テッペン、今度こそとるんじゃ!
テッペン、今度こそとるんじゃ!


●チーム『Teppen』、再び
 とある路地裏の廃ビル。
 そこには、3~40人ほどのチンピラが集まっていた。
「だいぶ、俺っちらも大きなチームになってきたっすねえ」
 一段高くなった場所で、翼人の男が椅子に座るリーゼントの男へと伺いを立てる。
「貴志……どうしたのさ」
 隣に付き従う酉の獣憑の女。しかし、彼女は男の様子に少しばかり戸惑っている。
 梅雨時ということで、ご自慢のリーゼントが上手く整わないこともあるのだろうが、リーゼント頭をした付喪の男、『Teppen』のリーダー浅野・貴志は苦虫を噛み砕いたような顔をしている。
 数ヶ月前、彼らはF.i.V.E.という組織に喧嘩をふっかけたものの、あっさりと返り討ちに遭ってしまった。
 あの後、いくつかのチームを潰して『Teppen』に吸収し、チームは強化された。浅野自身も強くなっているはずだが、あの1敗が未だに彼の自尊心を満たせずにいる。
「くそがあっ!!」
 浅野は苛立つ感情に身を任せ、拳で床を叩きつけた。
 響く破壊音にメンバー達は戦慄する。これが覚醒した状態でなくて良かったと、皆、安堵せずにはいられない。
「再戦じゃあ! おう、奴らに果たし状を送りつけえ!」
 勢いよく立ち上がった浅野がメンバーへと呼びかけると、一人がその場から走り去る。
 それを確認して、再び椅子に腰掛ける浅野。今度こそはと瞳をギラつかせていたのだった。

●再び、送られた果たし状
『6月某日14時に、岡山県某市の裏通り倉庫に来られたし。来ない場合はお前らの負けと見なす』
 どこかで見たような果たし状。確か、前回もこういった形で茶封筒に入った紙に殴り書きされてはいなかったか。
「……何で、彼らは都に渡したのですかね?」
 決闘なんて言葉と全く持って無縁な、『芸術はえくすぷろーじょんですよ』新城 都(nCL2000091)があからさまに不快な表情をする。
 都の愚痴によれば、じめじめとしたこの時期、大切な大切な商売道具(画材)にカビが生えたのが嫌で、うんぬんかんぬん。
 仕方なーく、都は自分の足で某文具店に買い物へと出かけようと五麟大学考古学研究所の門を潜ったところ、『Teppen』の下っ端チンピラに絡まれたのだとか。
「もー、都はアトリエで山ほど仕事があるのに、こんなところで油を売ってる暇はないのですよ」
 で、彼女は通りがかった覚者へと、その果たし状を押し付けたわけである。まあ、都は非発現者である為、その行為については仕方ないのだが。
 F.i.V.E.も少しずつ知名度を上げている。その為か、ごろつきどもが名を上げる為にと戦いを申し込んでくる。何とも傍迷惑なことだ。
「まったく、これだから、芸術を理解しない野蛮な連中は嫌なのですよ」
 口を尖らす都。いや、芸術と決闘って関係全くなくないかというツッコミは、彼女の耳には届いていない。
 話を戻して、『Teppen』は少しずつ隔者組織を潰し、力を付けてきているようだ。互いにどれほど力を付けたか、力比べといったところだろうか。
「皆さん、F.i.V.E.の為にも頑張るのですよー」
 彼女はそうして手を振り、画材の買出しへと出かけていくのだった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.決闘に臨む『Teppen』メンバー5人の撃破
2.なし
3.なし
覚者の皆さん、こんにちは。なちゅいです。
F.i.V.E.に喧嘩を吹っかけてきた、隔者組織の撃退を願います。

●敵
○隔者……チーム『Teppen』メンバー
 周辺の隔者組織を倒し、徐々に名を上げているチームです。
 決闘においては、5人が覚者の皆様の相手をします。

・リーダー……浅野・貴志(あさの・たかし)21歳。
 械×火。グレートソードを所持。
 リーゼントの男。かなりの力を持っており、
 その両刃の剣と、覚者としての力を存分に振るって相手を叩き潰します。
 
・幹部……伏谷・悟(ふしや・さとる)19歳。
 翼×木。組織ナンバー2。槍を所持。
 短髪に剃り込みの入った男。
 元チンピラチームリーダー。覚者の皆様と同程度の力を持ちます。

・幹部……神嶋・奈緒子(かみしま・なおこ)20歳。
 獣(酉)×土。ナックルを所持。
 茶髪ロング。髪は右手前に再度ダウンで流しています。
 元レディースリーダー。浅野にベタ惚れ。覚者に匹敵する強さです。

・隔者(男)×2
 怪×水、ギター所持。
 彩×天、投げナイフ所持。
 前回の敗戦後、浅野が潰した隔者組織の元リーダーです。
 隔者としての力は幹部にはやや劣り、
 後方支援する形で立ち回ります。

・所属メンバー×30……10代後半の男女。
 因子、術式は様々。ナイフ、大槌、片手斧など。
 基本的には襲ってきません。
 なお、隔者としての力はさほど強くありません。
 
(以下、プレイヤー情報)
 ただ、1人だけ、黒霧構成員が潜んでおります。
 これは倉庫突入地点では覚者の皆様も知りませんが、
 エネミースキャンを使って所属メンバーを視た場合のみ、
 覚者の皆様も気づくこととします。
 能力は不明ですが、幹部と同程度の力を持ちます。
 黒霧構成員と交戦も可能ですが、
 勝負に水を差された形となりますので、
 浅野のメンツの為にも、
 勝負中の接触は避けるべきでしょう。

●戦場
 路地裏の倉庫内。
 所属メンバーが円状になって囲む中、幹部ら隔者5人と戦う事になります。
 リーダー浅野の命で所属メンバー達は直接手を出してはきませんが、
 決闘の決着がつかぬうちに、
 覚者の皆様が戦場から離脱するなどの動きを見せた場合に襲ってきます。
 勝利した場合は恐れをなして、襲ってきません。

 それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
7/7
公開日
2017年06月26日

■メイン参加者 7人■

『星唄う魔女』
秋津洲 いのり(CL2000268)
『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『ボーパルホワイトバニー』
飛騨・直斗(CL2001570)
『清純派の可能性を秘めしもの』
神々楽 黄泉(CL2001332)
『ストレートダッシュ』
斎 義弘(CL2001487)

●2度目の果たし状
 岡山県内のとある裏路地。
「また、あの髪の毛が変な人、挑戦してきた?」
「また決闘の申し込みですか。懲りないですわね」
 『清純派の可能性を秘めしもの』神々楽 黄泉(CL2001332) は前方を見つつ首を傾げる。やれやれと、『星唄う魔女』秋津洲 いのり(CL2000268) も、そのエネルギーをもっといいことに使えばと、申し込みをしてきたチーム「Teppen」に呆れている様子だ。
 果たし状を受け取ったF.i.V.E.のメンバー達は相手の指定した倉庫を前にする。
「さて、また奴らとの喧嘩に付き合わなけりゃならないか……」
「本当に、懲りない方達ですね……」
 『ストレートダッシュ』斎 義弘(CL2001487) は大儀そうに、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080) もげんなりしながらも、Teppenとの再戦に意欲を見せていた。
 また、この場へと再び訪れた4人に、3人が追加で参戦している。
「果たし状、いいね! そういうの好きだぜ!」
 『雷切』鹿ノ島・遥(CL2000227) は嬉しそうに両手の拳を叩きつける。もっとも、相手に対して思うことがないわけでもないが……。
「ま、その辺の話は戦いの後ですりゃいいや」
 純粋に戦いを楽しむ遥に対し、他2人の態度はやや辛辣である。
「どこの不良漫画の馬鹿野郎なのか……何より、2度目と来て反省もしてやがらねぇ」
 続けて参戦の4人から事情を聞いた『ボーパルホワイトバニー』飛騨・直斗(CL2001570)は、よくこんなふざけた事ができるなと、怒りにも似た感情を露わにしている。
「再戦に臨む心意気だけは認めますが……このやり方が何度も通ると思われては困りますね」
 イギリス人の『美獣を狩る者』シャーロット・クィン・ブラッドバーン(CL2001590) は真顔でしばし考える。
「……こりゃ、少々悪役になってでも、お灸据えるべきかね……戦いの厳しさ……教えてやるよ」
 直斗の言葉に頷くシャーロットが仲間達へと示した案。それは……。

●対案要求
 準備を完了したF.i.V.E.メンバーは、倉庫の扉を開く。
「よっす! オレは鹿ノ島遥! F.i.V.E.の覚者だ。よろしくな!」
 右手の刺青を黄色に光らせた遥は早速、この場にいた若者達へと言い放つ。
「同い年の人も、女の人も久しぶり」
 その再度にいる幹部の男女2人へ、アホ毛を揺らす黄泉は手をふりふり。2度目ということもあって、彼女は若干好意を覚えていたようだ。
「待っとったぞ、F.i.V.E.……」
 前回と同様、リーゼントの男、チーム『Teppen』のリーダー、付喪の浅野・貴志が呼びかけてくる。
 やや殺気立つ相手に対し、覚醒するF.i.V.E.メンバーは余裕すら見せている。
 強い相手と戦いたい黄泉は大斧「燕潰し」をぺちぺちし、敵の出方を、そして、色々とTeppenに思うことのある仲間達が動くのを、彼女は待っていた。
 現の因子の力で大人の姿に、そして恥じらいながらもボンデージ衣装姿となったいのりは、これ見よがしに溜息をつく。
「いのり達も暇ではないので、これで最後にして欲しいですわ」
 義弘は覚醒前に靴を脱ぎ捨てていた。械の因子の影響で、足裏にスパイクが生えてくるからだ。
「で、だ。お前等と戦うのはこれで2回目だが」
 前回はこちらの言うことを聞かずに帰ったなと、彼はそのスパイクを地面に突き立てつつ、堂々とした態度で敵を見据える。
「だから、今回は俺達の言うことを聞いてもらう」
 義弘の言葉に、Teppenメンバーの表情が一変する。
「俺等が負けた時はそっちの好きにすればいい……だが、テメェ等が負けたら……幹部の誰かの首を一つ差し出せ」
「なっ……!」
 兎耳を動かしつつ直斗が威風を放って言い放つと、倉庫内にどよめきが上がる。
「ワイらが負けたら、死ね言うんか……?」
 浅野らもこれには苦虫を噛み潰したような顔でF.i.V.E.メンバーを見つめていた。
 だが、直斗は勝者として当然の権利と主張する。
「こっちは態々、テメェ等の下らねェ喧嘩の誘いに乗ってきてんだ。だったら、テメェ等も誠意を見せるべきだろ?」
 断わるのも自由とは言うものの、その時は勝ち負け関係なく、Teppenは命も賭けられないチキン野郎と言いふらす。
「嗚呼、もちろん、選択権はリーダーだ」
 そんな直斗の要求に、戸惑いを見せるTeppen達。
 判断に悩む浅野が我が身可愛さに幹部の誰かを指名するか、漢らしく自身を指名するか。直斗は傍観する。
「『来なければ負けと見なす』。ワタシたちは来ましたので、こう言います。この要求『受けなければ負けと見なす』と」
 シャーロットは直斗が自身の提案に乗り、威圧的な要求を行う役を買ってくれたこともあり、彼に協調して煽る役を行うこととする。
「さて、呼ぶだけで満足して負けますか?」
「ぐ……」
 F.i.V.E.から突きつけた理不尽な選択。一方的な要求の押し付けがいつも通るわけではないと理解させるのが、シャーロットの狙いである。
 だが、それはF.i.V.E.メンバーの総意ではない。
「そういう要求はだめです」
 ラーラが仲間を嗜めると、黄泉も小さく首を横に振る。
「飛騨ー! 殺すのは正義の味方的にどうかと思うぞー!」
 遥もまた直斗を止め、代替案を示してみせる。
「そうだな、お前らのチームから一人、F.i.V.E.にシュッコーしてもらおうか!」
 誰か1人というのは、直斗の案と変わらないが、もしこの案を受けぬならば、2度と『果たし状』には応じないと主張した。
「ああ、そうだ。今回俺達が勝ったら、今度こそF.i.V.E.に入って、F.i.V.E.の舎弟になれ」
 義弘も遥に同調したが、彼は別案を提示した。
「自分らだけ来いと要求しておいて、俺達の言う事が聞けないって事は無いよな?」
 これに反論を始めるTeppenだが、いのりが毅然と告げる。
「貴方は負けたチームを吸収しているのでしょう? 自分は良くて他人は駄目というのは筋が通りませんわね」
 いのりが言うように、Teppenは複数のチームを吸収してきている。
「吸収されたチームも納得しませんわよね?」
 煽るいのりだが、かなりの規模になってきているF.i.V.E.に入るというのは、アウトローな若者達にはかなり抵抗があるようだ。
「……ええじゃろう」
 そう告げた浅野は、刃と変えた両手で構えをとる。
「負ける気で、果たし状出したわけじゃぁないからの!」
 浅野を始め幹部らも覚醒し、戦闘態勢に入る。
(憎まれ役でもいいかと思っていたが……)
 彼らが多少荒くれ者でも害悪でないなら、命をとらなくても良いと直斗は考えていた。そういう意味では、遥、いのり、ラーラがうまく落とし込んでくれたと彼は安堵すらしている。
「さあ、気合見せつけてやろうじゃないか。根性ってやつをな」
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
 義弘の言葉に頷くラーラは煌炎の書を手に、自身の周囲に炎を舞わせて。
「私達が勝ったらお縄についていただきますよ」
 ラーラは仲間と共に、攻めくるTeppenメンバーとの決闘を開始するのだった。

●決闘、再び
 Teppenメンバーが囲い、見守る中、F.i.V.E.とTeppen、2度目の決闘が始まる。
 両腕の刃を振るうリーダー、浅野は、直斗、義弘の2人が主に抑えることとなる。
「うりゃあああ!」
 唸りを上げる強固な剣。その対策の為に直斗は特別な花を咲かせ、その香りを振り撒くことで敵の身体能力を弱め、敵の注意を引こうとする。
 義弘は自らの細胞を活性化させた後、浅野へと正面からぶつかり、メイスで殴りかかっていく。
「いい加減にしてもらおうか、お前も男だろうが。潔く、負けを認めてもらおう」
 挑発する義弘。仲間が他のTeppenメンバーを倒すまでの時間稼ぎが目的だ。
「男じゃけぇ、てっぺん取るんじゃろうが!」
 浅野は負けを認めず、気を放出して覚者達にプレッシャーを与えてくる。義弘はうまく空いての気を引いていたようだ。
 幹部は2人。酉の獣憑、神嶋の前にはシャーロットが立ち、「蓮華」で敵前衛に纏めて地を這う連撃を見舞っていく。
 神嶋はその反撃にと羽毛に包まれた腕を振るい、眼前のシャーロットへと拳を叩きつける。
「今度こそ、貴志をてっぺんに……!」
 その女幹部を、シャーロットは冷静な目で見つめていた。
 もう1人の幹部、短髪剃りこみのヤンキー、翼人の伏谷へは、幼さの残る黄泉がつく。驚くことに、同じ年の2人である。
「ちっ……」
 少し調子の狂う相手と、伏谷もやりにくそうだ。そいつは槍を振り回し、時にエアブリットを織り交ぜてくるところを見ると、前回とは戦法を変えているらしい。
 対する黄泉はさほど変わらない。
「鎧どーしー↓」
 黄泉は両手の掌から練り上げた気を発し、伏谷へと叩き込む。彼の抑えと同時に、優先撃破対象である後方の隔者2人を叩く為だ。
 F.i.V.E.メンバーで唯一、戸惑いを見せていたのはいのりだ。
 彼女は霧を発することで敵全体の能力を下げようと考えていたのだが、スキルがないことに気づく。
「やむを得ませんわね」
 初手から攻撃に出ることにした彼女は、戦うTeppenメンバーのみに光の粒を降らし、応戦を行うことにする。
「まずは回復・補助から潰す、ってな!」
 そうして、メンバーが幹部を狙う間、遥は前に出て後方支援を行う隔者2人を狙う。メインで攻め入るは、ギターをかき鳴らし、癒しの霧を振り撒く黄泉……怪の因子持ちだ。
 そいつを中心として、遥は素早く四方に向けて蹴りを繰り出していく。本来は鍛錬を行うための型でしかないのだが、彼はそれを攻撃の型として転化していて。
「はあっ!」
 繰り出す強烈な蹴りに、隔者はついに意識を失って崩れ落ちる。
 ラーラも後方の隔者へと燃え上がる炎を発していたのだが、合間を見て、彼女はエネミースキャンも試みていた。
(私の予感が正しければ……)
 脳裏に浮かぶ過去の依頼。ラーラはそれらを元にし、出来る限り敵データの収集に当たる。
 交戦相手となる5人だけでなく、彼女は戦場を囲むTeppen所属員にもスキャンを試みていた。さすがに数が多く、その全員を分析するのも手間がかかっているが……。
 やや前のめりに攻撃を仕掛ける敵。前衛の仲間が幹部を抑えている以上、スキャンにばかり時間をかけて入られない。
 英霊の力を引き出すラーラは、拳大の炎を連続して飛ばし、精霊顕現の隔者を焼き焦がして倒してしまう。
 今回もまた、妖などとの戦いで数々の死線を潜ってきた、F.i.V.E.メンバーに分があるのは間違いなさそうだった。

●なりふり構わず……
 残るTeppen幹部3人。伏谷、神嶋の力は覚者と同程度といったところ。
 そして、リーダー浅野の力は個々の覚者をやや上回る。
 直斗の抜刀による2連撃も、浅野は傷つきつつもうまく捌いている。それだけに、浅野は気が大きくなっている部分があると言えた。
「ワイの力、存分に見せちゃる!」
 浅野が振るってくる大剣。義弘はクリアライオットシールドで受け止めるが、その手を持っていかれるかと思える威力だ。
「大見得切って、簡単に負けるわけにいかないんでな」
 それでも、彼は意地を張ってみせ、熱圧縮した空気と共に、スパイクで思いっきり浅野を蹴り飛ばす。
 前線で身を張る仲間を回復支援するのは、いのりだ。彼女は霧を展開して回復を行う。
 相手が状態異常ではなく、力任せに攻撃してくる為に回復の手は離せぬが、絡め手がない分御しやすいとも言える。
 依然神嶋に攻撃を続けていたシャーロットは涼しい顔をして殴打を受け、反撃にと加減なしに斬りかかる。
 望まれたから、不殺を行うだけ。シャーロットに敵の生き死になど全く興味すらない。
「Love is blind,and lovers cannot see the pretty follies that themselves commit.(恋は盲目で、恋人たちは恋人が犯す小さな失敗が見えなくなる)」
 それでも、彼女はシェイクスピアの名言を言わずにはいられなかった。
「はぁ?」
 それが理解できずに刹那呆けた神嶋へ、直斗が猛り狂う獣の一撃を叩き込む。
「ごめん、たか、し……」
 妖刀を振り払う直斗の後ろで、神嶋は意識を失って倒れていった。
 相手が幹部だけとなったことで後方に下がっていた遥は、回復も行う厄介な中衛の伏谷へと正拳を叩き込む。
「ち、くそおっ!」
 ラーラの放つ火炎を浴び、伏谷もついに体勢を崩しかける。
 そこに、気合が抜けるような声が。
「黄泉、クラー↑ッシュー↓」
 高々と飛び上がる黄泉が、力任せに「燕潰し」を叩きつけた。
 伏谷も何か小さく呻き、白目を向いて崩れ落ちてしまう。
「何が……何が足りんっちゅうんじゃ!」
 声を荒げる浅野はなおも、大剣を叩きつけてくる。
 両手の刃を合わせた三連撃は脅威だが、力とてっぺんのみを求める彼には、圧倒的に足りないものがあると、義弘は確信する。
「強くなりたいのは構わないが、人様に迷惑かけるんじゃないぞ!」
 火力を手にするメイスへと集中させた義弘は、相手の頬を殴り飛ばす。爆裂すら巻き起こる一撃に、浅野は膝から崩れ落ちる。
「何故じゃ、何故負けるんじゃああっ!」
 彼は悔しそうに、倉庫の床を力任せに刃となった腕を振り下ろしたのだった。

●勝利はすれど……
 勝者は、F.i.V.E.メンバー。これで、2戦2勝である。
「……ていうかお前ら、ココロザシ低すぎ!!!」
 地面に倒れ、あるいは崩れ落ちたTeppen幹部へと、遥は一喝する。
「オレらより強い奴なんて、世の中にはゴロゴロいるぜ?」
 パンチ一発でビルをぶっ倒す覚者、遥達と同等クラスの覚者の攻撃を何十と受けてビクともしない妖……。
「もっと上見ろ、上! テッペン取るんだろ!」
 遥は力強く拳を握り、浅野へとメモを渡す。個人レベルの勝負ならば、いつでも受付中だ、と。
 だが、そこで、直斗が自分達を囲むTeppenメンバーに向けて威風を撒き散らし、浅野の首を狙って進み出る。
 その直斗に向かって、黄泉がてくてく歩いていく。
「悪い事は、駄目だよ?」
 命を奪うのは、悪い事。命を投げ出すのも、悪い事。黄泉はそう仲間を嗜める。
「悪い事する人には、お仕置き、こうだから、ね?」
 黄泉は直斗の頭に、燕潰しを軽くごちんと落とす。
「戦った後は、握手、ね?」
 少しだけ和むこの場の雰囲気。
 義弘も直斗が浅野にトドメを刺さないかと見つめていたが、直斗の狙いは別のところにあった。
 それは、Teppenメンバーをスキャンしていたラーラの行為に理由がある。もしかしたら、「それ」がいるのでは。ラーラはその看破を目指していた。
「やはり、能力の高いメンバーが潜んでいます……!」
 叫ぶラーラの声と同時に、義弘、直斗が動き出す。逃がさぬようにそいつを包囲する為だ。
「……!」
 自身が狙われた事に気づいたそのTeppenメンバー……いや、黒霧所属員は、直斗が振るう妖刀を軽やかに避けてみせた。
 ここでも、いのりは迷霧がないことを悔やむ。さすがに、他のTeppenメンバーを巻き込むわけにはいかず、波動弾も撃ちづらい。
「強い相手、なら、どんどん、戦いたい」
 黄泉もそうして、再び構えを取るのだが、敵は再度の直斗の攻撃を受け止め、取り出した玉を地面にぶつけて煙幕を張り、いずこともなく去って行った。
「なんじゃ……?」
「あれは七星剣、黒霧の構成員ですわ」
 状況把握のできていない浅野へ、いのりが説明する。中に入り込まれた結果潰されたり、見捨てられたりした組織を知っていると。
「ワイらも狙われとったんか……?」
 潰された組織は、チンピラの集まりもあった。Teppenも何かしら利用する為に黒霧が潜り込んだ可能性もある。
「F.i.V.E.に入るのが嫌だとしても、黒霧に落とし前をつける気なら協力しませんか?」
 いのりは改めて、浅野に問いかける。
 しばし、流れる沈黙。神嶋が浅野へと心配そうに声をかけた。
「どうしますか?」
 今度は、シャーロットが問う。どちらも拒否ならば、全員を拘束、強制連行まで、彼女は考えていたのだが。
「……ケジメは付けんとのう」
「「「浅野さん!!」」」
 立ち上がった浅野が告げると、メンバー達が叫ぶ。
「あいつらは誰か1人ゆうた。なら、ワイだけでええ」
 必ず戻るから留守を頼むと、浅野はメンバーへ告げた。
 それに、初期メンバーは唖然とし、取り込まれたメンバーは顔を見合わせ、戸惑いを見せる。どうやら、彼らの考えも一枚岩ではなさそうだ。

 こうして、「Teppen」の決闘はF.i.V.E.の勝利に終わった。
 しかし、浅野をF.i.V.E.へと連れて行く覚者達は、「Teppen」メンバーの姿を見て、一抹の不安を覚えずにはいられないのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

皆様、お疲れ様でした。

決闘の結果、
浅野が責任を取る形で、
Teppenを幹部やメンバーに任せ、
F.i.V.E.へと出向する形となりました。

参加していただき、
本当にありがとうございました!




 
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