勾玉と歪みねじれた祈雨の巫女
●
まだ朝も早い山中の静謐な洞窟に、少女は1人いた。
洞窟の中に湧く清水の中に足を踏み入れ、古そうな木桶を手に取った。。
昼間になれば日も強く、暑くなってくる季節ではあるが、明け方はまだ冷え込む。にもかかわらず、少女は白衣(しらぎぬ)姿で、水で己の身を清めた。
厳かな洞窟の中に、ぱしゃりぱしゃりと水の音だけが響き渡る。
そして、少女はすっと木桶を元の場所に戻し、息を吐いた。
「うー、冷たいよー」
水垢離の最中は我慢していたが、さすがに集中力も限界だ。神聖な雰囲気はどこへやら。年相応の表情を見せて、慌てて水辺に出ていく。
少女の名は朝倉楓。麓の神社の家に生まれた娘だ。実は覚者でもある。最近、祖母の言いつけで、毎朝水垢離を行うように言われたのだ。始めたのは諸事情あって母親にお赤飯を炊いてもらった翌日。こんなことになるとは思いもよらなかった。
「もー、昔からのしきたりだか何だか知らないけど、うら若い娘のするこっちゃないよね。電波も自由に空を飛び交う時代ですよ?」
誰にともなく文句を言う楓。始めるのが冬でなかったことに関しては、本気で感謝している。もっとも、何のかんの言いながら、祖母の言いつけを守る辺り、根は真面目なのだ。
こつり
「え? なに? 誰かいるの?」
慌てて身構える楓。
奥にはご神体が仕舞われているだけで、人がいるはずはない。山に妖が出ると聞いたがそれだろうか。慌てて手に源素の力を集める。と言っても、せいぜいがちょっとましな護身術レベルのもの。漫画に出てくる覚者や最近うわさに聞いたFIVEには及びもするまい。
そんなものでも無いよりはいい。
いつでも攻撃できる準備をして、楓は恐る恐る様子を伺おうとする。しかし、その判断は下策だった。
「きゃっ!?」
楓に向かって、光が飛んでくる。
彼女に襲い掛かったのは、形ある生き物ではない。純粋な『力』だった。『力』は少女の意志を意にも介さず、その小さな体を凌辱するように中に広がっていく。
そして、1つの『破綻』が起きた。
●
「はーろろん♪ みんな、今日は集まってくれてありがとー!」
集まった覚者達に元気に挨拶をするのは、『イエロー系女子』大岩・麦(nCL2000116)。そして、全員そろったことを確認すると、彼女は発生した事件の説明を始めた。
「うん、覚者の女の子が破綻者になる夢を見たの。みんなの力を貸して!」
麦が見たのは、とある神社の家に生まれた少女が、破綻者になってしまうというものだった。その神社では勾玉がご神体として崇められていた。それを紛れ込んだ古妖がうっかり暴走させてしまったのだという。
「その女の子、楓ちゃんって言うんだけど、破綻者としての深度は2。まだ十分助けることは出来るの。だから、お願い」
破綻者になってしまった少女は、朝倉楓という中学生に上がったばかりの少女だ。ちょっと都会に憧れる、普通の女の子である。覚者とは言え、その力と共に生活していただけで、家族も大いに心配しているそうだ。放っておくわけにもいかない。
麦の言う通り、無力化したうえで適切な処置を行えば、救出は可能だ。
なお、発端となった古妖も現場におり、勾玉の力に操られて暴れているのだという。こちらも無力化すれば、元通りになるだろう。いたずらがことの発端とのことだ。どうするかは覚者の判断にゆだねられている。
説明を終えると、麦は覚者達を元気良く送り出す。
「無事に帰って来てね? みんなのこと信じているから!」
まだ朝も早い山中の静謐な洞窟に、少女は1人いた。
洞窟の中に湧く清水の中に足を踏み入れ、古そうな木桶を手に取った。。
昼間になれば日も強く、暑くなってくる季節ではあるが、明け方はまだ冷え込む。にもかかわらず、少女は白衣(しらぎぬ)姿で、水で己の身を清めた。
厳かな洞窟の中に、ぱしゃりぱしゃりと水の音だけが響き渡る。
そして、少女はすっと木桶を元の場所に戻し、息を吐いた。
「うー、冷たいよー」
水垢離の最中は我慢していたが、さすがに集中力も限界だ。神聖な雰囲気はどこへやら。年相応の表情を見せて、慌てて水辺に出ていく。
少女の名は朝倉楓。麓の神社の家に生まれた娘だ。実は覚者でもある。最近、祖母の言いつけで、毎朝水垢離を行うように言われたのだ。始めたのは諸事情あって母親にお赤飯を炊いてもらった翌日。こんなことになるとは思いもよらなかった。
「もー、昔からのしきたりだか何だか知らないけど、うら若い娘のするこっちゃないよね。電波も自由に空を飛び交う時代ですよ?」
誰にともなく文句を言う楓。始めるのが冬でなかったことに関しては、本気で感謝している。もっとも、何のかんの言いながら、祖母の言いつけを守る辺り、根は真面目なのだ。
こつり
「え? なに? 誰かいるの?」
慌てて身構える楓。
奥にはご神体が仕舞われているだけで、人がいるはずはない。山に妖が出ると聞いたがそれだろうか。慌てて手に源素の力を集める。と言っても、せいぜいがちょっとましな護身術レベルのもの。漫画に出てくる覚者や最近うわさに聞いたFIVEには及びもするまい。
そんなものでも無いよりはいい。
いつでも攻撃できる準備をして、楓は恐る恐る様子を伺おうとする。しかし、その判断は下策だった。
「きゃっ!?」
楓に向かって、光が飛んでくる。
彼女に襲い掛かったのは、形ある生き物ではない。純粋な『力』だった。『力』は少女の意志を意にも介さず、その小さな体を凌辱するように中に広がっていく。
そして、1つの『破綻』が起きた。
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「はーろろん♪ みんな、今日は集まってくれてありがとー!」
集まった覚者達に元気に挨拶をするのは、『イエロー系女子』大岩・麦(nCL2000116)。そして、全員そろったことを確認すると、彼女は発生した事件の説明を始めた。
「うん、覚者の女の子が破綻者になる夢を見たの。みんなの力を貸して!」
麦が見たのは、とある神社の家に生まれた少女が、破綻者になってしまうというものだった。その神社では勾玉がご神体として崇められていた。それを紛れ込んだ古妖がうっかり暴走させてしまったのだという。
「その女の子、楓ちゃんって言うんだけど、破綻者としての深度は2。まだ十分助けることは出来るの。だから、お願い」
破綻者になってしまった少女は、朝倉楓という中学生に上がったばかりの少女だ。ちょっと都会に憧れる、普通の女の子である。覚者とは言え、その力と共に生活していただけで、家族も大いに心配しているそうだ。放っておくわけにもいかない。
麦の言う通り、無力化したうえで適切な処置を行えば、救出は可能だ。
なお、発端となった古妖も現場におり、勾玉の力に操られて暴れているのだという。こちらも無力化すれば、元通りになるだろう。いたずらがことの発端とのことだ。どうするかは覚者の判断にゆだねられている。
説明を終えると、麦は覚者達を元気良く送り出す。
「無事に帰って来てね? みんなのこと信じているから!」
■シナリオ詳細
■成功条件
1.朝倉楓の救出
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
たまには伝奇ものっぽく、KSK(けー・えす・けー)です。
今回は破綻者と戦っていただきます。
●戦場
とある山中の洞窟になります。OPに書かれた場所です。
時刻は特にしていなければ、昼になります。
中に明かりはないので準備が必要です。足場などに問題はありません。
●破綻者
・朝倉楓
水行の精霊顕現で破綻者としては深度2。勾玉の力の暴走で一時的に力が向上しています。助けるためには無力化する必要があります。
神社の家系に生まれた、都会に憧れるごくごく普通の女の子。実はFIVEのファンで、古妖狩人のニュースが出たころから知っている。
能力は下記。
1.五織の彩 物近単
2.潤しの雨 特遠味全 HP回復
3.伊邪波 特遠列
●古妖
・カブソ
カワウソのような姿をした古妖。幻を見せていたずらを行うことを好む。今回の元凶。
勾玉の力の影響で暴走しており、楓と一緒に襲い掛かってきます。3体います。
能力は下記。
1.かみつき 物近単 出血
2.幻術 特遠単 錯乱
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2017年06月14日
2017年06月14日
■メイン参加者 8人■
●
薄暗い洞窟の中に光が差す。
現在、入り口は封鎖されており、一般人の立ち入りは禁じられていた。中には力を暴走させた破綻者がいるのだから当然の措置だろう。外には不安そうにしている老年の女性と、1組の夫婦の姿があった。
湿った地面の上を、『花守人』三島・柾(CL2001148)を始めとした覚者達は奥へと進んでいく。この度の破綻者事件の解決を依頼された覚者達だ。
「古妖の悪戯には困ったものだが、俺達でどうにかすれば問題なしだな」
次第に開けた場所が見えてくる。神聖な雰囲気の泉が湧いている。
その時、柾をふらつくような感覚が襲う。程度は大したものではない。軽く頭を小突くようにしてめまいを振り払う。おそらくは古妖のいたずらだ。
「終わったら、古妖には説教しないとな」
柾はクールに戦闘態勢を取る。
相手方もすでに戦う準備は出来ている。いや、破綻者と化してしまった少女は、常時近寄って来るものに反応してくるという方が正しいのだろう。
来るものを阻むように水の壁が現れ、覚者の前に聳え立つ。
破綻者の暴走した力は、総じて覚者のそれより強い。危険、という言い方の方がより正確だろう。
「楓! FIVEが来たぞ!!」
しかし、『デジタル陰陽師』成瀬・翔(CL2000063)は臆さず破綻者に呼び掛ける。
翔としては破綻者の少女は同い年だ。そういう意味で親近感もあるし、ヒーローとして見過ごすわけにはいかない。
すっと印を結ぶと、翔の姿は青年の姿へと変わっていく。
「理想が入っているんじゃないか」とからかわれることもあるが、翔にとっては能力を最大限に発揮できる姿。そして、人を救うために手を伸ばせる姿だ。
「絶対に助けてやるから、待ってろよ! ついでにイタズラ古妖はお仕置きだぜ!」
「いたずらがここまでになるとは、思いもしなかったでしょうね。状況は特殊ですが、救助と言えなくもないのでしょうか」
ほっと息をついた『継承者』シャーロット・クィン・ブラッドバーン(CL2001590)は、己に宿る英霊の力を引き出す。
刀を抜いて目の前で暴れる少女にそっと目をやった。今日の仕事、要は人助け。剣を振ってそれを行えることに、自分の力で生き抜いている実感はある。自分の誇りも損なわずに済む。そういう時代が、良い時代かと聞かれると少し悩むところであるが。
「……ともあれ。今日明日のゴハンのために、なのです。いきますよ!」
答えは生き延びてから考えればよい。
シャーロットは裂帛の気合と共に踏み出した。
その行く手を阻むように古妖が姿を見せる。破綻者同様、勾玉の強力な力に当てられて己を見失っている古妖達だ。
対して『秘心伝心』鈴白・秋人(CL2000565)が破魔弓を弾くと、魔を払う意志が強烈な波動弾となって撃ち出される。
「俺は神職ではないけれど、同じ水行覚者として朝倉さんを救いたい」
破綻者とはすなわち、自らの力に飲まれ己を見失った覚者だ。隔者以上にはっきりとした違いがあり、覚者にしてみると他人事と思えない事態である。それだけに秋人としては、同じ属性の相手と言うことも相俟って身につまされる思いがある。
そして、同じ神職につくものとして破綻者の身を案じる覚者もこの場に多い。
『愛求独眼鬼/パンツハンター』瀬織津・鈴鹿(CL2001285)もそんな1人だ。
「楓お姉さんとは巫女仲間! 巫女仲間の危機を救うのは当然なの!」
鈴鹿は穢れを払う女神「瀬織津」の名を父母から与えられ、日夜神事の練習に励む巫女である。さらに言うなら、古妖「夜叉」と「鬼子母神」の夫婦に拾われ育てられた身だ。この場にいる古妖だって助けたい。
「そしてお友達になるの!」
額に瞳が開眼し、破綻者をキッと睨みつける。
黄泉の力は古妖との繋がりがもたらす力だ。父母の想いが宿った二振りの刀を手に鈴鹿は戦う。
「ともあれ、可愛い後輩の、危機です。可及的速やかに、対処しましょうか」
土行の力を身に纏って、『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)は敵陣へと切り込んでいく。彼女も巫女という役割柄、後輩に当たるものの危機を見過ごせないのだ。
敵がまとまっているところに切りかかるのは相応のリスクがあるが、彼女の動きに恐怖は無い。古い考え方が正しいのなら、土剋水(つちはみずにかつ)。多少の攻撃を気にする必要はない。
「……まとめて、斬る!」
普段はどじでおっちょこちょいな印象を与えるが、戦いになればその様は一変する。
取り巻く古妖相手に軍刀で大立ち回りを始めて見せた。
そして、祇澄に敵が集まったところを見計らって、雷が炸裂する。器用なことに彼女をきれいに避けての一撃だ。さらに柾の拳から放たれた気の弾丸も、容赦なく古妖へと襲い掛かる。
「ごめんね」
軽く古妖達に謝罪の言葉を述べて雷を操るのは『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)だ。発現の証である金色に瞳を輝かせ、黒の妖刀を手に闇を見据える。
元凶であるとはいえ、ここまでの事態になるとは当人らも思っていなかったわけだ。
罪が無いとは言わないが、命を奪うほどのことでもない。相手を行動不能にし、まずはそれからだ。
「朝倉さんはもちろん、カブソ達も正気に戻してあげないとね!」
戦う覚者達を光で照らしながら『ハルモニアの幻想旗衛』守衛野・鈴鳴(CL2000222)は祈る。元の相手の力量はともかく、暴走した力は危険だ。油断できるものではない。そこで仲間を支えるために、癒しの力を振るう。
そんな鈴鳴の心を支えるのは、相対する破綻者自身だ。
(楓さん。私たちの活動を、知ってくれてたらしいですね。どこかで誰かが私たちを見てくれて、必要としてくれて……私は、とても嬉しいです。私たちの活動は無駄じゃないんだって、勇気が貰えます)
もらった勇気を胸に、覚者達は戦う。
それは破綻者を討つためではない。
同じ覚者を救う、そのためだ!
●
古妖の攻撃は覚者を惑わし、与えた傷は破綻者が治療を行う。数こそ少ないものの、相手の耐久力は中々に高い。
その中で、覚者達は丹念に幻術に対応することで戦う。
「汝、荒ぶる存在よ。我が双刀の力を持って祓い清めん!」
鈴鹿の放った浄化物質が、覚者達を惑わす幻術を打ち払う。敵対者には苛烈になりがちな彼女だが、この場には『味方』しかいないため比較的穏やかだ。
むしろ、額の瞳も動員して鋭く観察を行っていた。
(……巫女さんってパンツ履かないって言うけど、本当か確かめたいの!)
怪の因子をフルに使用する鈴鹿。ある意味、真剣だ。
事前調査では、破綻者となった少女がしきたりを嫌がる一因だったらしい。ちなみに、鈴鹿ははいてない。
「もう動いちゃ駄目なの! パンツ履いて無いか確かめられないの!」
あまりに激しい語調に驚いたのか、古妖の1匹の動きが鈍る。そこへ秋人の弓が弾かれ、そのまま倒れる。
「いきますよ!」
畳みかけるようにしてシャーロットの刃が閃く。
横薙ぎ一閃、鋭い一撃が戦場に放たれた。
相手の幻術は厄介だが、対策は取れる。相手の並びを考えると、最悪幻覚を見せられていたとしてもこれで無理くり攻撃を当てることは可能だ。
その最中で、細かく攻撃のリズムを変えることで、狙いを読みづらくさせる。
(味方側が避けられるかどうかは、ワタシのような新参が心配することではないのです)
シャーロットは自分にも他人にも厳しいところがある娘だ。それはこのように、幻覚で味方に攻撃してしまうことを恐れないことにもみられる。
しかし、そんな彼女もこの度の破綻者に対しては慎重な動きを取っている。根っこにあこがれがあるという点が共通しているため、それをつぶすことは許さないのだ。
シャーロットの剣の前に、1匹また1匹と倒れていく古妖。
しかし、これで一息つく暇は覚者達に与えられない。突如として生み出された荒波が叩きつけられる。技の仕組みとしては単純なものだが、破綻者の暴走した力でもらうとそれなりに痛手となる。
「やっぱり、長期化してきたね」
濡れた髪をかき上げ、秋人は冷静に恵み雨を生み出す。
相手が力に飲まれて自分を見失っているのなら、自分を取り戻させれば力を弱める一助になるかもしれない。そうした呼びかけを行わせるため、秋人は周りを支えることに徹する。
(朝倉さんがどうか無事に元に戻れるように……)
願いを込めて弓を引くと、恵みの雨は覚者達に降り注いだ。
体の中に湧きあがる力を感じながら、奏空は言葉を送る。
「朝倉さん! 助けに来たよ! ファイブだよ! 知ってるか分からないけど……探偵見習い工藤だよ!」
送受心の言葉と、声に出しての言葉。
必死で手を伸ばし、破綻者の心へ言葉を届ける。
「絶対助けるから君も気をしっかり持って! 力に飲まれちゃ駄目だよ! 大丈夫! こっちに手を伸ばして!」
今、奏空が用いているのは速度を力に変えて戦う魔技。自身の消耗も激しいものだ。だけど、破綻者となった少女を救えなかったとしたら。その時に出来る傷に比べれば、この程度どうと言うことは無い。
「こんな事になって苦しいよな。お前は何も悪くないのに、助けるにはちょっと痛い思いして貰わないとならねー。でも、必ず助けるから待っててくれよ!」
翔の真っ直ぐな声が響く中で、雷の龍が乱れ舞う。
破綻者の生み出した波のせいで、それはあたかも嵐の中を翔ける龍のようにも見えた。今の覚者達の姿と同じだ。困難は波のように押し寄せ、行く手を阻む。しかし、覚者達も龍も立ち止まることは無い。
「頑張れ、暴走の力に負けるなよ!!」
少年たちの言葉が、力に飲まれた少女の心に届いたのだろうか。わずかに叩きつけられる波の勢いが弱くなる。その隙をついて、祇澄は少女に肉薄する。
「巫女の精神力をもってしても抗えない破綻の力……。それに襲い掛かられた彼女は、とても辛かったことでしょう、怖かったことでしょう。けれど、もう大丈夫ですよ。私たちFiVEが助けに来ましたからね」
優し気な口調で語りかける祇澄。
話を聞く限り、相手は力を持っているだけで普通の少女だ。その上で、戦いの経験を持つ覚者にだって恐ろしい力の暴走を味わったのだ。怖くないはずもない。
だから、先輩として接する。
「さあ、力を抜いて。体の余分なものを吐き出してしまいましょう。後は、祓うのみ!」
祇澄の言葉に応えるように、今まででも最大級の波が覚者達へ襲い来る。
それでも、鈴鳴は戦旗を放さない。
(確かに人を助けるって、そんな簡単なことじゃありません)
こうやって源素絡みの事件解決にやって来たFIVEだって一枚岩の組織ではない。ただ、救いたいというだけで人を救えるほど、世界は優しく出来ていない。
それでも、誰かの支えになりたいという思いを誰だって持っているはずだ。だから、目の前の少女だって、覚者としての力に向かい合っていたはずだ。だから、人々を守るために戦ったFIVEの姿に惹かれたはずだ。
「楓さん。あなたにだってそのチカラはあります。私たちがあなたを縛るものを取り除きますから、どうか飲まれないで!」
最後の一撃を防ぎきって、シャーロットはほうっと息を漏らす。その瞳に油断は無い。
破綻者を救うため、力を尽くしてきたのだ。ここで今さら、不意を打たれるなど剣に誓ってあり得ない。
その時、力を使い果たしたからか破綻者の身体が崩れ落ちる。接近戦中だった柾が倒れる少女を支えようとするが、水行の力を手に集め殴りかかる。
そして、柾はそれを防御もせずに受け止めた。
「お前を助けに来たんだ。だからもう大丈夫だ」
穏やかな声で語りかける柾に、うつろな目をした少女はまだ攻撃を繰り返そうとする。それでも、彼はあくまでも力を用いない。
「暴走した力は今、だいぶ落ち着いたはず。大丈夫、もう怖くはない。攻撃してしまってすまない。それがお前を戻すために必要な事だったが。怖い思いをさせて申し訳ない」
しばらくはもがくようにしていた破綻者だったが、しばらくすると抵抗も静かになって来る。暴れていた力が静まって来たのだろう。
誰かが処置班を呼び立てる。
こうして、勾玉が起こした破綻者の事件は終わりを告げた。
●
「ふふ……これが人を癒やす力です。参考になりましたか?」
処置が終わった身体に癒しの力を使っていた鈴鳴は、目覚めた少女に微笑みを向ける。幸い、処置は無事に終わり、少女も大きなけがが残ることもなく意識を取り戻すことが出来た。
覚者としては十分な成果だろう。
「お前達、勾玉とかこういう神秘系のものは暴走するから不用意に使用しないように。今回の事で痛い目をみたなら、もう気を付けろ」
柾は同じく意識を取り戻した古妖達に説教をしている。もっともこの程度で済んだのはマシな方だったと言える。悪意がなかったとは言え、起きた事故は大きなものだったのだからして。
柾に諭され、鈴鹿に「めっ」とされ、古妖達は素直に謝罪の言葉を述べる。
「妖って言われるものの中にはこうして悪戯をしたり、人を襲ったりする物も居るけど、中にはそうでない古妖も居るから、彼らを憎まないで欲しいかな」
秋人も一緒に頭を下げる。この少女もそうであったように、妖と古妖の区別がついていない人間も多く、軋轢の温床となっている。こうした誤解は減らせる機会があれば減らしていきたいところだ。
そうした大事な話が済んだところで、翔と奏空は気を紛らわせようと話しかける。こう見えても、知名度の高さと言う意味で言うのならFIVEでもトップクラスの覚者だ。それに出会えて、少女も素直にうれしそうだ。
「なあ、FIVE好きって本当か? だったらすげー嬉しいぜ。だからさ、これ終わったら友達になろうぜ! 何だったら五麟に遊びに来てもいいしさ」
年の近い覚者なので、翔も気さくに話している。少女の方も、気安く話すことが出来ているようだ。その中で、FIVEの美青年陰陽師が自分と同い年の少年だったと知って、色んな意味で驚きが隠せない様子もある。
「女の子って体冷やすの良くないって聞くけど、巫女さんって大変だなぁ。そう言えば、お赤飯焚いて貰ったって何かいいことでもあったのかな! 巫女修行始めるからそのお祝い?」
奏空としては相手のことを慮って世間話をしているつもりだったのだが、その話題を振られて少女は赤面してしまう。まぁ、初めて月のものが来た日の話だったわけで。
そこで祇澄がすっと助け舟を出す。
「それと……まだ、朝のお清めの途中のようですね。私と一緒に、お勤めの続きをしませんか? もちろん男子禁制ですよ?」
祇澄の教えもあって、少女も今後は神事についてもより知識を深めることも出来ただろう。皆のフォローは彼女に起きた事件に対して、心の傷を癒すにも十分なものだったと言えるだろう。
お清めには鈴鹿も参加し、目的を果たすことに成功する。
「やっぱり巫女は履いて無い……これが真理」
謎の結論に達して、巫女2人に抱き付く鈴鹿。
たしかに、場の穢れは綺麗に払われたのだろう。でなければ、こんなに平穏に人々が笑いあえるはずはないのだから。
薄暗い洞窟の中に光が差す。
現在、入り口は封鎖されており、一般人の立ち入りは禁じられていた。中には力を暴走させた破綻者がいるのだから当然の措置だろう。外には不安そうにしている老年の女性と、1組の夫婦の姿があった。
湿った地面の上を、『花守人』三島・柾(CL2001148)を始めとした覚者達は奥へと進んでいく。この度の破綻者事件の解決を依頼された覚者達だ。
「古妖の悪戯には困ったものだが、俺達でどうにかすれば問題なしだな」
次第に開けた場所が見えてくる。神聖な雰囲気の泉が湧いている。
その時、柾をふらつくような感覚が襲う。程度は大したものではない。軽く頭を小突くようにしてめまいを振り払う。おそらくは古妖のいたずらだ。
「終わったら、古妖には説教しないとな」
柾はクールに戦闘態勢を取る。
相手方もすでに戦う準備は出来ている。いや、破綻者と化してしまった少女は、常時近寄って来るものに反応してくるという方が正しいのだろう。
来るものを阻むように水の壁が現れ、覚者の前に聳え立つ。
破綻者の暴走した力は、総じて覚者のそれより強い。危険、という言い方の方がより正確だろう。
「楓! FIVEが来たぞ!!」
しかし、『デジタル陰陽師』成瀬・翔(CL2000063)は臆さず破綻者に呼び掛ける。
翔としては破綻者の少女は同い年だ。そういう意味で親近感もあるし、ヒーローとして見過ごすわけにはいかない。
すっと印を結ぶと、翔の姿は青年の姿へと変わっていく。
「理想が入っているんじゃないか」とからかわれることもあるが、翔にとっては能力を最大限に発揮できる姿。そして、人を救うために手を伸ばせる姿だ。
「絶対に助けてやるから、待ってろよ! ついでにイタズラ古妖はお仕置きだぜ!」
「いたずらがここまでになるとは、思いもしなかったでしょうね。状況は特殊ですが、救助と言えなくもないのでしょうか」
ほっと息をついた『継承者』シャーロット・クィン・ブラッドバーン(CL2001590)は、己に宿る英霊の力を引き出す。
刀を抜いて目の前で暴れる少女にそっと目をやった。今日の仕事、要は人助け。剣を振ってそれを行えることに、自分の力で生き抜いている実感はある。自分の誇りも損なわずに済む。そういう時代が、良い時代かと聞かれると少し悩むところであるが。
「……ともあれ。今日明日のゴハンのために、なのです。いきますよ!」
答えは生き延びてから考えればよい。
シャーロットは裂帛の気合と共に踏み出した。
その行く手を阻むように古妖が姿を見せる。破綻者同様、勾玉の強力な力に当てられて己を見失っている古妖達だ。
対して『秘心伝心』鈴白・秋人(CL2000565)が破魔弓を弾くと、魔を払う意志が強烈な波動弾となって撃ち出される。
「俺は神職ではないけれど、同じ水行覚者として朝倉さんを救いたい」
破綻者とはすなわち、自らの力に飲まれ己を見失った覚者だ。隔者以上にはっきりとした違いがあり、覚者にしてみると他人事と思えない事態である。それだけに秋人としては、同じ属性の相手と言うことも相俟って身につまされる思いがある。
そして、同じ神職につくものとして破綻者の身を案じる覚者もこの場に多い。
『愛求独眼鬼/パンツハンター』瀬織津・鈴鹿(CL2001285)もそんな1人だ。
「楓お姉さんとは巫女仲間! 巫女仲間の危機を救うのは当然なの!」
鈴鹿は穢れを払う女神「瀬織津」の名を父母から与えられ、日夜神事の練習に励む巫女である。さらに言うなら、古妖「夜叉」と「鬼子母神」の夫婦に拾われ育てられた身だ。この場にいる古妖だって助けたい。
「そしてお友達になるの!」
額に瞳が開眼し、破綻者をキッと睨みつける。
黄泉の力は古妖との繋がりがもたらす力だ。父母の想いが宿った二振りの刀を手に鈴鹿は戦う。
「ともあれ、可愛い後輩の、危機です。可及的速やかに、対処しましょうか」
土行の力を身に纏って、『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)は敵陣へと切り込んでいく。彼女も巫女という役割柄、後輩に当たるものの危機を見過ごせないのだ。
敵がまとまっているところに切りかかるのは相応のリスクがあるが、彼女の動きに恐怖は無い。古い考え方が正しいのなら、土剋水(つちはみずにかつ)。多少の攻撃を気にする必要はない。
「……まとめて、斬る!」
普段はどじでおっちょこちょいな印象を与えるが、戦いになればその様は一変する。
取り巻く古妖相手に軍刀で大立ち回りを始めて見せた。
そして、祇澄に敵が集まったところを見計らって、雷が炸裂する。器用なことに彼女をきれいに避けての一撃だ。さらに柾の拳から放たれた気の弾丸も、容赦なく古妖へと襲い掛かる。
「ごめんね」
軽く古妖達に謝罪の言葉を述べて雷を操るのは『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)だ。発現の証である金色に瞳を輝かせ、黒の妖刀を手に闇を見据える。
元凶であるとはいえ、ここまでの事態になるとは当人らも思っていなかったわけだ。
罪が無いとは言わないが、命を奪うほどのことでもない。相手を行動不能にし、まずはそれからだ。
「朝倉さんはもちろん、カブソ達も正気に戻してあげないとね!」
戦う覚者達を光で照らしながら『ハルモニアの幻想旗衛』守衛野・鈴鳴(CL2000222)は祈る。元の相手の力量はともかく、暴走した力は危険だ。油断できるものではない。そこで仲間を支えるために、癒しの力を振るう。
そんな鈴鳴の心を支えるのは、相対する破綻者自身だ。
(楓さん。私たちの活動を、知ってくれてたらしいですね。どこかで誰かが私たちを見てくれて、必要としてくれて……私は、とても嬉しいです。私たちの活動は無駄じゃないんだって、勇気が貰えます)
もらった勇気を胸に、覚者達は戦う。
それは破綻者を討つためではない。
同じ覚者を救う、そのためだ!
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古妖の攻撃は覚者を惑わし、与えた傷は破綻者が治療を行う。数こそ少ないものの、相手の耐久力は中々に高い。
その中で、覚者達は丹念に幻術に対応することで戦う。
「汝、荒ぶる存在よ。我が双刀の力を持って祓い清めん!」
鈴鹿の放った浄化物質が、覚者達を惑わす幻術を打ち払う。敵対者には苛烈になりがちな彼女だが、この場には『味方』しかいないため比較的穏やかだ。
むしろ、額の瞳も動員して鋭く観察を行っていた。
(……巫女さんってパンツ履かないって言うけど、本当か確かめたいの!)
怪の因子をフルに使用する鈴鹿。ある意味、真剣だ。
事前調査では、破綻者となった少女がしきたりを嫌がる一因だったらしい。ちなみに、鈴鹿ははいてない。
「もう動いちゃ駄目なの! パンツ履いて無いか確かめられないの!」
あまりに激しい語調に驚いたのか、古妖の1匹の動きが鈍る。そこへ秋人の弓が弾かれ、そのまま倒れる。
「いきますよ!」
畳みかけるようにしてシャーロットの刃が閃く。
横薙ぎ一閃、鋭い一撃が戦場に放たれた。
相手の幻術は厄介だが、対策は取れる。相手の並びを考えると、最悪幻覚を見せられていたとしてもこれで無理くり攻撃を当てることは可能だ。
その最中で、細かく攻撃のリズムを変えることで、狙いを読みづらくさせる。
(味方側が避けられるかどうかは、ワタシのような新参が心配することではないのです)
シャーロットは自分にも他人にも厳しいところがある娘だ。それはこのように、幻覚で味方に攻撃してしまうことを恐れないことにもみられる。
しかし、そんな彼女もこの度の破綻者に対しては慎重な動きを取っている。根っこにあこがれがあるという点が共通しているため、それをつぶすことは許さないのだ。
シャーロットの剣の前に、1匹また1匹と倒れていく古妖。
しかし、これで一息つく暇は覚者達に与えられない。突如として生み出された荒波が叩きつけられる。技の仕組みとしては単純なものだが、破綻者の暴走した力でもらうとそれなりに痛手となる。
「やっぱり、長期化してきたね」
濡れた髪をかき上げ、秋人は冷静に恵み雨を生み出す。
相手が力に飲まれて自分を見失っているのなら、自分を取り戻させれば力を弱める一助になるかもしれない。そうした呼びかけを行わせるため、秋人は周りを支えることに徹する。
(朝倉さんがどうか無事に元に戻れるように……)
願いを込めて弓を引くと、恵みの雨は覚者達に降り注いだ。
体の中に湧きあがる力を感じながら、奏空は言葉を送る。
「朝倉さん! 助けに来たよ! ファイブだよ! 知ってるか分からないけど……探偵見習い工藤だよ!」
送受心の言葉と、声に出しての言葉。
必死で手を伸ばし、破綻者の心へ言葉を届ける。
「絶対助けるから君も気をしっかり持って! 力に飲まれちゃ駄目だよ! 大丈夫! こっちに手を伸ばして!」
今、奏空が用いているのは速度を力に変えて戦う魔技。自身の消耗も激しいものだ。だけど、破綻者となった少女を救えなかったとしたら。その時に出来る傷に比べれば、この程度どうと言うことは無い。
「こんな事になって苦しいよな。お前は何も悪くないのに、助けるにはちょっと痛い思いして貰わないとならねー。でも、必ず助けるから待っててくれよ!」
翔の真っ直ぐな声が響く中で、雷の龍が乱れ舞う。
破綻者の生み出した波のせいで、それはあたかも嵐の中を翔ける龍のようにも見えた。今の覚者達の姿と同じだ。困難は波のように押し寄せ、行く手を阻む。しかし、覚者達も龍も立ち止まることは無い。
「頑張れ、暴走の力に負けるなよ!!」
少年たちの言葉が、力に飲まれた少女の心に届いたのだろうか。わずかに叩きつけられる波の勢いが弱くなる。その隙をついて、祇澄は少女に肉薄する。
「巫女の精神力をもってしても抗えない破綻の力……。それに襲い掛かられた彼女は、とても辛かったことでしょう、怖かったことでしょう。けれど、もう大丈夫ですよ。私たちFiVEが助けに来ましたからね」
優し気な口調で語りかける祇澄。
話を聞く限り、相手は力を持っているだけで普通の少女だ。その上で、戦いの経験を持つ覚者にだって恐ろしい力の暴走を味わったのだ。怖くないはずもない。
だから、先輩として接する。
「さあ、力を抜いて。体の余分なものを吐き出してしまいましょう。後は、祓うのみ!」
祇澄の言葉に応えるように、今まででも最大級の波が覚者達へ襲い来る。
それでも、鈴鳴は戦旗を放さない。
(確かに人を助けるって、そんな簡単なことじゃありません)
こうやって源素絡みの事件解決にやって来たFIVEだって一枚岩の組織ではない。ただ、救いたいというだけで人を救えるほど、世界は優しく出来ていない。
それでも、誰かの支えになりたいという思いを誰だって持っているはずだ。だから、目の前の少女だって、覚者としての力に向かい合っていたはずだ。だから、人々を守るために戦ったFIVEの姿に惹かれたはずだ。
「楓さん。あなたにだってそのチカラはあります。私たちがあなたを縛るものを取り除きますから、どうか飲まれないで!」
最後の一撃を防ぎきって、シャーロットはほうっと息を漏らす。その瞳に油断は無い。
破綻者を救うため、力を尽くしてきたのだ。ここで今さら、不意を打たれるなど剣に誓ってあり得ない。
その時、力を使い果たしたからか破綻者の身体が崩れ落ちる。接近戦中だった柾が倒れる少女を支えようとするが、水行の力を手に集め殴りかかる。
そして、柾はそれを防御もせずに受け止めた。
「お前を助けに来たんだ。だからもう大丈夫だ」
穏やかな声で語りかける柾に、うつろな目をした少女はまだ攻撃を繰り返そうとする。それでも、彼はあくまでも力を用いない。
「暴走した力は今、だいぶ落ち着いたはず。大丈夫、もう怖くはない。攻撃してしまってすまない。それがお前を戻すために必要な事だったが。怖い思いをさせて申し訳ない」
しばらくはもがくようにしていた破綻者だったが、しばらくすると抵抗も静かになって来る。暴れていた力が静まって来たのだろう。
誰かが処置班を呼び立てる。
こうして、勾玉が起こした破綻者の事件は終わりを告げた。
●
「ふふ……これが人を癒やす力です。参考になりましたか?」
処置が終わった身体に癒しの力を使っていた鈴鳴は、目覚めた少女に微笑みを向ける。幸い、処置は無事に終わり、少女も大きなけがが残ることもなく意識を取り戻すことが出来た。
覚者としては十分な成果だろう。
「お前達、勾玉とかこういう神秘系のものは暴走するから不用意に使用しないように。今回の事で痛い目をみたなら、もう気を付けろ」
柾は同じく意識を取り戻した古妖達に説教をしている。もっともこの程度で済んだのはマシな方だったと言える。悪意がなかったとは言え、起きた事故は大きなものだったのだからして。
柾に諭され、鈴鹿に「めっ」とされ、古妖達は素直に謝罪の言葉を述べる。
「妖って言われるものの中にはこうして悪戯をしたり、人を襲ったりする物も居るけど、中にはそうでない古妖も居るから、彼らを憎まないで欲しいかな」
秋人も一緒に頭を下げる。この少女もそうであったように、妖と古妖の区別がついていない人間も多く、軋轢の温床となっている。こうした誤解は減らせる機会があれば減らしていきたいところだ。
そうした大事な話が済んだところで、翔と奏空は気を紛らわせようと話しかける。こう見えても、知名度の高さと言う意味で言うのならFIVEでもトップクラスの覚者だ。それに出会えて、少女も素直にうれしそうだ。
「なあ、FIVE好きって本当か? だったらすげー嬉しいぜ。だからさ、これ終わったら友達になろうぜ! 何だったら五麟に遊びに来てもいいしさ」
年の近い覚者なので、翔も気さくに話している。少女の方も、気安く話すことが出来ているようだ。その中で、FIVEの美青年陰陽師が自分と同い年の少年だったと知って、色んな意味で驚きが隠せない様子もある。
「女の子って体冷やすの良くないって聞くけど、巫女さんって大変だなぁ。そう言えば、お赤飯焚いて貰ったって何かいいことでもあったのかな! 巫女修行始めるからそのお祝い?」
奏空としては相手のことを慮って世間話をしているつもりだったのだが、その話題を振られて少女は赤面してしまう。まぁ、初めて月のものが来た日の話だったわけで。
そこで祇澄がすっと助け舟を出す。
「それと……まだ、朝のお清めの途中のようですね。私と一緒に、お勤めの続きをしませんか? もちろん男子禁制ですよ?」
祇澄の教えもあって、少女も今後は神事についてもより知識を深めることも出来ただろう。皆のフォローは彼女に起きた事件に対して、心の傷を癒すにも十分なものだったと言えるだろう。
お清めには鈴鹿も参加し、目的を果たすことに成功する。
「やっぱり巫女は履いて無い……これが真理」
謎の結論に達して、巫女2人に抱き付く鈴鹿。
たしかに、場の穢れは綺麗に払われたのだろう。でなければ、こんなに平穏に人々が笑いあえるはずはないのだから。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし








