背水之陣みたいにならない?」
赤貴が鉄仮面の奥から妖しい眼光を煌めかせながら応答する。
「一匹も通さない作戦だ」
「そう、無理しないようにね」
路地の端から端を『設置式小型対空火炎放射器』で埋める。
紡が敵軍の動向を、鷹の目により探る。
「それにしても梅雨入り間近にカビ妖かぁ……時期モノ?」
鷹の目を用いて、ドアップで垣間見えたのは、すね毛であった。すね毛の群れであった。『かびまりも』であった。
思わず、うへ、うわぁ、と音を上げてしまう。
「鷹の目つけてくるんじゃなかった」
覚者、一斉に戦闘態勢。
塵一つ遺さず、燻蒸消毒せしめる腹づもり。路地に対して横一列。
アネモネは火行。得物も火傷を伴う。準備万端だ。
「自分は聖槍アドニスで、汚物を消毒するだけの簡単なお仕事を頑張るでありますよ!」
いざ、戦いの荒野へ。
●イカれた戦い -Bring it on down-
「うお!? うおおおおお助けてくれぇぇぇ!!」
隔者の民、ゴッツォサン越後。
不死身の『かびまりも』達に追いかけられて、必死に逃げてくる。
ドドドドドド、と、『かびまりも』の列。気合いが入った走りっぷりで迫り来る。すね毛、なびいている!
いよいよだ。
蒼羽がのんびりと火炎放射器を構え――敵の数に辟易する。
「越後さん、だっけ もう少し早く気付いてほしかったなぁ」
「盾護、前に見たことある」
「どんな人?」
「うたれ弱い、って聞いた」
ちょい役とのことだった。
「うん、ならいいか」
蒼羽、柔和な顔を崩さず。
赤貴も同意して、火炎放射器を構える。
「長々見たいものではないからな、効率よくいかせてもらおう」
面白みがない、と言われるやもしれんと考える。
しかし、この連中を目の前にして同じ事を言えるヤツなど、そうは……いや、今回のメンツには、いる。と考えを改めながらプリンスを見る。
プリンスは興奮している!
興奮しながら言う。
「作戦はこうだ。1人一列を担当。射程内に入った瞬間から燃やす! 狂ったように燃やす! 準備OKかい民たち!?」
プリンス、バイク手押しで来た疲れもなんのその!
紡は中衛。
プリンスへ「気張っておいで」と殴《戦巫女之祝詞》っているうちに――
ゴッツォが射程に入った!
「モンクちゃんも頑張れー! ってタンマ! その人焼肉Nooooo」
紡の声援――からの続くストップ!
間に合わない。
「ぐわーーーーー! こんな宿命ぇぇぇ」
第一局面! 前衛、ゴッツォごと焼き払う!
火炎放射器を整列して発射。
絶対無敵の汚物消毒銃が、文字通り火を噴いた。
人間を一瞬で焼いてしまう、極悪非道の火炎放射だ! さすがはXI! XIの科学力は、覚者の神秘的能力に比類する! あいつら最近なにやってんだろうな。
「ヒャッハーーーーー!! 水だ! 食糧だ! ヒャァ! 酒もあるぞー!」
プリンス、興奮のあまり、天に至る。
盾護も続く。
「ヒャッハー、汚物は消毒だぜ」
いつもの死んだ魚のような目で棒読みのヒャッハーだ。
赤貴、火炎放射器を見て、ちょっとこれいいな、と考えていると、最初に焼いた前列とその向こうの『かびまりも』が足を痙攣させてぴくぴくと動いている。
「キツいな」
赤貴、思わず、うわっと言いそうになって平静を取りもどす。
蒼羽も同意する。
「相手の動き確認しながら迎撃……と思ったんだけれどね。視覚の暴力だよね。消毒しよう」
第二局面!
ここで非常事態が発生する。
――もっふぁ! もっふぁ!
「うわー! であります!」
アネモネ、かびまりもに、ソイヤソイヤされて斃る!
その感触、実に、もふぁあああああああああ! と形容できようか。
酸っぱい臭いが口中に広がる。呼吸の度に細かい緑の粉塵が入るような感覚。
気合いがあれば何とかなったかもしれないが――これは、この敵は、『かびまりも』は! 心すらカビで侵食し、へし折ってくるようだ!
「まずい。隊列に穴が」
蒼羽、歯がみする。真横のかびまりものセイヤセイヤに気分を害する。
「モンクちゃーん!」
紡が火炎放射して、アネモネに群がるやつらを焼く。
焼いて空間ができたところへ、飴色が入る。
「……なんかね、嫌な予感していたのよ。前世からの記憶で」
とか飴色が言っているが、因子は付喪である。
たぶん「【三防強2013】かびまりも」でググるとなんとなく分かる小話である。
第三局面!
『かびまりも』が、一撃で死ななくなっている。
よって、壁を為す全員が、アネモネが味わったモッファアアアアアを同様に味わった。
「――っ」
赤貴、絶句す。
「うわあああ」
盾護、棒読みである。
「……痛だー! ターバンの少年がー!」
プリンス幻覚を見る。
「――っ! 少し入った」
蒼羽、毒を感ずる。
「oh……」
飴色、英語になった。
かく、身体を張った防衛ラインで、水際で食い止めるが如く。
リトライは考えていない。夢見の予知。一般人が巻き込まれる危険が最も低いここで、全て終える覚悟であった。
第四局面、第五、第六。……
『かびまりも』の、徐々に強化されている性質がやがては二撃加えても、三,四で倒せない強度を帯びてくる。もっふぁあも増えてくる。
猛毒! 苛烈なる猛毒。
紡が、天空より召還する雷凰によって削りもいれていたが、やがて猛毒の治療で手一杯になる。
そこへ戦況、さらに悪化する事態。
盾護がぼんやり食い止めながらファイヤーしていると。眼前のかびまりもに――
「? かび通るべからず」
『(ぎょろ)』
まんまるの可愛らしい目が生じた。眼球である。
盾護、『かびまりも』と目が合う。
『んほおおおおおおおおおおおお』
なんと『かびまりも』が叫んだのだ。
たちまち、盾護に群がるようにモッファ! モッファ!とソイヤソイヤが集中する!
「うわー!」
猛毒による削り。堅牢なる盾護であったが、内側からの侵食にて斃る!
●畏め、且つ仰ぎ見よ、第八星 -Alcor-
「あっるぇ? また俺、F.i.V.E.手伝う流れか? この戦況」
ゴッツォが、盾護を後方に運ぶ。火炎放射が直撃したのにまだ余力はあるようだ。
「んーまあ、今は気分が良い。あるこる――平たく言って『ヨルナキの腹かっさばいてえのころ飯食いたい友の会』、室長、この俺、ゴッツォサン越後の包丁さばきを――」
紡が制止する。
「すとーっぷ!! フリーズ! 手をあげるんだ。後ろをむいて地面にうつぶせ」
そんなことされたら、かびまりもが増える。
紡は、本当はNo焼肉の腹づもりだったが、お構いなしにぶっ放した前衛がなんやかんや。かびまりもの性質、およびバギーにある貸与品について手短に説明す。
「あいよ、協力してやるぜー。知り合いが美味い肉を持ってきてくれるってんでウキウキしててな」
と、おっさん、どたどたと、バギーの方へ行った。
程なく設置型火炎放射器を喰らって、ぐわーと悲鳴が聞こえたような気がした。
おっさんが戻るまで、紡が一時前へ出る。「そーちゃんと一緒にファイアー」をするも、同時にもっふぁも味わった。
後ろに抜けた『かびまりも』もいた。
いたが、敷設した対空火炎放射器の出番だ。五列くらい並べているのだ。
十分、保険の役割を果たしていた。
押されるも押し返し、やがて優勢――最後の一匹に至る。
最後は『網タイツ』だ。
『網タイツのかびまりも』だ。
目がある、口がある。緑の球体から、んほおおんほほおと断続的に悶絶めいた鳴き声。
佇まいからして、どこやら違う。
こいつだけダッシュではない。一歩一歩、威圧感を発しながら歩いてくるのだ。
「最後だ」
赤貴が斬りかかる。
最後のトドメだけ焼けばいいのだ。『網タイツ』が応じるよう赤貴へ疾走。
激突!
刹那、『網タイツ』に腕が生える。
新生! かびまりも!
赤貴の大剣を白刃取り。
赤貴、ここで胸中に痛みを覚える。喉の奥からわき上がる液体。
「……カハッ!」
――『血』であった。
触れられてもいないのに。肺をやられた。
大剣ごとぶん投げられる赤貴。
「セキシー!」
プリンスが赤貴を受け止める。
転じて攻撃。
「余の民を傷つける者には躊躇しないよ! 王家だから」
火炎放射器だ。ごおおおおと燃やす。
炎に包まれる『網タイツ』。
しかし『網タイツ』、焼かれながらも悠然と歩いてくる。それがプリンスの眼前に迫り――
「えい」
蒼羽が、横から火炎放射器でぶん殴る。間一髪。
次に大きく上段から振り下ろしてもう一撃。うつ伏せに倒れた『網タイツ』に、つま先で蹴り一発。
最後に火炎放射器の先端をぶっ刺す。焼く。暴力坂乱暴の趣だ。
倒したか?
否。『網タイツ』、蒼羽の火炎放射器を腕で掴む。
跳躍!
胡座のごとき姿勢で高く跳び上がる。そして開脚。
蒼羽の眼前に、Welcome!(開脚したときの真ん中)が迫る。
迫ったところで、飴色が蒼羽を庇う。Welcome!が炸裂す。
「あとは……よろしくね」
飴色が崩れ落ちる。
「飴色ちゃーん!」
紡の悲痛な叫びだ。回復、続く回復。だめだ! 命を燃やして立ち上がる気力も折られている。
「樒さんっ」
赤貴、喀血を袖で拭い、強く奥歯を噛みしめる。
3人倒れるという事態、珍妙な見た目への緩みがあったか? と自省するように鉄仮面を脱ぐ。
と、そこへ。
「――んじゃ、動きとめるぜぇ」
赤貴の横をゴッツォがゆるく前にでる。
そんでおっさんが何かやる。
『んほぉぉぉぉおおおおおおおおお!!』
網タイツ。たちまち、その場で垂直にピョンピョン跳びはねながら手をばたばたさせる。
うわっ。と誰かが声を出す。
だが、チャンスだ――これは混乱!
「余だよ?」
「やれやれ」
プリンスと蒼羽、つーっと行って、粛々と『網タイツ』に火炎放射する。
ごぉぉぉぉおおおおおお。
トリガーは引きっぱなしだ。生臭いものが鼻腔をくすぐる。反吐がでる煙だ。嘔吐感がひどい。
そして赤貴だ。紡から戦巫女之祝詞をもらっている。
疾走。火炎放射器、大上段。
「沙門叢雲《コイツ》も嫌がりそうな気はするしな――焼き潰すぞ」
下す一閃、縦一文字。蒼羽がやったように。鈍器として用いる。
焼けた網タイツは、ぐしゃっと簡単な音を出して潰る。そして燃やす。
最後はあっけない。
赤貴王軍――否、覚者達は、恐るべき『かびまりも』の軍勢に勝利したのだった。
勝利した覚者達に対して――ゴッツォサン越後なる隔者の民。
電柱の影の見え見えな位置にわざわざ行って、神妙な顔つきで顔半分を電柱に隠しながら。
「畏め、且つ仰ぎ見よ。北斗七星に添え星は見えるか。見えないならその年に死ぬと伝承される寿命星。見えるなら死なぬ――なんつって、んじゃな」
良くいる『意味深なことを言う老人』とか、『奴を倒すとは侮れないとかブツクサ言う怪しい人影』風味に言い去った。
問題は、今は日中であることだ。
●かびまりもは強敵でした -Strawberry-
「久々に樒さんに会ったわけだが、こういう格好が好みの方だったか」
「もう着ないわ。昔のこと――女には秘密の一つや二つあるものよ」
??????。赤貴、返答に窮する。
飴色、遠い目だ。
赤貴、首をひねりながら、後始末へと行く。
紬は、盾護、アネモネの手当てをする。汗がだくだくと滴る。
「っていうか、あっつい…暑いの、苦手……」
なにせ蒸し暑い時分で火炎放射器など振り回せば、近辺の気温も上昇。
餅のようにぐにょーっとなる。
蒼羽が、紬の様子に、もう少しだから頑張ろうよ、と声をかけながらも。
「かびの胞子って残っているとまだ増えるんだよね」
ごぉぉぉおおおおお! と消毒を続ける。気温上昇す。
薬品などない。燻蒸消毒だ。
「うん。この間知り合いにセキシーが脛毛気にしてたって話したら、めちゃめちゃ動揺しながら徐々に恍惚としてヨダレ垂らしだす一部始終見ちゃってね」
プリンスもごぉぉぉおおおおお! と周囲の燻蒸消毒を続けながら、唐突に言う。気温上昇す。
「まあ、アレだよ。色々あるよ!」
どこやらか、殺意がプリンスを射貫いた。ような気がした。
荒野を走るバギーとバイク。
西部劇とかで良く転がっている草みたいな丸いやつが、かさかさと転がって、どっか行く。
7人の視線は一様に、荒野の先を見据え、顔は険しい劇画調と化している!
――ような気がしているだけである。場所は街中である。
飴色が駆るバギーの後方には、玉座のごときリアカー。
リアカーの玉座に鎮座するのは『歪を見る眼』葦原 赤貴(CL2001019)である。
刺々しい鉄仮面だかヘルメットのようなものを被る。モヒカンをつけるには、まだ己はその域に達していないということで鉄仮面にしたのだが、結果として「俺の名前を省みぬ」合わせ技の完成であった。
赤貴王軍である。
王家――『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)を差し置いて!
そのプリンスはと言えば。
「民のみんな、モヒカン持ったかい?バイク漕いだかい? 好きにするのが大好きかい?それじゃいくよ、ヒャーーーハーーーーッ!」
モヒカンでノリノリであった。
西日のごとく眩しきモヒカン。服は肩パッド、ジャケット、すべてスパイク付きで、完全なるTraditionalなエンドオブセンチュリースタイル! これは完成されている趣だ。
バイクの免許がないので、手押しであるのもポイント高い。
『導きの鳥』麻弓 紡(CL2000623)は、この様子を死んだ魚のような目で、リアカーの隅っこから眺めている。
ここまで手押しで来たプリンスをぼんやり眺めている形だったが、プリンス、すでにゼエゼエと息が上がっている。
「殿、死にそう?」
「げ、元気いぱーいだよ!」
爽やかな返事だ。
『地を駆ける羽』如月・蒼羽(CL2001575)は、とりあえずレザージャケットを羽織る。戦略上重要だと聞いたからだ。
モヒカンのカツラを手に取ってどうしようか考えていると、プリンスがバイクを止めて「さあ蒸着せよ」と迫る。
刹那の一瞬間に、紡の滑空キック(確定ロール)がプリンスに。気心知れた仲だ。
蒼羽はこのやりとりに、つい有情の使い手のごとき、柔和な表情が浮かび、なかよしだな、と見守った。
「今回、これ、制服、聞いた」
『献身なる盾』岩倉・盾護(CL2000549)も準備はOK。モヒカンだ。ジャケットだ。TOUGH BOYだ。
「盾護、汚物消毒、頑張る」
決意を口に出す。取り出した火炎放射器。
此度の敵。火行や炎でのみ消毒できる手合いであったが、火行の使い手はアネモネ・モンクスフード(CL2001508)ただ一人!
すなわちアネモネ以外、全員貸与品にして、End of the Centuryである。
荒野を抜け、街を抜け、問題の路地へ至る。
夢見が予想した敵の進路と、待ち伏せ可能な丁度良い地点で、赤貴王軍は止まる。
治水があまり良くないのか、水たまりが至るところにある路地だ。
飴色が、貸与品の『設置式小型対空火炎放射器』を、『後方』に設置していく。
「これ、背水之陣みたいにならない?」
赤貴が鉄仮面の奥から妖しい眼光を煌めかせながら応答する。
「一匹も通さない作戦だ」
「そう、無理しないようにね」
路地の端から端を『設置式小型対空火炎放射器』で埋める。
紡が敵軍の動向を、鷹の目により探る。
「それにしても梅雨入り間近にカビ妖かぁ……時期モノ?」
鷹の目を用いて、ドアップで垣間見えたのは、すね毛であった。すね毛の群れであった。『かびまりも』であった。
思わず、うへ、うわぁ、と音を上げてしまう。
「鷹の目つけてくるんじゃなかった」
覚者、一斉に戦闘態勢。
塵一つ遺さず、燻蒸消毒せしめる腹づもり。路地に対して横一列。
アネモネは火行。得物も火傷を伴う。準備万端だ。
「自分は聖槍アドニスで、汚物を消毒するだけの簡単なお仕事を頑張るでありますよ!」
いざ、戦いの荒野へ。
●イカれた戦い -Bring it on down-
「うお!? うおおおおお助けてくれぇぇぇ!!」
隔者の民、ゴッツォサン越後。
不死身の『かびまりも』達に追いかけられて、必死に逃げてくる。
ドドドドドド、と、『かびまりも』の列。気合いが入った走りっぷりで迫り来る。すね毛、なびいている!
いよいよだ。
蒼羽がのんびりと火炎放射器を構え――敵の数に辟易する。
「越後さん、だっけ もう少し早く気付いてほしかったなぁ」
「盾護、前に見たことある」
「どんな人?」
「うたれ弱い、って聞いた」
ちょい役とのことだった。
「うん、ならいいか」
蒼羽、柔和な顔を崩さず。
赤貴も同意して、火炎放射器を構える。
「長々見たいものではないからな、効率よくいかせてもらおう」
面白みがない、と言われるやもしれんと考える。
しかし、この連中を目の前にして同じ事を言えるヤツなど、そうは……いや、今回のメンツには、いる。と考えを改めながらプリンスを見る。
プリンスは興奮している!
興奮しながら言う。
「作戦はこうだ。1人一列を担当。射程内に入った瞬間から燃やす! 狂ったように燃やす! 準備OKかい民たち!?」
プリンス、バイク手押しで来た疲れもなんのその!
紡は中衛。
プリンスへ「気張っておいで」と殴《戦巫女之祝詞》っているうちに――
ゴッツォが射程に入った!
「モンクちゃんも頑張れー! ってタンマ! その人焼肉Nooooo」
紡の声援――からの続くストップ!
間に合わない。
「ぐわーーーーー! こんな宿命ぇぇぇ」
第一局面! 前衛、ゴッツォごと焼き払う!
火炎放射器を整列して発射。
絶対無敵の汚物消毒銃が、文字通り火を噴いた。
人間を一瞬で焼いてしまう、極悪非道の火炎放射だ! さすがはXI! XIの科学力は、覚者の神秘的能力に比類する! あいつら最近なにやってんだろうな。
「ヒャッハーーーーー!! 水だ! 食糧だ! ヒャァ! 酒もあるぞー!」
プリンス、興奮のあまり、天に至る。
盾護も続く。
「ヒャッハー、汚物は消毒だぜ」
いつもの死んだ魚のような目で棒読みのヒャッハーだ。
赤貴、火炎放射器を見て、ちょっとこれいいな、と考えていると、最初に焼いた前列とその向こうの『かびまりも』が足を痙攣させてぴくぴくと動いている。
「キツいな」
赤貴、思わず、うわっと言いそうになって平静を取りもどす。
蒼羽も同意する。
「相手の動き確認しながら迎撃……と思ったんだけれどね。視覚の暴力だよね。消毒しよう」
第二局面!
ここで非常事態が発生する。
――もっふぁ! もっふぁ!
「うわー! であります!」
アネモネ、かびまりもに、ソイヤソイヤされて斃る!
その感触、実に、もふぁあああああああああ! と形容できようか。
酸っぱい臭いが口中に広がる。呼吸の度に細かい緑の粉塵が入るような感覚。
気合いがあれば何とかなったかもしれないが――これは、この敵は、『かびまりも』は! 心すらカビで侵食し、へし折ってくるようだ!
「まずい。隊列に穴が」
蒼羽、歯がみする。真横のかびまりものセイヤセイヤに気分を害する。
「モンクちゃーん!」
紡が火炎放射して、アネモネに群がるやつらを焼く。
焼いて空間ができたところへ、飴色が入る。
「……なんかね、嫌な予感していたのよ。前世からの記憶で」
とか飴色が言っているが、因子は付喪である。
たぶん「【三防強2013】かびまりも」でググるとなんとなく分かる小話である。
第三局面!
『かびまりも』が、一撃で死ななくなっている。
よって、壁を為す全員が、アネモネが味わったモッファアアアアアを同様に味わった。
「――っ」
赤貴、絶句す。
「うわあああ」
盾護、棒読みである。
「……痛だー! ターバンの少年がー!」
プリンス幻覚を見る。
「――っ! 少し入った」
蒼羽、毒を感ずる。
「oh……」
飴色、英語になった。
かく、身体を張った防衛ラインで、水際で食い止めるが如く。
リトライは考えていない。夢見の予知。一般人が巻き込まれる危険が最も低いここで、全て終える覚悟であった。
第四局面、第五、第六。……
『かびまりも』の、徐々に強化されている性質がやがては二撃加えても、三,四で倒せない強度を帯びてくる。もっふぁあも増えてくる。
猛毒! 苛烈なる猛毒。
紡が、天空より召還する雷凰によって削りもいれていたが、やがて猛毒の治療で手一杯になる。
そこへ戦況、さらに悪化する事態。
盾護がぼんやり食い止めながらファイヤーしていると。眼前のかびまりもに――
「? かび通るべからず」
『(ぎょろ)』
まんまるの可愛らしい目が生じた。眼球である。
盾護、『かびまりも』と目が合う。
『んほおおおおおおおおおおおお』
なんと『かびまりも』が叫んだのだ。
たちまち、盾護に群がるようにモッファ! モッファ!とソイヤソイヤが集中する!
「うわー!」
猛毒による削り。堅牢なる盾護であったが、内側からの侵食にて斃る!
●畏め、且つ仰ぎ見よ、第八星 -Alcor-
「あっるぇ? また俺、F.i.V.E.手伝う流れか? この戦況」
ゴッツォが、盾護を後方に運ぶ。火炎放射が直撃したのにまだ余力はあるようだ。
「んーまあ、今は気分が良い。あるこる――平たく言って『ヨルナキの腹かっさばいてえのころ飯食いたい友の会』、室長、この俺、ゴッツォサン越後の包丁さばきを――」
紡が制止する。
「すとーっぷ!! フリーズ! 手をあげるんだ。後ろをむいて地面にうつぶせ」
そんなことされたら、かびまりもが増える。
紡は、本当はNo焼肉の腹づもりだったが、お構いなしにぶっ放した前衛がなんやかんや。かびまりもの性質、およびバギーにある貸与品について手短に説明す。
「あいよ、協力してやるぜー。知り合いが美味い肉を持ってきてくれるってんでウキウキしててな」
と、おっさん、どたどたと、バギーの方へ行った。
程なく設置型火炎放射器を喰らって、ぐわーと悲鳴が聞こえたような気がした。
おっさんが戻るまで、紡が一時前へ出る。「そーちゃんと一緒にファイアー」をするも、同時にもっふぁも味わった。
後ろに抜けた『かびまりも』もいた。
いたが、敷設した対空火炎放射器の出番だ。五列くらい並べているのだ。
十分、保険の役割を果たしていた。
押されるも押し返し、やがて優勢――最後の一匹に至る。
最後は『網タイツ』だ。
『網タイツのかびまりも』だ。
目がある、口がある。緑の球体から、んほおおんほほおと断続的に悶絶めいた鳴き声。
佇まいからして、どこやら違う。
こいつだけダッシュではない。一歩一歩、威圧感を発しながら歩いてくるのだ。
「最後だ」
赤貴が斬りかかる。
最後のトドメだけ焼けばいいのだ。『網タイツ』が応じるよう赤貴へ疾走。
激突!
刹那、『網タイツ』に腕が生える。
新生! かびまりも!
赤貴の大剣を白刃取り。
赤貴、ここで胸中に痛みを覚える。喉の奥からわき上がる液体。
「……カハッ!」
――『血』であった。
触れられてもいないのに。肺をやられた。
大剣ごとぶん投げられる赤貴。
「セキシー!」
プリンスが赤貴を受け止める。
転じて攻撃。
「余の民を傷つける者には躊躇しないよ! 王家だから」
火炎放射器だ。ごおおおおと燃やす。
炎に包まれる『網タイツ』。
しかし『網タイツ』、焼かれながらも悠然と歩いてくる。それがプリンスの眼前に迫り――
「えい」
蒼羽が、横から火炎放射器でぶん殴る。間一髪。
次に大きく上段から振り下ろしてもう一撃。うつ伏せに倒れた『網タイツ』に、つま先で蹴り一発。
最後に火炎放射器の先端をぶっ刺す。焼く。暴力坂乱暴の趣だ。
倒したか?
否。『網タイツ』、蒼羽の火炎放射器を腕で掴む。
跳躍!
胡座のごとき姿勢で高く跳び上がる。そして開脚。
蒼羽の眼前に、Welcome!(開脚したときの真ん中)が迫る。
迫ったところで、飴色が蒼羽を庇う。Welcome!が炸裂す。
「あとは……よろしくね」
飴色が崩れ落ちる。
「飴色ちゃーん!」
紡の悲痛な叫びだ。回復、続く回復。だめだ! 命を燃やして立ち上がる気力も折られている。
「樒さんっ」
赤貴、喀血を袖で拭い、強く奥歯を噛みしめる。
3人倒れるという事態、珍妙な見た目への緩みがあったか? と自省するように鉄仮面を脱ぐ。
と、そこへ。
「――んじゃ、動きとめるぜぇ」
赤貴の横をゴッツォがゆるく前にでる。
そんでおっさんが何かやる。
『んほぉぉぉぉおおおおおおおおお!!』
網タイツ。たちまち、その場で垂直にピョンピョン跳びはねながら手をばたばたさせる。
うわっ。と誰かが声を出す。
だが、チャンスだ――これは混乱!
「余だよ?」
「やれやれ」
プリンスと蒼羽、つーっと行って、粛々と『網タイツ』に火炎放射する。
ごぉぉぉぉおおおおおお。
トリガーは引きっぱなしだ。生臭いものが鼻腔をくすぐる。反吐がでる煙だ。嘔吐感がひどい。
そして赤貴だ。紡から戦巫女之祝詞をもらっている。
疾走。火炎放射器、大上段。
「沙門叢雲《コイツ》も嫌がりそうな気はするしな――焼き潰すぞ」
下す一閃、縦一文字。蒼羽がやったように。鈍器として用いる。
焼けた網タイツは、ぐしゃっと簡単な音を出して潰る。そして燃やす。
最後はあっけない。
赤貴王軍――否、覚者達は、恐るべき『かびまりも』の軍勢に勝利したのだった。
勝利した覚者達に対して――ゴッツォサン越後なる隔者の民。
電柱の影の見え見えな位置にわざわざ行って、神妙な顔つきで顔半分を電柱に隠しながら。
「畏め、且つ仰ぎ見よ。北斗七星に添え星は見えるか。見えないならその年に死ぬと伝承される寿命星。見えるなら死なぬ――なんつって、んじゃな」
良くいる『意味深なことを言う老人』とか、『奴を倒すとは侮れないとかブツクサ言う怪しい人影』風味に言い去った。
問題は、今は日中であることだ。
●かびまりもは強敵でした -Strawberry-
「久々に樒さんに会ったわけだが、こういう格好が好みの方だったか」
「もう着ないわ。昔のこと――女には秘密の一つや二つあるものよ」
??????。赤貴、返答に窮する。
飴色、遠い目だ。
赤貴、首をひねりながら、後始末へと行く。
紬は、盾護、アネモネの手当てをする。汗がだくだくと滴る。
「っていうか、あっつい…暑いの、苦手……」
なにせ蒸し暑い時分で火炎放射器など振り回せば、近辺の気温も上昇。
餅のようにぐにょーっとなる。
蒼羽が、紬の様子に、もう少しだから頑張ろうよ、と声をかけながらも。
「かびの胞子って残っているとまだ増えるんだよね」
ごぉぉぉおおおおお! と消毒を続ける。気温上昇す。
薬品などない。燻蒸消毒だ。
「うん。この間知り合いにセキシーが脛毛気にしてたって話したら、めちゃめちゃ動揺しながら徐々に恍惚としてヨダレ垂らしだす一部始終見ちゃってね」
プリンスもごぉぉぉおおおおお! と周囲の燻蒸消毒を続けながら、唐突に言う。気温上昇す。
「まあ、アレだよ。色々あるよ!」
どこやらか、殺意がプリンスを射貫いた。ような気がした。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
