描け電子の五芒星! リブート・デジタル陰陽道!
●インフェニットエイト、バースト
爆発する筑西タワーマンションビル。
飛び散るガラスとコンクリート片に混じって、いびつなバケモノが降り立った。
人間の部位をランダムにふくれさせたような、それでいてブラウン管テレビやラジオといった家電製品と無理矢理融合したような、有り体に述べてのバケモノである。
「ニクイ……オロカシイ……ニクイ……!」
バケモノは怒りを露わにするかのように暴れていた。
足を踏みならしては地面を砕き、腕を振り回しては道路標識をへし折った。
逃げ惑う人々。子供を庇ってうずくまる女や、ビジネス鞄を翳して震えるサラリーマン。
――そんな中に、スマホを翳して動画撮影をする若者がいた。
「やっべー、ウケる! これで再生数クソあがるっしょ!」
撮影しているものはバケモノ。そして、その驚異に晒され震えている人々である。
バケモノは動画撮影をする若者に向き直ると。
「オロカシイ……!」
腕から電力コードを無数に延ばし、若者を拘束した。
そしてぎりぎりと締め上げていく。
若者の手からスマホが落ち、若者の命までもが落ちようとしたその時……!
「そこまでだ!」
衝撃の刃が放たれ、コードを切断する。飛び散るスパーク。よろめくバケモノ。
「ダレダ……」
振り向くバケモノから目立つように、式服を纏った青年が歩道橋の上に現われた。
「世間に向けられた形の無い怒り。八つ当たりは許さないぞ――『怪人』よ!」
青年はスマートホンを翳すとアプリケーションを起動。奇妙な文様が並ぶ画面に指で五芒星を描くと土の術式を発動させた。
「土行ノ壱、蒼鋼壁!」
歩道橋の手すりから飛ぶ青年。彼を銀色のフルアーマーが覆い、バケモノが放つコードをはじき飛ばした。
「終わりだ! 土行ノ弐、琴富士!」
全身に光を纏い、流星のごときキックを繰り出す青年。
彼のキックはバケモノの身体に星形の穴を開け、爆発によって消滅させた。
あとに残ったのは、スマホを握ったどこかの主婦だった。スマホを拾い上げて画面を見ると、ツイッターで見知らぬ誰かと泥沼の争いをしている様子が表示されていた。
装甲を解いて振り返る青年。
「悪しき心に古妖がとりつき、『怪人』となったか。形は変わっても、人々が悪の心につけ込まれるのは変わらないな……」
代わりにブロック処理をしといてあげると、青年は気絶した主婦にスマホを返した。
「だがおかしいな。最近『怪人』が増えすぎている。まるでこの町自体が悪に覆われているかのように……ハッ!」
凶悪な気配に気づいて振り返る。
すると、自動販売機をたたきつぶしながらバイクと融合したような『怪人』が現われた。
それだけではない。
全身を宝石やブランドバッグで覆った怪人。バタフライナイフを全身からはやした怪人。そこかしこから無数に現われては青年に威嚇をはじめた。
「まずい、囲まれたか……」
怪人を倒す力を持つ青年といえど、この数をしのぎきることはできない。
周囲の人々はおびえすくむばかり。
助けは来ない。
いま青年を助けられる者は、この世のどこにもいないのか――。
●人の形をした希望
「――いいや、俺たちがいる!」
久方 相馬(nCL2000004)はグッと拳を握ると、そのように説明を区切った。
ここはファイヴの会議室。相馬がみた予知夢の内容を、集まった覚者たちに説明していたのだ。
「今説明したように、茨城県の筑西市で活動しているフリーの覚者が悪い古妖に襲われるんだ。彼は時には妖と、時には隔者と戦いながらも、古来から続く使命を帯びて『怪人』と戦っているんだ」
予知夢の中でみた情報までしか知らない相馬はそこで説明を区切った。
怪人がいかなるものなのか。使命とはなにか。そこまでは流石に分からないのだ。
だが、人々のために戦う彼が命の危機にあり、それを救えるのはおそらく自分たちだけだということは確かだ。
「同じく人々の未来を守る俺たちとしては、この状況を見過ごせないよな!
けど俺にできるのは予知した情報を教えることだけだ。後のことは、皆に任せたぜ!」
爆発する筑西タワーマンションビル。
飛び散るガラスとコンクリート片に混じって、いびつなバケモノが降り立った。
人間の部位をランダムにふくれさせたような、それでいてブラウン管テレビやラジオといった家電製品と無理矢理融合したような、有り体に述べてのバケモノである。
「ニクイ……オロカシイ……ニクイ……!」
バケモノは怒りを露わにするかのように暴れていた。
足を踏みならしては地面を砕き、腕を振り回しては道路標識をへし折った。
逃げ惑う人々。子供を庇ってうずくまる女や、ビジネス鞄を翳して震えるサラリーマン。
――そんな中に、スマホを翳して動画撮影をする若者がいた。
「やっべー、ウケる! これで再生数クソあがるっしょ!」
撮影しているものはバケモノ。そして、その驚異に晒され震えている人々である。
バケモノは動画撮影をする若者に向き直ると。
「オロカシイ……!」
腕から電力コードを無数に延ばし、若者を拘束した。
そしてぎりぎりと締め上げていく。
若者の手からスマホが落ち、若者の命までもが落ちようとしたその時……!
「そこまでだ!」
衝撃の刃が放たれ、コードを切断する。飛び散るスパーク。よろめくバケモノ。
「ダレダ……」
振り向くバケモノから目立つように、式服を纏った青年が歩道橋の上に現われた。
「世間に向けられた形の無い怒り。八つ当たりは許さないぞ――『怪人』よ!」
青年はスマートホンを翳すとアプリケーションを起動。奇妙な文様が並ぶ画面に指で五芒星を描くと土の術式を発動させた。
「土行ノ壱、蒼鋼壁!」
歩道橋の手すりから飛ぶ青年。彼を銀色のフルアーマーが覆い、バケモノが放つコードをはじき飛ばした。
「終わりだ! 土行ノ弐、琴富士!」
全身に光を纏い、流星のごときキックを繰り出す青年。
彼のキックはバケモノの身体に星形の穴を開け、爆発によって消滅させた。
あとに残ったのは、スマホを握ったどこかの主婦だった。スマホを拾い上げて画面を見ると、ツイッターで見知らぬ誰かと泥沼の争いをしている様子が表示されていた。
装甲を解いて振り返る青年。
「悪しき心に古妖がとりつき、『怪人』となったか。形は変わっても、人々が悪の心につけ込まれるのは変わらないな……」
代わりにブロック処理をしといてあげると、青年は気絶した主婦にスマホを返した。
「だがおかしいな。最近『怪人』が増えすぎている。まるでこの町自体が悪に覆われているかのように……ハッ!」
凶悪な気配に気づいて振り返る。
すると、自動販売機をたたきつぶしながらバイクと融合したような『怪人』が現われた。
それだけではない。
全身を宝石やブランドバッグで覆った怪人。バタフライナイフを全身からはやした怪人。そこかしこから無数に現われては青年に威嚇をはじめた。
「まずい、囲まれたか……」
怪人を倒す力を持つ青年といえど、この数をしのぎきることはできない。
周囲の人々はおびえすくむばかり。
助けは来ない。
いま青年を助けられる者は、この世のどこにもいないのか――。
●人の形をした希望
「――いいや、俺たちがいる!」
久方 相馬(nCL2000004)はグッと拳を握ると、そのように説明を区切った。
ここはファイヴの会議室。相馬がみた予知夢の内容を、集まった覚者たちに説明していたのだ。
「今説明したように、茨城県の筑西市で活動しているフリーの覚者が悪い古妖に襲われるんだ。彼は時には妖と、時には隔者と戦いながらも、古来から続く使命を帯びて『怪人』と戦っているんだ」
予知夢の中でみた情報までしか知らない相馬はそこで説明を区切った。
怪人がいかなるものなのか。使命とはなにか。そこまでは流石に分からないのだ。
だが、人々のために戦う彼が命の危機にあり、それを救えるのはおそらく自分たちだけだということは確かだ。
「同じく人々の未来を守る俺たちとしては、この状況を見過ごせないよな!
けど俺にできるのは予知した情報を教えることだけだ。後のことは、皆に任せたぜ!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.『怪人』を倒して『青年』を生存させること
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
今出てきているキーワードは『デジタル陰陽』『インフェニットエイト』『怪人』です。別にこのワードに心当たりが無い方でもバリバリお楽しみ頂ける作りになっております。
●シチュエーション
タワーマンションがたつような整った町の一角。
歩道橋そばの二車線道路が舞台となります。
悪しき古妖『怪人』を倒した青年は、同種と思われる『怪人』に囲まれピンチに陥っています。
そこへ駆けつけ、『怪人』を倒して青年を救うことが今回の目標となっております。
●エネミー
・『怪人』
悪い古妖。青年の言葉を借りるなら「悪しき心に古妖がとりつき、『怪人』となった」ものです。
倒すと、とりつかれた人が無傷の状態で残る仕組みになっているようです。
強さ的にはランク1~2妖程度。
四体現われていて、ソッコーでカタをつけるならチームを分けてそれぞれ同時に相手するのがよいでしょう。
確認できている個体とその情報は以下の通りです。
・ボウソウバイク
大型バイクが融合したような怪人です。自らをバイクのように走らせ、体当たり(物近単貫2)で攻撃してきます。
・フリカザシナイフ
折りたたみ式のナイフを全身からはやした怪人です。ナイフを次々と投げつけたり(物遠列【出血】)、無数の小さなナイフを合体させた大ナイフで攻撃してきたりします。
・ミエハリブランド
全身を宝石やブランドバッグなどで覆った怪人です。毒をもった拡散光線(特遠列【毒】)を
・ヘイトスピーカー
全身がパソコンやスマートホンになった怪人です。人を怒らせたり嫌な気持ちにさせる文章を電波に変えて飛ばしてきます(特遠列【怒り】ゼロダメージ)。特に個人に粘着して電波をねじ込んでくると厄介です(特近単【怒り】大ダメージ)。
●味方NPC
・『青年』
土行暦の覚者です。
皆さんと一緒に戦っても大丈夫なくらいの戦闘力があります。
ので、後ろに下がらせたり引っ込ませたりする必要はありません。
いい人っぽい雰囲気もあるので、積極的に協力していきましょう。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2017年06月17日
2017年06月17日
■メイン参加者 6人■

●カクセイライダーインヤン第三十五話 新たな仲間、ファイヴトゥルーサー!
「ぐああっ……!」
火花を散らして吹き飛ぶ青年。地面をごろごろと転がり、身体を覆っていた銀色のエネルギーアーマーが解除された。頬を流れる血もそのままに、手を突いて身体を起こそうとする……も、彼の背をヘイトスピーカーが踏みつけた。
「ムダムダムダ! オマエは、ナニをヤッテモ! ムダ!」
「そんなことは……」
フリカザシナイフがゆっくりと歩み寄り、ナイフを振り下ろす。
青年の心までもが折られようとした、その時。
どこかから飛来した物体がフリカザシナイフの腕を直撃。
エモノを取り落としてよろめくフリカザシナイフ。
「オ、オレのナイフが……! なんだ!?」
腕に刺さっていたのはなんと金属製の注射器だった。
何者かの乱入に辺りを見回そうとするヘイトスピーカー。そのボディにヒトガタの護符が張り付き、火花を散らして爆発した。
「ギャアッ!?」
思わず吹き飛ばされるヘイトスピーカー。
さらには水と雷が荒れ狂い、ボウソウバイクやミエハリブランドたちまでも吹き飛ばされる。
どこからともなく高速で飛行してきた二人の女性が、青年を抱え上げて歩道橋の上へと落とした。
「助かった……君たちは一体!?」
振り向く青年に、『ニュクスの羽風』如月・彩吹(CL2001525)はこっくりと頷いた。
「やっぱりよく似てるね、翔。親戚?」
「ちっ、ちげーって! ……ちがうよな?」
『デジタル陰陽師』成瀬 翔(CL2000063)に問いかけられて、青年はコクコクと首を縦に振った。
そして彩吹と翔は、歩道橋の手すりに飛び乗って怪人たちを見下ろした。
「とりあえず聞いといてくれ。オレらの見せ場、だからな」
翔はそう言って、ベルトにつけたシザーバッグからタブレットPCを取り出した。
いま、運命が交わろうとしている。
デジタル陰陽使いの青年と、ファイヴという正義の組織。
その二つが、いま――。
●ファイヴレポート第XX29号、デジタル陰陽少年との出会い
「とりあえず聞いといてくれ。オレらの見せ場、だからな!」
翔はカクセイパッドを取り出すと、起動した画面に陰陽マークを描き込んだ。
「いくぞ皆!」
同時に、計六人の戦士たちが一斉に構える。
「「覚醒!」」
光の中で姿を変えたのは見目麗しい少女たち。その中心で、陰陽師の羽織りを纏った翔が印を結んだ。
「天翔る赤き流星――ファイヴレッド!」
リュックサックからポスター巻きした護符を二本まとめて引き抜き、くるくる回してから交差して構える 賀茂 たまき(CL2000994)。
「希望を繋ぐ薄紅の環――ファイヴピンク!」
三日月型のスリングショットが接続されたステッキを正面に翳し、翼を大きく広げてみせる『導きの鳥』麻弓 紡(CL2000623)。
「絆を紡ぐ光の糸――ファイヴイエロー!」
槍をぐるぐると回し、半身に構えてみせる彩吹。
「強きを挫く順爆のいぶき――ファイヴホワイト!」
そんな四人を見て、『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)と『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)はぎょっとして顔を寄せ合った。
「どうしよう。ああいう口上考えてないよ」
「色も分けるなんて。どうする? どっちもブルーっぽいけど……」
「グリーン、私グリーン行くから」
短い時間で打ち合わせを済ませると、渚は腕章をピッと引っ張るポーズを、理央は一枚きりの護符を指で挟んで眼前に翳すポーズをとった。
「ファイヴブルー!」
「ファイヴグリーン!」
「公認戦隊(仮)――」
「「ファイヴ!!」」
名乗ると同時に爆発が起こり、青年が思わず身を屈めた。
あと公認されるかどうかわかんない段階からとりま公認を名乗っとく暴挙にも出ていた。
「君たちがファイヴ……!?」
爆発にダメージがないことを知って一安心する青年に、理央があらためて振り返った。
「はじめましてだけど、人々を守りたい気持ちはキミと一緒だよ。ね!」
「……わかった、一緒に戦おう。ファイヴ!」
頷いて立ち上がる青年。スマートホンに五芒星を描くと、再び銀のアーマーを纏った。
「ナンニンフエテも、イッショ! ゴミ! クズ!」
人を傷付けるようなことを平気でわめくヘイトスピーカー!
音波が彼らを襲うが、渚たちは歩道橋の手すりから同時に飛ぶことでそれを回避した。
「ヘイトスピーカーの声に怒りを誘発する効果があるのは分かってた。予め精神を落ち着ける薬をみんなに投与してあるんだよ!」
「加えて――!」
理央が護符を放つと、一輪の花となり落ち着く香りで仲間たちを包んだ。
「これでもう、ヘイトスピーカーの煽り文句は恐くないよ」
「カンケイナイ! ジャマ! シネ!」
わめき散らすヘイトスピーカー。
音波を収束させ、個人に粘着するようなことを言い始める。
まるでネット社会に蔓延する、ヘイトを稼いで注目を浴びようとする人々さながらであった。
だが――。
「心が痛みますが、おつきあいをするわけには行きません……!」
たまきは広げた護符に力を込め、一時的に無音状態を作って音波を受け流した。
蛇腹に広げた御朱印帳で地面を鞭のように打てば、伝わったエネルギーによって大地が拳の形に急速隆起。ヘイトスピーカーを殴り飛ばした。
一方。
「カクセイパッド! 来い、心霊刀!」
翔がタブレットPCに剣の形象文字を描くと、画面から半透明なエネルギーソードが飛び出した。
それを握り、飛来するナイフをはねのける。
「ヨソミするな! こっちをミロ!」
ミエハリブランドが立ち塞がり、全身をぎらぎらと光らせて翔に浴びせてくる。
「危ない!」
青年が割り込んでスマートホンを握る。すると半透明な刀身が現われ、スマホを柄とした剣に変わる。飛来する光をエネルギーの斬撃でもってはねのけた。
「……似たような術を使うんだな。んっ?」
翔の持っているカクセイパッドを見て何か気づいたようだが、ミエハリブランドがここぞとばかりにギラギラを浴びせかけてくるせいでそれどころではなかうなった。
「話は後だ。まずはあいつをやっつけるぞ!」
翔は霊刀をミエハリブランドにぶん投げると、雷の形象文字をパッドに描き込んだ。電撃がほとばしる。
そのまた一方。
「ダレも、オレをトメられない! ジャマだジャマだ!」
エンジン音と共に唸ったボウソウバイクが高速で突撃を仕掛けてくる。
着地していた紡と彩吹めがけて頭からぶつかった。
翼を羽ばたかせ、治癒効果をもつミストを展開させる紡。
「いぶちゃん!」
「ん、全然余裕だよ」
彩吹もまた翼を羽ばたかせると、ボウソウバイクの勢いを完全に殺し、相手を停止させてしまった。
更には強烈な膝蹴りで相手の顎を上げさせ、身体ごと縦回転させてソーキックで高く相手を蹴り飛ばした。
「グガガ! ショートツジコだと!?」
ボウソウバイクは歯ぎしりし、空中を泳ぐように彩吹たちへと突撃を再開した。
「ドケドケドケー!」
「えっ」
「地面についてなくてもいいんだあ」
と言った途端、彩吹と紡は同時に撥ね飛ばされた。
●合わせた力は無限大
「アッチヘイケ! サスぞ! サスぞ!」
大量のナイフを生み出して投擲するフリカザシナイフ。
「数打てば当たるなんて考え方、頭悪いよっ!」
渚がメタルケースを開放すると、物理的な要素を無視して大量の金属注射器が飛び出してきた。
それらを器用に複数ずつキャッチしては次々に投擲。
飛来するナイフをカウンターヒールで迎撃していく。
「ええと名前なんだっけ? はりねずみないふ?」
「バカにするな! オレをソンケイしろ! サスぞ!」
ミエハリナイフは大量のナイフをつなぎ合わせて巨大ナイフを形成。
渚も対抗して大量の注射器を溶け合わせて巨大な注射器を形成した。
「オールドスタイルでも負けないんだからね!」
「オレのほうがツヨイ! オソレロ! オレをオソレロ!」
襲いかかってくるフリカザシナイフ――だが、圧倒的なまでに渚の方が上手だった。相手のナイフを一振りで崩壊させると、返す刀ならぬ返す注射器でフリカザシナイフを突き刺し、内側から崩壊させた。
「いっちょうあがり、っと!」
注射器を手放す渚。注射器がひとりでにメタルケースに収まるのを確認してぱしぱしと手を払った。
「オマエはムノウ! ダメ! ダメ!」
傷つくような言葉をピンポイントで浴びせてくるヘイトスピーカー。
たまきは左右へジグザグに飛んでヘイト攻撃を回避すると、大量のヒトガタを展開して防御。しかし防御したそばからヒトガタが破壊され、たまきは吹き飛ばされた。
「ファイヴピンク、大丈夫か!」
そばに駆け寄ってくる青年。
彼に引っ張り起こされると、たまきはヘイトスピーカーへと向き直った。
相手は凶悪なヘイトを吐きつけるつもりのようだ。
「力を合わせよう! 琴富士の術は使えるか!」
「はい……!」
「行くぞ――土行ノ弐、琴富士!」
青年はスマホに向けて音声入力。全身を鋼のように硬くする。
たまきも大きな封筒をリュックサックから引っ張り出すと、中から大量の御神籤を放った。まるで鎧のようにたまきの全身に張り付き、鋼のように硬くなる。
ヘイトをつばを吐くかのように吹き付けるヘイトスピーカー。だがそれを正面から突き破り、たまきと青年はダブルパンチでぶち抜いた。
二つの穴をあけられ、爆発四散するヘイトスピーカー。
鋼鉄化を解除し、ぎゅっと握手を交わすたまきと青年。
「うおおっ、まぶしすぎんだろ! そんなにブランドもんばっかつけたらかえってダサいぞ!」
「ミロ! ミロ! アタシをミロ! アタシはオマエよりエライんだ!」
毒の籠もった光線をびかびかと浴びせてくるミエハリブランド。
電撃を放って対抗する翔だが、あまりの光線に気圧されていた。
「待たせたな、ファイヴレッド! これを使え!」
投げられたスマートホンをキャッチして、翔はハッと振り返った。
青年が自分の武器を預けてきたのだ。
翔はニヤリと笑って自分のカクセイパッドを投げ渡した。
お互いの武器を交換し、横並びになる二人。
ミエハリブランドは自分のエネルギーを大きく溜め、爆発させようとしている。
「我流零式、雷⿓の舞!」
「無頼漢――ハッ!」
翔が空に翳したスマホから雷の竜が飛び上がり、共に高くジャンプした青年と合わさった。
青年の流星キックと翔の電撃竜が爆発寸前のミエハリブランドに直撃。
「エライ、エライ、ワタシのほうが……ギャアアアア!」
激しい爆発を起こし、ミエハリブランドは砕け散った。
爆発を背に、翔と青年はお互いのスマホとパッドを返し合って小さく頷き合った。
「合体技だ、いいなあ」
たまきや翔を横目に見ていた紡は、よそ見しながらだというのにボウソウバイクをしのいでいた。
具体的には突っ込んできた相手を風圧で自分たちから反らしていくのだ。
「いぶちゃん、ボクらもやろっか」
「合体技? いいよ」
彩吹はそう言うと、槍をボウソウバイクめがけて投擲した。
「オレはダレにも――ギャアッ!?」
正面から槍が突き刺さったせいで、ボウソウバイクは思わず急停止。
刺さった槍を引き抜こうとじたばたともがいた。
むろん、それは彩吹の作った絶好の隙である。
「解体させてもらうよ」
にっこり笑うと、彩吹は高く跳躍。いや、飛翔。
紡と空で並ぶと、二人それぞれの手のひらに空圧の玉を生み出した。それらをハイタッチでもするように合成させ、紡のスリングショットにひっかける。
「よーくねらって――いまっ!」
発射された空圧玉は陰陽マークのように混ざり合い、やっと槍を引き抜いたボウソウバイクへと直撃。胴体を貫いて爆発させた。
「ま、マダダ……オレは、シバラレナイんだ……!」
よろよろとしながらも、胸のエンジンらしきものを引き抜いて暴走刺せ始めるボウソウバイク。
「まずい――!」
青年に焦りの色が浮かんだ。
「奴ら『怪人』は人々の悪しき心から生まれた古妖! 人が追い詰められるとより悪質な形で発狂することがあるように、怪人も発狂モードに陥ることがある! 気をつけるんだ!」
「だったらボクの出番かな」
まだ見せ場作ってないし。
そう言って、理央は護符を氷の槍に代えて放った。
直撃を受けるも、それをへし折る発狂ボウソウバイク。
「一発で倒れないくらいにはタフみたいだね……」
なら何発でも、と構えた理央に、青年が不思議な護符を投げてよこした。
大きめのブックマーカーのような、頑丈にコーティングされた護符だ。
一見通常の護符だが、裏には五つのARコードが刻まれている。
「これは……」
「それを使うんだ。君ほど柔軟な陰陽師なら使いこなせる筈!」
理央は頷き、護符を指で挟んで翳した。
赤いARコードが発光。護符は巨大な炎の朱雀となり、発狂ボウソウバイクへと突撃、爆発四散させた。
元の状態に戻った護符は、回転しながら理央の手へと戻った。
●インフィニットエイトとアンリミテッドエイト
「ありがとう! 君たちのおかげで助かったよ! 怪我はないか?」
握手を求める青年に、彩吹は強く応えた。
「なんてことないよ。そっちも怪我は無い?」
「頑丈さには自信がある!」
ニッと笑う青年。
ふと振り向けば、怪人にとりつかれていた人々は『ここはどこだ?』と言いながら起き上がっていた。
「あの人たち、なんだかスッキリした顔してるね。ストレスを発散した後みたい」
顔色を観察していた渚に、青年は頷いた。
「そうなんだ。怪人はもともと人々のストレスを取り去っていく良い古妖。しかし悪しき魂に触れて人々の悪感情を暴走させる古妖になってしまったんだ」
たまきはいくつかの出来事を思い返してみた。
「怪人さん……もしかして、それは残虐大帝さんや残酷大将軍さんのような存在なのでしょうか」
「その通りだ! やっぱり知っていたんだな!」
「なあなあ、もしかしてカクセイジャーと知り合いなのか?」
翔の質問に、青年は爽やかに笑った。
「一度だけ、一緒に戦ったことがあるんだ。インサンクイーンという怪人との戦いで協力してな」
「そっか。じゃあこのカクセイパッドって……」
「ああ。俺の陰陽エネルギーとカクセイジャーの友情エネルギーが合体したアイテムだ。それを使いこなせるというだけで、信頼するに足るというものだ」
「うんうん。翔はやるときはやる子だもんねー」
腕組みしてうんうん頷く紡。
理央も、青年から借りた『三次元陰陽符(エーアールインヤンカード)』を返して言った。
「それにしても……キミの使う陰陽術は、ボクの使うものと根本的には一緒なんだね。現代の技術を取り入れた古式陰陽術って感じで。他にも使い手はいるの?」
「……七人の仲間がいるんだが、敵につかまってしまっているんだ」
青年の表情に、紡や理央たちは瞳で応えた。
正義を成す熱い瞳。
真実を追う強い瞳。
青年はそれを受けて、改めて向き直った。
「敵の名はアンリミテッドエイト。邪悪な陰陽術を使う八人組だ。彼らを倒し、仲間を救うのを手伝ってくれ」
「勿論だ!」
改めて握手を交わし、青年は言った。
「俺の名前は本郷 大地! よろしく頼む!」
「ぐああっ……!」
火花を散らして吹き飛ぶ青年。地面をごろごろと転がり、身体を覆っていた銀色のエネルギーアーマーが解除された。頬を流れる血もそのままに、手を突いて身体を起こそうとする……も、彼の背をヘイトスピーカーが踏みつけた。
「ムダムダムダ! オマエは、ナニをヤッテモ! ムダ!」
「そんなことは……」
フリカザシナイフがゆっくりと歩み寄り、ナイフを振り下ろす。
青年の心までもが折られようとした、その時。
どこかから飛来した物体がフリカザシナイフの腕を直撃。
エモノを取り落としてよろめくフリカザシナイフ。
「オ、オレのナイフが……! なんだ!?」
腕に刺さっていたのはなんと金属製の注射器だった。
何者かの乱入に辺りを見回そうとするヘイトスピーカー。そのボディにヒトガタの護符が張り付き、火花を散らして爆発した。
「ギャアッ!?」
思わず吹き飛ばされるヘイトスピーカー。
さらには水と雷が荒れ狂い、ボウソウバイクやミエハリブランドたちまでも吹き飛ばされる。
どこからともなく高速で飛行してきた二人の女性が、青年を抱え上げて歩道橋の上へと落とした。
「助かった……君たちは一体!?」
振り向く青年に、『ニュクスの羽風』如月・彩吹(CL2001525)はこっくりと頷いた。
「やっぱりよく似てるね、翔。親戚?」
「ちっ、ちげーって! ……ちがうよな?」
『デジタル陰陽師』成瀬 翔(CL2000063)に問いかけられて、青年はコクコクと首を縦に振った。
そして彩吹と翔は、歩道橋の手すりに飛び乗って怪人たちを見下ろした。
「とりあえず聞いといてくれ。オレらの見せ場、だからな」
翔はそう言って、ベルトにつけたシザーバッグからタブレットPCを取り出した。
いま、運命が交わろうとしている。
デジタル陰陽使いの青年と、ファイヴという正義の組織。
その二つが、いま――。
●ファイヴレポート第XX29号、デジタル陰陽少年との出会い
「とりあえず聞いといてくれ。オレらの見せ場、だからな!」
翔はカクセイパッドを取り出すと、起動した画面に陰陽マークを描き込んだ。
「いくぞ皆!」
同時に、計六人の戦士たちが一斉に構える。
「「覚醒!」」
光の中で姿を変えたのは見目麗しい少女たち。その中心で、陰陽師の羽織りを纏った翔が印を結んだ。
「天翔る赤き流星――ファイヴレッド!」
リュックサックからポスター巻きした護符を二本まとめて引き抜き、くるくる回してから交差して構える 賀茂 たまき(CL2000994)。
「希望を繋ぐ薄紅の環――ファイヴピンク!」
三日月型のスリングショットが接続されたステッキを正面に翳し、翼を大きく広げてみせる『導きの鳥』麻弓 紡(CL2000623)。
「絆を紡ぐ光の糸――ファイヴイエロー!」
槍をぐるぐると回し、半身に構えてみせる彩吹。
「強きを挫く順爆のいぶき――ファイヴホワイト!」
そんな四人を見て、『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)と『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)はぎょっとして顔を寄せ合った。
「どうしよう。ああいう口上考えてないよ」
「色も分けるなんて。どうする? どっちもブルーっぽいけど……」
「グリーン、私グリーン行くから」
短い時間で打ち合わせを済ませると、渚は腕章をピッと引っ張るポーズを、理央は一枚きりの護符を指で挟んで眼前に翳すポーズをとった。
「ファイヴブルー!」
「ファイヴグリーン!」
「公認戦隊(仮)――」
「「ファイヴ!!」」
名乗ると同時に爆発が起こり、青年が思わず身を屈めた。
あと公認されるかどうかわかんない段階からとりま公認を名乗っとく暴挙にも出ていた。
「君たちがファイヴ……!?」
爆発にダメージがないことを知って一安心する青年に、理央があらためて振り返った。
「はじめましてだけど、人々を守りたい気持ちはキミと一緒だよ。ね!」
「……わかった、一緒に戦おう。ファイヴ!」
頷いて立ち上がる青年。スマートホンに五芒星を描くと、再び銀のアーマーを纏った。
「ナンニンフエテも、イッショ! ゴミ! クズ!」
人を傷付けるようなことを平気でわめくヘイトスピーカー!
音波が彼らを襲うが、渚たちは歩道橋の手すりから同時に飛ぶことでそれを回避した。
「ヘイトスピーカーの声に怒りを誘発する効果があるのは分かってた。予め精神を落ち着ける薬をみんなに投与してあるんだよ!」
「加えて――!」
理央が護符を放つと、一輪の花となり落ち着く香りで仲間たちを包んだ。
「これでもう、ヘイトスピーカーの煽り文句は恐くないよ」
「カンケイナイ! ジャマ! シネ!」
わめき散らすヘイトスピーカー。
音波を収束させ、個人に粘着するようなことを言い始める。
まるでネット社会に蔓延する、ヘイトを稼いで注目を浴びようとする人々さながらであった。
だが――。
「心が痛みますが、おつきあいをするわけには行きません……!」
たまきは広げた護符に力を込め、一時的に無音状態を作って音波を受け流した。
蛇腹に広げた御朱印帳で地面を鞭のように打てば、伝わったエネルギーによって大地が拳の形に急速隆起。ヘイトスピーカーを殴り飛ばした。
一方。
「カクセイパッド! 来い、心霊刀!」
翔がタブレットPCに剣の形象文字を描くと、画面から半透明なエネルギーソードが飛び出した。
それを握り、飛来するナイフをはねのける。
「ヨソミするな! こっちをミロ!」
ミエハリブランドが立ち塞がり、全身をぎらぎらと光らせて翔に浴びせてくる。
「危ない!」
青年が割り込んでスマートホンを握る。すると半透明な刀身が現われ、スマホを柄とした剣に変わる。飛来する光をエネルギーの斬撃でもってはねのけた。
「……似たような術を使うんだな。んっ?」
翔の持っているカクセイパッドを見て何か気づいたようだが、ミエハリブランドがここぞとばかりにギラギラを浴びせかけてくるせいでそれどころではなかうなった。
「話は後だ。まずはあいつをやっつけるぞ!」
翔は霊刀をミエハリブランドにぶん投げると、雷の形象文字をパッドに描き込んだ。電撃がほとばしる。
そのまた一方。
「ダレも、オレをトメられない! ジャマだジャマだ!」
エンジン音と共に唸ったボウソウバイクが高速で突撃を仕掛けてくる。
着地していた紡と彩吹めがけて頭からぶつかった。
翼を羽ばたかせ、治癒効果をもつミストを展開させる紡。
「いぶちゃん!」
「ん、全然余裕だよ」
彩吹もまた翼を羽ばたかせると、ボウソウバイクの勢いを完全に殺し、相手を停止させてしまった。
更には強烈な膝蹴りで相手の顎を上げさせ、身体ごと縦回転させてソーキックで高く相手を蹴り飛ばした。
「グガガ! ショートツジコだと!?」
ボウソウバイクは歯ぎしりし、空中を泳ぐように彩吹たちへと突撃を再開した。
「ドケドケドケー!」
「えっ」
「地面についてなくてもいいんだあ」
と言った途端、彩吹と紡は同時に撥ね飛ばされた。
●合わせた力は無限大
「アッチヘイケ! サスぞ! サスぞ!」
大量のナイフを生み出して投擲するフリカザシナイフ。
「数打てば当たるなんて考え方、頭悪いよっ!」
渚がメタルケースを開放すると、物理的な要素を無視して大量の金属注射器が飛び出してきた。
それらを器用に複数ずつキャッチしては次々に投擲。
飛来するナイフをカウンターヒールで迎撃していく。
「ええと名前なんだっけ? はりねずみないふ?」
「バカにするな! オレをソンケイしろ! サスぞ!」
ミエハリナイフは大量のナイフをつなぎ合わせて巨大ナイフを形成。
渚も対抗して大量の注射器を溶け合わせて巨大な注射器を形成した。
「オールドスタイルでも負けないんだからね!」
「オレのほうがツヨイ! オソレロ! オレをオソレロ!」
襲いかかってくるフリカザシナイフ――だが、圧倒的なまでに渚の方が上手だった。相手のナイフを一振りで崩壊させると、返す刀ならぬ返す注射器でフリカザシナイフを突き刺し、内側から崩壊させた。
「いっちょうあがり、っと!」
注射器を手放す渚。注射器がひとりでにメタルケースに収まるのを確認してぱしぱしと手を払った。
「オマエはムノウ! ダメ! ダメ!」
傷つくような言葉をピンポイントで浴びせてくるヘイトスピーカー。
たまきは左右へジグザグに飛んでヘイト攻撃を回避すると、大量のヒトガタを展開して防御。しかし防御したそばからヒトガタが破壊され、たまきは吹き飛ばされた。
「ファイヴピンク、大丈夫か!」
そばに駆け寄ってくる青年。
彼に引っ張り起こされると、たまきはヘイトスピーカーへと向き直った。
相手は凶悪なヘイトを吐きつけるつもりのようだ。
「力を合わせよう! 琴富士の術は使えるか!」
「はい……!」
「行くぞ――土行ノ弐、琴富士!」
青年はスマホに向けて音声入力。全身を鋼のように硬くする。
たまきも大きな封筒をリュックサックから引っ張り出すと、中から大量の御神籤を放った。まるで鎧のようにたまきの全身に張り付き、鋼のように硬くなる。
ヘイトをつばを吐くかのように吹き付けるヘイトスピーカー。だがそれを正面から突き破り、たまきと青年はダブルパンチでぶち抜いた。
二つの穴をあけられ、爆発四散するヘイトスピーカー。
鋼鉄化を解除し、ぎゅっと握手を交わすたまきと青年。
「うおおっ、まぶしすぎんだろ! そんなにブランドもんばっかつけたらかえってダサいぞ!」
「ミロ! ミロ! アタシをミロ! アタシはオマエよりエライんだ!」
毒の籠もった光線をびかびかと浴びせてくるミエハリブランド。
電撃を放って対抗する翔だが、あまりの光線に気圧されていた。
「待たせたな、ファイヴレッド! これを使え!」
投げられたスマートホンをキャッチして、翔はハッと振り返った。
青年が自分の武器を預けてきたのだ。
翔はニヤリと笑って自分のカクセイパッドを投げ渡した。
お互いの武器を交換し、横並びになる二人。
ミエハリブランドは自分のエネルギーを大きく溜め、爆発させようとしている。
「我流零式、雷⿓の舞!」
「無頼漢――ハッ!」
翔が空に翳したスマホから雷の竜が飛び上がり、共に高くジャンプした青年と合わさった。
青年の流星キックと翔の電撃竜が爆発寸前のミエハリブランドに直撃。
「エライ、エライ、ワタシのほうが……ギャアアアア!」
激しい爆発を起こし、ミエハリブランドは砕け散った。
爆発を背に、翔と青年はお互いのスマホとパッドを返し合って小さく頷き合った。
「合体技だ、いいなあ」
たまきや翔を横目に見ていた紡は、よそ見しながらだというのにボウソウバイクをしのいでいた。
具体的には突っ込んできた相手を風圧で自分たちから反らしていくのだ。
「いぶちゃん、ボクらもやろっか」
「合体技? いいよ」
彩吹はそう言うと、槍をボウソウバイクめがけて投擲した。
「オレはダレにも――ギャアッ!?」
正面から槍が突き刺さったせいで、ボウソウバイクは思わず急停止。
刺さった槍を引き抜こうとじたばたともがいた。
むろん、それは彩吹の作った絶好の隙である。
「解体させてもらうよ」
にっこり笑うと、彩吹は高く跳躍。いや、飛翔。
紡と空で並ぶと、二人それぞれの手のひらに空圧の玉を生み出した。それらをハイタッチでもするように合成させ、紡のスリングショットにひっかける。
「よーくねらって――いまっ!」
発射された空圧玉は陰陽マークのように混ざり合い、やっと槍を引き抜いたボウソウバイクへと直撃。胴体を貫いて爆発させた。
「ま、マダダ……オレは、シバラレナイんだ……!」
よろよろとしながらも、胸のエンジンらしきものを引き抜いて暴走刺せ始めるボウソウバイク。
「まずい――!」
青年に焦りの色が浮かんだ。
「奴ら『怪人』は人々の悪しき心から生まれた古妖! 人が追い詰められるとより悪質な形で発狂することがあるように、怪人も発狂モードに陥ることがある! 気をつけるんだ!」
「だったらボクの出番かな」
まだ見せ場作ってないし。
そう言って、理央は護符を氷の槍に代えて放った。
直撃を受けるも、それをへし折る発狂ボウソウバイク。
「一発で倒れないくらいにはタフみたいだね……」
なら何発でも、と構えた理央に、青年が不思議な護符を投げてよこした。
大きめのブックマーカーのような、頑丈にコーティングされた護符だ。
一見通常の護符だが、裏には五つのARコードが刻まれている。
「これは……」
「それを使うんだ。君ほど柔軟な陰陽師なら使いこなせる筈!」
理央は頷き、護符を指で挟んで翳した。
赤いARコードが発光。護符は巨大な炎の朱雀となり、発狂ボウソウバイクへと突撃、爆発四散させた。
元の状態に戻った護符は、回転しながら理央の手へと戻った。
●インフィニットエイトとアンリミテッドエイト
「ありがとう! 君たちのおかげで助かったよ! 怪我はないか?」
握手を求める青年に、彩吹は強く応えた。
「なんてことないよ。そっちも怪我は無い?」
「頑丈さには自信がある!」
ニッと笑う青年。
ふと振り向けば、怪人にとりつかれていた人々は『ここはどこだ?』と言いながら起き上がっていた。
「あの人たち、なんだかスッキリした顔してるね。ストレスを発散した後みたい」
顔色を観察していた渚に、青年は頷いた。
「そうなんだ。怪人はもともと人々のストレスを取り去っていく良い古妖。しかし悪しき魂に触れて人々の悪感情を暴走させる古妖になってしまったんだ」
たまきはいくつかの出来事を思い返してみた。
「怪人さん……もしかして、それは残虐大帝さんや残酷大将軍さんのような存在なのでしょうか」
「その通りだ! やっぱり知っていたんだな!」
「なあなあ、もしかしてカクセイジャーと知り合いなのか?」
翔の質問に、青年は爽やかに笑った。
「一度だけ、一緒に戦ったことがあるんだ。インサンクイーンという怪人との戦いで協力してな」
「そっか。じゃあこのカクセイパッドって……」
「ああ。俺の陰陽エネルギーとカクセイジャーの友情エネルギーが合体したアイテムだ。それを使いこなせるというだけで、信頼するに足るというものだ」
「うんうん。翔はやるときはやる子だもんねー」
腕組みしてうんうん頷く紡。
理央も、青年から借りた『三次元陰陽符(エーアールインヤンカード)』を返して言った。
「それにしても……キミの使う陰陽術は、ボクの使うものと根本的には一緒なんだね。現代の技術を取り入れた古式陰陽術って感じで。他にも使い手はいるの?」
「……七人の仲間がいるんだが、敵につかまってしまっているんだ」
青年の表情に、紡や理央たちは瞳で応えた。
正義を成す熱い瞳。
真実を追う強い瞳。
青年はそれを受けて、改めて向き直った。
「敵の名はアンリミテッドエイト。邪悪な陰陽術を使う八人組だ。彼らを倒し、仲間を救うのを手伝ってくれ」
「勿論だ!」
改めて握手を交わし、青年は言った。
「俺の名前は本郷 大地! よろしく頼む!」
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
